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2026年7月20日月曜日

dearth

改正皇室典範が国会で成立しました。国内の議論も喧しいものがありますが、海外メディアからも注目されたようで、幾つかの記事に目を通してみました。

現在の今上陛下の皇位を継承する順序として、秋篠宮殿下、その子息の悠仁さま、そして常陸宮さま、までは明らかとなっています。しかしながらこの状況では男系男子による皇位継承が危ういとの危機感から、旧宮家との養子縁組による皇位継承を認めるというのが皇室典範改正の目玉となっています。

今上陛下には愛子さまがおられますが、女性なので皇位の継承者にはなり得ない、という点が皇室典範改正に異を唱える立場からは疑問視されていました。女性天皇では何故いけないのか、男女平等、男女共同参画の現代において時代遅れではないか、という論陣を張るものです。

海外メディアの報道もやはりこうした論調が目立ちます。CNNの記事から引用です。


Japan’s monarchy has for centuries maintained male-only succession, which is on-brand for a deeply patriarchal society where men dominate other spheres of life such as business and politics.

Now, that rule has come to threaten the very survival of the world’s oldest monarchy which, in recent decades, has spawned more daughters than sons.

To solve the dearth of heirs, government ministers have proposed reinstating former branches of the royal family, thereby expanding the pool of male successors. The changes are awaiting parliamentary approval.
(Japan is running out of royals. So why won’t it let women become emperor? CNN. July 14, 2026.)


日本という国は2600年以上に渡りひとつの皇統が途切れることなく継承されてきた、世界で唯一の国である、この伝統を断絶させてはならない、と保守派は主張します。

BBCの記事などでは、上述した皇位継承者のうち最も若い世代である悠仁さまを継ぐ男子が無くなった場合、この伝統が途切れると指摘しています。

喫緊の課題として、


the dearth of heirs


すなわち、皇位継承者の不足が問題です。

ここで使われている"dearth"に"dear"というスペルを認めることができます。実際のところ、"dearth"という単語は、手紙の書き出しで相手に対し"dear"と呼び掛けるその"dear"と関連しています。

親愛なる、という意味の"dear"は元々は高価な、貴重な、という意味がありました。安くてありふれたものに対比しての表現ですが、貴重ゆえに少ない、あるいはその逆で、少ない故に貴重、ということで、不足しているという意味合いを持つようになったものです。

2026年7月17日金曜日

schlep

飛行機で緊急脱出の際には手荷物は機内に残して身一つで逃げること、というのが常識であります。幸いなことにそのような状況に遭ったことはありませんが、飛行機に乗ると必ず緊急脱出時のインストラクションとして聞かされる内容です。

アメリカ連邦航空局(FAA)がこのルールの啓発動画をSNSで公開したところ10万回以上再生されており、注目を集めているようです。


With the friendly skies increasingly becoming an inflight free-for-all, the Federal Aviation Administration is warning passengers against one dumb and dangerous evacuation habit — trying to leave with one’s bags.

“Save a life not a bag,” the organization cautioned in a video PSA with over 100,000 views on X.

(中略)

he video was part of the “Save a Life, Not a Bag” campaign launched by the International Air Transport Association, or IATA, in June to help combat the uptick in people schlepping their suitcases during impromptu deplanings.
(Ben Cost. FAA warns that passengers are making life-threatening mistakes. New York Post. July 16, 2026.)


啓発動画作成の背景には、緊急脱出時に手荷物を持って逃げようとする乗客が増加傾向にあるということがあるようです。

記事中、


schlepping


という表現が使われていますね。

動詞の"schlep"(あるいはschlepp)はイディッシユ語からの借用語で、重い荷物を引き摺るという意味です。また、自動詞として、引き摺るようにノロノロと歩く、という意味もあります。


2026年7月16日木曜日

cilantro

アメリカ・ミシガン州で、酷い下痢の症状を呈する患者が急増しているとのニュースをここ数日目にしています。

寄生虫を原因とするサイクロスポーラ症(cyclosporiasis)と呼ばれるものだそうですが、厚生当局も本格的な調査に乗り出した模様です。

感染源は生野菜が疑われているようですが、患者への聞き取り調査ではファーストフードレストランのタコ・ベルで食事をしたと言っている人が多いということから、タコ・ベルの食材に問題があった可能性も報じられています。

タコ・ベルは原因究明への協力姿勢を示し、生野菜の取り扱いを休止すると発表しています。


Amid an outbreak of cyclosporiasis, a parasitic gastrointestinal illness that has infected 3,309 people in Michigan as of July 14, at least some Taco Bell restaurants stopped serving lettuce and cilantro, the Detroit Free Press learned after visiting six metro Detroit locations July 8-9.

Employees at Taco Bell restaurants in Trenton, Woodhaven, Wyandotte, Taylor, Riverview and Southgate all said those fresh produce items are no longer being served. No officials from the government or Taco Bell have publicly linked the fresh produce from the restaurant chain to the outbreak.
(Several Taco Bells stop serving lettuce as cyclosporiasis cases rise. Detroit Free Press. July 14, 2026.)


ファーストフードのメニューに使われる生野菜といえばまずはレタス、それにトマトやキュウリ、タマネギ(のスライス)などが思い浮かびます。

レタスは今回の一件でも感染源として濃厚と見られているらしく、別記事でもレタスはよく洗ってから食べるようにとのアドバイスを見かけます。

タコ・ベルが取り扱いを中止した野菜に、


cilantro


というものが含まれています。これは何?

辞書を引くと、コリアンダーと載っています。なるほど。

でも、コリアンダーを指す英単語としては"coriander"もあるんですね。記事でも、"coriander"と書いてあれば、カタカナの「コリアンダー」を知っている日本人にもすぐ分かるところですが、"cilantro"は辞書を引くことになります。

実のところ、"coriander"も"cilantro"もラテン語coriandrumから来ているんですね。このラテン語がcoliandrum(何故かrがlに変化?)となり、スペイン語ではcilantro となったものが英語に輸入されたようです。

ラテン語のcoriandrumはギリシャ語koriannonから来ており、ギリシャ語のkorisとは何とカメムシを指すのだそうです。この野菜の独特の臭いがカメムシを想起させたからだそうです。

お好きな方はご存知でしょうが、コリアンダーは最近流行りのパクチーと同じものを指します。癖のある香りですが、カメムシとは思いませんでしたね。

セリ科コエンドロ属に分類される植物との説明がありますが、「コエンドロ」というのも"coriander"がどう変化したものか、不思議ですね。


2026年7月15日水曜日

grease one’s way

社会的な地位のある人は交通違反も免れる、という事例のひとつでしょうか。


Nevada Gov. Joe Lombardo greased his way out of a ticket after allegedly failing to stop at a red light, simply by revealing his identity to a Las Vegas patrolman.

Bodycam footage captures the moment the officer approached the window of Lombardo’s light-gray Ford F-150, offering a polite, “Hello, how are you doing, sir?”

The highfaluting governor immediately cut him off, stating: “I’m Joe Lombardo.”
(Daniel Cody. Nevada governor pulled over, immediately flexes status and avoids red light ticket: ‘I’m Joe Lombardo’. New York Post. July 14, 2026.)


赤信号を無視したフォード車を停止させた警察官はドライバーがネバダ州知事と分かると無罪放免にしたそうですが、どういうわけかその一部始終を録画したボディカムが暴露されています。

記事は、知事が自身の名を名乗ることによって交通違反摘発を免れたとして、


greased his way out of a ticket


と表現しています。

"grease"とは潤滑油のグリスのことですが、動詞には、


(物事の)進行・開始を容易にする、促進する、早める


という意味があります。つまりは機械にグリスを塗って動きを良くすることから生まれた比喩的な意味合いです。

ここでは"grease one's way (out)"ということなのですが、要は自分自身の都合の良いように働きかけ、要求を通したり、義務を免れたりするということです。

"grease"の動詞の意味には、賄賂を使う、というものもあり、"grease one's way"に関しても多少後ろ暗いところがあるというか、批判的なニュアンスも込められた表現だと言えます。


2026年7月14日火曜日

high-tail it

昨日の記事でニューヨークの露天商とその取締りのいたちごっこという話題を取り上げましたが、その記事でもうひとつ目に留まった表現がありましたので、今日はそれを取り上げます。その表現は、


high-tail it


というフレーズです。


Stores along the busy stretch of Chinatown have been here before. Occasional police raids force illicit merchants to high-tail it when the cops show up to confiscate their ill-gotten goods — only for the unscrupulous sidewalk peddlers to set up shop again when the coast is clear.
(NYPD raids illegal NYC vendors again — but Canal Street businesses say it won’t change a thing. New York Post. July 12, 2026.)


この"high-tail it"という表現は、急いで逃げる、一目散に逃げる、という意味なのですが、"high-tail"とは畜牛の群れが急走する時尾を上げること(研究社新英和大辞典)を指すということです。(「群れ」ということは、急いで逃げるのはひとりではなくて複数というこちですかね。)

尻尾を巻いて逃げるという日本語表現にも見られるように、"tail"には敗走や脱落、落伍の意味合いがあります。"high-tail it"は尻尾を跳ね上げるくらい慌ててその場を後にする様子がリアルに感じられますね。