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2012年11月30日金曜日

phony

"phony"という単語を久しぶりに見たような気がします。いつ以来かって?そうですねぇ、サリンジャーのThe Catcher in the Ryeを読んで以来ではないかと思います。

ご存知のように、サリンジャーの同小説の主人公である、Holdenがたびたび使っているのが、"phony"という形容詞です。“いんちきの”という意味です。


A suspicious device found at an Australia Post delivery centre in Brisbane’s west has been found to be a phoney bomb.

The police bomb squad was called to the delivery centre on Mawarra Crescent in Ferny Hills after staff evacuated the building about 7.20am today.

The device, which comprised batteries and wires, was found in a secure area at the back of the delivery centre, prompting the closure of four streets around the building.

Police x-rayed the device and found it did not contain any explosives.

‘‘It appears to have been a hoax,’’ a police spokeswoman said.
(Marissa Colligeros. Phoney bomb causes mail centre scare. The Sydney Morning Herald. November 28, 2012.)


上記の引用はオーストラリアのSydney Morning Herald紙からの記事です。スペルが、"phoney"となっていますが、"phony"と同じです。

"phony"の語源を見ると面白いことに気が付きます。

元々はアイルランド語で指輪を意味する"fawney"という単語に由来するようですが、この指輪は真鍮製のものだったにも関わらず、金製だと偽って売られることが多かったようです。

つまり詐欺行為がまかり通っていたのですが、それゆえに"fawney"は“偽りの”という意味に誤解され、それが定着してしまったもののようです。


2012年11月29日木曜日

お払い箱 ― get the boot

アップルのiPhone新製品で地図アプリの不具合が取りざたされたのはもう大分前のことのような気がしますが、責任者がクビになったようです。

少し前にもクビになった幹部についてのニュースを聞いたことがありますので、下記の引用はまた別の幹部ではないかと思いますが、そのこと自体にはあまり関心はなく、英語表現の話題に移りたいと思います。


The man behind Apple Maps, the most maligned part of Apple's wildly successful iPhone 5, has gotten the boot.

Apple executive Richard Williams, who was the leader of the team responsible for the horribly flawed map app got kicked to the curb by Senior Vice President Eddy Cue, according to Bloomberg News.
(Michael Braustein. Man behind awful Apple Maps app ousted: report. New York Post. November 27, 2012.)


以前取り上げたことがありますが、“クビ”と言うのに英語にはなぜか多くの表現があります。

今日取り上げる、"get the boot"はその1つです。

"boot"とは冬になると街中を行く女性の足元を飾るファッションアイテムとして目立つ、あのブーツですが、俗語としての意味もいろいろあります。

"get the boot"がなぜクビという意味になったかですが、"boot"にはブーツを履いた足で蹴飛ばす(ずいぶん痛そうです・・・)という意味があるようですが、そのブーツで蹴飛ばすという行為が、人をお払い箱にするときに、お尻を蹴飛ばして外に追いやる様を連想させることから来るのでしょうか。

語源欄の解説で確認できませんでしたが、多分そんなところではないかという気がします。


2012年11月28日水曜日

five finger discount

"five finger discount"という表現をご存知でしょうか?

そのまま訳すと、“5本指(による)ディスカウント(割引)”ということになります。金額を表すのに手指を使うのはよくあることですが、指5本は500円?それとも5000円?あ、ここは英語の話ですから、50セント、5ドル、ということでしょうか?

実は、"five finger discount"とは、いわゆる万引き(窃盗)のことなんですね。

手(5本指)で取って、支払いを済ませずに持って逃げる、ということなのでしょう。


A police officer was arrested for allegedly finding the best Black Friday deal in town — a five finger discount.

Jenny Mendez, 28, of the Midtown North Precinct was charged with petit larceny and criminal possession of stolen property after she allegedly shoplifted from a Midtown Manhattan store yesterday. The value of the stolen garments and location of the store was not released.

Cops said Mendez has been suspended without pay.
(Daniel Prendergast. Manhattan cop busted for shoplifting on Black Friday. New York Post. November 24, 2012.)


万引きというと、"shoplift"という単語を思い浮かべるかと思います。また、以前取り上げたことがありますが、"sticky-fingered"という表現もあります。

余談ですが、手元にOxford Dictionary of Euphemismsがあるのですが、そのエントリに、"five-fingered discount"という、スペルが若干違うものがあります。その解説では、


A reduction due to stealing

Referring to goods stolen and then sold below their market value.


とありました。これはダイレクトに“万引き”とは言っていませんが、盗んだものを実売価格よりも少し安い値段で転売し、現金を得ることであり、その際の差額を"discount"と言っているのだと思われます。


2012年11月27日火曜日

Facebook利用と著作権 ― boilerplate

私はフェースブックを利用していないのですが、親類や同僚、友人は多用しているようで、アカウントもってないの?などと言われたりします。

個人的には友達申請だとか公開の設定だとか、ややこしくてあまり好きではないので敢えて手を出していないのですが、私の周りの多くの方々はフェースブックを多用し、外出先ではスマートフォンで、自宅やオフィスではPCで、昼も夜も更新作業やお仲間のアップデート確認にお忙しくされているようです。

さて、そのフェースブックで著作権ポリシーの変更を騙る詐欺まがいのデマが広がっているというニュースを見つけ、利用者でもない私も何故かその内容に関心があり、記事を読んでみました。


For the last couple of days, my Facebook timeline, and probably yours, has been filled with repetitions of a peculiar piece of boilerplate text, from all kinds of friends. It goes something like this:

In response to the new Facebook guidelines, I hereby declare that my copyright is attached to all of my personal details, illustrations, comics, paintings, crafts, professional photos and videos, etc. (as a result of the Berner Convention).

For commercial use of the above my written consent is needed at all times!

Facebook is now an open capital entity. All members are recommended to publish a notice like this, or if you prefer, you may copy and paste this version.

Guess what? You’ve been >hoaxed.
(You Can Stop Spreading That Facebook Notice Now. The New York Times. November 26, 2012.)


この詐欺まがいのデマの出所がよく分かりませんが、誰かが言い始めたのには違いないでしょう、まさしくSNSの威力といったところですが、フェースブックユーザーが自分自身の投稿の著作権を主張しようと、無味乾燥な著作権の文言をいちいち自分の投稿に含めたため、タイムライン上が趣味やその他の話題を押しのけて無味乾燥なテキストで埋め尽くされると言う事態にもなっているということです。

今日の単語は、"boilerplate"です。

この単語は、契約書の条文だとか、製品やサービスの説明書などに書かれてある利用許諾とか著作権だとかの規定だったり、とにかく、ほぼ決まりきったフレーズで構成される文のことを意味しています。

決まりきったフレーズのことをなぜ"boilerplate"と言うのでしょうか?

語源を調べると、"boilerplate"とはその名前の通り、"boiler"(湯沸し釜)を作るの使われる"plate"(金属板、鋼板)のことを意味していますが、特に"boiler"の製造メーカー名などの情報を記したプレート(ラベル)のことを指していました。このようなプレートは内容は同じですから、同じものを大量生産されるボイラーのそれぞれに取り付ける訳です。

のち、"boilerplate"は印刷業界では新聞や広告など大量配布するための記事原版としての意味で用いられるようになります。プレートと印刷の原版がどちらも金属であることなどの類似性に着目してのことでしょう。

現代では、"boilerplate"は上述したように、法律や契約などの決まりきったフレーズという意味で使われる他に、陳腐で使い古された言い回しというようなやや批判的な意味合いで使われることもあります。


In this case, as in any case in which a child under its supervision dies, the city's Human Resources Administration had the same reply: no comment. This boilerplate response springs from laws intended to protect the privacy of families. Similar statutes exist in every state and often make it difficult for anyone outside the child-welfare system, including relatives, reporters, probation officers and teachers, to find out how the system worked, even after a child has been murdered.
(The New York Times. 1992.)


上記の例では、"boilerplate response"とありますが、“お決まりの対応、反応”とでも訳しましょうか。この時の“お決まりの”という言い回しには多少の批判が込められています。


2012年11月26日月曜日

プールはプールでも? ― pool report

以前に"carpool"という単語を取り上げました。同様の表現に、"motor pool"というものもあるのですが、これらの単語に見られる、"pool"は泳ぐための“プール”であると信じて疑いませんでした。皆さんもそうではありませんか?

ところが、これらの"pool"は泳ぐための設備である“プール”とは別物であることを今日知ったのです!

きっかけは以下の記事でした。


President Obama and his daughters visited an independent bookstore on Saturday to participate in "Small Business Saturday."

Obama is urging Americans to shop at neighborhood stores as an alternative to big Black Friday and Cyber Monday sales by national chains.

(中略)

Obama has made a tradition of marking Small Business Saturday by visiting a non-franchise bookstore with Sasha and Malia. Last year, the president and his two daughters visited Kramerbooks & Afterwards Café in Dupont Circle.

This year, the trio visited One More Page Books in Arlington, Va., a short trip across the river from Washington, D.C. They stayed in the bookstore for just over half an hour, according to a White House pool report, and immediately returned to the White House.
(Obama, daughters visit bookstore for 'Small Business Saturday'. The Hill. November 24, 2012.)


オバマ大統領が近隣の本屋で買い物をしたというニュースですが、Black FridayCyber Mondayなど、大型店舗へ足が向きがちなこの時期に敢えて大統領自ら個人商店へ足を運ぶことでいわゆるSmall Businessの活性化を図る狙いがあるようです。日本でも首相や大臣がわざわざ地方の商店街などを訪れ、ポケットマネーを使って個人商店で物を買ったりするのが報道されますが、あれと同じでしょうか。いや、近々衆院選を控え、恐らく同様のニュースがこれから聞かれるでしょうが、耳目を集めるだけのスタンドプレーではなく、オバマ大統領のそれは毎年の恒例行事になっているようです。

さて、今日取り上げたいのは、プールはプールでも、あの“プール”ではなかった、ということなのですが、引用した記事の後半に、


according to White House pool report


とありますが、この"pool report"とは一体何?というところから始まります。

お手持ちの辞書で、"pool"を引くと2つのエントリがあるかと思います。1つが泳ぐための"pool"で、もう1つは“共同出資、賭け金”などを意味する"pool"です。

1番目の"pool"はゲルマン語起源であり、ドイツ語でもPfuhl(プールの意)という名詞が残っていますが、2番目の"pool"はラテン語起源であり、元は雌鶏(pullet)、フランス語では賭け金を意味するpouletから来ています。

さて、上記引用での"pool report"は何のことかと言いますと、日本語でいう、いわゆる“代表取材”の意味です。ランダムハウス英和では、"pool reporter"というエントリがあり、ジャーナリズム用語として、代表取材をする記者(poolerともいう)とあります。

"pool report"が何故代表取材の意味になるのか、と疑問に思いませんか?

ここでの"pool"とは泳ぐ施設ではなく、2番目の"pool"である共同出資などの意味から来ているのです。この"pool"には動詞の意味として、


(資金や情報などを)共同出資する、合弁する
~をまとめて協力する


といった意味があるのです。ちなみに資金をプールすると日本語で言う場合の“プール”もこちらの"pool"であり、よく“裏金をプールする”というような表現が使われ、お金をプールすると言う場合も何だか後ろ暗いイメージがありますが、本来の意味は何ら後ろ暗いものではなく、共通の目的のある人たちが集まって協力する(資金を出し合ったりする)ことを指しているにすぎません。

さて、"pool report"に戻りますと、これはある対象を取材するという目的を共通に持つ関係者が集まって、その代表が取材を行うことで合意する、という意味合いになります。American Heritage Dictionaryにはこの意味がちゃんと載っていて、


A group of journalists who cover an event and then by agreement share their reports with participating news media


とあります。

では、最後に。

"carpool"、"motor pool"の"pool"も、泳ぐ施設の"pool"ではなく、共同利用の目的のために乗用車をシェアする仕組みということで、共同出資を意味する"pool"のことです。

てっきり、泳ぐプールが水を貯留しているように、物を溜めておく設備の意味に発展したものとずっと勘違いしておりました。カタカナ語の“モータープール”が英語では駐車場を意味しないということがやっと分かりました。

2012年11月23日金曜日

ドイツ語? ― stark-naked

昨日の記事で、"starkers"という単語を取り上げました。"starkers"という単語はごく最近生まれたものらしく、ランダムハウスやMerriam-Websterによると初出が1923年頃とあります。

そして、この単語の由来については、"stark-naked"という単語から"stark"と言う部分を取ってきたものであるという解説が見られます。

"stark-naked"も”素っ裸の”という意味の形容詞ですが、こちらは初出が1530年とありますので、"starkers"よりも古いのは確かです。

では、"stark-naked"の"stark"とはどういう意味なのでしょうか?

ここで、ドイツ語を学んだことのある人、ドイツ語に詳しい人は、強いという意味の"stark"というドイツ語の単語を想起するかもしれません。私もそうでした。

ややこしいのですが、"stark"という英語の形容詞にも、"naked"(裸の)と同じ意味があるため、ドイツ語かと思ってしまうのですが、この形容詞の意味も、"stark-naked"という単語に由来するものであり、"stark-naked"の"stark"という部分を説明するものではありません。

では、"stark-naked"の"stark"とはいったい何でしょうか?

American Heritage Dictionaryや研究社の大英和の語源欄で確認できますが、"stark-naked"とは元々、"start-naked"でしたが、(恐らくドイツ語の"stark"の影響を受けて)"stark-naked"となったものだそうです。

で、この"start(-naked)"は何かというと、“尾”(tail)のことなのです。(古英語では、steortというスペルでした。ちなみに、現代英語の"start"という単語とは関係がありません。)

"stark-naked"="start-naked"とはつまり、"naked to the tail"(尾に至るまで裸である、何も身に着けていない)という意味だったのです。

裸であるかどうかを気にするのは生きとし生けるものの中では人間だけなのに、人間にはない尾を取り上げて“尾に至るまで”というのはおかしい感じがしますが、要は“頭のてっぺんから爪先まで”という意味合いと解釈すべきでしょう。

ちなみに、尾を意味するsteort(start)がスペルに残っている単語として、鳥の名前である、"redstart"(ジョウビタキ)という単語があります。言うまでもありませんが、この単語の"start"も現代英語の"start"とは無関係です。


2012年11月22日木曜日

この単語の品詞は? ― starkers

昨日取り上げた、サンフランシスコで公共の場で裸になることを禁じる条例の可決のニュースを改めて今日も取り上げます。

昨日の引用記事でも触れられていますが、今回の“ヌード禁止条例”にはいわゆるNaturistと呼ばれる人たちからの反発も強く、今後論争に発展しそうな気配があります。

下記の記事はまた別のソースからの引用ですが、反対派について書かれている部分です。


Moments later, boos and a sudden shedding of clothes by aggrieved audience members led to a hastily called recess as naked people loudly and lustily voiced their displeasure.

Gerhardt Clarke, 55, of Oakland wore only a white stocking cap, white socks and white underwear briefs as he shouted about recalling Supervisor Scott Wiener, the ban's author.

Clarke said he's confident he'll be able to keep on going starkers. Activists last week filed a pre-emptive lawsuit to block the city from implementing the ordinance, seeking redress for the right to undress. "This lawsuit will wipe out these fascist clones," Clarke predicted.
(Josh Richman. San Francisco orders nudists to put their pants on. San Jose Mercury News. November 20, 2012.)


今日の単語は、"starkers"という単語です。

まず質問です。"starkers"という単語の品詞は何でしょうか?

辞書を引けばすぐに答えは分かりますが、


keep on going starkers


という部分に着目すれば、名詞ではなく、形容詞、あるいは副詞であることが分かると思います。つまり、"starker"ではなく、"starkers"という単語なのです。辞書を引く際も、"starker"ではなく、"starkers"のエントリを見る必要があります。

"starker"という名詞の複数形のように見えてしまうのですが、実は違うというところがポイントです。

こういう単語のことを、"deceptive"な単語と言うのだろうと思いますが、スペルを見て、通常行為者を表すためにつける語尾の-erからそのように解釈してしまうというところが落とし穴でしょうか。"starkers"という単語の語尾は、行為者(-er) + 複数形(-s)なのではなく、愛着を示したり、ややふざけたニュアンスを出すための接尾辞(-ers)なのだそうです。

さて、"starkers"の意味ですが、素っ裸の(で)、という意味です。

"starkers"というどちらかという見慣れない単語が”素っ裸”を意味するようになった経緯にはどういうものがあったのでしょうか?

これについては多くの辞書で、"stark-naked"に由来するという説明があると思います。

では、"stark-naked"とは?

これについては話が長くなりますので、明日取り上げます。お楽しみに!


2012年11月21日水曜日

sans

公共の場での裸を見せることを禁じる条例がサンフランシスコで可決されたというニュースです。違反すると100ドルの罰金が課せられ、悪質とされた場合には禁固刑になるという厳しい内容です。


The San Francisco Board of Supervisors voted 6 to 5 on Tuesday to approve a ban on public nudity. The vote means that there will be no more lounging nude in the city’s plazas, parading up and down city streets sans pants or riding subways and buses bare-bottomed.
(Malia Wollan. San Francisco Officials Approve a Ban on Public Nudity. The New York Times. November 20, 2012.)


文化の違いでしょうか、公共の場でのヌードと言われてもピンときません。今回の件は、サンフランシスコでもカストロ地区(Castro district)と呼ばれる特別な一帯、つまり“その手の人達”が集まってくる場所が取り沙汰されているようですが、Naturist(記事では、naturalistとありますが)と呼ばれる人たちの信条にとっては重要な問題のようで、反発必至というところです。

さて個人的には、ヌードの問題よりも言葉に関心がありますので今日の単語に入りたいと思います。

今日の単語は、"sans"です。

上記の引用で、


parading up and down city streets sans pants


の"sans"は、フランス語を勉強したことのある方なら当然ご存知の、“~なしに”(without)という意味の前置詞です。

私も大学で第二外国語がフランス語でしたので(多くの単語や文法は忘れてしまいましたが)この"sans"という単語くらいは覚えています。が、英単語として使われているのを目にしたのは初めてです。

英単語としての用法は現代フランス語から借用されたものと勝手に思っていましたが、いくつかの辞書を引いてみると実は1300年代、中期英語から使われている単語であることを知りました。

尤も中期英語のそれも、元は古期フランス語から来たものであり、さらに遡るとラテン語の"sine"にたどりつくようです。

現代フランス語での発音は末尾のsを発音しませんが、英単語としては末尾のsも発音(清音のsではなく、濁音のzになります)します。


2012年11月20日火曜日

ブラックフライデーに追いやられるサンクスギビング ― edge out

11月も半ばを過ぎ、早や年末の足音が聞こえてくる季節となりました。

当ブログの過去の話題でも度々取り上げてきたものですが、年末というとクリスマスです。とりわけアメリカではその前にThanksgiving holidaysがあり、近年では歳末商戦のスタート時期でもあります。

今日はこんなタイトルの記事を目にしました。


Is Black Friday edging out Thanksgiving?


"edge out"という表現が今日取り上げる表現です。

Black FridayがThanksgivingを"edge out"?どういう意味でしょうか?


It will arrive again this week, even as Americans are still sitting at their Thanksgiving dinner tables. Black Friday -- with its door-buster sales, hordes of frenzied shoppers shoving for position, employees nervously waiting for the onslaught -- has shrugged off the confines of its name and has now established squatters' rights on Thursday.

Target stores will open at 9 p.m. Thanksgiving night, three hours earlier than the stores' midnight opening in 2011. Wal-Mart will begin its Black Friday sales at 8 p.m. on Thanksgiving. Toys R Us will match that 8 p.m. opening, as will Sears. Best Buy, which will wait until midnight to open its doors, seems almost like a dowdy throwback.
(Bob Greene. Is Black Friday edging out Thanksgiving? CNN. November 18, 2012.)


タイトルから想像のついた方も多いかと思いますが、どうやらThanksgiving holidaysと歳末商戦のスタートであるBlack Fridayがもはやほとんど同じになってしまったことを批判的に取り上げた記事のようです。

2年前の記事で"Black Friday"については取り上げましたが、通常Thanksgivingとは11月最終週の木曜日にあたり、翌日の金曜日は平日ですが、多くの人が続く土日の休日と“ブリッジ”して休暇にしてしまうため、このBlack Fridayが歳末クリスマス商戦の事実上のスタートとしてのランドマーク的な位置を占めるようになった経緯があります。

さて、Wikipediaの解説にもありますが、デパートや量販店にとってこのBlack Fridayは書き入れ時であり、Black Friday当日は朝6時から開店するなどという商慣行でしたが、商戦はヒートアップし、近年では午前0時、つまり金曜日に日付が変わると同時に開店などとなってきているようです。

しかしさらに開店時刻は早まり、前日木曜日の午後9時、そして午後8時開店というところまで出てくる始末で、こうなるとBlack "Friday"などではなく、もう木曜日、Thanksgivingに食い込んできているのが現状です。

"Black Friday"が"Thanksgiving"を"edge out"、とはこうした状況を指しています。

"edge"という単語の動詞の意味をチェックしてみると、


(方向の副詞(句)を伴って)…をじりじりと斜めに[横に,縁に沿って]進める;…を徐々に動かす[押しやる]


という意味があることが分かります。

この記事の用例では、副詞に"out"を伴っている訳ですが、Black Fridayに徐々に追いやられてしまうThanksgiving holidays、とでもなりましょうか。

暖かくした家のディナーテーブルで七面鳥のローストやパンプキンパイを食べていたのは古き良き時代となり、ディナーも食べ終わらないうちに混雑したショッピングモールに繰り出し、買い物三昧、というのがこれからの主流になるのでしょうか。寂しいものです。

2012年11月19日月曜日

sitting

オバマ大統領がビルマ(ミャンマー)を訪問、というニュース記事です。


US President Obama in landmark Burma visit

US President Barack Obama is making a historic visit to Burma, the first by a sitting US president.
(BBC News. November 19, 2012.)


今日の引用はたったこれだけなのですが、斜体にて示しましたように、今日取り上げる単語は


sitting


です。

文脈から、現職大統領として初めてのビルマ訪問、とでもなりましょうか。

またまた勉強不足の謗りを免れませんが、“現職”を意味するのに単に、"sitting"と表現するとは知りませんでした。

“現職”という日本語の対訳としてまず思い浮かぶのは、"sitting"という単語よりも難しそうに響く、"incumbent"という形容詞です。単語を一生懸命に暗記している人にとってはなおさらそうではないだろうかと思います。

"incumbent"は、"sitting"と同義ですが、いわゆる"big word"なのでしょうか?

"sitting"と"incumbent"のどちらが用例として多いのかをコーパス(COCA)で調べてみたところ、"sitting president"、"incumbent president"の用例はほぼ同数でした。どちらでもいいといえばいいのかもしれません。

"incumbent"には、横たわる、寄りかかる、という意味もありますが、語源に目を向けるとラテン語のcumbereという語に由来し、cumbereとは横たわる、座るの意味であるということで、"sitting"とは意味が共通しています。


2012年11月16日金曜日

"compromise"という単語について考える ― compromise

今日は"compromise"という単語について少し考えてみたいと思います。

"compromise"という単語は、妥協(する)、譲歩(する)という意味で使われますが、ここで考えたいのはいわゆるコンピュータセキュリティのコンテクストで用いられる"compromise"の用法です。

きっかけは以下の記事での"compromise"の用法でした。


Personally identifiable information of "at least" 10,000 NASA employees and contractors remains at risk of compromise following last month's theft of an agency laptop, a spokesman told Computerworld via email Thursday.
(Jaikumar Vijayan. NASA breach update: Stolen laptop had data on 10,000 users. Computer World. November 15, 2012.)


NASA職員のラップトップPCが盗まれたというニュース記事ですが、盗まれたPCには1万人以上の職員に関する個人情報が保存されていたということです。

ここで、


Personal identifiable information... at risk of compromise


という部分に注目します。

私はこの部分を最初目にした時、おや、という気がしました。コンテクストから言わんとしていることは分かるのですが、"risk of compromise"という表現が奇異に思えたからです。

私の頭の中では、"compromise"とは"risk"とほぼ同義だったので、"risk of compromise"とは即ち、"risk of risk"となってしまい、奇異な感じがしたのです。

そこでランダムハウス英和で"compromise"を引いてみます。名詞のエントリには、


(名誉・評判・信用などを)危うくすること、危険(疑い)などにさらすこと


とあります。"risk"とほぼ同義ではないでしょうか?

考えてみれば、"compromise"という表現は昨今のセキュリティ関連の話題で必ずといっていいほど使われる表現ですが、どちらかと言えば名詞よりも動詞の方が多いような気がします。

例えば、以下のような例文に見られます。


Experts say that many companies only disclose break-ins when they are required to do so by government regulations that say they must tell customers whose data was compromised.
(Jim Finkle. What's so special about Sony's massive data breach? Reuters. April 29, 2011.)


ここで思うのですが、そもそも"compromise"が具体的に何を意味しているのか曖昧ではないだろうか、ということです。

辞書に見る"compromise"はリスクの概念に留まると思われるのですが、昨今のセキュリティ関連のニュースで用いられる"compromise"にはもっと具体的な意味、つまり不正利用、暴露、犯罪目的の利用、などが含意されているように思われます。

冒頭に引用した、"at risk of compromise"も、"compromise"の内容がその具体的な事象(つまり、情報の奪取、あるいは不正利用など)を指すものであれば表現としておかしくないと思われます。

"compromise"の用法をネットで色々調べていると、私と同じような疑問に端を発する議論も見つかり、今日の記事のきっかけともなりました。例えば、このサイトでは、"compromise"の用法として、名詞と動詞とが比較されています。

また、権威ある辞書をいくつか参照してみても、"compromise"の定義に微妙な差が認められます。

Merriam Websterでは、


to reveal or expose to an unauthorized person and especially to an enemy


という定義(と<>内は例文)が見られます。このような定義はAmerican Heritage Dictionaryや英和辞典に見られず、昨今のセキュリティ関連のコンテクストでの用法を他に先駆けて取り入れたものではないかと思われます。

昨今のセキュリティ関係の話題における"compromise"の用法は意味が拡大してきており、辞書の定義の範囲から少しずつはみ出してきているような気がします。言葉は生き物と言いますが、これらの具体的な意味が辞書のエントリになるのもそう遠くはないのかもしれません。


2012年11月15日木曜日

つまり、"out of control" ― runaway

"runaway"という単語を見てぱっと思いつくのは、逃亡のイメージではないでしょうか?

勿論、逃亡、脱走の意味もあるのですが、それ以外の意味で用いられることもあるのです。いや、むしろ、そちらの用法の方がよく用いられているとさえ思えます。

記事を引用します。


Tomorrow Pepsi are launching a version of its cola drink that it claims acts as a fat blocker.

Pepsi Special is made with dextrin - an indigestible form of dietary fibre. Studies on rats suggest this can reduce the absorption of fat in the body and lower cholesterol levels.

(中略)

Pepsi hope the drink will have the same runaway success as the Japanese drink Kirin Mets Cola, which also contains dextrin.
(Claire Bates. Good news for slimmers with a sweet tooth: Now Pepsi launches FAT-BLOCKING soft drink. The Daily Mail. November 12, 2012.)


引用記事の後段に出てくる、


runaway success


という表現は初めて目にするものでした。(勉強不足・・・。)

当然ですが、逃亡、脱走の意味ではありません。辞書を引くと、これらの意味以外に、


一方的勝利、圧勝、楽勝


などの意味があることが分かりました。上記の用例では形容詞として用いられていますから、


一方的勝利の、圧勝の、楽勝の


という意味になります。ここでは今流行りのダイエット飲料が話題ですから、特定の製品の一人勝ちの状況を言っていると解釈できます。

ところで、逃亡、脱走の意味と圧勝、楽勝の意味は全く別のものでしょうか?一見、全く別の意味のように思えますが、どうやら意味的には関連がありそうです。American Heritage Dictionaryの定義によると、


Something that has escaped control or proper confinement


という定義があるのですが、要は、"out of control"(制御不能)であることを意味しているのです。

逃亡、脱走はまさしくこの意味を含意していますし、一方的勝利や圧勝という概念も、他の影響やコントロールを受けない、追随を許さない、といった意味では同じです。

また、"runaway"にはもう1つ、


止めどもなく上がる、急騰する、止めどもなく進む


という意味がありますが、この意味も、"out of control"の概念に根差したものです。例えば以下のような用例で用いられています。


In theory, at least, tying the value of the dollar to gold would prevent the government from printing too much money and creating runaway inflation.
(USA Today. 2012.)


2012年11月14日水曜日

フェンダー?バンパー? ― fender-bender

自動車に詳しい人に笑われそうですが、フェンダーとバンパーの違いって何でしょう?

私は運転免許は持っていますが週末ドライバー程度の車の知識しかありませんのでちゃんと答えられないのですが、なぜこのような疑問を持ったかというきっかけは以下の記事でした。


Two separate bus accidents -- plus a later eight-car pileup -- at the Lincoln Tunnel made a mess of today’s commute into Manhattan.

First, at around 7:15 a.m., a NJ Transit bus carrying 45 passengers was rear-ended by a Martz Trailways bus, said NJ Transit spokeswoman Nancy Snyder.

(中略)

Then at 9 a.m., another NJ Transit bus was rear-ended, this time by a truck, Snyder added.

(中略)

To make matters worse, a few hours later, there was eight-vehicle fender-bender in the westbound tube heading to New Jersey, authorities said.
(Doug Auer. Multiple accidents snarl Lincoln Tunnel commute, dozens injured. New York Post. November 12, 2012.)


交通事故に関するニュース記事です。少し引用が長くなってしまいましたが、"pileup"とは多重玉突き事故、"rear-end"とは追突事故のことを言っています。

最後の段落に出てくる、"fender-bender"という表現はユニークですが、ご存知でしょうか?

"fender-bender"も、事故を意味する表現です。ランダムハウス英和辞書によると、


(主に相手のフェンダーがへこむ程度の)軽い車の衝突事故


という説明があります。つまり、"fender"(フェンダー)を"bend(er)"(曲げる)、ということから生まれた表現です。

ここで、“主に相手のフェンダーがへこむ”という但し書きが気になりました。つまり、衝突された方に被害があって、衝突した方は被害がない、というようにも取れるからです。相手だけが被害ということはないはずです。

ここに至って、“フェンダー”とはいったい何ぞや?という疑問が出てきました。そして、“バンパー”という用語もあるけど、それとはどう違うの?という疑問になったわけです。

ネットを調べてみると同様の疑問を抱いている人は多いらしく、とあるサイトで分かりやすい説明を見つけました。それによると、バンパーというのは、衝突時の衝撃を和らげるために自動車の前後に取り付けられる部品であり、フェンダーというのは主に泥はね防止のために自動車の前後輪を覆うように“サイドに”取り付けられる車のボディの一部分である、というものでした。

さらに興味深いのが、“では、bumper-benderという表現はないのか?”という素朴な疑問を持っている人がいることでした。追突すればまず双方のバンパーが曲がるはずで、至極もっともな話です。

これに対するネットでの回答は、“ない”というものでした。つまり、"fender-bender"は存在しますが、"bumper-bender"は存在しません。(笑)

その理由がまた説得力があったのですが、"fender-bender"の方が(韻を踏んでいて)語呂(口調)がよいから、というものでした。なるほどですね。


2012年11月13日火曜日

こんな意味もあったの? ― voice

時々お送りしています、“こんな意味もあったの?”のコーナーですが、今日もとある記事を読んでいて発見がありました。いつまでも勉強することが多くて、題材に事欠きません・・・。

さて、その単語とは、"voice"です。

何を今さら、とお思いになる方も多いかも知れませんが、まずは下記の引用をご覧ください。


Voice of Sesame Street's 'Elmo' accused of affair with underaged teen

The man who voices beloved children’s character “Elmo” took a leave of absence, after he was accused of having an affair with an underaged boy, Sesame Street officials said today.

The allegations against Kevin Clash, 52, go back seven years and the puppeteer said he needed a break from work to fight the allegations.
(David K. Li. Voice of Sesame Street's 'Elmo' accused of affair with underaged teen. New York Post. November 12, 2012.)


最初に一読した際、この"voice"の意味がすぐに掴めなかったのですが、記事を読み進めていくうち合点が行ったのです。

セサミストリートの“エルモ”が出てくるのもヒントになったということはあります。記事のタイトルにある、


Voice of Sesame Street's 'Elmo'


は、“セサミストリートのエルモ役の声優”という意味になるかと思います。

そしてもう1つ出てくる、"voice"、


The man who voices beloved children's character "Elmo"


は動詞として使われています。こちらも声優役をしている、という意味になるかと思います。

声優、というと、"voice actor"という名詞表現がぱっと思い浮かぶと思います(voice=声、actor=(俳)優、で何だか和製英語っぽいですが、英語表現です)が、単に"voice"をその意味で使ったり、また動詞で表現するというのは発見でした。

ちなみに、ランダムハウス英和やジーニアス英和、研究社の大英和などを引いてみたのですが、"voice"のエントリに声優、あるいは類似の意味は見当たらなかったので不思議です。どちらの英和辞典も、"voice-over"というエントリで同様の意味を載せてはいますが、"voice"のエントリにそのものずばりの意味(訳)が載っていないのです。

American Heritage Dictionaryでは、


To provide the voice for (a cartoon character or show, for example): The animated series was voiced by famous actors.


というように、動詞のエントリで明確な定義があり、また、Merriam Websterでは、


She does the voices for several cartoon characters.


という例文が載っています。

英和辞典にも意味や用例が載っていてもよさそうなものだと思いました。

2012年11月12日月曜日

旨い話には・・・ ― the deal of the decade

11月も半ばとなり、街中ではクリスマスムードが漂い始め、年賀状の発売が始まるなど、早や年末の足音が聞こえてきました。何かと浮足立つ時期でもあります。

アメリカでは月末のThanksgiving holidaysの終わりと同時に歳末商戦(クリスマス商戦)がスタートしますが(Black Friday)、そのような時期を控えてか、とんでもないニュースを耳にしました。


Woman buys cheap iPad, gets mirror instead

A woman thinks she scored the deal of the decade in a Texas gas station. Now when did that ever happen?
(Chris Matyszczyk. Woman buys cheap iPad, gets mirror instead. CNET News. November 9, 2012.)


市場価格が800ドルもするiPadをガソリンスタンドで200ドルで売りつけられ、帰って開けてみたら中は鏡(ミラー)だった、という笑うに笑えない話です。


Sometimes our greed is merely a reflection of our true selves.

Sometimes we really do believe we will get something for nothing -- or at least very little.

Take Jalonta Freeman of Arlington, Texas. She was at a gas station. Suddenly a man drove up to her and offered her an $800 iPad for a mere $200.

Wouldn't you have been slightly suspicious? Wouldn't you have at least opened the box to check whether there was, well, an iPad inside?

Freeman took the deal.

"He was, like, OK, I gotta hurry up and go and stuff," she told KXAS-TV.
(ibid.)


今日は、"the deal of the decade"という表現を取り上げたいのですが、


the man of the decade
the team of the decade


というような類似の表現に見られるように、これは”10年に1度(あるかないか)の儲け話”、というような響きがある表現です。辞書には載っていませんが・・・。

旨い話には落とし穴がある、というのは古今東西よく知られた話であり、"the deal of the decade"なんてあり得ないのですが、この女性はまんまと引っ掛かってしまったようです。

2012年11月9日金曜日

gouge

依然としてハリケーンSandy関係のニュース記事をよく見かけますが、今日は下記のようなヘッドラインが目に留まりました。


New York AG goes after post-Sandy price gougers

The state attorney general yesterday slapped a subpoena on Craigslist, demanding that the popular Web site identify sellers who jacked up prices on post-Sandy gas, generators and other supplies, The Post has learned.

The subpoena is part of a widespread probe into rip-off hotel rooms, groceries, transportation and other essential and emergency supplies announced this week by the AG’s Office.

More than 100 Craigslist users are being targeted by AG Eric Schneiderman for chiseling New Yorkers desperate for essential items in the wake of last week’s hurricane, according to an official.
(Jeane Macintosh. New York AG goes after post-Sandy price gougers. New York Post. November 8, 2012.)


この"price gouger"とは何を意味しているのでしょうか?

関連する記事を数日前にもいくつか読んでいたので簡単に想像がつきましたが、"price"とついていることからも想像がつくように、値段をつり上げることを指しています。

ハリケーン被害を受けた地域では停電が発生したり、暖房のためのガスや自動車のガソリンに難儀している人々が多く、ガソリンスタンドでは長蛇の列ができるなど、先の大震災を彷彿とさせるような事態になっているようです。

ガソリンスタンドでは給油制限なども実施されているようですが、このような状況で暗躍するのが人々の需要を逆手に取った"price gougers"という訳です。

"gouge"を辞書で引くと、木を削る“丸のみ”の意味と共に、動詞として、


詐取する、だまし取る
高値をふっかける


などの意味があることが分かります。

"gouger(s)"とは、"gouge"する人、ということです。

記事によりますと、ネット上で5ガロン(20リットル程度)のガソリン缶(通常20ドル程度)を数十倍の値段で売り出す"price gougers"が後をたたないのだそうです。

2012年11月8日木曜日

ジュース? ― juice

ジュース(juice)は説明するまでもなく、飲み物、ドリンクの1種ですが、動詞で使われることがあることを下記の記事で知りました。


Cellphone service in areas hit by Sandy is getting back online slowly, with about 20 percent of cell sites still out of commission on the East Coast, down from 25 percent, the Federal Communications Commission said Thursday. For those in the New Jersey and New York areas still without power, but whose cellphones are working, major wireless carriers are offering users places to juice up.

Photos of residents desperately seeking power sources for their phones and devices have become emblematic of one aspect of Sandy's destruction: the power grid we all rely on, especially to charge our mobile phones.
(Suzanne Choney. Juice up your phones, courtesy of wireless carriers, in NJ, NY. NBC News. November 1, 2012.)


ハリケーンSandyの猛威による被害に見舞われた地域では停電が発生しました。携帯電話の通信網も被害を受けたようですが、今日では重要なインフラでもある携帯電話サービス網が平常に戻りつつある中、ユーザーが携帯電話を充電できるよう通信会社などが電源を提供している、というニュースです。

英和辞書で"juice"の動詞としての意味を引くと、


力(勢い)を加える
活気づける、生彩を与える


などの意味が見られますが、上記の引用において"juice up"は具体的には”充電する”という意味で使われています。

恐らくこのような動詞としての表現よりも先に、名詞として"juice"には俗語としての意味が多いようで、


(動力源としての)電気、電力


という意味があります。"juice up"の意味も、このような俗語としての名詞の用法から生れたのではないかと思われます。

Merriam Websterによると、"juice up"の用法の初出は1955年ということですから、比較的最近の用法だと言えます。

もう1つ、別の記事から引用します。


As hundreds of thousands of Big Apple residents suffer in homes left without power by Hurricane Sandy, two massive generators are being run 24/7 in Central Park — to juice a media tent for Sunday’s New York City Marathon.

And a third “backup” unit sits idle, in case one of the generators fails.
(This is no way to get us up & running. New York Post. November 2, 2012.)


上記の引用では、"juice up"ではなく、単に"juice"ですが、コンテクストから解釈すると意味はほとんど同じかと思われます。


2012年11月7日水曜日

着込む ― bundle up!

ハリケーンSandyの影響により、ニューヨーク市内の学校では上陸前から休校措置などが取られていたようですが、ハリケーンも過ぎ去り、甚大な被害がもたらされたものの少しずつ日常を取り戻しつつあり、学校も再開し始めました。


Nearly a million New York City schoolkids are expected to be back in class today — and they had better bundle up.
(City school openings are cold comfort. New York Post. November 5, 2012.)


学校が再開するにあたって、


they had better bundle up


とはどういう意味でしょうか?

"bundle up"という表現を知らなくても、答えは続きを読むと分かります。


At least three dozen schools likely won’t have heat as temperatures hover just above freezing in the morning, Mayor Bloomberg warned yesterday.

“Please dress your children with that in mind,” the mayor said. “If the schools were dangerously cold, we obviously wouldn't open them. But if they’re chilly, extra sweaters for the kids is something that should make some sense.”
(ibid.)


日本でも11月になってからは随分と冷え込んできましたが、ニューヨークはさらに寒いでしょう。

学校は再開するものの、電力供給や燃料供給がままならない状況では暖房が十分でないため、寒さに備えて着こんでくるべきだ、という勧告です。

"bundle up"という表現ですが、英和辞書を引くと、”着込む”の意味があることが分かります。カタカナでも”バンドル”という表現が使われたりしますが、同じものを束にしたり、品物を梱包するという意味で使われるのが一般的なので、"bundle up"が衣服を重ね着するという意味になるとは知らず、勉強になりました。


2012年11月6日火曜日

shame... into ~ing

昨日に引き続いてですが、ハリケーンSandyによる甚大な被害を被ったニューヨーク・シティと、NYCマラソン開催是非に関する記事から引用します。


Mayor Bloomberg announced the race would be cancelled on Friday — after The Post shamed organizers and the city into realizing that essential resources that could be used elsewhere — were being secreted away for the event.
(Cynthia R. Fagen. Marathon organizers blame race cancellation on media, not killer storm. New York Post. November 3, 2012.)


昨日の記事でも触れましたように、ブルームバーグ市長を始め、NYCマラソン関係者は当初は週末のレースを開催する方向で準備を進めていましたが、批判を受けて最終的にマラソンの開催を見送ることとしました。

ここで、


The Post shamed organizers and the city into realizing that...


という部分に注目しましょう。

市長も関係者も、当初は実施の方向で準備を進めていたのですが、結局止めることになったのは、ハリケーン被害で停電などの被害を被っている市民を尻目に、マラソン関係の設備の電力供給手段を優先している、怪しからん!との批判が起こったからです。

関係者はそのような批判が起こるとは考えなかったのでしょうか、The Post(=New York Post)の報道がきっかけになったというようなくだりが上記の引用からは見て取れます。

"shame"という動詞は、”恥じ入らせる”という意味ですが、ここでは、後続の"into realizing"とつながっており、これは、


talk... into ~ing (説得して~させる)
fool... into ~ing (騙して~させる)
coerce... into ~ing (無理やり~させる)


といった表現と同じ構造です。

2012年11月5日月曜日

wreck? wrack? ― wrack

ここ数日ハリケーンSandyによる被害のニュースが各紙・各メディアのサイトのトップニュースを飾っていますが、ハリケーン通過後の週末に予定されていたニューヨークシティマラソンの開催の是非が話題となりました。

ハリケーンによる死者は100名を超え、ニューヨーク市内では多くの世帯で停電が続く中、マラソンを実施するための設備への電力供給が取り上げられ、被災者からの批判の的となったようです。


Hundreds of thousands of New Yorkers huddle in the dark each night after the most devastating storm in city history — while two massive generators chug away in Central Park and a third sits idle waiting to power a media center during Sunday’s NYC Marathon.

Like hell.

Those generators could power 400 homes on Staten Island or the Rockaways or any storm-wracked neighborhood in the city certain to be suffering the after-effects of Hurricane Sandy on Sunday morning.

Shouldn’t they come first? Shouldn’t the race just be canceled?
(Marathon is power mad! New York Post. November 2, 2012.)


上記の引用記事は先週金曜日の時点のものなので今現在となっては少し古く、この後結局、ブルームバーグ市長は週末のマラソンの中止を決定します。

さて、今日取り上げたい表現は、"wrack"という動詞です。記事の後半に、


any storm-wracked neighborhood


という部分が出てきます。”ハリケーン被害を受けた世帯”、というように解釈できると思います。

大変ややこしいのですが、似たような単語に、


wreck
wreak


があります。"wreak"については、"wreak havoc"(壊滅的な打撃をもたらす)という表現を以前取り上げました。その記事の中でも触れていますが、"wreak"と"wreck"は別の単語であり、"wreck havoc"は誤用とされています。

今日取り上げたのは"wrack"ですが、これは"wreck"とスペルも意味も非常に似通っています。別単語なのでしょうか?それとも、スペルのVariantというだけで、同語源なのでしょうか?

いくつかの辞書の語源欄を見て分かることは、"wrack"は"wreak"と同根、一方、"wrack"と"wreck"は別語源の単語のようである、ということです。

“~ようである”というのは歯切れが悪いですが、辞書にも2つの単語に差異に関する詳しい解説がないので何とも言えないのが正直なところです。しかも、辞書によって語源解説が微妙に違うのです。

Bill BrysonのTroublesome Wordsという本の解説によると、


Wrack is an archaic variant of wreck and now almost never appears except in the expression 'wrack and ruin'.
(Bill Bryson. Troublesome Words, revised edition. 2001.)


とあります。ということは、"wrack"と"wreck"はスペルがちょっと違うだけの、同根の単語ということに解釈できますが・・・。

同根と考えようと別単語と考えようと、繰り返しますように意味は非常に似通っており、また使われるコンテクストも今回のように自然災害による被害などに言及する場合に多いため、混乱は尽きません。

例えば、"storm-wrecked"という表現が正しいのかどうか、筆者には判断できませんが、コーパスを見る限り、そのような使用例も存在します。

さらにややこしいようですが、"wrought"という単語が、


the devastation wrought by super-storm Sandy
(Los Angeles Times. November 3, 2012.)


のような使われ方で、やはり自然災害による被害に言及するときに使われます。

この"wrought"は、皆さんも良くご存知のごく基本的な動詞の"work"の過去分詞形で、"wreak"、"wrack"、"wreck"のいずれとも異なるものです。

英語ってややこしいですね・・・。


2012年11月2日金曜日

口止め、揉み消し ― hush up

日本ではあまり報道されていないのではないかと思いますが、アメリカのペンシルベニア州立大のフットボールチーム監督による学生への性的虐待のスキャンダルはここ最近のトップニュースです。性的虐待の罪に問われている被告の監督は有罪なら数十年以上の禁固刑に処せられることになり、生涯を塀の中で過ごすことになるという記事を読んだ記憶があります。

このスキャンダルで、責任は当のチーム監督に留まらず、州知事にまで及ぶ事態となっているらしく、またまたトップニュースの扱いになっています。

今日の記事を引用します。


HARRISBURG, Pa. — The "conspiracy of silence" that protected Jerry Sandusky extended all the way to the top at Penn State, prosecutors said Thursday as they charged former university president Graham Spanier with hushing up child sexual-abuse allegations against the former assistant football coach.

Prosecutors also added counts against two of Spanier's former underlings, Tim Curley and Gary Schultz, who were already charged with lying to a grand jury.

"This was not a mistake by these men. This was not an oversight. It was not misjudgment on their part," said Linda Kelly, the state attorney general. "This was a conspiracy of silence by top officials to actively conceal the truth."
(Former Penn St. president faces cover-up charges. The Seattle Times. November 1, 2012.)


どんな責任を問われているのかということですが、冒頭、"conspiracy of silence"(沈黙という共謀)と書かれています。

そして、その文に続けて、


they (=prosecutors) charged former university president Graham Spanier with hushing up...


とあります。"hush(ing) up"とは”口止め、揉み消し”という意味です。チームの監督の虐待疑惑はまずは大学の学長による揉み消しの疑惑へ、さらには州知事までもその揉み消しに関与していた可能性を問われる事態になっているということです。

"hush"は、”静かに!”という時に、”シッ!”と言いますが、そのように使われる間投詞(interjection)でもあります。

恐らく擬音(声)語だと思いますが、語源欄を参照すると、中期英語で"silent"を意味する、"husht"という単語からの逆成であるという解説がありました。"husht"の語尾の"t"が過去分詞形を示す接尾辞と誤解されて、"hush"という単語になったのだということです。


2012年11月1日木曜日

ハリケーン被害のNYCで交通麻痺 ― gridlock

アメリカ北東部を通過したハリケーンSandyの爪痕のすさまじさを、ニュース記事に掲載された写真で見ました。その中で目を引いたものに、ニューヨーク・マンハッタンの市中の渋滞の様子があります。

通りは車でびっしりと埋め尽くされ、普段は歩く人は少ないであろうブルックリン・ブリッジは、自動車やバスを避けて徒歩で移動するために橋を渡る人々で溢れかえっているのですが、東日本大震災時の光景を彷彿とさせます。

さて、市中の交通”渋滞”と書きましたが、多くの記事では、"traffic jam"ではなく、"gridlock"という表現が用いられているのに気が付きました。


Cars with less than three passengers will be virtually barred from entering Manhattan, Mayor Bloomberg announced today, in a desperate bid to relief gridlocked city streets.

This post-Hurricane Sandy rule will be enforced from 6 a.m. to midnight tomorrow and Friday.

"To reduce the number of cars coming into Manhattan, however, we have to take some steps. The streets just cannot handle the number of cars that have tried to come in," the mayor said today.

"I know it is inconvenient for a lot of people. But the bottom line is the streets can only handle so much."
(Mayor mandates car passenger minimums in Manhattan. New York Post. October 31, 2012.)


"jam"が渋滞とすると、"gridlock"はそれよりもう1段階酷いレベル、”交通麻痺”に相当するかと思われます。

"grid"とは格子のこと、ここでは縦横に交差する道路のことですが、どのストリートも車で埋め尽くされ、もはや二進も三進もいかない状態、ほとんど"lock"された状態を、"gridlock"で表現しています。

交通麻痺を緩和するため、ブルームバーグ市長は乗車人数が3人未満の一般車両がマンハッタン地区に入ることを禁止する措置を発表したということです。