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2026年2月18日水曜日

infraction

本日もミラノ・コルティナ冬季オリンピックの話題です。

カーリングの試合で相手チームのルール違反の指摘を巡り紛糾、オリンピック委員会も巻き込む騒動となっています。

問題は、カナダ対スウェーデンの試合で、カナダの選手に対して、カーリングのストーンに2度触れたとのルール違反が申し立てられた、というものです。

カーリング競技のルールによると、"hog line"と呼ばれる、ターゲットの6.4メートル前に引かれたラインを超えてからはストーンにタッチすることは違反なのだそうです。

ストーンを狙った位置に如何に近いところで止めるか、カーリング競技の妙味はストーンにどのくらいの推進力を加えるか、微妙な手加減による数センチの正確さが勝敗を分けるところにあるそうです。

ルール違反を指摘したスウェーデンの選手に対し、カナダの選手が口汚い言葉で罵ったという事実もこのスキャンダルを大きなものにしました。


The foul in question is called double-touching. Under World Curling rules, when delivering a stone a player may retouch the handle as many times as they wish — as long as they do so before the hog line, the thick stripe that marks the end of the release zone. Touching the handle after the hog line — double touching — is not allowed.

(中略)

Modern stones have hog-line sensors built into the handles, so they reliably detect late release of the handle. But they don’t detect a brief touch on the granite itself. And without an umpire watching closely — or without video evidence — that kind of infraction can be difficult to spot.
(Kevin Baxter. Olympic curling scandal threatens to forever alter the sport’s culture of trust. Los Angeles Times. February 18, 2026.)


さて今日の1語ですが、「ルール違反」、「反則」を意味する"infraction"です。(紛らわしいのですが、スペルが一部分だけ異なる"infarction"という単語もありますが、こちらは梗塞という病名です。)

関連記事ではストーンがラインを超えてからタッチしたことを、cheat、foul、fault、violationといった単語で表現しています。一方、これらの単語と比べると馴染みが薄いと思われる、"infraction"という表現を使っているものが見られます。"infraction"はルール違反全般、その軽重を問わず使われる一般的な表現です。

その動詞は"infract"となりますが、語源的には"infringe"(他者の権利の侵害)と同じであると辞書の語源欄にはあり、壊すというラテン語の動詞frangereから来ているそうです。(断片を意味する"fraction"も同語源です。)

なお、このラテン語動詞には、約束を破る、という意味もあります。


2026年2月17日火曜日

clinical

ミラノ・コルティナ冬季オリンピックが盛り上がっていますが、スキーのスラローム競技の記事からの引用をどうぞ。


On Monday afternoon in Bormio, the Norwegian Atle Lie McGrath processed his grief in a novel way after the men’s slalom gold medal had slipped away. First, he threw his ski poles as far as he could and then he hid in the woods.

(中略)

Despite skiing in a blizzard, his opening run was smooth and clinical as he stopped the clock on 56.14sec.

That gave him an advantage of 0.59 over the Swiss world champion, Loïc Meillard, into the second leg. Several of his rivals – including Lucas Pinheiro Braathen, who won the giant slalom to give Brazil a first Winter Olympic medal in their history – had crashed out.
(Sean Ingle. ‘I just needed some time for myself’: Norwegian skier hides in woods after slalom gold heartache. The Guardian. February 16, 2026.)


記事はノルウェーのトップ選手が優勝を逃してしまったという話しです。レースの出だしは好調だったようですが・・・。記事のくだりに、


his opening run was smooth and clinical 


という部分があります。

"clinical"という表現が目に留まった次第です。臨床という意味がまずは思い浮かぶのですが、このコンテクストでは当てはまりません。

辞書を引いてみると、


Objective and devoid of emotion; coolly analytical
(American Heritage Dictionary)

Done or performed with excellence and precision 
(Merriam-Webster Dictionary)


などといった意味合いでも用いられると分かりました。こんな意味もあったの?と、またまた不勉強を恥じます。

"clinical"という単語はギリシャ語からラテン語を経ているのですが、遡ること印欧祖語klei-は横たわるという意味で、ギリシャ語klinikosはベッドのことだそうです。病人が横たわるベッドということから、臨床、病の治療に関する意味合いになったものです。

この"clinical"が、恐らくは臨床の現場やプラクティスから想起される、感情を極力排した客観性や分析的な態度を表す表現として使われるようになったのだと思われますが、それは1928年頃からのことらしく(Online Etymology Dictionary)、比較的最近のことのようです。

正確無比、精緻さという意味合いもやはり医学のイメージから想起されるものなのでしょう。

"clinical"という形容詞の用法としては珍しく、あまりお目にかかることは無さそうなので、記録としておきたいと思います。

2026年2月16日月曜日

This too shall pass.

ドイツ・ミュンヘンで安全保障会議が開催されています。各国の首脳や閣僚らが出席、ウクライナ問題を始めとして、世界情勢を巡る議論がされています。

その中では、トランプ米大統領の強硬的な外交姿勢も話題にのぼったようです。世界秩序に影響を及ぼす、ネガティヴな意味での取り上げられ方をした訳です。

トランプ政権からはルビオ国務長官がスピーチを行ったようです。一方、野党である民主党側からはカリフォルニア州知事のニューソム氏らが出席し、トランプ氏に対する批判的コメントがあったようです。トランプ氏の強硬的な外交姿勢が却ってEUの結束を強いものにしていると皮肉たっぷりに述べたとか。

ニューソム氏はまた、トランプ大統領の任期は残り3年であり、いずれ終わるともコメントしたようです。


US Secretary of State Marco Rubio was the centre of attention at the Munich Security Summit, as European leaders wondered apprehensively what tone he would strike in his remarks on Saturday.

While his speech did not fully allay their concerns, it has been viewed as a reassurance to allies that while US relations may have frayed under Donald Trump, they will not break.

Rubio's was not the only US political voice at the security summit, however.

And even if the secretary of state's remarks had not been so well-received – if he had sharply criticised Europeans the way Vice-President JD Vance did at the conference last year – there were other US politicians doing their best impression of the Persian poet, counselling: "This too shall pass."

"If there's nothing else I can communicate today," California Governor Gavin Newsom said at a conference event on Friday, "Donald Trump is temporary. He'll be gone in three years."
(Anthony Zurcher. 'Trump will be gone in three years': Top Democrats try to reassure Europe. BBC News. February 15, 2026.)


ニューソム氏の発言からの引用ということでは無いようですが、記事中、


"This too shall pass."


というフレーズが出て来ます。

和訳すれば、「これもまた過ぎ去る。」となります。物事に未来永劫というものはない、必ず終わりがある、というような意味合いですが、日本語で言う「諸行無常」のような概念を言い表す英語表現として定着しているものです。

関税やグリーンランド領有に関するトランプ氏のハチャメチャな言動に困惑しきりという状況ですが、それもいずれ・・・。

この表現の由来ですが、上記の引用にもありますように、ペルシャの詩人の言葉なんだそうです。

ネットを検索してみますと、以下のような記事に目が留まりました。


The phrase "this too shall pass" is often used to describe the impermanence of life and the need for longanimity in the face of suffering. Many people simply assume that the phrase comes from Sacred Scripture, but in fact it appears nowhere in the Bible. So where does it come from?

At first glance, the phrase sounds like it could be an aphorism from the ancient Greek philosopher Heraclitus, who believed the world to be in a state of constant flux. "You can't step into the same river twice," he said. Despite the similarities, however, the phrase "this too shall pass" is not found in the writings of Heraclitus.

Instead, many etymologists suspect the phrase was invented by medieval Persian poets belonging to a mystical branch of Islam called Sufism. It is interesting to note, however, that Jewish folklore also contains stories suggesting that the phrase originated with King Solomon.

In terms of its English usage, the phrase has been a part of our language since at least the mid-1800s.
(Clement Harrold. Is “This Too Shall Pass” in the Bible? St. Paul Center. February 6, 2025.)


"This too shall pass."というフレーズについては聖書、あるいはギリシャの哲人の言葉から来ているとする人もいるそうですが、実のところ聖書にもギリシャの哲人の著書にもそのものズバリの言葉は出て来ないそうです。


2026年2月13日金曜日

in or on?

13日の金曜日、です。(2015/2/132024/9/13

失礼しました。

ニューヨーク州知事のHochul氏がロングアイランド(Long Island)を訪問して市民らと交流、それをSNSに投稿したところが炎上しているという話しです。

Hochul氏は、


“I spent the day in Long Island talking with seniors, small business owners, and families,”


と投稿したのですが、何が問題なのか、お分かりでしょうか?

答えは以下の記事の引用に。


Gov. Kathy Hochul is getting roasted for saying she spent the day “in” Long Island — a gaffe that’s like nails on a chalkboard on the Queens side of the Whitestone.

The Democratic governor, who was raised upstate, made the mistake of using “in” instead of the preferred “on” in a since-deleted social media post that was preserved by a reporter and Long Islander who called it a “rookie mistake.”
(Brandon Cruz. Hochul makes ‘in’ Long Island faux pas that has locals going out of their minds. New York Post. February 12, 2026.)


SNSの投稿を見たユーザーが反応したのは前置詞の間違いでした。

知事はロングアイランドを訪問と言うのに、"in Long Island"としたのですが、この場合、"on Long Island"が正しい!

正直なところ、わたしも間違えてしまいそうです。

Hochul氏は民主党派ですが、その政策に反対する人たち、特に昨今の物価高に喘いでいる市民らからは不評で、SNSのタイムラインには知事への批判コメントで溢れています。その中には前置詞の誤用を指摘して、知事の資格が無いと言い切っているものも見られます。

今年11月に行われる予定の知事選で対立候補とされる共和党議員もこの誤用を論い、Hochul氏を攻撃しました。

Hochul氏自身誤用を認めたということでしょうか、"in Long Island"を改め、"on Long Island"と訂正した内容を再投稿していますが、一部支持者は、どうでもいい事、とも言っています。


One shopper, Joe, was fine with in or on.

“That’s kind of dumb — you’re on an island, but you’re in a town on an island, so there’s nothing wrong with saying either I don’t think,” he said.
(ibid.)


読んで納得、改めて前置詞inとonの使い分けを確認した感じです。

ロングアイランドはニューヨーク州にある、東西に長い島で、地図上にみるそれはとても大きい島に見えます。実際、最大長は190キロに及ぶといいます。知事はその広大さゆえに前置詞の選択を誤ったのでしょうか。

知事に反発する勢力による批判とは言え、前置詞の選択に目敏いのはやや意外に感じました。ロングアイランドは東西に長いと書きましたが、概して富裕層が多いとされるニューヨークシティに近い西部と、郊外の住宅地という位置付けの東部では意識の差もあるようです。つまり、ロングアイランドを島と意識するかそうでないかの違いともいえるかも知れません。富裕層のHochul氏(バッファロー出身)にはロングアイランドがしまであるという認識が欠けている、そう言いたいのかも知れません。

今日の1語はまさかの前置詞となりましたが、実は2回目、以前取り上げたのは"on"です。


2026年2月12日木曜日

ポーズ? ー pose

先週からアメリカ国内ニュースではトップで報じられている、女性ニュースキャスターの母親誘拐事件の行方が非常に気掛かりです。ほぼ毎日、何らかの更新がありますが、動機や犯人像、誘拐された母親の安否など、分からないことだらけです。。

アリゾナ州で発生したこの誘拐事件では、身代金の要求がなされたようですが、防犯カメラ映像に映った覆面の犯人映像が公開されたものの、特定には至っておらず、捜査する側も手こずっているようです。


Investigators trying to find Nancy Guthrie are posed with a daunting but familiar challenge in law enforcement: how to identify a masked person.
(Richard Winton. 'This kidnapping violates all the rules': Why cracking the Nancy Guthrie case has been so hard. Yahoo! News. February 12, 2026.)


詳細は記事をお読みいただくとして、最小限の引用をしました。"pose"という動詞が使われています。

ここでの"pose"は、


(難問・難題で)まごつかせる、困惑させる
(ランダムハウス英和辞典)


という意味です。正直を言いますと、改めて辞書を引いてそんな意味もあったんだと不勉強を恥じました。"pose"という単語は、写真を撮る時の「ポーズ」、ある姿勢を取る、という意味、また問題などを提示(提出、提起)する、置く、という意味だと暗記していましたが、その"pose"とはまた別のエントリ(単語)として載っているものです。

ところで先日、英単語を推測するワードゲームで、ヒントとして"Prepares to be captured in a photo"が与えられ、これは写真の時の「ポーズ」だとすぐに分かったんですが、"pause"というスペルの単語も浮かんできて、はて、"pose"だったか、あるいは"pause"だったか、と一瞬迷ったことを思い出しました。

"pause"は休止、一時停止、中断を意味する単語です。(ゲームの答えは"pose"ということになります。)

したがって、カタカナの「ポーズ」にあたる英単語は、


休止を意味する"pause"
姿勢を取る、置くという意味の"pose"
困らせるという意味の"pose"


の3つがあるということになります。

さて、本題はここからです。休止を意味する"pause"は同じ意味合いのラテン語pausaに由来し、それはさらに、休むという意味の後期ラテン語動詞pausareから来ていると語源欄にあります。意味も同じ、スペルも引き継いでいるので特に疑問ではありませんね。

一方、置くという意味の"pose"ですが、こちらも語源欄には、中期フランス語poser、もうひとつ遡るとラテン語動詞pausareから来ているとあるのです。そして補足説明として、「中期フランス語poserはラテン語ponere「置く、据える」の基本的語義を引き継ぎ」とあり、これは「おそらくposerがponereの過去分詞positumにたまたま似ていたことから」である、とあるのです。

これには少しびっくりしました。

フランス語やラテン語をある程度齧ったという人にはお分かりいただけると思いますが、置くという動詞の"pose"は、やはりラテン語で置くという意味の動詞であるponereから来ていると思っていたからです。上述の語源解説(ランダムハウス英和辞典)は、そうではない、と言っているのです。

同じようなスペルの単語、例えば、disposeやsuppose、proposeなど、これらの単語は一般的な接頭辞dis-やsup-、pro-などと、置くという意味のラテン語動詞ponereの組み合わせであると、知ったつもり、分かったつもりでいました。

ところが、これらの派生単語の語源欄を改めて確認してみると、接頭辞プラス、中期フランス語poserとはありますが、そこからラテン語ponereとの直接的な結び付きは無く、たまたま語義的に近しいラテン語disponereやsupponereにスペルが影響されたということなのです。

要するに、英単語の"pose"とラテン語ponereは直接のリンクは無いということになります。繰り返しになりますが、フランス語poserが、ラテン語ponere(またその過去分詞positum)に似通っていたことから、ラテン語ponereの「置く」という意味を持つようになったということなのです。(このあたり、当ブログがよく参考にさせていただいているOnline Etymology Dictionaryにも同様の解説があります。)

最後になりましたが、今日の1語、困らせるという意味の"pose"は"appose"という単語の頭音消失形であるとあります。そして、この"appose"は"oppose"(対置させる、妨害物として置く)の異形であるということです。