最近30日間のアクセス数トップ3記事

2026年2月27日金曜日

dance in heaven

NBC ニュースの女性アンカーの母親が誘拐された事件の発生から1ヶ月が経とうとしていますが、依然として犯人の手掛かりは掴めていません。何より気になるのは84歳という高齢の母親の安否です。心臓ペースメーカーをつけており、持病の治療のために日々の服薬が欠かせない状況だったそうで、誘拐されて以降の健康状態が特に懸念されています。

捜査当局は犯人逮捕に繋がる有力な情報提供に懸賞金を出すとしましたが、未だ有力な情報が得られていないのが実情です。


Sources close to both the Guthries and the investigation tell CNN the family has continued to work in lock step with authorities, and the new reward was offered in consultation with law enforcement.

(中略)

In recent weeks, the FBI has offered payouts for information “leading to the location of Nancy Guthrie and/or the arrest and conviction of anyone involved in her disappearance.”

But now, after acknowledging that her mother may be “dancing in heaven,” Savannah said her family is offering up to a million dollars for “any information that leads to her recovery.”

The subtle shift in language indicates the Guthrie family’s reward does not hinge on an arrest of Nancy’s captors. It may also be a reluctant nod to an even worse tragedy.

“This is shifting to acceptance of a whole variety, or a multitude of outcomes including the fact that (Nancy) may now be deceased and they’re looking for closure,” Wackrow said, adding he finds it “shocking” that it took weeks to get to this point in such a high-profile investigation.
(Chelsea Bailey. The strategy behind the new $1 million reward in the Nancy Guthrie investigation. CNN. February 27, 2026.)


被害者家族は捜査当局による懸賞金とは別に、母親の安否確認に繋がる情報提供に100万ドルを支払うと公表しました。その意図は、もはや犯人が逮捕されるとか、母親が無事に帰ってくるとかではなく、ただただ母親がどうなったのかを知りたい、という最後の望みを託したものであると記事では分析しています。これは、す


her mother may be “dancing in heaven


という最悪のシナリオ、すなわち誘拐された母親が既にこの世に居ないという可能性を想定したものだということです。

この"dance in heaven"という表現、文字通りには天国で踊る、で慣用表現の類と思われるものの、辞書でこの表現を取り上げているものは見られません。英語では、死去した人が現生の苦しみから解き放たれて天上で安らかにあらんことを願ってこのような表現を用いるようです。"dancing in the sky"とも言うようです。

ところで、"dance"は不思議と死ぬことに関連付けられる表現のように思います。

"dance on air"(また"air-dance")は絞首刑を意味する俗語表現です。Oxford Dictionary of Euphemismには、"dance"の意味として、


to be killed by hanging


を載せています。(その意味は、"From the gyration and kicking of the victims."とあります。)また、"dance a two-step in another world"という表現は死ぬという意味で用いられるとあります。

また、フランス語ですが、"danse macabre"(dance of death)というフレーズにも「ダンス」が出てきます。


2026年2月26日木曜日

my way or highway

昨日に引き続き、人工知能(AI)の利用と規制を巡る話題です。といっても、今日取り上げるのは、AIが際限無く増長するリスクを案じて自主的に規制しようとする企業側と、政府の目的のためにはAIを最大限に活用すべきであるとする側のせめぎ合いの話です。


Defense Secretary Pete Hegseth gave Anthropic CEO Dario Amodei a Friday deadline to comply with demands to peel back safeguards on its AI model or risk losing a Pentagon contract.

He also threatened to put the AI company on what could amount to a government blacklist.

At issue is the guardrails Anthropic placed on its AI model Claude. The Pentagon, which has a $200 million contract with Anthropic, wants the company to lift its restrictions for the military to be able to use the model for “all lawful use,” according to two sources familiar with the discussions.
(Pentagon threatens to make Anthropic a pariah if it refuses to drop AI guardrails. CNN. February 25, 2025.)


元Open AIの社員であったDario Amodei氏が設立したAnthropic社はAIの脅威に対する安全対策の必要性を主張しているものですが、国防総省(戦争省)のヘグセス長官は同社AIの軍事利用に至ってはその安全対策は不要であると考えているようです。

Anthropic社のAIはベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した際の作戦にも用いられ、ヘグセス長官は同社AIの威力には感銘を受けたようです。よって、軍事利用に際して制限がかからないよう、圧力をかけているというのが背景です。意向に沿わなければ取引禁止対象企業に指定するとし、そうなると同社は政府との契約を失うことになります。

以下、この話題に関する別記事からの引用です。


Pete hegseth, America’s secretary of war, is taking a my-way-or-the-highway approach to the use of artificial intelligence on the battlefield. On February 24th he gave an ultimatum to Anthropic, maker of the Claude family of models: if it did not agree to terms set by the Pentagon on usage of its ai for defence purposes, it would face severe penalties. It is not the first time the Trump administration has publicly picked fights with companies that fail to follow its orders.
(Pete Hegseth goes to battle with Anthropic. The Economist. February 24, 2026.)


今日取り上げたいのは、


my way or highway 


というフレーズです。

Anthropic社に対してヘグセス長官は、"taking a my-way-or-the-highway approach"とあります。"my way or highway"というフレーズは「嫌なら結構(お好きなように)」というような意味で用いられるものです。

手元にある辞書には載っていませんが、アメリカ英語でよく使われる表現のようです。ネットで検索しますと、Cambridge Dictionaryのサイトでは、


used for saying that someone will only accept their own way of doing something


と定義されています。

主張や要求に従うか、従わないのであれば勝手にしろ、ということです。

これは普通の言葉で言えば、


you can take it or leave it


ということになり、受け入れるか、そうでなければ立ち去れ、という意味になります。"my way or highway"の"my way"は(話者の)要求、"highway"は道路、つまり"(take) highway"、どこへでも自分の好きなところへ行ってしまえ、という突き放した言い草になります。


2026年2月25日水曜日

red-versus-blue

人工知能(AI)を使ったチャットボットがインターネットを始めとして、教育現場にも浸透しつつあります。

最新の報告によれば、10代の子供の64パーセント以上が普段AIチャットボットを使っていると回答し、3人に1人は毎日利用していると答えたということです。

親が思っている以上にAIは子供の間に浸透している、という危機感を報じた記事からの引用です。


This data release comes amid rising safety concerns with AI chatbots, as teenagers turn to the technology for counseling. Concerning reports about bots encouraging dangerous behavior to teenagers with suicidal ideations have driven AI companies to place safeguards on these services. However, child-safety advocates say there is still more work to be done.  

Clinical psychologist Eileen Kennedy-Moore told The Hill’s “Raising America” last December that further regulations on these chatbots are “not optional.”

“This is not a red-versus-blue issue,” she said. “We all love our children, that’s something that we all have in common. So no, these companies do not get to exploit our children.”
(Sarah Davis. Parents are underestimating their teens’ use of AI chatbots: Survey. The Hill. February 24, 2026.)


AI利用にまつわる懸念という点では、未成年がAIチャットボットとの対話の果てに自殺を選んでしまったという痛ましい事件が思い起こされます。報告書では、10代の子供によるAI利用は、学習の下調べの範囲に留まらず、精神的なカウンセリングを目的とした利用にも及んでいると指摘しています。

AIの開発企業は不適切な利用や自殺企図に繋がるような利用を制限するための仕組みを設けるとしていますが、まだ緒についたばかりというところでしょうか。

児童心理学や精神発達の専門家らは、子供を守るための安全対策はまだ不十分であり(still more work to be done)、AI利用の規制は必須である(not optional)と主張しています。

専門家の言が引用されているくだりに、


This is not a red-versus-blue issue


とあるのが目を引きました。

"red-versus-blue"というのは、赤か、はたまた青か、ということですがどういう意味合いで用いられているのかとしばし考えた次第です。

日本語で白黒はっきりさせる、などと言いますが、白は正しいこと、黒は悪いこと、というイメージから来ている表現です。つまり正しいか正しくないかを、英語だと赤か青か、というのだろうかと最初は思いました。

この後に、“ We all love our children, that’s something that we all have in common.”と続きます。子供を思う気持ちは皆一緒、というところでしょうか。

"red-versus-blue"の用例を検索してみると、赤、青は対立する関係の例えとして使われているようです。よって、(子供を守りたいという思いに)敵も味方も無い、というのが妥当な解釈かと思われます。この記事における対立関係としては、AIの規制強化を望む親と、それに対して防御的な姿勢のAI開発企業といったところでしょうか。

一方、アメリカにおいて、赤は共和党の、青は民主党のカラーです。アメリカ国内における分断は赤と青の色分けで語られることがしばしばです。

2026年2月24日火曜日

coprolalia

週末の22日に英国アカデミー賞の授与式が行われたそうですが、セレモニーの最中に起きたハプニングが波紋を拡げています。

そのハプニングとは、表彰式のゲストが突如として差別的発言をしたというものなのですが、悪意や意図があって行なったものではありませんでした。

トゥレット症候群は神経発達症に分類され、自らの意思で制御できない突発的な運動や発言、「チック」と呼ばれる症状が特徴的に見られる病気です。そのトゥレット症候群を患うゲストが"N-word"を発したということです。黒人の俳優が同席する中でのハプニングでした。


The BBC has apologised for not editing out a racial slur from its Bafta Film Awards coverage after a guest with Tourette's syndrome shouted out when two black actors were on stage. 

John Davidson, whose life story inspired the film I Swear, shouted the N-word as Sinners stars Michael B Jordan and Delroy Lindo presented the first prize of Sunday's ceremony.

(中略)

Tourette's is characterised by sudden, involuntary and repetitive movements or sounds, known as tics.

Between 10% and 30% of people with the condition have tics that produce socially unacceptable words such as swearing - known as coprolalia - according to the Tourette's Action charity.

Davidson, a Tourette's campaigner from Galashiels in Scotland, who was made an MBE in 2019, shouted loudly several times before and during the Bafta ceremony.
(Steven McIntosh. BBC sorry for airing racial slur shouted by guest with Tourette's at Baftas. BBC News. February 23, 2026.)


チック(tic)という言葉を聞いたことがあると思います。フランス語から来ているこの単語は、意図せず体の筋肉が収縮したりする症状を指しますが、身体に限らず言語上の不随意なチックというものがあり、"verbaltic"などと表現されます。同じ症状を指す言葉として、記事にはもうひとつ、


coprolalia


という医学用語が出て来ます。

この"coprolalia"とは汚言と訳されます。copro-という接頭辞は汚物(特に糞便)や猥褻なことを意味するギリシャ語koprosから来ています。また、-laliaという部分は話すという意味のギリシャ語laeinに由来します。

授与式の様子を放映したBBCは発言部分を削除せずそのまま配信、そのことで批判を呼び、最終的に謝罪しました。

2026年2月23日月曜日

squirm

祝日の月曜日をいかがお過ごしでしょうか。週末から気温が上がり今日はかなり暖かくなっています。風が強く、花粉も大量に飛散しているのが難点ですが。

さて、今日の1語は、


squirm


です。記事の引用をどうぞ。


Gavin Newsom squirmed as he was grilled Sunday over the rocketing cost of living crisis battering California.

The governor tried to brush off CNN anchor Dana Bash’s fiery questions, quickly pivoting to growth in the tech and agriculture sectors.

Speaking from Nashville ahead of the launch of his memoir “Young Man In A Hurry,” Newsom was pressed on families who had ditched the Golden State for Tennessee.
(Zain Khan. Gavin Newsom squirms as he’s grilled over soaring cost of CA living: ‘People are struggling… like your mom was’. New York Post. February 22, 2026.)


"squirm"を辞書で引くと、体をくねらせる、身悶えする、などという日本語が見えます。この体を「くねらせる」というのはミミズとか蛇、虫などが細長い体を捩ることです。人が体をくねらせるのは痛みとか不快や苛立ちでそうすることから、"squirm"とはそのような感情を反映した挙動という意味合いがあります。

Merriam-Webster Dictionaryの定義は、


to twist about like a worm


とあるだけで、不快感とか苛立ちといったことには一切触れていません。"fidget"の意味合いであるともありますが、こちらは落ち着かない、そわそわしている、という意味合いです。語源は不詳となっています。

一方、American Heritage Dictionaryも同じく語源不詳となっていますが、その定義は、


1. To twist about in a wriggling, snakelike motion; writhe.
2. To feel or exhibit signs of humiliation or embarrassment.


となっており、2番目の意味には負の感情からくるものであることが見てとれます。

いずれの辞書も語源不詳で一致しているところですが、一説によれば"squirm"という単語は、"worm"あるいは"swarm"という単語に関連付けられるとの見方もあるそうです。

そして興味深いのが研究社新英和大辞典の語源欄の解説で、"squid"(イカ!)と"worm"の混成語(つまりかばん語)かもしれないとの記載があります。それ以上の説明は無いので分からないのですが、(wormはまだ分かるとして)何故イカなのであろうかという気がします。

さて、引用した記事の内容はというと、カリフォルニア州知事のニューソム氏とCNNニュースのアンカーとの対談の内容に触れたものです。

物価高騰や住居問題などでカリフォルニア州ではとても生活出来ないという人々が州外に流出している現状を質されたニューソム氏が"squirm"した、というのがその内容です。

この対談の動画を視聴したのですが、インフレや"affordability"の問題、"housing crisis"などといった指摘を受けた知事は、カリフォルニア州の経済成長、特に人工知能分野や農業での成長を語り、世界でも有数の経済規模を誇る州になったと胸を張っています。元々感情をあまり外に出さないタイプのように思いますが、その際の知事の様子には身悶えるとか体をくねらせるというような様子は全く見られません。多少の不機嫌さみたいなところ、あるいは痛いところを突かれたみたいな部分はあったのかも知れませんが、ほとんど動揺する様子も無かったというのが正直な印象です。

では記事の"squirm"とは何を指しているのか?何と訳すのが適当か?という疑問に至ります。

上述したように"squirm"という単語の定義はいまいち明確でないという印象があるのですが、研究社新英和大辞典では、


ごまかして(罪などを)逃れる


という意味を載せています。

私見ですが、記事の"squirm"という表現が意図するところは、加州の住みにくさを指摘された知事が経済成長という別の次元の話を持ち出して言い逃れをした(話しをすり替えた)という見方なのだろうと解釈します。

ちょうど、掴もうとしたウナギが手からすり抜けていくみたいに。