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2012年6月29日金曜日

始業です! ― clock on

私事ですが、昨日、今日と休暇にしております。といっても旅行などに行く余裕があるわけでもないので、家で寛いでいるだけですが・・・。また、妻の代わりに、子供の世話やら家事などをしているため、普段より多忙だったりします(笑)

休暇を取っている間に会社のことが気にならない訳でもありません。オフィスのメールをチェックしようと思えば簡単にできるのですが、メールをチェックしたが最後、仕事モードになってしまっては何のための休暇なのかも分からなくなるのが嫌で、敢えてメールをチェックしないようにしています。

そんな中、今日もニュースを斜め読みしていたら、以下のようなヘッドラインが目を引きました。


Goodbye 9-to-5: Hello 7-to-7
(News.com.au)


”9~5にさようなら、7~7にこんにちは”、とは一体何のことだろうと思いアクセスしてみると、以下のリードが。


THE days of nine to five are over with more workers now putting in 12-hour days - and it's all thanks to technology.


合点が行きました。”9~5”というのは、朝9時から夕方5時のこと、”7~7”というのは、朝7時から夜7時のことです。よく”9時-5時の勤務”とか言いますが、定時出社・定時退社の意味で使います。テクノロジーの発達のお陰で(!)、”9時-5時の生活”から”朝7時-夜7時”、つまり12時間労働の生活になってきている、と言っています。

休暇の日にこのような記事に出くわすというのは何という因果でしょうか!!


As more of us check email from home or our smartphones the typical working day now starts at 7.17am and finishes at 7.02pm.

These are the findings of a study that reveals workers are mentally "clocking on" before leaving the house and struggling to switch off when they get home again.

The silver lining is that most bosses don’t mind when staff arrive late to the office because they are confident that they’ve already started working via mobile technology.

And employees are happier with the more flexible arrangements.
(Sarah O'Carroll. Goodbye 9-to-5: Hello 7-to-7. News.com.au. June 28, 2012.)


テクノロジーの進歩のお陰で、オフィスにいなくとも仕事が出来るようになりましたが、便利な反面、仕事とプライベートの境界が曖昧なものになってきつつあるという指摘もあります。自宅でも会社のメールをチェックできるようになったことで、出社前のメールチェックにより、会社員は"mentally clocking on"(精神的には始業状態)である、と言えます。

以前に、"clock out"という表現を取り上げたのを覚えておられるでしょうか?ここでの、"clock"はタイムレコーダーのことでしたね。

"clock on"は、"clock out"の反対で、始業時にタイムレコーダーで始業時間を打刻すること、つまり始業を意味します。"clock in"と言う場合もあります。

記事によりますと、労働時間としては増加傾向にあるものの、多くのサラリーマンはテクノロジーの発達によりもたらされるフレキシビリティに満足しているという調査結果があるそうです。

私もどちらかと言えば同意見ですが、休みの日に会社のメールは見たくないですね(笑)

記事はこちら


2012年6月28日木曜日

今週末、うるう秒を実施 ― Hold on a second!

今年の1月にうるう秒(leap second)について取り上げたのを覚えておられるでしょうか?

その時にうるう秒というものの存在を初めて知ったのですが、なんとうるう秒の実施が今週末土曜日の6月30日に予定されています。直近の実施は2008年だったということですから、約4年ぶりの実施と言うことになります。

先月金環日食の話題に沸いたばかりですが、今月はうるう秒挿入の歴史的タイミング(!)を体験してみてはいかがでしょう?


Hold on a second and let it sync in


TIME will stand still for a second on Sunday morning when the nation's timekeepers add a second to keep the atomic clock in sync with the Earth.

While it might not sound like much, the added second has a vital job. Just as a day is added in a leap year to keep the seasons in sync with the calendar, the leap second keeps the clock in order by closing the gap caused by the slowing rotation of the Earth against the reliably precise atomic clocks.
(Bridie Smith. Hold on a second and let it sync in. The Age. June 28, 2012.)


記事のタイトル(ヘッドライン)が面白いです。

"Hold on a second."は、日本語で言うと、”ちょっと待って!”、という意味です。電話口で、相手に切らないように伝える時によく使うフレーズです。

このフレーズで"a second"は厳密な1秒間を指しているのではなく、単に”ちょっとの間”を意味しているにすぎないのですが、この記事の内容に至っては厳密な1秒間のことであり、言いえて妙です。

うるう秒は6月30日の最後、つまり23時59分59秒の後に23時59分60秒という、実際には存在しない秒を付け加えるということです。今回引用した記事によると、


The leap second will be added to the last minute of June 30, Co-ordinated Universal Time, which equates to 10am on Sunday, July 1.
(ibid.)


と解説されており、7月1日日曜日の午前10時に相当する、とありますが、これはオーストラリアでの話なので、日本だと、7月1日日曜日午前9時になるものと思われます。

どんな観測ができるのか知りませんが、歴史的な瞬間に立ち会ってみてはいかがでしょうか?


記事はこちら


2012年6月27日水曜日

無賃乗車 ― farebeater

ニューヨークのバスに何度か乗ったことはありますが、無賃乗車が横行しているとは知りませんでした。尤も、それも7年くらい前の話ですが・・・。

最近、無賃乗車の統計が跳ねあがっているそうで、ニューヨーク市警が私服・制服警官を投入して一斉摘発に乗り出したようです。


The free ride is over.

The NYPD has begun flooding city buses with undercover and uniformed cops to nab serial fare-beaters, a problem that’s costing the agency $100 million a year, officials said yesterday.

The operation has led to 1,228 fare-beating arrests from Jan. 1 through June 24 — a 102 percent increase from the 609 arrests in the same period last year, according to NYPD statistics released yesterday.
(Fare cheats are bus-ted. The New York Post. June 26, 2012.)


無賃乗車(者)のことを、"fare-beaters"と表現しています。"fare"は運賃のこと、"beater"は、動詞の"beat"(叩く)から来ていますが、"beat"には、税金や料金などを踏み倒すという俗語の意味があるそうです。

また、この記事のヘッドラインが面白いのですが気が付きますか?


Fare cheats are bus-ted


今回の摘発対象はバスの無賃乗車の常習犯です。"bus"(バス)と、"bust"(警察による摘発)をかけているんですね。そういうわけで、"bus-ted"というようにハイフンが入っており、記者のダジャレです。

記事はこちら


2012年6月26日火曜日

Facebookがメールアドレスを乗っ取り? ― hijack

お昼休みにテクノロジー関連のニュースをチェックしていたら、あのフェースブックで、ユーザーが通常使う、いわゆるデフォルトのメールアドレスがフェースブックでのメールアドレスに設定変更されるということがおきたらしく、ユーザーの怒りを買っているというニュースがトップニュースになっていました。わたしはフェースブックをやりませんので、どんな仕組みなのか、どういう影響があるのかは良く分かっておりませんが、随分と騒ぎになっているようです。

あまたあるヘッドラインの中から、


Facebook is trying to hijack your email address


という、CNNのヘッドライン(6月25日付)が目を引きました。今日取り上げたいのは、“hijack”という単語です。

日本語でも“ハイジャック”と言います。“乗っ取る“という訳がよく使われます。ハイジャックと言うと、真っ先に思い浮かぶのは飛行機の乗っ取りです。最近あまり飛行機に乗ることがありませんが、ハイジャック犯が同乗していたらどうしようと思うのは杞憂であればいいですが、心配性の人間には思わずにいられないところです。

さて、なぜハイジャック(hijack)と言うのでしょうか?

“ハイ”(=high)、つまり高いところでの、“jack”、だから“ハイジャック”、“jack”はよく分からないけれど、飛行機は高いところを飛んでいるから“ハイジャック”。そんな風に漠然と考えていましたが、実は“hijack”の語源には諸説あるらしい、ということが分かりました。

まず最初に、どうでもいいことのように思われるかも知れませんが、“hijack”という単語は、“hijacker”(ハイジャック犯人)という単語から派生した単語です。このような成り立ちによる単語を逆成と呼んでいます。“hijack”の語源は“hijacker”であり、従って、“hijacker”の語源を見る必要があります。

まず最初の説は、追いはぎを意味する“highwayman”と狩りをする人を意味する“jacker”(“jack”とは狩りで獲物をおびき寄せるために用いる“jacklight”のこと)が結合して生まれたという説。“highwayman”などというと、高速道路(ハイウェー)で車を強奪する強盗のように聞こえますが、17世紀くらいからある単語で、それくらいの昔に馬で公道に出没した強盗だそうです。

2番目の説ですが、強盗が“Stick 'em up high, Jack!”(手を高く上げろ!)とターゲットを脅した、そのセリフから生まれたという説。これはかなり面白い語源ではないでしょうか。

上記2つはランダムハウス英和辞書の語源欄から確認できます。

3番目の説は、2番目の説と似ていますが、強盗がやはりターゲットに対して、“Hi, Jack!”と声を掛けてから犯行に及んだという、そのセリフから生まれたという説。2番目の説も、3番目の説も、“Jack”は特定の人の名前を指すと言うよりも、おい、とかちょっと、とか声掛けの場合に使われるものだと解釈できます。

いずれの説ももっともらしくも聞こえ、なんだか作り話のようにも聞こえるのですが、Merriam Websterを参照してみると、“Origin unknown.”ということで片付けられています。Merriam Websterの主義として、確証の無い語源は載せないということでしょうか?

いずれの説においても、“hijack”、“hijacker”という単語のhi-が、“high”(高い)と関係があるとしているものはありませんが、そのように間違って解釈された結果、“highjack”というスペルの単語も生まれました。さらに、“carjack”や“seajack”、“skyjack”などという単語も派生しており、これらを辞書のエントリとして載せている辞書もあります。インターネット全盛の現代に至っては、掲示板のスレッドを独占する、"thread-jack"なる用語もあるようです。これらは語源的には異分析と呼ばれるものです。


2012年6月25日月曜日

閑話休題 ― ”つるつると回る”口

久しぶりの閑話休題です。

少し前の話になりますが、5月の産経新聞朝刊の単刀直言というコーナーに谷垣禎一・自民党総裁のインタビュー記事が載っていました。そのなかで、谷垣氏が野田佳彦総理大臣を評して、


“首相の口はつるつると回るけれど言葉にはむなしさを覚える”


と発言しているのですが、その“(口が)つるつると回る”という表現が妙にひっかかりました。(全文はこちらで読むことができます。)

舌がよく回る、とか、ぺらぺらと(よくしゃべる)、という表現はよく使われますが、口が“つるつると回る”というような表現を聞くのも、目にするのも初めてだったからです。皆さんは馴染みがありますか?

早速広辞苑を引いてみましたが、“つるつる”の解説としては、


1.動きが、すべるようになめらかなさま。するする。
2.表面がなめらかなさま。また、すべりやすいさま。
(広辞苑第三版)


とあり、物理的な特徴や様態を形容する意味はあるのですが、人の発言や話し方を形容する意味はありません。他にも色々あたってみましたが、“口がつるつると回る”という言い方はやや特殊な表現ではないかと思います。

ひょっとして方言の類かとも思いましたがそうでもなさそうです。

ここで私が英語表現で思い浮かべるのが、"glib"という単語なのですが、ご存知のように"glib"には、


ぺらぺらとよくしゃべる


という意味があります。同義語としては、"fluent"がありますが、"glib"はやや軽蔑的な意味を含んでおり、“口先だけの”といった、不誠実さを匂わせる表現です。

この"glib"の語源はゲルマン語系なのですが、中低ドイツ語の"glibberich"に遡るようです。このドイツ語、"glibberich"は英語で言うと"slippery"(つまり、つるつる滑る)に相当します。

もう1つの連想するのが、"slick"という単語です。この単語も、表面がてかてかした、とかつやつやした、滑りやすい、といった、“つるつるとした”という形容に近いのですが、同時に、


口先がうまい、如才ない


という、発言の不誠実さを表現するのに使われる単語です。

日本語表現と英語表現の共通点(あるいは表現が生まれる上での連想、発想の共通点)とも言えますが、面白いと思いませんか?

“つるつる”という表現でもう1つ思い出すのは、うどんや蕎麦、ラーメンなど麺類を食べる時に、麺を吸い込む様を表現するときに“つるつると”といいます。聞くところによると谷垣氏は大の蕎麦好きでもあるとか。

“つるつる”という表現を使ったのは、方言の類なのか、はたまた、谷垣氏自身に"glib"や"slick"といった英語表現の知識があって、そのイメージから独創したのか、あるいは蕎麦好きが昂じて生まれた表現なのか、興味がつきません。もし機会があれば(ないでしょうが)、本人に直接聞いてみたい気もします。


ビデオゲームでは運動にならず ― exergame

"exergame"という単語をご存知でしょうか?スペルから何となく想像がつくかとは思いますが、これは運動("exercise")とゲーム("game")という2つの単語から生れた合成語(かばん語)です。

お持ちの辞書には恐らく載っていないと思います。従って、日本語訳も確認できないのですが、もし訳すならば、エクササイズ系のビデオゲーム(ソフト)、とでも表現するのがふさわしいと思われます。ビデオゲーム好きの方はよくご存知かと思いますが、任天堂のWiiとそのソフトに代表される、体を動かしてプレーするゲームが"exergames"と呼ばれます。

さて、その"exergames"ですが、家に居ながら運動ができるとか、その効果がもてはやされたりもしましたが、実はそんなに効果がないんじゃないか、というようなことが言われています。


Getting our sedentary, overweight children off the couch is a challenge. That's why the Nintendo Wii game console, which arrived in the United States six years ago, was such an exciting prospect. It offered the chance for children to get exercise without even leaving the house.

Tennis was one of the games in the Wii Sports software that came right in the box with the console. This was the progenitor of "exergames", video games that led to hopes that fitness could turn into irresistible fun.

But exergames turn out to be much digital ado about nothing, at least as far as measurable health benefits for children. "Active" video games distributed to homes with children do not produce the increase in physical activity that naive parents (like me) expected. That's according to a study undertaken by the Children's Nutrition Research Centre at Baylor College of Medicine in Houston, and published early this year in Pediatrics, the official journal of the American Academy of Pediatrics.
(Randoll Stross. No physical benefit from 'exergames': study. The Sydney Morning Herald. June 25, 2012.)


米国の大学が小児科学会誌に発表したものです。対象は9~12歳の子供、BMIが中央値以上で、ビデオゲームを家に持っていない子供です。いわゆる"exergames"をプレーするグループと、"exergames"でないゲーム(つまりほとんど体を動かすことのない、座ったままプレーするゲーム)をプレーするグループとに分けて、それぞれ運動量を測定したところ、2つのグループで差は認められなかったそうです。

その理由ですが、ビデオゲームで運動量が一時的に増えたとしても、それによって生活の他の場面での運動量が減り、結果として全体の運動量が変わらないためである、ということです。元々運動をあまりしない人は、何かのアクティビティで運動量が増えても、別のところでそれを相殺してしまうということなのでしょう。

横着しないで、外で遊べ、といったところでしょうか。

記事はこちら


2012年6月22日金曜日

乳がん治療のはなし ― mastectomy

乳がんの啓発キャンペーンというのをよく聞きますが、男性の私にとって、乳がんという病気については、妻や母親が乳がん検診を受けるというような話もあまり聞かず、どちらかと言えば縁遠い話のように思っていました。

ですが、今日あるニュース記事を読んで考えさせられました。その記事とは、乳がん治療で両方の乳房切除術(mastectomy)を受けた女性が水泳をしようとしたところ、上半身に水着を着用しなくてはプールが使用できないと拒否された、という内容のものです。

下記の引用記事中、"double mastectomy"という専門用語が出てきます。"mastectomy"とは、乳房を意味する"masto-"と外科手術などにおける切除を意味する"-tome"(いずれもギリシャ語)が結合してできた単語です。

記事にある女性の写真はその痛々しい上半身をあからさまに写していますが、この女性は伊達や酔狂で上半身裸で泳ぎたいと言っているのではありません。


Jodi Jaecks, the 47-year-old breast cancer survivor who made local headlines this week for wanting to swim topless at a Seattle-area pool, had tried many things to soothe the nerve pain she suffered following a double mastectomy and chemotherapy last year.

Drugs, physical therapy and specific pain treatments all failed to ease the burning caused by chest-wall nerves that are over-stimulated by the trauma of surgery. So when the facilitator of a breast cancer support group suggested she try swimming, Jaecks jumped on the idea.

"Water sounded soothing," she says.

(中略)

She went searching for a bathing suit, but found they irritated her chest. She came away disheartened.

"I tried one-pieces and two-pieces and looked at swimwear for women who'd had double mastectomies but they were all swimsuits with prostheses," she says. "I'm never going to fake it. I'm not ashamed of my body."
(Diane Mapes. Breast cancer survivor can now swim topless in Seattle's public pools. MSNBC. June 21, 2012.)


自分に合う水着を探して色々なタイプの水着を試したものの、手術痕が痛むため、どうにも合わなかった、というのがその理由でした。

しかしながら、プールの管理者は規則を理由に上半身に水着着用しないでプール利用することを拒否します。


"It started as a personal fitness issue but once they said no to me, it became a far greater overarching political issue," she says. "I'm hoping this will change their policy," she told the paper. "Ultimately, I want to remove the stigma that women with breast cancer have to endure. We should be so far beyond that at this point."
(ibid.)


女性の信念は固いものでした。この1件はローカル紙に取り上げられ、最終的にはプール側も女性が上半身の水着無しでプール利用ができるよう配慮したようです。

女性の発言は毅然としています。女性にとって乳がん、特にそのための切除術は大変つらいものだと同情はできますが、男性にはやはり分かり様のない、そんなものなのだろうと感じた次第です。


2012年6月21日木曜日

アレの最中に・・・ ― the act

"act"という単語をここで取り上げて今さらレビューするというのも何ですが、定冠詞がついて、"the act"となると特別な意味があるようです。


It is the first time fossils of vertebrates - animals with backbones that include ourselves - have been caught in the act.

Nine pairs of fossils - the females identified by their shorter tails - were found in a the Messel Pit, near Darmstadt in Germany. It is believed the copulating couples were overcome by poisonous gas at the bottom of a volcanic crater.
(Pictured: mating turtles frozen in time fifty million years ago. The Telegraph. June 19, 2012.)


交尾している雌雄のカメの化石がドイツ・ダルムシュタット近郊にある、ユネスコの世界遺産にも登録されているメッセル採掘場(Messel Pit)で発見されたというニュースです。写真はこちら

"the act"とはすなわち交尾のことを指しています。ランダムハウス英和辞書を引くと、"the act"は性交を指す婉曲表現とあります。

"in the act"という表現は良く用いられるフレーズですが、"in the act of"以下に動詞の現在分詞(doing)が続き、


~している最中


という意味です。"caught in the act of ~ing"となると、”~の現行犯逮捕”のような意味にもなります。

引用記事での"caught in the act"には、"of"以下の動詞句がありませんが、言わなくとも明白であり、婉曲表現として敢えて示していません。

化石が見つかった現場では、火山性のガスが発生していたと考えられ、交尾中のカメもこのガスにやられたのではないかということです。行為の最中にガスにやられ、そのまま化石になってしまったのです。

引用記事の"in the act"を日本語で訳すとどうなるでしょう?婉曲表現となると、いわゆる”アレの最中”というような言い方になるのではないかと思います。

”アレの最中”の脊椎動物のが化石で発見されたのは史上初のことだそうです。

2012年6月20日水曜日

最も不潔なのはTVのリモコン ― rack up

確か昨日あたりのYahoo! Japanのニュースヘッドラインでも出ていたのを見た覚えがあるのですが、宿泊先のホテルの部屋で最も不潔なところは部屋のテレビのリモコンである、という報告があるそうです。

今朝グーグルニュースのHealth関連記事を斜め読みしていたら、その元記事と思われるものに出くわしました。


Next time you enter a new hotel room, you might think twice before touching the light switch or reaching for the remote.

Those are two of the top surfaces most likely to be contaminated with potentially sickening bacteria, according to a small new study aimed at boosting cleaning practices at the nation’s hotels and motels.

Katie Kirsch, a University of Houston researcher, led a team that measured germs on everything from curtain rods to bathroom sinks in nine hotel rooms in three states.
(JoNel Aleccia. Germiest hot spots in hotels? TV remote, light switch, study finds. MSNBC. June 17, 2012.)


アメリカのUniversity of Houstonによる研究で、3つの州の9つのホテルでの調査を行った結果、ホテルの部屋の中で最も不潔な場所のトップ2として、部屋の電灯のスイッチとテレビリモコンが挙げられたということです。

これを書いている私は今ホテルに宿泊しているのですが、今さらながらスリッパや洗面所のコップなどにわざわざ消毒済みというカバーがかけられているのはそれなりの理由があるのだなあと思います。リモコンの方はそのようなことを考えたこともありませんでしたが、私は普段からテレビを見ませんのでホテルの部屋でもテレビのリモコンに触れることはありません。テレビを見る方にはちょっとショッキングな報告ではないでしょうか?

ところでどのように不潔さを評価したのかということですが、この研究では、病気の原因になる、連鎖球菌やブドウ球菌などの好気性バクテリア(aerobic bacteria)による汚染の程度をホテルの部屋内の色々な場所で定量したものということです。

具体的にどれくらい汚いかというと、下記の引用が示しています。


Top hot spots for aerobic bacteria in hotels turned out to be the bathroom sinks and floors, the main light switches and the TV remotes. The remotes, for instance, racked up a mean of 67.6 colony-forming units of bacteria, or CFU, per cubic centimeter squared.

For comparison, one study of environmental cleanliness in hospitals recommended a top limit of 5 CFU per cubic centimeter squared. Even using Kirsch’s relaxed proposal of 10 CFU, the TV remotes racked up way too many bugs.

The main light switches in the rooms were worse, with a mean of 112.7 CFU for aerobic bacteria. Even the telephone keypad was icky, with 20.2 CFU.
(ibid.)


1立方センチあたりの細菌の量という指標(CFU)において、病院での上限が10とすると、ホテルのテレビリモコンのそれは67.6にもなるそうです。部屋の電灯のスイッチに至っては112.7であり、如何に汚いかが分かります。

さて、今日取り上げる表現は、"rack up"という表現です。"rack"という名詞は、日本語でもラック
と言いますが棚のことを意味する他、物を掛ける台や架のこと、さらには中世の拷問台のことなど、色々な意味を持っています。

このような名詞の意味と上記に引用した記事のコンテクストから、"rack up"を"accumulate"(蓄積する)とほぼ同義と考えることはできそうです。実際、ランダムハウス英和を引くと、


(利益などを)蓄積する


という意味が出ています。また、”米話”として、


・・・を成し遂げる;(スポーツで)(点などを)取る


という意味もあることが分かります。このような意味からは"rack up"の使われるコンテクストがポジティヴなものに思えてくるのですが、引用した記事ではどちらかとネガティヴな意味で用いられているように思えます。

そこでコーパスを検索してみると、ポジティヴな意味と同じくらいに、ネガティヴな意味での用例が見られます。(むしろネガティヴなコンテクストでの用例の方が多いのではないかと思えるくらいです。)


In the years that followed, he racked up a laundry list of arrests. (Denver Post. 2009.)

In my first decade behind the wheel I drove much too fast, and I racked up a string of speeding tickets. (Newsweek. 2008.)

Sarkozy, for his part, has racked up a series of incidents that have raised eyebrows, though not yet hurt him in the polls. (Christian Science Monitor. 2007.)


辞書にもネガティヴな意味を載せても良いのではと思いました。

2012年6月19日火曜日

OEDの新語エントリ ― bogan

言わずと知れた英語辞書の総本山的な存在であるOxford English Dictionary (OED)が新語をエントリに追加しました。その単語とはオーストラリアやニュージーランドでよく使われているという、"bogan"という単語です。ご存知でしょうか?


THEY have been around for decades, wearing a mullet, black jeans and listening to heavy metal, and now the Oxford English Dictionary (OED) officially recognises bogans.

The word bogan has been included in the dictionary's list of new word entries for June, sandwiched between bling and bustler.

The OED, which calls itself the definitive record of the English language, defines a bogan as an Australian and New Zealand colloquial "depreciative term for unfashionable, uncouth, or unsophisticated person, esp. of low social status".

The origin of the word is unclear, but it may have originated in Australia.

The Australian National University says the term became widespread after it was used in the late 1980s by the fictitious schoolgirl Kylie Mole in the television series The Comedy Company.
(Oxford Dictionary recognises bogans. The Australian. June 19, 2012.)


OEDにも載っていなかった単語ですが、ランダムハウス英和辞書ではエントリがあります。"bogan"の訳は、


(豪俗)ばか、まぬか、ぼんくら


となっており、なるほど"depreciative term"であります。

記事へのリンクはこちら

2012年6月18日月曜日

奥の手 ― up one's sleeve

コンピュータのオペレーティングシステムであるウィンドウズと言えば、今や知らない人はいないくらい日常的なものとなりましたが、その製造元である米・マイクロソフト社もアップルやグーグルといった新興勢力に圧され気味、特にアップルのiPadを始めとするタブレット端末の分野では遅れを取っているようにも見えます。

が、マイクロソフトも今の状況を手をこまねいて見ているだけではないようです。同社がメディア向けに計画しているイベントが多くの憶測を呼んでいるようです。


Microsoft's mysterious media event scheduled for tomorrow has generated a log of speculation about what the software giant has up its sleeve, with many bets being placed on a new tablet to challenge Apple's iPad.
(Steven Musil. The latest on Microsoft's myster tablet. CNET Asia. June 18, 2012.)


"up its sleeve"という表現が出てきますが、これは言わば“奥の手”という意味です。

この表現はトランプゲームに由来するもののようで、袖の中にひそかに隠しておいたカードを土壇場で切る、という行為から生まれた表現です。

構文的には、


have something up one's sleeve


という形を取ることが多く、"something"の部分は、"trick"であったり、"idea"であったり、奥の手となるものを表す名詞が入ります。

もう1つよく使われる慣用句として、


ace up one's sleeve


というものがあります。この"ace"はトランプのカードの”エース”であり、まさしく“奥の手”のことを言っています。


At a time when polls show Mayor Agnos' popularity declining and detractors accuse him of failing to deliver on his' 87 campaign promises, Sherry Agnos is a quiet ace up his sleeve. Where less skillful political wives stumble, Sherry manages to balance on the exacting high wire of moderation -- self-possessed but not arrogant, always attractive but never flashy, ever assertive but never abrasive, dedicated to good works but never to the exclusion of home and family.
(Shann Nix. Married to the Mayor; Sherry Agnos uses her clout, but she misses private life. San Francisco Chronicle. 1991.)


メディアイベントではマイクロソフトの奥の手が遂に明かされるのでしょうか?それとも憶測だけに終わるのでしょうか?

余談ですが、トランプゲームに由来する表現で以前取り上げたものに、"force one's hand"があります。(新しくトランプゲームに由来する表現というラベルを作成しました。)

2012年6月15日金曜日

浮世離れ ― out of touch

アメリカ大統領選が引き続き過熱しています。目下の争点は如何に中産階級(middle class)の支持を取り付けるか、というところにあるようですが、オバマ大統領、ロムニー候補共に揚足取りに終始しているようです。


Washington (CNN) -- Republican presidential candidate Mitt Romney is a multimillionaire who wanted elevators for his luxury cars and whose wife wears $1,000 designer T-shirts.

Barack Obama, even before being elected president, was an academic intellectual who made millions writing books and then became a professorial media darling who hobnobbed with Hollywood celebrities and Wall Street investment bankers.

Yet each candidate accuses the other of being out of touch, unable to connect with everyday people. Just look at their gaffes last week over the ailing economy.

Romney called Obama "out of touch" on Friday after the president declared the "private sector is doing just fine." The Obama campaign hit back in a video accusing Romney of being insensitive to the middle class because "he wants to cut jobs for firefighters, police and teachers."
(Halimah Abdullah. Romney, Obama: Why they have trouble connecting. CNN. June 12, 2012.)


両政治家共に資産家、つまりお金持ちですが、自分自身のことは棚に上げてお互いを“浮世離れしている”と批判している、というところでしょうか。多くの日本の政治家もそうですが、資産情報などが公開されているのを見ると、庶民感覚との違いを感じざるを得ません。

そんなギャップ感を、”out of touch”と表現しています。

“touch”とは触れること、接触を意味しますが、“共感”や“同情”といった意味もあります。”out of touch”は、そうした“共感”が無いことを示しています。逆は、”in touch”であり、“共感”している状態を意味します。どちらの表現も前置詞”with”と共に用いられることが多いです。


Republican tax schemes since the Reagan administration have created a widening wealth gap in this country to the point where the U.S. has the worst economic disparity among industrialized nations. One wonders if these overpaid CEOs believe they are in touch with the average voter. Fortune Magazine disclosed that companies are paid an average of 200 times the average worker's salary. In economically successful countries like Japan and Germany, the average is only 15-20 times.
(San Francisco Chronicle. 1996.)




2012年6月14日木曜日

今すぐ食べたい! ― stat

ピザの自動販売機が上陸!?アメリカの話です。


Ever have a sudden urge for crisp-crusted, ooey-gooey, cheesy pizza? You want it STAT. Not in the time it takes to preheat the oven to 500 degrees for a frozen pizza. Not in the 20 minutes it takes for the pizza delivery guy to arrive. And certainly not in however many hours it would take to make homemade dough and marinara sauce.

Get ready for Let's Pizza, a pizza vending machine that promises to deliver a piping hot pizza pie made from scratch in less than three minutes.
(Rene Lynch. Just what America needs: Pizza vending machines. The Los Angeles Times. June 13, 2012.)


自動販売機と言えばジュースのそれが真っ先に思い浮かびます。日本はある意味自動販売機”大国”だと思うのですが、カップラーメンの自販機はあっても、さすがにピザが買える自動販売機なんて聞いたことがありません。

自動販売機のメーカーはA1 Conceptというオランダの会社のようですが、イタリアでの成功を経て、アメリカにビジネスを展開することになったようです。注目のピザですが、即席にありがちな適当な品質のものかと思いきや、オーダーを受けてから生地を捏ね、トッピングも200種類の中から選択できるという、本格的なもののようです。詳しくは記事をご覧下さい。

さて、今日はこの偉大な発明(!?)に関する記事の冒頭を引用したのですが、


You want it STAT.


とある部分の意味が掴めたでしょうか?ピザの話からスタートしていますので、”it”が指すのはもちろんピザのことです。では、”STAT”とは?

STAT=Statistics(統計)、ではありません。ここは文の構成からして、”STAT”は副詞の役割を果たしています。お手持ちの辞書に載っているか分かりませんが、”STAT”は、


without delay: immediately
(Merriam Webster)


を意味しています。“直ぐに”、ということです。“今直ぐにでもピザが食べたい!”という欲求を満たしてくれる自動販売機なのでしょう。

“STAT”がすべて大文字でスペルされていますが、これは単に強調の意味でそうなっているのだと思われます。辞書のエントリでは、ランダムハウスでもそうですが、小文字で”stat”となっています。

本来は医学用語であり、ラテン語の”statim”に由来しています。使われるコンテクストとしてはやはり医学・薬学に関する話題のことが多いようですが、上記のようにそれ以外のコンテクストでも用いられています。

Filo-four antiserum. Antitoxin. Anyone with symptoms or positive blood tests will get it stat.
(Outbreak. 1995.)


2012年6月13日水曜日

生々しい ― graphic

日本語におけるカタカナ表記は外来語を表すことが多いと書くと、何を今さらという言われそうです。カタカナ表記による外来語が多いということについては、イニシアチブとかアセスメントとか、特に政府やお役所が使う文書などでの使用例に対して批判も多いことはご存知の通りです。

ちょっと視点が変わりますが、このようなカタカナ語の表現・意味が日本語においてあまりにも定着しているが故に、当該の英語に戻った時に違和感を感じたり、あれっと思うようなことがまれにあります。

例えば今日取り上げる、"graphic"(グラフィック)はどうでしょうか?

グラフと言えば棒グラフや円グラフなどのチャートをすぐに思い浮かべます。”グラフィック”と聞けば、コンピュータで描画した絵のことをまず思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか?

その前提で、下記のロイターの記事を読むと、一瞬かすかな違和感を感じます。


(Reuters) - The first witness called in the Jerry Sandusky child sex abuse trial testified on Monday that the former Penn State assistant football coach treated him like "his girlfriend" when he was a young teenager, showering together and engaging in oral sex.

The graphic testimony by the 28-year-old man - one of eight alleged victims of Sandusky due to be prosecution witnesses - came after jurors heard opening statements from prosecutors and the defense as the closely watched trial got under way.

The prosecution branded the 68-year-old Sandusky a "predatory pedophile" and said his young victims remained silent only out of fear and shame. Defense lawyer Joe Amendola told the seven women and five men of the jury that Sandusky was a naive man filled with love and affection for young people.
(Ian Simpson. Witness accuses Sandusky of sex abuse as trial opens. Reuters. June 11, 2012.)


"graphic testimony"が意味するところは少し考えれば想像がつきますが、”生々しい”証言という日本語から、適切な形容詞として"graphic"をすぐに想起出来る人はなかなかいないのではないでしょうか。

”生々しい”という形容表現でまず思い浮かべる英語といえば、"vivid"ではないかと思いますが、この点でも、"graphic"を思い浮かべる人は少ないように思います。

コーパスで調べてみると、"testimony"に対する形容詞として、


"graphic" が、19件
"vivid"  が、9件


ということで、"graphic"の方が多いのです。

私にとってはへぇ~という感じで発見だったのですが、英語の熟達者にしてみれば当たり前?でしょうか。”グラフィック”というカタカナ語がすっかり浸透した我々には、"graphic"=”生々しい”とはすぐに結びつかないように思うのです。

2012年6月12日火曜日

日本は今や”ペット大国” ― a pet superpower

唐突ですが、ペットを飼っていますか?ちなみに子供はいらっしゃいます?

私は中学生を筆頭に子が3人です。子供がイヌを飼いたいと言いますが、今のところ飼ってはいません。

子を産もうが、ペットを飼おうが、好き好きでしょうが、"Why Japan prefers pets to parenthood"、というタイトルが刺激的です。なぜ日本(人)は親になるよりもペットを飼う方を好むのか?イギリス人に言われたくない、と一瞬思いましたが、事実ですから仕方ないと言えば仕方ありません。


In a smart and expensive neighbourhood of Tokyo, Toshiko Horikoshi relaxes by playing her grand piano. She's a successful eye surgeon, with a private clinic, a stylish apartment, a Porsche and two pet pooches: Tinkerbell, a chihuahua, and Ginger, a poodle. "Japanese dog owners think a dog is like a child," says Horikoshi. "I have no children, so I really love my two dogs."

Many Japanese women like Horikoshi prefer pets to parenthood. Startlingly, in a country panicking over its plummeting birthrate, there are now many more pets than children. While the birthrate has been falling dramatically and the average age of Japan's population has been steadily climbing, Japan has become a pet superpower. Official estimates put the pet population at 22 million or more, but there are only 16.6 million children under 15.
(Why Japan prefers pets to parenthood. The Guardian. June 8, 2012.)


記事は極めて事実ベースであり、15歳以下の子供の人口(16万6千人)よりもペットの数(22万人)の方が多いと指摘します。今や日本は立派な”ペット大国”という訳です。

さて、今日の表現です。”ペット大国”を"a pet superpower"と表現しています。

"superpower"という単語にほとんどなじみがなかったのですが、文字通り、"super"な"power"ということになります。American Heritageを引いてみました。


A powerful and influential nation, especially a nuclear power that dominates its allies or client states in an international power bloc.


ランダムハウス英和辞書では初出が1923年、Merriam Websterによると1920年、ということなので比較的新しい単語です。"especially nuclear power"とありますから、冷戦時代を経て定着した単語なのではないかと思います。

”大国”であるとされる理由は様々です。"superpower"の前に来る修飾語(形容詞)が違ってきます。

”経済大国”であれば、"economic"ですし、

" Japan used to be just an economic superpower, " says Michael Auslin, a resident scholar at the American Enterprise Institute in Washington.
(Japan quietly seeks global leadership niches. Christian Science Monitor. 2008.)


”軍事大国”となると、"military"です。


The open admission that the Soviet Union was a military superpower with a ruined, aimless economy influenced virtually every critical change in Europe over the past five years, from Moscow's decision to cut its troops and let Eastern Europe go its own way to the erosion of Marxist-Leninist ideology.
(Millions of Soviet Lives Pervaded by Poverty. The Washington Post. 1990.)


戦後は経済大国として復興を遂げた日本ですが、今となっては"pet superpower"・・・ですか。

2012年6月11日月曜日

死ぬまでには・・・: “バケツリスト”って何? ― bucket list

唐突ですが、“バケツリスト”(bucket list)って一体何の事だかご存知ですか?

用例は下記の引用を読んでみてください。


(CNN) -- One of the oldest existing man-made structures, more than 2,000 years old and a world-travel icon that ranks alongside the pyramids of Egypt and Stonehenge -- the Great Wall of China should be on every traveler's bucket list.
(Mark Orwoll. Dos and don'ts at the Great Wall of China. CNN. June 8, 2012.)


CNNのTravel(旅行)セクションからの記事ですが、万里の長城についての旅行指南です。"bucket list"が何を意味するかはコンテクストから大体想像がつきます。

エジプトのピラミッドやストーンヘンジと並んで、万里の長城は一生に一度は観光に訪れたいところ、つまり、"bucket list"は"wish list"、"to-do list"などとほぼ同義と捉えることが出来ます。

しかし、なぜ“バケツリスト”なのでしょうか?

この疑問に対する回答を求めるのにお手持ちの辞書を開いても答えはありません。(多分・・・。)

私もまずは、いつもそうするように、手元のランダムハウスやAmerican Heritageなどをあたりましたが、"bucket list"というエントリそのものがありません。続いてコーパスをあたったところ、"bucket list"の用例はいくつか認められました。上記の引用と同様のコンテクスト、意味で用いられています。つまり、やりたいことのリスト、です。

意味するところは大体わかるのだからまあいいや、という気もしなくはありませんでしたが、“バケツの”リストというのがどうも腑に落ちないというか、釈然としません。"bucket"に、水などを容れる容器としての“バケツ”以外の意味があるのだろうか、などと色々調べてみましたが手掛かりが掴めないでいました。

それで次の手段になる訳ですが、"bucket list"でググってみます。検索結果の上位に出てきたのが、"The Bucket List"という2007年の映画(邦題「最高の人生の見つけ方」)でした。Wikipediaによる、映画のあらすじの解説を読んでピンと来ました。


The Bucket List is a 2007 comedy-drama film directed by Rob Reiner, written by Justin Zackham, and starring Jack Nicholson and Morgan Freeman. The main plot follows two terminally ill men (portrayed by Nicholson and Freeman) on their road trip with a wish list of things to do before they "kick the bucket."
(Wikipedia.)


"a wish list of things to do before they kick the bucket"とある部分に注目です。"bucket list"の"bucket"とは、"kick the bucket"(死ぬ、くたばる、の意)の"bucket"に由来するもののようです。

オンライン辞書の類では"bucket list"がこの映画のタイトルに由来する表現であるとの語源解説をしているものも見られます。

たしかに、先にチェックしたコーパスの検索結果では、2008年以降の用例ばかりでした。その中から、2009年のニューズウィーク誌での用例を引用します。


At a Vancouver event recently, a guy got up with a bucket list of 100 things he had to do before he died, including getting naked in front of a large audience.
(Ramin Setoodeh. Smith's Newest Jones. Newsweek. 2009.)


なるほど、所有する手垢のついた辞書にエントリがないのもうなずけます。


2012年6月8日金曜日

辞書に載っていないフレーズ ― get over one's skis

少し前の話になりますが、5月11日の投稿で"force one's hand"という表現を取り上げました。

これは、大統領選が過熱する中で、オバマ大統領が同性婚を認める歴史的な発言を行った背景についてのNew York Times紙の記事を引用したものだったのですが、記事中に、"force one's hand"という表現とは別に実は取り上げたいと思っていた表現がありました。しかしながら、その時に色々調べたものの分からない事が多く(意味するところはコンテクストから何となく分かるのですが)、そのままになっていました。

話題になっているのは、オバマ大統領が上記の発言を行う直前に、副大統領であるBiden氏が”先走って”同性婚を容認する発言を行った、というものなのですが、記事の詳しい内容については5月11日の投稿をご覧ください。

さて、その表現とは、"get over one's skis"というものです。その個所を引用します。(Biden氏の先走った発言について、オバマ大統領がコメントしたものです。)


In an interview with ABC News that aired Thursday morning, Mr. Obama said the vice president had gotten “a little bit over his skis.” But he said that he had done so “out of generosity of spirit.” And in their Oval Office meeting on Wednesday, the president told Mr. Biden, “I understand you were speaking from the heart,” according to a person briefed on the exchange.
(Obama Campaign Pushes the Issue of Gay Marriage. The New York Times. May 10, 2012.)


記事のコンテクストから、"get over one's skis"とはやはり”先走った”ということを意味していることは大体分かります。しかしながら、この表現、どの辞書にも載っていません。(といっても手持ちのせいぜい4~5冊の英和や英英、イディオム辞書の類しかチェックできておりませんが・・・。)

5月11日当日は仕方なく諦めたのですが、今日ひょんなことでこの表現のことを思い出し、ネットで検索してみるといくつかの掲示板などで話題になっているのを見つけました。その話題というのが、まさしく件のニューヨークタイムズ紙の記事を引用したもので、こんな表現は聞いたことが無い、というのが驚きでした。さらに、それらが英語のサイトなのですが、英語を母語とする人(その確証はありませんので、英語でコミュニケーションする人たち、と言うべきかもしれませんが)にとってもあまりお目にかからない表現であるということが今日思い切ってこの表現を取り上げてみようと言う気になったきっかけでもあります。

この表現はオバマ大統領自身の発言からの引用なので引用符付きで用いられています。New York Times紙以外での扱いでもこの表現を引用符付きでそのまま(補足説明なしに)用いていること、また記事のタイトルでも引用していることを考慮すると、意味はコンテクストから明らかということなのでしょうか。


Biden apologises to Obama for getting 'over his skis'

"I had already made a decision that we were going to probably take this position before the election and before the convention," Obama said on ABC's "Good Morning America." Biden "probably got out a little bit over his skis, but out of generosity of spirit," Obama said.
(Biden apologises to Obama for getting 'over his skis'. Zeenews.com. May 11, 2012.)


さて、"get over one's skis"という表現についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

コーパス(Corpus of Contemporary American English: COCA)を利用して、"over one's skis"という条件で検索してみるとヒットするのはほとんどが競技スキーの専門誌での用例でした。その中を拾い読みしてみると、どのようにスキー板の上でバランスを取るか、体重移動を行うかといったテクニックの話題が多くありました。

私はスキーが得意な訳では全くありませんが、なるほど、スキー板の上で重心のバランスがとれいている状態("centered over one's skis"などと表現されています)がまずはスキー板を履いて安定するための基本であり、"(getting) over one's skis"、つまりやや前屈みの姿勢になるのは、初心者ではバランスを崩すか、あるいはかなりの上級者がダウンヒルなどの競技でわざと重心を前に持ってくる場合のことである、というところにこの表現の由来がありそうです。

オバマ大統領がこのような、一般にもあまり知られているとは言えない"getting over one's skis"という表現を用いたのは興味深いものがあります。大統領はスキーが趣味なのでしょうか?


2012年6月7日木曜日

ウエスト ― waist circumference

ご自分のウエストのサイズはご存知ですか?私は覚えていません。といいますか、覚えたつもりがしばしば忘れてしまうので、ズボンを買いに行った時にいつも困ります。大きすぎるサイズか小さすぎるサイズを最初に試して取り換えるか、店員に測ってもらう羽目になります。

日本語でウエストと言えば、それはもウエストのサイズ、即ち胴囲(胴回りの大きさ)を指しているものと解釈されます。では英語でもそうかというとちょっと違います。


Waist circumference is strongly and independently linked to diabetes type two risk, even after accounting for body mass index (BMI), and should be measured more widely for estimating risk, researchers from the Medical Research Council (MRC) Epidemiology Unit, UK, reported in PLoS Medicine. The authors explained that overweight people with a large waist, over 102cm (40.2 inches) for men and over 88cm (34.6 inches) for women, have approximately the same or higher risk of eventually developing diabetes type 2 as obese individuals.
(Waist Size, Regardless Of BMI, Linked To Diabetes Risk. Medical News Today. June 6, 2012.)


BMIの数値に関係なく、ウエストのサイズが2型糖尿病に関係している、と題する記事からの引用です。

メタボリックシンドロームという言葉が一般的に広く認知されるようになってきましたが、ウエストのサイズよりもBMIを気にしている人は多いのではないでしょうか。BMIも大事な指標でしょうが、ウエストサイズを見れば糖尿病にかかるリスクを見積もれる、ということのようです。

さて、英語でウエスト(サイズ)を何と言うかですが、"waist circumference"です。

"waist"はあくまで体の構造の一部としての”ウエスト(腰部)”であり、"circumference"(外周の意)という語が必要になるということなのです。私は最初"circumference"を"circumstance"と読み間違えてしまい、ウエスト周囲の状況(!?)などと解釈していました。

"waist"だけでは通じないのかというと恐らくそんなことはないかと思います。ランダムハウス英和辞書では、米語の用法として、”(衣服の)胴囲(の寸法)、ウエスト”という意味が載っています。

しかしながら、American Heritage Dictionaryを見ますと、


The part of the human trunk between the bottom of the rib cage and the pelvis.
The narrow part of the abdomen of an insect.


といった定義はあるのですが、サイズ・寸法を意味する定義はありません。Merriam Websterでも同様です。こうなるとランダムハウス英和の定義には少し疑問が出てきます。

コンテクストがある訳ですから、"waist"という単語だけで通じないということは恐らく無いとは思いますが、コーパスを検索してみる限り、下記のいずれかの表現が誤解がないでしょう。


waist size
waist circumference
waist measurement


ちなみにこちらもよく気にされる測定項目ですが、”ヒップ”というのも、"hip circumference"と表現するようです。

2012年6月6日水曜日

ニューヨークでもバス事故 ― to blame

先のゴールデンウィーク中に関越自動車道で痛ましいバス事故があったことはまだ記憶に新しいところです。ガードレールと防音壁の僅かな隙間にバスが衝突してしまったことで、車体が縦方向にほとんど真っ二つに割かれてしまったような様相を呈した惨状は、高速道路事故の怖ろしさを伝えています。

似たような事故、といっては不謹慎かも知れませんが、やはり高速道路でのバス事故がアメリカ・ニューヨークで発生したらしいことを、Twitterのタイムラインで知りました。この事故では、横すべりしたバスの車体が道路標識の柱に激突し、柱がバスの屋根部分をほとんど切り取ってしまったようにえぐっています。(写真は記事から見ることができます。)


Bad highway design is partly to blame for a Bronx bus crash that killed 15 people, National Transportation Safety Board investigators said today.

In a dramatic computer-generated animation, the NTSB recreated the final moments of the accident, showing how a highway sign post sliced off the top of the bus.

The sign post was just 15 feet away from the travel portion of the roadway.

Usually, such obstacles are at least 30 feet from the roadway, the NTSB says.
(Bill Sanderson. Bad highway design partly to blame for last year's fatal Bronx bus crash: NTSB. New York Post. June 5, 2012.)


乗客15名が亡くなったこの事故ですが、運転手の疲労が事故を招いたという点では関越での事故と共通するものがあります。が、もう1つ、"bad highway design"を要因の1つとして挙げている点がこの記事の焦点です。

今日は、"blame"という単語を取り上げましたが、ごく基本的なこの単語を取り上げたのは改めてその使われ方に着目してみたためです。"blame"を辞書で引くと、他動詞(v.t.)として載っています。

ほとんどの場合、"blame"は他動詞として、目的語には人(人称代名詞)を取り、さらに前置詞"for"以下で責めの内容を記述するという構造を取る、ということで覚えておられる方が多いでしょう。例えば以下の例文です。


Like Brown, DeVore could tap into a network of Tea Party supporters and others who distrust President Obama and blame him for adding to the nation's spiraling debt.
(San Francisco Chronicle. 2010.)


バス事故の引用記事ではちょっと違っており、他動詞ではなく、つまり目的語がなく、自動詞的に用いられていることに注目して下さい。


Bad highway design is partly to blame for...


という構造になっていますが、"blame"の目的語にあたるもの(ここではbad highway design)が主語に来ています。これは解釈すれば、


Bad highway design is responsible for...


と言っているのとほぼ同じです。そう思いながらランダムハウス英和辞書を見ていたら、"be to blame"という見出しでエントリがありました。また、American Heritage Dictionaryでも、"to blame"はイディオム(idiom)として載っています。

be動詞に続く"to"+不定詞、という構造自体はさほど珍しいものでもありません。そのような例は枚挙にいとまがありません。


So one way to check to make sure it's healthy is to look at the tree and inspect it.
(NBC Today. 2010.


しかしながら、この引用例と上記の"to blame"の用法は異なることはお分かりいただけると思います。つまり("blame"の場合は)本来の他動詞として用いられる場合の目的語が文の主語になっているという点です。

そのような特徴を持つがゆえにイディオムとしてのエントリが特別に設けられているのだと勝手に解釈しているのですが、このような構造を取る動詞が"blame"の他にもあるか探しています。


2012年6月5日火曜日

バウンドかバウンスか ― bouncer

"bouncer"という単語があります。バウンド(bounce)するもの、ということですが、”バウンサー”(bouncer)という単語から何を想起しますか?


Police have arrested one of two men suspected of fatally beating a bouncer who denied them entry into a Redondo Beach bar after last call.

Police Sgt. Shawn Freeman said Sunday that 30-year-old Alejandro Avina was arrested Saturday. He was booked for investigation for murder and is being held on $1 million bail.
(Calif man arrested in fatal beating of bar bouncer. San Francisco Chronicle. June 3, 2012.)


文脈から大体分かりますね。"bouncer"とはいわゆる用心棒の役割をしている人のことだと思われます。ランダムハウス英和辞書でも、


(酒場・ナイトクラブなどの)用心棒


とあります。American Heritage Dictionaryでは、


Slang. A person employed to expel disorder persons from a public place, especially a bar.


とあり、私は出会ったことはありませんが、屈強なコワイお兄さんを想起します。

用心棒役のことを何故"bouncer"と呼ぶのか、について考察してみました。動詞である"bounce"を調べると、この動詞自体に”(人を)追い出す、つまみ出す”(To expel by force; to dismiss from employment)という俗語の意味があることが分かります。

この意味での用法を確認するのは然程困難なことではありません。


His court-appointed backup lawyer, Anthony Jackson, wound up playing a much larger role in the trial than anticipated, filling in on the numerous occasions when the querulous Abu-Jamal was bounced out of the courtroom for disrupting his own case.
(Sara Kelly. Innocence by Association. Mother Jones. 1999.)


さて、冒頭で”バウンド(bounce)するもの”と書きながら、果たして”バウンド”なのか、それとも”バウンス”なのか、ということが気になってきました。

日本語では、例えば、ボールがワンバウンドする、などと言うように、”バウンド”の方が定着していると思います。広辞苑を見ても、”バウンド”のエントリはありますが、”バウンス”はありません。

英和辞典では、"bound"、"bounce"双方のエントリがあり、しかも定義が似通っているのでややこしいのです。"bound"、"bounce"双方に、ボールが跳ねる、バウンドする(させる)という意味があります。

ここで語源に目を向けてみましょう。

"bound"は、”跳ねる”という意味の中期フランス語bondir、さらに遡ると(音が)うなるという意味のラテン語bombitareに由来します。

一方、"bounce"ですが、こちらは”叩く”(to beat)という意味の中期英語bounsenに由来します。"to beat"は”やっつける”という意味にも解釈できますが、そうしますと"bouncer"の意味も何となく得心が行くと思いませんか?


2012年6月4日月曜日

(成人向け) ― hanky-panky

えいご1日1語で取り上げる単語とそれにまつわる話題は多岐に渡ります。意図的にではありませんが成人向けの話題になることも増えてきましたので、”成人向け(!)”というタグを新設しました(笑)

ということで、今日は成人向けの記事を引用しますので18歳未満の方はこれ以降はお読みにならないでください。

まずは記事のタイトルから。


Georgia man’s death during threesome nets his family $3M in trial
(Erik Ortiz. New York Daily News. May 31, 2012.)


死亡男性の家族が訴訟で3百万ドルを手にした、と読めます。男性はなぜ亡くなったのでしょうか?

"during threesome"とあります。分かる方には分かりますね?微妙な表現なので取り上げるのも憚られますが、辞書を引けば載っています。やましい単語ではありません。"three"(3人)でのプレーです。”3人”が参加する(絡む)ものならば何でも構いません。が、この記事でもそうですが、この単語は大抵の場合、特別な意味で使われます。それは記事を読んでいけばすぐに分かります。

さて、記事内容です。


The family of a Georgia man who died when his heart couldn't take a three-way sex romp was awarded a hefty $3 million payout by a jury, according to reports.

William Martinez's estate was originally seeking $5 million in a medical malpractice case that claimed a cardiologist failed to warn the 31-year-old to stay away from physical activity.

(中略)

Martinez, a husband and father of two, was engaged in a threesome with a friend and another woman who was not his wife, according to the newspaper. He died March 12, 2009.

The week before, Martinez reportedly went to the CardioVascular Group in Lawrenceville, Ga., complaining of chest pains that shot up his arm, said CBS affiliate WAOK in Atlanta.

A test was scheduled for eight days later, but the day before the test he decided to engage in the extramarital hanky panky, according to reports.

His attorneys argued that attending cardiologist Dr. Sreeni Gangasani neglected to tell Martinez to refrain from getting too physical — presumably including any sexual activity — before the test was performed.
(Erik Ortiz. Georgia man’s death during threesome nets his family $3M in trial. New York Daily News. May 31, 2012.)


お分かりいただけましたね?

何と、心臓に問題を抱えていた男性が検査を控えた前日に及んだ性行為が元で死亡に至ったのは、医師が適切な処置(警告)を怠ったためであるという主張が一部認められ、遺族に3百万ドルが支払われることになったというものです。

記事中の、"the extramarital hanky panky"という表現が面白いと思いました。

"hanky panky"を引くと、


いんちき、ぺてん
不倫
愚行、たわ言
性行為、セックス遊び


といった意味が羅列されています。(ランダムハウス英和辞書)

"extramarital"という形容付きですから、死亡した男性の行為と言うのはあまり世間体の良いものではありません。

"threesome"という表現と、"extramarital hanky panky"という表現と、どちらが上品なのか、新聞記事の表現として適しているのか分かりませんが、"threesome"という単語はやましい表現ではないとは言え、かなり際どい表現のように思えます。タブロイド紙として認知されているNew York Daily Newsならではの見出しでしょうか。

一方、"extramarital"(婚外の)というちょっと固く響く形容詞に、"hanky panky"という口語的な表現を組み合わせているのは、これまたライターのちょっとしたふざけが入っているように思われますが、いかがでしょう?

さて、この"hanky panky"という表現はいわゆる"reduplication"(重複形)と呼ばれる単語に類するもので、似たような単語として、hocus-pocusやdilly-dallyなど、他にも沢山あります。


2012年6月1日金曜日

あり得ない! ― a "fat" chance

まずは記事の引用から。太った女性が頑張って体重を減らして痩せても太っていたという印象はその後もつきまとう、という女性にとっては甚だ嫌な話です。


Formerly obese women have a fat chance of shedding stigma about being overweight, researchers say.

Prejudice against women who used to be heavy persists even when they’ve lost lots of weight, according to a study published recently by researchers from the University of Hawaii at Manoa, the University of Manchester and Monash University in Australia.
(Brian Browdie. Prejudice against heavy women persists even after weight loss, study finds. New York Daily News. May 31, 2012.)


引用の冒頭に出てくる、"a fat chance"という表現をご存知でしょうか?

話題が話題だけに、"fat"な"chance"とはしゃれの類かと思いましたが、そもそも意味しているところが掴めないでいました。そもそも、"fat"(太っている)と"chance"が結び付くということが理解できません。

"fat"を引くと、太っているという意味のほかに、豊富な、実りがある、割のいい、うまみのある、などの様々な意味がありますが、やはりどうしても"chance"と結び付きません。といいますか、記事のタイトルからすると、"chance of shedding stigma"が"fat"であるというのは意味的に正反対のことを言っているようになってしまうと思われ、しっくりこないのです。

そこで"fat"のエントリをもう少し読み進めますと、末尾のほうにちゃんとエントリがあるではありませんか!

"a fat chance"とは反語的な表現で、逆に見込みがほとんど無いことを意味する表現でした。多くの場合文頭に置かれ、続くステートメントを否定する意味で用いられます。

American Heritage Dictionaryにもエントリがありますが、"Very little or no chance."という定義になっており、Slangとされています。

もう少し用例を見てみたいと思います。


People approach Jared, too. But Jared isn't a three-term governor who was scheduled to give a speech in Iowa yesterday evening and traveled to the state three times in 2005 and New Hampshire once. Fat chance of Jared running for president, in other words.
(Washington Post. 2006.)


下記の例では、単独で使われています。

As someone who spent years opposing American military action in Vietnam, I find his point of view naive and counterproductive, even self-righteous. Does Scherer-Emunds really believe that love could have worked against Adolf Hitler? Fat chance.
(You may be right. US Catholic. 2002.)


日本語で言えば、”あり得ない!”という批難を含む表現でしょうか。