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2025年10月3日金曜日

86 (eighty-six)

男性の乳がんというのはあまり聞きませんが無い訳ではありません。乳がんは男性もかかる病気です。

その乳がんから生還したアメリカ人男性が、乳がん啓発の基金を始めたというニュースを読みました。


He 86’ed cancer — and is now serving up hope on Long Island.

A chef who miraculously survived lethal male breast cancer is using his “second chance” to organize a fundraising raffle he calls “All Boobs Matter,” which he hopes will help others battle the dread illness.
(Alex Mitchell. Male chef who survived breast cancer holds ‘All Boobs Matter’ fundraiser to aid fellow LI residents. New York Post. October 2, 2025.)


引用記事の冒頭、


He 86’ed cancer


とあります。

数字の86に、-edがついているところから推測するに、これは動詞です。数字が動詞になるというのはとても変わっていますね。

果たして辞書にも86 (eighty-six) という動詞のエントリがあります。

その定義は、


To refuse to serve (an unwelcome customer) at a bar or restaurant.
(American Heritage Dictionary)


というものです。レストランやバーなどで、歓迎されない客の対応をお断りする、という意味で使われるようです。

恐らくその意味から一般化したのだと思いますが、


To throw out; eject.
To throw away; discard.
(ibid.)


という意味合い、つまり、拒絶する、排斥する、といった意味があります。

記事のケースはガンを克服した、ということを"He 86’ed cancer"と言っている訳ですが、ガンから生還して啓発活動を始めたその男性はレストランを経営するシェフということで、"86 (eighty-six)"のそもそもの意味にかけたシャレになっています。

それにしても排除することを何故"86 (eighty-six)"というのでしょうか?

語源欄には同様の意味がある"nix"という単語と韻を踏んだもの(押韻俗語)という説明があります。"six"は分かりますが、"eighty"の方は?と思ってしまいます。

"nix"は以前取り上げた際触れたように、無、無し(nothing, naught)というのが基本にあるのですが、レストランやバーであるメニューが品切れ、提供不可といった場合に"nix"というところ、これが"eighty-six"になったという説があるようです。

歓迎しない客に対してサービスを拒否する際、売り切れ、品切れと言うのは頷けます。


2021年11月2日火曜日

even-Steven

"even-Steven"というちょっと変わった単語表現は、五分五分、とか対等、互角、公平平等、といった意味です。

そもそも、"even"という単語にそれらの意味があることはご存知でしょう。

一方、"Steven"の方はというと、これは人の名前のようですが、こちらには意味はありません。単に、韻を踏むためだけに挿入されているもので、いわゆる押韻合成語の類です。

最近の若者言葉(!?)で、「マジ卍(まじまんじ)」というものがありますが、似たものがありますね。

以下の用例はコーパスから拾ってきました。


"Just because one of my sons needs soccer shoes doesn't mean the other gets a new pair, too. I don't subscribe to the even-Steven mentality," says Ann Marie Maglino, a Cranford, New Jersey, mom of two boys, 8 and 6. Growing up in a big family, she learned early that everything wasn't always about her and that your parents can't give you a constant flow of material things.
(Parenting, 2006)


What were your rigid ideas of what a feminist marriage would look like?

Oh, man. It would be totally 50/50, you know - that when it came to the finances, when it came to the children, when it came to the housework, everything would be even-steven. Everybody pulls their weight. Everybody has a say.
(NPR, 2016)


以前特集しました、押韻俗語についてもご覧ください。



2015年8月14日金曜日

chew the fat

今週は押韻俗語(rhyming slang)について見てきました。難解に思える押韻俗語の表現ですが、実は英語の日常表現として定着し、その意味が広く知られているようなものも存在します。

"chew the fat"はそのような表現の1例であると言われています。(参考:Bill Bryson. Mother Tongue. Penguin Books. 1990.)


Scientists ID 6th taste as subjects chew the fat

Taste, the sense that allows us to appreciate the beauty of good food, is something scientists understand fairly well. The sensation we feel when eating a piece of cake, chewing on a hamburger or taking the first bite of a piping hot piece of pizza is triggered when chemicals in the food interact with receptors in our mouths.
(Arkansas Online. August 3, 2015.)


引用した記事の話題は先日取り上げた話題とかぶるのですが、"chew the fat"とは


気楽におしゃべりする、(物事について)論じる


という意味の成句です。

“脂肪”(fat)を噛む(chew)ことがなぜおしゃべりになるのでしょうか?

"chew the fat"の"fat"は"chat"(おしゃべり)という単語と韻を踏んでいるわけです。

この表現を押韻俗語として説明している辞書は見当たりませんが、りっぱな押韻俗語の例です。表現として広く定着し、イギリス英語に限らずアメリカ英語でも使われます。

同様の事例として、"brass tacks"("tacks"が"facts"と韻を踏んでいます)があります。


2015年8月13日木曜日

頭を使え ― loaf

押韻俗語をテーマにお届けしております今週ですが、3日目に取り上げるのは"loaf"です。

これまで取り上げた表現は韻を踏んでいることが分かりやすい例でしたが、今日は少し様相が異なります。つまり、"loaf"と韻を踏んでいる単語を想像しても答えにたどり着きません。


Almost every household in the UK regularly buys bread, but are you using your loaf when it comes to this popular product?

“Most of us mindlessly pick up a loaf of bread once or twice a week without really knowing what’s in it. We just assume it’s healthy,” says nutritionist Vicki Edgson.
(Just how unhealthy is our daily bread? Use your loaf and find out. Mirror.co.uk. March 22, 2012.)


少し意地悪なのですが、


Use your loaf...


とある、"loaf"は元々"loaf of bread"のことなのです。

"loaf of bread"と"head"が韻を踏んでいることになっていますが、単に"loaf"だけで使われることも多く、知らないと訳が分かりませんね。

実は押韻俗語とされる表現でこの"loaf"のように、実際に韻を踏んでいる部分が省略されて使われるものは結構あります。

押韻俗語は元々隠語としての性質、つまり仲間内だけで分かるようにわざと分かりにくく言い換えた符丁としての役割があるとされていますが、そう考えるとこのような省略が見られるのも仕方のないことなのかもしれません。


2015年8月12日水曜日

sausage and mash

昨日より押韻俗語をテーマにお届けしています。

さて、今日取り上げるのは、"sausage and mash"です。ホテルのブレックファストメニューに出てきそうですが、その意味は現ナマ、つまり現金です。

なぜソーセージとマッシュ(ポテト)が現金になるのか?昨日の投稿を読んでいただいた、感のいい方はお気づきですね。

そうです、現金を意味する"cash"と韻を踏んでいるのが"mash"だからです。


Visitors to East London in search of a cash machine while attending the Olympics this past summer might have been puzzled by the ATM on Commercial Street. Tap the screen and a prompt pops up: English or Cockney? If Cockney is chosen, the next prompt advises the customer in search of "fast sausage and mash" (cash) to select the amount. Among the options: A "Lady Godiva" (£5), "speckled hen" (£10), or "horn of plenty" (£20), to be dispensed after the customer enters a "Huckleberry Finn" (pin).
(Cathy Newman. In Need of "Sausage and Mash"? Visit an East London ATM. National Geographic. February 14, 2013.)


引用したのはちょっと古い記事で、ロンドンオリンピックが出てきたりしますが、舞台はロンドン東部地域、ということで押韻俗語がテーマになっています。(記事中には押韻俗語が目白押しです。)


2015年8月11日火曜日

ブラームスはお好き ― Brahms and Liszt

以前の投稿で、押韻俗語の表現を取り上げたことがありますが覚えておられるでしょうか?

この押韻俗語というのはネイティヴではない我々日本人にはちょっと難解です。もしかしたら、英語を母語とする人にとっても難しいのかもしれません。というのも触れる機会が極めて限られており、イギリスはロンドン、しかもその東部で使われているコックニー方言(Cockney)というのが押韻俗語を特徴としているからです。

こうした押韻俗語は知らないとそれが使われていても意味をすぐにはつかめず、判じ物かパズルのようになってしまいます。

下記の引用を読んでみましょう。


Yet no matter how Mozart and Liszt a driver was, until he (or she) was involved in an accident or committed a major driving offence, alcohol levels couldn't be checked.
(Tony Davis. Milestones: Breath testing goes random. Drive. May 3, 2014.)


飲酒運転の話ですね。"Mozart and Liszt"(モーツァルトとリスト)は言うまでも無く有名な作曲家です。

押韻俗語の意味としては、


酔っ払った


となります。何故でしょうか?

酔っ払ったというとき、"pissed"という俗語表現を使いますが、"Liszt"がこの"pissed"と韻を踏んでいるからです。

では、なぜ"Mozart and"なのでしょうか?

これに対する明確な答えというのがないのですが、要は押韻俗語では単に韻を踏んでいる部分だけが大事らしく、前半部分(この例でいうと"Mozart")は特に重要ではないようです。実際に、"Brahms and Liszt"も同じく“酔っ払った”という意味で使われます。


Now that the East End of London has moved upmarket, cockney rhyming slang no longer has much currency. So you may have forgotten its word for drunkenness. It is Mozart – or sometimes Brahms. Why? Because "Mozart-and-Liszt" rhymes with pissed.
(Ski Amadé: Orchestral manoeuvres in the light. The Independent. August 7, 2015.)


今週は押韻俗語の表現をいくつか取り上げてみたいと思います。


2015年5月29日金曜日

米・スペル競技会終わる ― duke

以前にも取り上げたことがありますが、アメリカでスペル競技会が開催されていましたが、今日その一大イベントが閉幕したというニュースが報じられています。

優勝者が2人になったのは2年連続、5回目のことだそうです。


All sorts of history was made at the National Spelling Bee Thursday night.

Vanya Shivashankar and Gokul Venkatachalam duked it out to a tie and were named co-winners of the annual contest. It marked the second year in a row that co-champions were named and only the fifth time in the history of the bee.
(Joe Heim. Can you spell co-champions? The Washington Post. May 28, 2015.)


決勝ではスペルを間違った時点で失格となるということなのですが、競り合った末に2人が残り、もはや振り落とすだけの単語がなかったのか、結局両者がチャンピオンとして残ったようです。

この2人の名前(Vanya Shivashankar and Gokul Venkatachalam)のスペルが難解なのは偶然でしょうか?記事のタイトル(Can you spell co-champions?)が利いています。

さて、


duke it out


という表現は、最後までとことんやりあう、けりがつくまでやる、という意味があるのですが、初めて見ました。

公爵の"duke"でもありますが、俗語の意味として、拳骨、こぶし、そして殴る、ケンカする、という意味があるそうです。

“公爵”と“拳骨”には大分隔たりがあると思いませんか?

ランダムハウス英和辞書の語源欄を見ると、指を意味する"forks"と韻を踏む、Duke of Yorks(英・ヨーク公)という表現から"duke"が拳骨、さらには殴るという意味が生まれたということです。

これは押韻俗語と呼ばれているもので、特にイギリスにおいてこの種の表現が用いられることが知られています。しゃれとは少し異なり、ネイティヴでない人間には理解しがたいものですが、考えてみれば日本語にもこの種の表現があるのではないかと思います。