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2012年9月28日金曜日

電子タバコは有益か? ― smoke and mirrors

このブログで以前も取り上げたことのある、“電子タバコ”(e-cigarette)に関する記事を見つけました。早速下記に引用してみます。


SMOKE AND MIRRORS: Can you quit with e-cigarettes?

Last September, NT freelance journalist Laurel May decided she'd finally had enough of smokes. So she thought she'd give e-cigarettes (electronic cigarettes that produce a smoke-like vapour) a go.

They didn't work so well for her, but she's one of many Aussies who have turned to e-cigarettes to try and ditch the durries.

Leading drug and medical authorities have issued powerful warnings to news.com.au that the products aren’t safe.
(Daniel Piotrowski. SMOKE AND MIRRORS: Can you quit with e-cigarettes? Herald Sun. September 26, 2012.)


オーストラリアでの話ですが、そもそも電子タバコが禁煙に有効なのかどうかが議論になっているようです。また、主に輸入品に関してですが、電子タバコの安全性も疑問視されています。

タイトルに、"Can you quit with e-cigarettes?"とありますし、記事も読んでいけば内容も明らかです。

ただよく分からなかったのが、タイトルの最初にある、"SMOKE AND MIRRORS:"という部分でした。これはどういう意味かご存知でしょうか?

私はこの表現を知らなかったのですが、"smoke"はタバコの煙と繋がるのですが、"mirrors"が何のことか分からず、しばし考え込みました。

が、分からず辞書を引いたのですが、"smoke and mirrors"とはアメリカ英語の俗語表現で、


巧妙なうそ、ごまかし


を意味する表現なのです。何故、"smoke"と"mirrors"なのでしょうか?これは手品師が手品を見せる時に煙(スモーク)を使ったり、鏡を使ったりして、巧妙に見ている人を騙すことから来ているそうです。従って、タバコの煙とは関係ありませんでしたが、恐らく記事の内容とかけているのでしょう。

Merriam Websterによると、


something intended to disguise or draw attention away from an often embarrassing or unpleasant issue —usually hyphenated when used attributively


と解説されています。“巧妙さ”というのは、不都合な事実から目を逸らせるそのやり方について言っているもので、Wikipediaによると、


The expression may have a connotation of virtuosity or cleverness in carrying out such a deception.


ということですから、単に人を騙したり、嘘をついたりする行為というよりも、そのやり方の“巧妙さ”に焦点が置かれている表現であると言えます。


2012年9月27日木曜日

アンディ・ウィリアムズさん死去 ― crooner

今朝ジョギングから帰ってきてシャワーを浴びた後、食事を摂りながらラジオを聴いていると、アメリカ人歌手のアンディ・ウィリアムズさんの訃報を伝えていました。

聞いたことのある名前だな、というくらいの知識しか持ち合わせていませんでしたが、「ムーン・リバー」の有名なメロディーが流れてきてすぐに分かりました。

日本では紅白歌合戦にも参加したことがあるということで、「ムーン・リバー」という名曲においてもすでにそうですが、日本で人気のあるアメリカ人歌手の一人だと思います。

日本でこれだけ取り上げられる訳ですから、本国アメリカでも当然トップニュースの扱いです。


Andy Williams, the affable, boyishly handsome crooner who defined both easy listening and wholesome, easygoing charm for many American pop music fans in the 1960s, most notably with his signature song, “Moon River,” died on Tuesday night at his home in Branson, Mo. He was 84.
(Anita Gates. Andy Williams, Crooner of ‘Moon River,’ Dies at 84. The New York Times. September 26, 2012.)


さて、AP通信など、多くの記事見出しで、


Andy Williams, Crooner of Moon River


という表現されていますが、"crooner"という単語をご存知でしょうか?"Singer"ではなくて、"Crooner"なのです。

"croon"を辞書で引くと、


優しくなだめるように歌う、そっと口ずさむ
(ランダムハウス英和辞書)


という訳が見えます。まさに、我々が耳にしてきた「ムーン・リバー」の男性ボーカルに合う表現だと思いました。

ところで、"crooner"というのは元々は賞賛の表現というよりは、貶す表現として捉えられていたそうです。


Crooner is an American epithet given to male singers of pop standards, mostly from the Great American Songbook, either backed by a full orchestra, a big band or by a piano. Originally it was an ironic term denoting an emphatically sentimental, often emotional singing style made possible by the use of microphones.
(Wikipediaより)


ところで、"crooner"を日本語でどう訳したものでしょうか?ほとんどの辞書において、"crooner"のエントリは、動詞(または名詞)の"croon"の下に付加される存在で、訳語はありません。

Merriam Websterでは、"crooner"は、


one who croons; especially: a singer of popular songs


となっており、日本語も”ポピュラー歌手”のような無難な表現に落ち着いてしまうのかもしれませんが、"croon"という動詞や亡くなった氏の特徴的なボーカルを思い出すと、"crooner"に何かよい訳語はないものかと考えてしまいました。

ご冥福をお祈りします。


2012年9月26日水曜日

ルー? ― loo

唐突ですが、"loo"という単語をご存知でしょうか?(発音は、カタカナの“ルー”に近いものです。)

今朝通勤途上で、とあるメーリングリストのダイジェストを読んでいて出会った単語なのですが、ケータイにインストールされているジーニアスモバイル英和にエントリがなく、変わったスペルの単語だなあなどと思いながら、オフィスに向かいました。

で、今度はランダムハウス英和辞書をチェックしたのですが、"loo"とはトイレのことでした。

ランダムハウスでは語源不明とされていますが、諸説あるそうです。

1つは、フランス語で場所(place)を意味する、"le lieu"に由来するというもの。

もう1つが面白いのですが、イギリス人が窓からバケツの水を捨てる時に、


Gardy loo!


と(恐らく下を歩く歩行者に向けて)警告を発するそうなのですが、それに由来するというもの。

"gardyloo"という間投詞(interjection)もエントリがあって、こちらは“そら水だ!”という和訳になっています。この単語もフランス語に由来するらしく、"Gardez l'eau!"(水に注意せよ!)という意味であり、他の辞書では、"loo"を、フランス語で水を意味する"l'eau"に由来するとしているものもあります。

かなり変わった単語だと思いますが、よく使われる単語のようで、用例は枚挙にいとまがありません。


Patients didn't have loo paper and soap

The Seshego Hospital near Polokwane is in hot water for not providing patients with toilet paper and soap.

The shocking – and unhygienic – practice was discovered by the MEC for social development, Norman Mabasa, during an unannounced visit to the hospital last Thursday.
(Patients didn't have loo paper and soap. The New Age. September 24, 2012.)


記事の見出しに"loo"が使われていますが、本文中では"toilet"です。他の使用例もざっと見た程度ですが、見出しに使うのに重宝されるスペルが短い単語の類かもしれません。

もう1つ、こんな面白い記事も見つけました。


LOO Connect, a new part of the Restroom Association of Singapore's toilet.org.sg website, lets the public pinpoint and comment on commodes and see those given three, four or five stars under the Happy Toilet Programme that has run since 2003.
(Website lifts the lid on Singapore's best and worst toilets. Reuters. September 19, 2012.)


シンガポールで公衆便所の快適さを評価するウェブサイトがオープンしたというものです。その名も、"LOO Connect"というものです。ウェブサイトを覗いてみると、LOOは、


Let's Observe Ourselves


の頭文字を取ったもののようですが、トイレを意味する"loo"という単語とかけたのでしょうか?


2012年9月25日火曜日

エクササイズ型ゲームはやはり良い!? ― twiddle

今年の6月に、"exergame"(いわゆるエクササイズ型のビデオゲーム)という単語を取り上げましたが、"exergame"を取り上げた記事を今日また見つけました。

6月に引用した記事では"exergame"ではエクササイズ型のビデオゲームといってもやはり運動の代わりにはならないというものでしたが、今日引用する記事では"exergame"もそれなりにカロリーを消費するらしい、というものです。


I know it’s politically incorrect to suggest that kids jump up from a sedentary game of chess and partake in a round of active video game boxing, but the latter activity might actually burn enough calories to quality as a form of exercise.

That’s the finding of a study published Monday in the Archives of Pediatric & Adolescent Medicine in which 18 children ages 11 to 15 tried out boxing and dancing on Kinect for the Microsoft Xbox 360. They found that the games increased calorie-burning by 150 percent for the game Dance Central and 263 percent for Sports Boxing, which burned up to 172 extra calories per hour compared with when they were sitting and playing a traditional video game.
(Deborah Kotz. Active video games such as Kinect burn enough calories to qualify as exercise, study suggests. The Boston Globe. September 24, 2012.)


エクササイズ型のゲームとしては任天堂のWiiを思い出す方が多いかもしれません。6月の記事ではWiiが取り上げられましたが、今日引用する記事ではKinec(キネクト)というマイクロソフトのXboxのビデオゲームが取り上げられています。(率直に言うと、私はどちらもあまりよく知りませんし、遊んだこともありません。)

実験において、カロリー消費量が、ダンスをするゲームでは150%、ボクシングゲームでは263%増加したそうです。

また、記事では、Wiiの同様のゲームと比べて、Kinectの方がカロリー消費量が多かったとされていあmす。

だからといって、"exergame"の効用がすぐに認知されるわけでもないでしょうし、WiiよりKinectの方が優れているというわけでもないでしょう。この手の記事が特定商品の広告のようになってしまうことを懸念してか、記事は下記のように結ばれています。


And, no, he doesn’t endorse Kinect over Wii, but he does think kids should be encouraged to choose video games that get them up and moving rather than sedentary gaming that, he wrote, “typically involves no more than the twiddling of thumbs.”
(ibid.)


さて、"twiddle"という単語を取り上げましたが、この単語は、"twitch"(引く、引っ張る、つまむ)と"fiddle"(いじくる、もてあそぶ)の合成語、つまりかばん語と言われるものです。

結局、親指をこちょこちょと動かすだけのゲームよりはエクササイズ型ゲームの方がまだマシ、という程度の話、ということになりそうです。


2012年9月24日月曜日

iPhone 5、地図アプリの欠陥 ― canary in the coal mine

アップルの新製品、iPhone 5が発売されましたが、これまでGoogle Mapsを搭載していたものを、アップル製の地図アプリにしたところが不具合だらけでマスコミに大きく取り上げられています。

私も週末の産経朝刊の1面で見たのですが(その取り上げ方がいささか大きすぎるように思いましたが。他にもっと報道することがあるだろうという気もします。)、何でもランドマーク表示が無茶苦茶だったり、日本語版なのにハングル表示があったりと、散々なようです。

私はiPhoneを持ちませんし、購入する予定もありませんのでどうでもいいような話ですが、何日も前から徹夜で行列を成して新製品を購入したユーザーにしてみればとんでもない話でしょう。

ところでこの地図アプリの不具合は日本語版の話かと思ったら、海外メディアでも取り上げられているのを見て、各国語版で同様の不具合(といいますか欠陥)があるようです。


If Steve Jobs were still alive, would the new map application on the iPhone 5 be such an unmitigated disaster? Interesting question, isn't it?

As Apple's chief executive, Jobs was a perfectionist. He had no tolerance for corner-cutting or mediocre products.

(中略)

No doubt, the iPhone 5, which went on sale on Friday, will be another hit. Apple's halo remains powerful. But there is nothing about it that is especially innovative. Plus, of course, it has that nasty glitch. In rolling out a new operating system for the iPhone 5, Apple replaced Google's map application — the mapping gold standard — with its own, vastly inferior, application, which has infuriated its customers. With maps now such a critical feature of smartphones, it seems to be an inexplicable mistake.

And maybe that's all it is — a mistake, soon to be fixed. But it is just as likely to turn out to be the canary in the coal mine. Though Apple will remain a highly profitable company for years to come, I would be surprised if it ever gives us another product as transformative as the iPhone or the iPad.
(Joe Nocera. Has Apple Peaked? The Sydney Morning Herald. September 24, 2012.)


故スティーヴ・ジョブズ氏が存命中だったら、(今回の地図アプリの欠陥のような)不完全な新製品を発売するなんてとても考えられない、というような見方があります。

やはりアップル社はジョブズ氏を失って、何かたがが外れたような状態になってしまったのでしょうか?

上に引用した記事の最後の段落に、


(it is likely to turn out to be) the canary in the coal mine


という表現がされています。炭鉱におけるカナリア、ということですが、これは何を意味しているのでしょうか?

よく知られた話ですが、炭鉱において有毒ガスの発生を検知するために作業員がカナリアを連れていくという話をご存知でしょうか?毒ガスが発生しているとカナリアが鳴くのを止めるそうです。つまり、"canary in the coal mine"とは、危険な状況が発生しつつあることを示唆するインジケーターのようなものです。

ここで、"it"という代名詞は問題になっている地図アプリの欠陥を指していると考えられます。

今回の欠陥騒動はアップル社にとって“危険な状況が発生しつつあることを示唆している”、という訳です。時価総額が51兆円を超え、史上最高額を更新したと報道された同社について少し大げさな感じもしなくはありませんが、今回の地図アプリの欠陥のような躓きがゆくゆくは命取りともなりうる、ということでしょうか。

記事によりますと、アップルはマイクロソフト社と同じような道を辿るのではないか、とも言われています。今回見られた地図アプリの欠陥問題は、"canary in the coal mine"、つまり転落の序章とでも言うべきでしょうか。

2012年9月21日金曜日

何の“グローブ”? ― drop gloves

下に引用するのはアメリカでの選挙の話です。


Brown, Warren drop gloves in Mass. debate

Republican Sen. Scott Brown and his Democratic opponent Elizabeth Warren verbally pummeled each other for an hour in a debate Thursday evening, each trying to seize the title of middle-class hero and gain an advantage in their tight struggle for the Massachusetts Senate seat.
(Paige Winfield Cunningham. Brown, Warren drop gloves in Mass. debate. The Washington Times. September 20, 2012.)


といっても、大統領選ではなく、マサチューセッツ州における上院議員選挙の話です。ハーバード大教授のBrown氏と共和党議員のWarren氏が争っている模様です。

記事のタイトルにある、"drop gloves"に注目してみます。

これを見て、"throw down the gauntlet"という成句を思い出した方!優秀です!以前に当ブログでも取り上げましたが覚えておられるでしょうか。

"glove(s)"とは単なる手袋なのか、野球のグローブなのか、ボクシングのグローブなのか分かりませんが、"throw down the gauntlet"の"gauntlet"同様、それを落とす(放り投げる)という行為は、今から戦います、という宣言であろうと思います。

“であろう”、といささか歯切れが悪いですが、実はこの成句の解釈に少し悩んだのがその理由です。

ランダムハウス英和辞書を見たのですが、"drop glove(s)"というような成句は見当たらず、


take up the glove
throw down the glove


の2つの成句が載っており、いずれも"gauntlet"を参照するようになっていました。

"gauntlet"よりも、"glove"の方が日常的には馴染みがあるかと思いますが、英語の成句としては、"gauntlet"の方がポピュラーなのでしょうか?

ここで、

"glove" = "gauntlet"

と考えると、"drop gloves"は宣戦布告と同じ意味になると思います。

しかし、仮に"glove"をボクシンググローブの類と解釈するとどうでしょうか?ボクシンググローブを投げ捨てて、素手の拳で戦う。これは単なる宣戦布告というよりも、喧嘩は既に始まっていたところがエスカレートして、さらにアグレッシブに、激しくやり合う、ということではないでしょうか?

色々な辞書、リファレンスを参照したのですが、"drop gloves"という成句のエントリを見つけることはありませんでした。その代わりに、


the gloves are off
take the gloves off


という成句を見ることができます。(Collins Cobuild Dictionary of Idioms、Oxford Advanced Learners Dictionary、他)

Collins Cobuild Dictionary of Idiomsの定義は以下のようなものです。


If you are talking about a situation in which people have decided to fight or compete aggressively with each other, you can say the gloves are off.


つまり今から争いが始まるというよりも、争いは以前に始まっていたのだがエスカレートして本気モードになってきた、というような解釈になるのではないかと思うのです。

このあたり、Collins CobuildやOxfordの定義も曖昧なのですが、冒頭で引用した記事にしても、単に争いがスタートしたというよりは、それがエスカレートしてきたことを取り上げているように思われます。それを言わんがために、"drop gloves"ということなのではないでしょうか?

ちなみに、"gloves"と複数形になっていますが、2人の候補者だから複数形になるのだと最初思ったのですが、ボクシンググローブは両手につけるもので、素手でやり合うとなれば両手のグローブを外すでしょうから、やはり複数形なのだと思うようになりました。

これに対して、"throw down the gauntlet"や"throw down the glove"などの成句は、"the glove"であり、これは“挑戦状”というような抽象的な意味で"the gauntlet"、"the glove"なのではないかと思います。


2012年9月20日木曜日

“メッセージ”の意味 ― on message

昨日は尖閣問題で暴徒化する中国人に関する記事を引用しましたが、今日も同じ記事を引用しますこと、お赦し下さい。

引用は記事の最後の部分なのですが、結局中国政府・当局は反日デモを半ば放置し、民衆の不満の矛先が政府・当局に及ばないようにすることを意図している、という見方でした。


Moving along the sidewalks with the protesters and onlookers and police, I was struck most of all by how hard the Chinese government was working to keep its people happy, to show them that it is doing what they want. Nationalism is a volatile force, and it would be easy for protests to expand into criticism of the state. Chinese authorities have no choice but to let their people blow off steam over Japan, but they are determined to keep them on message.
(Evan Osnos. Letter from China: How China Protests. The New Yorker. September 18, 2012.)


上記の引用の最後の部分に、


China authorities determined to keep them on message.


とあるのですが、ここの意味がよく掴めないでいました。特に、"keep them on message"という表現を日本語にどう訳せばよいのかが分からなかったのです。

この部分を解釈するのに”メッセージ”というカタカナ語が邪魔になります。英和辞書を見ても適当な訳語が見当たりません。"on message"については、"go on a message"というフレーズで”お使いに行く”とありますが、記事のコンテクストでは”お使い”でもないでしょう。

しばらく悩んだ後、American Heritage Dictionaryを参照するとヒントがありました。"message"のエントリに、Idiomsとして下記のようにあります。


on message
Following a planned set of remarks or positions.


これを見てもやもやが晴れたのです。

"message"とはあらかじめ予定された(決められた)発言内容や立場(路線)のことであり、我々が日常において日本語で使う、カタカナの“メッセージ”には無い意味ではないでしょうか。

"keep them on message"の"them"は当然反日デモに参加する中国人のことであり、ここでいう"message"とは、領土問題とそれに端を発する反日抗議デモ(つまり日本が中国の領土を侵したことに対して抗議するのであるという論拠)、ということであり、民衆がその“路線”から外れないこと(矛先が政府・当局に向かわないようにすること)が、まさしく"keep on message"ということなのです。

恐らく同様に派生した表現と思いますが、"on-message"という表現もあることを知りました。


A politician who is on-message says things that are in agreement with the ideas and policies of the political party they belong to.
(Financial Times Lexiconから引用)


これは政治家についてのコンテクストですが、“(既定)路線”という表現がぴったりくるのではないでしょうか。

また、"keep"に代わって、"stay"などの動詞が来ることもあります。


In countless interviews, he has tried to stay on message, stressing the Pfizer line that Viagra is a serious drug for a serious medical condition that affects millions of men and their partners.
(The Washington Post. 1999.)


“メッセージ”というカタカナ語に引っ張られてかなり遠回りしてしまったような感もあります。といのも、“メッセージ”というのは基本的に前もって考えられ、あるいは書かれるものですから、それが"a planned set of remarks or positions"という解釈になると思えば、"keep on message"が意味するところも当然と言えば当然のような感じもしてきたからなのですが、みなさんは冒頭に引用した中国のデモに関する記事を読んだ時に"(keep them) on message"に違和感はなかったでしょうか。


2012年9月19日水曜日

尖閣問題で暴徒化する中国人 ― blow off steam

尖閣諸島の領有権を巡る日中間の緊張が高まっています。

日本政府による尖閣の国有化の措置以降、中国国内でのデモが過激化し、中国国内では日本人が襲われたりするなど、暴徒化しているという報道がもっぱらです。

デモが暴徒化しているのに中国政府は何をしているのか、と当然ながら思いますが、一部報道によれば、中国政府はデモの矛先が中国政府自身に及ぶことを懸念しており、とりあえず“なすがまま”にせざるを得ないのだという見方もあります。

私にはそのような見方がよく理解できなかったのですが、どうやら他国も冷静な観察からそのような見方をしているらしいということをNew Yorker紙の記事を読んで考えさせられました。


Over the weekend, anti-Japanese protests, triggered by a dispute over uninhabited islands in the East China Sea, led to violence and rioting. It was a rare sight in China, and the vandalized stores and cars left behind were a reminder of how quickly things can get out of hand. By Tuesday, authorities had clearly decided they would tolerate it no longer.
(Evan Osnos. Letter from China: How China Protests. The New Yorker. September 18, 2012.)


記者は北京で反日デモを取材したようですが、日本大使館前のデモを観察して奇妙な光景を目にします。それは、他で大きく報道されている暴徒化したデモ、荒れ狂う中国人のイメージとは一線を画した、どちらかといえば整然と、交通整理された”パレード”ようなデモだったということです。


By contrast, this protest was a parade. The police had organized the demonstrators into bunches, allowing them to stream by the front of the Embassy for a moment to throw water bottles at the granite and steel gate, before they were ushered on to make way for the next group.
(ibid.)


警察当局によって整然と交通整理されたデモの合間から録音された女性の声が聞こえてきたと言います。記者は最初デモ隊による録音かと思ったそうですが、実は警察当局によるものだったそうです。録音は中国語で、尖閣問題に端を発する今回のデモ行為に理解を示し、当局として抗議行動を認める代わりに、現場を収拾する当局への協力を求めるような内容だったということです。(詳細は記事をご覧ください。)

デモ行為に理解を示し、彼らをサポートするというような当局が一体ありうるのか、という気がしますが、要は当局、中国政府は体制への批判に及ばないように、デモに参加する民衆をコントロールしているということなのです。

記者は最後にこう結んでいます。


Moving along the sidewalks with the protesters and onlookers and police, I was struck most of all by how hard the Chinese government was working to keep its people happy, to show them that it is doing what they want. Nationalism is a volatile force, and it would be easy for protests to expand into criticism of the state. Chinese authorities have no choice but to let their people blow off steam over Japan, but they are determined to keep them on message.
(ibid.)


"blow off steam"とは、


こもった感情をぶちまける、うっぷん(憂さ)を晴らす


という意味の成句です。

当局は中国国民のガス抜きのお手伝いをしているということですね。


2012年9月18日火曜日

~逃げ ― xxx and dash

まず記事を引用します。


A 39-year-old Toronto man being hunted in connection with a fatal “gas and dash” encounter at a midtown gas station on the weekend is “very well known” to authorities, a police source said Monday, with a long string of convictions encompassing theft, assault and multiple driving offences.

Police announced Monday afternoon that he is now wanted on the charge of second degree murder in the death of gas station attendant Jayesh Prajapati, 44.

(中略)

Mr. Prajapati, a Shell Canada employee, died Saturday night after a customer filled his SUV with $112.85 of fuel and then fled without paying.

The 44-year-old kiosk attendant, a married father, was killed as he struggled to prevent a thief from leaving by clinging to the vehicle as it sped away.
(Toronto 'gas and dash' suspect wanted for second-degree murder: police. The Globe and Mail. September 17, 2012.)


"gas and dash"という表現に注目します。記事のタイトルにも出てくる表現ですが、引用符(”)付きの表現となっています。

上記では引用を中略していますが、後半を読んでいただくと、"gas and dash"が意味するところが明らかです。つまり、給油所でガソリンを給油して(gas)、代金を支払わずに逃げた(dash)、


filled his SUV with $12.85 of fuel and then fled without paying


ということです。

勘の良い方はこの表現を見て"dine and dash"という表現を思い出すのではないでしょうか?


He started to tell me about a scene at Friendly's that day where some younger kids tried the old "Dine and Dash" trick, and had been run down in the parking lot by two waitresses.
(The Virginia Quarterly Review. 1999.)


こちらも文字通り、レストランで食事して(dine)、代金を払わず逃げる(dash)、つまり無銭飲食、食い逃げのことを言っています。

これらの用例を見るにつけ、xxx(動詞)に"and dash"がつくことで、”~逃げ”、という意味になるということができそうですが、コーパスを検索すると、"dine and dash"に引き続いて多いのが、"gas and dash"で、その他は見当たりません。


2012年9月17日月曜日

カナダのすし店名騒動 ― flip the bird

敬老の日の三連休いかがお過ごしでしょうか?

昨日、日曜日のことですが、昼時にYahoo! Japanのニュースヘッドラインを見ていたら、カナダのすし店が店名変更に迫られた、という興味深い記事がありました。

現地カナダでどのように報道されているのか気になったので、Google Newsのサイトで、問題となった店名"Fukyu"をキーワードに検索すると、何と英文記事はもとより、フランス語、イタリア語、ロシア語、その他の言語に至るまで、各国の記事になっていたので驚きました。それほど話題性のあるニュースなのでしょうか?あるいは、問題となる“F-word”は、もはや英語のみならず各国語に浸透しているとでもいうことなのでしょうか?

さて、いくつかの英文記事のうち、Tronto Sunの記事を引用します。


MONTREAL - A Quebec Superior Court flipped the bird to sushi restaurant Fukyu.

The name "Fukyu" might be a Japanese word for a form of martial arts, but a judge ruled in August that it was "clearly inappropriate" in the Montreal context.

Sushi bar owner John De Melo, 28, told QMI Agency he wanted to name his Montreal resto something "catchy and Japanese. We didn't think it would be inappropriate."

So the sign outside his restaurant read "Fukyu" since last February. By July, De Melo's landlord began receiving complaints from other tenants.
(Sushi shop sign too offensive for neighbourhood. The Tronto Sun. September 15, 2012.)


冒頭、"flip the bird"という表現が出てきますが、どういう意味でしょうか?

"flip the bird"というのは、人を嘲ったり、批難する時、ブーイングの際に、中指を立てる、あの仕草のことを指しています。

American Heritage Dictionaryでは、


An obscene gesture of anger, defiance, or derision made by pointing or jabbing the middle finger upward.


と定義されています。

まさに、"F--- you!"、という場合に同時に示されるゼスチュアであり、問題となった店名“Fukyu"にあてつけたようです。

店主は武道の型である”普及”という日本語を意図したそうですが、その発音がいわゆる“F-word”と似ているために、同店が入居する他のテナントや近隣の店舗などから抗議を受け、家主から訴えられたということです。

Montreal Gazzett紙の記事によれば、下品な店名が不動産価値を下げるというのが訴えの主な内容だということで、同店は結局店名変更を余儀なくされ、"Kabuki Bar a Sushi"に落ち着いたそうです。


2012年9月14日金曜日

skirmish lines

まずは記事を引用します。


LOS ANGELES — A wild pursuit of bank robbers across Southern California has come to an end with the capture of two men who had hurled cash out of their SUV's windows during the chase.

The vehicle became blocked by traffic in South Los Angeles at late morning Wednesday and sheriff's deputies pulled the men out. A large crowd surrounded the scene and officers set up skirmish lines to move people away.

In a bizarre scene followed by TV helicopters, a large crowd pressed in as deputies with guns drawn pulled two men from the SUV in South Los Angeles. City police came to their aid and formed skirmish lines to move the crowd back.
(Bank robbery suspects hurl cash from speeding SUV during chase in L.A. CBS News. September 13, 2012.)


アメリカ・南カリフォルニアで銀行強盗が発生したようですが、犯人が強奪した紙幣を逃走の車中からばら撒くという驚きの行為に出たそうです。逃走車は渋滞にはまり、追跡の警察に犯人も逮捕されました。

交通の集中する街中で札束をばら撒いたのですから、混乱は想像に難くありません。現場は貧民街とされるところだったそうですが、お金を拾う人や捕り物劇の野次馬などが集まってきて大変な混乱だったようです。

さて、そのような混乱を収拾するために、”skirmish lines”が敷かれた、とありますが、この”skirmish lines”とは何でしょうか?

英和辞書をいろいろ見てみたのですが、エントリがありません。まず想像したのが、アメリカ映画なんかでよくみる、”crime scene do not enter”("crime scene do not cross”というものもあるようです)と黄色地に黒文字で書かれたテープのことですが、そうではありませんでした。(ちなみにこのテープのことを、”crime scene tape”とか”police tape”などと表現するようです。)

“skirmish”は、“小競り合い、いざこざ”などと訳されますが、”skirmish lines”というのは軍事用語らしく、Merriam Websterによると


a line of skirmishers; esp: the skirmishes in advance of a line of battle


と定義されています。ここで、”skirmisher(s)”とは軍人だったり、警官だったりするわけですが、彼らが成すlines(隊列、戦線、布陣)ということになります。

“skirmish lines”をグーグルでイメージ検索すると、なるほど銃を構えた軍人が隊列を成しているようなイメージが多数出てきますが、それらの多くが白黒写真や絵画調のもので、古い時代の戦争における特徴的な戦線を指しており、やはり軍事用語であることが分かります。

記事のコンテクストから想像されるような、警察官が隊列を成している現代的なイメージはほとんど見当たらなかったのですが、恐らく強盗を取り押さえた現場において、多数警官が駆けつけ、一般人の群衆が現場に近づかないように警官隊が作った隊列のことだと思われます。

ということは、警官隊は強盗犯の方を向いていたというよりは、一般人群衆の方を向いていたと思われ、銃を構えて前線を成しているイメージとはちょっと違う性格のものに思われるのですが、何かよい訳語はないでしょうか。


2012年9月13日木曜日

6ストライク、アウト? ― "six-strikes" program

野球の世界では3(スリー)ストライク、バッターアウトですが、アメリカのインターネットでは”6ストライク、アウト”というプログラムが導入されるそうです。

一体、何のことでしょうか?


Even as France looks set to scrap its three-strikes antipiracy scheme known as HADOPI, US Internet providers are inching forward with their milder "six strikes" program. But the head of that effort says the system is about education, and it is coming by the end of the year.

Last year, the newly formed Center for Copyright Information (CCI), along with major ISPs across the US and representatives from the recording and film industries, agreed to come up with a six-stage warning scheme that would progressively impose warnings — and eventually penalties — on alleged online copyright infringers. Collectively, once deployed, the system could cover 75 percent of all American Internet users.
(Cyrus Farivar. "Six strikes" Internet warning system will come to US this year. Ars Technica. September 12, 2012.)


ネット上ではびこる著作権物の海賊版やそれらの違法な共有やダウンロードの対策として、違反したユーザーに警告を表示し、不法行為を思いとどまらせるという妙案?の話です。

フランスでは、"three-strikes"、つまり3回違反でアウトだそうですが、アメリカ版は"six-strikes"、つまり6回までは(警告で)許す、ということのようです。

ただ、これらのプログラムの詳細はあまり明らかにされていないようで、違反行為の度に表示される警告が段階的に強い口調のメッセージになるそうですが、最終的に”アウト”になるとどうなるのかよく分かりません。記事によると、インターネットへの接続が遮断されるとか、あるいは接続スピードを低下する措置がとられるとか、色々なことが言われています。

また警告はオンラインでブラウザに表示されるのか、電子メールで違反者に送られるのか、郵便による告知なのか、なども明らかでなく、違反者がプロバイダを変更した場合には違反回数、つまり"strike"の数は持ち越されるのか、など様々な疑問があるそうです。

日本でも近いうちに導入されることになるのでしょうか。

記事はこちら


2012年9月12日水曜日

"jump"の意味 ― jump

次の引用記事を読んでみましょう。


Two security guards of a minister in Indian-administered Kashmir have been arrested for attacking a traffic policeman who stopped his cavalcade for jumping a red light, officials say.

The policeman told Indian newspapers that he was hit in the face by a rifle butt on Monday after stopping the cars.

Flood Control Minister Taj Mohiuddin denied seeing the incident, claiming he was on the telephone at the time.

The two guards have been questioned for assault, officials say.

The policeman told Indian newspapers that the incident happened in Srinagar when he asked the driver of the lead vehicle in the minister's cavalcade why he had jumped the lights.
(Kashmir minister's guards held after policeman assault. BBC News. September 11, 2012.)


“jumping a red light”という箇所があります。”a red light”は赤信号のことで、信号無視をする、という意味です。引用記事の後半にも、”jump the lights”と出てきますが同じ意味です。

辞書を引くと、”jump”という動詞の意味に、


(適当な時機・合図などより)早く飛び出す


という意味があることが分かります。American Heritage Dictionaryでは、


To move or start prematurely before


という定義になっています。

例えば、”jump the gun”は、鉄砲の合図(gun)より早く飛び出すことであり、スポーツでのフライングを意味しています。


The former college basketball player kept his cool through three false starts, even as defending champion Linford Christie jumped the gun twice and was disqualified.
(Atlanta Journal Constitution. 1997.)


"jump"には色々な意味があるようですが、”信号無視”を表現するのに"jump"を使うとは知りませんでした。


2012年9月11日火曜日

”フレンド”ではありません! ― fiend

スペルが1字違いで大きく意味が変わる単語というのがあります。

今日の単語、"fiend"はその類かと思いますが、危うく"friend"と見間違えるところでした。


Name, shame sex fiend laws to be passed in Victorian State Parliament today

LAWS designed to encourage judges to name and shame serious sex offenders will today be introduced in Victorian Parliament.

Corrections Minister Andrew McIntosh is expected to introduce amendments to the Serious Sex Offenders (Detention and Supervision) Act, requiring judges to take into account new criteria when deciding whether to suppress the names and locations of serious sex offenders.

If approved, it will reverse laws which have allowed paedophiles to remain anonymous behind court suppression orders.
(Peter Rolph. Name, shame sex fiend laws to be passed in Victorian State Parliament today. Herald Sun. September 11, 2012.)


"sex fiend"となっているので(!?)、"friend"と勘違いしてしまう可能性も大きい!?いやはや、言い訳になりません。失礼しました。

これまた私の勉強不足ですが、"fiend"という単語にあまりなじみがありませんでした。辞書を引くと、


悪癖から抜け出せない人;常習者、中毒者


という定義があり、いくつかある意味のうちこの記事のコンテクストでの意味と思われました。記事本文中を読めば明らかですが、"sex fiend"とは、"serious sex offenders"を指しており、性犯罪常習者、特に小児を対象とした性犯罪者(paedophiles)のことを言っています。

"fiend"をコーパスで検索してみると、"sex fiend"のほかに、


dope fiend
drug fiend


が多くみられます。これは薬物常習者というほどの意味でしょうか。

ちなみに、記事のタイトルにも出てくる、"name and shame"についてはつい先日、8月22日の記事で取り上げた表現ですが、覚えておられるでしょうか?

記事では”企業名公表”というような日本語を使いましたが、この例で、企業・団体に限らず、個人の場合についても名前や所在を公開する意味で使われることが分かりました。

性犯罪者に関しては、名前や住所などの届け出が義務付けられ、アメリカでは性犯罪者情報公開法という形で州によっては法制化されています。


2012年9月10日月曜日

”ゾンビに備えよ”ってマジですか? ― tongue-in-cheek

"Government Zombie Promos Are Spreading" (ABC News.)というヘッドラインが目を引きました。

"Government"(政府)と"Zombie"(ゾンビ)、という単語が何ともマッチしません。何のことやら分からずとりあえず記事にアクセスしてみます。


The government's zombie apocalypse is spreading and could come to an emergency-management center near you.

A few weeks before the government’s Zombie Awareness Month in October, FEMA’s monthly webinar Thursday discussed the success of the Centers for Disease Control’s zombie-preparedness campaign and how other centers can use pop culture references – even fictitious ones like the walking dead – to promote gearing up for real disasters.
(Sydney Lupkin. Government Zombie Promos Are Spreading. ABC News. September 7, 2012.)


アメリカで10月に"Zombie Awareness Week"というのがあるそうです。一体何のことでしょうか!?

"Awareness Week"というのはいわゆる、世間的に認知度や意識が低い事柄に対して啓蒙、啓発する、いわゆる、日本語で言うところの”~啓発週間”、”~についてもっと知る週間”という類のキャンペーンと同じかと思われます。

そうしますと、”ゾンビ啓発週間”、”ゾンビについてもっと知る週間”というのは一体何のことでしょうか?この世にゾンビなるものが存在するとでも?関係者の頭は大丈夫なのでしょうか?

ABC Newsの記事を最後まで読んだのですがいまいち合点が行かないので、他の記事を参照してみます。


WASHINGTON -- "The zombies are coming!" the Homeland Security Department says.

Tongue firmly in cheek, the government urged citizens Thursday to prepare for a zombie apocalypse, part of a public health campaign to encourage better preparation for genuine disasters and emergencies. The theory: If you're prepared for a zombie attack, the same preparations will help during a hurricane, pandemic, earthquake or terrorist attack.
(Alicia A. Caldwell. Zombie Apocalypse: 'The Zombies Are Coming,' Homeland Security Warns. Huffington Post. September 8, 2012.)


これを読んで少し得心が行きました。

"The zombies are coming!"とありますが、半分冗談なのです。

"tongue firmly in cheek"とありますが、これは


からかい半分
ふまじめな
皮肉な


という意味で用いられる成句で、ご存知の方も多いでしょう。

ゾンビに備えよ、というのは来るべき自然災害やパンデミックに備えましょう、ということなのですが、”ゾンビ”というインパクトのある対象をキャッチフレーズやプロモーションのイメージに使うことで、人々の意識をより高めるということに意図があるのです。


Over the years the Centers for Disease Control and Prevention has released a couple of tongue-in-cheek "zombie warnings," which really are just disaster-preparedness stunts. But on Thursday, the agency made it official: Zombies don't exist.

"CDC does not know of a virus or condition that would reanimate the dead (or one that would present zombie-like symptoms)," wrote agency spokesman David Daigle in an email to The Huffington Post.
(Andy Campbell. Zombie Apocalypse: CDC Denies Existence Of Zombies Despite Cannibal Incidents. Huffington Post. June 1, 2012.)


ゾンビを使った啓発というのはここ数年行われているそうですが、最近米国・マイアミで起きた猟奇的な事件もあり、政府はゾンビは存在しないと公式に発表したりもしたそうです。

日本では9月1日が防災の日ということで、昨年の大震災や竜巻被害、豪雨災害などを受けて、防災意識を啓発する大真面目なキャンペーンが行われていますが、アメリカのゾンビ啓発週間に至っては、真面目なの?という感じがします。

尤も、"tongue-in-cheek"とありますから、半分は冗談なのですが・・・。


2012年9月7日金曜日

ハリウッド映画並みの強盗 ― heist

"Hollywood-style bank heist"という見出しが目を引きました。

では、さっそく記事を引用します。


Suspects sought after Hollywood-style bank heist

LOS ANGELES (AP) — Authorities investigating a bizarre bank heist on Thursday searched the home of a bank manager who was told to strap what she believed was a bomb to her midsection and was forced to order employees to "take out all the money" from her branch.

Two masked gunmen got away with an undisclosed amount of cash from the Bank of America when it opened Wednesday morning, but no one was injured in the robbery. No arrests had been made as of Thursday afternoon.
(Greg Risling. Suspects sought after Hollywood-style bank heist. The Associated Press. September 7, 2012.)


実は、"heist"という単語を知らなかったので今日取り上げるわけですが、"bank"(銀行の)heist、ということですから、"suspect sought"とあることとも併せて、恐らく強盗の意味であることは想像がつきます。

"heist"を引いてみると確かに強盗の意味です。語源は、"hoist"の転化とあります。"hoist"を引くとこちらは、持ち上げる、揚げる、といったよく使われる意味に加えて、やはり俗語として、


押し入る、盗む


という意味があることが分かりました。持ち上げる、という意味から連想するのは、"shoplift"(万引きする)、という単語ですが、こちらも持ち上げるという意味の"lift"が含まれており、盗みという行為に持ち上げるという動作を関連付けている点で、ある意味共通点です。

"heist"をAmerican Heritage DictionaryやMerriam Websterで引くと、


robbery
theft


などという単語が定義に使われています。盗みを示す一般的な表現ですが、一方、Wikipediaでは、


A heist is a robbery from an institution such as a bank or a museum, or any robbery in which there is a large haul of loot.


とあり、こちらの方が説明がより具体的なのですが、万引きよりももっとスケールの大きい強盗、というのがふさわしいでしょう。

今回の事件では、バンカメ(Bank of America)の女性マネージャーが自宅で二人組に襲われ、パイプ爆弾のようなものを無理矢理装着させられ、勤務先の銀行まで連れて行かれ、そこでありったけの金を袋に詰めるよう脅されたということです。

何だか映画のワンシーンを見るような話ですが、まさしくハリウッドスタイル、ハリウッド映画に見られるようなお手並みのように思われます。

ちなみに、この手の強盗をテーマにした映画のことを、"heist film"と言うそうです。


2012年9月6日木曜日

ストリップダンスはアートか? ― lap dancing

オフィスでニュースのヘッドラインを斜め読みしていましたら、以下のような記事が目に留まりました。


NY court to decide if lap dance is tax-exempt art
(The Wall Street Journal. September 5, 2012.)


"lap dance"が免税対象になるアートか否かが司法判断に委ねられる、ということのようですが、"lap dance"というのを見て、“ラップ”、つまりラップ音楽をバックに踊ることかと勘違いしてしまいました。

いわゆる“ラップ(音楽)”は、英語では"rap"であり、"lap dance"の"lap"は全く別物です。


ALBANY, N.Y. — No one would confuse the Nite Moves strip club with the Bolshoi Ballet, but what the lap dancers do there is art and entitled to the same tax exemption other performances enjoy, a lawyer argued Wednesday in what was surely one of the racier tax cases ever to go before New York's highest court.

W. Andrew McCullough, an attorney for the suburban Albany strip joint, told the Court of Appeals that admission fees and lap dances at the club should be freed of state sales taxes under an exemption that applies to "dramatic or musical arts performances."

He said that lap dancing is an art form and that, in any case, the state is not qualified to make such determinations, and that making such distinctions would be a violation of the constitutional right to freedom of expression.
(NY court to decide if lap dance is tax-exempt art. The Wall Street Journal. September 5, 2012.)


"lap dancing"というのは日本語で言うとストリップショーでヌードダンサーが、チップを出す客の男性の膝の上に乗る踊りのことを指すのだそうです。

その"lap dancing"はボリショイバレエと同レベルのアートなのか、単なるストリップショーの見世物なのか、を巡ってストリップ劇場側と税金を徴収する側の州が対立しているのだそうです。

健全な(!?)小生はそのようなショーを見たことも、"lap dancing"なるものを経験したこともありませんのでコメントを差し控えますが、記事では双方の言い分が様々に展開されており、思わず笑ってしまいます。

例えば、州側が以下のように主張すると、


He (=an attorney for the state) also argued that the exemption applies to "choreographed" performances, and what the Nite Moves dancers do doesn't qualify.
(ibid.)


ストリップ劇場側は、以下のように反論する、といった具合です。


At least three members of the seven-judge panel questioned the notion that a performance must be choreographed to be considered artistic. Chief Judge Jonathan Lippman suggested "creative artists in particular" often improvise.
(ibid.)


さて、"lap dancing"という表現に戻りますが、"rap"と"lap"を勘違いしてしまったのは勉強不足をさらしてしまいましたが、"lap"は膝(ひざ)のことを意味しています。ここで、“膝”とは、“椅子にかけた時の、下腹部から膝の頭までの部分”(ランダムハウス英和辞書)、と定義されています。

"lap dancing"をグーグルなどでイメージ検索してみると、オフィスで見るのに憚られるようなイラストレーションが表示され、思わず閉じてしまいました(笑)

American Heritage Dictionaryの定義では、


An erotic dance that a stripper performs while straddling a customer's lap.


とありました。いつもながら明快な定義だと思われます。

この定義を読むと、やはりアートなの?と個人的には疑問符が付きますが・・・。

2012年9月5日水曜日

ご祝儀泥棒 ― sticky-fingered

唐突ですが、ご祝儀泥棒ってアメリカにもいるんですね。といいますか、結婚式でお祝いに現金を贈るのはアメリカでも普通に行われていることを知りませんでした。New York Post紙からの引用です。


Minutes after exchanging their wedding vows, a Long Island couple helped chase down a sticky-fingered guest who tried to make off with their gift checks and cas, cops said.
(Thief steals LI wedding-gift cash. The New York Post. September 3, 2012.)


今日取り上げる単語は、"sticky-fingered"という形容詞ですが、文字通りの解釈をすると、べたべたした(sticky)、手指(fingers)ということになります。勿論これは比喩的な表現で、盗癖のある、というのが意味になります。べたついた手には物がくっつきやすいのを、盗みという行為になぞらえたというところでしょうか。

"sticky-fingered"は形容詞ですが、"sticky fingers"、"have sticky fingers"という形もあります。


Abraham Straus says it spends as much as $6 million a year to prevent shoplifting at its stores but still loses almost $9 million annually to sticky fingers. Its parent, Federated Department Stores, has a strict policy of prosecuting nearly everyone caught shoplifting. Most retailers are not as tough, preferring to avoid the cost and time associated with criminal prosecution.
(Stephanie Strom. States Act to Combat Shoplifting. The New York Times. 1991.)


この引用例からお分かりいただけるように、"sticky fingers"は万引き犯人そのものを指しています。

では、下記の引用例はどうでしょうか?


He was tall and fit, had sticky fingers for football, and 2 percent body fat.
(San Francisco Chronicle. 2010.)


盗みと関連づけるとちょっとうまく解釈できません。実は、"have sticky fingers"の意味には、盗癖があるというのに加えてもう1つ、特にアメフト競技において、パスを上手に受ける(能力がある)、という意味があるそうですが、上記の引用はその意味で使われています。


2012年9月4日火曜日

閑話休題:リアル店舗 ― brick-and-mortar

今日の記事で、クリスマス商戦に備えるトイザラス等の米国の小売業が"layaway program"の復活、あるいは拡充を図っているという記事を引用しましたが、その中で、ネットショップ(online retailers)と既存店舗(brick-and-mortar shops)の対比がありました。

"brick-and-mortar"という表現については既に以前取り上げていたのですが、その時は単にオンライン営業に対して、物理的に、きちんと(?)、店舗を構えている商売のことを指しているという解釈、説明をしていました。

全く偶然ですが、今日の産経新聞朝刊を読んでいると、音楽CDの販売を手掛けるタワーレコードが、“店舗の強み前面 CD在庫増加”を図っている、という記事に出くわしました。

ご存知のようにインターネット全盛時代において、音楽CDの生産、販売、ショップの数も最盛期の半分以下ということなのですが、タワーレコードはそこを逆手に取って、店舗を充実する施策に打って出た、というのが記事の概要です。

ここでタワーレコードの社長が、“リアル店舗”という表現を使っているのですが、"brick-and-mortar (store)"とはまさしくこの”リアル店舗”のことであると繋がりました。

私はこの“リアル店舗”という表現を知りませんでしたが、今日、全く偶然に知ることになりました。

"brick-and-mortar"という表現は中辞典くらいの英和辞書には載っていると思いますが、“リアル店舗”という訳語が載っているものはそうないだろうと思うと、今日のような奇遇を有難いもののように思います。


layaway programって何? ― layaway

唐突ですが、"layaway program"って何のことかご存知ですか?

まずは、記事を引用してみましょう。


Toys R Us is making it easier for shoppers to use its layaway program ahead of the crucial holiday season, waiving its service fee and minimum purchase requirement beginning Tuesday.

As brick-and-mortar stores face increasingly tough competition from online retailers, chains like Toys R Us, Wal-Mart, Sears and others have been expanding services such as layaway to draw customers into stores. Retailers will be pulling out all the stops for customers as the intensely competitive holiday season approaches, which can account for as much as 40 percent of annual sales.
(Mae Anderson. Toys R Us Waives Fee for Layaway Program. The Associated Press. September 4, 2012.)


この記事の中で"crucial holiday season"というのは恐らくThanksgivingあたりからクリスマスに至る、アメリカ全体が買い物に狂喜する時期を指しているのでしょう。日本では夏休みが終わって9月に入ったと思ったら、アメリカではもうクリスマス商戦の話か!?、と驚きを隠せませんが、年間売り上げの4割にもなるホリデーシーズンの商戦の過熱については、過去にも当ブログの記事で取り上げてきました。

さて、"layaway program"ですが、私は何のことか分からないまま最後まで記事を読んでみたのですが、商品購入の方法の1つを指すのだろうということぐらいは見当がつきましたが、それ以上分からず結局辞書を引きました。ランダムハウス英和辞書によりますと、


商品予約購入法、留め置き方式


とあります。”頭金だけで商品を予約し、残額完済後に初めて受領できる方式”という解説があり、得心がいきました。

"layaway"は"lay away"という動詞句から来ています。つまりはカスタマーが商品を予約するので、その商品を別によけて取っておく(蓄えておく)、ということから来たものです。

記事によりますと、この"layaway program"は大恐慌(the Great Depression)時代に全盛だったようですが、その後クレジットカードの台頭により意義が薄れ、"layaway program"を廃止する小売店も出たようですが、近年の不況などの状況を受けて復活させる小売店も出てきており、中には手数料を廃止したり、制度を利用できる商品の種類を拡大したり、購入価額の下限を撤廃したりという動きもあるそうです。


2012年9月3日月曜日

haunt

"haunt"という単語を見てまず思いつくのは、幽霊などが”とり憑く”、という意味ではないでしょうか。

たしかディズニーランドに、”ホーンテッドマンション”というのがありましたが、"haunted house"というと、幽霊が棲んでいる不気味な家のことです。

"haunt"を辞書で引くと、


(幽霊・霊魂などが)よく現れる、出没する


という意味が最初に出ており、ホーンテッドマンションのようなお化け屋敷というものへの馴染みもあって、この意味をまず思い浮かべてしまいます。

ところで、"haunt"には他の意味もあるのをご存知でしたか?


For my boyhood pals and for me — pre-teens in early-1940s Kensington — the Parkway was one of our regular haunts.
(Long before Disney World, we had the Ben Franklin Parkway. phillyburbs.com. September 2, 2012.)


ここでの"haunt"を幽霊とか霊魂の・・・、という頭で読むとおかしなことになります。"haunt"には、


よく行くところ、行きつけの場所
(悪党などの)巣、根城
たまり場


という意味もあるんですね。

ところで、語源に目を向けると、"haunt"は"home"と同根なのだそうです。"home"=家、は家族が集まるところ、帰ってくるところ、ということで、”よく行くところ”という意味での"haunt"と同根であるというのはうなずけることだと思います。また、幽霊が棲みつく、という意味にも通じているように思われます。

さて、先の引用した記事ですが、アメリカ・フィラデルフィアのBarnes Collectionが郊外のMerionからフィラデルフィア美術館などがあるBen Franklin Parkwayへ引っ越し、という記事からのものです。

Barnes Collectionというのは、美術好きの方ならご存知かと思いますが、Albert C. Barnesという資産家が収集した絵画などの膨大なコレクションを所蔵する美術館として有名です。私も数年前にアメリカに滞在した際に訪問したことがありますが、フィラデルフィア中心部から少し離れており、また一か月以上前の予約が必要など、なかなか訪問できない美術館でもあります。

数年前のアメリカ滞在を懐かしく思い出します。