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2024年12月27日金曜日

hippocampus

アルツハイマー病になりにくい職業というものがある、というネットの記事見出しに釣られました。

はっきりとした原因や有効な治療法が見つかっていないアルツハイマー病ですから、多くの人々の関心を集めています。


Taxi drivers could be less likely to develop Alzheimer’s disease because of how they memorise routes, research suggests.

Scientists suspect that regularly driving from memory may boost brain power as a new study shows taxi drivers and ambulance drivers are much less likely to develop the form of dementia as they age.

(中略)

Senior study author Professor Anupam Jena, a physician at Massachusetts General Hospital, said: "Our results highlight the possibility that neurological changes in the hippocampus or elsewhere among taxi and ambulance drivers may account for the lower rates of Alzheimer's disease.
(Martin Bagot. Ditch the Sat Navs as taxi drivers who memorised routes 'less likely to get Alzheimer’s'. The Mirror. December 16, 2024.)


アルツハイマー病になりにくい職業とは、タクシー運転手だそうです。

British Medical Journalに公表された研究報告によると、アルツハイマー病を原因とする死者数の統計を比較したところ、タクシー運転手を職業とするグループでは他の職業に比べて低い死亡率であったということです。

これは単に統計的な結果に過ぎず、職業とアルツハイマー病の発症に因果関係があることを示すものではありませんが、研究者によれば、タクシー運転手という職業に求められる能力が関係している可能性があるとの分析です。

その能力とは、数多くの目的地や複雑なルートを頭に入れて、ロンドンのような都会を運転するという、空間認知の能力です。(従って、カーナビに頼る現代の運転手は当たりません。)

記事では空間認識が行われる脳の特定の部位にフォーカスが当てられています。その部位の名は、海馬。英語では、


hippocampus


と言います。

hippo-とはウマ(馬)のこと、-campusはギリシャ語で海獣(sea monster)を意味するkamposから来ています。ギリシャ神話でネプチューンが乗る馬車を引く架空の動物とも言われ、前部は馬、後部が魚ということです。

ところで、解剖学の図に見る海馬は細長い明太子(!?)のような形状で、馬と魚が合体したモンスターのようには見えません。何故に「馬」なのかよく分からないのですが、Online Etymology Dictionaryの解説によれば、タツノオトシゴのことをHippocampus(Genus hippocampus; タツノオトシゴ属)と言いますが、そのタツノオトシゴと似ているからそう呼ばれるようになったとあり、言われてみればなるほど似ていなくもありません。

海馬はアルツハイマー患者において特徴的な病変が見られる部位であり、この部位をよく使うタクシー運転手とアルツハイマーとの関連が注目されているという訳です。


Study lead author Dr Vishal Patel, a resident physician at Brigham and Women's Hospital in Boston, Massachusetts, said: "The same part of the brain that's involved in creating cognitive spatial maps - which we use to navigate the world around us - is also involved in the development of Alzheimer's disease.
(ibid.)

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