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2026年9月3日木曜日

rah-rah

データセンター建設の是非を巡る論争が先鋭化し、関連記事を当ブログでも取り上げてきました。アメリカでは中間選挙を控えて政治問題化している状況にあり、データセンター建設に伴う環境や光熱費等への悪影響を不安視する有権者をどうなだめるかという政治家のスタンスが問われています。

トランプ大統領は先日、データセンター建設への反対運動は愚かで、時代に逆行する行為だと発言したようです。豊かになりたければデータセンター建設を受け入れるべきだというものです。一方、ヴァンス副大統領はデータセンター建設に対する住民の不安をある程度理解する姿勢を見せており、政権内でも微妙な立ち位置の違いが見られるということです。


President Donald Trump is doing plenty of things that must be making his party nervous ahead of the midterm elections. But high on that list is his rah-rah advocacy for much-derided AI data centers.

And his and Vice President JD Vance’s very different comments about the subject Monday underscored the GOP’s messaging problems.

While traveling to Michigan, where data centers are expected to figure significantly in races for Senate and other offices, Vance gave a very nuanced answer on the issue.
(Aaron Blake. I feel your pain vs. ‘let Data Reign’: How Trump and his VP are out of step on data centers. CNN. September 2, 2026.)


トランプ氏の姿勢、つまりデータセンターは豊かさをもたらすものだとする姿勢について、


rah-rah advocacy


と表現しているくだりがあります。ここで使われている"rah-rah"という表現は初めて見るものでした。

熱狂的な、というような意味合いの形容詞だそうです。

"rah"は"hurrah"が短縮されたもので、ご存じのように応援の掛け声で「フレー、フレー」という時のあれです。また、万歳(バンザイ!)という喝采でもあります。

記事での用例のように、形容詞的に用いられ、


rah-rah attitude
rah-rah statement
rah-rah speech


などといった言い回しが見られるほか、


is rah-rah about (something)
is rah-rah for (something)


のようなパターンでも使われます。

AIがもたらす恩恵は確かに大きなものがあるでしょう。それを支える大規模データセンターが悪いものであるはずは無い、「データセンター、バンザイ!」ということですかね。


2026年9月2日水曜日

blackball

小生はアメフトファンでもなく、競技やルールにも明るくありませんが、この選手の名前は覚えています。Collin Kaepernick、49erというチームの選手でした。

過去形なのは既に引退していて現役選手ではないからですが、ハッピーな形で引退したのではありませんでした。

10年前、ミネソタ州で警官が無辜の黒人を死なせる事件を起こし、人種差別に対する抗議が全米で起きました。いわゆる、Black Lives Matter運動です。

Kaepernick選手は試合開始前のセレモニーにおいて、国家演奏の際にグラウンドで片膝をつく抗議の姿勢を示しました。また、ナイキ広告での起用でもひと騒動がありました。当ブログで最初に関連記事を取り上げたのが2018年9月のことです。

10年を経て、Kaepernick選手のインタビューがあったようです。


The 38-year-old Kaepernick, who led the 49ers to a Super Bowl after the 2012 season, hasn’t played since the 2016 season finale, an exile that began not long after he started taking a knee during the national anthem to highlight social injustices.

“I’m not gonna support an organization that one, is actively blackballing me, but two, has targeted my brothers who have been protesting as part of this as well,” Kaepernick said.
(Colin Kaepernick says NFL is ‘actively blackballing me’ 10 years after kneeling controversy. New York Post. September 1, 2026.)


Kaepernickさんは好んでアメフトというスポーツから引退したのでは無いようです。抗議の意思を示した2016年の出来事により、NFLリーグから追われる形になってしまったようです。記事では、


actively blackballing me


とあります。

この"blackball(ing)"とは、組織などからシャットアウトすることを意味する表現だそうです。

黒いボール、ということですが、いにしえの時代に投票の際に用いられた反対票が黒色のボールであったことに因むとの解説が辞書に見られます。反対票を投じるという意味が、相手に対する敵対的姿勢、ボイコットという意味に発展したものと思われます。日本語でいうと村八分にする(ostracize)というのに近いでしょうか。

ちなみに、日本の国会における採決で用いられるのは、賛成票が白色の木札で、反対票は青色だそうです。画像検索すると、青色というよりもシアンのような感じです。しかし、反対票が青色というのは色のイメージからは少しフェイントのように思われます。黒色という方がまだしっくりくるのではと思いました。




2026年9月1日火曜日

all over the map

トランプ大統領はカナダとの国境に跨るオンタリオ湖をアメリカ湖に名称変更すると一方的に宣言し、大統領令に署名しました。

これを受けてグーグルマップはいち早く地図サービス上で名称変更を反映したと報じられています。

一方、他のネット上の地図情報サービスでは、Map Questは名称変更しないとのスタンスを明確にしているとのことです。そして、アップルの地図情報サービスですが、トランプ氏はアップルに名称変更を促しているとのことですが、現時点では対応について明確にしていない模様です。

それでは以下の記事引用をどうぞ。


Navigation platforms are all over the map so far on President Donald Trump's push to change the name of Lake Ontario to Lake America.

After Trump's Aug. 27 executive order renaming the body of water between the United States and Canada, some are eyeing platforms like Google Maps and Apple Maps to see how they plan to handle the change.

Trump's order instructs the Department of the Interior and the U.S. Board on Geographic Names to formalize the change to Lake America within 30 days. It comes amid an escalating trade war between the United States and Canada.
(Melina Khan. How maps are handling Lake Ontario to Lake America name change. USA TODAY. August 31, 2026.)


冒頭部分、


Navigation platforms are all over the map so far …


との表現があります。"all over the map"という表現は慣用表現で、混乱しているとか、まとまりが無い、一貫性を欠く、という意味合いで使われます。

世界地図など、大きな地図を拡げた時、広大な範囲のあちこちに散在しているイメージから来る表現と理解することができます。"all over the map"は多種多様であるというポジティブな意味合いで使われることもありますが、逆に言えば多種多様であるということはまとまりに欠けるとも言えるわけです。

地図に関する話題だけに"all over the map"という表現のチョイスはしゃれが効いています。


2026年8月31日月曜日

Pax Silica

パックス・シリカ(Pax Silica)という時事用語をご存知でしょうか?

時事英語と言っても良いのですが、"Pax Silica"はラテン語です。"pax"は平和(peace)を、"silica"は半導体の材料になるシリコンを意味します。また、パークス(pax)はローマ神話における平和の女神でもあります。

人工知能(AI)の時代における平和の維持体制とでもいいましょうか、アメリカは人工知能に関わるサプライチェーンの確立こそが世界平和に重要であると宣言し、同盟国の参加を呼び掛けました。

念頭にあるのは中国であり、人工知能分野における米中の競争が激化していることが背景にあります。この分野における覇者たるためには、味方をつける必要があり、日本を含む世界の同盟国に対し、アメリカ側につくのか、それとも中国につくのか、選択を迫ったとあります。


The U.S. is preparing to ‌tell dozens of countries they must pick sides in the artificial intelligence race with China, warning they will be excluded from a U.S.-led AI coalition if they also sign up for Beijing's competing framework, according to a U.S. official and an internal draft reviewed by Reuters.

Washington last year launched the Pax Silica initiative aimed at securing supply chains for AI models, semiconductors and critical minerals, amid a fierce technology rivalry with ​Beijing.

About two dozen countries have joined, including Kazakhstan, a key potential source of critical minerals that has also joined China's coalition, as well as close U.S. allies ​such as Japan, Australia and South Korea.

The draft letter, prepared by the State Department, is addressed to the 35 signatories of a U.S. "AI ⁠Opportunity Statement" signed in June, which includes members of the non-binding Pax Silica framework and other countries that have expressed a desire to align cooperation on AI with Washington.
(Michael Martina. US to tell partners they must pick sides in AI race with China. Reuters. August 15, 2026.)


"Pax Silica"はローマ帝国の時代を言った"Pax Romana"に倣った表現とされます。また、同様の表現に、


Pax Americana


があります。こちらは第二次世界大戦以降の国際平和秩序を大国アメリカが、いわゆる世界の警察として守ってきたという、その体制を指す言葉です。

ご存知のように、大国アメリカは翳りを見せており、もはや世界の警察として平和を主導する立場にもないというのが共通認識ではあります。"Pax Americana"終焉後、米中の対立を背景とした"Pax Silica"の勝者はどうなるのでしょうか。

類似表現を調べていますと、"Pax Sinica"(Sinicaは中国(Chinese)を指す)という表現もあると知りました。

また、"Pax Romana"には、強国による押し付けの平和(ランダムハウス英和辞典)との定義もあるようです。

Pax 〜で始まる類似表現は上記以外にもたくさんあるのですが、アメリカであれ、中国であれ、影響を受ける一方の立場は御免ですね・・・。


2026年8月28日金曜日

hydronym

トランプ大統領とカナダのカーニー首相の確執がエスカレートしてきています。

トランプ大統領はカナダに対する新たな関税を発動、これにカナダのカーニー首相は「ドルにはドルで対抗する」と、対抗して関税を課すことを表明しました。その後、今度はトランプ氏が、米国とカナダに跨がるオンタリオ湖(Lake Ontario)を"Lake America"に名称変更すると宣言。

このような一方的な宣言は過去にメキシコ湾を"Fulf of America"に変更すると言ったのと同じですが、またかとの感があります。

しかし、トランプ氏は本気であることを誇示したかったのでしょうか、オンタリオ湖の名称変更に関する大統領令に署名したとのことです。

これに対してカーニー首相は感情的になることなく、オンタリオ湖がアメリカ独立宣言より前からカナダのものとしてあり、それはこれからも変わることがないとSNSに投稿したということです。

そして、その投稿の中で使った、"hydronym"という言葉が注目されています。


Prime Minister Mark Carney has responded to U.S. President Donald Trump’s ludicrous decision to sign an executive order renaming Lake Ontario to “Lake America.”

However, Carney used language that might go over Trump’s head.

(中略)

Carney’s post doesn’t directly attack Trump. Instead, the prime minister pointed to the history, including the fact that Lake Ontario got its name before the Declaration of Independence of the United States of America, dating back 400 years. 

He also used a word that, based on other “big words” that the president has had to tackle, Trump might not even understand.

“We know that America is changing. Their trading relationships, their foreign policies, their national monuments, their hydronyms,” Carney said. 
(Amir Ali. Mark Carney responds to 'Lake America' using words Trump may not understand. Daily Hive. August 28, 2026.)


この"hydronym"という単語は辞書に載っていないようなのですが(Merriam-Websterのオンライン版では"hydronymy"という単語が載っていましたが)、hydro-が水を意味する接頭辞で、-onymは名前を意味する接尾辞であるという知識があれば、その意味するところは分かります。

引用したカナダのメディア記事では、


A hydronym is the proper name for a body of water like a lake, ocean, or river.
(ibid.)


と説明を付けていますが、オンタリオ湖という湖の名称、固有名詞を指す言葉であるということですね。

アメリカ大統領による一方的な名称変更を、"hydronym"という、いわゆる「ビッグワード」を使って批判したのですが、英語ネイティブのトランプ氏にも難解な表現らしく、カーニー首相の皮肉が込められているとの見方です。