ウォッカというお酒は非常に高いアルコール度数で知られます。
昔、まだ大学生の頃ですが、酒飲みの先輩が下宿の飲み会にウォッカのボトルを持ち込み、着火するくらいアルコール度数が高いし、切り傷の消毒にもなる、とか言いながら後輩に飲ませようとしていたのを思い出します。
念の為に書いておきますと、着火するリスクがあるのは確かのようですが、消毒の効果は無いとされています。
引用する記事は真面目な話です。
American vodka company Tito's Vodka says it plans to use its distillery for something a little different: Hand sanitizer.
"While we advise that you cannot use our standard vodka product as a hand santizier, our team at the distillery has been working hard to get all of the pieces in place to begin production on a hand sanitizer that adheres to industry and governmental guidance," the company said in a statement.
(中略)
They're not the first company to switch gear.
Earlier this month, luxury goods conglomerate LVMH, the parent company of Christian Dior, Guerlain and Givenchy, said it would help French health authorities by manufacturing hand sanitizer and providing it to them for free.
(Melanie Schuman. American vodka company Tito's Vodka says it is working to produce hand sanitizer. CNN. March 23, 2020.)
先に書いたように、ウォッカのアルコール度数があまりに高いために、「アルコール消毒」の効果があると誤解されている向きもあるところ、COVID-19の感染拡大の影響で手指の消毒液(hand sanitizer)の不足が深刻な社会問題化する中で、米国のウォッカ製造メーカーが消毒液製造に名乗りを上げた、というものです。
これは決して受けを狙ったものということではなく、消費者のニーズに応えた動きです。
記事では、
They're not the first company to switch gear.
と表現されています。
ここで、"switch gear"という表現が使われているのですが、
(突然・劇的に、思いがけなく)態度[方針、方法]を変える
(ランダムハウス英和辞書)
という意味の成句です。
酒造メーカーが本業そっちのけで消毒薬の生産に乗り出すというのは、間違いなく大きな方針転換です。
ここで"gear"は機械のギア、歯車のことを指しています。動力伝動装置としての「ギア」であり、自転車やバイク、自動車などの変速装置である「ギア」のことです。
"switch gear"は、"shift ~"、"change ~"と表現することもあります。
ご存知のように、"gear"には道具や所持品、衣服といった意味もあります。
辞書によってこれらの意味の配列順は異なるのですが、意外にも"gear"については元々は武器という意味であり(13世紀)、そこから衣服(14世紀初期)や持ち物(14世紀後期)の意味に発展したそうです。歯車、つまり自動車等の「ギア」の意味は、さらに後のことで、初出が1520年代であるということです。(Online Etymology Dictionary)
何となく、”gear”の本来の意味は歯車のことだと思っていたところ、理解を改めるきっかけとなりました。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
蘭です。
返信削除多くの企業が物資不足の解消のために働いているのはありがたいです。しかし、感染拡大が収束をつけばこれらの製品はどうなるでしょう。LVが消毒液を無料で提供するのは最初から金儲けのためではありませんが、他の企業は過剰な在庫が詰まってしまうでしょう。中国では、マスクの品薄状態がほぼ解消され、マスク生産に進出した企業はその製品が海外を目指すかもしれませんが…かもしれないのではなく、すでに有料の提供または中国政府に購入され他国政府の支援に行ったでしょう。