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2024年6月28日金曜日

belly-flop

記事の引用からどうぞ。


Mayor Eric Adams declared Thursday that 50 public swimming pools are open for the summer, although city officials later clarified the sites will continue to face partial closures because of an ongoing lifeguard shortage — and there was a temporary shutdown hours later at the very pool where Hizzoner made his splashy announcement.

Whole sections of the newly renovated Astoria Pool were closed just hours after Adams left it, leaving a long line of people waiting outside.
(NYC pool season opens with belly-flop as lifeguard shortage prompts partial closures. New York Post. June 27, 2024.)


日本ではまだ梅雨明けしておりませんので少し先の話となりますが、ニューヨークではプール開きしたそうです。

アダムズ市長自ら市内にある50の公共プールのオープンを宣言したものの、数時間後に閉場、客の長い待ち行列が発生したとあります。

何が起こったのでしょうか?

プールの監視員が不足しているために、閉場を余儀なくされたもののようです。

記事のタイトル、また以下のくだりで、"belly-flop"という表現が使われています。


Closures at the city’s public pools have thrown a wet blanket over many New Yorkers’ plans in recent summers, in large part because of a lifeguard shortage. Since 2022, the city has been able to recruit far fewer than the roughly 1,000 lifeguards needed, officials have said.

The city’s efforts to hire enough lifeguards for this season belly-flopped, too, with officials Thursday quietly admitting public New York City pools will suffer rolling partial closures yet again thanks to fewer staffers.
(ibid.)


"belly-flop"というのは水泳の飛び込みで腹打ち飛び込みと言われるものです。

水泳の心得のある方にはすぐ分かると思いますが、飛び込みでスマートなのは伸ばした腕の先から脚の爪先まで、水面の1点を通るように水中に入るものです。水中に入ってからは飛び込みの推進力により、勢いを得て進みます。

これに対し腹打ち飛び込みというのは、体の前面、腹(belly)を水面に打ち付ける格好となり、推進力は削がれてしまいます。つまり、無様で不恰好なことになるのですが、そうしたことから、


a complete and often painful or embarrassing failure
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味合い、要するに失敗という意味で使われます。

内容がプール開きの話ということで、しゃれを意識したコトバの選択ですね。


2024年6月27日木曜日

jean

ジーンズと言えばリーバイス(Levi Strauss)というくらい有名なブランドです。

デニム人気の高まりもあって同社の売上げは伸びているそうですが、株価の方は下げているという記事が目に留まりました。


Denim is having a moment with consumers, but it hasn't led to a major sales boost at Levi Strauss. 

The jeans creator on Wednesday posted fiscal second-quarter revenue that fell just short of Wall Street's expectations at a time when shoppers are stocking their wardrobes with denim dresses, skirts and ultra low-rise baggy pants. 

Levi's posted better-than-expected earnings as its direct sales to consumers and cost cutting continue to bear fruit. The company raised its dividend by 8% to 13 cents per share, its first increase in six quarters.

Still, shares fell about 12% in extended trading.
(Gabrielle Fonrouge. Levi's shares drop 12% as jeans maker's sales disappoint despite denim craze. CNBC. June 26, 2024.)


以前、デニム(denim)という単語がフランスの地名から来ていることを取り上げました。その際、ジーンズ(jeans)も同じく地名から来ていると書き、そのままになっていましたが、本日ようやくその機会となりました。

では"jeans"はどこの地名から来ているのかというと、何とイタリアのジェノバなんですね。

辞書の語源欄にも載っているかた思いますが、"jeans"とは、


Gene fustian(ジェノバのファスティアン織)


という意味で、ジェノバを指す"Gene"が"jean"と変化したものなんですね。

ファスティアン織(fustian)というのは、イタリア各地で生産されていた丈夫な綿織物のことだそうですが、ジェノバ港からヨーロッパ各地に輸出されたそうです。


Jean as a cloth comes from the phrase jean fustian, a modern spelling from the mid-16th century of Gene fustian. Fustian is a type of twilled cotton cloth. Gene (or Genes) is a Middle French spelling of Genoa, the port city in northwestern Italy. Jean fustian, or just jean, was a particular fabric that was manufactured in and distributed from Genoa, Italy.
(Andy Hollandbeck. In a Word: Denim Jeans and Geography. The Saturday Evening Post. September 12, 2019.)


アメリカ発祥と言われるジーンズやデニムですが、その語源となった地名はアメリカからかけ離れたイタリアやフランスというのは興味深いところです。


2024年6月26日水曜日

spiv

先日も取り上げた話題ですが、イギリスでは政府与党関係者が総選挙日程の予想で賭けをしたことが明るみになり、スナク政権が揺れています。

内部事情に通じた関係者による賭博は犯罪になりますが、賭博に手を染めたとされる5人目の関係者が新たに明らかになり、スキャンダルが拡がっている状況です。

以下に引用する記事ですが、記事タイトルに、


spivocracy


という見慣れない表現が使われています。


The election betting scandal will have helped to focus this growing sense among many voters that the party of government has spent their time acting, in the words of former Conservative adviser and commentator Tim Montgomerie like “venal spivs”.

Yet the truth is that this ‘spivocracy’ is not down to a few bad apples, or even to the incompetence and weak leadership of one Prime Minister.
(Adam Bienkov. ‘Elections are a Chance to Make Money’: How the Conservative Spivocracy Cashed in. Byline Times. June 21, 2024.)


"spivocracy"というスペルから、恐らくはspiv-という単語と-cracy(統治、政治)という接尾辞によるかばん語だと想像がつきます。

"spiv"という単語を知らなかったのですが、記事を読むに、良い意味で使われていないことは明らかです。

辞書を引くと、イギリス英語とあります。


a man who lives by his wits without regular employment; SLACKER 
(Merriam-Webster Dictionary)


と定義されており、定職もなく(悪)知恵で生計を立てる人、であり、"slacker"とは、怠け者、兵役忌避者、の意味です。

つまりは、今回賭博疑惑で追及を受けている政治家や政府関係者のことを言っている訳で、内部情報を得て、有利な賭けに参じてひと儲けしようと企むようなゴロツキだという訳です。

英国民はこのような政治家、関係者らを見下げており、"spivocracy"とはそうした輩による政治を指しているのでしょう。

ところで、ランダムハウス英和辞書によりますと、"spiv"とは


very important persons


の逆頭文字という説明があります。

俗説だとの断りがありますが、政治家のようなお偉い方々を皮肉った表現とも言えます。

日本の国会議員や地方議員のセンセイ方も"spiv"と謗られないように働いて欲しいものです。


2024年6月25日火曜日

greedflation

インフレの影響が家計に重くのしかかる現実を痛感する今日この頃。

以前、"shrinkflation"というかばん語を取り上げたことがありますが、同じような表現で、


greedflation


というコトバが少し前から使われていると知りました。

説明の必要はないかも知れませんが、"greed"(貪欲)と"inflation"(インフレ)から成る単語です。

Collins Cobuild Dictionary(オンライン版)で、"greedflation"は以下のように定義されています。


Greedflation is an increase in the price of goods and services caused by businesses increasing their prices by more than their costs have risen.


簡単に言うと、コスト高を口実に実質以上の価格転嫁をしている、ということです。つまり、企業体質として貪欲さ(利益至上主義)がこうした事態を招いているという批判が込められています。

こういうことをするのはやはり大手企業であり、以下引用する記事ではとある大手ホールセーラーがやり玉にあがっています。


Recently, there’s been much chatter about “greedflation.” Previously dismissed as a fringe theory, the concept of major corporations exploiting inflation in an effort to make huge profits has become a hot-topic amongst economists, policymakers and analysts alike. Recent studies have shown that company profits for a great number of corporations increased at much faster rates than inflation-related price markups. According to a joint study from think tanks IPPR and Common Wealth, profits for companies across the U.S., the U.K., Europe, Brazil, and South Africa rose by 30% between 2019 and 2022, significantly surpassing inflation. In the U.S., a third of major corporations were found guilty of profiteering.

(中略)

Now, Costco Wholesale is the latest corporation being accused of rampant greedflation. A new analysis from Accountable.US, a nonpartisan watchdog group, revealed that Costco reported consistently high profits and net incomes year over year, all while the company raised store prices and considered increasing its membership fees.
(Joy Saha. Costco accused of “greedflation”: Wholesaler reports increase in earnings while hiking up prices. Salon. June 10, 2024.)


 物やサービスの値段がある程度上がるのは仕方ないとしても、それが妥当な値上げ幅なのか、ということですよね。


2024年6月24日月曜日

and couting

テスラCEOのイーロン・マスク氏は妻でニューラリンク社取締役のShivon Zilis氏との間に今年始め第3子が誕生したと公表しました。

マスク氏は前妻との間に3人、更にその前の妻との間には5人の子があり、稀に見る子沢山一家です。


Tesla CEO Elon Musk has confirmed that he welcomed his third child with Neuralink director Shivon Zilis earlier this year — making the tech mogul a father to at least 12 children.

Half of the $210-billion-man’s kids were born in the past five years.

His children include his three with Zillis, three with Canadian popstar Grimes and five with his ex-wife Justine Wilson.
(Isabel Keane. Elon Musk’s 12 kids and counting — What to know about the Tesla billionaire’s big brood. New York Post. June 23, 2024.)


記事のタイトルに、


Elon Musk’s 12 kids and counting


とあります。

ここで使われている"and counting"というのは、増え続けている、というような意味合いで、慣用表現のようになっています。

この言い回しは数字を表す表現に続けて用いられます。Collins Cobuild Dictionary of Idiomsでは以下のように解説されています。


If you say and counting after a number or an amount of something, you mean that the number or amount is continuing to increase.


マスク氏はかねてよりSNS等でも出生率低下は危機的状況であると嘆いていますが、本人としては少子化対策を地で行っているという事です。


2024年6月21日金曜日

coin flip

アメリカ大統領選を前に、民主、共和の各候補であるバイデン大統領とトランプ元大統領の初の直接対決となる討論会が来週6月27日に予定されています。

CNNの記事によれば、討論会における両候補者の位置取りやどちらが締め括りの発言をするかはコイントス(coin flip)で決めるのだそうです。


Former President Donald Trump will get the final word when he debates President Joe Biden on CNN next week, after a coin flip to determine podium placement and the order of closing statements.
(Eric Bradner. Trump gets the final word at CNN debate after coin flip. CNN. June 20, 2024.)


ご存知と思いますが、コイントスとは硬貨を放り投げて着地した際に、表が上か、裏が上か、を予測して、それを当てた方に選択権を与えるというものです。

今回、バイデン氏側がコイントスで「裏」と言い、その通りになったという事で、バイデン氏は視聴者向かって右側の位置取りを希望したということです。

この結果トランプ氏は左側になるということなのですが、代わりに締め括りの発言をする権利を得たということのようです。

さて、日本語では「コイントス」と言いますが、記事では、"coin flip"ですね。

もちろん、"coin toss(ing)"とも言います。

また、別の表現として、


heads or tails


ともいいます。

このコイントスで物事を決めるやり方というのは古代ローマからあるらしく、Lewis & Short Latin Dictionary(Oxford)によると、


capita aut navia


という遊びが若者の間で行われていたそうです。

ローマのコインは表にヤヌスの頭部(caput)のレリーフ、裏に船(navia)というデザインだったからだそうです。

以前取り上げた、"Heads we win, tails you lose."もご覧下さい。


2024年6月20日木曜日

flutter

英スナク首相の身辺警護を務める警察官が賭博で逮捕されたそうです。

何の賭博だったのかというと、イギリス総選挙の日程が対象だったとか。

欧米にはブックメーカーと呼ばれる賭屋が存在していて、競馬やスポーツの試合の勝敗などを賭けの対象にするのは知っていましたが、選挙日程が賭けの対象にされるとは知りませんでした。


The Guardian reported last week that the Gambling Commission had launched an inquiry after Williams, the prime minister’s parliamentary private secretary, placed a bet with the bookmaker Ladbrokes on Sunday 19 May in his local constituency of Montgomeryshire and Glyndŵr.

Williams said in a statement last week: “I put a flutter on the general election some weeks ago. This has resulted in some routine inquiries and I confirm I will fully cooperate with these.
(Sunak protection officer arrested over alleged bets on timing of election. The Guardian. June 19, 2024.)


英政府にはGambling Commissionなる監督官庁があるようなのですが、そこへタレコミがあって発覚したようです。

逮捕された警官のコメントに、


I put a flutter on the general election…


とあります。

賭けを意味する英語は"bet"というのがまず思い浮かびますが、ここで使われている"flutter"も賭けること、投機的な行為を意味する表現で、これは知りませんでした。

イギリス英語の俗語表現です。


2024年6月19日水曜日

slap on the wrist

朝食を摂りながらラジオのニュースを聞いていたら、飲酒運転のニュースが耳に入ってきました。

マティーニを一杯飲んだだけ、とかいう言い訳のくだりだけ耳に残ったんですが、その後いつものようにネットで海外ニュースを斜め読みしていましたら、米人気歌手ジャスティン・ティンバーレイクさんの件だったと分かった次第です。

個人的にはファンでも、特に知っている訳でもないのですが、有名人とあってか、国内メディアもこぞってこの件を報道しています。

深夜、一時停止を無視したところを警官に捕まったようです。


Justin Timberlake is likely to get a slap on the wrist if he’s convicted of drunk driving — but not because he’s a celebrity, a legal expert told The Post.

The “Can’t Stop the Feeling!” singer — who was arrested during a traffic stop on Sag Harbor, LI early Tuesday — would face up to a year in jail if he was found guilty of the DWI rap.

But his seasoned attorney, Eddie Burke Jr., will likely make a bid for a lesser charge of driving while ability impaired (DWAI), said Suffolk County criminal defense lawyer Michael Brown.
(Priscilla DeGregory. Justin Timberlake likely to get slap on the wrist if convicted on DWI charge – but not because of his fame: expert. New York Post. June 18, 2024.)


報道によれば、目は血走り、足はふらついていて、かなりの酩酊状態だったようです。また、アルコール検知テスト(breathalyzer)を拒否したとも。その後逮捕となった訳ですが、一夜明けて釈放、7月に公判が予定されているとのことです。

引用した記事で、


a slap on the wrist


という表現が出てきます。

辞書を引くと、


申し訳程度の罰、軽い叱責


とあります。

文字通りには、手首にピシャリ、ということですが、それが「軽罰」を意味するというのはどういう背景があるのかと気になるところ、特に何か由緒がある表現という訳ではなさそうです。

思い返してみると、幼い頃、「おいた」をした私を叱る祖母は手首を打つ仕草をしてみせた記憶があります。実際に叩かれて痛いかと言えば・・・?

飲酒運転は禁錮1年の可能性もあるのですが、恐らくはそれよりも軽い刑罰で放免、ということですが、それで危険な飲酒運転は撲滅できるのか。

有名人だからではない、とありますが、強力な弁護士がついているのでしょうね。


2024年6月18日火曜日

cheap fake

バイデン大統領が高齢であることを不安視する巷説は今に始まったことではありませんが、メディアが取り上げるのはやはりバイデン氏の歩き方が覚束ないとか、取り巻きに促されて何とか面目を保っているとか、そんな映像です。大統領選まで5ヶ月を切ったとあって、トランプ陣営もこの「ネタ」をことさら取り上げているようです。

ホワイトハウスは最近報道された2つのイベントでのバイデン氏の動画に対して異議申し立てをしました。

動画は大統領の高齢を不安視させるような意図的な編集がされたものだと批判し、


cheap fake


と断じています。


Press secretary Karine Jean-Pierre accused The Post of spreading “misinformation” about videos of the 81-year-old president at recent events with G7 world leaders and former President Barack Obama.

Those events included a Thursday video of Biden being corralled by Italian PM Georgia Meloni after a skydiving demonstration and former President Barack Obama escorting his former VP off the stage at a glitzy Hollywood fundraiser Saturday night.

Jean-Pierre called the clips “cheap fakes”, meaning to claim they were altered by humans through techniques such as zooming in and leaving out context — but also incorrectly called them “deepfakes,” referring to AI-created footage with altered subjects and audio.
(Steven Nelson. White House makes wrong claims while accusing Post of misreporting videos of Biden freezing up, wandering off. NewYork Post. June 17, 2024.)


ディープフェイク(deepfake)はここ数年でお馴染みの単語ではないかと思います。

ネット、ことにSNSではディープフェイクと思しき動画像で溢れています。

この"deepfake"に対して、"cheap fake"ということなんですが、"deep"が人工知能による深層学習という高等な技術を駆使した、一見素人にはフェイクであると見抜くことが難しいものであるのに対し、"cheap fake"とはその手法が「チープ」である、ということを意味するようです。

つまり、単純に動画像を編集したりすることで、ある種の印象操作をするもの、ということのようです。

実のところ、この"cheap fake"という表現は結構以前から使われているようです。

以下に引用するのは2019年のCBS Newsの記事です。


Generating a convincing, high-definition deepfake video is an expensive and technical process requiring custom AI code that runs on dedicated processing hardware. But the cost of consumer-grade graphical processing units (GPU) dropped rapidly in recent years, leading to the rise of "cheap fake" videos, the term cybersecurity experts use to describe low-quality videos like the Nancy Pelosi hoax clip.

"'Cheap fakes' are the new fake news," said a technology executive familiar with deepfakes, who asked not to be named because he works closely with social media firms. "They're apparently everywhere because AI technology became widely available to both businesses and consumers, and because the hardware is pretty cheap these days."
(Dan Patterson. From deepfake to "cheap fake," it's getting harder to tell what's true on your favorite apps and websites. CBS News. June 13, 2019.)


AIが誰にでも使えるようになった時代、かつては"deepfake"と見なされたものも、今となっては"cheap fake"のレッテルを貼られることになります。


2024年6月17日月曜日

it sucks

記事の引用からどうぞ。


Tensions remain high at a Queens park where a creep sexually assaulted a 13-year-old girl – and remains on the loose, the subject of a massive NYPD manhunt.

It sucks because I always come here,” Queens dad Will De Jesus said Sunday at Kissena Park, where the teenager was molested after she and a pal were forced into a secluded area by the suspect.

“I bring my daughter, my son,” said De Jesus, 52. “It sucks to hear things like that. Trust me, I got five girls so I know it sucks. To find out something happened to my daughter like that – woof.”
(NYC parkgoers on edge as creep who molested 13-year-old remains on loose. New York Post. June 16, 2024.)


ニューヨーク市内の公園で子どもの性犯罪被害が発生、容疑者がまだ捕まっていないということのようです。

公園を利用する関係者の当惑、子供を持つ親の心配は尽きるところがありません。

インタビューされた父親のコメントの中に、


it sucks


という表現が度々出て来ます。

これはアメリカ英語の俗語表現で、


不快だ


というような意味です。

ここでのitは性犯罪者がのさばっている状況を言っている訳ですが、口語表現としては話題となっていることや状況などを漠然と指して、それが発話者の意に沿わないものである(disagreeable)ことを意味します。

和訳としては色々なバリエーションがあり得るのですが、


最悪だ、最低だ、不愉快だ、がっかりだ、ひどい話だ


などあり得るでしょう。



2024年6月14日金曜日

moped

ニューヨーク市クイーンズ地区で"moped"を摘発、という記事に目が留まりました。

日本で最近話題(問題!?)になっている「モペッド」ですが、やはり海外でも・・・、と思ったところ・・・。


Nearly 100 illegal scooters were seized from Queens streets and sidewalks in the latest clampdown on menacing mopeds, authorities said Thursday.

A four-day blitz by Queens District Attorney’s Office detectives and NYPD cops hauled in 99 unregistered and uninsured scooters, prosecutors said.

All the illegal mopeds, plus another five legit scooters, were parked illegally across Corona, Elmhurst, Jackson Heights and beyond during the crackdown’s span starting June 4 and ending Tuesday, officials said.
(Matt Troutman. Nearly 100 illegal mopeds seized during four-day blitz in Queens amid NYC scourge. New York Post. June 13, 2024.)


記事をお読み頂くと、"scooters"ともあり、添えられている写真も日本で言う原付、スクーターそのものだったりします。一部には、日本で最近公道を飛ばして行くあの「モペッド」も含まれてはいるようです。

実のところ、英単語の"moped"というのは1950年代からある単語で、いわゆる原付スクーターも含む名称として使われているようです。小生の手元にある古い辞書にもちゃんと載っています。

興味深い事実として、"moped"の語源はスウェーデン語なんだそうです。スウェーデン語で、


trampcykel med motor och pedaler


と言う表現を約めたものが、"moped"であり、元の意味はペダル付き、エンジン付きサイクル、というものです。

日本では「モペット」などと誤記されている記事がよく見受けられますが、「モペッド」、つまり、「ペダル」(pedal)があるというのが特徴であるところ、冒頭の引用記事のように、広く原付バイクも含めて用いられてきたようです。


2024年6月13日木曜日

raze

ニューヨーク、マンハッタンにあるルイヴィトンの店舗がリニューアルするそうです。

小生には縁のない場所ではありますが。


Louis Vuitton’s Paris-based parent company, LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton — the biggest luxury goods company in the world, and parent company to 74 other brands, including Givenchy and Fendi — has filed permits to raze the 1 E. 57th St. store, according to Crain’s.
(Hannah Frishberg. Louis Vuitton’s Manhattan flagship to be demolished and rebuilt. New York Post. June 12, 2024.)


リニューアルにあたっては既存店舗を一旦取り壊し、全く新しいものに建て替えるようです。

引用した部分には、


raze


という表現が使われています。

この"raze"という単語を初めて見るように思いますが、"destroy"と同義で、破壊する、という意味です。

単に壊すというよりも、徹底的に破壊する、打ち壊す、というニュアンスのある動詞です。この記事のタイトルでは、"demolish"という動詞が使われていますね。建物を壊して更地にするイメージでしょうかね。

語源になっているラテン語radoは、削る、そり落とす、という意味があります。剃刀の"razor"も同語源です。

Merriam-Webster(オンライン)のコラムには、立てる、起こすという意味の"raise"と、破壊するという意味の"raze"の発音が同じところ、意味が正反対だというのは興味深い、という話が載っています。確かに。


2024年6月12日水曜日

googol

世界中の何十億という人が日々使っている検索エンジンと言えば、まずはグーグル(Google)の名前が上がるでしょう。

ところで今更ですが、グーグルはなぜ"Google"と言うのでしょうか?

答えは以下に。


Google might be one of the most popular search engines on earth, but many people are just discovering how it got its unusual name.

(中略)

However, as many astute users pointed out, the iconic blue, red, yellow and green letters are not an abbreviation but rather a play on the word “Googol.” For the uninitiated, that’s arithmetic lexicon for 10 raised to the power of 100 or 1 with 100 zeroes behind it — an almost inconceivably huge number.

Interestingly, this term was coined in 1920 by Milton Sirotta, the 9-year-old nephew of American mathematician Edward Kasner, who frequently referenced the figure in his 1940 book “Mathematics and the Imagination.”
(Ben Cost.Secret meaning behind ‘Google’s name leaves internet users shocked. New York Post. June 11, 2024.)


最近の英和辞典ならば、"Google"を英単語のエントリとして載せているかも知れませんね。確認した訳ではありませんが、社名、検索エンジンの固有名詞が、グーグル検索を行うという意味の動詞としても用いられるという説明と共に、語源についても解説があるのかも知れません。

小生の手元にある辞書は古いため当然ながら載っていないのですが、グーグルという名称は、引用した記事に解説されていますように、


googol


という単語から来ているんですね。

この"googol"というのは、10の100乗という、とてつもなく大きな数字を指す造語で、米国の数学者Edward Kasner(1878-1955)が作ったと、これは古い辞書にも載っています。

なお、正確にはこの数学者の9才の甥が"googol"というスペルを思いついたそうです。その心は?

このちょっと変わった、ナンセンスにも見えるスペルが、途方も無く大きい数字を表すのにピッタリだった、ということらしいです。

さて、"googol"が「グーグル」になった経緯については、どうなのでしょうか。

当時社名を検討していた創業メンバーらはインターネット上のドメインを取得するため、使われていない名前を探していたところ、この"googol"という、恐らくは誰も知らないような単語に目星を付けたということのようです。

ところが、その後、恐らくはドメイン登録を進めて行く中でスペルを間違えてしまい、"google"になったしまったということなのです。つまり、スペルミスから生じた社名ということです。


2024年6月11日火曜日

behind the eight ball

先日の1語でも取り上げた話題ですが、ニューヨークで日中のマンハッタン中心部へ乗り入れる自動車に15ドルの渋滞税を課す計画が白紙撤回されました。

15ドルを払わせられるところだった人達は計画破棄の発表に歓迎の声をあげたということですが、その逆に困った立場に置かれることになったのがニューヨーク市地下鉄を運行するMTA(Metro Transportation Agency)です。

渋滞税導入による効果で年間10億ドルの増収を見込んでいたからです。


Congestion pricing isn’t dead yet, according to the head of the transit agency.

Janno Lieber, the MTA’s chair and CEO, broke days of silence Monday on Gov. Kathy Hochul indefinitely pausing the controversial $15 toll program.

The MTA will be ready to forward with congestion pricing “if and when” the program gets the green light, Lieber said.

“We at the MTA aren’t giving up on congestion pricing, not at all,” he told reporters from MTA headquarters in lower Manhattan Monday afternoon.

But Lieber made clear that Hochul’s last-minute decision to stop Manhattan tolls — which would have raised $1 billion a year for the MTA — pulled the rug out on a host of major projects and service upgrades that transit officials had hoped to fund through congestion pricing.
(MTA vows it ‘isn’t giving up’ on hated congestion pricing plan after Hochul’s sudden about-face. New York Post. June 10, 2024.)


MTAとしては地下鉄の延伸計画などもあり、渋滞税導入による増収を当て込んでいた訳で、想定外の事態にMTAのCEOは沈黙を破って心情を吐露しています。以下、その発言の一部です。


“We’ve got a tall order and we’re behind the eight ball right now,” he said. “That’s why we’re taking these, frankly, very serious steps to carve up the capital program and make sure we don’t let the system fall into disrepair.”
(ibid.)


ここで使われている、


behind the eight ball


という表現をご存知でしょうか?

"eight ball"(エイトボール)というのはビリヤードのゲームのことです。

昔、大学生の頃ですが、ビリヤードで遊んでいたことがあります。小生らが遊ぶのはもっぱら1番から15番の番号が付いた球を順番に四隅のポケットに落としていくといいゲームで、エイトボールというのはやったことがありません。そのルールは番号順に球をポケットに沈めていくという点は同じようですが、8番の球は最後に沈めるということらしいです。

つまり、8番の球を他の球より先に沈めてしまうとアウトなのですが、先に沈めなければならない狙い球が8番の球の先にある状況(つまり、behind the eight ball)だと、8番の球を誤ってポケットに落としてしまうリスクがあります。

よって、"behind the eight ball"とは、


不利な、困った状況


という意味で用いられるようになったということです。

2024年6月10日月曜日

bariatric

肥満治療に関するニュース記事からの引用をどうぞ。


A Texas man is halfway to his 90-pound weight loss goal after undergoing a new bariatric surgery option that involves magnets.

“I’ve been able to do fantastic improvements in my quality of life, and so I’m very, very happy and fulfilled, and feel like I’ve turned back the time,” Kenneth Yerrid, 50, told the NBC affiliate in Dallas/Fort Worth last week.

(中略)

When diet and exercise failed to make an impact, Yerrid agreed to become the first person in Texas to make use of the Levita Magnetic Surgical System (MARS).

MARS won clearance from the Food and Drug Administration in August 2023 for abdominal procedures, including gall bladder removal and bariatric surgery. Cleveland Clinic used the technique shortly thereafter for a gastric sleeve procedure.
(Tracy Swartz. I lost 45 pounds in 3 months — thanks to a ‘game changer’ new technique. New York Post. June 9, 2024.)


アメリカの厚生当局に昨年認可された磁気を用いる外科手術により、20キロ以上の減量に成功したという内容です。

肥満治療の外科手術は、


bariatric surgery


と表現されています。

この"bariatric"という単語は多くの方には見慣れない単語だと思いますが、肥満治療法という意味の単語"bariatrics"があり、bar(o)-という接頭辞と、医師を意味するギリシャ語iatrosから成っています。

bar(o)-という接頭辞には重さ、圧力の意味があります。こう書くと多くの方がバロメーター(barometer)、つまり気圧計という単語を思い出すのではないでしょうか。

その通りで、"barometer"という単語も同じくbar(o)-という接頭辞から成っています。この接頭辞には圧力(pressure)の意味がありますが、その元となっているギリシャ語barusは重い(heavy)という意味なんですね。

この接頭辞は単語により、bari-などと変化しますが、例えば、


baritone


は、声楽で低音部の声域を指す用語ですが、やはり重いという意味によるものなんですね。

また、バリウム(barium)という元素がありますがこれも同じで、バライト(barites; 重晶石)から発見されたことから命名されたそうです。


2024年6月7日金曜日

with it

昨日6月6日は、D-dayから80周年を迎えた日でした。

以前(10年前)取り上げましたが、D-dayとは第二次世界大戦時、連合国軍がフランス、ノルマンディーへの上陸作戦を開始した日です。

80年という節目の年ということで、邦紙でも比較的大きく取り上げられています。

以下に引用するのは、アメリカの退役軍人がこの80年記念式典の参加途上、帰らぬ人となったというニュースです。


A World War II Navy veteran has died at the age of 102 while traveling to France to attend a D-Day 80th anniversary event.

Robert "Bob" Persichitti's death, which occurred on Friday, May 31, was confirmed by Honor Flight Rochester – an organization that honors America's Veterans for their sacrifices by flying them to Washington and hosting events.

Persichitti, a New York resident, fought to help put an end to World War II and witnessed the raising of the U.S. flag at Iwo Jima, Rich Stewart, president and CEO of Honor Flight Rochester, told Fox News Digital.

Stewart said Persichitti became ill last week while traveling on a ship that was en route to Normandy for the D-Day tribute. He was then brought to a hospital in Germany where he died peacefully, Stewart said.

Stewart said Persichitti was extremely active, in good health and "with it" until the very end. 

(Ashley J DiMella. 102-year-old WWII veteran from New York dies while traveling to France for D-Day anniversary. Fox News. June 6, 2024.)


亡くなったPersichittiさんは式典に参加するため船でノルマンディーに向かっていたそうですが、途中で体調に異変を来たし、ドイツの病院に搬送されたものの帰らぬ人となった、とあります。102歳でした。

Persichittiさんの人となりについて、記事では、


was extremely active, in good health and "with it" until the very end


とあります。

亡くなる直前まで活動的で健康そのもの、そして、"with it"、とあるのですが、この"with it"という表現を知りませんでした。

敢えて引用符で括ってありますので、特別な意味があるようですね。

英和辞書を引いてみると、


流行(時代)に通じている、モダンである


といった意味が載っています。

"it"という単語自体、既出のものを指す代名詞としての役割の他、何かを特定するのではなく、漠然と動詞の目的語として用いられることがありますが、"with it"の"it"もこれに近いように思われます。

記事によればPersichittiさんは退役軍人として国内外で精力的な活動に従事していたそうです。80年記念式典への参加もこうした活動の一環であった訳で、現地へ向かう途中で病気になることなど想像もしなかったのではないかと。つまり、退役軍人とは言え、現役という気概だったのだろうと思います。

ここでの"with it"を、「時代に通じている」と訳すのは無理ではないとは思いますが、「現役で」という方がしっくりくるように思いました。最後の最後まで「現役」。辞書には載っていませんけれども。

2024年6月6日木曜日

crow

ニューヨーク州ではマンハッタン中心部に乗り入れる自動車に対して渋滞税(congestion pricing)なる課金を計画し、法案まで可決していましたが、導入を無期限延期すると発表しました。

一律15ドルという課金は、慢性的な渋滞の緩和が期待されると共に、地下鉄等公共交通機関の利用増と増収も見込んだものでしたが、導入には否定的な意見が多く寄せられていました。

とりわけ不評だったのは仕事のために都心へクルマで出入りせざるを得ない立場にある人達、つまり会社員や店舗店員、運輸業務に携わるドライバーなどで、特にタクシーや運送業者に至っては渋滞税がサービスや商品の価格に上乗せとなり更なる物価高騰をもたらす可能性が指摘されていました。

治安の悪さからニューヨーク市地下鉄は敬遠されており、クルマの代替にはなり得ないということもあるようです。

要は誰も望んでいない施策だった訳ですが、結局6月30日のスタートを目前にして頓挫し、反対派からはそれ見たことか、という反応なのです。


Everyday New Yorkers bid good riddance to congestion pricing after Gov. Kathy Hochul’s shock announcement that she’ll indefinitely pause the detested toll program.

Rideshare app drivers, salesmen and other working-class New Yorkers crowed to The Post about the congestion pricing’s apparent downfall Wednesday.

“Hell yeah!” said Tony Robinson, a self-employed chauffeur, when told about Hochul’s move.
(Working-class New Yorkers cheer congestion pricing’s downfall after Hochul’s stunning reversal. New York Post. June 5, 2024.)


知事が導入を見送る決定したというニュースに、多くの人達が「歓声を上げた」(crowed)とあります。

ここで使われている"crow"という動詞が今日の1語です。

"crow"はカラスを意味する名詞ですが、動詞の意味に、


歓声を上げる、狂喜する、勝ち誇る
(ランダムハウス英和辞書)


という意味があるんですね。

スペルが同じだけに、このような動詞の意味にはカラスと何らかの関係があるのか?と思いますよね。

興味深いことに、カラスを意味する"crow"というのは擬声語で、カラスの鳴き声から来ているそうです。

そして歓喜するという動詞の"crow"も名詞の"crow"と同語源、つまりカラスと関係があるんです。

この動詞"crow"は元々カラスの鳴き声のような音をたてるという意味だったようですが、その後、雄鶏の鳴き声のような音を立てる、という意味にもなり、いつの間にかカラスの鳴き声ではなく、雄鶏の鳴き声の意味が優勢となり、カラスの鳴き声という意味は消えてしまったようなのです。(Online Etymology Dictionaryの解説による。)

そう言えば、"cockcrow"は、(〜crowとありますが)鶏の鳴き声の意味です。

つまり、これら"crow"は、カラスであって、カラスでない、というややこしい話です。

カラスの鳴き声を思い出してみますが、歓声や勝利の雄叫びといったイメージは無いですね・・・。屍肉を漁るカラスとの連想から生じたとの説明も見受けられますが、雄鶏の鳴き声の方がイメージとしては近いでしょうか。



2024年6月5日水曜日

subtweet

一昨日に続き、今日もまた人工知能(AI)の話題です。

AI企業草分けとも言えるOpenAIに勤務していた元社員らが、AI技術の安全性などについて懸念を表明するレターを一般公開したことが物議を醸しています。

元社員らは、AI関連企業の社員は革新的技術がもたらすリスクや負の側面について意見表明する機会が与えられていないなどとして、業界全体の変革が必要であると主張している模様です。

AI関連企業の「闇」を暴露、という感じでしょうか。


In the latest development of the OpenAI-is-a-disaster saga, a group of current and former OpenAI employees has gone public with concerns over the company's financial motivations and commitment to responsible AI. In a New York Times report published Tuesday, they described a culture of false promises around safety.

"The world isn't ready, and we aren't ready," Daniel Kokotajlo, a former OpenAI researcher, wrote in an email announcing his resignation, according to the Times report. "I'm concerned we are rushing forward regardless and rationalizing our actions."

Also on Tuesday, the whistleblowers, along with other AI insiders, published an open letter demanding change in the industry. The group calls for AI companies to commit to a culture of open criticism and to promise not to retaliate against those who come forward with concerns.

While the letter isn't specifically addressed to OpenAI, it's a pretty clear subtweet and another damaging development for a company that has taken more than enough hits in the last couple of weeks.
(Madeline Berg. It's all unraveling at OpenAI (again). Business Insider. June 4, 2024.)


OpenAI社はここのところ様々なゴタゴタに見舞われているそうですが、元社員によるオープンレターは同社を巡る混乱を改めて印象づけるものと見られているようです。

引用した部分の最後の方に、


While the letter isn't specifically addressed to OpenAI, it's a pretty clear subtweet and another damaging development for a company


とあります。ここで"subtweet"という表現が目に留まりました。

ツイート(tweet)というからにはSNSのツイッター(現在の呼称はX)にまつわる表現と思われるものの、その意味するところは実のところ知りませんでした。

調べてみると、"subtweet"というのは他人について、その相手を直接引用、またメンションすることなく、話題にするツイート(投稿)を指すのだそうです。

そして、この"subtweet"という単語がMerriam-Webster Dictionary(オンライン版)ではエントリになっているのを知って正直驚きました。

以下のように定義されています。


a usually mocking or critical tweet that alludes to another Twitter user without including a link to the user's account and often without directly mentioning the user's name


「メンション」というのは、これもSNS用語として定着している感がありますが、SNSの投稿で他人の名前(アカウント名)を引用することを指します。アットマーク(@)はそのメンションに際して使われますが、そうするとメンションされたユーザーは通知を受け取ることになり、自分が話題にされているということを知ることになる訳です。

"subtweet"とはこのようなメンションをしないやり方、つまりアットマークを使わずに他人について話題にするもので、つまり話題にされている本人には言及されたことが分からないことになります。このようなやり方は相手に対する陰口を叩いているようなことにもなるのですが、実際、"subtweet"はネガティヴな話題や批判的な言及をする際に用いられることが多いといいます。

オープンレターはOpenAI社を名指ししていないものの、同社の(杜撰な?)内部状況を想起させる内容であるが故に、"subtweet"とここで表現されているものだと考えることができるでしょう。

ちなみに"subtweet"のsub-とはサブリミナル(subliminal)のことだそうです。

サブリミナル効果という言葉を聞いたことがあるかと思います。サブリミナルとは識閾下と訳されますが、ある刺激にさらされる際にその刺激を意識することができる境界ギリギリのことを言う用語です。

つまり直接意識させることなく訴えかけるということであり、直接相手を言及しないけれども言及している相手を思い起こさせるという"subtweet"の効果を言っているものです。

2024年6月4日火曜日

sashay

今日の1語は、"sashay"です。

歩くという意味ですが、単に歩く(walk)というより、気取って歩く、目立つように歩く、という意味合いの表現です。

モデルがファッションショーで舞台や花道を颯爽と歩き回る、あの感じです。


Models sashayed down the runway in nothing but strategically placed duct tape this weekend during Miami Swim Week 2024.
(Adriana Diaz. Models strut down the runway in nothing but duct tape at Miami Swim Week. New York Post. June 3, 2024.)


たまたま別の記事も見つけたので、もうひとつ引用です。


The 2023 line-up of contestants also saw the first appearance of married women, Miss Guatemala Michelle Cohn and Miss Camila Avella. Miss Nepal Jane Dipika Garrett was the first plus-size contestant to sashay across the stage during the 72nd Miss Universe competition. 
(Alba Cuebas-Fantauzzi. Miss Universe co-owner says trans and married women ‘can compete’ under new guidelines ‘but they cannot win’. Fox News. June 2, 2024.)


この"sashay"という単語の語源が面白いので取り上げた訳ですが、フランス語chasséから来ていると辞書の語源欄にあります。

chassé(シャッセ)というのはバレエ、ダンスの用語で、左右の足を滑らせるようにして交代させる動きのことを指すようです。

この「シャッセ」が、「サシェイ」("sashay")という発音の単語になった訳ですが、音が前後入れ替わって生まれたようにも見えます。

言語学では音位転換とか、言い間違いにより生まれた単語など、興味深い現象がありますが、"sashay"については「変形」という解説があるのみで、それ以上の説明は見当たりません。

ちなみに、フランス語chasséは英単語"chase"と語源を同じくします。

2024年6月3日月曜日

treacherous

人工知能(AI)がホットな話題ですが、グーグルがこのほど発表したAI Overviewはある意味、新技術の限界を露呈させました。

AI Overviewは大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる技術に基づき、膨大なテキストを処理して自然な応答を生成することができるものですが、公開以降、プロンプトに入力された問い掛けに対して不適切な回答を生成する事例が指摘されています。


A week after its algorithms advised people to eat rocks and put glue on pizza, Google admitted Thursday that it needed to make adjustments to its bold new generative AI search feature. The episode highlights the risks of Google’s aggressive drive to commercialize generative AI—and also the treacherous and fundamental limitations of that technology.
(Google's AI Overviews Will Always Be Broken. That's How AI Works. Wired. May 31, 2024.)


記事によりますと、問題はウェブ上に存在する情報がそもそも不正確であることからくるものだそうです。ウェブ検索の進化版とも言えるこのサービスは結局のところ、インターネット上にある玉石混交の情報をベースにしたものであり、検証がなされた正確な情報も、SNS上の投稿などにおける断片的なコメントのような、真偽の程も分からないような情報も同等に扱ってしまうことが問題だということです。

そうなってくるとAIが生成する回答は信用できない、つまり、当てにならない、ということなのですが、記事では、


treacherous


という表現を使っています。

小生は高校の時、この"treacherous"という単語を、不誠実な、裏切りの、という日本語で暗記していました。他人を裏切るような、背反の心を持った人間、というイメージでしたが、人に限らず、モノや事柄についても、当てにならない、頼りにならない、という意味で使われることはポイントです。

"treacherous"は"treachery"という名詞から派生した形容詞ですが、これらの単語の語源は、詐欺師を意味するフランス語tricheurに遡るとの説明があります。古フランス語の動詞trichierは騙すという意味で、これは英単語の"trick"と同じなんですね。

"treacherous"という単語のスペルや意味合いがいまいちピンと来ないという人は、「トリック」(trick)という英単語を思い出すと良いでしょう。