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2020年7月31日金曜日

lend voice

今年11月に行われる予定のアメリカ大統領選。

6月くらいからの世論調査では、現職のトランプ大統領が民主党候補のバイデン氏に支持率で劣るという結果が出ており、トランプ氏も焦りを隠すことができない状況なのかもしれません。

(11月に行われる)選挙結果を受け入れるか、とのインタビューにトランプ氏は明言を避けているという報道も目にしました。

そして、本日(アメリカ時間木曜日朝)、11月の大統領選は延期するべきだ、というトランプ氏の仰天発言がツイッターに投稿されました。

メディア各社は、民主主義に対する冒涜、などと批判する記事を出しています。


(CNN) — President Donald Trump explicitly floated delaying November's presidential election on Thursday, lending extraordinary voice to persistent concerns that he will seek to circumvent voting in a contest where he currently trails his opponent by double digits.

Hours later, Trump seemed to acknowledge the move was meant primarily to inject uncertainty into an election he appears determined to undermine, though didn't entirely back away from the notion of a delay.

Trump has no authority to delay an election, and the Constitution gives Congress the power to set the date for voting. Lawmakers from both parties said almost immediately there was no likelihood the election would be delayed and even some of Trump's allies said his message reflected the desperate flailing of a badly losing candidate.
(Trump floats delaying election despite lack of authority to do so. CNN. July 30, 2020.)


トランプ氏の懸念は"mail-in ballot"(郵便による投票)にあります。

集計が不当に操作されるリスクを以前から指摘しており、コロナウィルス影響下においても、有権者が投票所に赴いて直接投票することが望ましいと述べています。

一方、民主党はそのような意見表明は、トランプ氏が選挙結果自体を受け入れないためのこじつけであるとみなしているようです。

大統領選の日程を変更する権限は、現職大統領とても無いことははっきりしており、日程は米議会にその審議を行う権限が与えられているということですが、トランプ氏の爆弾発言に、トランプ氏が何をしでかすか分からないといった、警戒感が広がっているようです。

さて、今日の表現ですが、記事の冒頭で、


lending extraordinary voice to persistent concerns...


とある部分が引っ掛かったので取り上げたいと思います。

まず、"lend one's voice to..."というような動詞句の類かと思って辞書を引いてみたのですが、載っていません。

文の構造としては、「トランプ氏のツイッターでの発言」が、"persistent concern"に対して"extraordinary voice"を"lend"している、ということになるのですが、やはり"lend voice to"をどのように解釈するのか、またどう訳すのかが判然としないでいました。

ここで"persistent concern"とは、トランプ氏がまさに負けそうになっている選挙戦を回避しようとしているのではないかという恐れのことを指しています。トランプ氏が最近のインタビューで選挙結果を受け入れるかとの問いに対して明確な回答を避けたという事実、そういった状況からアメリカ国民や民主党関係者らが抱いている懸念であると思われます。

そのような懸念に"voice"(声)を"lend"(貸す)という英語の表現は何を言わんとしているのでしょう。

"voice"という単語の意味を改めて辞書で確認します。

すると、数ある定義の中で、


right of expression
also : influential power
(Merriam-Webster Dictionary)


という定義が目に留まりました。

取り上げた部分において、"voice"を"influential power"(影響、あるいは威力、勢力)に置き換えると分かりやすいと思われます。

つまり、予定されている大統領選で負けそうになっているトランプ氏が結果受け入れを拒否するのではないか、という懸念が元々あったところ、今日のツイートでの爆弾発言でその懸念がますます強まった、ということだと解釈できます。

辞書でも解説が欲しいところですが、手持ちの辞書には見当たりませんでしたので、コーパスで用例を拾ってみます。


But the Arizona Republican did not embrace the FCC proposal. Instead, he lent his voice to a chorus of powerful senators who condemned the move as an incursion on congressional power, prompting the FCC to retreat and effectively killing the idea for the time being.
(Washington Post, 2000)


上記の例では、同調する、といった訳語がぴったりきそうです。


The mayor's office did not comment about the Burgess contract, but it noted that it recently "launched new tools that will help level the playing field" for businesses owned by minorities and women. "We thank the auditor for lending his voice to the importance of a robust and accountable M/WBE program," spokeswoman Rowena Alegria said.
(Denver Post, 2014)


この例では、賛成する、と置き換えることもできそうです。

こうして見ていくと、何となくですが、"lend (one's) voice to"の意味するところが何となく見えてくるようです。


2020年7月30日木曜日

plebs

プラットフォーマーなどと呼ばれ、ネット時代に君臨する4大企業のトップが米議会での公聴会で証言に立ったそうです。

グーグル、アマゾン、フェースブック、アップルの4社は、各社の社名の頭文字を取ってGAFA(ガーファ)などと呼ばれています。

公正な競争を阻害し、市場を独占しているのではないかとの不信感が高まる中、反トラストの観点から議会の公聴会での証言を求められたようです。各社のCEOが一堂に会するのは恐らく初めてではないかと思われます。

とはいっても、新型コロナウィルスの影響もあって、公聴会自体はオンライン形式で行われたようですが。


The unquantifiably wealthy Amazon founder Jeff Bezos has shown he’s really just like the rest of us plebs after making an embarrassing tech blunder while testifying in front a US Congressional hearing into anti-competitive practices by tech companies.

Mr Bezos was called to testify alongside Facebook co-founder Mark Zuckerberg, Apple boss Tim Cook and Google head Sundar Pichai at antitrust hearings examining the size and behaviour of big tech companies in an effort to determine whether they’ve engaged in anti-competitive practices.
(Jack Gramenz. Jeff Bezos on mute during US Congress tech antitrust hearing. News.com.au. July 30, 2020.)


引用した記事はアマゾンCEOのJeff Bezos氏を取り上げています。冒頭部分で、


he’s really just like the rest of us plebs after making an embarrassing tech blunder


とあるので一体何があったのやら、と興味を引かれました。

読み進めると、記事は以下のように続きます。


While the other three (particularly Mr Zuckerberg) are veterans of Congressional testimony, it was to be Mr Bezos’ first time speaking in front of Congress (though he didn’t have to enter the actual building, with hearings being held virtually due to the pandemic).

But despite founding one of the world’s biggest tech companies, a common tech mistake prevented him from speaking to anyone outside the room he called in from.

“Mr Bezos … you’re on mute,” Florida Republican Greg Steube told the world’s richest man when no sound accompanied Mr Bezos answer to “yes or no” questioning about whether the Chinese government was stealing technology from US companies.

“I’m sorry,” Mr Bezos said, unmuting himself.
(ibid.)


オンラインで参加したBezos氏は、自身のデバイスがミュートになっているのに気が付かず、共和党議員に「ミュートになってますよ」と指摘されて、改めて発言をした、というだけのことなのですが、


he’s really just like the rest of us plebs


とあげつらわれてしまいました。

コロナウィルスの影響で自宅でのリモートワークを余儀なくされている平民サラリーマンにはお馴染みかもしれません。

オンライン会議で発言時にうっかりミュート設定のままになっていて同じ事を2回、3回と喋らなくてはならないというのは誰しも1度くらいは経験しているものと思われます。

今日の単語、"plebs"は平民、とか一般大衆という意味です。ラテン語で下層民を意味する名詞plebes(あるいは、plebs)から来ています。

ところで、英単語の"plebs"は見たところ複数形に見えますよね?単数形である"pleb"に複数形語尾-sが付いたように見えます。

確かに、辞書のエントリには"pleb"もあり、"pleb"と"plebs"は単数、複数のセットといえなくもないのですが、これが辞書によって扱いが違うという状況があり、ややこしいのです。

ランダムハウス英和辞書では、“pleb”が単数、“plebs”が複数という扱いです。

一方、研究社の新英和大辞典(第五版)では、“plebs”は単数扱いで、複数形は“plebes”です。

さらにややこしいのですが、もう1つ"plebe"という単語もあり、こちらも同じラテン語から来ています。

ラテン語名詞のスペルはplebes(plebs)ですが、こちらは語末の-sが複数形を想起させますが、単数形です。ちなみに、複数形は、(単数形をplebesとした場合、単複同形になりますが)plebesです。

なまじラテン語を知っているとややこしいことこの上ありません。

同じくラテン語plebsを語源とする単語である、"plebiscite"も参考にどうぞ。


2020年7月29日水曜日

cameo

先日行われた米下院の司法委員会の様子を伝える記事から引用しました。


A variety of MSNBC and CNN hosts made cameos during Attorney General William Barr's testimony before the House Judiciary Committee on Tuesday when Rep. Jim Jordan, R-Ohio, used his opening statement to put an emphasis on mainstream media’s efforts to paint sometimes violent protesters as “peaceful.”

“I want to thank you for defending law enforcement, for pointing out what a crazy idea this defund the police policy ... whatever you want to call it, is, and standing up for the rule of law,” Jordan said. “We have a video we want to show that gets right to this point.”

Jordan then played a powerful video montage featuring a variety of mainstream media members referring to recent protests as “peaceful,” which included everyone from CNN’s Don Lemon to NBC News’ Chuck Todd dismissing violence amid images of burning buildings and attacks on law enforcement.

The video -- which irked House Judiciary Committee Chairman Jerrold Nadler, D-N.Y. -- featured MSNBC host Ali Velshi famously declaring he was covering a "mostly a protest" despite a building burning right behind him.
(Brian Flood. Don Lemon, Chuck Todd make cameos at Barr hearing when Jim Jordan plays video of 'peaceful' protesters. Fox News. July 28, 2020.)


委員会の冒頭で、黒人男性暴行死をきっかけに全米に拡大したデモのビデオ映像が流されたようです。

具体的には、暴徒化したデモとそれに対応する警官隊、またそれらを報道するメディアの報道ぶりを取り上げたものです。

記事のタイトルと、引用した部分の冒頭に、"cameo"という単語が使われているのですが、最初は意味が分かりませんでした。(記事にアクセスしたのは、下院司法委員会に関心があったなどということではなく、“cameo”の意味するところに関心があったのです。)

「カメオ」(cameo)と聞いて、カメオ細工の宝飾品を思い浮かべる人がほとんどでしょう。カメオ細工などに縁がありませんが、私も漠然と宝飾品を意味する名詞というくらいの知識しかなく、それ以外の意味があるとは知らなかったのですが、辞書を引いてみて、


(文学、劇で主題を引き立てるための)印象的な場面、山場、さわり
(映画やテレビの一場面に限られた)名優の登場;スターの顔見せ場面
(ランダムハウス英和辞書)


という意味があることを初めて知りました。

記事のビデオ映像を見ていただくと分かるのですが、司法委員会で共和党議員が映像を流したのは、暴徒化したデモ集団を報道するメディアが、CNNを始めとして、一様に"peaceful"と容認する表現をしていることへの批判からです。

黒人男性の暴行死はあってはならないことであり、決して許されることではありませんが、店舗の略奪や放火、果ては警官に死傷者が出るようなデモはもはや"peaceful"とは言えないでしょう。

で、"cameo"の話に戻りますと、ビデオ映像は大手メディアのレポーターが口々に"peaceful"と発言する部分があり、このことを"cameo"と言っているのだろうと理解しました。

ところでMerriam-Websterでは、"cameo"の定義に以下のようにあります。


a usually brief literary or filmic piece that brings into delicate or sharp relief the character of a person, place, or event


ここで、"sharp relief"とある部分が手掛かりになります。

つまり、カメオ細工が浮き彫りをほどこした宝飾品であることになぞらえて、映像において特定の人物とか出来事を浮き立たせるような効果を狙った編集行為を指すということなのです。

"cameo"のもう1つの意味に、


a small theatrical role usually performed by a well-known actor and often limited to a single scene


というものもありますが、こちらは大物俳優や著名人がドラマや映画の一場面に少しだけ登場するようなことを指しています。これもある意味、その大物俳優の存在が際立っているという状況がある訳で、意味合いとして理解できますね。日本語では、映画やドラマのクレジットで、「友情出演」とか「特別出演」とか出てきますが、あれのことですね。


2020年7月28日火曜日

brushing scam

昨日の投稿で、正体不明の植物の種らしきものが送り付けられる事例がアメリカで多発しているという話題を取り上げましたが、その中で"brushing scam"なる可能性もあるということでした。

それで今日はこの"brushing scam"を取り上げます。


RICHMOND, Va. (CBS19 NEWS) -- The Better Business Bureau is warning residents about a kind of scam that is called "brushing."

According to a release, boxes of merchandise that the resident didn't order from Amazon show up with no return address except that of Amazon and the resident does not know who ordered the items.

BBB says companies, usually foreign and third-party sellers, will send items by using a person's address and Amazon information with the intention to make it look as though that person wrote a positive online review of their merchandise and that the resident is a verified buyer of such merchandise.

The release says the company would then post a fake, positive review to improve the ratings of its products, which will help it get legitimate sales, resulting in better profits for that company.
(Warning about 'brushing' scam involving Amazon deliveries. CBS 19 News. July 17, 2020.)


日本では「送り付け商法」なる詐欺があります。注文していない品物が届き、開封したら後になって請求が来て、本来支払う必要もないお金を支払うことになるという、誠に以って怪しからん詐欺です。

"brushing scam"についても、この「送り付け商法」と同様のものかと思ったのですが、詳細は少し異なるようです。

どうやらアマゾンなどのネット通販サービスを悪用しているようなのですが、"brushing scam"を働く詐欺師はアマゾンユーザーの個人情報を何らかの手段で入手し、当人になりすまして勝手に商品を注文しているようです。

そしてこの点が最も異なるのですが、"brushing scam"の目的は不当請求することではなく、当人になりすまして当該商品に対する好意的なレビューをアマゾンに投稿することで、その商品があたかも人気があるかのように見せかける(そして、売上増を目論む)ことなのだそうです。

少し前に「ステマ」(ステルスマーケティング)という手法が流行り、問題視されたことがありました。実際に商品を購入していないのに、好意的レビューを請け負う人があぶりだされた訳ですが、"brushing scam"では実在ユーザーを騙って好意的レビューを投稿するので見分けにくくなるということになります。

この新手の詐欺的手法をなぜ"brushing"と呼ぶようになったかについては、よく分からないようで、色々な記事を当たりましたが、尤もらしい説明には辿り着けませんでした。


2020年7月27日月曜日

有難迷惑 ― unsolicited

バージニア州やユタ州などで、植物の種らしきものが入った小袋が一般家庭に郵送される事例が発生し、憶測を呼んでいます。

パッケージには中国語のような文字が書かれており、直近ではコロナウィルスの感染源が中国の武漢であったことも影響しているのでしょうか、背景や意図が不明なことから不気味さを与えているようです。(記事には新型ウィルスとの関連性には一切触れられていませんが。)

送られた種を安易に植えてしまうと、外来種であった場合には生態系への影響も懸念されることから、当局が注意を呼び掛けているということなのですが・・・。


Virginia residents have been advised not to plant any unsolicited seeds they may have received in the mail, the state’s Department of Agriculture and Consumer Services (VADACS) has advised.

Residents reported to the VDACS that they received packets of seeds in the mail with writing on the outside that appears to be Chinese. The seeds have yet to be identified, but officials speculate that the seeds may be of an invasive plant species and are advising residents not to use them.

"Taking steps to prevent their introduction is the most effective method of reducing both the risk of invasive species infestations and the cost to control and mitigate those infestations," VDACS officials said in a release.

Virginia is not the only state to receive unsolicited seed packets, with FOX 13 Salt Lake City reporting that residents across Utah have received similar deliveries.
(Peter Aitken. Virginia, Utah residents report receiving unsolicited packets of seeds in the mail reportedly from China. Fox News. July 26, 2020.)


不審な植物の種について、


unsolicited seeds
unsolicited seed packets


と表現されています。

"unsolicited"というのは、"solicit"されていないところのもの、つまり要求していない、お願いしていない、という意味ですが、この場合有難迷惑というような含意があるようです。

昨今、日本でも消費者問題にもなっている「送り付け商法」も"unsolicited"の類ではないかと。

記事を読み進めると、以下のようなくだりがありました。


Jane Rupp, president of the Better Business Bureau's (BBB's) Utah chapter, told FOX 13 the incidents could be a scam known as “brushing” where some companies will send you a product so they can post a fake review in your name.
(ibid.)


どうやら“brushing”と呼ばれる詐欺の可能性があるということです。これは送り付け商法にも似ているようですが、詳しくはまた明日。


2020年7月24日金曜日

surgeon

アメリカ国内での新型コロナウィルス感染症の拡大に歯止めがかかりません。

日本の感染状況とは桁違いですが、大統領の無策に対する批判は高まっており、感染症対策の専門チームも衛生当局も警鐘を鳴らしているのですが、アメリカ人という国民性なのでしょうか、響いていないようにも思われます。

記事の引用をどうぞ。


As confirmed coronavirus cases in the U.S. near 4 million, U.S. Surgeon General Dr. Jerome Adams said Tuesday that the country needs to lower the transmission rate of Covid-19 in order to reopen schools despite pressure from the Trump administration.

Adams told CBS on Tuesday that the "biggest determinant" of whether schools reopen will be the transmission rate in a given area, and urged people to wear masks and social distance to decrease that rate in order to protect teachers and families who are at a higher risk than students.
(Elana Lyn Gross. The Transmission Rate Of Covid-19 Needs To Decrease Before Schools Reopen, U.S. Surgeon General Says. July 21, 2020.)


登場人物に、U.S. Surgeon Generalという人がいます。

知りませんでしたが、"Surgeon General"とは、公衆衛生局の局長というポストを指すのだそうです。

ナントカ~Generalというのは英語で良くある表現で、Attorney General(司法長官)とか、Secretary General(事務総長)とかを思い浮かべると、なるほど"Surgeon General"というのも分からなくはないのですが、"surgeon"と聞くと「外科医」という日本語がまず思い浮かびます。

"surgeon"の語源を遡るとフランス語、さらにラテン語(chirurgia)、ギリシャ語(kheirourgos)にたどり着くのですが、これらの語のスペルに見られる、chir-やkheir-は、英語の接頭辞chiro-に同じく、手を意味するそうです。

つまり、"surgeon"というのは、手を使って仕事をする(手術する)人のことで、まさしく外科医がメスなどの道具を操って、熟練したスキルにより病を治すということに通じています。

"surgeon"というスペルからchiro-の接頭辞は思い浮かばなかったので、意外な発見でした。

ちなみに、"surgeon"とは別にchirurgeonという英単語もあり(二重語)、古語としてやはり外科医を意味する単語です。こちらは、接頭辞のchiro-をスペルに残していますね。


2020年7月23日木曜日

beyond the pale

ミネソタ州で発生した警官による黒人男性の暴行死をきっかけに始まったBLM運動。

Black Lives Matterのテキストは大通りいっぱいに大書されるものから、シャツやキャップ帽、新型コロナウィルス感染防止のマスク、等々、至るところで控えめながら(!?)主張しています。

一方、BLMを特定の政治的な主張と見なし、オフィスや店舗の従業員にBLMの文字が入ったシャツやマスクの着用を禁じる企業もあり、トラブルになっています。

Whole Foodsというスーパーマーケットチェーンで発生している事例では従業員による集団訴訟に発展しているという報道があります。


The federal lawsuit says the firm discriminated against black staff by selectively enforcing its dress code.

Whole Foods, owned by tech giant Amazon, forbids staff from wearing clothes with messages that are not company-related.

It denied firing a worker over the issue, but would not comment on the legal action.

(中略)

The lawsuit says more than 40 Whole Foods employees at locations across the country have been punished for wearing the Black Lives Matter masks, which became popular amid the outcry over George Floyd's death at the hands of police.
(Amazon-owned firm in Black Lives Matter legal claim. BBC News. July 21, 2020.)


このWhole Foodsでの事例では、解雇されたことを不服として従業員が訴えを起こしているものですが、会社側は解雇はBLM運動への参加とは関係なく、従業員の度重なる勤務不良に基づくものであると主張しているようです。


In a statement, Whole Foods denied that claim, saying the employee, Savannah Kinzer, had been dismissed for "repeatedly violating our time and attendance policy by not working her assigned shifts, reporting late for work multiple times in the past nine days and choosing to leave during her scheduled shifts.

(中略)

Shannon Liss-Riordan, the lawyer representing the workers, said the firm was "falsely attacking" Ms Kinzer.

"Their decision to retaliate against employees expressing support for this racial justice movement was bad enough, but their efforts to disparage an amazing activist and leader are beyond the pale," she said. "We look forward to making our argument in federal court."
(ibid.)


従業員の集団訴訟を担当する弁護士によれば、解雇措置はBLM運動に参加している従業員に対する報復的行動であると主張しています。

弁護士のコメントで、


"Their decision to retaliate against employees expressing support for this racial justice movement was bad enough, but their efforts to disparage an amazing activist and leader are beyond the pale,"


という部分があります。

この"beyond the pale"という表現を知らなかったのですが、これは「常軌を逸している」、とか「妥当性の限界を超えている」、という意味だそうです。

ここでの"pale"は青ざめているという形容詞の"pale"ではなく、柵や杭、また境界、囲い地を意味する全く別の単語の名詞です。


2020年7月22日水曜日

alarmist

新型コロナウィルス感染症対策を巡って、トランプ大統領と米国立アレルギー・感染症研究所トップのDr. Anthony Fauciの亀裂、対立が益々鮮明になっています。

トランプ大統領がDr. Fauciは"alarmist"のきらいがある、と批判したのに対し、Fauci氏自身はこれを言下に否定、むしろ"realist"だと返しました。


(CNN) — Dr. Anthony Fauci, the nation's top infectious disease expert, said Tuesday he considered himself "more a realist than an alarmist" after President Donald Trump on Sunday labeled him "a little bit of an alarmist" even as the coronavirus pandemic worsens.

"Well, I mean people have their opinion about my reaction to things. I consider myself more a realist than an alarmist," Fauci told CNN's Jake Tapper on "The Lead" when asked about Trump's characterization.

"But, you know, people do have their opinions other than that. I've always thought of myself as a realist when it comes to this."

Fauci's comments follow a tense stretch with the President that saw the White House make a concerted effort to discredit him as he became increasingly vocal about his concerns over reopening the country amid a national surge in coronavirus cases.
(Paul LeBlanc. Fauci responds to Trump: 'I consider myself more a realist than an alarmist.' July 21, 2020.)


"alarmist"、つまり"alarm"(警告)をする人(-ist)ですが、辞書で引くと、


A person who needlessly alarms others, as by spreading exaggerated rumors of impending danger.
(American Heritage Dictionary)


とあり、"needlessly"や"exaggerated"といった説明には、不必要に不安を煽っているというような、否定的な含意があるようです。

ランダムハウス英和辞書では、


人騒がせな人;心配性の人、取り越し苦労をする人


という訳語で載っていました。

正体がはっきりしない新型ウィルスに対しては、楽観よりもむしろ警戒を怠らない姿勢が必要かも知れません。勿論、不必要に不安を煽る“scaremonger”であってはならないとは思いますが。


2020年7月21日火曜日

exoticize

全米でBlack Lives Matterのムーヴメントが加速する中、黒人を始めとする有色人種を扱った商品パッケージが廃止に追い込まれるなど、人種差別的と見なされるマーケティングが見直されてきています。

そのような動きの一環だと思われるのですが、アメリカのスーパーマーケットチェーンであるTrader Joe'sが、自社ブランドのネーミングを見直すことになりました。


Trader Joe's is getting rid of product names such as Trader José's, Arabian Joe's and Trader Ming's that critics say are racist and "perpetuates harmful stereotypes."

"We made the decision several years ago to use only the Trader Joe's name on our products moving forward," spokesperson Kenya Friend-Daniel told NPR by email. She added that the company "had hoped that the work would be complete by now but there are still a small number of products going through the packaging change and we expect to be done very soon."
(Merrit Kennedy. Trader Joe's Working To Remove Product Branding Criticized As Racist. NPR. July 20, 2020.)


Trader Joe'sは一風変わったスーパーマーケットで、15年くらい前のことですが、米国北東部の都市郊外に滞在した折、買い物をしたことがあります。商品名や売り場の広告(POPというのでしょうか)にユーモアがあると言いますか、買い物をして楽しいお店だった記憶があります。

今回、Trader Joe'sが商品名やブランドを見直すことになったのは、インターネットを通じた陳情がきっかけのようです。

同スーパーマーケットの店名をもじった、Trader José'sやArabian Joe's、Trader Ming'sなどのバリエーションが、人種差別的であり、人種のステレオタイプを助長するものであると批判を受けたことによります。


The branding has come under new scrutiny after a Change.org petition demanded that the company "remove racist branding and packaging from its stores."

The petition, which has gathered more than 2,800 signatures, said the labeling "belies a narrative of exoticism that perpetuates harmful stereotypes."

The petition adds: "The Trader Joe's branding is racist because it exoticizes other cultures — it presents 'Joe' as the default 'normal' and the other characters falling outside of it — they are 'Arabian Joe,' 'Trader José,' and 'Trader Joe San.'"


ネットの陳情に同意する署名が2800人余りから寄せられたと言います。

陳情の内容に、


"The Trader Joe's branding is racist because it exoticizes other cultures...


というくだりがあります。

この、"exoticize"という単語は見たことがありませんが、記事本文では先行して"exoticism"という単語も出てくることから、"exotic"という形容詞に、動詞を作る接尾辞-izeが付加されて、動詞の意味を形作っているものであると想像がつきます。

「エキゾティック」(エキゾチック)は日本語でもカタカナになっていますが、


Intriguingly unusual or different; excitingly strange
(American Heritage Dictionary)


という定義にあるように、風変わりな、普通と異なる、という意味合いで、異国情緒をもたらすようなもの、という意味合いです。

異国情緒、といったものは、何を基準に考えるか、つまりあなたの国籍がどこにあるかによって変わってくるものだろうと思うのですが、今問題になっているのは欧米人、白色人種を基準として、それに対する有色人種という構図なのです。

"exoticize"という単語は辞書には載っていないだろうと思いきや、American Heritage Dictionaryのオンライン版ではヒットしました。


To regard or represent as foreign or exotic, especially in a stereotypic or superficial way


手元のハードカバー版(Third Edition)には載っていませんでしたが。

Trader Joe’sが見直しを決めているブランド名の中には、“Trader Joe San”というものが含まれているそうです。

~San、というのは日本語の敬称だと思いますが、これも欧米白色人種から見た(黄色人種である)日本人をステレオタイプ化した見方、ということで指弾されるようです。

個人的には特に気になりませんが。


2020年7月20日月曜日

buckle

記事の引用からどうぞ。


US hospitals buckle under surge of new coronavirus cases

A wave of new coronavirus cases in the US is threatening to crush hospital systems in a string of southern and western states, which are struggling to cope with a surge in patient numbers.

More than 15,000 patients are being treated for coronavirus in hospitals in California, Texas, Florida and Arizona, according to a Financial Times analysis of figures from state health departments. A surge in people admitted to hospital tends to act as a precursor for a rise in deaths.

The strain on hospital systems comes as the number of new coronavirus cases is increasing in several US states, primarily those that have quickly reopened their economies.
(David Crow. US hospitals buckle under surge of new coronavirus cases. Financial Times. July 1, 2020.)


新型コロナウィルス感染症の拡大は世界的に見てもまだ収束に向かっているとは到底言えない状況が続いており、日本では東京、首都圏で第2波が危惧され、米国では日々の新規感染者が日本とは桁違いに増加しています。

危機的な状況を示す指標のひとつが病床の占有率(occupancy)です。

米国では既にカリフォルニア州やテキサス州、フロリダ州、アリゾナ州など、南部の州で集中治療室のキャパシティに余裕がないレベルまで逼迫しているということです。

さて、今日取り上げたい表現ですが、記事のタイトルで、


US hospitals buckle under surge of new coronavirus cases


とあるところ、"buckle (under)"という部分に注目したいと思います。

「バックル」(buckle)というのは、ベルトやストラップなどで使われる留め金、締め具を指す名称として、日本語でも普通に使われていますね。

この単語の語源ですが、遡るところラテン語のbucca、頬(cheek)を意味する単語だそうです。

ラテン語の名詞bucculaは、防具としてのヘルメットのうち、頬の部分を守るパーツのことを指し、そのままフランス語boucléに引き継がれています。

動詞としての"buckle"には、大きく分けて2つの意味があり、1つは留め具としてのバックルのように、留める、締める、固定する、といった意味です。

もう1つの意味が、曲げる(曲がる)、歪ませる、という意味で、ここから、本日引用した記事で使われているところの意味、つまり、崩れる、屈服する、降参する、という意味に発展したようです。

先に、頬を守る防具の部分としての"buckle"の話をしましたが、もうひとつの意味として、盾の表面に付けた装飾的な飾り(bossというそうです)というものもありました。

盾の表面から出っ張っていた(bulge)ことから、曲げるとか歪ませるといった意味になったようです。

よく知っているカタカナ語ではありますが、引用記事に見られる用法はちょっと趣の異なるものではないでしょうか。


2020年7月17日金曜日

squeal

10代の女性を言葉巧みに誘い、騙して売春させるなどの罪で訴追されたJeffrey Epstein氏のニュースを初めて見たのは昨年8月でした。

その後容疑者は拘置所内で自殺し、謀殺説もあったのですが、最近になって、同容疑者と行動を共にしていた女性が逮捕されるに至りました。共謀して、多くの女性を食い物にした容疑がかけられています。

女性の逮捕により、買春に関わった有名人が芋づる式に明るみになるのではないかということなのですが、CBS Newsの記事から引用しました。


Ghislaine Maxwell, Jeffrey Epstein's former girlfriend who is accused of helping him sexually abuse underage girls, could incriminate "very well-known" people, said Virginia Roberts Giuffre, one of Epstein's alleged victims. Giuffre called Maxwell "the mastermind" behind the alleged sex trafficking.

Maxwell is facing criminal charges arising from allegations that she facilitated and participated in some of Epstein's alleged sex crimes. These are the first criminal charges lodged against her, and they come after repeated accusations by alleged victims that extend back more than two decades. She was denied bail this week.

Giuffre says Maxwell, along with Epstein, groomed and abused her and forced her to have sex with Britain's Prince Andrew when she was 17. Prince Andrew says he has no recollection of meeting Giuffre and denies having sex with her.
(Ghislaine Maxwell could "squeal" on "very well-known names," Epstein accuser Virginia Roberts Giuffre says. CBS News. July 16, 2020.)


記事のタイトルで、"squeal"という見慣れない単語が目に留まりました。

単純にこの単語を知らなかったのですが、悲鳴や金切り声を上げる、またそのような悲鳴を指す単語です。

スラングの意味として、


告げ口をする、密告する


という意味もあるらしく、記事ではその意味で使われています。


King: Do you think that Ghislaine's life is in danger?

Giuffre: Absolutely. ... If she squeals on some of the people that ... she has videos on, they won't be happy with her talking about that.
(ibid.)


Epstein氏は拘置所で自殺しましたが謀殺説が取り沙汰されました。

Ghislaine Maxwell容疑者についても、身の危険にさらされていると言わんばかりです。

“squeal”の和訳には「たれ込み」という訳語もありましたが、Merriam-Websterの定義では、


to tell someone in authority (such as the police or a teacher) about something wrong that someone has done


とあり、権威におもねるというような含意があります。

Maxwell容疑者が検察当局に今後どのような証言をするのか、怯えている人がいるのかも知れません。


2020年7月16日木曜日

moot

新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、主に大学などにおいて対面での講義からオンライン講義への移行が進んでいます。

学生が教室に集合することによる感染拡大リスクを排除するのが狙いですが、賛否両論があることはご存知の通りです。

アメリカにおいてもオンライン講義への移行は進んでいるところですが、トランプ政権がオンライン講義のみを履修する留学生に対しては今後ビザを発給しない、つまり米国内に居住できなくなる、という驚愕の方針を発表し、騒然となりました。

米国ではこれから9月の秋学期スタートを迎える中、留学生が強制退去、あるいは入国拒否の憂き目を見ることになるという恐れがありました。

このような方針の発表は少し前のことで、確か6月末くらいの記事で見たように記憶するのですが、その後、多くの批判を受けて、結局のところ、方針は撤回されたということです。


WASHINGTON – President Donald Trump's administration agreed Tuesday to rescind its controversial rule barring international students from living in the USA while taking fall classes online, a sharp reversal after the White House faced a slew of lawsuits challenging the policy.

A Massachusetts judge announced the decision during a federal court hearing in a case filed last week by Harvard University and Massachusetts Institute of Technology. Judge Allison Burroughs said the universities' request for the court to block the rule was moot because the government agreed to rescind the policy.

Monday, 18 state attorneys general had sued the Department of Homeland Security over the rule, which would have forced foreign students to leave or face deportation if they were enrolled in only online classes this fall, when experts fear expanded outbreaks of COVID-19 cases.
(Trump administration drops rule barring foreign students from taking online-only classes. USA Today. July 14, 2020.)


国土安全保障省を相手取った複数の訴訟が起こされていたようですが、最終的に方針撤回されたことに留学生の皆さんは胸をなでおろしたことでしょう。

記事ではマサチューセッツ州での訴訟の事例について取り上げられているものですが、判事の発言の引用で下記のようなくだりがあります。


...the universities' request for the court to block the rule was moot because the government agreed to rescind the policy.


ここで使われている、"moot"という単語を知らなかったので取り上げました。初めて見るものでした。

辞書を引くと、名詞、形容詞、動詞、それぞれのエントリがあり、どうやら法律に関する用語のようなのですが、いまいちピンときません。

模擬裁判、という意味や、議論の余地がある、非現実的な、仮定の、とか、純粋に学問的にする、等々、お手持ちの英和辞典を見ていただければ感じてもらえると思いますが、記事のコンテクストに当てはめた場合にしっくりとくる訳語が見当たりません。

記事のコンテクストからすると、マサチューセッツ州の訴訟では、今回の政府方針を不当であるという大学側の訴えを審理中であったと推測されますが、


途中で政府がその方針を撤回したため(because the government agreed to rescind the policy)、


訴訟そのもの(the universities' request for the cour to block the rule)が"moot"であると判決した、


というように読めます。

英和辞典ではよく分からないので、American Heritage Dictionaryで"moot"を引いてみると、法律用語の定義として、


Not presenting an open legal question, as a result of the occurrence of some event definitively resolving the issue, or the absence of a genuine case or controversy.


という説明があり、記事ではこれが相当するのではないかと思われます。

つまり、訴えの発端となっていた状況は解消されてしまったので、その根拠を失ってしまった、議論となる問題点が無くなった、ということです。

"moot"という単語の歴史は古く、古英語では法廷を意味する単語だったようです。つまり、実際に訴訟を審理する場であったということです。

その後、この"moot"は、法学生らが仮説上、仮定のケースを審理する「模擬裁判」の意味で用いられるようになったそうなのですが、そのころから、実際の訴訟に相対する概念として、「実際の問題ではない」、「仮想の、仮定の」という意味合いが"moot"に付いてくることになります。

つまり、ある訴訟についてその内容が“moot”である、というのは、もはや訴えられている事実自体が解消されてしまったので検討に値しない、という意味であると解釈することができます。



2020年7月15日水曜日

off the hook

ロシア疑惑で訴追され禁固40か月の判決が出ていたRoger Stone氏が恩赦の恵に浴したという記事を読みました。トランプ氏のお蔭です。


(CNN) — President Donald Trump on Friday commuted the prison sentence of his longtime friend Roger Stone, who was convicted of crimes that included lying to Congress in part, prosecutors said, to protect the President. The announcement came just days before Stone was set to report to a federal prison in Georgia.
(Trump commutes Roger Stone's sentence. CNN. July 11, 2020.)


CNNの記事だったのですが、その中で"off the hook"という表現が使われていました。

取り上げようと思っていてブックマークだけしていたのですが、今日になってアクセスしてみたら記事が差し替えられてしまったのか、その表現が使われていた肝心の箇所が見当たりません。

仕方ないので色々検索してみますと、この件に関して"off the hook"という表現を使っている記事はちらほら見られます。


It may have been legal for President Donald Trump to spare a political crony from prison time, but it was clearly unethical and arguably corrupt.

Roger Stone, the Republican loud mouth, was convicted by a federal jury of lying to Congress in an unsuccessful effort to deter an investigation into Trump's 2016 presidential campaign. Stone was just about to start serving a 40-month prison sentence when Trump commuted his longtime confidant's sentence, a mercy for which Stone openly lobbied.

The commutation, though, doesn't erase Stone's felony conviction. He will still have to wear that stain.

Letting him off the hook adds another mark as well against the president, whose disregard for justice and for propriety seem boundless.
(Trump lets crony off the hook. Commonwealth. July 14, 2020.)


"off the hook"を辞書で引くと、


苦境(困難)から抜け出して;義務(責任)から解放されて
(ランダムハウス英和辞書)


と載っています。

トランプ氏とRoger Stone氏は親しい間柄、同好の士、といった関係のようですが、2016年の大統領選におけるロシアの介入(いわゆるロシア疑惑)を巡って、Stone氏は虚偽証言や司法妨害などの罪で訴追されていました。

“hook”というと鉤針を想起します。魚釣りの針などは引っ掛かってしまうと容易には取れない仕掛けになっており、故に“off the hook”が、ややこしい状況、窮地から脱するというような意味になることは納得がいきます。

トランプ氏による恩赦はまさにStone氏が収監される目前に決定されたもので、まさしく同氏を窮地から救うことになりました。


2020年7月14日火曜日

mural

先週の記事ですが、ミネソタ州で起きた黒人男性暴行死に端を発する"Black Lives Matter"ムーブメントに関する記事の引用です。

ニューヨーク・マンハッタンのトランプ・タワーの目の前の道路で、デブラシオ市長自ら参加するグループが、真っ黄色のペンキを使って"Black Lives Matter"という文字を塗り上げました。

トランプ氏は元々このようなムーブメントに対して否定的な発言をしていたところでしたので、かなり当て付けがましい話ではあります。


(CNN) — New York City is painting a Black Lives Matter mural on the street directly outside of Trump Tower in Midtown Manhattan.

City employees began painting a stretch of Fifth Avenue, just in front of the Trump Organization's headquarters, on Thursday morning. Mayor Bill de Blasio authorized the stark yellow mural earlier this month.

The New York mayor rolled up his sleeves and painted a bit of the mural, too, clad in a mask and flanked by civil rights leader, the Rev. Al Sharpton.

"President Trump said we would be denigrating the luxury of Fifth Avenue. Let me tell you: we're not denigrating anything, we are liberating Fifth Avenue, we are uplifting Fifth Avenue," de Blasio said on Thursday in response to Trump's tweet last week criticizing de Blasio for "denigrating" the area.
(New York City paints Black Lives Matter mural outside Trump Tower in Manhattan. CNN. July 9, 2020.)


さて、ふと気になったのですが、記事では、


painting a Black Lives Matter mural on the street


と表現しており、"mural"という単語を使っています。

"mural"を壁画の意味と記憶していたので、改めて辞書を引いてみました。


A very large image, such as a painting or enlarged photograph, applied directly to a wall or ceiling.
(American Heritage Dictionary)


1例としてAmerican Heritageの定義を挙げましたが、他の辞書も大体同様の定義となっており、"mural"とは壁(wall)、もしくは天井(ceiling)の表面に描かれるもので、道路のような路面、地面は含まれていない(!?)ということなんです。

どうでも良いようなことですが、気になるとどうしようもない性分であります。

引用したのはCNNの記事ですが、USA Today、NBC、Foxなど、他のメディアも"mural"を使っています。

一方、敢えて"mural"の定義から逸脱するという認識があってのことなのかは測りかねますが、"street mural"という表現を使っている記事もちらほらと見られます。

"mural"の語源は、ラテン語murusですが、壁(wall)の意味です。


2020年7月13日月曜日

dinero

ハリウッドの大物俳優、ロバート・デニーロさんは、自身が経営する飲食店やホテルが新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて収益が悪化し、経済的に困窮しているそうです。

芸能関係のタブロイド紙からの引用です。


Robert De Niro says he’s running out of dinero.

The coronavirus dealt a massive financial blow to the actor’s finances he revealed in court, as his estranged wife asked for an emergency order to raise her monthly American Express card credit limit from $50,000 to $100,000.

The “Irishman” actor appeared by phone on a Skype call in his Manhattan divorce case with Grace Hightower as her lawyer told a judge that De Niro unfairly cut her monthly Am-Ex allowance from $100,000 to $50,000 and said she and their children had been banned from an upstate compound where De Niro is staying during the pandemic.

But lawyers for De Niro said he cut Hightower’s credit card limit because he’s taken a huge financial hit as the restaurant chain Nobu and Greenwich Hotel, both of which he has stakes in, have been closed or partially closed for months with barely any business.
(Prescilla DeGregory. Robert De Niro says coronavirus decimated his finances. Page Six. July 9, 2020.)


どうやら、デニーロさんは前夫人との間で離婚調停にあるらしく、前夫人との間にもうけた子供を含めての生活費を補填する資力に事欠いているというのが実情のようです。

前夫人のクレジットカード限度額が10万ドルだったのを5万ドルに引き下げたことから、弁護士を交えての係争になっているようですが、庶民感覚からはかけ離れていますね・・・。

引用した記事の冒頭で、


Robert De Niro says he’s running out of dinero.


とあるのですが、"dinero"という単語をご存知でしょうか?(私は初めて見ました。)

De Niroと"dinero"、お分かりだと思いますが、De Niroの各文字を並び替えると"dinero"になります。つまり、アナグラムです。

"dinero"というのは、スペイン語でお金を意味するそうですが、語源は古代ローマの貨幣(
銀貨)である、ラテン語denariusに由来するそうです。

ちなみに、中東地域などで使われる通貨単位「ディナール」も同ラテン語から来ています。


2020年7月10日金曜日

fomite

新型コロナウィルス感染症の感染メカニズムはまだ分かっていないことも多いらしく、アメリカなどで感染の勢いが止まらない状況を受けて、一時は下火になったかにも見えた報道が、また過熱してきているようにも見えます。

感染経路としては、陽性患者との「濃厚接触」というのが我々素人も警戒するところです。くしゃみや咳などによる飛沫感染が最も危険であるとされています。

一方、空気感染については、その可能性は低いものの、完全に無いとも言い切れず、継続した調査が必要だというのがWHOの立場です。


The World Health Organization published new guidance Thursday, saying it can’t rule out the possibility that the coronavirus can be transmitted through air particles in closed spaces indoors, including in gyms and restaurants.

The WHO previously acknowledged that the virus may become airborne in certain environments, such as during “medical procedures that generate aerosols.” The new guidance recognizes some research that suggests the virus may be able to spread through particles in the air in “indoor crowded spaces.” It cited “choir practice, in restaurants or in fitness classes” as possible areas of airborne transmission.

(中略)

The WHO said in its guidance that while early evidence suggests the possibility of airborne transmission in such environments, spread by droplets and surfaces could also explain transmission in those cases.

“However, the detailed investigations of these clusters suggest that droplet and fomite transmission could also explain human-to-human transmission within these clusters,” the guidance said.
(Will Feuer. Airborne transmission of coronavirus in restaurants, gyms and other closed spaces can’t be ruled out, WHO says. CNBC. July 9, 2020.)


記事を読んでいると、"fomite"という見慣れない単語にぶつかります。お手持ちの辞書にこの単語は載っているでしょうか?

別記事で詳しい説明がありますので引用します。


Fomite

What it is: An object covered with virus particles, possibly because someone recently sneezed or coughed respiratory droplets onto it, or swiped a germ-covered hand on it. A countertop or a phone could become a fomite in that same manner. The particles could survive from several hours to several days.

How a virus could spread this way: Through indirect transmission if people touch the surface of a virus-covered object, pick up the virus on their hands and then introduce the virus to their eyes, nose or mouth.

How much does it contribute to the spread?: The CDC describes this as a "possible" route of coronavirus transmission but maintains that close contact between people is thought to be responsible for most new infections.
(Pien Huang. Aerosols, Droplets, Fomites: What We Know About Transmission Of COVID-19. NPR. July 6, 2020.)


実のところ、"fomite"は、ランダムハウス英和辞書にも研究社の新英和大辞典(第五版)にも載っていませんでした。

ランダムハウス英和辞書では、"fomes"というスペルのエントリで掲載されており、その意味は、医学用語として、


(接触伝染)媒介物:病菌を吸収・伝搬する可能性のある衣類、寝具類など、食品以外のものをいう


となっています。

“fomite”と“fomes”ではスペルが違っていて同じ単語とは思えないですが、このスペルの違いはどこから来ているのかというと、この単語がラテン語由来であることによります。

この単語は、ラテン語の名詞fomesから来ているのですが、その複数形がfomitesで、感染症のコンテクストで感染を媒介する物という意味合いでは、この複数形のfomitesが用いられてきました。

もうお分かりだと思いますが、記事に出てくる"fomite"は、ラテン語fomitesの末尾のsを複数形の語尾-sと捉えて、単数形の英単語として作り出された、いわゆる逆成による単語です。

ちなみに、よく似たスペルの単語に、助長する、とか湿布をする、という意味の動詞である"foment"があります。"fomite(s)"はこの“foment”と語源を同じくしています。

いずれの単語もラテン語の動詞foveo(温める、熱する)から来ており、"foment"の意味がラテン語の意味を受け継いでいるのは明らかですね。

一方、媒介物という意味の"fomite(s)"においては、ラテン語fomesとは火を点ける際の火口(ほくち)、可燃物のことを指していました。

新型コロナウィルス感染症の脅威は、感染者による飛沫や粘液が付着したドアノブやテーブル、その他諸々の物質がウィルスの媒介物となって感染を拡げる恐れがあるもので、現代における"fomite(s)"が媒介するのは火ではなく、ウィルス、ということになろうかと思います。


2020年7月9日木曜日

fairy

ブラジルのボルソナロ大統領が、新型コロナウィルス検査の結果、陽性であることを公表しました。

ご存知の方も多いと思いますが、ボルソナロ大統領は新型コロナウィルス感染症が拡大する中、都市封鎖やマスク着用などの対策を過剰な反応と切って捨て、新型コロナウィルス感染症などちょっとしたインフルエンザくらいのものでしかない(“a little flu”)、と豪語した政治家です。

コロナウィルス陽性を公表した際もマスクは着用していましたが、会見の最後には外し、自身の健康状態に全く問題がないことをアピールしました。

同大統領はマスク着用者に対して差別的な発言をしていたことも取り上げられています。


One day after announcing he had tested positive for coronavirus Jair Bolsonaro has come under fire for allegedly using homophobic language to mock the use of face masks.

The Folha de São Paulo, a leading broadsheet, claimed Brazil’s far-right leader had baited presidential staff who were using protective masks, claiming such equipment was “coisa de viado” (a homophobic slur that roughly translates as “for fairies”).

Bolsonaro is a longstanding enemy of Brazil’s LGBTQ+ community and during three decades in politics has made no secret of his homophobia.

“I have [parliamentary] immunity to say: yes, I’m homophobic – and very proud of it,” he said in one filmed interview during his seven-term stint as a congressman.
(Tom Phillips. Brazil: Bolsonaro reportedly uses homophobic slur to mock masks. The Guardian. July 8, 2020.)


ボルソナロ大統領は、同性愛者反対の立場を公言していることで有名らしいのですが、マスク着用者をポルトガル語で“coisa de viado”と呼んだそうです。

ポルトガル語について、基本単語の知識はおろか、俗語表現など全く知りませんが、記事によれば英語では"fairy"に相当する、ということなので辞書を引くことになりました。妖精を意味する"fairy"が同性愛者に対する差別的な表現とは知りませんでした。

辞書を引いてみますと確かに、男性同性愛者のことを指す侮蔑的な表現であることに触れています。

マスク着用が何故同性愛者を連想させるのか、全く分かりませんが、大統領の感染症状が重篤化しないことを祈ることにしましょうか。



2020年7月8日水曜日

false complacency

昨日と同じ話題になりますが、アメリカにおける新型コロナウィルス感染症の拡大状況を受けて、大統領と専門家の見方の違いが鮮明となっています。

トランプ大統領が、米国内での死亡率が低いことを挙げてコロナウィルス対策の成果を強調する一方、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所長のFauci氏はトランプ氏の見方について、


false complacency


だと切って捨てました。


Anthony Fauci, the nation’s top infectious disease expert, warned Tuesday the U.S. should not fall into “false complacency” because COVID-19 death rates have dropped, noting the virus can cause other severe health outcomes.

“It’s a false narrative to take comfort in a lower rate of death,” Fauci said Tuesday during a livestreamed press conference hosted by Sen. Doug Jones (D-Ala.)

“There's so many other things that are very dangerous and bad about this virus, don't get yourself into a false complacency,” he added.
(Jessie Helmann. Fauci warns against 'false complacency' on COVID-19. The Hill. July 7, 2020.)


この"false complacency"という表現は、何というか、面白い表現です。というのは、"complacency"は自己満足、とか自惚れ、独りよがり、といった意味で、そもそも個人の気持ちとか主観のことを言う表現だと思うのですが、それに"false"(誤った、間違いの)という形容をしているからです。

自身の気持ちや主観に対して、それが間違っているとか言われる筋合いは無い!と反論してしまいそうです。

しかしながら、死亡率が低いのだからアメリカ政府のコロナ対策は間違っていない、というトランプ氏の"complacency"は、大統領という公人の発言として見たときには、やはり"false"と言わざるを得ないのでしょう。

死亡率は確かに指標の一つであり、それが低い傾向を示しているという事実はあるようですが、新型コロナウィルス感染症拡大の遅行指標(a lagging indicator)でしかない、というのが専門家の見方のようです。

つまり、死亡率に先立つ、感染状況の増加に対処しなければ意味が無い、ということです。


2020年7月7日火曜日

knee-deep

新型コロナウィルス感染者はアメリカやブラジルで急増し、第2波到来かとも言われています。

ここ1~2週間は東京でも新規感染者数が増加傾向を示し、1日100名を超える日が連続していますが、アメリカの1日の新規感染者は5万人以上と、ケタが違います。

トランプ氏の対応のまずさが批判され、大統領選を控えて、世論調査での支持率にも影響していますが、大統領選候補のバイデン氏のみならず、感染症の専門家も突き放した見方をするに至っているようです。


WASHINGTON — Dr. Anthony Fauci, director of the National Institute of Allergy and Infectious Diseases, said Monday that the United States' handle on the coronavirus outbreak is “really not good” and that action is needed to curb the spread.

In an interview via Facebook Live, the nation's top infectious disease expert said, "We are still knee-deep in the first wave of this. And I would say, this would not be considered a wave. It was a surge, or a resurgence of infections superimposed upon a baseline."

New cases in the U.S. have reached record highs, climbing to around 50,000 a day. Nearly 3 million Americans have contracted the virus, with more than 130,000 deaths, according to data from John Hopkins University.

Fauci, speaking online with the National Institutes of Health, linked some of the surge in new cases to some cities and states who may have reopened too quickly.
(Savannah Behrmann. Dr. Anthony Fauci warns US is 'knee-deep' in first wave of coronavirus cases and prognosis is 'really not good.' USA Today. July 6, 2020.)


最近は新型コロナウィルス感染症拡大の「第2波」という言葉を聞くことが多いのですが、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所の所長であるDr. Anthony Fauci氏によると、


We are still knee-deep in the first wave of this.


なのだそうです。

"knee-deep"というのは、


(困難などに)深くはまり込んで


という意味なんですが、洪水とか泥濘(ぬかるみ)に膝丈まで浸かってしまい身動きがままならない様子がイメージされます。


2020年7月6日月曜日

line drive

米大リーグのヤンキースで投手として活躍する田中将大選手が、打球を頭部に受けるという痛ましい事故が発生しました。


Just minutes after the Yankees opened spring training 2.0 in The Bronx, Masahiro Tanaka suffered a frightening injury when he took a line drive off the right side of his head off the bat of Giancarlo Stanton during a simulated game Saturday.

Tanaka immediately fell on the mound, and action stopped as trainers rushed to the mound. He stayed down for approximately five minutes before sitting up. He was helped to his feet and walked off the field with the assistance of two trainers.

Tanaka was taken to NewYork-Presbyterian Hospital for further evaluation and testing.
(Dan Martin. Yankees’ Masahiro Tanaka ‘all good’ after getting hit in head by Giancarlo Stanton line drive. New York Post. July 4, 2020.)


ツイッターに投稿されたビデオクリップが記事にありましたので見てみると、田中投手は打者が打ち返した球を頭部右側面にまともに受けてマウンドに倒れ、避ける間もなかったように見えます。

小生は野球に詳しいわけではありませんが、このような打球をピッチャー返し、とかピッチャーライナー、と表現すると記憶しています。

記事の英語表現では、


a line drive


となっています。

辞書を引いてみると"drive"には、直球の意味があり、野球用語のライナーは、"line drive"(もしくは、"liner")と表現するそうです。

もう1つ目に留まった興味深い表現としては、このような直球による打撃を身体に受けることを、


got drilled


と表現していることです。

穴あけドリルではありませんが(単語は同じですが)、動詞の"drill"にはボールを真っ直ぐ打ち返す、ライナーを放つ、という意味もあるそうです。

田中投手はしばらく起き上がることもできず、チームメイトやスタッフに囲まれていましたが、最終的には支えられながらも自力で歩いて退場しました。診断の結果、軽い脳震盪が認められたそうですが、大事はなさそうです。回復をお祈りします。


2020年7月3日金曜日

anchor

訃報の記事から引用しました。


Los Angeles (CNN Business) — Hugh Downs, the versatile and Emmy-winning broadcaster whose decades-long TV career ranged from anchoring ABC News' "20/20" to the "Today" show to serving as Jack Paar's sidekick on "The Tonight Show," has died at his home in Scottsdale, Arizona. He was 99.

Local outlet AZFamily was first to report the news of Downs' passing, citing a statement from his great-niece, Molly Shaheen.

Downs -- who retired in 1999 -- was essentially there for the very start of commercial television, serving as the announcer for the children's show "Kukla, Fran and Ollie" and comedy legend Sid Caesar's "Caesar's Hour" in the 1950s.
(Brian Lowry. Hugh Downs, anchor of '20/20' and 'Today,' dead at 99. CNN. July 2, 2020.)


ABC Newsの番組等で有名なニュースキャスターだったHugh Downs氏が99歳で亡くなったということです。

ニュース番組で仕切り役(総合司会者)を担うニュースキャスターのことを、日本語でも「アンカー」と表現するのを耳にすることがあります。

記事では、


anchoring ABC News' "20/20"
anchor of '20/20' and 'Today'


などと表現されていますが、"anchor"というのは、実際のところは"anchorman"(あるいは、"anchor woman")から来ているそうです。

その"anchorman"というのは、


a broadcaster (as on a news program) who introduces reports by other broadcasters and usually reads the news
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味なのですが、もう1つの意味としては、これも日本語でも使われる、リレーなどの「アンカー」を指す、


the member of a team who competes last
(ibid.)


という意味です。

この意味での「アンカー」というよりも先に、"anchorman"というのは綱引き競技で、綱が相手に持っていかれないように綱の一番端(最後尾)につく人のことを言ったそうです。

ここに至ってようやく錨(いかり)を意味する"anchor"とつながってきます。


2020年7月2日木曜日

quad

最近気になった国際ニュースの1つに、中印国境紛争の話題があります。

歴史的に、中国とインドは国境を巡って諍いが絶えないと理解していますが、最近は国境線を境ににらみ合いを続ける両国間で小競り合いに発展したというものでした。

中印間に限らず、尖閣諸島を巡っては日中の主張が対立しています。

中国の海洋進出はオーストラリアにとっても脅威となっており、アメリカは直接の利害はありませんが、中国を牽制する姿勢を強めています。


NEW DELHI: The Navy has increased its surveillance missions and beefed up operational deployment in the Indian Ocean region in the wake of India's seven-week bitter border standoff with China in eastern Ladakh, people familiar with the development said.

The Indian Navy is also ramping up its operational cooperation with various friendly naval forces like the US Navy and Japan Maritime Self Defense Force in view of the fast evolving regional security landscape, they said.

On Saturday, the Indian Navy held a crucial exercise with Japanese Navy in the Indian Ocean region, an area where Chinese naval vessels and submarines are making frequent forays, they said.

(中略)

India and Japan are part of the influential "Quad" or Quadrilateral coalition which also comprises the United States and Australia.

In November 2017, the four countries gave shape to the long-pending "Quad" coalition to develop a new strategy to keep the critical sea routes in the Indo-Pacific free of any influence.

The US has been pushing for a greater role for India in the Indo-Pacific which is seen by many countries as an effort to contain China's growing clout in the region.
(India increases surveillance in Indian Ocean region to track Chinese activities. Times of India. June 29, 2020.)


ちょっと引用が長くなってしまいましたが、中印関係を巡る記事を読んでいますと、


quad


なる単語に度々出くわすので取り上げました。

記事の見出しなどでもこの"quad"が出てくるのですが、それは短い単語だからで、実は"quadrilateral"のことであると分かります。(本文中でも、そのようになっています。)

それでは、"quadrilateral"とは何ぞや、ということになるのですが、これは4国間の、という意味合いで使われているようです。(辞書を引くと、四辺形の、という意味が載っていますが。)

ご存知のように、接頭辞のquadri-が数字の4を意味しているからですが、四方を囲む、というのが"quadrilateral"の意味するところのようです。

記事のコンテクストでは、中国の海洋進出を警戒する日、印、豪、そして米の4か国が協働する枠組みのことを"quad"と呼んでいます。

四つ子を意味する"quadruple"を略して、"quad"ということもあります。


2020年7月1日水曜日

wash your hands

今年のアメリカ大統領選で民主党候補と目されるバイデン氏が演説で、トランプ氏の新型コロナウィルス感染症対策への批判を展開しました。

最近になって感染者がアメリカ国内で急増しているという背景がありますが、バイデン氏はトランプ氏の無策を捉えて、トランプ氏はウィルスとの戦争に白旗を上げた(降伏した)ようだ、と言い放ちました。


Former Vice President Joe Biden took direct aim at President Trump on Tuesday, saying that Trump, who once called himself a "wartime president" taking on the coronavirus pandemic, seems to have now "surrendered."

"Remember when he exhorted the nation to sacrifice together in the face of this ... 'invisible enemy'? What happened? Now it's almost July, and it seems like our wartime president has surrendered," Biden said in prepared remarks.

The presumptive Democratic presidential nominee urged Trump "immediately" to adopt his updated plan for dealing with the COVID-19 crisis in the United States.
(Elena Moore. Trump Seems To Have 'Surrendered' On The Pandemic, Biden Says. NPR. June 30, 2020.)


バイデン氏の発言が以下のように続きます。


"American people [didn't] make enormous sacrifices over the past four months so they could just waste their time," Biden said. "They didn't make these sacrifices so you could ignore the science and turn responsible steps like wearing masks into a political statement. And they certainly didn't do it, Mr. President, so you could wash your hands and walk away from this responsibility."
(ibid.)


大統領候補者の演説に相応しく(!?)、同じ形式のフレーズで畳みかけるスタイルになっています。

最後の部分で、


you could wash your hands and walk away from this responsibility


とありますが、(ここで"you"は大統領を指していますが)"wash your hands"というフレーズに着目です。

感染症対策だけに手を洗う(wash hands)のではありますが、ここでの"wash you hands"は成句で、


(責任のある事などから)手を引く、・・・と手を切る(関係を断つ)
(研究社新英和大辞典)


という意味です。

大抵の辞書では、"wash one's hands of~"というフレーズとして載っています。Collins Cobuild Dictionary of Idiomsでは下記のように解説されています。


If you wash your hands of a problem or of a person who causes problems you refuse to be involved with them or to take responsibility for them any longer.


トランプ氏が感染拡大に対して有効な対策を示そうともせず、責任逃れに終始している、とバイデン氏は言いたいのでしょう。

ところで、この"wash one's hands"というフレーズの由来ですが、聖書のマタイ伝において、イエスを磔刑に処するに至った裁判に関して、自分は関係ないと言って手を洗ったピラト(Pilate)の故事に因むそうです。

日本語の類似表現に、「足を洗う」というものがありますが、これは修行僧が俗世で足についた泥を洗い落として仏門に入ることに因んだもので、仏教から来ているそうです。