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2022年8月31日水曜日

break the mold

旧ソビエト連邦において、最後の書記長、大統領を務めたゴルバチョフ氏が91歳で死去しました。

CNNの記事からの引用です。


(CNN) Mikhail Gorbachev -- the last leader of the former Soviet Union from 1985 until 1991 -- has died at the age of 91.

Gorbachev died after a long illness, Russian state news agencies reported.

(中略)

The man credited with introducing key political and economic reforms to the USSR and helping to end the Cold War had been in failing health for some time.

(中略)

With his outgoing, charismatic nature, Gorbachev broke the mold for Soviet leaders who until then had mostly been remote, icy figures. Almost from the start of his leadership, he strove for significant reforms, so the system would work more efficiently and more democratically. Hence the two key phrases of the Gorbachev era: "glasnost" (openness) and "perestroika" (restructuring).
(Mikhail Gorbachev, former Soviet president who took down the Iron Curtain, dies. CNN. August 30, 2022.)


同氏が東西の冷戦を終結し、ソ連邦の終焉をもたらしたリーダーとして歴史に刻まれることは間違いありません。

ある意味で、型破りなリーダーであったと言えるかもしれません。引用した記事においても、


With his outgoing, charismatic nature, Gorbachev broke the mold for Soviet leaders


と評されています。


"broke the mold"の"mold"(mould)というのは型、鋳型のことです。

まだ学生であった小生は、ゴルバチョフ氏のニュース映像を、当時テレビで目にすることがしばしばありました。穏やかにも見える表情(と特徴的な頭頂部)に、コワモテのロシア政治家には無い親しみやすさのようなものも感じられました。

2022年8月30日火曜日

cavalier

次期首相を決定する英・保守党の党首選は、今週末投票、週明けには結果が出るということで注目を集めています。

優勢とされるトラス氏は、予定していたBBCのインタビュー番組への出席をキャンセルすると一方的に伝えたようですが、関係者の落胆と波紋を呼んでいます。

時間が取れなくなったというのが表向きの理由のようですが、インタビューで質問攻めに遭うのを回避したとも取られています。


Liz Truss has pulled out of a BBC One interview with Nick Robinson that was due to air on Tuesday evening.

Ms Truss' team said she could no longer spare the time for the one-on-one programme, the BBC said in a statement.

(中略)

In its statement, the BBC added: "We regret that it has not been possible to do an in-depth interview with both candidates, despite having reached agreement to do so."

Robinson said on Twitter he was "disappointed and frustrated" that his scheduled interview with Ms Truss - widely considered to be the front-runner to become prime minister - had been cancelled.
(Tory leadership: Liz Truss cancels BBC interview with Nick Robinson. BBC News. August 29, 2022.)


BBCの番組のインタビューが候補者の情勢にどの程度の影響を与えるのかよく分からないところではありますが、トラス氏は投票直前の最終盤で揚げ足を取られるのを避けたかったのかも知れません。

さて、記事の続きに以下のようなくだりがあります。


Former BBC broadcaster Andrew Neil said he feared Ms Truss' decision would be the "final nail in the coffin" for political leaders interviews, calling it a "cavalier way to behave".
(ibid.)


メディア側の意見を述べたものですが、有権者の立場からすると、予定されていたインタビューはやはり一国のリーダーの資質を見極める上で重要な位置付けだという思いがあるようです。

ところで、


calling it a "cavalier way to behave"


という部分に着目したいと思います。

"it"が指すのはトラス氏の出演キャンセルに他なりませんが、それを"cavalier way to behave"と評しているというのはどういう意味か、一瞬戸惑いました。

つまり、"cavalier"の意味するところなんですが、"cavalier"から「騎士道精神」という日本語を思い浮かべて、頓珍漢な感じがしたものです。

勿論、辞書にもそう載っています。騎士道精神とは、婦人に丁重な態度、紳士的な振る舞いのことです。しかし、女性であるトラス氏に対して、また番組出演キャンセルを批判されているコンテクストで、騎士道精神というのも変な話です。

改めて辞書で"cavalier"の意味を確認し、否定的な意味合いとしては、


尊大な、横柄な、傲慢な


という意味があることが分かりました。(不勉強・・・。)

相反する意味合いを併せ持つ単語ということになります。


2022年8月29日月曜日

all-hands-on-deck

今日の単語、"all-hands-on-deck"は船乗りの表現です。

"deck"というのは船の甲板のことで、"All hands on deck!"というのは、その甲板に乗組員全員が集合せよ、という意味です。

そこから、緊急時などに総動員で事にあたることを意味するフレーズとして使われます。


The city of Detroit was on edge after police said a single gunman randomly shot four victims, three fatally, in 2 hours and 25 minutes Sunday morning.

(中略)

An all-hands-on-deck search involving multiple law enforcement agencies -- including the FBI, the Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives, and the Department of Homeland Security -- was underway Sunday afternoon after police determined the same gun was used in all four shootings, authorities said.
(Bill Hutchinson. Detroit on edge after gunman targets 4 random victims, killing 3. ABC News. August 28, 2022.)


デトロイトで無差別銃撃事件が発生し、容疑者がまだ捕まっていません。FBIを始めとする当局関係者を総動員した捜索が行われています。


2022年8月26日金曜日

The jury is out.

英・保守党の党首選は来月5日には雌雄を決するそうで、候補の2名、トラス氏とスナク氏の論戦が報じられています。

今日読んだ記事によると、海を渡った隣国であるフランスとの関係について、両者のスタンスが話題のようです。

フランスのマクロン大統領は敵か味方か、という問いに対して、迷わず「味方」と答えたスナク氏ですが、一方のトラス氏は、


The jury’s out.


と答えました。これはどういう意味でしょうか?


UK Foreign Secretary Liz Truss, front-runner to become Britain’s next prime minister, said the “jury’s out” on whether French President Emmanuel Macron is a friend or an enemy.

“President Macron, friend or foe?” Truss was asked by host Julia Hartley-Brewer in a quick-fire round at a Conservative Party hustings event in eastern England on Thursday night. 

The jury’s out,” Truss replied, to some applause from the audience. “But if I become prime minister, I would judge him on deeds not words.”
(Emily Ashton. UK’s Truss Says ‘Jury’s Out’ on Macron Being ‘Friend or Foe’. Bloomberg. August 26, 2022.)


上記の引用を読むとお分かり頂けると思いますが、"The jury’s out."というのは、まだ決定していない、という意味で使われているようです。

このフレーズは慣用句で、Merriam-Websterによれば、


informal
—used to say that something has not yet been decided or has not yet become clear


と説明されています。

ご存知のように、"jury"というのは裁判で評決を裁判長に答申する陪審員のことです。その"jury"が"out"(外にいる)、というのが文字通りの意味です。「外」とはどこかと言うと、法廷の外であり、陪審員室ということになります。

つまり、陪審員室でまだ協議をしているところで、評決がまだ出ていない、確定していない、ということを言わんとしている訳です。(結論が出たら法廷に戻り、裁判官に評決を答申。)

"The jury is still out."とも言うと、ランダムハウス英和にありました。

英仏間には不法移民の問題があり、これを意識したトラス氏の発言だったようです。


2022年8月25日木曜日

decoy

カナダ、オタワの有名ホテルのロビーに飾られていた英・チャーチル首相の写真が盗まれたそうです。

有名写真家が1941年に撮影したものだそうですが、偽物にすりかえられているのが分かったということです。ホテルの利用客が記念に写真におさめることも多いらしく、「本物」を撮影した宿泊客の情報提供などから、盗まれたのは恐らく昨年のクリスマスから年始にかけてのことと推察されるそうです。


A famous portrait of former British Prime Minister Winston Churchill appears to have found itself at the center of a heist.

The portrait, on display at the Fairmont Château Laurier in Ottawa, Canada, was documented by Armenian-Canadian photographer Yousuf Karsh in 1941 and installed in 1998, the hotel posted on Facebook Monday.

The hotel said the photograph was replaced with a copy of the original.
(Saleen Martin. Iconic Churchill portrait reported as stolen after a decoy hung in its place for months. USA Today. August 24, 2022.)


半年以上、偽物の写真が掛かっていた訳です。ホテルのスタッフが写真がやや傾いているのに気が付いて直そうとしたことから発覚したものですが、オリジナルよりやや小さいことや、写真家の署名が偽造であることなど、偽物であることを示す事実が次々と明らかに。

さて、今日の一語です。本物そっくりの偽物を、記事のタイトルでは、


decoy


と表現しています。

デコイ(decoy)と聞くと、囮(おとり)、罠(わな)という日本語を思い浮かべますが、ここでは偽物のこと、


A replica or imitation of something, especially when intended to deceive by obscuring the number or location of the actual objects being imitated
(American Heritage Dictionary)


という意味です。

他の記事では、"fake"と表現しており、こちらの方が馴染みがあるかも知れません。


Famed Churchill portrait stolen from hotel and replaced with fake
(The Guardian; August 23, 2022)


ところで、"decoy"という単語はオランダ語から来ています。

オランダ語で、de kooiというのは英語では"cage"に相当する単語で、鳥などをおびき寄せて捕えるための仕掛け(捕獲のための網を巡らせた池、凹地)を指すものだったようです。

オランダ語de kooiの"de"というのは英語の定冠詞 the に相当し、英語に取り入れる際に単語の一部と誤解されたため、"decoy"となってしまったという話です。


2022年8月24日水曜日

sturm und drang

唐突ですが、"sturm und drang"という表現をご存知でしょうか?

スペルからして英語にはちょっと見えません。"und"とあるのでドイツ語でしょうか?。

以下に引用する記事では普通に使われているので面食らってしまいますが、実際、"sturm und drang"はドイツ語そのものです。


Listen, I’m sure there will be a lot of sturm und drang about what the whistleblower disclosures mean for Elon Musk’s Twitter deal, but I want to focus on something dumber and pettier: Jack Dorsey.

Twitter had serious vulnerabilities that Russian and Chinese governments might try to take advantage of, according to the whistleblower complaint from Peiter “Mudge” Zatko, the former Twitter security chief. (Zatko refers to himself as “Mudge” in the complaint, but I will be calling him Zatko because that’s his government name.) Zatko also alleges that Twitter had no incentive to count bots correctly. I can’t help but notice, though, that all of these allegations suggest that Dorsey was an incompetent leader.
(Elizabeth Lopatto. Sorry, Elon, but Jack Dorsey is still Twitter’s main character. The Verge. August 23, 2022.)


研究社の新英和大辞典には、


Sturm und Drang


と、エントリが載っています。

ドイツ語なので、"und"の前後の名詞は大文字で始まります。辞書では、


シュトルムウントドランク(1770年代のドイツに起こった激越なロマン主義的文学運動)


とあります。ドイツ文学に明るくないため、正直なところ詳細はよく分からないのですが、そこから発展した意味としては、


動乱、動揺、革命(turmoil)


ということで、引用した記事で意味するところはこちらの方でしょう。

なお、英語では、ドイツ語からの直訳で、"Storm and Stress"というそうです。

英語は多くの外来語をそのままの形で吸収していますが、この"sturm und drang"もそのひとつだと思います。

もう少し用例を見てみたいと思い、コーパスを検索しますと、多くの用例がヒットし、このドイツ語がほとんど英語として定着していることが窺えます。


The Sturm und Drang over tax cuts for the rich obscured the Democrats' massive capitulation on tax cuts for everyone else.
(Newsweek, 2010)


最初に引用した記事のように、名詞の語頭を大文字で始めるというドイツ語のルールではなく、小文字で"sturm und drang"としているものも多く見られます。


Perceptions of Owens can be misleading. His clothes are often described as goth, cultish, with a sturm und drang sense of turmoil — you can maybe blame those campy pentagrams and trailing robes.
(Alexander Fury. For Rick Owens, ‘commercial’ isn’t a dirty word. Financial Times. August 22, 2022.)


また、ドイツ語の等位接続詞"und"を英語のそれ(and)に置き換え、"sturm and drang"としているものもあります。


Of the first three seasons, this is the one dominated by the Sturm and Drang of Tony's domestic life, highlighted by the death of his beloved/hated mother; Uncle Junior's battle with cancer; daughter Meadow's leaving for college,…
(USA Today, 2002)


英語になったドイツ語については、本ブログのタグ「ドイツ語」をクリックしてご覧下さい。


2022年8月23日火曜日

enthuse

今日取り上げる単語、"enthuse"はあまり見慣れない単語かもしれません。

"enthuse"は動詞で、


熱狂させる、感激させる


という意味です。

と、聞くと、"enthusiasm"(熱狂、熱中)や"enthusiastic"(熱烈な)という単語を思い出すのではないでしょうか。

実のところ、"enthuse"は"enthusiasm"という単語から派生したもので、言語学で「逆成」と呼ばれるものです。

以下に引用する用例は、本日見かけたThe Hillの記事から。


That being said, given how polarizing a figure Trump is — and how deeply divided the country is — the search likely will not change many voters’ minds when it comes to deciding which party to support in November’s midterm elections, especially given that Trump himself is not on the ballot. However, it may further galvanize an already-enthused Republican base to the detriment of the Democratic Party. 
(Douglas E Shoen. The Mar-a-Lago raid gave Republicans an unexpected second wind. The Hill. August 22, 2022.)


記事の内容はというと、先日よりトランプ元大統領の私邸にFBIの捜索が入っている件に関するものです。

トランプ氏に対する熱狂的な支持者がいることはよく言われるところです。アンケート調査によれば、元大統領に対する嫌疑による捜査にも、共和党の支持者は揺らぐことがないようです。


The same poll found that, following the search, Republicans have a 14-point voter enthusiasm advantage over Democrats this year — as two-thirds (66 percent) of Republicans say they are “more enthusiastic” about voting in this year’s midterms compared to previous years, versus 52 percent of Democrats. 
(ibid.)


むしろ、今回の捜査をきっかけとして、共和党支持者は今秋に予定されている中間選挙への投票行動に意欲を見せているとも分析されており、これについては、


voter enthusiasm advantage over Democrats

they are “more enthusiastic” about voting in this year’s midterms compared to previous years


などと表現されています。

ここでも、"enthusiasm"、"enthusiastic"が出てくる訳ですが、"enthusiasm"という単語の-thu-という部分はギリシャ語で神を意味するtheosから来ており、"enthusiasm"の原義は神にインスパイアされた、取り憑かれた(ような熱狂)、という意味です。


2022年8月22日月曜日

deplatform

女性蔑視の甚だしい著名人のユーザーアカウントが、ティックトックなどのSNSで凍結されるに至ったそうです。

元キックボクシングのチャンピオンは、自ら"mosogynist"と公言して憚らず、男性優位の主張や女性を男性の所有物と見做すような発言を繰り返していましたが、こうした発言の内容がSNSのポリシーに違反すると判断されました。


In videos splashed across the internet, Andrew Tate, a onetime kickboxing champion turned self-styled men’s-help guru, has argued that women are the property of their husbands and should “have kids, sit at home, be quiet and make coffee.”

He has claimed that he needs authority over the women he dates, saying, “You can’t be responsible for a dog if it doesn’t obey you.” He has said he would attack a woman who accused him of cheating and described himself as “absolutely a misogynist.”

His fans have called him the king of toxic masculinity.
(Brittany Shammas. TikTok and Meta ban self-described misogynist Andrew Tate. The Washington Post. August 21, 2022.)


記事は以下のように続き、


Other social media influencers — along with several organizations that support survivors of sexual assault and domestic violence — had called for him to be booted off social media platforms. Hope Not Hate, a Britain-based group that launched a petition calling for Tate to be deplatformed, described him as dangerous.
(ibid.)


ここで、


"deplatform"


という動詞が使われています。アカウント凍結、またサービスからの除外、利用停止を意味していると思われます。

よく知られるようになったGAFAを始めとして、 SNSやメジャーなウェブサイトのことを「プラットフォーマー」(もしくは、"frightful five"とも)と呼ぶようになったのは、最近のことと思います。その"platform"という名詞に、分離や除外を意味する接頭辞de-が付されて動詞になったものです。

"deplatform"なる単語が存在するとは知らなかったのですが、Merriam-Websterオンラインではエントリがちゃんとあり、


to remove and ban (a registered user) from a mass communication medium (such as a social networking or blogging website)


と定義されていますので、まさにインターネット時代の単語だと思いました。

ところが、初出については1998年ということなので、SNS全盛のごく最近という訳ではなく、割と昔からあったということのようです。

さらに、Etymology Onlineによれば、攻撃的な発言をする人を阻止しようとすることを表現するのに、"no platform"という表現を用いる例が1970年代から確認されているということで、そうなるとネット以前の概念ということになります。

手元にあるハードカバーの辞典ではエントリ自体見当たりません。


2022年8月19日金曜日

nemesis

米国では今秋11月に予定されている中間選挙の予備選挙(primaryと呼ばれています)が各州で行われていますが、中でも最も注目されていたワイオミング州での予備選挙が先日開票されました。

注目されていたのは、共和党のチェイニー氏とヘイグマン候補の争いで、2021年1月に起きた議事堂襲撃事件をきっかけに反トランプを旗幟鮮明に打ち出したチェイニー氏に対して、トランプ氏が刺客として対抗馬に立てたヘイグマン氏、という構図でした。

結果として、ヘイグマン氏が大差の得票数で勝利し、チェイニー氏は負けを認めましたが、トランプ氏を阻止すべく、大統領選への参戦を検討しているとも報じられています。


Defeated Wyoming Rep. Liz Cheney confirmed Wednesday that she is “thinking about” running for the White House to keep her nemesis, former President Donald Trump, “out of the Oval Office.”

“It is something that I am thinking about and I’ll make a decision in the coming months,” the 56-year-old daughter of former Vice President Dick Cheney told NBC News’ “Today” show.

“I will be doing whatever it takes to keep Donald Trump out of the Oval Office.”
(Lee Brown. Rep. Liz Cheney considering presidential run after losing Wyoming GOP primary. New York Post. August 17, 2022.)


チェイニー氏は、元副大統領のDick Cheney氏を父に持つ、政治家としては言わば名門の出とされる立場ですが、共和党の地盤でRed Stateとも呼ばれるワイオミング州でトランプ氏を敵に回した状況では苦しい立場での戦いだったようです。

チェイニー氏にとって、トランプ氏は、


nemesis


とされています。

Nemesisというのは、ギリシャ神話に出てくる応報天罰の神(女神)です。

不正を働く人間に対しては必ず罰を与えるというNemesisの名前は、正義の象徴であり、一般名詞化して、懲罰を加える人という意味で使われるのは納得です。

しかしながら、どういう訳か、


勝てない相手、ライバル


という意味で用いられるようになり、引用した記事の文脈ではこの意味が相当します。仇敵という日本語がぴったりでしょう。

"nemesis"が仇敵の意味を持つに至った経緯はよくわからないのですが、因果応報を受ける立場の者にとっては、その罰を回避することも出来ず、どうしようもない、敵わない、ということからこのような意味が生まれたのだろうかと思ったりします。

チェイニー氏にとってトランプ氏が"nemesis"だとすれば、大統領選でも結局勝てないのでは、と思ったりします。



2022年8月18日木曜日

in a heartbeat

"in a heartbeat"という表現を時々見かけます。

"heartbeat"は心臓の鼓動、心拍のことですが、"in a heartbeat"とはその1回(という短い時間)の間に、というのが字義通りの意味で、つまり即座に、直ちに、という意味合いで使われます。

一種の誇張、強意表現と言えるでしょう。


"If they do get laid off, they will be scooped up in a heartbeat because demand outstrips supply and will for a long time," she added. 
(Daniella Genovese. Google, Facebook CEOs warn slackers, what it means. Fox Business. August 2, 2022.)


Tenenbaum said she would support Joe Biden in 2024 in a heartbeat, though leaves open the idea that he might not run.
(Christopher Cadelago. Biden keeps South Carolina guessing. Politico. August 14, 2022.)


最近の記事での用例を抜き出してみました。発言やその引用として用いられるものが多く、口語表現の類いと思われます。

2022年8月17日水曜日

one’s share

シェア(share)というと、共有するという意味で、分け前とか取り分、という意味でも使われるのはご存知の通りです。

商品やサービスの市場(マーケット)での占有率という意味もありますね。

以下の引用では、


one’s share of …



というフレーズで使われていますが、何と訳しましょうか。



But Newton-John also faced her share of troubles and tragedy. Her breast cancer diagnoses forced her to postpone and cancel several tours.

(Brandon Griggs. Olivia Newton-John, singer and actress, dead at 73. CNN. August 08, 2022)



先日亡くなった、オリビア・ニュートン=ジョンさんに触れているものですが、歌手として世界的な人気を博し、傍目には華やかと思われた人生にあっても、意外に苦労や不幸に見舞われた、というようなくだりだと思います

"share"を手元の研究社新英和大辞典で引くと、


He had his share of worries.
彼にも人並みに苦労があった。


という例文が載っていました。

禍福は糾える縄の如し、という言葉を思い出します。

2022年8月16日火曜日

blockbuster

大ヒット商品のことを、


blockbuster


と表現することがあります。

特に映画において、観客動員数が多い場合にこの表現を用いるようです。



"['Maverick'] is doing something that only a handful of films have ever done in the modern blockbuster era," Jeff Bock, a media analyst at Exhibitor Relations Co. previously told CNBC Make It.

(Nicolas Vega. 'Top Gun: Maverick' just passed 'Titanic' at the all-time domestic box office—These are the 10 highest grossing movies ever. CNBC. August 8 2022.)



ところで、この"blockbuster"という単語の歴史を紐解くと、元は戦争で使う爆弾のことを指していたそうです。折しも昨日は8月15日の終戦記念日でしたが、第二次世界大戦において、使われた爆弾に由来するもので、その破壊力はひとかたまりになっている建物群(block)を一発で破壊できるというものだったという事です。



Before it referred to wildly popular movies — to the point that it influenced the name of a video-rental chain (RIP) — blockbuster was a product of World War II. The block in blockbuster referred to a block of buildings, and a blockbuster was a type of bomb capable of leveling all of them at once.

(Merriam-Webster Dictionary)



2022年8月15日月曜日

Kosovar

バルカン半島中心部に位置するコソボ共和国(Kosovo)という国名はご存知でしょう。

ユーゴスラビア解体の過程で、2008年に独立を宣言した国です。

そのコソボ国民については、


Kosovar


といいますが、これは知りませんでした。


Kosovar Interior Minister Xhelal Svecla has blamed "illegal Serbian groups" allegedly seeking to "disrupt the work of the Kosovo authorities" for an August 6 attack on border police, while also claiming that the arrest of a Russian journalist trying to cross into the country from Serbia was a sign that Russia was supporting alleged Serbian efforts to destabilize Kosovo.

(Kosovo Accuses 'Illegal Serbian Groups' Of Attack On Border Patrol; Russian Journalist Detained. RadioFreeEurope RadioLiberty. August 7, 2022.)



世界各国、地域や都市に住む人を指す語尾は、Americanや Russianなどに見られる-nがお馴染みですが、国名や都市名によってはその語尾が違ってくるものがあります。


以前取り上げた、トーキョーアイトSyndneysiderMichiganderAngelenoご覧ください。



2022年8月12日金曜日

henchman

北朝鮮政府は新型コロナウィルスとの戦いに勝利したと発表しました。

世界における保健衛生史上の奇跡と豪語しているそうなのですが、ワクチン接種もままならない状況が知られているだけに、眉に唾して受け取る人がほとんどなのではないでしょうか。

金正恩氏自身がコロナに感染し、一時高熱症状にも陥ったと公表されましたが、それを聴く軍人や関係者が涙を流している映像が世界中で流されています。


KIM Jong-un's cronies have been filmed breaking down in tears as they learn the North Korean dictator became "seriously ill" with a fever during the Covid pandemic.

Bizarre footage shows generals and health workers visibly weeping during a speech in the North Korean capital Pyongyang - the first by Kim in several weeks.
(Anthony Blair. Watch as Kim Jong-un’s hardened henchmen BREAK DOWN in tears as tyrant reveals he was ‘seriously ill’ in Covid outbreak. The Sun. August 11, 2022.)


ナンバー2である金与正氏は新型コロナウィルスは韓国からの「ビラ」によって持ち込まれたと主張し、韓国への報復措置を警告したそうです。

独裁政権によるこうしたプロパガンダ的映像は北朝鮮ならではと思わされます。

今日の単語、"henchman"というのは、政治家などの支持者、支援者、という意味ですが、


下等なごきげん取り、取巻き
(研究社新英和大辞典)


という意味でもあり、引用したThe Sun の記事タイトルの意味合いはむしろこちらの方であろうと思われます。

なお、"henchman"のhench〜とは、古英語で馬を意味するhengestから来ており、"henchman"とは主人の馬の世話をする従者のことを指したそうです。そこから、一般的に高い身分の人間に仕える家来、家臣、小姓とか給仕を指すようになったようですが、現代ではこれらの意味で用いられることはもはやなく、廃語とされています。



2022年8月11日木曜日

deposition

トランプ元大統領は、自身がオーナーとなっている一族の企業が不正問題で訴追されている件で、ニューヨーク州司法当局による質疑に対して宣誓証言を拒否し、黙秘権を行使すると表明した模様です。


GREENSBURG, Pa. (KDKA) - Former President Donald Trump said he refused to answer questions from investigators with the New York Attorney General's office on Wednesday, citing his Fifth Amendment right against self-incrimination related to the years-long civil fraud probe into his businesses.

(中略)

Former President Donald Trump walked out of his deposition regarding questions over the former chief executive's property valuations on loan applications and tax issues. However, the president said he pleaded the Fifth to every question asked by the New York attorney general's staff. 
(Ross Guidotti. Local defense attorney explains what pleading the Fifth means. CBS News. August 10, 2022.)


「宣誓証言」のことを"deposition"といいます。

正直なところ、"deposition"という単語を見て(聞いて)、すぐには宣誓証言と浮かびませんでした。というのも、解任する、罷免するという意味の動詞"depose"が頭に浮かんだからです。

改めて辞書を引いてみると、"deposition"、"depose"共に、罷免、解任、そして宣誓証言の意味があり、また、"deposition"と"depose"は語源を同一にしている(ラテン語deponere)ことが分かります。

ところで、もうひとつ、"deposit"という単語もあります。こちらも同じくラテン語deponeeを語源に持つ単語ですが、馴染みのある意味としては銀行にお金を預け入れる、というものがあります。

語源的には、"deposition"はこの"deposit"から派生したそうですが(Online Etymology Dictionary)、英語では"depose"、"deposit"という2つの動詞が生まれたため、ごっちゃになってしまったようです。

その混乱を表しているかのようですが、以下のような用例に当たりました。


Trump was to be deposed by lawyers from New York Attorney General Letitia James' office as part of a more than three-year civil investigation into whether the Trump Organization misled lenders, insurers and tax authorities by providing them misleading financial statements.
(Kara Scannell. Former President Donald Trump invokes Fifth Amendment rights and declines to answer questions from NY attorney general. CNN. August 10, 2022.)


ここでは、("deposit"ではなく)"depose"という動詞が使われていますが、


Trump was to be deposed by lawyers


と、受動態になっており、あたかも「解任(される)、罷免(される)」というような読み方ができてしまいそうです。

しかし、トランプ氏はもはや大統領職にあらず、またどのような職から「解任、罷免」されるのか不明ですから、ここでの"to be deposed"はやはり、宣誓証言(することになっている)、という意味合いです。コーパスで検索してみますと、宣誓証言するという意味合いでの"be deposed"の用例は普通にあるようです。

トランプ氏は自身の企業を巡る疑惑とそれに関連する捜査については、魔女狩りだと批難しています。


Trump said in a post on Truth Social earlier Wednesday morning that he would be "seeing" James "for a continuation of the greatest Witch Hunt in U.S. history! My great company, and myself, are being attacked from all sides. Banana Republic!"
(ibid.)


また、余談ですが、トランプ氏は黙秘権の行使については否定的で、無実ならば黙秘することはない、黙秘権を行使ずるのはギャングのやる事だ、とかつて言っていたそうで、これはブーメランというやつですね。


Former President Donald Trump's decision on Wednesday to invoke his Fifth Amendment right against self-incrimination comes four years after he said that's what mobsters do.

"You see the mob takes the Fifth," he said in April 2018. "If you're innocent, why are you taking the Fifth Amendment."
(Nicole Gaudiano. Trump once said only 'the mob' uses the Fifth Amendment. Now he's invoking it in a deposition with the New York attorney general. Insider. August 10, 2022.)


2022年8月10日水曜日

hustings

ご存知の通り、イギリスでは先月辞任を表明したジョンソン首相の後任を選出する動きが注視されています。

有力候補として、スナク氏、トラス氏の2名が邦紙でも写真付きで取り上げられているのをよく目にしますが、このほど、これら2名の候補者の討論会が行われたようです。


Liz Truss's planned tax cuts alone are "not much good", Rishi Sunak has warned as he said the party risked electoral oblivion in 2024 without providing direct support.

At tonight's fifth Conservative leadership hustings in Darlington, Mr Sunak has suggested he would commit tens of billions to tackling the cost-of-living crisis, while Ms Truss is yet to be drawn on whether she would provide any direct payments to Britons.
(Dominic Penna. Tory leadership hustings: Rishi Sunak warns Liz Truss's tax cuts alone are 'not much good'. The Telegraph. August 9, 2022.)


記事によれば、有力候補と目される両氏は主にインフレ軽減策について持論を戦わせたもようです。


fifth Conservative leadership hustings


とあることから、これが5回目の「候補者による討論会」であったということと思われます。

"hustings"という単語について、正直なところこれまでお目にかかったことがありませんでしたので、辞書を引きました。

議会、裁判所の意味があるのですが、選挙場、また選挙運動の意味でも用いられ、ここでは、


(議員候補者の)政見発表演説
(研究社新英和大辞典)


という意味で使われています。

そもそも"hustings"とは、"house"と"thing"から成るとされ、遡ること約1000年、古ノルド語では、議会、法廷(assembly)のこと指すのだそうです。

いにしえより、議会、法廷の場というものは一段高く設置された「ステージ」で行われてきました。そうした壇上に登ることを目指す候補者も同様に目されてきた訳で、"hustings"は候補者の選挙活動も意味するようになった、とMerriam-Websterオンラインの解説にあります。

なお、"hustings"は単数扱いの名詞(単複同形)です。



2022年8月9日火曜日

go gaga

記事の引用からどうぞ。


On Day 8 of the Capitol riot hearings, while the committee presented evidence of former President Donald Trump’s alleged role in last year’s violent attack, many viewers were thinking the same thing: Who was that hot Clark Kent look-alike sitting in the crowd?

That’s right, a Superman doppelganger stole the show at Thursday’s hearing with the hashtag “Clark Kent” trending on Twitter late Thursday night.

(中略)

The mystery man in question, who was seated behind witnesses Matthew Pottinger and Sarah Matthews, was sporting a sleek navy suit and glasses — earning him comparisons to Superman’s bespectacled reporter alter ego, Clark Kent.

Social media went absolutely gaga over the handsome Man of Steel facsimile.
(Ben Cost. Hunky ‘Clark Kent’ look-alike steals the show at Jan. 6 hearings. New York Post. July 22, 2022.)


引用したのは先月の記事ですが、2021年1月6日にトランプ元大統領支持者らがワシントンD.C.で起こした暴動に関しての公聴会が米議会で行われており、その状況が日々報じられていたところです。

暴動の原因を明らかにするという本筋からは全く逸れた話題ですが、その公聴会に出席しているクラーク・ケントばりの!?美男子が話題になっています。

記事の写真を見ると、なるほどそっくりです。(と言っても、最近の若い人には分からないかなぁ・・・。)

さて、この美男子にネットが騒然ということなんですが、


Social media went absolutely gaga over the handsome Man of Steel facsimile.


というくだりの、"go gaga (over)"という表現は初めて見ます。

"gaga"というのはフランス語から来ているらしく、狂人のことを指すそうですが、元は特に意味のない擬声語であるという説明が語源解説に見られます。

"go gaga (over somebody)"は、〜に対して夢中である、とか、のぼせあがっている、という意味で用いられます。

検索してみると芸能関連の記事が多くヒットするのですが、レディ・ガガさんとは関係はないようです。

手元にある仏和辞典に"gaga"のエントリがあり、老いぼれた、耄碌した、という意味で載っていました。同じくフランス語のgateuxという単語(お菓子のgateauxとはまた別の単語)に関連しているらしく、このgateuxは、のぼせあがった、夢中になって我を忘れた、という意味で用いられるようです。


2022年8月8日月曜日

thumb one’s nose

先週、米下院議長のペロシ氏が台湾を訪問し、これに対して中国が激しく反発し、米中間が緊張しました。

ペロシ氏の台湾訪問については、その是非を巡って議論となっていましたが、米国内においても訪問への反対意見があったところ、やはり独断的で無謀な行動であったとの批難の論調が見られます。


The decision by House Speaker Pelosi (D-Calif.) to visit Taiwan was, as Thomas Friedman wrote earlier this week, “utterly reckless, dangerous and irresponsible.”

Pelosi’s trip neither improved Taiwan’s security nor strengthened global democracy — in fact, it does the opposite. The trip raises fears of conflict in the region by needlessly provoking China, and it directly undermines the West’s goals in Ukraine by bringing Beijing and Moscow closer together.

Moreover, the Speaker’s decision was politically unwise, uncharacteristically so. By making the trip, Pelosi publicly thumbed her nose at the Biden administration — which repeatedly indicated its desire for her not to visit Taiwan — at a time when President Biden is already struggling to present himself as a strong, capable commander in chief.
(Douglas E Schoen. The dangers of Nancy Pelosi’s Taiwan trip. The Hill. August 7, 2022.)


The Hillの記事の引用ですが、訪台については、そもそもバイデン大統領自身が望んでいなかったことに触れ、ペロシ氏を批難しています。

それが、


Pelosi publicly thumbed her nose at the Biden administration


というくだりにおいても表現されているようです。

"thumbed one’s nose"というのは、手の親指を鼻の頭に当てて、相手に対する軽蔑や嘲笑を表す行為を指し、


make a long nose at (somebody)


また、


nose-thmbing


などとも表現されます。

一部報道では、ペロシ氏が台湾訪問を決断した背景には自身の政治家としてのキャリアに箔をつけたいという意向があったのではないかとも言われており、政権の意向を無視した、ないがしろにした、という見方が身内からも出ているというにが実情のようです。


2022年8月5日金曜日

quiet quitting

新型コロナによるパンデミックが現代にもたらしたインパクトは計り知れませんが、とりわけ労働、働き方に対する考え方にもたらした変化は大きいと言えるでしょう。

リモートワークの浸透はそのひとつですが、リモートワークという環境下において、働くという事に対する意識の変化を引き起こしているということがあります。

アメリカでは最近、


quiet quitting


なる言葉がトレンドだそうです。この"quiet quitting"とはどういう概念なのでしょうか?


Workplace ideologies continue to shift and evolve for the American workforce — and now there’s a trending new philosophy that's connected to a desire, at least among some, for better mental health.

The emerging mindset is called quiet quitting — and it's about modifying the all-out commitment to one’s career.

"Quiet quitting refers to the personal decision to quit putting in too much effort at work," explained Amy Morin, a psychotherapist in the Florida Keys, to FOX Business.
(Erica Lamberg. Workplace's new 'quiet quitting' trend — and the pitfalls for today's employees. FOX Business. August 4, 2022.)


"quit"という動詞に、(仕事を)辞める、という意味があることはご存知かと思います。そうすると、"quiet quitting"とは、静かに仕事を辞めること、というような解釈になりそうですが、周りに黙って、こっそりと退職する、というようなことではなく、仕事に対するコミットメント、即ち、注力の度合いを下げる、ということを言うようです。"quiet 〜"は、敢えて周囲にそれと分からないように(あるいは公言することなく、自分の中で)仕事に取り組む姿勢を変える、ということだと思われます。

仕事一辺倒でバリバリと働いてきた人達が、パンデミックを境に、またリモートワークを余儀無くされたことをきっかけに、働き方、仕事に対する姿勢を見直すことになったことが背景にあるようです。私生活と仕事の境目が限りなく曖昧なものになっていることも一因としてあるようです。

言われてみれば、思い当たる節が無いでもありません。私の周りにも・・・!?

ところで、"quiet"、"quit(ting)"とQで始まる単語が連続しますが、"quiet"も"quit"も語源は同じで、ラテン語で休むという意味の動詞quiescereから来ています。

"quiet quitting"とは、周りに分からないようにこっそりと休む(サボる)、と言い換えることもできるかも知れません!?


2022年8月4日木曜日

hold sway

2020年の大統領選で敗北し、それを受け発生した年明けの暴動の責任を追求されているトランプ元大統領ですが、未だその支持者は一定数がおり、また政界に強い影響力を持っているようです。

アリゾナ州やミシガン州で行われた大統領候補者予備選挙においては、トランプ氏の言動が共和党の候補者支持に影響したと分析されているそうです。


Election results in a slate of key primary races Tuesday night underscored former President Donald Trump's enduring influence over the Republican Party, despite signals that his status as its de facto leader may be eroding.

(中略)

Trump took a victory lap on social media early Wednesday, suggesting the results demonstrated the power of his endorsement as a deciding factor in each race where he had weighed in.
(Kevin Breuninger. Trump still holds sway in GOP as MAGA candidates win in key primary races. CNBC. August 3, 2022.)


記事のタイトルで、"hold sway"という表現が使われています。


Trump still holds sway in GOP as MAGA candidates win in key primary races


"sway"という単語は、以前も取り上げたことがありますが、揺さぶる、揺する、という意味で、そこから抽象的には相手、対象に対する影響力、支配(権)という意味もあります。

"hold sway"はそのよう影響力、支配権を持っているということですが、逆に、そういった影響力下にあることを言う場合は、"under sway"と表現します。


A retired four-star Army general said that he thinks President Trump is a “serious threat to US national security” because the president "is refusing to protect vital US interests from active Russian attacks."

Retired Gen. Barry McCaffrey tweeted Friday that “it is apparent that he is for some unknown reason under the sway of (Russian President Vladimir) Putin.”
(Jessica Durando. Retired four-star Army general: Trump, 'under the sway of Putin,' threatens national security. USA Today. March 17, 2018.)



2022年8月3日水曜日

pick up the slack: その2

先日の報道によれば、フェースブックは上場後初の減収、またグーグルも四半期の業績が前年同期比を下回るなど、シリコンバレーのIT大手は業績が低下しており、今後の経営に危機感を募らせているようです。


Between slowing revenue growth and an increasingly murky outlook for tech companies in general, Google is tasking its employees to put in harder shifts at work.

(中略)

At Google—one of the biggest tech players around today—executives are urging employees to pick up the slack.

“There are real concerns that our productivity as a whole is not where it needs to be for the headcount we have,” Sundar Pichai, CEO of Google parent company Alphabet, reportedly told employees last week.
(Tristan Bove. Google chief warns bloated staff of ‘real concerns’ over productivity. Fortune. August 01, 2022.)


グーグル、フェースブック共に、生産性の低下を問題に挙げており、従業員の削減も視野にあるようです。

他の記事を読んでみると、グーグルCEOであるPichai氏の発言や社内向けメッセージなどが紹介されています。CEOともなればその評価は業績向上のみであり、ここで如何に従業員の士気を上げることができるか、リストラもちらつかせながら、引き締めを図る内容となっています。

"pick up the slack"というのは、弛んでいるところ(slack)を引き締める、という意味で、お腹周りの弛みをエクササイズで引き締めるということもありますが、気を引き締める、つまり、喝を入れる、という意味でも使われます。

なお、"take up〜"という場合もあります。

実のところ、"pick up the slack"という表現を以前取り上げたことがあるのですが、同じ"pick up the slack"でも前回取り上げたのとは少し違った意味で使われているようです。それで、今回は「その2」とした次第です。


2022年8月2日火曜日

米、アルカイダ指導者を殺害 ー take out

今朝のトップニュースは、アメリカ政府が、アルカイダの指導者、ザワヒリ氏をアフガニスタンのカブールで殺害したと公表した、というものでした。


The president said that al-Zawahiri was killed in Kabul. U.S. government had multiple, independent sources confirming al-Zawahiri's whereabouts at a safehouse, a senior administration official told reporters on a call Monday evening. He was ultimately taken out by a drone at 9:48 p.m. ET Saturday, while he was on the balcony of the safehouse, and his family members were in different rooms of the house. The U.S. government, the senior administration official said, has a high level of confidence that no one else was killed in the strike. 

(中略)

The senior administration official said the president received regular updates as the U.S. government zeroed in on al-Zawahiri. Once the safehouse was located, the president wanted to understand more about the layout of the safehouse's doors and windows to avoid other casualties. In a July 25 meeting, the president authorized a precise, tailored air strike that would minimize civilian deaths as much as possible, the senior administration official said. 
(Al Qaeda leader Ayman al-Zawahiri killed in drone strike, Biden says. CBS News. August 1, 2022.)


2001年9月11日に起きた米同時多発テロの発生から21年、そしてそのテロの首謀者、ビンラディン氏が殺害されて11年ですが、ザワヒリ氏殺害に関しても周到な準備を進めていた模様です。

ところで、引用した部分に、


He was ultimately taken out by a drone at 9:48 p.m. ET Saturday


という箇所がありますが、"take out"という動詞句に注目したいと思います。

つい、食べ物の「テイクアウト」を思い浮かべてしまいますが、その意味ではないことは明らかです。

ザワヒリ氏はドローンによる攻撃により殺害されたということですが、"take out"の意味を知らなかった私は、この箇所を一読した際、ドローンで外に誘き出したのかな、と想像しました。

実のところ、"take out"には、殺害するという意味があります。

軍事的なコンテクストでは目標物等を破壊する(to destroy)という意味で使われるそうで、殺すという意味については俗語とする辞書もあります。


2022年8月1日月曜日

digital nomad

コロナ禍でリモートワークが広まりましたが、仕事内容によっては完全にリモートで遂行できる業務もあるということで、仕事場所は自宅にとどまらず、世界中どこにいても可能と豪語する向きもあるようです。

ある意味、勤務地が限定されないということの究極なのでしょうが、中には国境を越えて移動しながら働く猛者(!?)もいるそうで、こういった人達を、


digital nomad


というらしいです。アメリカではこういった"digital nomads"が1,500万人もおり、パンデミック発生以降、近年急増しているそうです。


When Michelle Checchi, 29, left the US in 2019, she only planned to be gone for a few months — as long as it took to drain her savings account.

Today, she's still traversing the globe, working remotely as a freelance writer and video producer — making $4,000 in the typical month while only working 15 to 30 hours per week, according to bank documents reviewed by Insider. 

(中略)

A growing number of digital nomads, or remote workers that travel for weeks, months, or — in her case — "for the foreseeable future." Over 15 million Americans describe themselves as digital nomads, up 42% from 2020 and 112% from 2019, according to MBO Partners' 2021 State of Independence study. Driving this trend is the growing flexibility of remote work, a longing to see the world, and the desire to cut costs.
(Jacob Zinkula. A 29-year-old part-time remote worker living abroad and making $4,000 a month explains how she finds work and affords her lifestyle. Insider. July 31, 2022.)


"nomad"というのは遊牧民のことで、定住地を持たず、牧畜の生育に適した牧草地を求めて放浪を続ける人のことを指します。牧草地のことを指すギリシャ語nomosに由来するそうです。

ところで、"digital nomads"というのは、デジタル時代、つまりインターネットがあれば日常生活のほとんどの用事に困らないという時代における新しい遊牧民「的」生活スタイル、ということでしょう。

先に引用した記事で触れられていたのですが、スペインではこうした"digital nomads"向けのビザを発給しているそうです。


Authorities in Spain will unfold their plans for the digital nomad visa during the following months in an effort to attract internationals who can temporarily live in Spain while working for companies or clients outside the country.

Such a scheme would also help Spain’s economic sector to recover from the crisis caused by the Coronavirus and its new strains, SchengenVisaInfo.com reports.
(Spain to Create Digital Nomad Visa. News Schengen Visa. January 31, 2022.)


Merriam-Websterオンラインによると、"digital nomad"という言葉の初出は1993年ということなのですが、意外にもネット全盛期よりも前から使われているということです。