二期目のトランプ大統領の言動は全世界を混乱させていると言っても異を唱える人は少ないのではないでしょうか。特にイラン攻撃を巡っては、その文明を壊滅させ、石器時代に戻すと発言したり、戦争犯罪にも問われかねない民間施設への攻撃姿勢などが取り沙汰され、果たして大統領は正気なのか?とすら言われています。
そうした疑問は以前であれば野党民主党から呈されていたものですが、今日に至っては身内であり共和党やMAGAと呼ばれる支持者層からも上がっているというのが現実のようです。
President Donald Trump's behavior and comments have long led political opponents to question his mental health, but now the accusation that he is unhinged is coming from more than the usual liberal suspects in the past few weeks.
Prominent conservative pundits − from former Fox News hosts Megyn Kelly and Tucker Carlson to conspiracy theorist Alex Jones and podcaster Candace Owens − are suggesting the president is unwell.
(中略)
Jones, founder of Infowars and a longtime Trump supporter, said during a March 31 episode of his new program, "The Alex Jones Show," that GOP incumbents running for reelection need to "cut the bait" on the president before the 2026 midterm elections.
(Phillip M Bailey. MAGA dissidents join Democrats in questioning Trump's 'mental capacity'. USA TODAY. April 19, 2026.)
現実にトランプ氏の支持率は低下しており、今年行われる予定の中間選挙にもたらす影響が懸念されています。共和党議員らにしてみれば、共和党への支持者離れが加速すれば戦えない、という切実な問題と思われます。記事では、
GOP incumbents running for reelection need to "cut the bait" on the president before the 2026 midterm elections
というくだりがあります。
ここで使われている、"cut the bait"とはどういう意味なのでしょうか?
手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsには、
fish or cut bait
という表現が載っており、次のように定義されています。
You can tell someone to fish or cut bait when you want them to stop wasting time and make a decision to do something.
アメリカ英語の表現だとあります。魚を釣るか、餌を切る、というのが字句通りの訳となりますが、上記の説明からすると、2つある行動から1つに決定すべし、ということのようです。コンテクストに当てはめると、どうなるでしょうか?
トランプ政権支持で大統領の予測不能な言動に振り回され、果ては議席を失うか、あるいはトランプ氏不支持に回り、何とか中間選挙を乗り越えるか、そんな風に解釈することができそうです。
実のところ、この"fish or cut bait"という表現の由来には諸説あるらしく、コンテクストによってその意味するところや解釈にもバリエーションがあるようです。
小生のイメージでは、"cut bait"は釣り糸の(針の)先に付けた餌を切る、つまり魚を釣ることを止める、という風に思えます。つまり、"fish or cut bait"は、釣りを続けるか、(釣れないので)思い切ってやめるか、といい2つの選択肢を示している、という解釈です。そうすると、引用した記事のコンテクストとしては、トランプ政権を支持し続けるか、それもとトランプ氏を「見切って」支持をやめるか(反トランプの姿勢を鮮明にするか)、という解釈ができそうです。
しかし、この"fish or cut bait"というフレーズにおける"cut bait"とは、そもそもは釣り餌を切るという準備作業(針先に付けるために餌を細かく刻んでおくということと思われます)という意味合いであって、釣り、漁業という営みにおいて、「魚を釣る」、もしくは(そのために)「餌の準備をする」というどちらも必要な行動のいずれかの役割を担う、つまりそれ以外の役に立たないことはせず、目的達成のために必要な協力、貢献をする、という意味合いで使われたものだったようです。(Wikipedia、Phrase Finderの解説による。)
ところで、研究社新英和大辞典では、"fish or cut bait"というフレーズを米口語として、
(やるのかやらないのか)二つのうちのどちらかに決める、去就をはっきりさせる
と定義しています。(ランダムハウス英和辞書にも「去就を明らかにする」という定義が見えます。)
とすると、2つの英和辞書は"cut bait"の意味合いとして、釣りをやめる、という解釈で一致していると考えられます。
元々、"fish or cut bait"というフレーズから始まったこの慣用表現は、"cut bait"という部分の解釈の仕方に多少の余地があったことから、使われるコンテクストも様々なものとなり、「やるかやらないか」という選択肢において「やらない」という選択肢を選ぶことを意味して、"cut bait"という部分だけが単独で使われるようになったものと思われます。