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2026年2月12日木曜日

ポーズ? ー pose

先週からアメリカ国内ニュースではトップで報じられている、女性ニュースキャスターの母親誘拐事件の行方が非常に気掛かりです。ほぼ毎日、何らかの更新がありますが、動機や犯人像、誘拐された母親の安否など、分からないことだらけです。。

アリゾナ州で発生したこの誘拐事件では、身代金の要求がなされたようですが、防犯カメラ映像に映った覆面の犯人映像が公開されたものの、特定には至っておらず、捜査する側も手こずっているようです。


Investigators trying to find Nancy Guthrie are posed with a daunting but familiar challenge in law enforcement: how to identify a masked person.
(Richard Winton. 'This kidnapping violates all the rules': Why cracking the Nancy Guthrie case has been so hard. Yahoo! News. February 12, 2026.)


詳細は記事をお読みいただくとして、最小限の引用をしました。"pose"という動詞が使われています。

ここでの"pose"は、


(難問・難題で)まごつかせる、困惑させる
(ランダムハウス英和辞典)


という意味です。正直を言いますと、改めて辞書を引いてそんな意味もあったんだと不勉強を恥じました。"pose"という単語は、写真を撮る時の「ポーズ」、ある姿勢を取る、という意味、また問題などを提示(提出、提起)する、置く、という意味だと暗記していましたが、その"pose"とはまた別のエントリ(単語)として載っているものです。

ところで先日、英単語を推測するワードゲームで、ヒントとして"Prepares to be captured in a photo"が与えられ、これは写真の時の「ポーズ」だとすぐに分かったんですが、"pause"というスペルの単語も浮かんできて、はて、"pose"だったか、あるいは"pause"だったか、と一瞬迷ったことを思い出しました。

"pause"は休止、一時停止、中断を意味する単語です。(ゲームの答えは"pose"ということになります。)

したがって、カタカナの「ポーズ」にあたる英単語は、


休止を意味する"pause"
姿勢を取る、置くという意味の"pose"
困らせるという意味の"pose"


の3つがあるということになります。

さて、本題はここからです。休止を意味する"pause"は同じ意味合いのラテン語pausaに由来し、それはさらに、休むという意味の後期ラテン語動詞pausareから来ていると語源欄にあります。意味も同じ、スペルも引き継いでいるので特に疑問ではありませんね。

一方、置くという意味の"pose"ですが、こちらも語源欄には、中期フランス語poser、もうひとつ遡るとラテン語動詞pausareから来ているとあるのです。そして補足説明として、「中期フランス語poserはラテン語ponere「置く、据える」の基本的語義を引き継ぎ」とあり、これは「おそらくposerがponereの過去分詞positumにたまたま似ていたことから」である、とあるのです。

これには少しびっくりしました。

フランス語やラテン語をある程度齧ったという人にはお分かりいただけると思いますが、置くという動詞の"pose"は、やはりラテン語で置くという意味の動詞であるponereから来ていると思っていたからです。上述の語源解説(ランダムハウス英和辞典)は、そうではない、と言っているのです。

同じようなスペルの単語、例えば、disposeやsuppose、proposeなど、これらの単語は一般的な接頭辞dis-やsup-、pro-などと、置くという意味のラテン語動詞ponereの組み合わせであると、知ったつもり、分かったつもりでいました。

ところが、これらの派生単語の語源欄を改めて確認してみると、接頭辞プラス、中期フランス語poserとはありますが、そこからラテン語ponereとの直接的な結び付きは無く、たまたま語義的に近しいラテン語disponereやsupponereにスペルが影響されたということなのです。

要するに、英単語の"pose"とラテン語ponereは直接のリンクは無いということになります。繰り返しになりますが、フランス語poserが、ラテン語ponere(またその過去分詞positum)に似通っていたことから、ラテン語ponereの「置く」という意味を持つようになったということなのです。(このあたり、当ブログがよく参考にさせていただいているOnline Etymology Dictionaryにも同様の解説があります。)

最後になりましたが、今日の1語、困らせるという意味の"pose"は"appose"という単語の頭音消失形であるとあります。そして、この"appose"は"oppose"(対置させる、妨害物として置く)の異形であるということです。


2026年2月11日水曜日

mandate

全国で雪が降る中の投開票となった週末の衆議院選挙は自民党が単独で3分の2以上の議席を獲得するという歴史的勝利に終わりました。

衆議院解散にあたって高市首相は、自身が総理大臣で良いのかどうかを問う選挙だと啖呵を切りましたが、高市総理を信任する結果となりました。

さて、その「信任」を意味する英語ですが、報道メディアでは"mandate"という表現が使われています。

選挙での勝利、イコール高市政権、また自民党への信任(mandate)、というものが多く見られます。いくつか拾ってみました。


Japan’s conservative Prime Minister Sanae Takaichi swept to a landslide victory in a snap election on Sunday, marking a historic turnaround for her party, which had been hemorrhaging voter support in recent years — until she stepped to the helm.

(中略)

It was a gamble to call a snap election. But Takaichi hoped to translate her own popularity into a stronger mandate for her Liberal Democratic Party (LDP) – which has been weakened in recent years by a scandal involving the misuse of political funds.
(Japan’s Takaichi secures historic supermajority in landslide election victory. CNN. February 9, 2026.) 


Takaichi’s strong mandate could accelerate her plans to bolster Japan’s defenses, further angering Beijing, which has cast her as attempting to revive its militaristic past.
(Japanese PM Sanae Takaichi’s party sweeps to massive election victory to keep ‘Iron Lady’ in power. Reuters. February 8, 2026.)


"mandate"という単語はラテン語の動詞mandareから来ており、その意味は命令する、指示する、というものです。よって、英単語の"mandate"も命令、指示、指図(要求)という意味であり、"mandatory"は強制的な、義務的な、という意味です。

これからすると"mandate"が「信任」を意味するというのはちょっと分かりにくい気もするかもしれません。

"mandate"はラテン語動詞mandareから来ていると書きましたが、動詞の過去分詞形mandatumが"mandate"になったもので、意味合いとしては、命令された(こと)、となります。指示された、託された(こと)、という意味であり、委任、委託という意味合いでもあるのです。

政治のコンテクストにおける「信任」の意味合いは後から加わったもののようですが、選挙の候補者に対し有権者が投票という形でお墨付きを与える、標榜する政策を後推しするというのは有権者の指示するところを実行せよとの命令であり、委任であると捉えるならば納得のいく話です。

以下、最後に引用するのは他所の国のお話ですが、逆に信任を失いつつあるという首相の件です。


Growing fragmentation within Starmer’s Labour Party—as well as a series of high-profile resignations at Downing Street—have tested the British leader’s mandate just 19 months after taking office.
(Alexandra Sharp. Will Britain’s Labour Party Survive the Epstein Files? Foreign Policy. February 10, 2026.)


2026年2月10日火曜日

breather

ミラノで冬季オリンピックが開催中です。各国の代表選手が鎬を削る中、ネットやSNS上での選手に対する誹謗中傷対策がこの時代には不可欠だという新聞記事を先日読みました。

ところで、アメリカのフィギュアスケート代表選手が記者会見でトランプ政権に批判的な見解を述べたところ、やはり選手のSNSアカウントには批難のコメントが殺到したということです。


American Olympic figure skater Amber Glenn said Saturday she will limit her social media intake after she said she received "hate."

Glenn was critical of the Trump administration in a pre-Olympics press conference earlier in the week, saying it had been a "hard time" for her and members of the LGBT community. It was one of a handful of political remarks U.S. athletes made in the lead-up to the Winter Games.

(中略)

"I did anticipate this but I am disappointed by it. I will be limiting my time on social media for my own wellbeing for now but I will never stop using my voice for what I believe in."
(Ryan Gaydos. American Olympian taking social media breather over 'hate' after Trump criticism. Fox News. February 8, 2026.)


この選手の例を待たずとも、一流のアスリートや著名人に対して寄せられる批判コメントというものは概して一方通行となり、1人に対して、実際の顔や姿が見えない多数が総勢で攻撃するような形になり、当事者は追い込まれてしまいます。

騒動を受けて選手はSNSの投稿を一時休止すると発表した模様です。

記事のタイトルには、


American Olympian taking social media breather over 'hate'


とあります。

"breather"とは呼吸を意味する"breath"、またその動詞"breathe"から来ています。

我々は普段の生活で呼吸しているということを意識することはあまり無いのではないでしょうか。呼吸を意識するのは息が上がるような時、激しい運動をした時かも知れません。"breather"には、息切れさせるような運動という意味があり、その意味からすると相反するようですが、息切れする運動から一転して一呼吸置くこと、休息を得るという意味でも使われるようになったようです。息抜きという意味がそうですが、活動の小休止を意味します。

以前取り上げた"breathing room"もご覧下さい。


2026年2月9日月曜日

backup

古くて新しい悩み、「お通じ」の話しです。

記事の引用をどうぞ。


Feeling backed up?

While there are plenty of foods and some health conditions that cause constipation, certain supplements may also be to blame.

(中略)

Just like any medications, vitamins and supplements can have side effects, like infrequent or painful bowel movements or changes in bowel habits.

And common supplements like iron, calcium and vitamin D can especially cause back-ups in your stomach and intestines.
(Rachel Sacks. Anti-poop pills: These 3 supplements can make you constipated. New York Post. February 8, 2026.)


お読みいただいて分かると思いますが、ビタミンなどをサプリメントとして摂取するとお通じに影響があるという話しです。

具体的には便秘(constipation)になりやすいということなのですが、記事中、


back-up (back up)


という表現が使われています。

カタカナで「バックアップ」とよく言いますが、データのバックアップだったり、支援とか後ろ盾、助力、また予備という意味合いで用いられることが多いと思います。

ここでの"backup"は滞留というような意味合いなんですが、American Heritage Dictionaryでは、


An overflow or accumulation caused by clogging or by a stoppage: a backup in the sink; a backup of traffic at the drawbridge.


と定義されています。

台所のシンクの詰まりや交通渋滞は"backup"なんですね。


2026年2月6日金曜日

unhoused

記事の引用からどうぞ。


A woke California school-board leader flipped out when a staff presentation used the word “homeless” instead of “unhoused” — while she was “personally offended” by the commonly used phrase.

(中略)

Flynn demanded the term be changed to “unhoused,” interrupting another board member who noted that “homeless” is the language used by the state of California.
(Nina Joudeh. Woke California school board member loses it when staff uses word ‘homeless’ instead of ‘unhoused’. New York Post. February 4, 2026.)


使う言葉の選択というのは難しいもので、何気なく選んだ言葉が差別的、侮辱的に捉えられるということはあります。ポリティカルコレクトネス(political Correctness: P.C.)と呼ばれる概念がそうですが、それが行き過ぎると今度は逆に"woke"だと言われたりもしますから難しいものです。

記事で問題になっているのは「ホームレス」(homeless)という表現ですが、差別的な表現と捉えられることもあり、その言い換えとしては"unhoused"が推奨されるということなのですが、知りませんでした。

手元にある英和辞典などを引いてみたのですが、古いためか、両者の表現の違いを説明したものは見当たりませんでした。

使い分けるようになったのは近年のことらしく、3年前のガーディアン紙の記事に以下のような内容を見つけました。


The term caught on. Gradually it spread among west coast professionals working with or advocating for people living on the streets, and then it made its way across the US. Adam Aleksic, a Harvard linguistics graduate who started the Etymology Nerd blog, noted its apparent first appearance on Twitter as another word for homeless occurred in October 2008. Around 2020, the use of unhoused began growing exponentially, according to Google Trends. Today, in mainstream articles and conversations, it’s synonymous with – and for many people, preferable to – homeless. While governments don’t yet widely employ it, some grassroots groups and scholars use it exclusively.

Critics have derided the new word as clunky and unfamiliar, potentially the product of woke virtue signaling. But those who have adopted it say it’s for the same reasons OSL originally did: to lessen stigma and to highlight that those lacking permanent roofs over their heads may still have communities or physical spaces they consider home.
(Amanda Abrams. Is it OK to use the word ‘homeless’ – or should you say ‘unhoused’? The Guardian. July 20, 2023.)


「ホームレス」に代わる表現として"unhoused"が登場したのは2008年のことで、その後2020年に急速に拡まったということです。

いわゆる「ホームレス」の人達は「ホーム」が無いのではなく、住居(house)を欠いているだけである、住居は無くとも心の拠り所となる"home"はある、というのが"unhoused"という表現を推奨する考え方にあるということです。