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2024年5月31日金曜日

menarche

女性の月経開始年齢が早まっているという調査報告があるそうです。

米国医師会の雑誌JAMAで公表されました。


Younger generations are getting their first periods earlier, and the length of time it takes to become regular is changing — which could point to later health problems, according to a new study.

“Among individuals born between 1950 and 2005, we found that younger generations were starting their first period (menarche) earlier, and the time it took for their periods to become regular also increased,” said lead study author Dr. Zifan Wang, a postdoctoral research fellow at Harvard University’s T.H. Chan School of Public Health, in an email.

(中略)

“This is important because early menarche and irregular periods can signal physical and psychosocial problems later in life,” Wang said, “and these trends may contribute to the increase in adverse health outcomes and disparities in the US.”
(Madeline Holcombe. Kids are starting menstruation earlier, study shows. Here is what that means for their health. CNN. May 30, 2024.)


女性の身体のデリケートな話題ですが、女の子が初潮を迎え、それが安定的なサイクル、すなわち月経周期に入るのには少し時間がかかるそうです。それまでは不安定な周期の時期が続くということですが、それによりもたらされる身体面、心理面での負担は小さくないそうです。

ところで、月経開始、初潮(また、初経)のことを、


menarche


というのですが、これは知りませんでした。

"menarche"というスペルのmen-は、meno-、すなわち"moon"や"month"を意味するもので、


menstrual cycle
menopause


といった単語にも見られるものです。

-archという部分ですが、これはギリシャ語arkhein(to rule; to bigin)から来ており、始まりや端緒を意味する接頭辞や接尾辞として使われています。

首たる〜、第一の〜、といった意味の接頭辞archi-が、"architect"や"archenemy"といった単語に見られます。

"menarche"のスペルは一見フランス語っぽく見えますが、語源としては上記の通りで、-archeの部分はカタカナにすると、アーキ、のような発音になります。


2024年5月30日木曜日

lasso

不倫疑惑揉み消しに絡む一連の訴追でトランプ元大統領の裁判がニューヨークで行われていますが、最終弁論が行われた火曜日、俳優のロバート・デ・ニーロさんがマンハッタンの裁判所前でトランプ氏を批判する集会を開催しました。

デニーロさんはトランプ氏がニューヨークを、またアメリカを破壊しようとしていると批判を展開し、バイデン氏支持を訴えたということですが、現場はトランプ支持者らの猛抗議などで騒然としたということです。

USA Today紙のオピニオン記事から引用です。


In case you needed another example of how President Joe Biden is in full desperation mode, look no further than what happened Tuesday outside the Manhattan courtroom where jurors heard closing arguments in the hush money case against former President Donald Trump.

The Biden campaign held a bizarre news conference featuring none other than actor Robert De Niro, who railed against Trump and his purported existential threat to democracy.

I’ve always been a fan of De Niro’s movies, but I don’t care at all what he thinks about politics. 

I doubt many other Americans do, either. 

And it’s somewhat humorous that Biden, who voters already think is too old at 81, thought lassoing an 80-year-old Hollywood star would be a good idea.
(Ingrid Jacques. Hate to break it to you, Joe. Robert De Niro's Trump rant won't win Biden more fans. USA Today. May 29, 2024.)


小生は関連記事を最初に読んだ時、デニーロさんがひとりでトランプ氏の裁判が行われている裁判所前に赴き、演説を始めたのかと思いました。

どうやらそうではないようで、デニーロさんの登場はバイデン氏の選挙陣営が計画して実行したものだと分かります。

デニーロさんは民主党支持者として知られますが、バイデン陣営はこの有名俳優の支持者を選挙活動にいわば「担ぎ出した」のです。

引用部分の最後の方に、


lassoing an 80-year-old Hollywood star


というくだりがあります。

ここで使われている"lasso"という単語を初めて見ましたが、投げ縄という意味です。

カウボーイが馬や家畜を捕まえるのに使う、あの投げ縄、です。

ここでは動詞で使われており、投げ縄を投げるようにして捕まえる、という意味になりますが、捕まえられる方は捕まえる側に利用される訳で・・・。


このオピニオン記事に限らず、他紙の報道においてもバイデン陣営が今秋の大統領選を前に対トランプの攻勢に躍起になっているという見方は一定のものがあります。今回の件で言えば、有名俳優を担ぎ出さなければならない程に切羽詰まっているのではないかと。

デニーロさんは小生も好きな俳優です。日本でも著名人の中には政治的な旗幟を鮮明にする人とそうでない人に別れると思いますが、著名人の方の政治的な主張を聞くとある種の違和感を覚えずにはいられません。多分、政治家に担ぎ出されているという印象が勝ってしまうからだと思っています。



2024年5月29日水曜日

faggot

ローマ教皇フランシスコが発言の中で同性愛者を指す蔑称を使ったと報じられています。

その「蔑称」が何だったのか明示していないメディアもありますが、ロイターの記事によれば、それがイタリア語の"frociaggine"だったとあります。

英語では、"faggottness"に相当するとあります。


VATICAN CITY (Reuters) - Pope Francis used a highly derogatory term towards the LGBT community as he reiterated in a closed-door meeting with Italian bishops that gay people should not be allowed to become priests, Italian media reported on Monday.

La Repubblica and Corriere della Sera, Italy's largest circulation dailies, both quoted the pope as saying seminaries, or priesthood colleges, are already too full of "frociaggine", a vulgar Italian term roughly translating as "faggottness".
(Pope used vulgar Italian word to refer to LGBT people, Italian newspapers report. Reuters. May 28, 2024.)


英語で"faggot"(fagotというスペルもあります)は同性愛者、特に「男性のホモ」を指す俗語の意味が辞書にも載っています。

"faggot"というのは薪の束を指す単語で、辞書にもまず最初にその意味が載っています。その単語が同性愛者を意味する蔑称になった経緯はよく分からないものがあります。

"faggot"には老婆、不愉快な女、という意味もありますが、これがいつからか男性の同性愛者をも意味するように拡張したという説があるようです。

手元にあるOxford Dictionary of Euphemismでは、"faggot"を約めた"fag"は紙巻タバコ(cigarette)を指し、紙巻タバコを吸う男性はパイプや葉巻のスモーカーに比して柔弱、女々しいと見做される時代があった、と解説しています。柔弱で女々しい男性、これが男性の同性愛者の意味になったとしています。

また、"faggot"に薪の束という原義は、薪と火による火あぶりの刑罰という象徴的な意味にも発展しています。これは昔、異端者、異教徒が火あぶりに処されたことによるものです。同性愛者も公開処刑をされた歴史もあることから、"faggot"の同性愛者の意味はこの火あぶりと関係があるという説もあるそうですが、都市伝説の域を出ないそうです。いずれにしても、現代ではとても考えられないことではあります。

最後に、"faggot"と聞くと私は楽器のファゴットを思い浮かべます。語源は同じようですが、楽器のファゴットとはイタリア語faggottoであり、英語名称はバスーン(bassoon)です。


2024年5月28日火曜日

hung jury

ポルノ女優との不倫揉み消し疑惑で訴追されているトランプ元大統領に対する裁判がニューヨークで行われていますが、審理は最終局面にあり、火曜日に最終弁論の後、陪審員による審議に入るとのことです。

米史上初となる大統領経験者への裁判の判決がどうなるのか、注目されていることは言うまでもありません。

今回、トランプ氏は34の罪状で起訴されていますが、陪審による評決のシナリオには4つの可能性があるそうです。

有罪、無罪の2つはすぐに思い浮かべるところです。

3つ目は34の罪状のうち、一部有罪、一部無罪、というものです。

そして4つ目ですが、


hung jury


と呼ばれる可能性だそうです。


NEW YORK — The first prosecution of a former president is nearing the end.

The 12 New Yorkers who will soon weigh the evidence in Donald Trump’s Manhattan criminal trial could reach three different verdicts. All would require a unanimous decision.

If they can’t agree, there’s a fourth possible outcome: a hung jury. Plus, there’s another result that, while extremely unlikely at this point, could end the case without the jury’s input at all.

(Erica Orden. It’s not just guilty or not guilty. Here are all the possible outcomes of the Trump trial. Politico. May 27, 2024.)


この"hung jury"という言葉を初めて聞きましたが、日本語では評決不能陪審、不一致陪審といった日本語訳が当てられています。別名"deadlock jury"ともいうようです。

アメリカの裁判では12人の陪審員が判決を評議しますが、最終決定は全員一致が原則で、1人でも異なる意見があると、それは"hung jury"ということで、裁判不成立となってしまうのだそうです。

裁判長は"hung jury"に対して改めて意見の一致を見出すよう差し戻すこともあるそうですが、陪審員の少数派に働きかけることは陪審制度を歪める恐れもあることから、陪審の決定は尊重されるべきものです。


If even a single juror cannot come to the same conclusion as the 11 others, Trump will get a hung jury.
(ibid.)
 

トランプ氏の脳裏にはこの"hung jury"が想定にあるのでしょうか。

2024年5月27日月曜日

whirl

"whirl"という単語は渦を巻くこと、旋回運動や回転を意味しますが、アメリカ英語の口語表現では、


試み、試行、ちょっと試してみること


という意味があります。

"attempt"や"try"とほぼ同義ということになりますので、


give it a whirl


というようなフレーズでよく用いられます。

用例をどうぞ。


A UK tourist sustained third-degree burns across his face after biting into an exotic fruit in Mexico.

(中略)

The Bedforshire-based construction worker had been strolling through a local market, when he came upon a stand selling cashew apples, the fruits that encase the namesake nut.

Watson, who frequently shares photos of his experiences abroad on Instagram, had heard you could eat the fruit and decided to give it a whirl.
(Ben Cost. I got third-degree burns on my face after eating a fruit. New York Post. May 26, 2024.)




 

2024年5月24日金曜日

loophole

日本語で「法の抜け穴」という言葉がありますね。

規制や法律による罰則や制限などを回避する方法とか手段という意味ですが、金持ちや政治家など、社会的な地位や特権のある人が自らの利益になるように用いる狡賢いやり方、というイメージがあります。

英語では(ご存知の方も多いでしょうが)、


loophole


と言います。

ところで、何故"loophole"と言うのでしょうか?

知ってるつもりが、急に気になってしまったような次第です。

"loophole"と聞いて私が思い浮かべるイメージは紐で作った輪っかなのですが、それが規制や法の抜け穴という意味になるというのもよく分からない話だと思いました。

で、"loophole"を辞書で引くと、元の意味は城や要塞の壁に作られる銃眼と呼ばれる構造のことなんですね。この銃眼から鉄砲や弓矢を放つのですが、銃眼から狙う側からは敵がちゃんと見える一方、敵は銃眼の背後にいる相手はよく見えず、また攻撃もしにくいというものです。(ここ、大事です。)

「穴」というよりも「隙間」に近いと思うのですが、いずれにしろその穴や隙間から出入りする(抜ける)というのは難しく思われます。

何が言いたいかといいますと、「抜け穴」という日本語や"loop"(輪っか)とはちょっと違うようだということです。

もちろん、"loop"には輪っかの意味がありますが、"loophole"の"loop"は換気のための小窓という意味の別の単語で、語源を辿るとオランダ語lupen(to watch, peer)に行き着くそうです。

つまり、"loophole"とはその隙間、小穴からこっそり抜け出るものではなく、覗いたり、観察したりするものだと考えるのが(語源的には)妥当のようです。

そして、それが「法の抜け穴」のような意味になるのは、上述したように、城壁の内側から"loophole"を覗いて敵を攻撃する兵隊のような立場、つまり敵よりもアドバンテージを取ることができるシチュエーション、という意味合いからだろうと思われます。

つまり、"loophole"とは穴にあらず、こっそりと覗くという行為にある、ということです。

参考にしたウェブ上のリファレンスは以下の2つです。


The Vocabularist: Loopholes were just for looking through. BBC News. March 22, 2016.



最後になりましたが、今日の1語のきっかけになったニュース記事です。


Trying to spot the drug mules on your flight? Start with the flight crew, experts say.

The shocking warning comes weeks after four flight attendants were busted at JFK for brazenly moving $8 million in narcotics between the US and the Dominican Republic over a period of 10 years.

Now, those in the know are flagging one huge loophole that airline employees have been able to exploit, in order to move a dizzying amount of drugs right under the nose of security officials.
(Alex Mitchell. Flight crew are exploiting a major airport security loophole to smuggle drugs, experts warn. New York Post. May 23, 2024.)


引用した記事は、麻薬密輸に航空会社のフライトアテンダントが関わっているというものです。

フライトアテンダントに対するセキュリティチェックは一般の旅行客に対するそれよりも緩和されることが多く、そこに目を付けて密輸に手を染めるということです。一般人には知る由もない、銃眼の背後にいる関係者だけが知っている"loophole"・・・ですね。


2024年5月23日木曜日

locked and loaded

バイデン大統領はトランプ氏の暗殺を目論んでいた・・・。何ともおっかない話が飛び出してきました。

機密文書問題でトランプ氏のMar-a-Lagoにある別荘に家宅捜索が入ったのは2022年のことです。その際の文書が公開されたそうですが、メモによればFBIの捜査員には凶器(deadly forceと表現されています)の使用も許可されていた、というのです。

トランプ陣営はこれを取り上げて、バイデン氏がFBIに指示してトランプ氏の命を狙った、とこじつけにも近いクレームを表明している模様です。


The FBI has issued a rare statement after former President Donald Trump and several GOP lawmakers spread false claims suggesting President Joe Biden authorized his assassination during the search of his Mar-a-Lago resort in 2022.

In a fundraising email responding to right-wing media reports that offered a distorted reading of a newly-unsealed court filing in Trump's classified documents case, Trump falsely claimed Biden was "locked & loaded ready to take me out."
(Alexander Mallin. Trump falsely claims Biden, FBI had plan to assassinate him during Mar-a-Lago search. ABC News. May 22, 2024.)


記事では、トランプ氏がSNSに投稿した内容を引用しており、


Biden was "locked & loaded ready to take me out."


とあります。

ここで使われている、


locked and loaded


というのは慣用表現であり、充分に、入念に準備をして、というような意味です。

"lock"も"load"も、銃やライフルに弾を装填して発射可能にするための準備のステップを指しています。

以前取り上げた、"lock, stock, and barrel"もご覧下さい。

2024年5月22日水曜日

Reich

今年行われる大統領選で返り咲きを狙うトランプ元大統領の陣営がSNSに投稿したキャンペーン動画が物議を醸しているということです。

問題の動画は既に削除されたということですが、トランプ氏が大統領に選出されたあかつきには米国内の産業を再興させることを主張するような内容だったそうです。問題は、動画に出て来た、


Reich


という単語だといいます。


Donald Trump’s social media account on Monday shared a video referencing a “unified reich” in a post about how the country will change if he becomes president again.

His campaign said a staffer did not see the word “reich” before it was posted — an explanation President Joe Biden’s team blasted on Monday night.

In the video shared on Trump’s Truth Social account, while a narrator described “What happens after Donald Trump wins,” the screen twice flashed to a headline showing the words “Industrial strength significantly increased … driven by the creation of a unified reich.”

The German phrase “reich” refers to an empire, but also carries the connotation of Adolf Hitler’s “Third Reich,” another name for his Nazi regime.
(Natalie Allison. Trump’s social media account shares video referencing ‘unified reich’. Politico. May 20, 2024.)


"Reich"という単語はドイツ語で、帝国という意味です。

この言葉は、ヒトラーがナチ政権をDrittes Reich(the Third Reich; 第三帝国)と呼んだことから、ファシズムを強く想起させるものがあります。

問題の動画は、もしトランプ氏が再選されたら・・・、というようなイントロで始まるのですが、背景に第一次大戦時の新聞を模したようなイメージが使われ、その中に、


Industrial strength significantly increased … driven by the creation of a unified reich.


という見出しが見えるというものです。

文字は薄く、かすれたようになっており、言われないと気付かないようにも思われるくらいですが、バイデン陣営は(目敏くも!?)この単語を取り上げて、トランプはヒトラーの言葉を使い、独裁政権を築こうとしていると批判を展開しました。

ドイツ語の名詞は大文字で始まりますので、英和辞書のエントリも"Reich"となっているものがほとんどですが、引用記事中の記載は小文字になっていますね。

一方、発音についてはドイツ語の発音「ライヒ」に併記する形で、英語発音「ライク」としており、CNNなどの映像でも「ライク」と発音しています。


2024年5月21日火曜日

tabby

記事の引用からどうぞ。


Vermont State University Castleton's 2024 graduating class had the honor of sharing their commencement celebrations over the weekend with none other than Max, a tabby cat who has become something of a local celebrity during his time at the university.

(中略)

"With a resounding purr of approval from the faculty, the Board of Trustees of the Vermont State Cat-leges has bestowed upon Max Dow the prestigious title of Doctor of Litter-ature, complete with all the catnip perks, scratching post privileges, and litter box responsibilities that come with it," the university said.
(Mary Walrath-Holdridge. Max the cat receives honorary doctorate in 'litter-ature’ from Vermont university. USA Today. May 20, 2024.)


アメリカのVermont Universityがネコに学位を授与というニュースです。

飼い猫のMaxは大学のキャンパスに出入りしているうちに学生らの人気者になり、果ては学長室にも出入りするようになったということですが!?

ネコのことを英語で"tabby"と表現することがあるのは知っていました。が、その語源について調べたことは無かったので辞書を引いた次第です。

辞書の語源解説によれば、"tabby"の語源を辿ると、元は絹の平織を指す言葉に行き着くということです。

その平織りというのはattabiと呼ばれていたもので、Al-Attabiyaという、トルコはバグダッド近郊の土地でこの平織りが生産されていたことに因むものです。要は地名ということになります。

このattabiをアメリカ人は約めて"tabby"というスペルの単語にした訳ですが、語形変化としては頭音消失のパターンとも言えるかと思います。

なぜ平織りがネコを指すようになったのでしょうか?

attabiという平織りは波紋のある絹生地で縞模様が特徴だそうです。ネコの毛並みは色々ですが、attabiの縞模様に似ているのを"tabby"と呼んだのが始まりだったということです。

その後、"tabby"は縞模様に関わらずネコ全般を指す呼称になりました。

"tabby"には意地悪な女、オールドミス、という意味もあるのですが、こちらは女性名Tabithaの愛称から来ているそうです。


2024年5月20日月曜日

fricking

先週金曜日、ミネソタ州で演説したトランプ元大統領がステージ上でよろめくというハプニングがあったそうです。

バイデン陣営は早速このハプニングについてSNSに投稿、トランプ氏を揶揄しました。


The Biden campaign gleefully turned one of Donald Trump’s favorite digs against him on Saturday, branding the 78-year-old candidate as woefully geriatric in response to his embarrassing stumble at a Minnesota rally on Friday.

Video from the event shared by Biden-Harris HQ on X showed Trump grabbing the lectern during his remarks on stage, after nearly toppling the podium over.

(中略)

“You know this is the worst platform, who put this stage up?” he ad-libbed, cutting into his own remarks. “The fricking place is falling down.”

“I notice it keeps tilting to the left,” Trump joked, “Like too many other things!”
(Amanda Yen. Biden Camp Has a Field Day With Wobbly Trump at Podium. The Daily Beast. May 19, 2024.)


ビデオ映像を見ると、ステージ上演台にトランプ氏がやや前のめりになって体重がかかったと思われたところ、演台が傾きそのまま倒れてしまうかという様子でした。

トランプ氏はすぐに体勢を立て直したため、倒れてしまうことはありませんでしたが、少し焦った様子。即座に、一体誰がステージのセッティングをやったんだ?と非難のコメントをして会場を沸かせました。

引用されている発言中、


The fricking place is falling down.


というくだりがあります。

この"fricking"という単語を知らなかったので辞書を引いたのです。

動詞から派生した修飾語かと思いきや、特に意味がある訳ではなく、強意表現だということでした。

辞書の説明では、"fucking"や"damn"と同じような使い方をされる表現だとあります。また、"fucking"という言葉の婉曲表現(euphemism)であるとの解説も見られます。

"fricking"というスペルはどこから来ているかというと、"frigging"が変化したものらしいのですが、"frig"とは性行為や自慰行為を指す卑猥語です。

"fucking"というよりも"fricking"という方がどれくらい上品なのかはよく分かりませんね。




2024年5月17日金曜日

hedonic

我々人間は何故食べ過ぎてしまうのか?

原因はいわゆる、ながら食べ、にあるという研究があるようです。


Getting distracted during a meal may leave you feeling dissatisfied — you might make up for it by eating more food later, a study published Thursday in the Journal of Personality and Social Psychology finds.

“Overconsumption often results due to a lack of self-control,” said lead study author Stephen Lee Murphy, of Ghent University in Belgium. “However, our findings suggest overconsumption may also often be driven by the simple human desire to reach a certain level of enjoyment from an activity. When distraction gets in the way, it’s likely we may try to compensate by consuming more.”
(Tracy Swartz. Simple reason why you’re overeating revealed in new study. New York Post. May 16, 2024.)


最近の研究で、人は食べるという行為中、食事以外の事に注意が逸らされることが原因で食事の満足度が低下し、より多くの量を食べる傾向がある、ということが分かったそうです。つまり、食べ過ぎてしまうのは食べることに集中できていないからだという訳です。

この研究では実験の参加者に食事をしてもらう際、ただ食事をするグループと、ビデオを見ながら食事するグループ、ゲームをしながら食事をするグループに分け、食事自体の満足度と最終的な食事量を比較したところ、「ながら食べ」のグループで満足度が低下、食べる量が増えるという傾向が見られたそうです。

研究者らはこのような現象を、


hedonic compensation 


と名付けています。


Participants who ate while distracted reported less enjoyment and satisfaction, an elevated desire for further gratification and increased snacking afterward.

Researchers call this phenomenon “hedonic compensation” — making up for the loss of pleasure by seeking extra gratification elsewhere.
(ibid.)


"hedonic compensation"の"hedonic"というのは、快楽の、という意味で、"pleasure"を意味するギリシャ語hedonから来ています。

快楽に身を委ねる時にはその行為に集中しないと結果的には行為自体の満足度が低下し、その穴埋めをする如く、快楽を与えてくれる行為にさらにのめり込む傾向がある、ということでしょうか。

行われた実験は食事についてでしたが、"hedonic compensation"は食事以外の快楽の行為にも同様に見られるいうことです。

そう言えば、思い当たる節はあります・・・。

"hedonic overconsumption"と呼ばれることもあるようです。

2024年5月16日木曜日

nuts and bolts

人工知能(AI)は今年最も話題のテクノロジーではないでしょうか。

巷ではAIが生成したコンテンツがもはや人間のそれと見分けがつかないくらい精巧であると話題になり、ディープフェイクに至っては最早何を信用して良いのやら。

AIにより人間がやる仕事が奪われるとの話しがありますが、小生の勤務先においても業務におけるAI利用の議論が喧しいところです。

新しい技術というのは何であれそうですが、恩恵をもたらすと同時に、必ず負の側面というものがついて回ります。AIは特にその懸念が強いというのは誰もが認めるところでしょう。

AIにより人間の仕事が奪われるのではないかという心配、著作権や知的財産を巡る問題、等々、AIの適正な利用、活用には多くの課題があります。

以下に引用する記事は米国における議論の一端を取り上げたものですが、やはり懸念に対する議論は後追いになっているという印象を与えます。


A bipartisan group of senators unveiled their game plan Wednesday for addressing the challenges posed by the rise of artificial intelligence — but left the nuts and bolts of regulating the technology for later.

The group of four, led by Senate Majority Leader Chuck Schumer (D-NY), called for $32 billion in annual spending by 2026 to “cement America’s dominance in AI,” but mostly deferred plans for specific rules of the road.
(Ryan King. Schumer-led senators call for $32B yearly spending to ‘cement America’s dominance in AI’, largely punt on regulation. New York Post. May 15, 2024.)


引用部分に、


left the nuts and bolts of regulating the technology for later


というくだりがありますが、"nuts and bolts"という表現が目に留まりました。

ナットにボルト、ということですが、機械弄りがお好きな方にはお分かりのように、ナット、ボルトは部品同士を結合したり、固定するための連結の役割を果たす部品です。

AIがもたらす利点を享受しながらリスクをコントロールするというコンテクストにおける"nuts and bolts"ですから、ナットとボルトという言葉はメタファーとして用いられていると解釈できるでしょう。

この"nuts and bolts"というフレーズは、


(物事の)基本、根本、土台;実地の運営、実際
(研究社新英和大辞典)


という意味があります。


2024年5月15日水曜日

grow a spine

今日の1語ですが、


grow a spine


という、ちょっと聞き慣れない表現を取り上げます。

では、ニュース記事の引用をお読み下さい。


The president of Northwestern University near Chicago threatened anti-Israel agitators with "disciplinary action," which critics say came after the school was hit with a U.S. House committee's investigation into antisemitism on campus.

(中略)

Liora Rez, the founder and executive director of StopAntisemitism, told Fox News Digital that Schill's statement against the protesters was long overdue.

(中略)

Rez argued that Schill only "grew a spine" due to the House Committee on Education and the Workforce launching an investigation into the university's response to antisemitism on campus.
(Sarah Rumpf-Whitten. Northwestern University president 'grew a spine' after hit with House committee investigation: watchdog group. Fox News. May 14, 2024.)


記事中、"grow a spine"というフレーズの主語になっているのは、Northwestern大学の学長Schill氏です。

イスラエルとハマスの戦争を契機として、全米の大学でイスラエルを非難するデモ活動が活発化し、一部では暴徒化していることについては先日も取り上げました。

今回引用の記事で話題になっているのは、Northwestern大学の学長がこうした暴徒化したデモ活動に関わっている学生を処分すると明言したというところにあります。

ある意味、強硬手段とも言え、言論の自由は認めても暴力行為や破壊活動は許さない、という態度を鮮明にしたということであり、これが"grow a spine"と表現されています。

この学長は反イスラエルを主張する学生寄りの態度が疑問視されていたようですが、大学を舞台にした反ユダヤ主義活動が社会問題化する中で態度を変えたもののようです。日本語で「弱腰」とか「腰がひけている」という表現がありますが、これに相対するのが"grow a spine"の意味するところとも言えます。

このフレーズですが、手元にある英和辞書を始め、いつも参考にするAmerican HeritageやMerriam-Webster等も見ましたが説明は見当たりません。

"spine"とは背骨、脊椎のことですが、気骨、気概という意味があり、"grow a spine"というフレーズは人がその気概を示す、勇気を出して事にあたる、といった意味で用いられるようです。

なぜ辞書で取り上げられないのか不思議に思いますが、コーパスを検索すると多くの実例がヒットし、定着した表現のようです。


Believe me, the reality gap between campaign pledges and reality matters to a lot of us. The president and the Democratic Party need to grow a spine, or they can expect future losses.
(San Francisco Chronicle, 2010)


背骨を指す"spine"は"backbone"とも言いますが、故に、


grow a backbone


というフレーズもあり、"grow a spine"と同じように用いられ、これまた定着しているようです。

2024年5月14日火曜日

priced out

インフレの話題は当ブログでも度々取り上げてきたところです。とりわけ、アメリカのレストランでの食事費用が円安もあって悲痛を極めるレベルだというのは昨年の旅行での経験もお伝えして来ました。

が、ここへきてマクドナルドが安いセットメニューを復活させるらしいという噂が。

日本でもかつて展開されていた「バリューセット」を思い出しますが、ハンバーガーとドリンク、フレンチフライで一律5ドルというセットメニューを全米で展開する予定だそうです。


The reasons: McDonald's had lower than expected earnings recently, apparently because of priced-out diners. Plus, we've all seen those viral inflation stories about things like the $18 Big Mac for sale at a McDonald's in Connecticut earlier this year.
(Bill Murphy Jr. After 33 Years, McDonald's Just Revealed a Bittersweet Choice. There's Just 1 Little Problem. Inc. May 13, 2024.)


目的は顧客離れを食い止めたいというところにあるようです。

記事で、


priced-out diners


という表現が使われていますね。

"price"という動詞には価格を設定するという意味がありますが、それにoutという副詞がついて、価格を高く設定することで需要を抑える、という意味があります。

ここでは"diners"を修飾する表現になっているのがポイントで、高価格のために購買意欲が削がれた、という意味になります。

高くて手が出ない、ということですね。

この"priced-out"という言い回しですが、"price out of market"という表現からきているそうです。

その"price out of market"というのは主に不動産業界で使われるものらしく、住宅地や賃貸物件などが高過ぎて支とても手が届かないというような状況を言ったもので、主語には人がきます。


A plan to bring commuter rail from the heart of Silicon Valley into Salinas could make the new homes a cheaper alternative for tech workers priced out of neighborhoods closer to work. 
(Washington Post, 2018)


不動産は一生に一度の買い物と言われるくらいですから買えない、手が出ない、というのは当然あることでしょう。

マクドナルドのハンバーガーを食べるのに"priced out"とは大袈裟な感じもしますが、このところのインフレは日用品に至るまでほとんど全てに"priced out"の感があるというのもまた事実かと・・・。

2024年5月13日月曜日

northern lights

太陽の表面が活発に爆発を起こし、太陽フレアと呼ばれる現象が発生していると11日の朝刊で読みました。

太陽フレアは5月8日から連日発生しているらしく、これによる磁気嵐が電波障害を引き起こすことで大規模な通信障害が懸念されるとあります。

ところで、この太陽フレアのおかげで、オーロラが北海道などで観測されたとも報道されています。通常はオーロラが観測されない東北地方や能登半島などでも観測されたといい、天文ファンのみならず、多くの人が通常では目にすることの出来ない天文現象に魅了されたようです。

オーロラの観測は世界各地でも同様だったらしく、アメリカでもアラバマ州などの低緯度地域で観測されたと報じられています。


Millions of people in the U.S. as far south as Alabama could be in for another dazzling display of the Northern Lights on Sunday night as Earth continues to be blasted by a historic geomagnetic storm that hasn’t been experienced in decades.

The sky was filled with vibrant colors of green, pink and purple from the Northern Lights as far south as Florida and Texas on Friday night after a massive sunspot the width of 17 Earths spewed solar flares, leading to geomagnetic storm activity reaching Level 5 "extreme" conditions.
(Steven Yablonski. Another 'severe and extreme' geomagnetic storm Sunday could bring Northern Lights as far south as Alabama. FOX Weather. May 12, 2024.)


さて、記事では、


Northern Lights


と出てきますが、これがオーロラのことです。英和辞書で"Northern Lights"を引いてみると、


aurora borealis


と載っているかと思います。

実のところ、"aurora"はラテン語です。

「オーロラ」はローマ神話に出てくる曙の女神で、ラテン語auroraは曙光、曙(あけぼの)を意味する言葉です。

そして、aurora borealisとは北のオーロラ(borealisはラテン語で北の、という意味)を言います。

通常オーロラ現象は極地でしか見られないものですので、記事では"Northern Lights"ですが、別名"polar lights"とも言います。

ちなみに南極に近い地域で見られるオーロラは、ラテン語でaurora australis(australisは南の、という意味)と言います。英語は"Southern Lights"となります。

ローマ神話に出てくるAuroraについて、手元にあるThomas BulfinchのAge of Fableを久しぶりに開きました。神話の中でオーロラは美男子Cephalusに恋をしましたがフラれてしまったとあります。美男子を誘惑するオーロラをテーマにしたPoussinやRubensの絵画があり、ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されています。

2024年5月10日金曜日

shtick

ギターにドラムセット、ピアノ、絵の具、机、彫刻、ビデオゲーム機、・・・。巨大なプレス機が降りてきて全て潰されて破壊しつくされた後、再び上昇するプレス機から見えるのは一つのiPad。

アップルが公開した新型iPadのCFが話題です。否、猛烈な批判を浴びています。

問題のCFは同社CEOのTim Cook氏のXアカウントに投稿されたもので、新型iPadは最薄と誇り、あらゆることがこの1枚のiPadで出来ると謳っています。アーティストやクリエイターが使ってきた道具はプレス機に潰されるように不要となる、それもたった1枚のiPadのお蔭で。

何とも皮肉な話しです。猛批判を受けてアップルは謝罪しました。

以下はオピニオン記事からの引用です。


Apple’s intent is plain: everything you could do with all this stuff can now be done with a single iPad. Isn’t technology remarkable? That’s a tactic that has worked very well for Apple’s advertisers in the past, and they’ve touched on this concept before — particularly in early iPod and iPhone commercials.

But the last time Apple used this shtick, writers and actors in Hollywood hadn’t spent half a year campaigning to protect their jobs from AI. Game studios hadn’t laid off thousands. AI musicians hadn’t proliferated on YouTube and TikTok to the fury of the record labels and artists, and the Tupac Shakur estate hadn’t issued its first AI rap beef cease and desist order. The last time Apple did this, people weren’t talking quite as urgently about AI automation snapping up all the jobs humans once held.
(Alex Cranz. People sure are pressed about Apple’s crushing iPad commercial / Apple did not read the room on this one. The Verge. May 9, 2024.)


アップル新製品のコマーシャルは過去にも見る人の心に訴えかけるものがありましたが、今回は別の意味で強い印象を残したということができます。

特に、人工知能(AI)がかつてないほど進化を遂げ、人間の仕事がAIに取って代わられようとしている状況にあって、問題のCFはアーティストやクリエイターのみならず、多くの人に強い拒否反応を引き起こしたと言えます。

記事で、"shtick"という見慣れない単語が出てきます。辞書を引くと、


人目を引くための工夫、しかけ
(ランダムハウス英和辞書)


とあり、語源欄にはいたずら、気まぐれを意味するイディッシュ語shtikに由来するとあります。

アップルはこれまでと同じように人目を引く、インパクトのあるコマーシャルを作ったつもりが、それを受け取る人々の反応を読めていなかった、ということです。

実のところ、似たような内容のCFは過去にもあったのです。2009年、韓国のメーカーLGが発売したカメラ付き携帯電話のコマーシャルがそれで、楽器やカメラなどが押し潰され破壊されるという、全く同じような内容です。(Business Insider

ところがその際(15年前)には今回のような騒動にはなりませんでした。

何が違うのか?

時代が変わった、ということですね。AIの脅威がかつてないほど現実的なものになっている今、問題のコマーシャルが引き起こす拒否反応をアップルは予見出来なかった(しなかった?)というのは、意味深ではないでしょうか。


2024年5月9日木曜日

con

バイデン大統領はマイクロソフト社がウィスコンシン州に人工知能(AI)の開発拠点を建設すると公表しました。

33億ドルという巨費が投入される一大プロジェクトにより、地元経済への好影響が期待されます。

この発表には伏線があり、今年の大統領選を目前にしてトランプ候補に対してやや劣勢と報じられるバイデン氏が自身の成果を強調し、支持率浮揚に繋げたいという意図があります。

また、建設予定地はかつてトランプ氏が大統領時代にFoxconn社を誘致しようとして実現しなかったという経緯があるということです。

記事ではバイデン氏の発言が引用されていますが、皮肉たっぷりといったところです。


Trump, Biden said, “came here with your senator, Ron Johnson, literally holding a golden shovel, promising to build the eighth wonder of the world.”

“Are you kidding me? Look what happened. They dug a hole with those golden shovels, and then they fell into it,” the president said.

“Foxconn turned out to be just that - a con,” Biden added. “Go figure.”
(Kayla Tausche. Biden touts economic achievements in Wisconsin amid persistent concerns on inflation. CNN. May 8, 2024.)


その発言中、


Foxconn turned out to be just that - a con


というくだりがあります。

ここで使われている"con"というのは"confidence"を約めたもので、"confidence scheme"、即ちいわゆる信用詐欺を指し、詐欺、いかさま(swindle)のことです。興味深いのは大統領がここでシャレを使っているという点です。

バイデン大統領はトランプ氏が誘致しようとした台湾メーカーFoxconn社の社名に掛けて、ここで"con"という表現を使っています。

2018年にトランプ政権下の誘致プロジェクトでは巨額の助成金などが同社に支払われたものの、結局誘致は実現せず、そのお金は無駄になってしまったようで、"con"とはそのことを当てこすったもののようです。

2024年5月8日水曜日

scout

アメリカのボーイスカウト連盟Boy Scout America (BSA) は来年2025年に創立115周年を迎えるのにあわせて、名称をScouting Americaに変更すると発表しました。


Boy Scouts of America announced Tuesday that it will change its name to Scouting America next February, to emphasize its commitment to inclusion.

The youth organization said the new name is meant to help everyone, including boys and girls, feel welcome. The change will go into effect on February 8, 2025, the organization’s 115th anniversary, the Boy Scouts of America said.
(Nicole Chavez. Boy Scouts of America announces rebrand to ‘Scouting America’. CNN. May 7, 2024.)


ということで、今日の1語は、


scout


です。"scout"という単語にボーイスカウト、あるいはガールスカウトの意味があります。

日本ボーイスカウト連盟のホームページによれば、ボーイスカウトとは「子どもたちの好奇心や探求心にこたえる活動を通して、心身ともに健全な人材を育成することを目的とする世界的な教育運動」とあります。

英単語の"scout"を辞書で引くと、偵察行為、斥候、偵察兵、などと載っています。つまり、スパイ行為です。動詞としての意味も偵察するというものですが、"scout"という英単語は、聞くという意味のフランス語escouter(現代フランス語ではecouter)から来ています。さらに遡るとラテン語auscultareであると語源欄にもありますが、こちらも聞く(聴く)という意味であり、aus-という部分は耳を意味するaurisと関連があります。(aural、auricle、などの英単語にもなっています。)

つまり、英単語の"scout"はこれらラテン語やフランス語の語頭の部分が脱落したものになっている訳です。

ボーイスカウト(boy scout)も同じ"scout"ですが、やはり偵察行為と関係があるのでしょうか?答えはイエス、です。

ウィキペディアによれば、ボーイスカウトの起源であるスカウト運動、スカウティングは20世紀初頭にイギリス人ロバート・ベーデン=パウエル氏が始めたもので、同氏がイギリス陸軍中将としての経験から少年向けの偵察・斥候術の著書を著したとあります。後に"Scouting for Boys"というタイトルで出版された著作が、ボーイスカウト("scout")のとして広まりました。ボーイスカウト活動が野外活動に重きを置いているのもこのような背景があります。

ちなみに、能力のある人、優秀な人材を「スカウトする」という時のスカウトも同じ"scout"です。

BSAから"Scouting America"への名称変更は明らかに"boy"という言葉を取り除くもので、多様性を尊重する昨今の社会的風潮に合わせたものですが、一部には"wokeness"への迎合だとの批判も聞かれます。


2024年5月7日火曜日

deaf ear

イスラエルとハマスの戦争を巡り、イスラエルを非難する抗議のデモがコロンビア大学など、米の有名大学で拡がり、一部では激化して警察が投入される事態に発展しています。

大学生らはキャンパス内にテントを設営して抗議活動を行っているようですが、大学設備を破壊したりするなど暴徒化しており、警官隊が催涙弾等による鎮圧を図っている様子を先日テレビでも見ました。

バイデン大統領は行き過ぎた抗議行動は法に照らして許されないとメッセージを発していますが・・・。


US college Gaza protests: Biden's call for 'order' falling on deaf ears?

US President Joe Biden insisted Thursday that "order must prevail" on college campuses after weeks of turmoil, clashes with police and mass arrests involving student protests against Israel's war with Hamas in Gaza. But will the president's comments do anything to help calm the situation?
(Longview News Journal. May 3, 2024.)


今日は、


fall(ing) on deaf ears


という表現を取り上げました。

この表現は願いや要望などが聞き届けられない、つまり叶えられることなく無視される、という意味の慣用表現です。

冷静になれと呼びかけ、また秩序回復を訴えるバイデン氏のメッセージは抗議デモを続ける学生には届いていないようです。

類似表現に、


turn a deaf ear (to)


というものもあります。

こちらは、(主語が)to以下に示される要求や要請に対して耳を貸さない、聞こうとしない、という意味で用いられます。

"fall(ing) on deaf ears"では"ears"と複数形ですが、"turn a deaf ear (to)"では単数形です。面白いですね。

"deaf"とは耳が聞こえないという意味ですが、英和辞書には耳が不自由である、遠くて聞こえないという意味の他、「耳を傾けない、聞こうとしない」という意味が載っています。

昔読んだある音楽家のエッセイに、見たくないものは目を閉じたり目を背けることで回避できるが、耳は(目のように)閉じたりするような器用なことは出来ないので聴きたくもない音楽にさらされる時には無防備だ、という記述があったのを思い出します。

ところで、これらと反対の意味になる、(相手の要望などに対して)耳を傾ける、聞く、という場合は、


lend an ear (to someone)


となります。



2024年5月6日月曜日

double haters

今年11月5日のアメリカ大統領選までちょうど6ヶ月となりました。

各メディアが伝える最新情勢によれば、支持率ではトランプ氏がバイデン大統領をやや上回っているそうです。

しかしながら、両陣営が神経を尖らせるのは、トランプ氏、バイデン氏いずれも支持しない、有権者の投票行動です。

いくつかの記事で、


double haters


という言葉が目に留まりました。


President Biden and former President Trump are in hot pursuit of a big — and possibly determinative — group of voters who loathe both men.

Why it matters: This bloc of "double haters" has ballooned in size thanks to the surge in Biden's unpopularity since 2020, with polls suggesting they now represent 16% to 20% of the electorate.
(Zachary Basu. Understanding the "double haters" who dislike Trump and Biden. Axios. May 4, 2024.)


トランプ氏再選は望まない、さりとてバイデン氏も頼りないし続投は嫌だ・・・、そういった有権者の存在を"double haters"と呼んでいるようです。

日本の選挙でもよく「無党派層」の投票行動が注視されることがありますが、同じようなものでしょう。

記事によれば、こうした"double haters"には、トランプ氏に幻滅した共和党支持層、パレスチナ問題でイスラエル寄りなバイデン氏を批判するリベラル層に見られるといいます。


2024年5月3日金曜日

xenophobic

日本は"xenophobic"だ、というバイデン大統領の発言が物議を醸しています。

"xenophobic"とは、外国(人)を嫌う、という意味の形容詞で、"xenophobia"という名詞から来ています。

ご存知のように、-phobiaというのは何かを恐れる、嫌うという意味で、病名の〜恐怖症(例えば、高所恐怖症を指すacrophobiaなど)に使われます。

接頭辞xeno-は、異人(stranger)を意味するもので、ギリシア語から来ています。


President Joe Biden on Wednesday called close US ally Japan “xenophobic” at a Washington, D.C., fundraiser, just weeks after lauding the US-Japan alliance at a state dinner.

(中略)

“You know, one of the reasons why our economy is growing is because of you and many others. Why? Because we welcome immigrants. We look to – the reason – look, think about it – why is China stalling so badly economically? Why is Japan having trouble? Why is Russia? Why is India? Because they’re xenophobic. They don’t want immigrants,” Biden said, according to an official White House transcript released Thursday.
(Biden calls US ally Japan ‘xenophobic’ along with India, Russia and China. CNN. May 2, 2024.)


バイデン氏の発言は、「人種のるつぼ」とも言われ、多様な人種、移民から構成される米国と、移民を受け入れようとしない日本を対比させたもののようですが、経済的に行き詰まりを見せている中国やインド、さらにはロシアなどと共に十把一絡げにして"xenophobic"であることが問題だと言い放っており、波紋を広げています。

"xenophobia"の和訳ですが、外国(人)嫌い、というのは上に書いた通りですが、排外主義、外国人アレルギー、という表現も英和辞書には見られます。

移民を受け入れたからといって経済が好転するという単純な話ではないとは思いますが。



2024年5月2日木曜日

test the waters

ビジネスマン向けのSNSとして知られるLinkedInがゲームに参入した、という記事が目に留まりました。

プロフェッショナルが経歴や職歴を公開してネットワーキングするプラットフォーム上で「ゲーム」とはいささかミスマッチのように感じますが、ゲームと言ってもオンラインのビデオゲームなどではなく、パズルの類というべきもので、要は頭を使うゲームです。


Back in March, TechCrunch broke the news that LinkedIn was quietly testing the waters for games on its platform — word and logic puzzles similar to Wordle. Now, in an effort to attract more users and increase engagement, the platform is launching three of those games officially.

Queens, Crossclimb and Pinpoint — respectively testing your abilities in logic, trivia and word association — will be available globally starting today, both via a direct link to the games and by way of LinkedIn News, the division that developed them.

Similar to Wordle, each of these games can be played just once a day.
(Ingrid Lunden. LinkedIn launches gaming: 3 logic puzzles aimed at extending time spent on its networking platform. Tech Crunch. May 1, 2024.)


記事によれば、LinkedInは数ヶ月前からSNS上で無料ゲーム(パズル)のサービス展開を検討していたらしいことが分かります。

これは考えてみれば不思議なことでもなく、新聞や雑誌に週1回のクロスワードパズルが掲載されるように、購読者層を獲得するためにはこういったパズルは有効な手段と考えられているのです。

記事で、


LinkedIn was quietly testing the waters for games on its platform


というくだりがあります。

ここで、"test the waters"というのはイディオムで、利用者などの反応を見るために試してみる、というようなコンテクストで用いられます。

手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsでは下記のような解説があります。


If you test the water or test the waters, you try to find out what the reaction to an idea or plan might be before taking action to put it into effect.


つまり、いきなり全面展開するのではなく、まずはどういう反応があるか、手応えを探る、ということです。

字義通りには「水を試す」ということになりますが、これは例えばバスタブに浸かる前に湯を手で触れてみて湯加減をみるというようなイメージであるとの説明がネット上では散見されます。

LinkedInは特にWordle(ニューヨークタイムズ紙が2022年に買収)のヒットが念頭にあるようで、公開された3つのゲームも英単語を推測する内容のものが含まれています。

私も早速3つのゲームをプレイしてみました。

ルールに馴染むのに少し時間がかかりそうですが、始めるとハマりそうなパズルではあります。それなりに手応えのある難易度ですが、Wordleのような手軽さ(シンプルさ)と比べるとちょっと重たいかなという感はあります。

LinkedInはユーザーのサイト滞在時間を延ばすと共に、ゲームをきっかけとするユーザー間の交流促進にもなることを期待しているようですが、果たしてその目論見は成功するでしょうか?

2024年5月1日水曜日

kick in the pants

EVメーカーのテスラで充電設備の担当部門がリストラ、というニュースが波紋を呼んでいます。

記事によれば、CEOであるマスク氏の決断によるものだそうですが、同社の充電インフラであるスーパーチャージャーネットワークの計画やメンテナンスを担当する部門の責任者とほぼ全てのスタッフが解雇されることになったということです。


Musk’s decision, as reported by The Information, to dismiss the head of the business, Rebecca Tinucci, and most or all of the staff that operated and maintained the system left officials at automakers and Tesla suppliers uncertain about the future. 

(中略)

Andres Pinter, co-CEO of Bullet EV Charging Solutions, a supplier to the network, said, “As contractors for the Supercharger network, my team woke up to a sharp kick in the pants this morning.”

“Tesla has already been awarded money under the federal government’s NEVI program,” he said, referring to the National Electric Vehicle Infrastructure formula program to provide funding to states to deploy EV charging networks.
(Elon Musk’s move to disband Tesla EV charging team blindsides car industry: ‘Sharp kick in the pants’. Reuters. April 30, 2024.)


確か昨年のことだったかと記憶するのですが、テスラは自社が米国で展開している充電設備網を他社EVメーカーにも使えるようにすると発表し、競合するフォード社などとの連携が強化されると共に、消費者の利便性も高まり、EV普及へのはずみがつくものと期待されていました。

また、これによりテスラ社の充電設備は政府からの補助金も得られるようになっているとのことなのですが、この期に及んで担当部門をリストラの対象にするという事態に関係者は困惑を隠しきれません。

関係者の発言が引用されていますが、


kick in the pants


という慣用句が使われています。

辞書を引くと、


(思わぬ)ひどい仕打ち、激しい非難;失望;ひじ鉄、拒絶
(研究社新英和大辞典)


などとあります。

想像もしなかった悪いことが起きた、という気持ちを表したものと解釈できます。

この"kick in the pants"というフレーズは、"kick in the teeth"と表現することもあるそうです。