最近30日間のアクセス数トップ3記事

2019年7月17日水曜日

分かったようでよく分からない単語 ― address

当ブログでアクセス数の多い記事の1つに、「分かったようでよく分からない単語 ― implication」(2013年6月20日木曜日付け)があります。

ブログのトップページに、「最近30日間のアクセス数トップ3記事」というコーナーを設けていますが、いつ頃からかそこに出てくるようになりました。取り上げた内容が関心を引くのが意外でした。

今日の内容もそれに近いものがあります。取り上げたい単語は"address"という動詞です。

多分「キホン中のキホン」みたいな単語の1つなので、何を今さらと思われるかも知れないのですが、まずは記事の引用を読んでみて下さい。


It's been one month since Facebook (and its partners) announced plans to launch Libra cryptocurrency. Already, US lawmakers are calling for Facebook to pause those plans. Now, some legislators want the company to stop altogether.

(中略)

In addition to blocking Facebook's plans for Libra, the "Keep Big Tech Out of Finance Act" would prevent other firms (those mainly offering an online platform service with at least $25 billion in annual revenue) from launching similar cryptocurrencies. Companies that violate the rules could be fined as much as $1 million per day.

(中略)

Tomorrow, Facebook plans to assure US lawmakers that it won't launch Libra until the regulatory concerns are addressed. David Marcus, head of Facebook's digital wallet, released a prepared statement promising that Libra is not being built to compete with sovereign currencies or interfere with monetary policy.
(Christine Fisher. Lawmakers want to block tech giants from offering digital currency. Engadget. July 15, 2019.)


SNS大手のフェースブックがリブラという仮想通貨を導入しようとしていることについては国内でも報じられていますが、プライバシー保護やセキュリティ面での懸念から導入には待ったがかかっているという状態のようです。

昨今、仮想通貨をめぐっては、ハッカーによる攻撃で多額の仮想通貨が流出したり、マネーロンダリングに利用されているという報告が絶えないことから、同様の懸念が呈されるのも不思議ではありません。

米国では、フェースブックなどのネット巨大企業が好き勝手に(?)仮想通貨を立ち上げるのを阻止しようと法制化が提案されているそうです。

記事によれば、フェースブック社は上述したような懸念を受け止め、


it won't launch Libra until the regulatory concerns are addressed


ということなのですが、ここで動詞の"address"の意味するところに引っ掛かりを覚えます。

普段耳にしたり、目にしたりする"address"の用法にはざっと下記のようなものがあると思います。


その1)話しかける、意見を述べる
その2)(手紙などを)(人に)宛てる
その3)(問題などに)取り掛かる、取り組む、検討する


引用した記事で使われている"address"は恐らく(3)の意味でしょうか。

穿った見方かも知れませんが、この表現だとF社は規制当局から示されている懸念に対して、それらを検討したり、取り組んだりはするけれども、(根本的な)解決はしなくてもいい、ということになってしまうようにも思われます。(目的語が"concerns"であることにも注意。)

つまり、"address"は(問題へ)対応する姿勢は意味するけれども、達成についてはコミットしていない、ということになるように思われます。となると、記事で取り沙汰されている状況において、これは果たして望ましいことなのでしょうか!?

"address"と同語源の似た単語に、"redress"というものがありますが、"redress"には(不正などを)正す、直す、といった意味があります。("redress"が取る目的語は不均衡や不平等など、直接的な問題点です。)

いずれの単語も語源をたどると、古フランス語、ラテン語に遡るのですが、基本的な意味合いは、"straighten; set right"ということで、真っ直ぐにする、正しくする、ということなのです。

従って、"address"にも本来的な意味として是正という意味合いを見出したいところですが、残念ながらうまく言い抜けるというか、お茶を濁す類の表現になっている気がします。

F社のコメントが、"it won't launch Libra until the security issues are redressed"だったら、株が上がったことでしょう。

記事ではF社の責任者が米上院で証言するにあたって予め準備した書面(公開)へのリンクが示されています。

その書面中では以下のようなくだりとなっています。


Facebook will not offer the Libra digital currency until we have fully addressed regulatory concerns and received appropriate approvals.


これを読むと、F社が懸念事項に対し、”fully address”し、かつ当局の承認が得られるまでは仮想通貨の提供を行わない、とあり、”address”の意味するところは、(懸念事項への)対処、というのが適当と思われます。「対処」という単語もまた玉虫色の感がありますが、検討や取り組みと比べれば一歩進んでいると言えるでしょうか。


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