マラソンの世界記録が更新されました。それも、人類史上初の2時間を切るという新記録です。
週末行われたロンドンマラソンで、ケニア人選手が1時間59分30秒で優勝したと聞き、文字通り驚愕しました。
He came. He Sawe. He conquered. Not so very long ago, the idea of anyone running an official marathon in under two hours lurked only in the realms of the fantastical and theoretical: part holy grail, part scientific curiosity.
But over the course of one hour, 59 minutes and 30 seconds of a tumultuous spring day in London, Sabastian Sawe turned it into a brain-spinning reality. Imagine running 100 metres in under 17 seconds – and then keeping that pace up for another 26 and a bit miles. That is what the 31-year-old Kenyan did.
Once jaws had stopped crashing to the floor, the search for comparisons began. Was it up there with Sir Roger Bannister’s sub-four-minute mile in 1954? Or maybe Usain Bolt’s 100m world record of 9.58sec? Neither suggestion felt entirely outlandish. For this was an act of serene beauty and supreme destruction.
(Sean Ingle. Sabastian Sawe breaks two-hour barrier to make history in London Marathon. The Guardian. April 26, 2026.)
引用記事でも触れられていますように、マラソンでの“2時間切り”は近年の関心事ではありました。それはいずれ達成されるであろうという、いわゆる射程圏内にある目標でしたが、小生が記憶するのは2017年に行われたBreaking2と銘打った試みです。公式のレースではなく、コースを自動車レースの周回コースに設定、向かい風などの影響を最小に抑え、徹底的なペースメイクやエイドにより2時間切り達成をサポートするものでした。結果は2時間24秒と、わずか24秒届かず。
今回の記録は公式レースですから、世界が興奮の渦に巻き込まれるのも無理はありません。
さて、上記の引用で、
Once jaws had stopped crashing to the floor..
というくだりがあるのですが、この部分をどう解釈するのかしばし戸惑いました。恐らく慣用句の類いだとは思いましたが、"jaw(s) stop crashing to the floor"とはどういう意味なのか、分からなかったのです。
しばらく調べていますと、どうやらこの部分は、
jaw(s) crash to the floor
というフレーズとしてまず解釈する必要があると分かってきました。では、顎がフロアにクラッシュするとはどういうことか?類似の表現に、
jaw drops to the floor
jaw fell to the floor
jaw hit the floor
などがあるようですが、衝撃的な出来事などに際して驚嘆、驚愕することを意味します。(以前、jaw-droppingという表現を取り上げたことがあります。)
びっくりした時に口が開いてしまうのは典型的反応ですが、口が開くと顎が下がります。その顎が落下して地面に直撃する(drop、fall、hit、crash)、というのはありえないことですから、誇張表現です。
さて、引用記事に戻って、"Once jaws had stopped crashing to the floor"とは何が言いたいのか、また悩ましい。1時間59分30秒という驚異的な記録を目の前で達成された観客や関係者の驚きや興奮はまさに"jaws crash to the floor"だったに違いありません。"jaws"と複数形なのは、ひとりではなく多数の人だからでしょう。
で、その衝撃が一旦収まった(stopped)ところで、冷静にその記録の物凄さを分析するに至った、ということだと思われます。それは1マイルを初めて4分以内で走ったロジャー・バニスター選手や100メートルを9秒58で駆け抜けたウサイン・ボルト選手といった偉業にも比肩する記録である、とあります。
100メートル走を17秒以内で、というのは不可能ではありませんが、それを休みなく400回以上繰り返す、という例えもありました。