この数日、ニュースのヘッドラインを斜め読みしていますと、ニューヨークのど真ん中で企業のCEOが何者かによって射殺されたという事件が目に付きます。
怖い話だなと思ったものの、記事にはアクセスせずやり過ごしていたのですが、その後、付近の防犯カメラの映像が公開されたとか、続報が頻繁に目に入るようになり、犯人の捜索が続いていることや人々の関心の高さが窺えます。
殺されたのはユナイテッド・ヘルスケアという大企業のCEOで、投資家との会合を行う予定であったマンハッタン中心部の高級ホテルの前で、早朝、何者かに射殺されたということです。
Thompson was shot several times by an unknown assailant Wednesday morning, who fled the scene on an electric CitiBike which it’s believed he rode north into Central Park on Center Drive.
New evidence has emerged suggesting the killer may have had an ax to grind with Thompson’s employer, cryptic words discovered written on the bullet casings pointing investigators to a 2010 book called “Delay, Deny, Defend,” which skewers the healthcare industry.
(Chris Nesi. Healthcare execs commonly face threats, says security expert — who wonders why UnitedHealthcare CEO Brian Thompson was alone on NYC streets. New York Post. December 5, 2024.)
犯人は未だ捕まっていないのですが、上記に引用した続報では新たな展開について触れられています。
こういった事件の場合、犯人の動機というものが重要になってくる訳ですが、
the killer may have had an ax to grind with Thompson’s employer
というくだりがあります。
ここで、"have an ax to grind"というのは、英和辞典では、
腹に一物ある、ひそかな企みを持っている
と訳されています。(axはアメリカ英語のスペルで、イギリス英語ではaxe)
この事件に関して言えば、犯人は恐らく、殺されたCEO、またその企業に対して個人的な恨みを持っている、ということでしょうか。
"an ax to grind"とは、研ぐべき斧、ということですが、その斧を使って相手を殺そうという意図があるということでは、おどろおどろしい話ではあります。
研究社新英和大辞典によると、「少年をうまくおだてて斧をとがせたという、俗にFranklinに帰せられた話から」、という説明があります。これはつまり、恨みつらみから殺したいと思って斧を研ぐという話ではなく、動機を隠しながら、相手を利用して自身の目的を達成しようとする、そういう態度のことを言っています。コーパスで検索すると、
personal ax to grind
political ax to grind
ideological ax to grind
といった、修飾語を伴った実例が多く見られます。
つまり、この"have an ax to grind"の原義は、個人的な恨みから・・・、という攻撃的なものではないようだ、ということです。
その他の用法としては、他人に訴えたい個人的な強い意見や思いを持っているという意味でも用いられるようです。
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