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2022年2月28日月曜日

notch

トランプ元大統領は依然として保守層では期待されているらしく、次期大統領選の候補者の筆頭に挙げられています。

CPAC(保守政治活動協議会)が実施した、次期大統領選候補者に関する"straw poll"(紙上人気投票)では、トランプ氏が59パーセントを得票し、2位のデサンティス氏の28パーセントを大きく引き離すという結果でした。


Former President Trump emerged as the clear winner in the Conservative Political Action Conference's (CPAC) highly anticipated presidential straw poll, capturing a solid majority of support in a hypothetical primary match-up and cementing his status as the heavy favorite for the 2024 GOP nomination among the most devoted conservatives.

The straw poll, which received responses from more than 2,500 conference attendees, found that 59 percent back Trump for the 2024 Republican nod, a slight increase over last year's poll, which showed him with 55 percent support. 

Florida Gov. Ron DeSantis (R) finished in a distant second with 28 percent support, making him the only other prospective candidate to notch double-digit support. In last year's straw poll, DeSantis notched 21 percent support.  

Former Secretary of State Mike Pompeo finished in third place, with just 2 percent support.
(Max Greenwood. Trump wins CPAC straw poll as DeSantis's support grows. The Hill. February 27, 2022.)


今日は記事中でいくつか出てくる、"notch"という動詞を取り上げたいと思います。


notch double-digit support
notched 21 percent support


などとあります。意味するところはほとんど明らかですが、


獲得する、記録する


という意味です。そもそもは、刻み目、V字形の切欠きのことです。

V字形の刻みを入れることで記録をしていた時代の名残りなのでしょう。Online Etymology Dictionaryによればクリケットでのスコアの付け方に因むそうです。

第一級のことを、"top notch"と言いますが、最高得点と解釈するとスポーツのスコアリングと関連しているのかもしれません。

ところで、"notch"という単語は古くはotchというスペルだったそうなのですが(古フランス語ではoche)、an otchという不定冠詞との組み合わせが誤解により、a notchとなり、そのまま"notch"というスペルに固定してしまったという経緯があります。

いわゆる異分析と呼ばれるものですが、当ブログでも以前取り上げたように、"nickname"、"aught"、"apron"などの単語も同様で、この手のスペル変化をした単語は枚挙に暇がないくらいです。

余談ですが、今日のWordleで、最初にNOTCHと入力してみたところ、O、C、Hが含まれるというヒントが得られ、次にCHOKEとしたところ、大当たりで、いつも4回目、5回目くらいで何とか成功するところ、初めて2回目のGuessで成功しました。



2022年2月25日金曜日

戒厳令 ー martial law

2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。

米欧首脳はロシアへの制裁を発動、首都キエフなど複数の都市で爆発が発生、市民らが地下鉄駅に避難するなど混乱状態に。

ゼレンスキー大統領は国内に戒厳令(martial law)を発令しました。


Ukraine declared martial law as Russia launched a military operation in the country.

"Dear Ukrainian citizens, this morning President Putin announced a special military operation in Donbas. Russia conducted strikes on our military infrastructure and our border guards. There were blasts heard in many cities of Ukraine," Ukrainian President Volodymyr Zelensky said in an address to the nation, CNN reported. 

"We're introducing martial law on the whole territory of our country," he added. 

The announcement comes as explosions were heard in cities across Ukraine and Russian President Vladimir Putin threatened other countries against getting involved. 
(Ukraine declares martial law as Russia launches military operation. The Hill. February 24, 2022.)


戒厳令を英語で"martial law"と言います。

"martial"とは、戦争に関する、という意味の形容詞ですが、ローマ神話の軍神マルス(Mars)に由来します。

戒厳令とは、国の非常事態において、行政権などが制限され、軍に委ねられることを指します。


2022年2月24日木曜日

謁見 ー audience

エリザベス女王が新型コロナウィルス陽性を示したというニュースを見たのは確か先週だったと記憶します。

高齢であることからも容態が心配されましたが、その後は軽症だという報道だったので、記事のタイトルだけでスルーしていました。

ところが、今日見たところでは、死亡説が出ているということで、びっくり仰天です。

恐らくはフェイクニュースと思われるこの死亡説は、セレブのゴシップ専門のブログサイトが発信元らしく、バッキンガム宮殿はこれを否定する意図で女王の動静に関する公式声明をリリースしたということです。


Buckingham Palace has released another update regarding Queen Elizabeth’s health. 

The palace said Wednesday that the queen, who tested positive for COVID-19 on Sunday, held her weekly telephone audience with Prime Minister Boris Johnson. 

The news of the queen’s call followed the U.S. blog Hollywood Unlocked’s false “exclusive” claim Tuesday that Queen Elizabeth had died, which quickly circulated on social media and beyond.
(Carly Ledbetter. Buckingham Palace Gives Update On Queen Elizabeth's Health After Death Hoax Circulates. Huffington Post. February 23, 2022.)


バッキンガム宮殿による声明の内容は、今回の「死亡説」に直接言及したものではなく、コロナ感染後も女王が公務をこなしているという内容のものです。

記事では、ジョンソン首相との、


weekly telephone audience


を行った、とあるのですが、ここでの"audience"の用法(意味)を知らず、不勉強を恥じました。

イベントや演奏会の観客、聴衆、という意味は誰でも思い浮かぶところですが、


(国王、法王、高官などの)謁見、引見


という意味があるとは知りませんでした。"telephone audience"とは対面ではなく、電話を介しての謁見ということでしょう。

ところで、ランダムハウス英和辞典の例文では、


have audience of the Pope [=have an audience with the Pope]


とあり、和訳は「ローマ法王に謁見する」とあります。

つまり、"audience"に続く前置詞(of、またはwith)の目的語に来るのは目上の人であり、主語になるのは目下の者である、と解釈されます。

ところが、記事では、エリザベス女王が、


held her weekly telephone audience with Prime Minister Boris Johnson


となっており、目上と目下が逆転しています。動詞は"held" (hold) ですが、これは恐らく誤用ではないかと思いました。

Merriam-WebsterやAmerican Heritageなどの定義もチェックしてみたところ、


an opportunity of being heard


という定義からは、やはり主語(謁見を賜る方)が目下であると解釈されます。

「謁見を賜る」と書きましたが、「賜る」という日本語の表現自体、敬語としては謙譲表現として用いる場合と、尊敬語として用いる場合があり、どちらにも解釈できるところが難しいところです。"audience"の用法にもこれと似たものがあるのかも、と思ったりします。

しかしながら、コーパスで見る用例は、"audience"の目的語に来るのは目上の人というのがほとんどで、その逆は見当たりません。

辞書には、


grant an audience to (あるいは、with)


という言い回しも載っていますが、こちらは主語に来るのが目上の人で、目的語は目下、となります。

これが受身形になると、

be granted an audience with〜
be admitted an audience with〜


となり、当然のことながら主語、目的語が逆となります。


2022年2月23日水曜日

downstairs appendage

閉幕した北京オリンピックでは積雪量が足らず、人工雪で補ったと報道されていました。

あまり寒くないのかなどと思ったりしたものですが、実際のところそれなりに寒いというのは地理的に見ても当たり前ですが、肌感覚としてなかなか分かりませんね。

張家口市の会場で行われたクロスカントリースキー(50キロフリー)では荒天に見舞われたため、スタートを1時間遅らせ、さらに30キロに短縮して行われました。

荒天のレースを1時間以上かけてゴールしたフィンランドの選手は、「下(しも)の部分」が凍る悲劇に見舞われたそうです。


A Finnish skier competing in a men's cross-country skiing race at the 2022 Winter Olympics in Beijing suffered damage to his equipment on Saturday, but just not what you might expect, according to a report. 

Remi Lindholm, 24, of Finland, spent over an hour traversing the shortened men's 50km mass start free race in brutal temperatures and howling winds, causing his penis to become frozen, Reuters reported. 

"You can guess which body part was a little bit frozen when I finished ... it was one of the worst competitions I've been in," Lindholm told Finnish media. "It was just about battling through."
(David Aaro. Finnish skier suffers frozen penis during event at Beijing Olympics — After the race, Lindholm said he needed a heat pack to thaw out his downstairs appendage. Fox News. February 20, 2022.)


記事のタイトル(また本文中も)、"penis"(陰茎)と出てくるのでドキッとしますが(一応、解剖学の正式用語)、別表現では、"equipment"、また、


downstairs appendage


と表現されているのを興味深く思いました。

"downstairs"とは、階下の意味ですが、人間の上部と下部を分けて"downstairs"と表現する事例を初めて見るように思います。

また、appendageとは付属器官、例えば尻尾のような本体部分から飛び出たものを言いますが、これが何をいわんとするかはは明らかでしょう。

ちなみにReutersの記事では、


a particularly sensitive body part


という表現でした。

"downstairs"について、Oxford Dictionary of Euphemismsでは、


the genitalia. A genteel use by male and female.


という解説があり、婉曲表現として認知されているものであると分かります。(なお、"appendage"も同様に"penis"の婉曲表現。)

手元の英和辞典で"downstairs"を確認しましたが、このような婉曲表現の意味は見当たりませんでした。


2022年2月22日火曜日

duality

昨日の投稿でも触れましたが、冬季オリンピックの次回開催国はイタリアに決定しています。

閉会式のネット中継を見ていたところ、次回大会の開催予定都市へのHandover ceremonyが行われましたが、その演出で掲示された、


Duality, Together


というメッセージの意味がよく分からずにいました。

英語中継だったので、聞き逃したのかもしれません。中国語も添えられていましたが、こちらは理解できるだけの知識を持ち合わせていません。

東京オリンピックの時は、"solidarity together"でしたので、また違うメッセージを出してきたものだ、というくらいに考えたのですが、やはり気になったので録画映像を見直したくらいです。

"duality"を辞書で引くと、


二元性、二重性、双対性、相対性


などとありますが、いまいちよく分からないと思いつつ調べると以下の記事に辿り着きました。


With the completion of the Winter Olympics in Beijing and the approaching flag handover ceremony at the Closing Ceremony, we can start to set our sights on Milano Cortina 2026.

Milano Cortina 2026 will be the first Olympic Games to be hosted by two cities, two regions and two provinces. The idea of the Games will be based on two territories, seemingly distinct, becoming harmonious.

While the European terrain of Milan visibly displays landscape and skylines, Cortina is known for its nature and architecture. Through the Flag Handover Ceremony, a strong foundation created by duality and fragility will be set for Milano Cortina 2026.
(Julia Elbaba. Italy Introduces ‘Duality, Together' in Milano Cortina 2026 at Handover Ceremony. CNBC. February 20, 2022.)


昨日も触れましたように、次の冬季オリンピックの開催都市はミラノ/コルティナ・ダンペッツォで、オリンピック史上初めてとなる2都市共同開催ということです。

地図帳を拡げてみると、ミラノはイタリア北部、コルティナ・ダンペッツォはミラノからさらに北東方向、オーストリア国境付近の都市で、直線距離では200キロほど離れているかと思われました。

ミラノは平野部のように見えますが、コルティナは明らかに山岳地帯のようです。

"duality"はこうした二都市の性格の違いを表しているもののようです。

公式ホームページによれば、二都市開催ということの他、2つの地域、2つのプロバンス(州)にまたがる、6都市(ロケーション)で競技が行われるそうで、"duality"の意味するところは中々深いものがあるのでした。



2022年2月21日月曜日

trifecta

北京冬季オリンピックが日曜日、閉幕しました。開会式の時と同様、ネット中継で見ました。

一夜明けて、主要メディアの論評記事にざっと目を通してみますと、豪華な演出はさておき、人権問題やロシアによるドーピング問題など、負の側面に触れた批判的な内容のものがほとんどでした。米を始めとする各国の外交的ボイコットに始まり、コロナ対策といい、強権国家を彷彿とさせる言論統制と選手の政治的発言を牽制しようとする動きといい、異様、異例づくめの大会であったという論調が目立ちます。

ところで、オリンピックの直近の開催国が東アジア地域に集中しているということをご存知の方も多いと思います。

2018年冬の平昌、2020年夏の東京、そして、今回の北京、です。


The terrarium of a Winter Games that has been Beijing 2022 came to its end Sunday, capping an unprecedented Asian Olympic trifecta and sending the planet’s most global sporting event off to the West for the foreseeable future, with no chance of returning to this corner of the world until at least 2030.
(Beijing’s Olympics close, ending odd global moment. Politico. February 20, 2020.)


"trifecta"という単語を知りませんでしたが、競馬の用語らしく、三連勝単式、と載っています。

三連勝単式というのは、競馬の1着から3着までを順序含めて当てることをいうものだそうです。"perfecta"が二連勝単式、triple perfectaが約まって"trifecta"となったものです。

また、偶然3つのものが同時に起こること、また三冠の達成といった意味で用いられるそうです。

次の冬季オリンピックはミラノ/コルティナ・ダンペッツォの2都市共同開催という、これまたオリンピック史上初めてのことのようですが、現時点で決定している限りでは2032年夏のオーストラリア・ブリスベンまでです。2030年冬季大会については札幌が候補都市に名乗りを挙げていますが、札幌が選ばれない限りは東アジアでの開催は当面ありません。

ちなみに、札幌(1972)、長野(1998)を含めると、東アジアでの冬季オリンピックとしては4回目となる北京開催でした。



2022年2月18日金曜日

clean slate

北京冬季オリンピックの女子フィギュアスケートではロシア選手のドーピング疑惑が暗い影を落としています。

まだ15歳のワリエワ選手から心疾患治療に用いるトリメタジジンが検出されたことで、一時競技の継続が危ぶまれました。

ドーピング疑惑に関しては、同選手の祖父が服用していた薬が混入した可能性があるなどという苦しい言い訳が報道されているのを目にしましたが、ロシアによる組織的なドーピング疑惑は今に始まったことではありません。


Under the ban set to expire later this year, Russian athletes have only been able to participate if they can prove they are clean. They compete under the banner of the Russian Olympic Committee, not technically under the Russian flag.

"Russia's not writing on a clean slate. Russia has had a state sponsored doping program since at least the 1960s. It is very well established, it is heavily documented. And so when any Russian athlete tests positive, the Russian state is not doing anyone any favors because there is now a presumption of guilt instead of a presumption of innocence, which for a 15-year-old skater is terrible," Walden said.
(Kamila Valieva drug case puts spotlight on adults around teen figure skater. CNN. February 17, 2022.)


CNNの記事からの引用です。


Russia's not writing on a clean slate.


という部分に見られる、"clean slate"というのは慣用句の類で、


a person's record (as from a school or a job) that shows no evidence of any problems, broken rules, etc. : a clean record
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味です。

一点の曇りもない、とか、申し分無い(経歴)、というような意味合いです。

"slate"という単語については以前取り上げたことがありますが、粘岩版とか石版のことで、物を書きつけておく板という概念を持つ単語です。それが「クリーン」である、ということは、咎めになるようなものが何も無い状態を指します。

引用の記事に関して言えば、ロシアのスポーツ選手に関する"slate"にはあまりにも多くのドーピング事例がまだ消えずに残っている、ということです。

"clean slate"には、まっさらな状態、白紙の状態、という意味もあり、何かをきっかけにして、新たに取り組む、スタートするというような意味でも用いられ、"start with a clean slate"というようなフレーズで用いられます。従って、ロシアは過去のドーピング疑惑を払拭、更生してスタートすることが出来ていない、という解釈もできます。



2022年2月17日木曜日

grifter

今日の単語は"grifter"です。詐欺師という意味です。

ドリフター(ズ)、ではありません。「グリフター」です。

ハリウッドを舞台にした巨額の詐欺事件(6億5000万ドル!)で、首謀者が逮捕され、20年の実刑判決が出ました。


The tale of Zachary Horwitz made headlines this week after he was sentenced to 20 years for bilking investors out of $650 million by peddling bogus licensing deals with HBO and Netflix.

Ironically, it is just the kind of juicy swindler story you might binge watch on those platforms: Horwitz, a 35-year-old actor who had bit roles in a handful of low-budget films over the past decade, pleaded guilty last fall to committing federal securities fraud and running an illegal operation known as a Ponzi scheme. For years, prosecutors say, Horwitz used his investors' money to fund a lavish Hollywood lifestyle — until his scam unraveled.
(Allison Morrow.Hollywood actor's Ponzi scheme, explained: Why investors keep falling for scams. CNN. February 16, 2022.)


その詐欺の手口はというと、ハリウッド映画のライセンスに出資すれば将来にネットフリックスなどのストリーミングサービスでの収益でリターンが得られるというような話を持ち掛けて金を集めていたというものですが、ライセンスにしても、ストリーミングサービス会社とのビジネスも全て架空のもので、いわゆるネズミ講の類であったということです。

ハリウッド映画を地で行くような詐欺事件だと記事中にもありますが、うっかりその罠に嵌ってしまう人は後を絶たないものだと思わされます。

それについては、記事中、以下のようなくだりがあります。


It's not hard to imagine how an investor might be sucked into such a scam in the era of meme stock rallies and overnight cryptocurrency millionaires. The fear of missing out is a powerful tool for grifters.
(ibid.)


騙される側の心理として、儲け話には乗り遅れたくない、という心理があるといいます。詐欺師はその心理につけ込むのです。

さて、"grifter"です。

記事中も詐欺、ペテン、騙す、といった表現が多数出てきますが、"grifter"については初めてお目にかかりました。

"grifter"は"grift"という動詞(イカサマで儲ける)から来ているのですが、その"grift"は"graft"が転化したものと辞書にあります。

"graft"というと、接木とか移植という意味が思い浮かびますが、その"graft"の特殊用法として、不正利得とか収賄、またその手口、といった意味があります。

"grifter"を辞書で引くと、縁日などで出店を出しているいかさま師という訳語が見えるのですが、秘密裏に詐欺を働く詐欺師というよりは、白昼堂々と相手を騙すぺてん師というような含みがあるようにも思われます。

2022年2月16日水曜日

take 〜 in stride

記事の引用からどうぞ。


Virginia Lt. Gov. Winsome Sears reportedly used her high-heeled patent leather pump to gavel the Virginia Senate to order Monday after someone made off with her gavel.

Washington Post reporter Laura Vozzella tweeted that "an unknown prankster" took the gavel and hid it, but that Sears "took the trick in stride."

"One shoe can change your life," Sears said of her quick-thinking solution. "Just ask Cinderella."

"Resourcefulness- never underestimate it!" Sears also tweeted in response to Vozzella.
(Jon Brown. Virginia Lt. Gov. Winsome Sears uses leather high heel to gavel in Senate after gavel goes missing. Fox News. February 15, 2022.)


ヴァージニア州議会で、議長が使う小槌("gavel")が無くなるハプニングがありました。

恐らくは何者かによる悪戯と見た議長の副州知事は、機転を効かせて履いていたハイヒールを代わりに使ったそうです。

本人のコメント曰く、"resourcefulness"(臨機応変)な一件ですが、


took the trick in stride


とも評されています。

この、"take (something) in stride"という表現ですが、"stride"とは(ランニングをする人はご存知と思いますが)「歩幅」のことで、特に大股、またその一歩を指します。目的語に来るのは障害とか困難、チャレンジ、等々ですが、それらを首尾よく切り抜ける、うまくこなす、という意味で用いられます。



2022年2月15日火曜日

dinobaby

IBM社の役員らが従業員を年齢で差別するような発言を行なっていたという社内メモが暴露され、訴訟に発展しているという話です。


Internal emails show IBM executives calling older workers "dinobabies" and discussing plans to make them "an extinct species," according to a Friday filing in an ongoing age discrimination lawsuit against the company. 

The documents were submitted as evidence of IBM's efforts "to oust older employees from its workforce," and replace them with millennial workers, the plaintiff alleged. It's the latest development in a legal battle that first began in 2018, when former employees sued IBM after the company fired tens of thousands of workers over 40-years-old. 
(Hannah Towey. IBM executives called older workers 'dinobabies' who should be 'extinct' in internal emails released in age discrimination lawsuit. The Insider. February 13, 2022.)


言わずと知れたコンピュータ分野の大企業ですが、時代の先端を行く有名企業には年寄り社員はお荷物と言わんばかりです。

年寄りが何歳からを指すのか、アラフィフの小生には興味関心があるところですが、同社は2018年から40代以上の社員を対象にリストラを行ってきたということですから、私なんぞはターゲットそのものです。

同社はこれからの時代を生き抜くにはミレニアル世代、デジタルネイティヴが重要としながら、年配社員は、


dinobabies


と一括りにし、「絶滅させるべき」とまで言ったそうです。

こんな単語は勿論辞書に載っていないのですが、「絶滅」というワードからしても、恐竜を意味する"dinosaur"から来ている単語であると想像がつきます。

英語の接頭辞としてのdino-は、恐ろしい、巨大な、という意味で、ギリシャ語deinos(英語のdireの語源でもあります)から来ています。-saurはトカゲで、dinosaurとはつまり巨大な、恐ろしいトカゲということです。

古生物としてのdinosaurには、変化に適応出来なくなって絶滅せざるを得なかった巨大で無様な存在の象徴という意味もあり、Merriam-Websterでは、


one that is impractically large, out-of-date, or obsolete


とも定義されています。

同社の経営層にとって、年配社員の存在は企業の死活問題に直結する「恐ろしい」ものだったのでしょうか。あるいは、お荷物になる「巨大な」赤ん坊のように手に負えない存在だったのでしょうか。

いずれにしても年齢や世代で差別し、社員を大切にしない会社に未来は無いと思いました。



2022年2月14日月曜日

mogul

記事の引用からどうぞ。


GENEVA (AP) — Swiss voters on Sunday rejected a government’s plan to inject more than 150 million francs (about $163 million) into broadcast and print media every year, including support for early-morning newspaper delivery and online media to the tune of 70 million francs (nearly $76 million) a year, according to exit polls.

(中略)

Foes of the plan had said the cash injection would waste taxpayer money, benefit big newspaper chains and the media moguls who run them and hurt journalistic independence by making media outlets more dependent on state handouts and thus less likely to criticize public officials. They also said it was discriminatory, since free newspapers wouldn’t benefit.
(Jamey Keaten. Swiss voters reject public aid plan for newspapers, media. The Associated Press. February 13, 2022.)


今日の単語は、"mogul"なんですが、


大立者、大御所、有力者、大実業家


といった意味です。

16世紀から19世紀にかけてインドを支配したムガール帝国(Mogul Empire)に因みます。ペルシア語起源。

ところで、北京冬季オリンピックという時節柄、モーグルというスキー競技も"mogul"と言いますから関連があるのかなと思ってしまいますが、実際のところ関係はありません。

スキー競技の"mogul"は、スカンジナビア方言で地面の隆起を意味するmugeという語(あるいは、ドイツ方言で小さな丘を意味するmuglという語)に由来するそうです。




2022年2月11日金曜日

persuade

今日は学校英語の話題です。

決して学校文法や中学、高校の英語を侮っているわけではなく、時に意外な気づきがあります。(単に勉強不足!?)

先日、高校一年生の娘から質問をされました。

英文和訳の設問で、以下のような英文が提示されたそうです。さて、何と訳す?


I persuaded my father to stop smoking.


娘は、「私は父にタバコを吸うのをやめるよう説得した。」と書いたところ、正答は、


「私は父を説得してタバコをやめさせた。」


だったそうです。

意味するところの違いはお分かりいただけると思います。

つまり、説得(働き掛けるという)行為に焦点があるのか、もしくはその先の帰結に焦点を置くのか。

"persuade"は受験生にしてみれば基本中の基本と言ってよい単語です。小生自身、英文を読んでいてこの単語が出てきたとしても改めて辞書を引いたりしません。

(勉強不足との誹りを受けそうですが)American Heritage Dictionaryの説明を読んで、驚きました。その定義を引用しますと、


To cause (someone) to accept a point of view or to undertake a course of action by means of argument, reasoning, or entreaty


というものです。

"accept"に注目せざるを得ません。つまり、冒頭に挙げた問題文のto+不定詞で表される行為を承諾させるのが"persuade"の意味するところで、問題文の訳としては、説得(働き掛ける)行為のみならず、その帰結(タバコを吸うのをやめた)までをも含む訳が適切と言えます。

American Heritage Dictionary ではさらに、類語の説明の部分で下記のように解説しています。


Synonyms: persuade, induce, prevail, convince
These verbs mean to succeed in causing a person to do or consent to something. Persuade means to win someone over, as by reasoning or force of personality


ここで再び、"to succeed in〜"、"win 〜 over"に注目しなければなりません。つまり、説得の内容(to+不定詞で表される行為)を受け入れさせることまでを意味しているのです。

勿論、現実的には、説得はしたけれども、相手がそれを拒否するということもあるでしょう。そのような場合には、"persuade"を用いることができない、あるいは用いないのでしょうか?

コーパスで用法を検索してみますと、"persuade"という動詞で働き掛けようとしている特定の行為について、実際にその相手に受け入れさせることが出来たか否か、ということについて全てを例証するのは困難に思われましたが、例えば、


trying to persuade him to…
attempt to persuade him to…
in an effort to persuade


などの言い回しでは、働き掛けるという行為に限定され、結果が伴わない可能性を示唆するものと思われました。逆に言えば、"persuaded"と過去形になっている場合では、説得の結果までが常に含意されているものと考えるのが妥当と思われます。

以下の引用にある用例は当ブログで昨年引用した記事です。


President Joe Biden, who for months used techniques like public service announcements to persuade Americans to get vaccinated, feels he has struck a "brick wall" in convincing holdouts to get shots, according to people familiar with his thinking.
(Kevin Liptak. Biden unveils federal worker vaccine requirement as he strikes a 'brick wall' convincing unvaccinated Americans to get the shot. CNN. July 29, 2021.)


ワクチン接種を働き掛けること(説得)は出来ますが、実際に接種したかどうかは人それぞれです。従って、

*President Joe Biden, who for months used techniques like public service announcements and persuaded Americans to get vaccinated


という文は成り立たないということです。

"persuade"に関してはこの他、"persuade〜out of"といった言い回しや、"dissuade"という対義的表現、また"persuade"と"convince"の違い("convince"ではto+不定詞を取ることはなく、that節となる)等、話題に事欠かないのですが、それらはまた別の機会に。



2022年2月10日木曜日

cultural appropriation

今日は"cultural appropriation"という言葉を取り上げたいと思います。

日本語では、文化の盗用とか文化侵奪などと訳される概念ですが、他国や他民族の文化を自国や自民族のものであるかのように取り扱うことを指します。

最初に引用する記事はアメリカの女性ラップミュージシャンが黒人英語のアクセントを真似たものが批判を浴び、謝罪に追い込まれたというものです。


Awkwkafina responded to longstanding criticism that she uses a fake "blaccent" in her comedy while announcing that she’s retiring from Twitter. 

The "Shan-Chi and the Legend of the Ten Rings" star, who was born Nora Lum, has long-faced criticism for her use of African-American Vernacular English (AAVE). Some have spoken out on social media to accuse the actress of doing a voice that’s a caricature of a Black person in order to be funny.
(Tyler McCarthy. Awkwafina announces Twitter break, responds to cultural appropriation. Fox News. February 6, 2022.)


黒人英語と書きましたが、African-American Vernacular English (AAVE) とかEbonicsと呼ばれるもので、米南部など、奴隷貿易時代の文化背景を持つ地域に見られる、特徴的なアクセントや語法、表現などが見られるものを指します。

女性が滑稽さを醸し出す目的で敢えて黒人英語のアクセントを真似たのではないかと、かねてより批判的に見られていたところ、本人はそのような意図は無かったと否定しながらも、批判を受けて活動を一部自粛すると表明しました。

たまたまですが、"cultural appropriation"の話題がありますので、もう一件、別の記事を引用します。


The major presidential candidates criticized Beijing's apparent bid to place its claim on Korean culture, after a woman wearing hanbok, Korea's traditional dress, appeared representing an ethnic minority of China during the opening ceremony of the Beijing Winter Olympics. 
(Nam Hyun-woo. Lee, Yoon slam Beijing Games for 'cultural appropriation'. The Korea Times. February 10, 2022.)


こちらは先週開幕した北京冬季オリンピックの開会式の演出に関する記事です。

小生もネットで中継を見ておりましたので記憶にあります。中国国旗を掲揚する際の演出で、掲揚台に向けて運ぶ男性、女性らが様々な衣装に身を包んでいました。民族の多様性を演出したものでしたが、その衣装に韓服(記事中はhanbok; 具体的にはチマチョゴリ)が含まれていました。

韓国政府が"cultural appropriation"だと猛反発したものです。

"cultural appropriation"における、"appropriation"という単語は横領とか私物化という意味もあることはご存知かと思います。本来自分のものではないものを、自分のものであるかのように主張することです。

今回取り上げた事例はいずれも演出のアイデアのオリジナリティが問われているものだろうと思います。



2022年2月9日水曜日

drop like a rock

新型コロナウィルスの感染拡大防止にマスクが有効であることは論を待たないところですが、米国内では学校内でのマスク着用義務を解除する動きがあるようです。

背景には、新規感染者数などが減少に転じ、状況が改善していることがあるらしく、ニュージャージー州を含む東海岸の3州では早ければ2月中にもマスク着用義務が解除される見通しです。


The Democratic governors of three East Coast states -- Connecticut, Delaware and New Jersey -- announced Monday that they will lift mask requirements in schools in the coming weeks.

(中略)

All three states referenced declines in their Covid-19 case counts, hospitalizations, test positivity rates and rates of transmission as reasons why they are planning to lift restrictions.

"Our case count, hospitalizations, the spot positivity rate, the rate of transmission are all dropping like a rock," Murphy told CNN's Jake Tapper on Monday, adding that the state is making progress with vaccinations and that there will be better ventilation options in four weeks, when the mask mandate lifts.
(Jacqueline Howard. As states plan to lift school mask mandates, CDC remains vague on updating its guidance. CNN. February 08, 2022.)


マスク着用義務化を解除する動きは、実のところ米CDCのガイダンスに反するものですが、国よりも州の裁量が認められるというのは米国ならではでしょうか。

さて、感染者数激減というような訳文になるのだと思いますが、


drop(ping) like a rock


という表現が用いられています。比喩的な表現には違いなく、岩石のような重たい物が落ちるが如く落下する、下降する、また下落する、という意味合いでしょう。

不思議と、手元の辞書にこの表現を取り上げているものは見当たらず、小生がしばしば参照する、Collins Cobuild Dictionary of Idiomsにも載っていませんでした。

用法としては確立していると思われ、コーパスでは、


the stock dropped like a rock
the price dropped like a rock


など、多数を確認できます。

ネットで検索してみると類似表現に、


sink like a stone


というものがあるようです。水中に投げ入れた石が沈んでいくが如く落ちていく様がイメージされます。(この表現はイディオムとしてMerriam-Webster Onlineにエントリがあります。)

この"sink like a stone"という表現については、物理的に沈む、落下するという側面が意味合いとして強いようです。もちろん比喩的な用法もコーパスでは確認できますが、"drop like a rock"という表現が持つ、数値や指標が下がるという意味合いでの用法は見当たりませんでしたので、その点で違いがあるようです。


2022年2月8日火曜日

「ムーンショット」再び ー moonshot

数日前の記事になりますが、バイデン大統領が自身の肝入りの政策である、「癌に打ち克つ」政策に改めて取り組むとの姿勢を鮮明にしたと報じています。

実のところ、この政策については"cancer moonshot"と通称され、オバマ政権時代に副大統領であったバイデン氏が立ち上げたのですが、ここ数年は新型コロナの影響で取り組みが遅れ、全くかすんでしたという状況があったようです。


JOE BIDEN has been impatiently waiting for this day for over a year.

In a speech at the Pfizer Kalamazoo Manufacturing Site in Michigan last February, the new president made clear that cancer was top of mind on his health agenda.

“I want you to know that once we beat Covid, we’re going to do everything we can to end cancer as we know it,” he said at the top of his remarks.

But Biden’s announcement of a new cancer “moonshot” kept getting delayed as new coronavirus variants arrived, according to a source familiar with the plans.

As 2022 began, the administration finally decided to move forward with the relaunch of the cancer "moonshot,” the administration’s multi-pronged initiative to fund and coordinate promising cancer treatment research that Biden created as vice president in the final year of BARACK OBAMA’s administration.
(Why Biden took his moonshot. Politico. February 2, 2022.)


この記事を読んで、"moonshot"という単語が目に留まったのですが、これは初めてのことではありませんでした。


しかしながら、2016年当時、"cancer moonshot"というプロジェクト名に見られる意味合いを説明している辞書は無かったのです。

今になって改めて調べてみると、Merriam-Webster Dictionary(オンライン版)では"moonshot"の新しい意味合いを追加掲載していることが分かりました。


an extremely ambitious project or mission undertaken to achieve a monumental goal


というのが、その定義です。

辞書に載っていなかった当時は、「月にロケットを飛ばすような壮大な規模の(取り組み、プロジェクト)」という意味合いだろうと解釈をしていましたが、当たらずとも遠からずといったところでしょうか。

Merriam-Webster の解説によれば、2020年1月にこの意味を追加掲載した背景にはホワイトハウスの"cancer moonshot"政策があるということです。


While 'moonshot' originally meant "long shot," it's increasingly being used to describe a monumental effort and a lofty goal—in other words, a "giant leap."

This use of moonshot refers to a project or venture that is intended to have deep-reaching or outstanding results after one heavy, consistent, and usually quick push. The $1 billion promised by the White House is intended to find a cure for cancer, and one of the business ventures that Alphabet is willing to talk about is Nest, a home automation company the produces wireless, programmable, and self-learning thermostats and smoke detectors (among other things).


言葉は生き物。



2022年2月7日月曜日

consort

週末の2月6日、エリザベス女王が在位70年を迎えました。1952年2月6日、国王ジョージ6世の訃報を受けたのはエリザベス王女がケニアを訪問していた最中でした。以降、英国の君主として70年もの長きに渡る在位は世界最長記録です。

70周年を記念するこのタイミングで、エリザベス女王は次代国王にはチャールズ皇太子が、また王妃には夫人のカミラが、それぞれ即位することを初めて公言したということです。


Queen Elizabeth II offered her support Saturday to have the Duchess of Cornwall become Queen Camilla — using a special Platinum Jubilee message to make a significant decision in shaping the future of the British monarchy.

In remarks delivered on the eve of the 70th anniversary of her accession to the throne, the monarch expressed a "sincere wish" that Camilla be known as "Queen Consort" when her eldest son Charles, the Prince of Wales, succeeds her as expected to the throne. In giving her blessing, the popular and respected sovereign is placing significant heft behind the move.

"When, in the fullness of time, my son Charles becomes king, I know you will give him and his wife Camilla the same support that you have given me," the monarch wrote. "And it is my sincere wish that, when that time comes, Camilla will be known as Queen Consort as she continues her own loyal service."
(Queen backs plan to one day call son’s wife 'Queen Camilla'. Fox News. February 5, 2022.)


チャールズ皇太子とカミラ夫人については、故ダイアナ元妃を巡るスキャンダルもあり、世論的にも厳しい眼差しが向けられてきましたが、近い将来にはエリザベス女王に代わって国の代表になることは既定路線です。

カミラ夫人は"Queen Consort"ということになる、と記事にあるのですが、"Consort"というのは「配偶者」(spouse)の意味であるとは不勉強にして知りませんでした。(特に、皇族の配偶者を指して言うそうですので、我々平民について用いることは無いのだろうと思います。)

"Queen Consort"とは、国王の配偶者(妻)としての女王、すなわち王妃ということです。

"consort"の-sortは、"share"の意味で、遡ること、ラテン語consorsは同じ運命にある、という意味があります。このような原義からは、配偶者という意味が腑に落ちます。

また、協会とか組合といった団体を指す「コンソーシアム」というカタカナ語がありますが、これも同じく"consort"から来ています。

クラシック音楽の演奏団体には何々コンソート、といった名称のものがありますが、それも器楽アンサンブルやまたその作品を指す"consort"に因むものです。


2022年2月4日金曜日

話題のWordleで遊んでみた ー behind paywall

このところ話題沸騰のWordleで遊んでみました。

WordleはソフトウェアエンジニアのWardle氏が作った英単語推理ゲームで、昔流行ったハングマンゲーム(Hangman)に似ていると思いました。

当初数十人だったプレイヤーが爆発的に増えて今や世界中の人々がハマっているということですから、メディアも放っておく訳がありません。

今年1月に、ニューヨークタイムズが権利を購入、考案者の男性には"low seven-figure"の対価が支払われたと、これまた話題性に拍車をかけています。


There have been a lot of emotions this week around the New York Times’s seven-figure acquisition of the word deduction game, Wordle — especially on Twitter. The reactions range from frustration to glee to snark.

The game has become a ritual for the millions who play it daily. Our brains crave the pattern-seeking custom Wordle humbly provides, helping it become a perfect pandemic game. The interface is simple, free from ads and has a heartwarming origin story.

But what does the future hold for Wordle? The Times says the game will “initially remain free to new and existing players.” But it’s not clear what the time frame for “initially” really is, and some have theorized that the game will eventually end up behind The Times’s paywall.
(Rachel Orr. Worried Wordle may go behind a paywall? Here are 8 alternatives. The Washington Post. February 3, 2022.)


さて、ニューヨークタイムズによる「買収」はWordleを日々楽しんでしにるユーザーにはハッピーなことではないようです。

今のところオフィシャルサイトでは無料でプレイできますが、


the game will eventually end up behind The Times’s paywall


という懸念があるからです。

つまり、有料化されてしまうのではないか、ということです。

"paywall"という単語ですが、Merriam-Webster Dictionaryによると、


a system that prevents Internet users from accessing certain Web content without a paid subscription


と定義されており、初出は2004年。意味合いとしてもまさにインターネット時代の単語と言えるでしょう。(語源解説にはありませんでしたが、恐らくはインターネットファイヤーウォール(firewall)との類推から来ているのではないかと思います。)

ちなみに今日初めてオフィシャルサイトにアクセスし、Wordleをプレイしてみました。

5文字からなる英単語を推測するシンプルなゲームです。

最初はなんでもいいので、とにかく5文字の単語を入力します。まずは思い付きで、TRUCKと入力してみることからスタート。

Tが単語に含まれるという手掛かりを得ます。次に、PLAINと入力してみました。ここで、答えの単語はPL-で始まり、さらにAが含まれるという新たな手掛かりを得ます。

つまり、5文字のうち、PL-、T、A、と4文字まで確定したことになります。

3回目の入力で、答えの単語、PLEATに辿り着きました。

シンプルで直感的な画面はほとんど説明を必要とせず、なるほど、多くの人がハマるのが分かるような気がしました。




2022年2月3日木曜日

comp(s)

グーグルニュースでヘッドラインを斜め読みしていましたら、SNSのフェースブックを運営するメタ社が売上を大きく落としたと報じられていました。世界的なインフレやパンデミックの影響によるサプライチェーンの混乱により、製造業などの広告主が広告宣伝費を抑える動きに影響したそうです。一見、SNSなどは物価などの影響を受けにくい業界のように思われますが、間接的な影響はあるものだと思いました。

その下には、スターバックスの経営不振を報じた記事。

言わずと知れたコーヒーチェーンですが、こちらはパンデミックの影響を直接受けて、オフィス街や空港などの店舗における売上下落の影響が大きいようです。


Reduced international travel and low traffic to office buildings weighed on Starbucks' same-store sales in China, CEO Kevin Johnson said Wednesday.

"Our stores that are in airports in the international travel terminals are closed, so clearly that's weighing on comps," Johnson said on CNBC's "Squawk on the Street." "Stores that are in office districts are much slower than they used to be."

He added that cafes in residential and commercial zones are seeing same-store sales growth, a positive sign for demand in the country. However, it isn't enough to offset declines elsewhere. The coffee chain reported Tuesday that its same-store sales in China shrank by 14% in its fiscal first quarter. The country is Starbucks' second-largest market, trailing only the U.S.
(Amelia Lucas. Starbucks CEO says airport cafe closures, low traffic to offices weighed on Chinese sales. CNBC. February 2, 2022.)


空港などの店舗では閉店も余儀なくされているということですが、社長のコメントに、


clearly that's weighing on comps


と出てきます。

この"comp(s)"とは何を指すのでしょうか?

"comp"でまず頭に浮かぶのは、"complimentary ticket"(優待券)のことで、殆どの辞書では"comp"を引くと、最初にこの意味を載せています。が、引用した記事では当てはまりませんね。

同じ話題の別記事から引用します。


Comparable sales in the U.S. jumped by 18%, primarily driven by a 12% gain in transactions and a 6% increase in the average ticket size. In China, the company surpassed 5,500 stores, pushing its global store count to 34,317 in total. 

However, the zero COVID-policy in the world's second largest economy took a toll. Comparable store sales tumbled by 14%, driven by a 9% decline in average ticket and a 6% decline in transactions.
(Brooke DiPalma. Starbucks earnings hit by inflation, rising worker costs and damp China sales. Yahoo! Finance. February 2, 2022.)


ヒントといいますか、"comparable"という単語に気が付きます。

果たして、"comp(s)"とは"comparable"の省略形なのでした。

ところで、この"comp(s)"とは経済、経営、財務の分野において、


同業他社分析
類似会社比較


などと呼ばれる、企業等の財務価値を分析する手法を指す専門用語だそうです。

業界や分野により具体的な比較対象は異なるようですが、スターバックスの場合、店舗毎の売上をオフィス街、空港、商業地区、といった地域毎に比較した場合のパフォーマンスを"comp(s)"と言っているようです。("same-store sales"に同じものと思われます。)



2022年2月2日水曜日

buck up

記事の引用からどうぞ。


Metro is digging deeper into its pocketbook in an effort to hire more bus drivers.

As with many other employers, the transit agency has been facing a staffing shortage during the pandemic, so Metro is offering up to $2,500 in incentives to fill nearly 70 positions.

“Metrobus is essential to the economic well-being of the region, connecting people to jobs, hospitals, stores and other activities. None of this would be possible without our bus operators,” Metro General Manager and CEO Paul Wiedefeld said in a statement Tuesday.
(Jack Pointer. Metro bucks up with incentives to attract new bus drivers. WTOP. February 1, 2022.)


ワシントンDCではバスの運転手不足が深刻だそうですが、契約時にボーナスを支給するなど、あの手この手で採用を促進しているそうです。

記事のタイトルで、


Metro bucks up with incentives to attract new bus drivers


とありますが、"buck up"という表現を取り上げたいと思います。"back up"(バックアップ)ではありません、念の為。

ここでの"buck up"の意味は、励ます、とか元気づける、といったものになります。

辞書を引けば、"buck"に多数のエントリがあります。ランダムハウス英和では10以上ありました。

"buck"の名詞の意味としては、まず、雄ジカ(また、ヒツジ、ヤギなどの雄)というものがあります。

以前取り上げた、"pass the buck"、"the buck stops at…"などのフレーズに見られる"buck"とは、雄ジカの角から作ったナイフなどの手工品を指すものです。

一方、"buck up"についてですが、カタカナのバックアップ("back up")と意味合いも近いので混同しそうですが、この動詞としての意味は男(性)を意味する"buck"から来ているとOnline Etymology Dictionaryにありました。

インディアン(native Americans)のことを、"buckskin"(シカの皮)で作った服を着ていたことから"buckskin"と呼んでいたそうです。"buckskin"は"buck"と短縮化し、一般化して、「男」になったそうです。



2022年2月1日火曜日

admiralの意外な語源 ー emir

バイデン米大統領とカタールの首長の会談が報じられています。

ウクライナ問題でロシアとの軋轢が高まる中で行われた、非NATOの中東湾岸諸国であるカタールとの会談にはロシアを牽制する意図があるようです。


President Biden met with Sheikh Tamim Bin Hamad Al-Thani, the emir of Qatar, at the White House on Monday and told him he's strengthening the U.S. alliance with the kingdom as the West faces a potential energy crisis if Russia invades Ukraine and cuts off gas supply to Europe.

"Qatar is a good friend and reliable partner," Biden said. "And I'm notifying Congress that I will designate Qatar as a major non-NATO ally to reflect the importance of the importance of our relationship."
(Jon Brown. Biden receives emir of Qatar, strengthens alliance amid fears Russia will close gas spigot to Europe. Fox News. January 31, 2022.)


カタールのタミム首長について、他紙では、"representative"、"head of state"などと表現しているものが多いのですが、引用したFox Newsでは、


emir


という呼称を用いています。

この"emir"という単語を初めて見たのですが、クェート、バーレーン、カタール、及びアラブ首長国連邦構成諸国の君主を意味する「首長」(研究社新英和大辞典)とあります。

なるほど、アラブ首長国連邦は英語名でUnited Arab Emirates (UAE)ですが、"emirates"とは"emir"から来ているのだなと得心した次第です。

ところで、"emir"については、"amir"と綴られる場合もあるそうで、語源欄には、"admiral"を参照せよ、とあります。

そこで、"admiral"の項を引くのですが、興味深いことに、海軍大将を意味する"admiral"は"emir"、すなわち遡ることアラビア語に由来するのでした。

少々複雑な語源をかいつまんでみますと、アラビア語amirはそもそも軍の指揮官を意味する言葉でした。

アラビア語で敬称に付ける-al-という接辞が付いて、amir-al-となった後、ラテン語に入り、admirabilis(現代英語のadmirable; admire)といった単語のスペルに影響を受けて、"admiral"となった、とあります。(つまり、dの綴り字は元は無かったのです。)

「艦隊の司令官」という意味のadmirallusは12世紀のイタリアに始まるそうで、その後、イギリスやフランスなど西ヨーロッパ諸国を中心に広がったということです。(Merriam-Webster Dictionaryの解説による。)