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2026年2月16日月曜日

This too shall pass.

ドイツ・ミュンヘンで安全保障会議が開催されています。各国の首脳や閣僚らが出席、ウクライナ問題を始めとして、世界情勢を巡る議論がされています。

その中では、トランプ米大統領の強硬的な外交姿勢も話題にのぼったようです。世界秩序に影響を及ぼす、ネガティヴな意味での取り上げられ方をした訳です。

トランプ政権からはルビオ国務長官がスピーチを行ったようです。一方、野党である民主党側からはカリフォルニア州知事のニューソム氏らが出席し、トランプ氏に対する批判的コメントがあったようです。トランプ氏の強硬的な外交姿勢が却ってEUの結束を強いものにしていると皮肉たっぷりに述べたとか。

ニューソム氏はまた、トランプ大統領の任期は残り3年であり、いずれ終わるともコメントしたようです。


US Secretary of State Marco Rubio was the centre of attention at the Munich Security Summit, as European leaders wondered apprehensively what tone he would strike in his remarks on Saturday.

While his speech did not fully allay their concerns, it has been viewed as a reassurance to allies that while US relations may have frayed under Donald Trump, they will not break.

Rubio's was not the only US political voice at the security summit, however.

And even if the secretary of state's remarks had not been so well-received – if he had sharply criticised Europeans the way Vice-President JD Vance did at the conference last year – there were other US politicians doing their best impression of the Persian poet, counselling: "This too shall pass."

"If there's nothing else I can communicate today," California Governor Gavin Newsom said at a conference event on Friday, "Donald Trump is temporary. He'll be gone in three years."
(Anthony Zurcher. 'Trump will be gone in three years': Top Democrats try to reassure Europe. BBC News. February 15, 2026.)


ニューソム氏の発言からの引用ということでは無いようですが、記事中、


"This too shall pass."


というフレーズが出て来ます。

和訳すれば、「これもまた過ぎ去る。」となります。物事に未来永劫というものはない、必ず終わりがある、というような意味合いですが、日本語で言う「諸行無常」のような概念を言い表す英語表現として定着しているものです。

関税やグリーンランド領有に関するトランプ氏のハチャメチャな言動に困惑しきりという状況ですが、それもいずれ・・・。

この表現の由来ですが、上記の引用にもありますように、ペルシャの詩人の言葉なんだそうです。

ネットを検索してみますと、以下のような記事に目が留まりました。


The phrase "this too shall pass" is often used to describe the impermanence of life and the need for longanimity in the face of suffering. Many people simply assume that the phrase comes from Sacred Scripture, but in fact it appears nowhere in the Bible. So where does it come from?

At first glance, the phrase sounds like it could be an aphorism from the ancient Greek philosopher Heraclitus, who believed the world to be in a state of constant flux. "You can't step into the same river twice," he said. Despite the similarities, however, the phrase "this too shall pass" is not found in the writings of Heraclitus.

Instead, many etymologists suspect the phrase was invented by medieval Persian poets belonging to a mystical branch of Islam called Sufism. It is interesting to note, however, that Jewish folklore also contains stories suggesting that the phrase originated with King Solomon.

In terms of its English usage, the phrase has been a part of our language since at least the mid-1800s.
(Clement Harrold. Is “This Too Shall Pass” in the Bible? St. Paul Center. February 6, 2025.)


"This too shall pass."というフレーズについては聖書、あるいはギリシャの哲人の言葉から来ているとする人もいるそうですが、実のところ聖書にもギリシャの哲人の著書にもそのものズバリの言葉は出て来ないそうです。


2026年2月13日金曜日

in or on?

13日の金曜日、です。(2015/2/132024/9/13

失礼しました。

ニューヨーク州知事のHochul氏がロングアイランド(Long Island)を訪問して市民らと交流、それをSNSに投稿したところが炎上しているという話しです。

Hochul氏は、


“I spent the day in Long Island talking with seniors, small business owners, and families,”


と投稿したのですが、何が問題なのか、お分かりでしょうか?

答えは以下の記事の引用に。


Gov. Kathy Hochul is getting roasted for saying she spent the day “in” Long Island — a gaffe that’s like nails on a chalkboard on the Queens side of the Whitestone.

The Democratic governor, who was raised upstate, made the mistake of using “in” instead of the preferred “on” in a since-deleted social media post that was preserved by a reporter and Long Islander who called it a “rookie mistake.”
(Brandon Cruz. Hochul makes ‘in’ Long Island faux pas that has locals going out of their minds. New York Post. February 12, 2026.)


SNSの投稿を見たユーザーが反応したのは前置詞の間違いでした。

知事はロングアイランドを訪問と言うのに、"in Long Island"としたのですが、この場合、"on Long Island"が正しい!

正直なところ、わたしも間違えてしまいそうです。

Hochul氏は民主党派ですが、その政策に反対する人たち、特に昨今の物価高に喘いでいる市民らからは不評で、SNSのタイムラインには知事への批判コメントで溢れています。その中には前置詞の誤用を指摘して、知事の資格が無いと言い切っているものも見られます。

今年11月に行われる予定の知事選で対立候補とされる共和党議員もこの誤用を論い、Hochul氏を攻撃しました。

Hochul氏自身誤用を認めたということでしょうか、"in Long Island"を改め、"on Long Island"と訂正した内容を再投稿していますが、一部支持者は、どうでもいい事、とも言っています。


One shopper, Joe, was fine with in or on.

“That’s kind of dumb — you’re on an island, but you’re in a town on an island, so there’s nothing wrong with saying either I don’t think,” he said.
(ibid.)


読んで納得、改めて前置詞inとonの使い分けを確認した感じです。

ロングアイランドはニューヨーク州にある、東西に長い島で、地図上にみるそれはとても大きい島に見えます。実際、最大長は190キロに及ぶといいます。知事はその広大さゆえに前置詞の選択を誤ったのでしょうか。

知事に反発する勢力による批判とは言え、前置詞の選択に目敏いのはやや意外に感じました。ロングアイランドは東西に長いと書きましたが、概して富裕層が多いとされるニューヨークシティに近い西部と、郊外の住宅地という位置付けの東部では意識の差もあるようです。つまり、ロングアイランドを島と意識するかそうでないかの違いともいえるかも知れません。富裕層のHochul氏(バッファロー出身)にはロングアイランドがしまであるという認識が欠けている、そう言いたいのかも知れません。

今日の1語はまさかの前置詞となりましたが、実は2回目、以前取り上げたのは"on"です。


2026年2月12日木曜日

ポーズ? ー pose

先週からアメリカ国内ニュースではトップで報じられている、女性ニュースキャスターの母親誘拐事件の行方が非常に気掛かりです。ほぼ毎日、何らかの更新がありますが、動機や犯人像、誘拐された母親の安否など、分からないことだらけです。。

アリゾナ州で発生したこの誘拐事件では、身代金の要求がなされたようですが、防犯カメラ映像に映った覆面の犯人映像が公開されたものの、特定には至っておらず、捜査する側も手こずっているようです。


Investigators trying to find Nancy Guthrie are posed with a daunting but familiar challenge in law enforcement: how to identify a masked person.
(Richard Winton. 'This kidnapping violates all the rules': Why cracking the Nancy Guthrie case has been so hard. Yahoo! News. February 12, 2026.)


詳細は記事をお読みいただくとして、最小限の引用をしました。"pose"という動詞が使われています。

ここでの"pose"は、


(難問・難題で)まごつかせる、困惑させる
(ランダムハウス英和辞典)


という意味です。正直を言いますと、改めて辞書を引いてそんな意味もあったんだと不勉強を恥じました。"pose"という単語は、写真を撮る時の「ポーズ」、ある姿勢を取る、という意味、また問題などを提示(提出、提起)する、置く、という意味だと暗記していましたが、その"pose"とはまた別のエントリ(単語)として載っているものです。

ところで先日、英単語を推測するワードゲームで、ヒントとして"Prepares to be captured in a photo"が与えられ、これは写真の時の「ポーズ」だとすぐに分かったんですが、"pause"というスペルの単語も浮かんできて、はて、"pose"だったか、あるいは"pause"だったか、と一瞬迷ったことを思い出しました。

"pause"は休止、一時停止、中断を意味する単語です。(ゲームの答えは"pose"ということになります。)

したがって、カタカナの「ポーズ」にあたる英単語は、


休止を意味する"pause"
姿勢を取る、置くという意味の"pose"
困らせるという意味の"pose"


の3つがあるということになります。

さて、本題はここからです。休止を意味する"pause"は同じ意味合いのラテン語pausaに由来し、それはさらに、休むという意味の後期ラテン語動詞pausareから来ていると語源欄にあります。意味も同じ、スペルも引き継いでいるので特に疑問ではありませんね。

一方、置くという意味の"pose"ですが、こちらも語源欄には、中期フランス語poser、もうひとつ遡るとラテン語動詞pausareから来ているとあるのです。そして補足説明として、「中期フランス語poserはラテン語ponere「置く、据える」の基本的語義を引き継ぎ」とあり、これは「おそらくposerがponereの過去分詞positumにたまたま似ていたことから」である、とあるのです。

これには少しびっくりしました。

フランス語やラテン語をある程度齧ったという人にはお分かりいただけると思いますが、置くという動詞の"pose"は、やはりラテン語で置くという意味の動詞であるponereから来ていると思っていたからです。上述の語源解説(ランダムハウス英和辞典)は、そうではない、と言っているのです。

同じようなスペルの単語、例えば、disposeやsuppose、proposeなど、これらの単語は一般的な接頭辞dis-やsup-、pro-などと、置くという意味のラテン語動詞ponereの組み合わせであると、知ったつもり、分かったつもりでいました。

ところが、これらの派生単語の語源欄を改めて確認してみると、接頭辞プラス、中期フランス語poserとはありますが、そこからラテン語ponereとの直接的な結び付きは無く、たまたま語義的に近しいラテン語disponereやsupponereにスペルが影響されたということなのです。

要するに、英単語の"pose"とラテン語ponereは直接のリンクは無いということになります。繰り返しになりますが、フランス語poserが、ラテン語ponere(またその過去分詞positum)に似通っていたことから、ラテン語ponereの「置く」という意味を持つようになったということなのです。(このあたり、当ブログがよく参考にさせていただいているOnline Etymology Dictionaryにも同様の解説があります。)

最後になりましたが、今日の1語、困らせるという意味の"pose"は"appose"という単語の頭音消失形であるとあります。そして、この"appose"は"oppose"(対置させる、妨害物として置く)の異形であるということです。


2026年2月11日水曜日

mandate

全国で雪が降る中の投開票となった週末の衆議院選挙は自民党が単独で3分の2以上の議席を獲得するという歴史的勝利に終わりました。

衆議院解散にあたって高市首相は、自身が総理大臣で良いのかどうかを問う選挙だと啖呵を切りましたが、高市総理を信任する結果となりました。

さて、その「信任」を意味する英語ですが、報道メディアでは"mandate"という表現が使われています。

選挙での勝利、イコール高市政権、また自民党への信任(mandate)、というものが多く見られます。いくつか拾ってみました。


Japan’s conservative Prime Minister Sanae Takaichi swept to a landslide victory in a snap election on Sunday, marking a historic turnaround for her party, which had been hemorrhaging voter support in recent years — until she stepped to the helm.

(中略)

It was a gamble to call a snap election. But Takaichi hoped to translate her own popularity into a stronger mandate for her Liberal Democratic Party (LDP) – which has been weakened in recent years by a scandal involving the misuse of political funds.
(Japan’s Takaichi secures historic supermajority in landslide election victory. CNN. February 9, 2026.) 


Takaichi’s strong mandate could accelerate her plans to bolster Japan’s defenses, further angering Beijing, which has cast her as attempting to revive its militaristic past.
(Japanese PM Sanae Takaichi’s party sweeps to massive election victory to keep ‘Iron Lady’ in power. Reuters. February 8, 2026.)


"mandate"という単語はラテン語の動詞mandareから来ており、その意味は命令する、指示する、というものです。よって、英単語の"mandate"も命令、指示、指図(要求)という意味であり、"mandatory"は強制的な、義務的な、という意味です。

これからすると"mandate"が「信任」を意味するというのはちょっと分かりにくい気もするかもしれません。

"mandate"はラテン語動詞mandareから来ていると書きましたが、動詞の過去分詞形mandatumが"mandate"になったもので、意味合いとしては、命令された(こと)、となります。指示された、託された(こと)、という意味であり、委任、委託という意味合いでもあるのです。

政治のコンテクストにおける「信任」の意味合いは後から加わったもののようですが、選挙の候補者に対し有権者が投票という形でお墨付きを与える、標榜する政策を後推しするというのは有権者の指示するところを実行せよとの命令であり、委任であると捉えるならば納得のいく話です。

以下、最後に引用するのは他所の国のお話ですが、逆に信任を失いつつあるという首相の件です。


Growing fragmentation within Starmer’s Labour Party—as well as a series of high-profile resignations at Downing Street—have tested the British leader’s mandate just 19 months after taking office.
(Alexandra Sharp. Will Britain’s Labour Party Survive the Epstein Files? Foreign Policy. February 10, 2026.)


2026年2月10日火曜日

breather

ミラノで冬季オリンピックが開催中です。各国の代表選手が鎬を削る中、ネットやSNS上での選手に対する誹謗中傷対策がこの時代には不可欠だという新聞記事を先日読みました。

ところで、アメリカのフィギュアスケート代表選手が記者会見でトランプ政権に批判的な見解を述べたところ、やはり選手のSNSアカウントには批難のコメントが殺到したということです。


American Olympic figure skater Amber Glenn said Saturday she will limit her social media intake after she said she received "hate."

Glenn was critical of the Trump administration in a pre-Olympics press conference earlier in the week, saying it had been a "hard time" for her and members of the LGBT community. It was one of a handful of political remarks U.S. athletes made in the lead-up to the Winter Games.

(中略)

"I did anticipate this but I am disappointed by it. I will be limiting my time on social media for my own wellbeing for now but I will never stop using my voice for what I believe in."
(Ryan Gaydos. American Olympian taking social media breather over 'hate' after Trump criticism. Fox News. February 8, 2026.)


この選手の例を待たずとも、一流のアスリートや著名人に対して寄せられる批判コメントというものは概して一方通行となり、1人に対して、実際の顔や姿が見えない多数が総勢で攻撃するような形になり、当事者は追い込まれてしまいます。

騒動を受けて選手はSNSの投稿を一時休止すると発表した模様です。

記事のタイトルには、


American Olympian taking social media breather over 'hate'


とあります。

"breather"とは呼吸を意味する"breath"、またその動詞"breathe"から来ています。

我々は普段の生活で呼吸しているということを意識することはあまり無いのではないでしょうか。呼吸を意識するのは息が上がるような時、激しい運動をした時かも知れません。"breather"には、息切れさせるような運動という意味があり、その意味からすると相反するようですが、息切れする運動から一転して一呼吸置くこと、休息を得るという意味でも使われるようになったようです。息抜きという意味がそうですが、活動の小休止を意味します。

以前取り上げた"breathing room"もご覧下さい。