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2023年3月31日金曜日

uncharted waters

逮捕されるかもしれない、とSNSに投稿していたトランプ元大統領ですが、その後しばらく検察の動きが見られなかったところ、今日になって正式に起訴されたというニュースが飛び込んできました。

公開されていないと言われる訴状の容疑は30以上に上るそうですが、現職にしろ、前職にしろ、大統領が起訴されるのは米国史上初とされます。


(CNN) Donald Trump faces more than 30 counts related to business fraud in an indictment from a Manhattan grand jury, according to two sources familiar with the case -- the first time in American history that a current or former president has faced criminal charges.

Trump is expected to appear in court on Tuesday.

The indictment has been filed under seal and will be announced in the coming days. The charges are not publicly known at this time.

(中略)

The decision is sure to send shockwaves across the country, pushing the American political system -- which has never seen one of its ex-leaders confronted with criminal charges, let alone while running again for president -- into uncharted waters.
(Donald Trump indicted by Manhattan grand jury on more than 30 counts related to business fraud. CNN. March 31, 2023.)


引用した記事の後段に、


uncharted waters


という表現が出てきます。見慣れない表現ですね。

文意を汲み取りますと、


The decision…, push(ing) the American political system… into uncharted waters


となるかと思います。最初に読んだ時、この"uncharted waters"の意味を掴みあぐねましたが、コンテクストからは何となく想像もつきます。

"uncharted"は、チャート(図、グラフ、地図)になっていない、という意味で、"waters"は海域、領海という意味です。

文字通りには、今回の起訴が米国の政治を地図に無い海域に押しやる、ということですが、つまりは、米国の政治史上経験したことの無い、未知の領域に入る、ということだと思われます。意訳すれば、前代未聞の事態、というところでしょうか。海図も無いような未知の海域に至って、どうなってしまうのか、今後何が起こるのか、といった不安要素を覗かせる表現にも思われます。

コーパスで検索すると、この"uncharted waters"の用例が多く見つかります。幾つか拾ってみました。


But those deadly records were broken again this week, and experts warn this heat wave could be evidence of a move into uncharted waters.
(PBS NewsHour, 2019)
 
 
"We're in uncharted waters," he said. "There's no precedent you can look back to..."
(Cleveland.com, 2018)
 

いずれも経験したことの無い事態、前例の無い状況、といったことがこの表現の中心的な意味にあるようです。

類似の表現に、"uncharted territory"(もしくは、territories)があります。

 
The US is entering uncharted territory, but one rife with opportunities for new forms of cooperation, some observers say.
(Christian Science Monitor, 2005)
 

今後の動向が注目されます。


2023年3月30日木曜日

pinch of salt

このところ人工知能(AI)の発達目覚ましく、新聞でAIの記事を度々見かけます。

特に話題なのがChatGPTなるモノではないでしょうか。簡単なテーマを与えれば「作文」をしてくれ、それがあまりに良く出来た内容なのでプロが書いたのと見分けがつかないほどであると聞いています。

こんな技術が当たり前になればジャーナリストやエッセイストの仕事は上がったりとか。

今後、AIの普及で取って代わられる人間の仕事はこれこれであるというような記事も見かけます。

BBCの記事から引用しました。


Artificial intelligence (AI) could replace the equivalent of 300 million full-time jobs, a report by investment bank Goldman Sachs says.

It could replace a quarter of work tasks in the US and Europe but may also mean new jobs and a productivity boom.

And it could eventually increase the total annual value of goods and services produced globally by 7%.

Generative AI, able to create content indistinguishable from human work, is "a major advancement", the report says.
(Chris Vallance. AI could replace equivalent of 300 million jobs - report. BBC News. March 29, 2023.)


ゴールドマン・サックスの報告書によれば、今後AI導入により取って代わられる職種が3億種類(?!)にも及ぶとか。

数が多すぎて理解が及びません・・・、が果たしてそんなに沢山の仕事がこの数年の内に本当にAIに取って代わられてしまうのか、疑問にも思われます。記事は以下のように続きます。


The long-term impact of AI, however, was highly uncertain, chief executive of the Resolution Foundation think tank Torsten Bell told BBC News, "so all firm predictions should be taken with a very large pinch of salt".

"We do not know how the technology will evolve or how firms will integrate it into how they work," he said.
(ibid.)


つまり、今世間で騒がれているようなAIの話は、少し割り引いて受け止めた方が良い、ということなんですが、


(take with) pinch of salt


という表現が使われています。

一つまみの塩(をもって)、という事ですが、日本語では、


話し半分に(聞く)


という表現があり、辞書の訳語もそのようになっているかと思います。

以前、"with the grain of salt"という表現を取り上げましたが、どちらも同じ意味であり、"pinch of salt"はイギリス英語で用いられることが多いようです。

さて、話し半分、つまり、聞いた事を鵜呑みにせず、割り引いて受け止める、またはちゃんと自分で咀嚼して理解する、ということですが、「ひとつまみの塩」とどういう関係があるのでしょうか?

研究社新英和大辞典で"pinch of salt"を引くと、ラテン語のフレーズ、


cum grano salis


の「なぞり」である、とあります。

この、cum grano salisを英語に逐語訳すると"with grain of salt"なのですが、遡ると、ローマの著述家プリニウス(23 - 79)の著書「博物誌」に辿り着くそうです。

尤も、プリニウスの著作中の文言はcum grano salisではなく、addito salis grano(少しの塩を
加えて)というもので、cum〜 は恐らく後世の人が作ったもので、故に「なぞり」なのだと思われます。(因みに、Merriam-Websterなどではこのcum grano salisというラテン語フレーズ自体のエントリがあります。敢えてラテン語のフレーズを使うことで、高尚な響きが出る効果を狙う人が使うのでしょうか。)

「博物誌」の記述ですが、いくつかの食材を配合することにより解毒作用をもたらすことができるというくだりがあり(Pliny; Book 23, Ch. 77)、その材料のひとつが塩(grano salis)となっています。

つまり、こういうことです — 我々が他人から見聞きすることは毒になることもあるから、一掴みの塩と共に取り入れてその毒にやられないようにすべきである — 。




2023年3月29日水曜日

full-on

アップルが"Apple Pay Later"というサービスを米国でスタートしたそうです。

新サービスではアップルの端末を用いた支払の際に、後払いを選択することができ、何と無利子で貸し付けを行うというもので、ちょっとびっくりです。

アップルは金融業者の道を模索しているのでしょうか?


With the limited launch today of a new service called Apple Pay Later, Apple will now lend money directly to users through the Wallet app on devices like the iPhone.

(中略)

Now Apple is "inviting select users to access a prerelease version of Apple Pay Later." The service will roll out to everyone "in the coming months."
(Samuel Axon. Apple Pay Later turns Apple into a full-on money lender. Ars Technica. March 29, 2023.)


記事のタイトルで、


Apple Pay Later turns Apple into a full-on money lender.


とありますが、"full-on"という見慣れない表現が目に留まりました。言わんとするところは何となく分かるような気がします。

実のところ、新サービス"Apple Pay Later"は技術的な問題などにより提供開始が遅れていたという事情があります。アップルはiPhoneやWatchデバイスにおけるApple Payやウォレットのサービスを導入し、クレジットカードやデビットカードの機能を取り込んできましたが、今回は新たにアップル自らがユーザーにお金を貸し付けるというサービスを提供するという点が新しく、それが"full-on"の言わんとするところと思われます。背景には端末販売の収益に限界が見えてきているという事があり、市場としても飽和状態なのでしょう。金融サービスの展開はある意味、多角化です。

手元の英和辞書にも"full-on"のエントリがありましたが、分かりやすい定義については検索を頼ってみました。


Full-on is used to describe things or activities that have all the characteristics of their type, or are done in the strongest or most extreme way possible.
(Collins Dictionary)


"full"という形容詞のイメージが理解を助けてくれますが、ある「モノ」の概念において期待される特徴(特長)を全て、完全に兼ね備えている、というような意味合いでしょうか。つまり、欠けているところが無い、ということだと思われます。

コーパスで検索してみますと、実に多くの用例があり、意味合いにも多少の幅があるようなのですが、意味的に近いと思われるものを拾ってみました。


Finally, a full-on, sit-down ice cream parlor in San Francisco -- a simple, soaring space in the up-and-coming Dogpatch neighborhood.
(USA Today, 2010)


...iPad Pro, which are marketed as full-on laptop replacements and start at $800.
(The Verge, 2019)


多くの用例を読んでみますと、"full-fledged"という表現にほぼ同義、置き換え可能ではないかとも思われます。


2023年3月28日火曜日

nugget

オーストラリアで一般の男性が「金塊」を掘り当てました。その価値、なんと24万豪ドル相当(日本円にして、約2,100万円)だそうです。


An Australian man armed with a budget metal detector has hit the jackpot, finding a 4.6kg rock containing gold worth A$240,000 (£130,000; $160,000).
 
The man, who doesn't want to be named, made the discovery in Victoria's goldfields - which were the heart of Australia's gold rush in the 1800s.
 
Darren Kamp, who valued and bought the specimen, said it is the biggest he's seen in his 43-year career.
 
"I was just gobsmacked... It's a once in a lifetime find," he told the BBC.
(Tiffanie Turnbull. Amateur Australian gold digger finds massive nugget. BBC News. March 28, 2023.)
 
 
金塊を発見した男性は一般の人のようですが、安物の金属探知機で探し当てたそうですから、全くの偶然というわけではなく、金塊を掘り当てることを期待していたのでしょう。尤もその価値は分からなかったので専門家のところに持ち込んで、評価額にビックリ、ということのようです。

さて、男性が見つけたのは、


a 4.6kg rock containing gold


と本文にありますが、記事のタイトルでは、


nugget


です。

そう、「ナゲット」なんですが、チキンナゲットをまず思い浮かべたあなた(私もそうですが)には、辞書を一度引いてみることをお勧めします。

"nugget"の1番目の意味は、堅いかたまり、特に「金塊」など、貴金属の塊(a native lump of precious metal)のことを指すんですね。不勉強にして知りませんでした。

また、"nugget"は、"nuggets of 〜"というフレーズで、一片の〜、といった意味合いで用いられます。

 
nuggets of information
nuggets of wisdom
nuggets of advice
 
 
"nuggets of 〜"に続く名詞は、価値があるもの、貴重なものであるという含意があります。

某ファーストフードチェーンのチキンナゲットを何も考えずに口に放り込んでばかりではいけませんね(笑)


2023年3月27日月曜日

naughty bits

米・フロリダ州の公立小学校で、ミケランジェロ作のダビデ像を教材にした授業に保護者の一部が反発し、校長が辞職に追い込まれるという事態になったそうです。

恐らく誰もが(実物は見たことがないとしても)知っていると思われるルネサンス美術の傑作ですが、一部保護者が反発したのは、若きダビデの彫像が裸像であることでした。


TALLAHASSEE, Fla. (AP) — A Florida charter school principal has been forced to resign after a parent complained sixth graders were exposed to pornography during a lesson on Renaissance art that included Michelangelo’s “David” sculpture.

The Tallahassee Democrat reported that the principal, Hope Carrasquilla, of Tallahassee Classical School resigned this week after an ultimatum from the school board’s chairman.
(Principal resigns after complaints on ‘David’ statue nudity. The Associated Press. March 25, 2023.)


一部の保護者による、子供の教材にポルノグラフィーは不適切、という主張には首を傾げたくなります。

この一件に関して、芸術とポルノグラフィーを混同しているという批判が米国のみならず、ご当地イタリアでも沸き起こっているようです。

フロリダ州地元紙のオピニオン記事に以下のようなくだりがあります。


Perhaps students, even in elementary school, know the difference between Renaissance art and porn — and if they don’t, maybe lessons like this will teach them that difference. The purpose here is to educate the children and, unfortunately, some facts sometimes make some people squeamish.

Sorry, but they’ll get over it.

But we’ll never see everyone agree in matters of taste. Many TV news reports picked up the Democrat’s story about Tallahassee Classical — but digitally blurred out the naught bits, or cropped photos of David so’s not to make anybody blush.
(Bill Cotterell. A David vs. Goliath clash of artistic taste and parental choice. Tallahassee Democrat. March 26, 2023.)


若きダビデの筋骨逞しい彫像で特に保護者が反応(!?)したのは"naught bits"のようです。

"naught bits"とは陰部(生殖器)を指す婉曲表現で、どちらかというと、"naughty bits"と表現することが多いです。(*)

記事では、こういった話題については、捉え方、感じ方は人それぞれ、とし、この件に関する報道の映像ではダビデ像の問題の部分にボカシが入れられたり、カットされているという事実に触れています。やはり意義えお唱えた一部保護者のような人々に配慮せねばならなかったのでしょうか。

私の手元に昔購入したOxford Dictionary of Euphemisms (R.W. Holder, 1996) があるのですが、その表紙に使われている絵がまさしくダビデ像のそれで、問題の部分(the naughty bits)は葉っぱで隠されているというものです。婉曲表現(euphemism)の何たるかを表した表紙と言えます。

そのDictionary of Euphemismsの中で、"naughty bits"の説明には、


naughty bits (the)
the male or female genitalia.
A usage of adults with children which makes a number of unmerited assumptions and might even implant unfortunate inhibitions.


とありました。

大人が子供に対して使う表現ではあるが、その婉曲的であること故の色々な副作用みたいなものもあると言っていると解釈しました。こちらも婉曲表現の何たるかを示しているのではないでしょうか。




* "naughty"という形容詞には特に子供がいたずら好きな、わんぱくな、という意味がありますが、ふしだらとか、みだらな、卑猥な、という意味もあり、"naughty bits"は後者の意味合いが強いようです。一方、"naught"ですが、ゼロ(0)、無の意味ですが、かつては無価値、無用といった意味があり、そこから、よこしまな、とか邪悪な、という意味でも使われていたようですので、"naught bits"でも、"naughty bits"でもまあ同じことかとも思われます。


2023年3月24日金曜日

losing steam

今朝のネットニュースのヘッドラインで、「バフムトで露失速 ウ反転攻勢へ」(ロイター)というのが目に留まりました。

その後、グーグルニュースでは同じ話題のNew York Post紙記事を見かけました。ロシア軍の「失速」を、


losing steam
running out of steam


と表現しています。


The Ukrainian military will launch a highly anticipated counter-attack “very soon,” one of the top commanders said Thursday — as Russia loses momentum in Bakhmut.

(中略)

Russia’s Wagner Group mercenaries are “losing considerable strength and are running out of steam,” Syrskyi said on social media.

“Very soon, we will take advantage of this opportunity, as we did in the past near Kyiv, Kharkiv, Balakliya and Kupiansk,” he said.
(Isabel Keane. Ukraine plans counter-offensive as Russian troops ‘losing steam’ in Bakhmut. New York Post. March 23, 2023.)


"steam"(スチーム)は蒸気、水蒸気のことで、蒸気機関の動力の源となるものです。

したがって、口語的には、


力、精力、元気、気力


といった意味合いで用いられ、力を失う(losing steam)、精魂尽きる(ruuning out of steam)といった表現になります。

以前取り上げた、




もご覧下さい。

2023年3月23日木曜日

eat the frog

"eat the frog"(カエルを食べる!?)という表現をご存知でしょうか?

引用するのは時間管理術についての記事なんですが、まずは誰にでも覚えがあると思われる体験について記述した部分から読んでみましょう。


As a person who can easily fall into procrastination and a lack of focus, I found myself constantly struggling to achieve my goals — and I couldn't afford to be so distracted.

(中略)

Every workday, I would start strong but would soon get derailed by scrolling social media, reading articles, or just aimlessly browsing the internet.

(中略)

Then I came across an article about "monk mode" on the blogging platform Medium, which is a method for giving your full attention to whatever you are working on for a set period of time.

(中略)

Monk mode changed my life by showing me how powerful my time really is when I'm disciplined and sticking to a routine. By eliminating distractions and adopting specific strategies, I was able to dramatically increase my work productivity, achieve my business goals, and truly enjoy my downtime.
(Robin Madell. I'm a software engineer who struggled with procrastination until I tried 'monk mode' — here's how it saves me up to 3 hours a day. Insider. March 22, 2023.)


インターネット、スマホ、SNSに囲まれた現代人はかつてないスピードで情報を得たり交換することが出来るようになった一方、これほど集中力を削ぐ雑音に満ちた環境というのもかつて無いのではないでしょうか。

記事では、注意散漫の原因となるものを遠ざけ、取り組まなければならないタスクに集中する1つの手段として、"monk mode"を紹介しています。周囲の雑音を遮断し、修行僧のように隠遁する、というところでしょうか。

"eat the frog"についてはこの後、"monk mode"と組み合わせると効果的な時間管理テクニックということで出てきます。


To enhance my productivity even further, I combined monk mode with other productivity hacks.

Later in the day, I also started using the Pomodoro technique. This involves working for 25 minutes straight and then taking a five-minute break.

(中略)

I also incorporated the "eat the frog" technique into my routine, which suggests you start your day by completing the most difficult or unpleasant task first. I found this helped to build momentum and set the tone for the rest of the day.
(ibid.)


お読み頂ければお分かりのように、"eat the frog"とは腰が引けるタスク、出来れば先延ばしにしたいと思うような仕事に最初に取り組む、ということです。

カエル(蛙)を可愛いと思う人もいるでしょうが、食用ガエルが好物だという人は稀でしょう。他の食べ物と一緒に供されれば、手を付けないか、後回しにするか・・・。意味の成り立ちは不明ですが、そんなところでしょうか。

同様の表現で、以前取り上げた"eat crow"もご覧下さい。


2023年3月22日水曜日

grin and bear it

ウィスキー好きの人ならば言うに及ばず、普段お酒をたしなまないという人でも、ジャックダニエルズのラベルには見覚えがあるのではないでしょうか。

スーパーのお酒コーナーでも必ずといっても良いくらい置いてあると思いますが、黒地に白抜き文字のラベルはバーボンの代名詞と言ってもいいかも知れません。

そのジャックダニエルズのラベルを真似たイヌ用のオモチャ(!?)が、商標権侵害を巡る係争に発展し、最高裁の判断に委ねられる事態になっているそうです。

まずはCNNの記事をお読みください。


Lawyers for Jack Daniel's will argue to the Supreme Court on Wednesday that a dog toy company violated federal trademark law when it parodied the distiller's bottle to sell a "Bad Spaniels Silly Squeaker" toy replete with poop-themed jokes.

The case pits the rights of a famous trademark holder against the First Amendment rights of a company that wants to use those marks to sell a humorous product.

At the center of the case is a squeaky toy created by VIP Products that is strikingly similar to Jack Daniel's bottles. Apart from the general shape of the toy, the plastic bottle, like its glass counterpart, has a similar font style and uses a black label.

VIP borrows Jack Daniel's "Old No. 7 Brand Tennessee Sour Mash Whiskey" to sell "The Old No. 2 On Your Tennessee Carpet," a reference to dog excrement. And it changes the liquor bottle's "40% ALC. BY VOL. (80 PROOF)" with "43% POO BY VOL." and "100% SMELLY."
(Devan Cole. Jack Daniel's says a dog toy company is ripping off its brand. What will the Supreme Court say? CNN. March 21, 2023.)


問題は、VIP Products社が販売するイヌ用オモチャが、ラベルから形状からジャックダニエルズの商品を模倣しているということですが、それに加えて、同社製品がイヌのウ○チを彷彿とさせるものであるということがあります。

嗜好飲料が排泄物と同一視されてしまってはブランドにとって大変な損失であるという主張は確かにその通りと思わされるものがあります。一方、VIP社は表現の自由を主張しており、両者の見解の相違は司法判断に委ねられることになったようです。商標権を巡る係争の典型例かとも思われます。

ところで、同じ話題の別記事を引用します。


WASHINGTON — The Supreme Court on Wednesday will debate whether Jack Daniel's has to grin and bear it over humorous dog "poop-themed" toys that bear a resemblance to its iconic whiskey bottles.
(Lawrence Hurley. 'Poop-themed dog toys' shaped like whiskey bottles face Supreme Court trademark showdown. NBC News. March 22, 2023.)


今回の係争は明らかにVIP社がその原因を作り出していますが、


whether Jack Daniel's has to grin and bear it over humorous dog "poop-themed" toys


という部分は、つまりそもそもの商標権を持つジャックダニエルがそれを認めるか否か、が焦点だという訳です。

ここでの、


grin and bear it


というフレーズは慣用句として定着しており、


(不愉快なことを)笑って(黙って)我慢する
(研究社新英和大辞典)


という意味で用いられます。

ご存知のように"grin"とは歯を見せて笑顔を作る所作を指します。私のイメージでは口角を上げて作り笑いをするイメージですが、外国人、特にアメリカ人にこのような所作が見られることが多いように思われます。特に面白いことがあるわけでも、嬉しいことがあるわけでもないのに作る笑顔は、ある意味本心とは別だという印象を持ちます。

"grin and bear it"という表現も同様に、本心では受け入れ難いのに、「笑って、コラえて」というような感じではないかと。

今回の話は笑って済ませられるような話ではないということで、商標権に絡む係争の事例として語り継がれることでしょう。


2023年3月21日火曜日

lettuce

およそ18年振りにアメリカ(U.S.)を訪問しました。驚いたのは物価高。日本国内のデフレに慣れ切った感覚では、街中のレストランは言うに及ばず、駅のキオスクでちょっとした飲料やスナックを買うのにも躊躇するくらいでした。円安ドル高ということもあって、毎食の支払いは悲痛を極めることに。

なので、今日読んだ記事でビックマックの平均価格が5.15 USドルと聞いても驚きません。


That’s a lotta lettuce.

The average price for a McDonald’s Big Mac in the US is now estimated at $5.15, or nearly 22% more since the pre-pandemic era, a new study shows.

The iconic burger’s price varies from state to state, with a Big Mac in Hawaii fetching the most — a whopping $5.31, according to a CashNetUSA.

New York is the next most expensive state to buy the burger, at $5.23, followed by New Jersey at $5.19 and California at $5.11.

Out of the more than 13,000 McDonald’s in the US, those in Mississippi were found to have the cheapest Big Macs, at $3.91.
(Ronny Reyes. Big Mac inflation attack: Iconic burger’s price soars. New York Post. March 19, 2023.)


日本だと牛丼並盛りの値段が引き合いに出されるところ(最近はあまり聞きませんね?)、米国ではビックマックのようです。尤も、同じマクドナルドでも値段は州によって違うらしく、最も高いのがハワイの5.31 USドル、最も安いのはミシシッピ州の3.91 USドルだそうです。

引用した記事の冒頭に、


That’s a lotta lettuce.


とあります。

ハンバーガーのバンズに挟まれたレタスを思い浮かべますが、"lettuce"には現金、それもお札の意味があります。

レタスの葉の1枚1枚を紙幣に見立てたものでしょうか。

ご存知のように、米ドル札は緑がかっているので、緑色を指す"green"には現金という意味があります。

レタスの緑色も米ドル札の意味に一役買っていることと思われます。


2023年3月20日月曜日

put one’s thumb on the scale

トランプ前大統領が今週火曜日にも「逮捕されるかも知れない」とSNSに投稿し、騒然としています。

トランプ氏が過去に不倫関係にあったとされるポルノ女優に対して口止め料を支払ったとされる疑惑の捜査が行われていることに関係するようです。

大統領経験者の逮捕となると前代未聞の事態ですが、果たして明日・・・?


House Speaker Kevin McCarthy (R-Calif.) sought to tamp down former President Trump’s call for protests in response to a possible arrest of the president in connection to a Manhattan District Attorney investigation.

(中略)

Trump said on Truth Social on Saturday that he could be arrested on Tuesday in connection with the Manhattan DA Alvin Bragg’s investigation into a hush-money payment made to adult film star Stormy Daniels during his 2016 campaign.

“Protest, take our nation back!” Trump said, sparking worries about potential violence.

(中略)

“The last thing we want to have is somebody putting their thumb on the scale simply because they don’t agree with somebody else’s political view. That is what’s wrong, and that’s what infuriates people. And this will not hold up in court,” McCarthy said.
(Emily Brooks. McCarthy calls for no protests or violence over potential Trump arrest. The Hill. March 19, 2023.)


トランプ氏はSNSの投稿で、逮捕の動きには政治的背景があると批判し、支持者に抗議することを呼びかけましたが、関係者には2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件がフラッシュバックします。

共和党の下院議長McCarthy氏はそのようなことが繰り返されてはならないと、トランプ氏の言動と支持者を牽制するコメントをしています。

ところで、同氏の発言に、


The last thing we want to have is somebody putting their thumb on the scale simply because they don’t agree with somebody else’s political view.


というくだりがあります。

ここで使われている、


putting their thumb on the scale


というフレーズは手元の辞書には載っていないようなのですが、検索すると、


自らに有利になるように操作する、誤魔化す


というような意味なのだそうです。

肉屋が肉の量り売りをする際に親指を秤の皿に載せて目方を増やし、多く見せかけるごまかしをすることから生まれた表現だそうです。

で、このニュースの文脈としてはどういう意味なのでしょうか?

McCarthy氏の発言は、支持者に抗議を呼び掛けるトランプ氏の投稿内容に関してではありますが、"putting their thumb on the scale〜"という部分については、トランプ氏の訴追を検討しているニューヨーク州検察に向けられているようです。

"because〜"以下が補足となっていますが、政治信条が異なるという動機で不正なことをするべきでない、というのは民主党サイドであるニューヨーク州検察には、敵対するトランプ氏を貶めようとする意図があるのだ、と言っているのと同じでしょう。

実にMcCarthy氏は、逮捕については政治的背景があるとして、抗議は真っ当なものとも言っています。



2023年3月17日金曜日

英語にもある!音便のはなし(5) — pumpkin

英語に見られる音便のはなしも5日目を迎えました。

感の良い読者の皆さんは、今日の単語"pumpkin"のスペルを見て、どこが音便の影響を受けているか直ぐにお判りでしょう(笑)

そう、ご想像の通り、-m- の文字は音便という、発音上の都合で挿入された文字なんですね。これまで見てきた単語と同じく、鼻音化の影響を受けています。

"pumpkin"は遡ると、ラテン語でpepo(トウナスの意)、ギリシャ語ではpopon、これは何とメロンの意味だそうです。

カボチャとメロンは全く違うものですが、ギリシャ語の動詞pepteinには熟する、また料理するという意味があり、ギリシャ語のpoponは、太陽によって(育てられて)熟した果実、という意味であり、熟して初めて食べることができる果実という意味では、カボチャもメロンも同じだったのかもしれません。

今週は英語に見られる音便を特集しました。他にも多数の例はありますが、音便のはなしは今日で一旦終わります。


2023年3月16日木曜日

英語にもある!音便のはなし(4) — incumbent

英語に見られる音便のはなし、4日目は、


incumbent


です。

ニュースで見かける"incumbent"は、現職(の)、という意味で、もっぱら以下のような用例ではないかと思います。


incumbent mayor
candidates seeking to oust incumbents


この"incumbent"という単語も鼻音化という音便の影響を受けています。

語源を見てみましょう。

"incumbent"はin-という接頭辞とcumb-という部分から成りますが、cumb- についてはラテン語cubare(座る、横になる)から来ています。原義は、あるものに寄りかかっている、という意味で、そこから特定の職務に就いている(人)という意味に、さらに現在の「現職(の)」という意味に発展しました。

つまり、-m- という綴り字は音便変化で挿入されたものです。

ラテン語cubareを語源とする他の単語には、"cubicle"、"incubation"などがあります。

2023年3月15日水曜日

英語にもある!音便のはなし(3) — harbinger

英語における音便のはなし、3日目の今日は、


harbinger


です。

The cuckoo is the harbinger of spring. (かっこうは春の先触れ。)

"harbinger"とは、予兆とか前兆、先駆者という意味ですね。

中英語ではherbegere、古フランス語ではherbergeor というスペルだったらしく、シェルターとか宿という意味でした。(ちなみに、港を意味する"harbor"も同語源です。)

昨日取り上げた、"lavender"に同じく、鼻音化という音便変化を受けて -n- が挿入され、今のようなスペルになったものです。


2023年3月14日火曜日

英語にもある!音便のはなし(2) — lavender

今週は、英語の音便現象について特集しています。

今日の単語は、


lavender


です。ご存知の通り、花のラベンダーです。

ふじ色、薄紫色の花を穂のようにつける植物です。芳香があるので香料として、匂い袋や香水に用いられますね。

この"lavender"という単語はラテン語lividus(青い)に遡るのですが、暗青色の植物(つまりラベンダー)を意味する語のスペルは*lividula というものであったそうです。

これが音便(鼻音化)を経て、livendula、lavendula と変化したそうです。

ちなみに、liv- から lav- というスペルの変化については、洗うという意味のラテン語動詞lavare の影響があるとも語源解説に見えます。

ラベンダーがお風呂の香料に用いられたことにちなむそうです。


2023年3月13日月曜日

英語にもある!音便のはなし — passenger

唐突ですが、「音便」という言葉を聞いたことがありますね?

中学校の国語で習うのでしたでしょうか?もしくは、古文の授業で出てくるのを思い出す人が多いかもしれません。

「音便」を広辞苑で引くと、


発音上の便宜から、もとの音とは違った音に代わる現象


とあります。

専門的な説明は(当方にはできないので)置くとして、綴り字を実際に口に出して言うにあたって、発音上都合の良いように変えられること、それが発音上、また綴り字において現れることであると理解して良いかと思います。

日本語における音便には4つあり、イ音便、ウ音便、撥音便、促音便です。

イ音便では「書きて」が「書いて」に、ウ音便では「早く」が「早う」、撥音便では「飛びて」が「飛んで」、促音便では「取りて」が「取って」、のように変わるというのが代表例です。

この「音便」と呼ばれる現象は日本語に限られるものではなく、英語(またその他の言語)にもあるということをご存知でしたか?

冒頭にも書きましたように、「音便」と聞くと国語や古文をまず思い浮かべますが、英語では、


euphonic change


と言います。

では、英語での音便の具体例を見てみましょう。

"passenger"という単語のスペルをよく見て下さい。

"passenger"とは電車やバス、飛行機などの乗客、旅客のことですが、通過や移動、運搬、輸送を意味する"passage"に、~する人という意味の接尾辞-erが付いたものです。

そうすると、*passager となるはずが・・・、ん!?

綴り字の a は、en と変化しています。

英単語テストで*passagerと書けば減点で、"passenger"が正しいスペルであるということになっています。

「ということになっている」というのは、論理的には*passager が正しくとも、発音の便宜上、"passenger"となったということなのです。

ちなみに、フランス語の動詞にpassager がありますが、乗客という意味の名詞は passager(女性形 passagere)で、こちらは英語のような音便による変化は無いのですが。

"passenger"に同じく、"messenger"も同じく音便の影響を受けてこのような綴りとなっています。

つまり、messageに接尾辞-erを付けて、*messager となるところ、"messenger"と変化したということです。

なお、フランス語ではやはり、messager(女性形messagere)です。

今週は英語に見られる音便の現象をいくつか取り上げたいと思います。

2023年3月10日金曜日

Dx

記事の引用をどうぞ。


The Philippines is a strong market for human resource development, with the median age at 25.3 years, and a large number of digital transformation professionals with Japanese-language skill.

(中略)

This new regional near-shore-location and off-shore-location digital transformation (DX) center was established in Cebu after other launches in China, India, and Manila. Cebu City has emerged as world's number one emerging outsourcing destination due to its talented pool of professionals.
(IBM Consulting launches new Japan Innovation Hub in Cebu City to meet rapidly growing business demand. Yahoo! Finance. February 27, 2023.)


最近の流行り言葉に、


Digital transformation(デジタルトランスフォーメーション)


というものがあります。

少々うるさく感じるくらい、政府や企業が「デジタルトランスフォーメーション」と声高に叫んでいるようです。

ところで、この"digital transformation"は新聞やウェブサイトなどの見出しで、


DX(あるいは、Dx)


と略されていますね。「内閣官房肝入りの医療DXにおいては・・・」とか。

デジタル(digital)のDはその通りですが、トランスフォーメーション(transformation)は何故 "x" なんでしょうか?そう思う人は多いようです。

"transformation"を"x"に置き換えるのは英語文化のようで、遡ると伝送や変換を意味する"transfer"を、


xfer


と略することに始まるように思われます。

つまり、trans-という接頭辞部分が "x" に置き換えられているということになるかと思います。

これは、trans-に、"across"、また"beyond"の意味があるからで、"across"の"cross"が "x" に置き換えられたということかと思います。

英語は省略形が好んで用いられますが、例えばアメリカを旅行されたこおのある方は街中にみる"PED XING"という黄色の道路標識を見たことがあるでしょう。"XING"は"crossing"の略であり、この標識は歩行者等の道路横断があるから注意せよという警告標識です。

ということで、"across"の意味を持つtrans-は自然と "x" に置き換えられたものと思われます。

例を上げますと、銀行送金を意味する"bank xfer"や、文字変換を行うキーボードの"XFER"という表記などはいずれも"transfer"を"xfer"と略したものです。

その流れで、"digital transformation"は"DX (Dx)"になったというのが分かりやすい説明でしょう。

こんにち、DX以外にも、Gx (green transformation、つまりエコ?)、とかSx (Sustainability Transformation)とか、色んな "x" が出てきており、少々うるさくも感じますが、さて、流行り言葉としてはしばらく続きそうな感じですね。


2023年3月9日木曜日

up against the wall

"up against the wall"という慣用表現があります。

行き詰まるとか、窮地に陥って、という意味です。イメージとしては、壁にぶち当たってしまった状況、物理的にそれ以上先に進めない、という感じでしょうか。

少し古い記事ですが、用例を引用します。


Bed Bath & Beyond also said Wednesday that sales at stores open for at least one year plunged 26% during its latest quarter.

(中略)

Bed Bath & Beyond is “financially up against the wall, so it’s going to be harder to stay in stock from key vendors,” she said.
(Bed Bath & Beyond is making a last-ditch effort to save itself. CNN. August 31, 2022.)


手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsでは、"come up against a brick wall"というフレーズで載っています。


If you say that you have come up against a brick wall, you mean that something is stopping you from doing what you want and preventing you from making any progress. Verbs such as 'run' and 'go' are sometimes used instead of 'come'.


2023年3月8日水曜日

egregious

昨日スターバックスにおける不当解雇の記事を取り上げました。

労働組合活動をする従業員を解雇したのは不当という判断を裁判所が下したものです。再掲します。


Starbucks has displayed "egregious and widespread misconduct" in its dealings with employees involved in efforts to unionize Buffalo, New York, stores, a National Labor Relations Board judge said in an order Wednesday.
(CNN)


ここで、


Starbucks has displayed "egregious and widespread misconduct"


という裁判所の判断が引用されているのですが、"egregious"という単語を取り上げたいと思います。

辞書には、


悪名高い、とんでもない、ひどい


というネガティブな意味が載っていますが、元々"egregious"という形容詞はその逆のポジティブな意味合いで、抜群の、卓越した、という意味でした。

それもそのはず、"egregious"の語源は、離脱を意味する接頭辞ex-と、ラテン語で群れを意味する名詞grexから成る単語です。

つまり、その意味は、群れから外れて見える(群れに埋没するのではなく、群れの中で目立って見える)ほど他に比べて優れている、というものだったのです。

時を経て、"egregious"という褒め言葉は皮肉になり、現代では悪い意味で用いられることがもっぱらです。


2023年3月7日火曜日

make whole

スターバックスが組合を設立しようとする従業員側と対立しているという話は以前にも聞いていました。

ニューヨーク州の店舗で組合活動に関わっている従業員を解雇したのは不当という司法判断が下されたと報じられています。


New York (CNN) — Starbucks has displayed "egregious and widespread misconduct" in its dealings with employees involved in efforts to unionize Buffalo, New York, stores, a National Labor Relations Board judge said in an order Wednesday.

As a result, the company must reinstate and make whole a number of workers who were let go from locations in or around Buffalo, among other remedies, NLRB administrative law judge Michael Rosas said.

The case includes 32 unfair labor charges made by Workers United against the company for its actions between August 2021 and July 2022 at 21 stores in the Buffalo area, including the first Starbucks location to unionize.
(Danielle Wiener-Bronner. Starbucks displayed 'egregious and widespread misconduct' in union fight, judge says. CNN. March 01, 2023.)


裁判官はスターバックス社に対し、解雇された従業員に償うよう命令したようです。そのくだり、


the company must reinstate and make whole a number of workers who were let go from locations in or around Buffalo, among other remedies…


という部分ですが、"reinstate"は地位の回復、つまり解雇を取り消し、従業員として改めて雇用するという意味と分かるのですが、


make whole


の意味を掴みあぐねました。

"whole"には全体とか全部、完全、という意味があります。また、無傷の、壊れていない、といった意味合いもあって、辞書には"make whole"で元の完全な状態に戻すとか修繕するといったような用例が見られますが、記事のようなコンテクストにふさわしい記述は見当たりません。

他のメディアの記事を見てみます。


An administrative law judge has ordered Starbucks to rehire seven Buffalo area workers involved in union activity and give back pay and damages to dozens of others who lost wages due to company retaliation, Starbucks Workers United reported Wednesday.
(Dale Anderson. Judge orders Starbucks to rehire workers, provide back pay. The Buffalo News. March 1, 2023.)


これを読むと、"reinstate"は"rehire"、"make whole"は、


give back pay and damages


に相当、つまり金銭的な補償をする、ということかと思われました。

ところで、"make whole"には法律用語の側面があるようで、今回のような雇用、労働に関わる話に関しては、労働者の権利を擁護するというコンテクストで"make-whole relief"という概念があるようです。


Make-whole relief means simply that the contractor restores the victim of discrimination to the position, both economically and in terms of status, that he or she would have occupied had the discrimination not occurred. This relief usually involves placing the person in his or her rightful place, meaning placing the person in the job the person would have occupied with the seniority he or she would have had if not for the discrimination.





2023年3月6日月曜日

shigella

"shigella"という見慣れない単語に目が留まりました。

記事の見出しには、米国で胃腸に感染する薬剤耐性菌のケースが増えているとあり、CDC(米国疾病予防管理センター)が注意喚起しているそうです。


The Centers for Disease Control and Prevention is warning clinicians and public health departments about an alarming rise in serious gastrointestinal infections caused by bacteria that are resistant to all generally recommended antibiotics in the United States.

A recent agency health advisory said the CDC is monitoring an increase in people infected with strains of shigella bacteria that are highly resistant to available drugs. The CDC is calling these infections “a serious public health threat.”

Shigella infections, known as shigellosis, usually cause diarrhea that can be prolonged and bloody, along with fever and abdominal cramps.
(Lena H Sun. What to know about shigella, the drug-resistant stomach bug on the rise. The Washington Post. March 3, 2023.)


"shigella"は小文字で始まる単語になっており、一般名詞の扱いになっています。"strains of shigella bacteria"ともあることから、細菌の一種を指すと分かります。

恥ずかしながら、辞書を引いて初めて知ったのですが、"shigella"とは赤痢菌(の一種)のことです。

そしてその名称は、発見者である志賀潔(1870-1957)に因み、Shiga bacillus、あるいは、Shiga dysentery bacillus とも呼ばれる、ということも知りませんでした。

"shigella"という単語は、発見者の名前であるShigaに、接尾辞-ella(〜に似た、〜に属する、の意)が付いたものです。

記事中には"shigellosis"という単語も出てきますが、こちらは病名で、ギリシャ語系の名詞の接尾辞-osisが付いたものです。

先週金曜日の"muography"に続き、日本人に因む単語が偶然にも連続しました。


2023年3月3日金曜日

muography

エジプトのピラミッドで、これまで知られていなかった部屋の存在が調査で明らかになり話題になっています。

大ピラミッドの入り口の上部辺りに位置する部分に見つかった小部屋は、幅2.1メートル、奥行き9メートルほどの細長い空間だそうです。


Egyptian antiquities officials say they have confirmed the existence of a hidden internal corridor above the main entrance of the Great Pyramid of Giza.

Video from an endoscope showed the inside of the corridor, which is 9m (30ft) long and 2.1m (7ft) wide.

The officials say it could have been created to redistribute the pyramid's weight around the entrance or another as yet undiscovered chamber.

It was first detected in 2016 using an imaging technique called muography.
(David Gritten. Egypt: Hidden corridor in Great Pyramid of Giza seen for first time. BBC News. March 3, 2023.)


人が入ることができない小部屋の様子が、内視鏡による画像で紹介されています。

このような隠された小部屋の存在がどうやって分かったのか?

引用したBBC Newsの記事によれば、


muography


と呼ばれる技術によるものだそうです。

聞き慣れない、また見たことのない単語です。

邦紙では、「ミュー粒子を用いた調査」とありました。

この"muography"という単語は辞書にも載っていないようですが、ウィキペディアによれば、muo-はミュー粒子(muon、もしくはmu-particle)を指し、-graphはギリシャ語で書く、描くという意味です。

CTスキャンという言葉はご存知でしょう。CTとは、Computer Tomographyの略で、"tomography"とは断面映像のことを言います。(接頭辞tomo-は切断の意。)

"muography"もCTと原理は同じようですが、放射線を用いるCTに比べて、より広範囲、また密度の高い物質に対して応用ずることができるそうです。

そして、"muography"の名付け親は田中宏幸東京大学教授ということです。


2023年3月2日木曜日

tech shame

最近の若い人たちはデジタルネイティブと呼ばれる世代で、幼少時からスマホやタブレット端末などに囲まれ、またそれらに触れて成長してきた世代だと言われます。

そういったデジタルネイティブの若者が就職すると、最新技術に疎い年配の社員なんかより余程アドバンテージがあるように想像しますが、現実のところ、オフィスの様々なテクノロジーには若者が戸惑うものが多いのだそうです。

例えば、スキャナー(最近はコピー、印刷、ファックス、スキャンといった機能が一体化した複合機が主流かと思います)の使い方が分からず、教えてもらわないことには仕事を進められない、とか。


Garrett Bemiller, a 25-year-old New Yorker, has spent his entire life online. He grew up in front of screens, swiping from one app to the next. But there’s one skill set Bemiller admits he’s less comfortable with: the humble office printer.

“Things like scanners and copy machines are complicated,” says Bemiller, who works as a publicist. The first time he had to copy something in the office didn’t exactly go well. “It kept coming out as a blank page, and took me a couple times to realize that I had to place the paper upside-down in the machine for it to work.”
(Alaina Demopoulos. ‘Scanners are complicated’: why Gen Z faces workplace ‘tech shame’. The Guardian. February 28, 2023.)


だいぶん前ですが、スマホやタブレットしか使ったことのない若者はパソコンを与えられても使いこなせないと聞いたことがあります。どうやって起動するのか分からず、またキーボード操作やファイルの保存、フォルダの指定といったことが分からないというような話でした。さもありなん。

入社したばかりの若者が気後れしてしまう状況を、ヒューレットパッカード(HP)社は


tech shame


と名付けたそうです。


Steve Bench runs workshops on generational differences in the corporate world. “I joke in my sessions that my Gen Z intern didn’t know how to mail a letter,” he said. “They asked me where the sticker went. I said, ‘Do you mean the stamp?’”

The tech company HP coined the phrase “tech shame”, to define how overwhelmed young people felt using basic office tools. According to the study, one in five young office workers reported “feeling judged for having tech issues”, which made them less likely to ask for help. And in another survey, the employment firm LaSalle Agency found that almost half of the class of 2022 felt “underprepared” when it came to the technical skills relevant for entering the workforce.
(ibid.)


"shame"には恥入らせるという動詞の意味があります。日本は恥の文化と言われますが、英語文化圏にも恥の概念はあるようです。(以前取り上げた、fat-shamemom-shamingもご覧下さい。)

企業は最新の情報技術を積極的に取り入れていくものですが、職場には最新ばかりではない、一昔前、あるいはオフィス特有の文化というものがあります。新入社員が戸惑いを覚えるのも仕方がない側面もあるでしょう。

オジサン、オバサン世代の社員は自信を持って!?


2023年3月1日水曜日

bite the hand that feeds you

このところまた新型コロナウィルスの起源について騒がれています。中国の武漢の研究所が起源であるという報告書が米国で改めて取り沙汰されているものですが、テスラCEOのイーロン・マスク氏が新型コロナウィルスの起源に関する話題をツイッター上でシェアしたところ、中国政府の機関紙である人民日報(傘下の英語メディア)が敏感に反応したと報じられています。


A Chinese state-run newspaper issued a warning to Tesla CEO Elon Musk after he shared reporting on the U.S. Department of Energy's "low confidence" assessment that the global Covid pandemic originated in a Wuhan laboratory.

CNBC's Eunice Yoon reported Tuesday morning on the warning from the social media pages of the Global Times, the English-language subsidiary of the government-controlled People's Daily. The Global Times warned Musk that he could be "breaking the pot of China" after the Tesla and Twitter CEO responded to tweets that asserted that the Covid pandemic originated in a Wuhan research laboratory.
(Rohan Goswami. China's CCP warns Elon Musk against sharing Wuhan lab leak report. CNBC. February 28, 2023.)


マスク氏はどちらかといえば右寄りで、新型コロナに関しては中国の責任を追求する立場といえます。それが気に食わない中国側はマスク氏を名指しして「警告」したということです。

その警告の内容というのが、


he could be "breaking the pot of China"


というように紹介されていますけれども、これは中国語の言い回し(を英訳したもの)で、英語民の使うフレーズに置き換えるならば、


(akin to the idiom) "to bite the hand that feeds you"


というフレーズに近い、と記事にはあります。


The saying is akin to the idiom "to bite the hand that feeds you," Yoon reported. Tesla has an expansive factory campus in Shanghai, and China is the electric vehicle manufacturer's second largest market.
(ibid.)


"bite the hand that feeds you"というのは、直訳すれば、食べ物を与えてくれる手に噛み付く、となりますが、


飼い主の手を噛む、恩を仇で返す
(研究社新英和大辞典)


という意味です。

テスラ社は中国に生産拠点を持っていますから、このようなコメントは同社CEOであるマスク氏に対してはある意味脅しとも取れます。

ところで、"breaking the pot of China"に相当する中国語がどういうものか興味をひかれたのですが、


马斯克,你这是在砸中国的锅吗?


という部分があり、これがマスク(马斯克)氏への「警告」ということのようです。

この中で、「锅」(guō)は料理をする鍋、釜を、「砸」(zà)は壊すという動詞の意味を表し、「砸锅」はやり損なうとかしくじる、という意味であると中日辞典に載っていました。多少、英語のフレーズ、"bite the hand that feeds you"、とは異なりますが、警告、脅しのニュアンスはやはりあるかと。