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2012年7月31日火曜日

キーウィ ― Kiwi

キーウィ(kiwi)と聞いて真っ先に思い浮かべるのは果物のキーウィでしょうか?間違いではありませんが、英語ではkiwi fruitというのが正しいようです。

単に"kiwi"と言う場合、”飛べない鳥”として有名なニュージーランドの鳥のことを指します。このキーウィはニュージーランドの国を象徴する鳥、国鳥です。

そして、"Kiwi"と大文字で始まるスペルの場合は、ニュージーランド人自体を指すのにも使われます。


Miss Universe New Zealand dumped because she's not a Kiwi

THE South African-born Miss Universe New Zealand winner has been stripped of her tiara after failing to gain citizenship to her adopted country on time.
(Courier Mail. July 31, 2012.)


ニュージーランドのミスコンで優勝に輝いた女性が実はニュージーランド国籍ではなかったということで、優勝をはく奪されたというニュースです。国籍が無いことは初めから分かっていたことだったようですが、事後の(?)国籍取得手続きが認められなかったため、優勝が取り消しとなり、結局は次点だった別の女性が優勝となったようです。

記事の写真を見るととても綺麗な女性で、別に国籍なんかどうでもいいじゃないかとも思うのですが、やはり国民感情が許さないのでしょうか?

ニュージーランド人のことを"Kiwi"と表現するのは差別でも軽蔑でもなく、むしろ親愛を込めて"Kiwi"という表現が使われるのだそうです。飛べない鳥、というとどちらかと言えばややネガティヴなイメージがありますが、"kiwi"は元々ニュージーランドの軍隊のバッジのシンボルとして採用されたそうで、以降、この鳥は同国民の矜持と共にあるのです。

そういうわけですから、"she's not a Kiwi"というヘッドラインの表現には、ある種の落胆(disappointment)が表現されているとも言えます。


2012年7月30日月曜日

stoush

グーグルニュースのオーストラリア版を斜め読みしていると、時々見慣れない単語に出会うことがあります。

そうなんです!オーストラリア英語やニュージーランド英語として知られる特異的な単語、表現に出会うことがあるのです。

当ブログでも”豪俗語”というカテゴリでまとめていますが、今日取り上げる単語、"stoush"もその1つです。

では、下記の引用をご覧ください。


Gina Rinehart must pay children's costs in legal stoush over family trust

MINING magnate Gina Rinehart has been ordered to pay the legal costs of three of her children who are seeking to oust her as trustee of the multi-billion dollar family trust.

In a NSW Court of Appeal judgment handed down today, Australia's richest person was also ordered to pay the costs of several media companies who intervened in the case, including the ABC, Fairfax Media, Nine Network and Nationwide News.
(The Australian. July 20, 2012.)


"legal stoush"とありますので記事のコンテクストからも意味するところは大体想像がつきますが、多くの方にとっては初めて見る単語ではないでしょうか?

オーストラリア英語であるためか、American Heritage Dictionary、Merriam Websterではエントリがありません。また、研究社の大英和にも載っていませんでした。

唯一、ランダムハウス英和では、”豪・NZ 話”、つまりオーストラリアとニュージーランドにおける口語表現ということでエントリがあり、


口論;けんか


となっています。由来(語源)については、”おそらく擬声語”とあります。

色々とネットで検索してみると、興味深い解説がABC(Australian Broadcasting Corporation)のサイトにありましたので引用します。


There was a time when “stoush” (meaning “fight”) was a very common piece of Aussie slang.

But does anyone still say "stoush"?

Stoush was both a noun and a verb: to stoush someone was to bash them or fight them, while a fight was called a stoush. It probably had its highest currency in the late 19th early 20th centuries. In typical Aussie fashion the Great War of 1914-18 was called “the big stoush”. The earliest citation is from a report in the Bulletin in 1893. The source of the word remains a mystery, but the English Dialect Dictionary records a somewhat similar word “stashie” meaning “uproar” or “quarrel”. So stoush may have started life as an English dialect word that immigrated, changed, and then lived on here while it died out back in the British Isles.
(ABCのサイトより引用)

ランダムハウス英和が"stoush"の語源を擬声語と言っているのに対して、この説明では、イギリス方言の"stashie"に由来を見ています。ランダムハウス英和にもエントリがある、"stushie"("a"と"u"の違いはありますが)はスコットランド地方の表現で、”騒動、大騒ぎ”という意味です。

また、上記の説明において、要はオーストラリアでも今となってはあまり使われない単語のようなのですが、冒頭引用したニュース記事のヘッドラインで使われていても読む人は困らないんでしょうか??


2012年7月27日金曜日

高くつきますよ ― take a toll on

"take a toll on"という表現があります。"take a toll of"という場合もあり、続く前置詞が"on"ではなく、"of"になっているものですが、意味は同じで、大きな打撃(被害)を与える、という意味で用いられます。

まずは以下の引用をご覧ください。


Shift work takes a toll on heart

People who work shifts should be vigilant about risk factors like smoking, high cholesterol, and high blood pressure, researchers advise.

People who work the graveyard and other non-9-to-5 shifts may face a higher risk of heart attacks, a Canadian review suggests.

Shift work disrupts our body clocks and can wreak havoc with work-life balance. But research on its association with health problems like high blood pressure, high cholesterol and Type 2 diabetes has been conflicted, partly because investigators use different methods, populations and definitions.

Thursday's issue of the British Medical Journal includes what an Ontario-led team called the "largest synthesis of shift work and vascular risk reported to date."
(Shift work takes a toll on heart. CBC News. July 26, 2012.)


シフト勤務の労働者にとってBad newsですが、シフト勤務の労働者は一般的な労働者に比べてheart attack(心臓発作や心筋梗塞)になるリスクが高いのだそうです。

引用した記事のタイトルで、"take a toll on"という表現が用いられています。"toll"とは、高速道路での"tollgate"の表現でもおなじみのように、通行料金のことを意味しています。字義通りに解釈するならば、前置詞on以下の名詞から通行料(特に通行料というものに限るわけではなく、要は料金ということですが)を徴収するということになります。料金徴収、イコール、ダメージという連想は興味深いものがあります。ぶっちゃけて言えば、対処しないで放っておくと高いものにつきますよ、ということではないでしょうか。

"toll"の前に形容詞による修飾があるパターンもあります。例えば以下のようなものです。


The fighting in Syria, which pits the lightly armed rebels against the Russian- and Iranian-supplied Syrian military has taken a heavy toll on civilians. The United Nations says more than 8,000 have been killed since demonstrations against al-Assad began last March.
(McClatchy Newspapers. 2012.)


"heavy"という形容詞による修飾ですが、被害が甚大であったことを付加しています。同種の表現として、


take a tremendous toll on
take a terrible toll on
take a huge toll on


など色々ありますが、いずれも被害の程度を強調するものです。


2012年7月26日木曜日

glass ceiling

一昨日の記事で米国のヤフー社の新しい女性CEOについての記事を引用しましたが、その際に取り上げたいと思っていた表現がもう1つありました。

それは"glass ceiling"という表現なのですが、ビジネスの現場におられる方々の中にはご存知の方も多いかと思います。通常、会社などの組織における昇進の頭打ち、ここまでは上がれるけれどもそこからさらに上には行くことができない”限界”の意味で用いられますが、特に女性の昇進について言われる場合に使われる表現です。


Until people, and articles such as this one, stop assuming that women are the main caretakers of children, they cannot expect women to break the glass ceiling in the workplace.
(Letters: To break glass ceiling, also dispel dad stereotype. USA Today. July 22, 2012.)


注: 上記の引用は件の女性CEOについてのUSA Today紙の記事ですが、(記者による記事の本文ではなく)読者の意見(いわゆる投書の類)として紹介されているものです。

"glass ceiling"とは字義通りに解釈すれば”ガラスの天井”ということになりますが、あるレベルより上に行くことを阻む、見えない(透明の)天井、ということになります。

さて、昨日の記事で米国初の女性宇宙飛行士のSally Rideさんの死亡を伝える記事を取り上げましたが、その記事のタイトルが下記のようなものでした。


American Woman Who Shattered Space Ceiling
(The New York Times. July 23, 2012.)


お分かりでしょうか?

ここで、"space ceiling"という表現が使われていますが、これは"glass ceiling"のパロディ(しゃれ)です。

記事では、米国初の女性宇宙飛行士ということで色々なチャレンジがあったようですが、その逸話が紹介されています。"shatter"(粉々に砕く)ということで、それまで男性社会であった宇宙飛行士の世界でRideさんが初めて活躍したことを表現しています。

ヤフーCEOのMayerさんにしろ、米国発の宇宙飛行士のRideさんにしろ、ガラスの天井を見事に突き破ったお二人ではないかと思います。


2012年7月25日水曜日

make the cut

アメリカにおける初の女性宇宙飛行士のSally Rideさんが癌のため亡くなったという記事を昨日見たのですが、今日もグーグルニュースのトップニュース一覧に出ており、話題性の高さが伺えます。

数多ある記事からNew York Times紙の記事を引用します。


Sally Ride, the first American woman to fly in space, died on Monday at her home in San Diego. She was 61.

The cause was pancreatic cancer, her company, Sally Ride Science, announced on its Web site.

Dr. Ride, a physicist who was accepted into the space program in 1978 after she answered a newspaper ad for astronauts, flew on the shuttle Challenger on June 18, 1983, and on a second mission in 1984. At 32, she was also the youngest American in space.

(中略)

Dr. Ride was finishing studies at Stanford University — she had degrees in physics and astrophysics (and also English) — and looking for a job when she saw NASA’s advertisement. She looked at the qualifications and said, “I’m one of those people,” she told The New York Times in 1982.

She applied, and made the cut.
(Denise Grady. American Woman Who Shattered Space Ceiling. The New York Times. July 23, 2012.)


著名人の死亡記事の通例ですが、Rideさんのバイオグラフィーに触れられています。Rideさんは物理学者だったようですが、新聞広告でNASAの宇宙飛行士募集を知り応募したことがきっかけだということです。

さて、引用の最後に、


She applied, and made the cut.


と、簡潔に書かれています。(NASAの採用試験に)応募し、そして"made the cut"ということですが、この"make the cut"という成句をご存知でしょうか?

ランダムハウス英和辞書を引くと、米俗語ということで、”脱落しないで選手になる”とあります。また、ジーニアス英和大辞典では、”(なんとか)目的を達成する、成功する”とありますので、コンテクストからも明らかですが、RideさんがNASAの採用試験を突破したということは分かります。

ただ、よく分からないのは、合格するということがなぜ"make the cut"なのか?ということではないでしょうか。もう少し調べてみました。

ジーニアス英和やオンライン辞書などによると、この表現はゴルフのプレーに由来するらしく、トーナメントで基準点を満たしてトーナメントに残る、予選を通過する、というところから来ているそうです。

では、"make the cut"の"the cut"という名詞は何を指しているのだろうか、という疑問が次にわいてきます。

ここからは想像なのですが、この成句における"the cut"は動詞の"cut"が意味する、切る、切断する、という基本的な意味の名詞であると考えます。では何を切るのかというところが明示されていないことがこの表現を直感的に理解するのを妨げているような気がするのですが、基準点、選考基準、いわゆるボーダーラインのことであろうと思います。"the cut"とは、基準に据えられたラインをぶっちぎる、つまりボーダーラインに達する、突破する、ということであろうと思います。


2012年7月24日火曜日

他動詞の"deal" ― deal a blow to~

"deal"という動詞で最初に思い浮かべるのは、"deal with"という自動詞の動詞句です。学校の英語で、前置詞with以下にくる名詞を”扱う”、”処理する”、という意味で暗記するのが普通かと思います。

一方、動詞の"deal"にはもう1つ、配る、分配する、という意味の他動詞の意味・用法もあります。こちらの意味になじみがあまりないのは私だけでしょうか?

下記の記事を読んだ時に一瞬戸惑いました。(勉強不足!?)


The most closely watched experimental treatment for Alzheimer’s disease proved ineffective in its first large clinical trial, dealing a blow to the field, to a theory about the cause of the disease, and to the three companies behind the drug.

Pfizer, which is one of those companies, announced late Monday that the drug, bapineuzumab, did not improve either cognition or daily functioning of patients compared to a placebo in the Phase 3 trial.
(Andrew Pollack. Alzheimer’s Drug Fails Its First Big Clinical Trial. The New York Times. July 23, 2012.)


"deal a blow"という表現を知らなかったということにつきるのかもしれませんが、他動詞の"deal"を意識すれば戸惑うほどではないかもしれません。

引用した記事ですが、製薬大手のファイザーが実施していた、アルツハイマー治療薬の大規模臨床試験で、治験薬が疾患に対して効果がないという結果が出たそうです。

この結果は関係者には大きな打撃です。"dealing a blow to"という表現は文字通り、打撃(a blow)を分配する=お見舞いする(deal)ということであり、影響を受けるのは、前置詞to以下の人たち(関係者)ということになります。

この表現を知っていれば当たり前の話になってしまうのでわざわざ取り上げるような価値もなさそうなものですが、この記事での用法の面白さは前置詞toで示される関係者が3つの方面に渡っていることではないかと思います。


to the field,
to a theory about the cause of the disease,
and to the three companies behind the drug


(臨床)現場の人達とアルツハイマーという疾患の発症原因を云々する人々、そして開発に携わった製薬会社(3社!)、まさに"deal a blow to"という表現の出番!ではないでしょうか。


2012年7月23日月曜日

何と訳す? ― poster child

経営が混乱している米国ヤフー社の新しいCEOに、同社にとってはライバル社でもあるグーグルの元幹部社員だったMarissa Mayer氏が起用されたことが話題になっています。そしてさらに話題を沸騰させることになったのが、同氏が妊娠6カ月であることを公表するツイートでした。


Pregnant Yahoo CEO now 'poster child for working mothers'

Marissa Mayer's pregnancy stirs chatter about the woman who can 'have it all,' but must still face the reality of juggling multiple responsibilities.

As far as Twitter messages go, it didn't seem extraordinary. "Another piece of good news today," tweeted the expectant mom, announcing to her online followers that she and her husband are awaiting a baby boy.

But this wasn't just any excited mom-to-be. This was 37-year-old Marissa Mayer, the newly named CEO of Yahoo – obviously a huge achievement for anyone, but especially for a woman in the male-dominated tech industry. And she was about six months pregnant, to boot.
(Jocelyn Noveck. Pregnant Yahoo CEO now 'poster child for working mothers'. Maine Sunday Telegram. July 22, 2012.)


さて、引用記事のヘッドラインに使われている、"poster child"という表現を今日は取り上げたいと思います。この表現をご存知ですか?

手持ちの英和辞書にはエントリがなかったのですが、意味するところは何となく想像がつくと思います。Merriam Websterではエントリがあり、下記のように定義されています。


1: a child who has a disease and is pictured in posters to solicit funds for combating the disease

2: a person having a public image that is identified with something (as a cause)


この表現はごく最近のものらしく、Merriam Websterによれば1969年が初出だということです。

最初の定義(1)はこの単語の元々の意味です。"poster child"とは字義通り、ポスターや広告を飾る子供の写真のことです。何のポスターかというと、病気や障害を抱える子供たちを写したもので、寄付金や募金を募るものであり、直接的には言及されていませんが、そうした境遇にある子供を、人々の関心に訴えかけるために利用しているというような、何となく後ろ暗いイメージがあるように思えます。

そして2番目の定義ですが、何か(something)に重なる一般的なイメージを持つ人物、とやや硬い印象の定義がされていますが、何かというのは”大義”(a cause)のことであり、ややひねくれた見方をすれば、大義のために世間一般受けするイメージを持つ人物、というようなことになり、恐らく最初の意味が持つ”何となく後ろ暗いイメージ”を引きずっているようにも思えますが、さて皆さんはどう思われるでしょうか。

さて、この"poster child"を何と訳したものでしょうか?

インターネットを検索していますと、”典型”、とか、”広告塔”といった訳が目に付きます。なるほど、という感じがしますが、いまいちしっくりと来ない感じがします。

先に引用したヤフーの女性CEOに関して言えば、"poster child for working mothers"という部分ですが、Mayer氏が大手企業のCEOというキャリアの頂点に立ちながら、同時に妊娠していることを公表し、職場における男女平等の問題や、ワークライフバランスの問題など、女性と仕事を巡るあらゆる問題をぎゅっと凝縮したといいますか、全てを象徴するような、そんな存在になっていることを指していると思われます。”広告塔”はちょっと合いませんが、"典型”は近いかもしれません。が、もっといい表現はないものでしょうか。

"poster child"について、もう少し用例を見てみました。


Still six years away from mass production, the hydrogen-powered Borrego is a poster child for the South Korean government's splashy new plans to build its economic future on green foundations.
(Christian Science Monitor. 2009.)


Borregoというのはエコカーのブランドのようですが、この記事のコンテクストならば、”広告塔”というような訳語も近いかもしれません。


It has become the poster child for the power of social networks, personalized websites where individuals share their profiles and interests with friends and business associates. Social networks are used by two-thirds of the estimated 220 million online users in the USA, says Karsten Weide, an analyst at IDC. An estimated 200,000 new folks sign up for Facebook each day.
(USA Today. 2007.)


この引用記事における、"It"とはフェースブックのことです。"poster child for the power of social networks"ということですが、ここでの訳は単に”象徴”のような日本語になるでしょうか。


2012年7月20日金曜日

海の日特集(5) ― boil the ocean

海の日特集は本日が最終です。

今日取り上げる表現は、"boil the ocean"というフレーズ(成句)なのですが、ご存知でしょうか?たぶん辞書には載っていないと思います。

さっそく使用実例を。


Aussie marketers know they need to do better here but many aren't getting started because they think they have to come up with a huge company-changing strategy. My advice is to not try to boil the ocean but start by looking at what data you have, and seeing if you can use it to inform your marketing better.
(Nick Leeder, Managing director, Google Australia and New Zealand. The Australian. July 2, 2012.)


"boil the ocean"の意味が何となく掴めますか?

文字通り訳すならば、海洋(the ocean)を沸騰させる(boil)、ということになりますが、イメージがわきますか?わきませんよね?そうです、それが"boil the ocean"の意味するところで、海洋の水を沸騰させるなどという、現実的に不可能で、とても海のものとも山のものともわからないようなことを考えたり、計画することを意味しています。

一般的な英和辞典、英語辞典に載っていない表現なのですが、ネット辞書では取り上げているようでしたのでその定義を引用します。


To attempt something that is way too ambitious, effectively impossible. An idea too broad in scope to accomplish.
(Urban Dictionary. urbandictionary.comのサイトから)


分かりやすい、明快な定義だと思います。

さて、この"boil the ocean"という表現ですが、ビジネスで使われることが多い(というか、ビジネスマンが好む?表現)ようです。

上記の定義で引用したUrban Dictionaryの補足説明によれば、


Jargon often used by self-important corporate middle managers prone to bloating their speech with meaningless and unnecessary buzz-words.


ということですから、"boil the ocean"という表現は実は勿体ぶった表現と捉えられる面があると考えた方がよさそうです。下記の記事もこの表現に対して否定的です。


"Boil the Ocean." Why not just say "waste time," which is essentially what this phrase means? But no, the point is made much better if it sounds like something a creepy James Bond villain would do.
(Maryam K. Ansari. 5 of the Creepiest Business Cliches. Reuters. June 20, 2012.)


この引用記事のタイトル、"5 of the Creepiest Business Cliches"からもお分かりのように、ビジネスマンが使う勿体ぶった表現を取り上げている記事で面白いのですが、"boil the ocean"が辞書に載らないのにもそのあたりに理由があるのでしょうか!?

これで7月16日月曜日から5日間に渡りました海の日特集を終わります。偶然ですが、実は今日7月20日が元々の海の日でした。(改正祝日法による、いわゆるハッピーマンデーで今年は7月16日でしたが、改正以前は7月20日が海の日でした。)

それではよい週末を!


2012年7月19日木曜日

海の日特集(4) ― in the offing

海の日特集、4日目の今日は、"in the offing"という成句を取り上げます。

まず、"offing"の意味からですが、"offing"は名詞で、日本語では“沖、沖合い”を意味します。もちろん、副詞の"off"から来ています。副詞の"off"にも“(陸地から離れて)沖に”という意味があります。

American Heritage Dictionaryの定義がわかりやすいので、引用します。


The part of the sea visible from shore that is very distant or beyond anchoring ground.


訳すと、“陸から見えるけれども、陸からは大分離れている海上、もしくは錨を下して停泊する浅瀬より向こうにある海上”、とでもなるでしょうか。簡潔明快な定義だと思います。

さて、"in the offing"という成句になると、意味は、


近い将来に起こりそうな、やがて起こりそうな


となります。陸にはたどり着いていないけれども、こっちにやってくるのが沖の方に見える、ということですね。

では、使用例を。


It’s always so much fun when there’s a new Apple product in the offing. The rumours of what it might be, the specs, the price points, those rumours simply proliferate in the weeks leading up to the actual announcement.
(Tim Worstall. Links 18 July: Apple iPhone 5 Rumours. Forbes. July 18, 2012.)


これから起こりそうなことは何も良いことだけに限りません。悪いことが起こりそうな場合にも、"in the offing"が使われます。


After selling 4,134 planes the past four years, Boeing Commercial Airplanes, the company's jetliner division, is racking up more cancellations than orders for new planes this year. Industry analysts warn that more cancellations may be in the offing as people are flying less in the global recession.
(USA Today. 2009.)


非常にイメージがしやすい成句ではないでしょうか。


2012年7月18日水曜日

海の日特集(3) ― maritime

海の日特集、3日目の今日は、"maritime"という単語を取り上げたいと思います。

言わずと知れた、海上保安庁の英語名称が"Maritime Safety Agency of Japan"であり、また諸外国の同様の機関の名称にも"maritime"という単語が用いられていることが多いですが、故に比較的馴染みがある単語ではないでしょうか。(海上保安庁の英語名称については現在は"Japan Coast Guard"ということになっているようですが、元々は、"Maritime Safety Agency of Japan"でした。)

さて、"maritime"という単語が、"mari-"と"-time"という2つの部分から成り立っているように見えてしまう(事実、そうなのですが)ことは仕方がないことだろうと思います。

実際、"mari-"は、ラテン語で海を意味する"mare"に由来しています。

では、"-time"は、時刻を意味する"time"に由来するのでしょうか?

答えはノーです。

辞書の語源欄でも確認できるかと思いますが、"maritime"の、"-time"は、時刻の"time"ではなく、ラテン語で最上級を意味する語尾である、"-timus"なのです。

このラテン語の最上級語尾である"-timus"が使われている英単語として、"ultimate"があります。

"maritime"の場合の語尾"-timus"は、“~に密接に関連している”、という意味で用いられているようです。つまり、海(mare)に関連した(-timus)、ということで、海上の、海洋上の、という意味になっているものです。


On the same day that Japan’s foreign minister was due to meet with his Chinese counterpart at the ASEAN security talks last week, three Chinese maritime patrol ships entered Japanese waters near the disputed Senkaku Islands.
(Kirk Spitzer. The South China Sea: From Bad to Worse. Time. July 15, 2012.)



2012年7月17日火曜日

海の日特集(2): エーゲ海と多島海 ― pelagic

今週は海に因む表現を特集してお送りしております。

さて、2日目の今日取り上げるのは、恐らく聞きなれない、見慣れない単語ではないかと思います。釣りが趣味の人は馴染みがひょっとして馴染みがありますか?


The controversial commercial fishing factory ship FJ Margiris is heading for Australian waters to fish on a scale never seen in this country before.

The massive vessel has been linked to over fishing in other parts of the world and recreational anglers in Tasmania are worried she will decimate stocks of the small schooling fish that are a very important link in the food chain for our endangered blue fin tuna and other pelagic species.
(Scott Levi. The Big Fish takes a look at the big fishing factory ship. ABC Sydney. July 14, 2012.)


"pelagic"という単語なのですが、“遠洋の”という意味の形容詞です。語源はギリシャ語のpelagos(海)に由来します。

私自身、"pelagic"などという単語を見るのは初めてでしたが、スペルから何となく"archipelago"(多島海)という単語を思い出したので調べてみたら、やっぱり!

"archipelago"という単語を学生時代に丸暗記したことのある方は多いと思いますが、この単語は接頭辞の"archi-"とギリシャ語のpelagos(海)が結合したものです。つまり、"pelagic"と語源を共通にするものです。

興味深いのですが、この語源分析からは、"archipelago"は“主要な、第一の”(archi-)、“海”となるはずですが、現代の意味では多島海とされています。

実は、"archipelago"はイタリア語で元々エーゲ海を指す固有名詞でしたが、エーゲ海に多数の島が見られることから、意味が転訛し、島の多い海、つまり多島海、となったものです。

ちなみに、“遠洋”の対義語は“近海”ですが、こちらは英語では、"neritic"という形容詞があります。語源はギリシャ神話の登場人物Nereus(海の老人と言われた海神)、もしくはNereid(Nereusの娘の1人)に由来します。



2012年7月16日月曜日

海の日特集 ― between the devil and the deep blue sea

今日は月曜日ですが、海の日の祝日でお休みを満喫されている方も多いかもしれません。

九州の豪雨は未曽有の被害をもたらしていますが、わたくしの住んでいる関東では概ね晴れの連休となり、梅雨明けのような暑い日々となっています。

さて、今週は海の日に因んで、英語での関連表現を取り上げてみたいと思います。

初日の今日取り上げるのは、


between the devil and the deep blue sea


という成句です。日本語では、進退極まって、とか、にっちもさっちも行かなくなって、という表現がよく使われます。また、少し文学的な表現ですが、前門の虎、後門の狼、というような表現もあります。

American Heritage Dictionaryの定義が非常に分かりやすいので見てみましょう。


idioms. between the devil and the deep blue sea. Between two equally unacceptable choices.


要は、"two equally unacceptable choices"ということなのです。

では、使用例を。


THURSDAY’S PUZZLE — Here we are, stuck in the middle of the week (sort of) together, and here’s where it starts to get tough. A few question marks pop up after some clues to indicate the presence of wordplay, the entries are ramped up, and the theme … well, anything could happen on a Thursday.

Today’s debut by Pawel Fludzinski is a romp through three idioms that all mean something like “caught between two undesirable outcomes.” We are potentially caught between A ROCK AND A/HARD PLACE, THE DEVIL AND/THE/DEEP BLUE SEA, and SCYLLA/CHARYBDIS. Not only that, but all three entries are split and placed right next to each other, so you might be able to get caught between these phrases if you inhale and are really skinny to boot.
(Deb Amlen. Stuck in the Middle. The New York Times. July 16, 2012.)


偶然にも同種の表現が出てきました。"between the devil and deep blue sea"という表現の他によく使われるのが、


between a rock and a hard place
between Scylla and Charybdis


という成句です。最初の表現が一番よく見られるものではないでしょうか。2番目の成句はギリシャ神話にちなむものです。

ところで今日の表現、"between the devil and the deep blue sea"について、何故、"devil"(悪魔)と"deep blue sea"(深海)なのでしょうか?

この表現の由来には諸説あるようですが、1つには船乗りの用語であると言われています。"devil"とは、船の外板を張る上で防水工事の非常にやりにくい場所のことを指すそうです。文字通り危険を冒して防水工事を行う訳で、困難な作業をするか、(防水工事の不備で)海底深く沈んでしまうか、という二者択一、という意味に発展したのでしょう。

もう1つの引用例を。


Social workers say the fathers are motivated by greed. "They use their daughters for money," said one social worker. "These girls are being exploited." The fathers, including Nasreen's, argue that the marriages offer an escape from poverty -- for the daughters as well as the rest of the family. "These girls are caught between the devil and the deep blue sea," said M.A. Majeed, regional manager of Al-Ameen Islamic Financial and Investment Corp., which sponsors vocational training programs to assist poor Muslim youth. "They are the children of parents with almost nothing to subsist on. Even the most wretched house in the Persian Gulf is better than the slums of Hyderabad."
(The Washington Post. 1994.)


今週のテーマにご期待下さい。


2012年7月13日金曜日

アメリカ発、足指の整形!? ― toebesity

唐突ですが、ご自分の足にコンプレックスをお持ちの方はいますか?

ちなみに足(脚)の長さや太さの話ではありません。足の指の形状のことです!

私自身のことから申し上げますと、短足で、太股がちょっと太めだと自分で思っていますがコンプレックスと言うほどのものでもありません。まして、足の指についてくよくよと悩むなんてことは考えられないのですが、アメリカでは足の指の整形が流行っているということです。


When patients seek out cosmetic surgery from New York-based Dr. Oliver Zong, they're often looking to remove fat, but not from their bellies or thighs.

Zong is a podiatrist, and one of his specialties is slimming down people's fat toes -- "toe-besity," he calls it.

He's been in practice for about a decade, and when he started, toe reshaping was unheard of.
(Kim Carollo. 'Toe-besity' Surgery on the Rise. ABC News. July 11, 2012.)


記事によりますと、足指の整形手術を求めてニューヨークの足専門医(podiatrist)であるDr. Zongの元を訪れる”患者”は、自身の足指に対するコンプレックスを語るそうです。

さて、このような足指の整形手術を求める患者の訴えるところを、


"toe-besity"


と表現しています。すぐお分かりになると思いますが、これはしゃれですね。太くて醜い足の親指を何とかしてスリムにしたい、ということなのでしょう。"obesity"(肥満)に"toe"(爪先)を組み合わせた合成語です。

足指の形状が原因で歩行に障害が出るなど医学上の必要性がある場合は論を待たないと思われますが、このような足指の整形手術を行うことに対してはその必要性について議論があるようです。


2012年7月12日木曜日

宣戦布告 ― lay down the gauntlet

英語の成句ですが、"throw down the gauntlet"という表現を知っていますか?

"gauntlet"とは、手首までを覆うような長手袋のことで、古い時代(中世)には甲冑の一部でもありました。この長手袋を放る(throw down)というのは象徴的な意味があります。相手に決闘を申し込むという意味です。


From a semi-rural suburb north of Auckland, Kim Dotcom is mounting an increasingly belligerent counter-offensive against US authorities' efforts to prosecute him over his now defunct Megaupload file storage site.

In an interview with the Guardian, Dotcom, who remains on bail in Coatesville, New Zealand, awaiting an extradition hearing, declared himself to be in "fighting mood" and eager to refute a "case built on malicious conduct".

(中略)

Prosecutors allege he and his co-accused associates were complicit in and encouraged the distribution of copyright-protected films, music and other material.

(中略)

On Wednesday morning Dotcom laid down the gauntlet to the US department of justice, offering to travel to the US under his own steam and faces charges – with conditions. "Hey DOJ," Dotcom said on his Twitter account, "we will go to the US. No need for extradition. We want bail, funds unfrozen for lawyers and living expenses."
(Toby Manhire. Kim Dotcom: I'll extradite myself to US if they give my money back. The Guardian. July 11, 2012.)


ここでは"laid down the gauntlet"となっていますが同じ意味合いです。

記事は、著作権侵害で今年1月にニュージーランドで逮捕されたKim Dotcom氏に関するものです。氏はいわゆるファイル(コンテンツ)を共有するウェブサイトのオーナーでしたが、そのサイトが映画や音楽などのコンテンツの著作権を侵害したということで逮捕されたものです。逮捕は米当局の告発に基づくものでしたが、同氏は不当であると主張しているようです。拘留されているニュージーランドから米国への送還、そして保釈を要求しているようです。"laid down the gauntlet"はこのことを指しています。

ちなみに、"throw down the gauntlet"の反対で、"take up the gauntlet"、つまり長手袋を拾い上げるという表現もあり、こちらは決闘の申し込みを受ける、挑戦を受けて立つ、という意味です。

果たして米当局はDotcom氏の放った長手袋を拾い上げるのでしょうか?


2012年7月11日水曜日

お宝 ― memorabilia

古い古いベースボールプレーヤーのカードがセットで300万ドル!!アメリカの話です。


An Ohio man tripped on a baseball treasure trove in his grandfather’s attic, finding trading cards of legends Christy Mathewson, Ty Cobb, Cy Young and Honus Wagner.

Karl Kissner came upon a soot-covered cardboard box, under a wooden dollhouse, opened it and stared into the faces of baseball’s greatest early players.

“It’s like finding the Mona Lisa in the attic,” said Kissner, 51.At least one memorabilia expert, who authenticated Kissner’s find, said he’s never seen collection like this.
(David Li. Baseball cards found in attic might fetch millions. New York Post. July 10, 2012.)


小屋裏に放置されていた祖父の遺品を整理していたオハイオ州の男性が、1900年代初めに活躍したベースボールプレーヤーのカードセットを偶々発見したということなのですが、大変に貴重なものらしく、オークションにかけるとトータルで300万ドルにもなるそうです。当人には驚きの発見でしょう。

さて、今日は"memorabilia"という単語を取り上げたいと思います。

"memorabilia"を引くと、


記念品
記憶に値する出来事、記録


などと載っています。"memorabilia"が、"memory"(記憶、思い出)という単語と同根であることは疑う余地はありませんが、ちょっとよく分からない、漠然とした定義ではないでしょうか?

上記の引用では、"memorabilia expert"と出てきます。これはいわゆるお宝を鑑定する専門家のことであろうと思います。

そうしますと、"memorabilia"も“お宝”のことと言ってしまってもよいように思うのですが・・・。特にこのコンテクストでは“お宝”というのがぴったりではないかと。わたしが辞書の編纂委員だったら(そんなことはあり得ませんが・・・)、“お宝”という訳語を提案しますね(笑)

ランダムハウス英和では、"souvenir"という説明もあるのですが、感覚的には"souvenir"は旅行土産の類で、ここでの"memorabilia"が指す骨董品的価値のある品物というのとはちょっと離れているように思われます。

記事はこちら

2012年7月10日火曜日

不覚にも・・・ ― manage to ~

まず下記の引用をご覧ください。


Stay Smart Online, the Federal Government website designed to educate Australians about cyber security risks, has managed to lose details of a large number of its subscribers.
(Stuart Corner. Stay Smart Online unsmartly loses user data offline. IT Wire. July 8, 2012.)


オーストラリア政府が運営する、Stay Smart Onlineというウェブサイトで、当該サイトの利用者の個人情報流出するという不祥事があったということです。Stay Smart Onlineというウェブサイト名から、インターネット利用における啓蒙的な情報提供を行っているようなサイトだと想像がつきますが、そのサイトからして情報流出の舞台となったことが批判を浴びそうです。記事のタイトル(Stay Smart Online unsmartly loses user data offline)にもそのことを揶揄しているのが読み取れます。

さて、引用した部分で、"managed to lose details of a large number of its subscribers"とありますが、"manage(d) to"という表現にあれっ?と思った方もいるのではないでしょうか?

"manage to"という表現は、


(首尾よく)やり遂げる;どうにか成し遂げる


といった意味で使われるということは恐らく高等学校の英語くらいで習うのではないかと思いますが、この引用箇所においてその解釈ですとおかしなことになります。首尾よく情報流出させた、とか、何とか情報流出させることができた、などという表現はあり得ない、といいますか、とんちんかんだからです。

そこで辞書をチェックしてみてください。"manage to"には、首尾よく~、なんとか~しおおせる、といった意味とは別に、反語的な意味で用いられ、


(不覚にも)~する;(愚かにも)~してしまう


といった意味もあるのです。

さて、このような反語的な意味での用法をもう少し収集してみました。


For Juliet had had two affairs during the years that Penelope was between fourteen and twenty-one, and during both of these she had managed to fall hectically in love, in a way that left her ashamed afterward. One of the men was much older than she, and solidly married.
(Silence. New Yorker. 2004.)


Bush even took the bike to the G-8 Summit in Scotland in May, where he managed to crash into a policeman there. If the other seven world leaders had taken their bikes, it would have seemed rather childish, don't you think? The bike is Bush's latest obsession. He has been described as a " maniac, " reckless on the bike. He has managed to spill over the handlebars or crash at least three times.
(Denver Post. 2005.)


If you do manage to lose the USB drive, the personal data it contains will be more secure if you used its bundled security software to encrypt its sensitive contents.
(PC World. 2005.)


意外とお目にかかりませんが、用法としてはごく普通に使われるもののようです。



2012年7月9日月曜日

争いの”種” ― bone

週末の7日土曜日に野田総理大臣が尖閣諸島を国として買い取る方針を表明したことが話題になっています。当然といいますか、中国や台湾が反発し、最初に購入計画を実行に移した東京都の石原知事は、「黙ってみておけ」(産経新聞)と意に介さず、と報道されています。

この件に関するBusiness Week誌での記事がありましたので引用してみます。


A Japanese government plan to buy uninhabited islands owned by a private investor provoked condemnation from China, which also claims it owns the rocky outcroppings, the latest flare-up in a dispute over territory and resources in the East China Sea.

Prime Minister Yoshihiko Noda on July 7 said the government is considering a purchase of the islands, Kyodo News reported. China’s Foreign Ministry responded with a statement that the islets belong to China and “can’t be bought or sold.”

The dispute over who controls the islands, known as Senkaku in Japanese and Daioyu in Chinese, escalated in April after Tokyo Governor Shintaro Ishihara said he wanted to use public money to buy them. Sovereignty over the area, which has undersea natural gas and oil fields, has been a flash point between the world’s second- and third-largest economies.

“Clearly the reason why the Senkaku Islands are a big bone of contention is the potential for resources,” said Jeff Kingston, head of the Asian Studies program at Temple University in Tokyo. “Governor Ishihara has caused a headache for the government and what they’re trying to do is engage in damage control by getting the islands out of the grips of Ishihara, who’s trying to politicize this for his own gain.”
(Japan Plan to Buy Islands Draws China Ire. Business Week. July 8, 2012.)


尖閣問題について後段、


Clearly the reason why the Senkaku Islands are a big bone of contention is the potential for resources


とある部分に注目します。"a big bone of contention"とは、日本語に訳すならば、”争いの大きな種”とでもなるかと思います。

日本語では争いの”種”ですが、英語にすると"bone"(of contention)、つまり”骨”となるのが面白いと思いませんか?

辞書を引きますとたしかに、"bone"には、


(争いの)種、原因、争点;論点、論題


といった意味があります。American Heritage Dictionaryでは、"bone of contention"というイディオムとして、"the subject of dispute"と解説されています。

"bone"が争いの”種”としての意味で用いられるようになった経緯は分かりませんが、私の独自見解は、イヌが1つの骨を取り合う、争う、そんなイメージがあります。

ということは、中国も台湾も、石原知事も野田首相も、みんなイヌ??

失礼しました(笑)


2012年7月6日金曜日

何と訳す? ― overnight response

一昨日の7月4日はアメリカではFourth of Julyと呼ばれる独立記念日(Independence Day)でした。各地で祝祭のイベントがあった模様ですが、Long Islandでの花火観戦で悲劇がありました。

花火観戦を楽しもうと27人が乗っていたヨットが海上で転覆し、8歳の女の子を含む子供3人が死亡しました。何とも痛ましい悲劇です。


Three children died and 24 were rescued after a yacht capsized and sank off Bayville during Fourth of July celebrations Wednesday night, authorities said.

Nassau County police identified the victims as David Aurelino, 12, Harley Treanor, 11, and 8-year-old Victoria Gaines, all Suffolk County residents.

Two of the bodies were reportedly found inside of the yacht during the course of the overnight response.

The 34-foot Silverton yacht, which is privately owned, had 27 people on board when the vessel overturned at 10:10 p.m., police said.
(Lindsay Christ. Yacht Capsizes, 3 Children Dead Off Long Island. Long Island Press. July 5, 2012.)


さて、昨日に引き続きですが、今日も見慣れない表現に出くわしましたので取り上げたいと思います。3段落目に出てくる、"overnight response"というものですが、見たことのある方はいらっしゃいますか?

文脈から何となく意味するところは分かりますが、初めて見る表現でした。"overnight"も"response"もごく基本的な単語であるのにも拘らず、です。

まず、"response"を引いてみます。刺激に対する反応という意味と、質問などに対する応答・返答という意味が基本です。その他にいくつか特殊な文脈でしか使わないようなマイナーな意味があるようですが、"overnight response"の手掛かりになるような意味は確認できません。

"overnight"という修飾があること、また転覆したヨットから遺体を収容したという文脈から、"overnight response"とはいわゆる”夜を徹しての捜索(作業)”といったところではないかと思われましたが、辞書でエントリを確認するのが癖のようになっているのでそれを探し求めて色々な辞書を右往左往と・・・。

さらにコーパスに頼ってみましたが、"overnight response"という表現が広く使われているという確認には至りませんでした。("overnight response"での検索結果は1件のみのヒット。文脈から意味は同じようなものと思われました。)

色々な辞書を見ても、"response"の意味として、捜索や作業といったものを載せているものはありません。

グーグル検索をしてみると、


overnight response operator


という表現が、職種の表記として使われていることが分かりました。これは恐らく24時間対応をする電話オペレーターやビル管理会社のスタッフといった職種を言うようです。

"overnight response"については、”夜を徹しての作業”という解釈でほぼ間違いないと思いますが、辞書に載っていないのが不思議です。あまり一般的な表現ではないのかもしれません。

とまあ、色々なことを調べてみたのですが、そのうち、"response"は事故や災害に対する”反応”、”リアクション”、つまり”対応”という意味であると解釈できるのだから、"overnight response"というのもそのままの表現で、徹夜(overnight)での対応(response)ということであれば何ら悩むことはない訳で、別にどうこう言うほどのこともないか、という気にもなってきたので、言葉って不思議です。

2012年7月5日木曜日

何と訳す? ― wink and nod

アメリカ政府が人魚の存在を否定 ― 確か、そんなヘッドラインだったと思いますが、Yahoo! Japanのトップニュースでした。何じゃそりゃ?と思いませんでしたか?

人魚なんかいる訳ない、という人もいるでしょうし、なんでアメリカの政府がそんなことを今になって公式に表明するのか、と眉を顰めた人もいるでしょう。私は何となく気になりながらもその記事にアクセスはしなかったのですが、昼休みにグーグルニュースで海外ニュースをチェックしていたらやはり人魚の話題が記事になっており、それを読んでみました。


There is no evidence that mermaids exist, a US government scientific agency has said.

The National Ocean Service made the unusual declaration in response to public inquiries following a TV show on the mythical creatures.

It is thought some viewers may have mistaken the programme for a documentary.

"No evidence of aquatic humanoids has ever been found," the service wrote in an online post.

The National Ocean Service posted an article last week on its educational website, Ocean Facts.
(No evidence of mermaids, says US government. BBC News. July 3, 2012.)


何でこんな話になっているのか少し分かりました。Discovery Channelという、いわゆるサイエンス系の番組を流すチャンネルで人魚の特集番組があったそうなのですが、内容はフィクションであるにも関わらず、ドキュメンタリーと勘違い、つまり事実と勘違いした視聴者からの問い合わせが相次いだことが原因のようです。


The inquiries followed May's broadcast of Mermaids: The Body Found, on the Discovery Channel's Animal Planet network.

The programme was a work of fiction but its wink-and-nod format apparently led some viewers to believe it was a science education show, the Discovery Channel has acknowledged.
(ibid.)


さて、ドキュメンタリーと誤解させるような構成と内容が原因だったようですが、そのことを言うのに、


its wink-and-nod format


という表現を使っています。聞き慣れない表現です。"wink-and-nod"とはどういう意味なのでしょうか?色々な辞書を当たったのですが、エントリは見当たりません。ネット検索やコーパスで用例を検索しますと、多くはありませんが実例が確認できます。例えば以下のような用例です。


Pena Nieto, a state governor and the husband of a popular telenovela actress, says the PRI’s days of vote-rigging and graft are behind it. He has also pledged not to cut any deals with organized crime; in the past, the party has been accused of a wink-and-nod relationship with the nation’s drug cartels, trading lax enforcement for peace.
(It’s up to Mexico’s new rulers to prove they’ve overcome past corruption. The Boston Globe. July 3, 2012.)


As it becomes evident that the Russian government is plagued with rampant lying, corruption, graft, bribery, greed, "wink and nod" management and special deals for friends, it brings to mind the old adage about birds of a feather flocking together.
(Houston Chronicle. 1999.)


wink(瞬きをする、目配せをする)とnod(頷く、承諾する、同意する)という2つの単語の組み合わせであることを考えれば上記2つの用例における”wink and nod”の意味は自ずと明らかだと思います。また、”wink”には不正を見逃す、見て見ぬふりをするという意味もありました。ここでは、そのような意味がぴったりきます。

しかしながら、人魚の番組の記事における、”a wink-and-nod format”という部分を解釈するのにはどうもしっくりきません。引き続き色々な用例を見てみましたが、近しい用例が見当たらず、しばらく悶々とします。

人魚の記事のコンテクストから解釈するならば、番組の”format”(構成や内容、見せ方)が、視聴者が思わず勘違いしてしまうようなものであった、ということができると思います。それを、”format”の出来の良さと言いたいのか、誤解を与える(misleading)と言いたいのか、はたまた写実的と言いたいのか、つまり形容詞にあたる”wink-and-nod”の意味が分からないのです。

かなりの用例を見たつもりですが、適切な訳を見つけ出すことができていません。唯一、下記の用例にあたって、少しだけひらめきました。


My favorite wink-and-nod rumor was that Steve was really a robot that Wozniak created to rule the world. At a distance, that seems plausible.
(Xbox Designer On Working Next Door To Steve Jobs. Fastcodesign.com)


ここで、"wink-and-nod"は、"rumor"という名詞を修飾しています。引用の最後に"that seems plausible"とありますが、"wink-and-nod"はこの”plausible”(もっともらしい)を意味しているのではないかと推測します。人魚の記事でも、"wink-and-nod"を"plausible"に置き換えることができると思います。もっともらしい、いかにもありそうな(plausible)、見せ方、演出の方法(format)、という解釈です。

とは言え、”wink”と”nod”の2語からどうして”plausible”の意味になるのか、ということがしっくりきませんし、似たような用例を他に確認できていません。1つ考えられることは、”wink”にも”nod”にも、同意、承諾の意味がありますが、


同意・承諾

(存在を)認める

ありそうな、もっともらしい


というような意味の発展があったのではないかということです。ややこじつけのようで、あまり自信はありませんが、現時点ではそのように考えるしか納得性がなく、どなたかご存知の方ありましたらお教え下さい。

2012年7月4日水曜日

けりをつける ― pull the plug

芸能ニュースにはあまり興味が無く、特にそれがアメリカの芸能界となってくるとほとんど縁も無いのですが、俳優のトム・クルーズさん夫婦が離婚するというニュースには目が留まりました。


Holmes reportedly decided to pull the plug on her five-year marriage to the “Top Gun” actor Thursday in fear that he was planning to induct Suri into Sea Organization, an ultrazealous offshoot of Scientology.
(Christine Roberts. Inside Sea Org: Scientology's elite compound is root of TomKat split. New York Daily News. July 3, 2012.)


トム・クルーズさんは日本でも人気のある俳優だと思いますが私も何度か主演の映画を観たことがあります。奥さんはKatie Holmesさんという人で、6歳になるSuriという名前の娘さんがいるそうですが、今回の離婚騒動にはトム・クルーズさんご執心の新興宗教団体が絡んでいるそうです。詳しくは記事をご覧ください。

さて、今日取り上げる表現は、"pull the plug"というものです。

そのまま訳すならば、“プラグを抜く”ということになります。一体何のプラグを抜くのでしょうか?答えは生命維持装置のプラグです。

生命維持装置に頼って生きながらえている患者に対して、装置のプラグを抜くことは死を意味します。このことから、"pull the plug"は見捨てる、見殺しにする、お終いにする、けりをつける、といった意味で用いられます。

典型的には、"pull the plug"の後に、前置詞"on"に続けて目的語を配置します。上記の引用例では、"five-year marriage"ですから、5年の夫婦生活に終止符を打つ(ことを決めた)、というように訳すことができると思います。

2012年7月3日火曜日

商標権和解:アップルにとっては痛くも痒くもなかった? ― bite

中国でのアップル社のタブレット端末iPadの商標権を巡る係争にけりがついたようです。商標権の買い取り(和解)に、アップル社が相手方に6000万ドルを支払うことで合意したようです。

6000万ドルは高い金額でしょうか?庶民が云々できる金額ではないということだけははっきりしています。アップル社にとってはどうだったのでしょう?


Apple Inc. took in nearly $8 billion in greater China during the first three months of 2012. The price of continuing to sell its tablet in China under the iPad name: a mere $60 million.

The Cupertino, Calif., gadget maker has paid that sum for the transfer of the iPad trademark from the China unit of Proview International Holdings Ltd., according to a Chinese high court in the southern Chinese province of Guangdong.

The amount, which was far short of the as much as $2 billion that a Proview arm had asked for in a U.S. court, represents a tiny sum for the world's most valuable company. Apple had a cash hoard of more than $110 billion as of March.
(Chinese iPad Case Takes Only a Small Bite Out of Apple. The Wall Street Journal. July 2, 2012.)


今年の1~3月における、中国でのiPadの売り上げは80億ドルだったそうです。その売り上げを確保するために払う6000万ドルは3ヶ月分の売り上げのわずか7%程度、しかも1回こっきりの支払であり、損得勘定から言えばまったく比較にならない、ということになるのでしょうが、庶民感覚では理解できないスケールです。

さて、この記事のタイトルがしゃれています。


Chinese iPad Case Takes Only a Small Bite Out of Apple


"Apple"とあるのは、当のアップル社のことと、果物のアップル(りんご)とをかけています。ある意味しゃれですね。"bite"には食べることを指す”ひと齧り”の意味の他に、


(全体から切り取られた)一部分;(全額から)差し引かれる分


という意味があります。商標権を巡る今回の係争はりんごが齧り取られるかのように、アップル社から6000万ドルが支払われることになったのですが、現金資産で1100億ドルを保有するアップル社にとっては"only a small bite"でした。つまり痛くも痒くもない額だということです。

海賊版や商標権の無断使用が横行すると言われる中国ですが、商標権の代わりに6000万ドルを受け取った企業はぼろ儲けといったところでしょうか。ちなみにこの企業は、"Internet Personal Access Device"、略して"IPAD"と呼ばれる製品を製造販売し、その商標権を保持しているということです。

2012年7月2日月曜日

大統領選は泥仕合 ― fie

これまでもアメリカ大統領選の話題を何度か取り上げてきましたが、本日も大統領選の話題からです。

オバマ氏とロムニー氏の一騎打ちは相手の経歴などで痛いところを突いて攻撃する非難合戦に発展していますが、これにヒラリー・クリントン氏がロムニー氏側に加わり、私などには泥仕合のようにも思えてきます。


Mitt Romney has enlisted a surprising new surrogate in his effort to challenge President Barack Obama's attacks on his jobs record: Hillary Clinton.

The Romney campaign quietly launched a new 30-second television ad Friday featuring footage of Clinton campaigning against Obama during the 2008 Democratic presidential primary, in which she accused Obama of lying about her record.

"Shame on you, Barack Obama," Clinton says in the footage recycled in the Romney spot.

The Romney ad uses the Clinton footage to back up a recent Washington Post Fact Checker item which said a recent Obama ad accusing Romney of outsourcing jobs overseas while he was governor of Massachusetts was "misleading, unfair and untrue."

"But that's Barack Obama," a narrator in the Romney ad declares. "He also attacked Hillary Clinton with vicious lies."
(Holly Bailey. Hillary Clinton attacks Obama in latest Romney ad. ABC News. June 29, 2012.)


ヒラリー・クリントン氏が加わったと書きましたが、これはロムニー氏側の選挙キャンペーン動画に、昔のクリントン氏の発言が”再利用”されたということであり、当のクリントン氏はこの件についてコメントを避けているようです。

その発言というのが、記事にありますように


Shame on you, Barack Obama.


というものなのですが、この"Shame on you"というのは”恥を知れ”という意味です。オバマ政権で国務長官を務めるヒラリー・クリントン氏のこの発言は、2008年の大統領選で民主党の指名争いの中でオバマ氏とクリントン氏が一騎打ちになった時の発言であるとされています。アメリカの大統領選に限らないでしょうが、政治というのはまさしく何でもありの世界であるとつくづく感じさせられます。

ところで、"Shame on you!"の、"shame"は名詞なのか、それとも動詞なのか、気になりましたので辞書を見てみたら、ランダムハウス英和辞書では名詞のエントリになっていました。これを調べると同時に気がついたのですが、似たフレーズとして、


For shame!
Fie for shame!


というものがあることが分かりました。"Fie for shame!"については古い言い回しで、"fie"というのはラテン語の"fi"に由来しています。

このラテン語の"fi"というのは、文法的には感嘆詞(interjection)であり、不快や非難、迷惑の感情をあらわします。廃語とされていますが、コーパスを見ると普通に使われていることも確認できます。


"Shame on you!"とほぼ同じような意味で、


Fie upon (on) you!


というフレーズが使われます。