今日は日本の英文ニュース記事からの引用です。
農林水産大臣の不適切な発言を巡って、国会では野党側の厳しい追及が連日報じられています。
高市首相は問題の農水相を続投させる意向を示していましたが、もはや庇い切れなくなったかと見え、違法性があれば更迭も考えると表明したということです。
そもそもの発端は、選挙戦で自身を支持しなかった自治体の予算を削減するよう働きかけたと農水相が発言したことを週刊誌がすっぱ抜いたことでした。
この農水相発言に対し、高市首相は、それが事実であるとしたらと断った上で、
「本当に不適切なもので、本当にダサい」
と国会で答弁したのですが、報道の動画を見ていて、首相の「ダサい」という言葉のチョイスに引っかかるものがありました。
発言が不適切というのはよくある言い回しですが、発言を「ダサい」と形容するのはあまり聞いたことがありません。また国会答弁で耳にするような表現としてもどうなのかという気がします。小生の頭の中では、「ダサい」は格好が悪いとか見栄えが良く無いといった、ファッションセンスに関するものという印象が強いです。
この「ダサい」は英文記事ではどう訳されているのか?そんなきっかけで国内メディアの英文記事を(普段は取り上げないのですが)引用します。
TOKYO (Kyodo) -- Japanese Prime Minister Sanae Takaichi said Tuesday she "will not hesitate" to dismiss farm minister Kazuo Yana "if illegality is found" in connection with allegations against him, amid growing pressure from opposition parties for his resignation.
The remarks come as Yana is under fire following media reports since late September that he told supporters in his constituency in May that road budgets had been drastically cut for two municipalities whose mayors supported his rival in the February general election.
Takaichi also said at a House of Representatives session that Yana's remarks were "deeply inappropriate" and "quite honestly, lame," adding that she will "carefully consider whether he is fit to continue overseeing administrative management."
(Japan PM won't hesitate to sack farm minister if illegality found. The Mainaichi. October 14, 2026.)
コンテクストも含めて引用した毎日新聞の英語版The Mainichiは実のところ、共同通信の英文記事となります。「ダサい」に相当する英訳は"lame"という形容詞になっています。
"lame"とは、足などが不自由な、という意味ですが、
(議論・説明などが)貧弱な、不十分な、不細工な、ぎこちない
(ランダムハウス英和辞典)
という意味でも用いられるとあります。農水相が野党から追及を受けて釈明に追われていますが、歯切れも悪く、その言い訳自体苦しいものに終始していることから考えると"lame"という形容はあたっていると言えましょうか。高市首相の「ダサい」は農水相のぎこちない言い訳がましさに向けられた言葉ということになり、共同の英文記者はそのような意図を汲み取って"lame"という表現を用いたのでしょうか。
もう一つ引用します。
Tokyo, Oct. 13 (Jiji Press) -- Japanese Prime Minister Sanae Takaichi on Tuesday mentioned the possibility of replacing embattled agriculture minister Kazuo Yana for the first time.
(中略)
At a House of Representatives Budget Committee meeting on Tuesday, Takaichi described Yana's remarks as "inappropriate and really lame" and said, "I will give serious thought to whether he should be allowed to continue his role in government management."
(PM Takaichi Mentions Possibility of Replacing Embattled Minister Yana. Nippon.com. October 13, 2026.)
こちらは時事通信の英文記事なんですが、興味深いことに、「ダサい」に対する英訳は"lame"で、共同と一致しています。
日本の二大通信社が示し合わせて"lame"を訳語にしたとも思えません。「ダサい」の英訳は"lame"で決定(?!)
ちなみに、小生はかなり昔、Beyond Polite Japanese - A Dictionary of Japanese Slang and Colloquialisms(講談社インターナショナル)という本を買ったのですがそれを思い出して、果たして「ダサい」が載っているのか確認しました。その本に"dasai"として載っているエントリでは、英訳は"crappy"とあり、"lame"は無かったことから、やはり今回の記事の英訳は首相の発言の意図を深読みしたものだろうと思われます。なお、同書では"dasai"は1979年に流行、それ以前では大学のキャンパスで使われていた、との解説があります。首相は1984年に神戸大卒ということですから、ちょうど流行した時期と重なるようです。このブログ投稿直前のニュースでは問題の農林水産相は辞任表明していますが、首相は自身の「ダサい」発言を訂正し、みっともない、という意味だったと釈明しています。
さらに余談ですが、高市首相の件の発言、「本当に不適切なもので、本当にダサい」は、「本当に」という言葉を繰り返していますが、共同の英文記事では、
"deeply inappropriate" and "quite honestly, lame"
であり、異なる英語表現を使って訳していますね。時事の方は(「ダサい」を修飾するのに)"really"が使われています。
こうした訳し分けにも興味深いものがありますね。