まずは下記の引用を読んでみましょう。
A court in Texas has postponed the execution of a female death row prisoner to give her lawyers time to argue that her death sentence should be commuted to life in prison on grounds that her original prosecution was riddled with racial bias.
(Ed Pilkington. Texas postpones execution of female death row prisoner. The Guardian. January 29, 2013.)
今日の引用は短いです(笑)
"commute"という動詞に注目します。ここでの意味は、刑を(軽いものに)交換する、減刑する、という意味ですが、"commute"にそのような意味があることをご存知でしたか?多くの方が、"commute"を主として“通勤する”の意味で暗記していないでしょうか?
告白すると、私は"commute"にそのような意味があることを知りませんでした・・・。(またしても、不勉強!)
"commute"と聞くと(あるいは、"commute"という単語を見ると)、“通勤する”、という意味が真っ先に思い浮かぶのは長時間通勤に日々耐える、しがない安月給サラリーマンの証拠でしょうか!?
ランダムハウス英和辞書を引きましたが、減刑するという意味は(他動詞として)何と1番最初に載っているではありませんか!
2番目には、交換する、取り替えるという意味が、続いて、(物を)変化させる、(支払いを)振り替える、などの意味が続きます。そして、自動詞のエントリとして、初めて“通勤(通学)する”という意味が出てきます。
そのスペルを見てみれば分かるようなものですが、"commute"という単語はラテン語のmutare(to change)から来ており、mutableやmutationという同語源の単語を見ても、交換や変化、という概念を持つ単語であることは明白です。
が、ここで疑問が湧きました。
では、"commute"の“通勤する”という意味は、どこから来たのでしょうか?交換や変化という概念にどう関係しているのでしょうか?
実は、"commute"という単語の“減刑する”の意味は“通勤する”という意味よりも古いもので1630年代からあるそうですが、“通勤する”の意味が見られるのは1889年からだということです。(Online Etymology Dictionaryによる。)
“通勤する”という意味の"commute"は実は"commutation"からの逆成であり、"commutation ticket"という単語が先に存在していました。
この"commutation ticket"は何かというと、通勤で利用する電車の切符のことであり、つまりはパス(通勤定期券)のことです。同一区間を一定期間往復する際に、毎回いちいち切符を買い求めるのではなく、事前に一括して(毎回購入するよりも安い金額を)支払う、という考え方です。
つまり、毎回支払うというやり方を一括して事前に支払うというやり方に“交換する”、ということであり、その意味で"commute"(commutation)なのです。
American Heritage Dictionaryで、"commute"を引くと、
To pay in gross, usually at a reduced rate, rather than in individual payments.
という定義があります。これはまさしく定期券の概念ではないでしょうか?
私は今日この事実を知るにあたって、語源というものは奥が深いものだなあとつくづく思いました。(勉強不足もさることながら・・・)
2013年1月30日水曜日
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