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2023年2月10日金曜日

DOA

昨日の投稿では、米大統領の一般教書演説がその中身とは直接関係無いハプニング(!?)で話題になっていることを取り上げましたが、今日取り上げるのは一般教書演説の中身に関する真面目なお話です(笑)

バイデン氏の演説で取り上げられたトピックの1つに、超富裕層に対する増税政策があったのですが、これに対する財界からの反発が高まっているというものです。かつて大統領候補としてのバイデン氏を支持表明してきた財界リーダーも批判の旗色を鮮明に出してきているようです。


Corporate leaders who backed President Joe Biden in the 2020 election conveyed deep skepticism that the so-called billionaire's tax Biden proposed in his State of the Union address this week would ever become law.

(中略)

The plan is "DOA and stupid to boot," billionaire investor Leon Cooperman told CNBC in an interview. Cooperman says he voted for Biden in 2020, but he accused Democrats of deliberately misleading people about how the billionaire tax proposal would work.
(Biden's billionaire tax is 'dead on arrival' in Congress, top Wall Street backers and Democratic strategists say. CNBC. February 9, 2023.)


批判コメントの中に、バイデン氏の施策を、


DOA and stupid to boot


と貶している箇所があります。"DOA"という略語をご存知でしょうか?

記事のタイトルを読めば分かりますが、"DOA"は、


dead on arrival


の頭文字を取ったものです。文字通りには、到着時には死んでいる、という意味で、事実、以下のように用いられます。


They try, they keep trying, but still there is no pulse. Finally, they load the woman into the ambulance and head for Memorial Hermann. She will be DOA - dead on arrival.
(Houston Chronicle, 2002)


負傷者が病院に搬送されたけれども、残念ながら到着時には亡くなっていた、というようなコンテクストですね。

一方、今回取り上げた記事で、"DOA"とは何を言わんとしているのでしょうか?

取り沙汰されているのは超富裕層に対する増税法案ですが、当事者にとってみれば法案が成立してしまっては困ったことになります。だから、法案は通して欲しくない。

よって、そんな法案は通る(通す)ものか、否決されるに決まっとる、という訳です。

記事後半に以下のようなくだりがあります。


The billionaire tax proposal is "completely dead on arrival," said Charles Myers, a 2020 bundler for Biden's presidential campaign and the chairman of Signum Global, an investment advisory firm.

(中略)

"Those tax increases will never get through a Republican House," added Myers. "Probably not even through a Democratic Senate."
(ibid.)


米議会は上院を民主、下院を共和が過半数を占めるという、いわゆる「ねじれ」の状況にありますが、法案が提出されても下院では通らないだろう、間違いなく否決されるだろう、とコメントされています。もしかすると、上院ですら否決されるかも知れない、というのです。

つまり、"dead on arrival" (DOA) は、法案が審議の場に到着した時点で死んでしまっている、否決必至である、ということを言っています。

元々、搬送時には死亡してしまっていた、ということを意味したこのフレーズは、このように用法が拡張されているのですが、もうひとつ興味深い用例があります。

 
After I finished, I was all excited and proud of myself. My first computer! I did it myself! I excitedly plugged it in. I pressed power and... nothing. My husband pointed out that I had forgotten to attach power to the hard drives. So I plugged those in and tried again. Press the power button and... nothing again! I was really upset, thinking I had a bad motherboard, or my parts were DOA, but noticed yet another cord I had overlooked.
(Houston Chronicle, 2011)
 
 
PC自作のお話のようですが、ここで"DOA"はコンピュータを構成する部品が端から故障してしまっていた、ということを言っていますね。いわゆる、「初期不良」というやつです。

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