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2023年5月31日水曜日

soapbox

オフィス回帰(return to office; RTO)か、それともリモートワーク(work from home; WHO)か?

柔軟な働き方と生産性を巡る議論に明確な結論を出すことは中々簡単では無さそうです。今日も関連する話題の記事を読みましたので、一部引用します。


Battle lines have been drawn between the RTO and WFH camps. Some executives stand on their soapboxes and insist that the creative process happens only over the literal watercooler. Workers say that flexibility is a right and the most productive way forward. Ironically enough, both groups are leaning toward similar policies, with many requiring three days a week in the office and approving two from home.
(The return-to-office wars could end in a stalemate as we all reach the same conclusion about what the flexible future of work means. Fortune. May 30, 2023.)


今日取り上げるのは、


soapbox


という単語です。

"soapbox"、石鹸の箱、となるかと思いますが、


即製の街頭演説台


という意味なんですね。

石鹸の箱というと我々は手のひらサイズの石鹸が入った個包装の紙箱をイメージしますけれども、英語では人がその上に立っても大丈夫な木箱のサイズだそうです。

街頭演説の台になる箱といえば、日本語ではビールケースとなるところです。(今時、選挙前の駅前街頭演説でビールケースの上に立つ候補者はいるのでしょうか?)

さて、"soapbox"については、単に物理的な演説台というよりも、街頭演説などでその上に立って熱心に自説を展開する、その行為に焦点を当てた表現として使われます。

American Heritage Dictionaryでは、


on (one's) soapbox
Speaking one's views passionately or self-importantly.


というフレーズと解説が載っています。

最初に引用した記事の用例においても、企業のエグゼクティブは実際に"soapbox"に乗っている訳ではなく、自身の主張を説いている、というくらいの意味合いです。

他の用例もどうぞ。


"I'm not trying to get on a soapbox or preach. I'm just talking about my day-to-day personal reality," he says.
(New York Post, 2016)


How are communities to respond when a bigot takes advantage of the modern-day electronic soapbox and places extremist material on a public access channel?
(USA Today, 1992)


"soapbox"は動詞化して、"soapboxed"、"soapboxing"となることもあるようです。動詞の用例は拾えていませんが、またいずれ。


2023年5月30日火曜日

Panglossian

人工知能(AI)に関する話題がこのところ沸騰しています。先日広島で開催されたG7において生成AIに関する規制やルールが議論された他、新聞やメディア上では、人間が行っている仕事の過半はAIに取って代わられるとか、専門家がAIによってもたらされるベネフィットとリスクを論じています。

以下の記事を読んでみましょう。


Gradually and then suddenly, technologies driven by artificial intelligence (AI) are taking hold in major economies. Predictions of the impact of AI range from the Panglossian — an era of rising productivity leading to higher living standards — to the dire, the end of human civilisation. Even if humanity is safe for now, the ranks of white-collar professionals, some experts say, could be decimated by the extensive use of AI.
(ET Conversations with OpenAI CEO Sam Altman: Rebooting the future with AI. The Economic Times. May 19, 2023.)


記事中、


Panglossian


という見慣れない単語が出てきます。実際初めて見る単語だったのですが、文脈は、


Predictions of the impact of AI range from the Panglossian… to the dire


ということであり、"Panglossian"は"dire"(悲惨な、恐ろしい、ひどい)の対局にある概念と想像がつきます。

辞書を引けば、"Panglossian"とは、


極端に楽観的な


という意味であると分かります。

語源解説に目を向けると、この単語はフランスの詩人VoltaireによるCandideという作品の登場人物である、Dr. Panglossに因むとあります。

作品を読んだことはありませんが、Merriam-Websterの解説によれば、Dr. Panglossは言ってみれば筋金入りの楽天主義家で、どんな災厄に見舞われようとも、この世が最善の世界であるという主張を貫いたとあります。

また、"Panglossian"、"Dr. Pangloss"という名前は、ギリシャ語の接頭辞pan-と、舌を意味するglossaを組み合わせたものであり、饒舌、多弁を意味します。楽観主義者はよく喋るということでしょうか。

因みにVoltaire作品に刺激を受けた音楽家、レナード・バーンスタインが作曲したミュージカル「キャンディード」はご存知の方も多いかと思います。

その序曲は昔からお気に入りの曲でしたが、こんなきっかけで再開するとは・・・。



2023年5月29日月曜日

golden handcuffs

仕事内容や給与面等の待遇に100パーセント満足している、という勤め人はまれでしょう。

どんな仕事に就いていても多少の不満はあるものだと思います。

ところで、ポスト・コロナの時代、色々不満があるので転職しようかとも考えるけれども、今の仕事はリモートワークができるからそれはそれで辞められない、という勤め人が増えているそうです。多くの企業がリモートワークからオフィス勤務に切り替え、出社を要請するようになってきたという背景がありますが、転職先でリモートワークが保証されないのは困るという訳です。

こういう境遇にある勤め人はある種のジレンマに立たせられている訳ですが、"remote-work handcuffs"と表現されています。リモートワークというベネフィットが手枷(handcuffs)になって転職に二の足を踏むのです。

この"remote-work handcuffs"という表現は面白いなと思ったところ、かねてより業界では、


golden handcuffs


なる用語が存在すると知りました。"remote-work handcuffs"は、"golden handcuffs"をなぞった表現なのです。


The golden handcuffs phenomenon is an obvious parallel, Denise Rousseau, a professor of organizational behavior at Carnegie Mellon's Tepper School of Business, told Insider. Jobs that are highly paid feel impossible to leave if you can't command the same salary elsewhere. 

In academic literature, these shackled workers have what's known as a continuance commitment, Rousseau said. "They stay because they have something they don't want to lose, as opposed to staying because there's something that's attractive about their jobs, such as great colleagues or learning opportunities," she said. 
(Rebecca Knight. You hate your job but you love working from home: You're in remote-work handcuffs. Insider. May 28, 2023.)


"golden handcuffs"の「ゴールド」はお金のことです。待遇が良ければ辞められないということですが、そもそもは企業が有能な社員を囲い込むために昇給やボーナス、ストックオプションなど、金銭面での特別待遇を与えることを指します。


First coined in 1976, golden handcuffs refers to financial allurements and benefits that encourage highly compensated employees to stay at a company - even when they’re miserable.
(Claire Hastwell. Golden Handcuffs: What Employee Survey Responses Reveal About Burnout. Greatplacetowork.com. September 25, 2020.)


最近の表現と思いきや、上記引用にあるように1976年からあるそうで、手元のランダムハウス英和辞書にもエントリがあります。

リモートワークという制度は今やこうした金銭面での待遇とほとんど同列に語られるベネフィットになったということでしょう。


2023年5月26日金曜日

ick

決してファッションに敏感な訳ではありませんが、最近街中であまり見かけないものに「スキニージーンズ」があります。

いかにも細身に、あるいは脚が細く見えるジーンズをかつてよく見かけたように思うのですが、最近は、特に女性はゆったりとしたボトムスを身につけているようです。

漠然とそんな感じがしていたところ、どうやらスキニージーンズなるものは最近流行らないらしいと知りました。


Here’s the skinny on the latest fashion trend.

The men of TikTok have finally caught on — skinny jeans are an ick. That is to say they’re out, uncool, cringe-worthy, totally yesterday.

Gen Z already denounced the slim-fitting denim for women, and now men are following suit by trading their skinny jeans for baggier trousers — to much applause.
(Brooke Kato. Gen Z has canceled skinny jeans — here’s what’s replacing them. New York Post. May 23, 2023.)


記事では、


skinny jeans are an ick


と書かれています。

"ick"というのは、嫌悪感を催すもの、という意味らしいですが、American Heritage Dictionary、Merriam-Webster 共に、interjection、即ち間投詞であるおの説明です。

記事の例では名詞で使われていると思われますが、研究社新英和大辞典では"ick"のエントリはなく、"icky"という形容詞に同様の意味合いを認めることができます。

この"icky"は、"sticky"、つまりベタベタする、粘りつくような、という意味合いからきているのですが、名詞の"ick"とも関係ありそうです。

似た表現に、"yuck"があります。



2023年5月25日木曜日

turducken

デサンティス・フロリダ州知事が大統領選への出馬を正式に表明しました。
 
ツイッターのイベントでのアナウンスだったそうですが、サーバーの技術的な問題が発生したために、イベントの開始が遅れるというハプニングがあったと報じられています。
 
多くのメディアでは、デサンティス氏とイーロン・マスク氏が懇意であることに触れていますが、今回の正式表明が行われたイベントはつい最近までマスク氏がCEOを務めていたツイッターというプラットフォーム、そして共和党支持者である大物起業家のDavid Sacks氏がその大役を買って出た模様です。
 
 
The Florida governor made his formal presidential campaign announcement in the weirdest way possible, joining a Wednesday evening Twitter Spaces conversation with Twitter CEO and noted conspiracy-theorist-coddler Elon Musk. The event was moderated by David Sacks, a wealthy GOP donor who is pals with Musk and supports DeSantis, creating a turducken of wealth, confirmation-bias and “very online” social awkwardness. There were also spectacular technical glitches, again raising questions of whether the governor is truly ready for a national campaign.
(Rex Huppke. As president, DeSantis would 'Make America Florida.' What a nightmare that would be. USA Today. May 24, 2023.)
 
 
USA Today紙のオピニオン記事を引用しましたが、記事中
 
 
turducken
 
 
という見慣れない単語が出てきます。
 
初めて見る単語なのですが、スペルもちょっと変わっています。ドイツ語のスペルみたいにも見えます。手元の英和辞書には載っていませんでした。
 
Merriam-Websterオンラインで検索すると、以下の定義が出てきます。
 
 
a boneless chicken stuffed into a boneless duck stuffed into a boneless turkey
 
 
なんじゃ、これは?
 
骨抜きにしたチキンを鴨肉に詰めて、更に七面鳥に詰めて・・・!?
 
解説によれば、"turducken"とは、
 
 
turky
duck
chicken
 
 
を合わせた、いわゆるかばん語(portmanteau)だということで、ちょっと変わったスペルの背景は分かりました。
 
ネットで検索してみると、"turducken"なる料理は米南部ルイジアナ州の名物料理らしく、鶏肉を詰めたカモ肉をさらに七面鳥に詰めて焼き上げるものだとか。
 
そんな料理があるんですねぇ。
 
で、記事では、
 
 
a turducken of wealth
 
 
とあるんですが、これが何を言わんとしているのかちょっと分かりませんでしたが、恐らく、デサンティス知事、マスク氏、そしてSacks氏、という、功成り名遂げた三者に対する皮肉だろうと。
 
 

2023年5月24日水曜日

scot-free

このところ気温上昇中で、先日も夏日とか言われる日がありましたが、自宅の庭で作業していたらやられました。

そうです、カ(蚊)です。

雨降り後の小さな水溜りでも、僅かな水場があるとそこに蚊が生息し、増えると言われます。決して広い庭ではないのですが、水溜りをシャットアウトすることも叶わず、夏場は刺されるがままになっています。庭作業ではそろそろ蚊取り線香の出番です。

蚊は汗の臭いに引き寄せられると言います。ジョギングの後だったので余計に寄せ付けてしまったようです。


New research has found that smelly armpits may turn some people into a mosquito magnet.

This is apparently the reason that some people are so plagued by the annoying critters — while others get off scot-free, according to scientists.

The pesky insects are drawn to body odor, also known as BO — and mosquitoes can find us from 350 feet away once they get a whiff, according to SWNS, the British news service.
(Maureen Mackey. Are you a mosquito magnet? It might be for one unpleasant reason. Fox News. May 20, 2023.)


引用した記事は蚊の生態、つまり汗、体臭に引き寄せられるという話です。ご存知のことかもしれませんが。

ところで、記事に、


scot-free


という表現が出てきます。

この表現を知りませんでしたが、ひょっとして"shot-free"のスペルミスかとも思った次第です。

"scot-free"で正しいスペルなのですが、その意味するところは、


1. Without having to pay: got away from the restaurant scot-free.
2. Without incurring any penalty or punishment: came away from the incident scot-free.
(American Heritage Dictionary)


ということで、つまりは(蚊に)刺されずに(済む)、という意味合いで使われているのでした。

ところで、"scot-free"のscotとは税金の意味であると辞書にありますが、実のところ動詞shootと関係があるそうなのです。("shot-free"のスペルミスかと思ったのはあながち外れてはいなかったようです。)

古ノルド語skotに遡るscotと、動詞shootはいずれも印欧祖語skeud-を共通の親に持つとされます。

この印欧祖語skeud-の意味は、放り投げる(shoot, chase, throw)というもので、動詞shootはその意味合いを保持しています。税金を意味するscotについては、"money thrown down"という解釈によります。

つまるところ、"scot-free"のscotとは「応分の義務」というような意味合いが基本にあり、"scot-free"とはそうした義務や状況から免れていることを言います。

2023年5月23日火曜日

Game on!

ツイッターの新しいCEOにLinda Yaccarino氏が就任しました。イーロン・マスク前CEO直々の指名により、ほとんど鳴り物入りの登場とも言えますが、就任早々、チャレンジが待ち受けているようです。

というのも、ライバルであるメタ社傘下のインスタグラムが、ツイッターの対抗馬となる新しいSNSのサービスを計画しているとの報道があるからです。


Linda Yaccarino is ready for some competition. The incoming Twitter CEO responded Sunday to a report about Instagram’s plans for a Twitter clone.

Game on,” Elon Musk’s hand-picked successor tweeted, a week after thanking her new boss for the job leading the social network.

(中略)

Now Yaccarino, who some believe is in a glass-cliff situation that other female CEOs have encountered, faces the prospect of competing head-on with Mark Zuckerberg’s Meta, a formidable rival with proven social media chops. Game on indeed.
(Steve Mollman. Linda Yaccarino says ‘game on’ as Instagram prepares Twitter clone. Fortune. May 21, 2023.)


ここは新CEOとして期待される手腕を発揮せねばなりません。Yaccarino氏は自身のツイッターアカウントで、


Game on


とツイートしたそうです。

この"game on"という表現ですが、競争がいよいよスタートするとか、新しい挑戦が始まる、というような状況で使うフレーズです。

Collins Dictionary(オンライン)の定義によれば、


If you say game on, you mean that you are ready for something challenging to begin.


とあります。(手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idioms(ハードカバー版)には載っていませんでした。)

さあ、競争が始まる、ここからが勝負だ、受けて立ちますよ!といった感じでしょうか。

ところで、Yaccarino氏は女性ですが、米メディア業界で要職を歴任した新CEOが"glass cliff"を如何にして乗り越えるのかにも注目が集まっているようです。

メタ社のザッカーバーグ氏とYaccarino 氏の争いの行方は見ものだということで、"Game on!"とは外野があげている声でもあります。


2023年5月22日月曜日

動詞の"guilt" ー guilt

チップ(心付け)についての話もこれまでも何度か取り上げてきましたが、今日もその「チップ」にまつわる話題です。

今春、米国旅行をした際に円安と物価高、そして米国文化である「チップ」の三重苦(!?)のために悲嘆に暮れたという話をしました。

またその話題かよ?と言わず、引用をお読み下さい。


One example of this is the touchscreen transaction with the cashier present. When a bunch of buttons pops up on the screen with various tip amounts to leave for services provided, even when no such service took place.

(中略)

Have you noticed that whoever's at the register is looking right at you when that big tip screen comes up? It's almost like you must leave them something for doing nothing more but their job.

(中略)

It seems to be getting out of control and many of us leave those tips when we really shouldn't because we were guilted into feeling like we had to.

I'm sure some New Jersey establishments that do this aren't even aware since the technology is set up that way. But I bet others are fully aware of it and they bank on subtly guilting you into leaving a few extra bucks.
(Mike Brant. NJ businesses that do this might guilt a tip out of you. New Jersey 101.5. May 21, 2023.)


先日も触れましたが、NYCのレストラン、カフェなどでは支払い時にタッチスクリーンの画面が示され、チップの金額をボタンで選択しなければならないという、客側にとって何とも悩ましいシステムになっています。

何も特別なサービスを受けた訳でもないのに、例えばコーヒーショップでは店頭でコーヒーを注文しただけなのに、チップを要求する画面が示されるのには閉口しました。

有無を言わせずというやり方ですが、ほとんどの客はチップを払わないのは気が咎めるような思いになるものです。

記事では、


because we were guilted into feeling like we had to

they bank on subtly guilting you into leaving a few extra bucks


とあります。

さらにこの記事のタイトルでは、


guilt a tip out of you


とも。

"guilt"という単語は名詞だとばかり思っていたので、動詞として使われるとは知りませんでした。(意味するところは話の流れから想像付くところですが。)

英和辞書に動詞の用法が載っていないのはどうしたことでしょう?

以下はAmerican Heritage Dictionaryでの動詞の定義です。


1. To make or try to make (someone) feel guilty: My roommate guilted me for forgetting to wash the dishes.
2. To cause (someone) to do something by arousing feelings of guilt: My roommate guilted me into washing the dishes.


引用記事本文の用例では2番目の意味合いが相当しますが、しばしば前置詞intoを伴って、into〜以下の行為を強いる、そうしないと気が咎めるような心持ちにさせる、という意味です。

2023年5月19日金曜日

fortnight

2023年5月19日、今日の1語は“fortnight”です。
 
ご存知の方には釈迦に説法となってしまいますが、2週間という意味の単語です。何故この単語を取り上げたのかについては、最後に。
 
では用例をどうぞ。
 
 
The London Fire Brigade (LFB) published the video showing the moment an e-scooter catches fire while plugged in at a house in Brent, northwest London, on Saturday.
 
It takes just seconds for the room to be engulfed in flames and smoke.
 
Security guard Dell Williams, 37, was charging the e-scooter that he bought a fortnight earlier after seeing a listing on Gumtree.
(Dramatic footage shows e-scooter battery catch fire in kitchen - as owner says he 'cheated death'. Sky News. May 18, 2023.)
 
 
電動自転車、電動スクーターなど、電気自動車に限らず、電気を動力源とする乗り物が広まっていますが、記事では自宅で充電中の電動スクーターが発火し、大火事になりかけたというものです。
 
問題の電動スクーターは、
 
 
bought a fortnight earlier
 
 
ということで、つまり、2週間前に購入したものでした。購入品に問題があったのか否か、記事から分からないのですが、バッテリーが過熱したのが発火の原因のようです。
 
さて、“fortnight”という単語ですが、これは古英語においてfeowertyne nihtと言っていたものが、fourtenihtに約まり、“fortnight”になったと辞書の語源解説にあります。
 
古英語のfeowertyne nihtとは"fourteen nights"、つまり「14夜」ということなんですね。14夜、イコール2週間、という訳です。
 
昔、ゲルマン人は1日を数えるのに日中(Day)ではなく、夜(Night)を基準に数えたとされ、そうした週間がこの“fortnight”という単語にも垣間見えるということなのです。

ゲルマン人は昼間から夜に続くというよりも、夜がまずあってそれから夜が明けて昼になる、という感覚だったそうです。ローマの歴史家タキトゥスの著作「ゲルマーニア」(第11章)にそのような記述があるということなので読んでみました。
 
さて、冒頭に書きました、本日“fortnight”という単語を取り上げた理由について・・・。
 
本日、2023年5月19日で当ブログ「えいご1日1語」は14周年を迎えました。
 
ということで、数字の14に因む単語を取り上げた、という訳です。
 
今後も当ブログをご愛読いただけますとうれしいです。
 

2023年5月18日木曜日

bump

記事の引用からどうぞ。
 
 
Tens of thousands of public sector healthcare workers will demand a one-year 6.5 per cent pay bump before a looming dispute with the new Labor government is “de-escalated”, in the first major test of Premier Chris Minns’s key election commitment to overhauling wages in the state.
(Michael McGowan. Healthcare workers demand 6.5 per cent pay hike as paramedics begin strike. The Sydney Morning Herald. May 18, 2023.)
 
 
 
healthcare workers will demand a one-year 6.5 per cent pay bump
 
 
とあるくだりの“bump”とは、ここで昇給、賃上げ(タイトルでは"pay hike")を指しています。
 
“bump”というのは出っ張りとか隆起のことで、road bump (bump on a road) は道路の凸凹、隆起です。
 
英和辞書で“bump”のエントリを眺めていると色々な意味で使われていることが分かりますが、名詞の定義では「昇進」(promotion)を意味する一方、「降格」(demotion)の意味もあるそうで、ひとつの単語に相矛盾する定義があることに驚きました。
 
手元にあるOxford Dictionary of Euphemismには“bump” (the) の意味合いに、
 
 
peremptory dismissal from employment
 
 
とあり、こちらは突然仕事をクビになってしまうことですが、そうすると「降格」の意味合いがあるというのもうなずけるところかと。
 
“bumped off”とも表現するそうですが、動詞の“bump”には押しやる、追い出す、またそうすることで自分がその場所やある立場に入るという意味がありますので、「クビ」や「降格」の意味合いはこのような動詞の用法と関連があるのでしょう。
 
降格の意味での用例は見つけられていないのですが、また追って・・・。
 
なお、昇給、賃上げの“bump”は多数の用例が確認できます。
 
He will likely get a big bump in compensation from the $310,000 he made this year in San Antonio.
(Atlanta Journal Constitution, 2012)
 
 
They either have insurance from other jobs or get a salary bump to get coverage under the state's universal health care program.
(Associated Press, 2010)
 
 

2023年5月17日水曜日

privilege

米議会のSantos議員(共和党)については経歴詐称等の疑惑で議員としての資質が問われているという記事を以前も取り上げましたが、いよいよ辞職勧告の動きが本格的になってきたようです。
 
今日見かけた記事によれば、民主党側はSantos議員の辞職を求める動議を提出する予定だそうです。
 
 
Democrats are backing Republicans into a corner with a new resolution to expel embattled Representative George Santos from Congress.
 
Representative Robert Garcia, a California Democrat, introduced a privileged resolution to expel Santos, a New York Republican who last week was hit with a 13-count indictment that included seven counts of wire fraud, three counts of money laundering, one count of theft of public funds and two counts of making materially false statements to the House of Representatives.
(Andrew Stanton. Democrats Find Way to Force Republicans to Confront George Santos. Newsweek. May 16, 2023.)
 
 
今日取り上げたいのは、
 
 
a privileged resolution to expel Santos
 
 
というくだりで使われている“privileged”という単語です。
 
Santos議員に辞職を勧告する決議案(resolution)を修飾するこの“privileged”という形容詞を何と訳したものでしょうか。
 
同じ記事中、“privileged”がもう一度出てきます。
 
 
Because it is a privileged resolution, GOP House leadership will be required to schedule a procedural vote within two days. The resolution will at least trigger a procedural vote, according to Axios.
(ibid.)
 
 
このくだりを読むと、“privileged resolution”とは評決を2日以内に取る必要があるということから、他の事案に先駆けて処理する必要がある、「優先」のような意味合いで使われているのだろうと想像されます。
 
“privilege”という名詞を学ぶのは高校英語くらいからでしょうか。特権、恩恵という日本語で暗記すると思いますが、社会的地位の高い人や一部金持ち、いわゆる特権階級に与えられる「特権」という意味合いが強い印象がありますね。

例えば国会議員の議会中の不逮捕特権なども“privilege”ではあるのですが、特権を与えるという動詞の“privilege”、またそこから派生した“privileged”という形容詞から“privileged resolution”を解釈しようとしたとき、「特権的決議案」はどうも意味が通じないと言いますか、何が言いたいのかよく分からないですね。
 
privileged resolution”でグーグル検索すると以下のような米議会の規程がヒットします。
 
 
Other House rules make certain important subjects privileged so as to permit the daily order of business to be interrupted or even supplanted entirely for days at a time.
(Chapter 36. Order of Business; Privileged Business)
 
 
つまり、“privileged resolution”とは通常の審議等よりも優先して審議される重要なマターとして取り扱われるものだと解釈されます。
 
American Heritage Dictionaryでは、“privilege”の定義に、
 
 
1. To grant a privilege to.
2. To free or exempt.
3. To assign greater importance or priority to
 
 
とあり、3つ目の定義が今回当てはまるかと。
 
なお、“privileged”には秘密の、秘匿されるべき、という意味合いもあります。
 
 
3. Law
a. Protected by a legally recognized right against disclosure: privileged information.
(American Heritage Dictionary)
 
 
このような“privileged”の意味合いも、特権、恩恵という丸暗記をしていては分からないですね。
 
つまり、“confidential”と同義なのですが、先日仕事の資料で


privileged & confidential


と表示があるのを見て定義を再確認した次第です。
 
 

2023年5月16日火曜日

off-color

ニュース番組のキャスターが不適切発言で解雇されたという記事から引用です。

男性キャスターは相方の女性キャスターを卑猥な表現で呼んだとされます。マイクがオンになっているのを忘れていたのでしょうか、しっかりと発言が拾われてしまったようです。


Ken Rosato, a longtime co-anchor on New York's WABC 7, has reportedly been terminated.

According to sources close to the matter, the Eyewitness News This Morning reporter was fired after he made an "off-color remark" while wearing a mic, Page Six exclusively learned over the weekend.

Sources told the outlet that Rosato uttered an inappropriate phrase while "on an open mic" and that it was picked up. Following the incident, insiders told Page Six that the 56-year-old journalist was "immediately let go."
(Marisa Losciale. News Anchor 'Immediately' Fired Over 'Off-Color' Remark. Yahoo! News. May 16, 2023.)


こういった放送事故はよく聞くところですが、「不適切発言」については、


off-color remark


と表現されています。

"off-color"という形容は卑猥な、猥雑な、際どい、といった訳語が英和辞書で見られます。

ここで"color"(カラー)というのは、宝石の見た目の色のことだそうです。値打ちのある真正な宝石は見た目も美しい色ですが、偽物は色がどこかおかしい、つまり"off-color"ということなのでshぷか。そこから、いかがわしい(dubious)という意味で使われるようになったそうです。

で、男性キャスターは具体的にはどんあ発言をし5あのかというと、


c - - t


だそうで、記事中も伏せ字にされていますが、よく知られたfour-letter wordであり、卑猥な言葉以外の何者でもありません。

2023年5月15日月曜日

blink

自家用車の買い替えを検討しています。お金も無いのに新車(!)を検討してみようかと取り掛かって分かったのは、ほとんどのメーカーで生産が追い付いていないらしいということでした。国産自動車メーカーのウェブサイトでは納車予定が半年以上先とか、未定、もしくは現在は受け付けられない、といったことが示されています。
 
これは自動車に不可欠な半導体の供給不足が原因らしいのですが、メーカーにとっても消費者にとっても困った事です。米国の自動車市場でも状況は同じようですが、徐々に状況は好転しつつあるらしいです。
 
小生はとあるメーカーからは見積を出してもらいましたが、値引きには消極的なようでした。以下に引用する記事では安く購入したい消費者と、なるべく高く売って営業成績を上げたいメーカー側の対立について触れられています。
 
 
Automakers and dealers are playing a game of chicken over how much a car should cost right now — and customers might come out the winners.
 
Some dealers have a surplus of cars on their lots as inventory levels bounce back after years of constraints. They want to sell those cars faster through discounts and other incentives.
 
(中略)
 
"Now it's this game of chicken and who's going to blink first?" Brian Finkelmeyer, senior director of new car solutions at Cox, told Insider.
(Automakers and dealers are playing a game of chicken — and customers could be the winners. Insider. May 14, 2023.)
 
 
あくまで米市場の話のようですが、これまでは供給が追い付かず売り手市場だったところが、回復して、徐々に買い手市場となりつつあると言われています。
 
記事中、“game of chicken”とありますが、交渉の場におけるゲーム理論の話です。「適正価格」を巡ってどちらが先に折れるか、つまり妥当な価格として譲歩するか、ということを指しています。
 
それで、
 
 
who's going to blink first?
 
 
と出てくるのですが、ここでの“blink”という動詞の用法は初めてみるものでした。
 
まばたきする、目をつむる、という意味ですが、ここでは、
 
 
To waver or back down, as in a contest of wills
(American Heritage Dictionary)
 
Yield, give in
(Merriam-Webster Dictionary)
 
 
などと定義されており、つまり譲歩する、交渉の過程で意見や主張を取り下げる、という意味で使われています。
 
なぜか手元の英和辞書には載っていない定義なのですが・・・。
 
 

2023年5月12日金曜日

capital-X

このところニュースではフェースブックの業績不振を伝える記事が目に付きます。来るべき時代のテクノロジーであるメタバースを意識して同社が社名をメタ(Meta)としたのは数年前だったでしょうか。
 
しかしながら同社のメタバース事業は振るわず、最近の業績不振の報道に繋がっているようです。
 
ごっついヘッドセットを付けて仮想現実空間をアバターとやらになってを経験するという最先端技術は一時はもてはやされたものの、ビジネスなどへの拡がりは今一つです。メタバースを確固たる事業に位置付けることができなかったザッカーバーグCEOの資質を問う痛烈な批判記事を興味深く読みました。
 
 
The Metaverse, the once-buzzy technology that promised to allow users to hang out awkwardly in a disorientating video-game-like world, has died after being abandoned by the business world. It was three years old.
 
The capital-M Metaverse, a descendant of the 1982 movie "Tron" and the 2003 video game "Second Life," was born in 2021 when Facebook founder Mark Zuckerberg changed the name of his trillion-dollar company to Meta. After a much-heralded debut, the Metaverse became the obsession of the tech world and a quick hack to win over Wall Street investors. The hype could not save the Metaverse, however, and a lack of coherent vision for the product ultimately led to its decline. Once the tech industry turned to a new, more promising trend — generative AI — the fate of the Metaverse was sealed.
(Ed Zitron. RIP Metaverse. May 8, 2023.)
 
 
さて、引用した記事の中で、
 
 
The capital-M Metaverse
 
 
という箇所があります。“capital”とは大文字のことで、ここではThe capital-M Metaverseとありますから、「大文字MのMetaverse」ということになりますが、どういう意味なのでしょうか?
 
記事ではもう一箇所、“the capital-M Metaverse”と出てきます。

 
While the idea of virtual worlds or collective online experiences may live on in some form, the Capital-M Metaverse is dead. It was preceded in death by a long line of tech fads like Web3 and Google Glass.
(ibid.)
 

ランダムハウス英和辞書で“capital”を引くと、“with a capital A”(あるいは、B, C、などといった)パターンで、
 
 
(修飾する直前の名詞の語頭の文字を A, B, C などの大文字にして)本物の…、全くの…、・・・そのもの
 
 
という意味になると説明されています。そして例文が示されており、
 
 
He is a statesman with a capital S. 彼こそ政治家の中の政治家だ。
 
 
とあります。
 
つまり、このような“capital”の用法は、強調したい名詞の語頭のアルファベットを取って“capital~”とすることにより、名詞が指す対象や概念そのもの、というニュアンスを付け加えるものだと解釈できます。
 
コーパスで用例を検索してみました。
 
 
For 700 years he's spent his days forming and stacking cubes of debris as high as skyscapers, with only his pet cockroach as a companion - the little guy is capital-L lonely.
(Houston Chronicle, 2008)
 
 
They may be ready to fight capital-E evil post-9/11.
(Denver Post, 2005)
 
 
Hidden among all the muchness were plenty of things you could actually wear: skinny ribbed knits, swingy single-breasted coats, simple yoked skirts. But it was overwhelmed by what used to be defined as capital-F Fashion.
(New York Times, 2018)
 
 
He and others regularly joke about being labeled " capital-J Journalists. " That is not considered a compliment.
(Denver Post, 1994)
 
 
こうしてみてくると“capital~”のニュアンスがだんだんと見えてくるというか、馴染みのあるものになってくる感じがしますが、訳出は文脈によるということになりましょうか。
 
「~そのもの」、「まさに~」、「真の~」、「筋金入りの~」、等々、見られます。
 
 

2023年5月11日木曜日

fool’s errand

昨日取り上げた記事の続きです。

米・加州で黒人に歴史的に行われてきた差別に対する補償が問題になっているというものでしたが、その賠償金が120万ドル(これは恐らく1人当たりの金額で、総額は8,000億ドルを超えるとの報道があります)になるというところから、記事は以下のように続きます。

 


"This has been a fool’s errand from the start," James Gallagher, California Assembly Republican Leader, told Fox News Digital. "Democrats have promised the world with this reparations task force, and now the massive taxpayer bill is coming due. Newsom has painted himself into a corner, and he’ll have to choose between signing off on a ridiculous policy that will bankrupt the state or admitting once and for all that this task force was nothing more than a political stunt."

(Jessica Chasmer. California reparations recommendations have Newsom between rock and hard place. Fox News. May 9, 2023.)

 


加州知事であるGavin Newsom氏はまさに賠償問題の当事者となる訳ですが、賠償金が重くのしかかってくるということで苦しい立場に追い込まれているようです。


引用部分に、



fool’s errand



という表現が出てきます。これは骨折れ損、とか無益な試み、無駄足、無駄骨、徒労という意味です。


Newsom知事をそのように批判しているのは同州議会の共和党リーダーであり、民主党の知事が後先考えず(?!)賠償を約束したことでこうなったと批判したいようです。


"fool’s errand"の"fool"とは「バカ」ということですが、どちらかというと、カモにされやすい人、ナイーブな人、というニュアンスがあるようです。


つまり事情や状況を理解していない故に使い走りにされてしまうような人のことです。


この話題から、日本の米軍基地移設問題に関する迷走を思い出します。異論は承知の上で、出来ない約束をしてしまった権力者の窮地という点で同じかと。


Newsom知事は誰の使い走りにされたのでしょうか。


2023年5月10日水曜日

reparation

今日の1語は、“reparation”です。

 

先に言ってしまうと、これは償い、補償、賠償、という意味の名詞です。

 

米国カリフォルニア州で、黒人奴隷とその子孫に対して行われてきた差別について、州が謝罪し補償をする、つまり賠償金を支払うという決定がなされ、その賠償の対象、そして賠償金額の総額が焦点となる中、各メディアが報道しています。

 

 

Democratic California Gov. Gavin Newsom is in a political no-win situation when it comes to a proposal by his own reparations task force to pay up to $1.2 million in taxpayer money to every qualifying Black resident as a means to atone for slavery and discrimination.

 

Newsom has yet to weigh in on the recommendations by California Reparations Task Force, which was created by state legislation he signed in 2020. While the formal recommendations were approved by the task force during a public meeting in Oakland on Saturday, they’ve been working on the plan for more than two years.

(Jessica Chasmer. California reparations recommendations have Newsom between rock and hard place. Fox News. May 9, 2023.)

 

 

reparation”という単語を見ると、準備という意味の名詞である“preparation”にも見えてしまいますが、一応別の単語です。

 

reparation”の語源を確認しますと、ラテン語reparareとあり、これは“repair”、つまり修繕/修理する、補う、弁償する、という意味の動詞と関連があります。こうしてみると“reparation”の意味合いとして覚えやすいですね。

 

ところで、“reparation”と“preparation”は一応別の単語、と書きましたが、語源ではつながっています。“preparation”はラテン語preparareから来ていて、ラテン語parare(“to make ready”)という部分は共通なんですね。(re-pararepre-parare、ということでちょっとややこしいですが・・・。)

 

 

 

2023年5月9日火曜日

on-again, off-again

トランプ元大統領に性的暴行を受けたと主張する女性が起こした裁判の記事を読みました。
 
事は1990年代に遡るそうなのですが、トランプ氏側は否定しており、出廷を拒否しているというものです。
 
記事の引用をどうぞ。
 
 
He has said through his lawyer that he will not take the stand in the E. Jean Carroll case, and thereupon he rested without calling any witnesses. Trump said he thought the case was going well.
 
Then he appeared to make an 11th-hour about face on testifying, saying, “I will probably attend (the trial), I have to go back for a woman that made a false accusation about me.”
 
(中略)
 
Trump’s on-again, off-again approach to testifying reminds me of a childhood friend with whom I played chess. Characteristically, he would move a piece but not take his hand off it until he had spent endless time assessing the situation.
(James D Zirin. To testify or not to testify: Trump’s fateful choice. The Hill. May 8, 2023.)
 
 
トランプ氏は出廷しないという姿勢を取っていましたが、直前になって、やっぱり出廷すると言った、とあります。(が、結局のところ出廷しなかったもようです。)
 
引用の最後の部分で、
 
 
Trump’s on-again, off-again approach to testifying...
 
 
とありますが、“on-again, off-again”という見慣れない表現が目に留まったので取り上げました。
 
ランダムハウス英和辞書を引くと、
 
 
始まったと思ったら終わり終わったと思ったらまた始まる、断続的な、とぎれとぎれの
 

と載っており、さらに、


an on-again, off-again romance(熱したり冷めたりの恋愛)


という例文が紹介されています。

この言い回しですが、“on-again-off-again”、あるいは“on-again/off-again”と綴ることもあるようですが、要は、オン(on)になったり、オフ(off)になったり、状態が度々変わるさま、一定の状態が長続きしないことを指す表現なのだろうと思われます。

この「オン、オフ」は、上記の例文にもあるように、恋愛の話で使われることが多いようで、コーパスの検索では、


on-again, off-again relationship
on-again, off-again boyfriend/girlfriend
on-again, off-again affair
on-again, off-again romance


といった用例が上位に見られます。(つまり、くっついたり、離れたり、ということですよね。)

トランプ氏の記事での“on-again-off-again approach”の方は、どっちつかずの、ということだと解釈されます。

恋愛にしろ、態度にしろ、一体どっちやねん!?というニュアンスもありそうです。


2023年5月8日月曜日

「スペル」 ー spell

アメリカ大統領選が来年に迫っているとあって、民主、共和両党の候補者に関する話題がこのところ増えています。

共和党からはトランプ元大統領が既に立候補を表明、民主党は現職バイデン大統領が2期目の続投に意欲を示しています。

両候補に対して取り沙汰されるのが年齢であるというのはご存知の通り。特にバイデン氏は現在80歳であり、これまでにも色々あったことからも、常に取り沙汰されています。

ある意味、格好の攻撃材料になっているきらいがありますが、今日読んだ記事によると、バイデン氏の支持率は下落傾向にあると報道されています。


President Joe Biden's job approval rating hit a career low in the latest ABC News/Washington Post poll and a broad 68% of Americans say he's too old for another term as president -- views that put him in a trailing position against top Republicans in early preferences for 2024.

Just 44% see Biden's potential opponent, Donald Trump, as too old. (Trump is 76; Biden, 80.) Beyond chronological age, Trump far surpasses Biden in being seen as having the mental sharpness and the physical health it takes to serve effectively as president, with wide doubts about Biden on both fronts.
(Gary Langer. Broad doubts about Biden’s age and acuity spell Republican opportunity in 2024: POLL. ABC News. May 7, 2023.)


ABCニュースとワシントンポストが共同で行った世論調査によれば、年齢的な面での懸念に関してはトランプ氏優位だそうです。

記事のタイトルに着目したいと思います。


Broad doubts about Biden’s age and acuity spell Republican opportunity in 2024


目に留まったのは、"spell"という動詞です。

"spell"という単語には幾つかの意味がありますが、まず思い浮かぶのは(単語の)スペル、綴りという意味でしょう。動詞では単語を綴る、綴りを言う、という意味で用いられます。

ここではそれらとは異なる意味で用いられているようですね。

辞書を改めて引いてみると、"spell"には上記の意味に加えて、


意味する、・・・の結果をもたらす(招く)


という意味があるのでした。これは知りませんでした。Merriam-Websterオンラインの語源解説によると、ゲルマン系の語源で元は「意味する」、「話す」といった意味でしたが、それが「(一字一字を)ゆっくりと話す」という意味になったそうで、綴りを言うという、我々が馴染みのある意味は後からできたということになりますが、意外ですね。

ところで、上で「まず思い浮かぶのは(単語の)スペル、綴りという意味」と書きましたが、"spell"という単語に名詞としての意味(つまり、綴り、スペルという意味)はありません。あるのは、動詞の意味だけです。

名詞の意味としての「スペル」という時は、"spelling"と言います。これも辞書を引くまで知りませんでしたねぇ。



2023年5月5日金曜日

flake out

オーバーブッキング、またはダブルブッキングというと、飛行機などで予約したはずの座席が他人の予約とかぶってしまっていることを言いますね。

私自身は経験したことがありませんが、昔、団体旅行の際に同行者がダブルブッキングと思われるハプニングのおかげで、予定よりもワンランク上の座席を提供されたということがありました。残念ながら座席のグレードが上がったというだけで、サービスは変わらなかったと聞いた記憶があります。

なぜこうしたことが起きるのかについいては、例えば航空会社は利益を最大化するために敢えてオーバーブッキングをしている、という記事を読みました。

つまり、直前の予約キャンセルなどを見越して、座席数以上の乗客数の予約を受け付けているというのです。実際にキャンセル等が発生すればその「穴埋め」をすることができます。


Overbooking is the practice of airlines selling more tickets than there actually are seats on a given plane for a given flight. Airlines usually use complicated algorithms that determine whether to oversell and by how much based on factors like time of day, passenger connections, what kind of traveler is usually on the flight, and more — all in order to maximize revenue on a flight.

(中略)

Flights are only oversold if there is demand for it — so the new increased overbooking rate would be a way to "harness the demand set better," according to Hauenstein. In other words: flights in high demand can fly fuller even if passengers flake out, and Delta can keep the fare paid by both the passenger actually on the flight and the one who never made it. That's the best-case scenario.
(Dennis Green. Delta could bump even more people off flights as it looks to increase 'overbooking' to wring out more profits. Insider. April 24, 2023.)


航空会社によるこうしたオーバーブッキングの手法には各社独自のアルゴリズムがあるそうですが、それこそAI(人工知能)により過去の蓄積されたデータを分析することでその精度も上がってくるのでしょう。

ところで、引用した記事のくだりに、"flake out"という表現が出てきます。


flights in high demand can fly fuller even if passengers flake out, and Delta can keep the fare paid by both the passenger actually on the flight and the one who never made it.


見たことのない表現ですが、"flake out"の"flake"とは小片、かけらを意味する名詞に同じで、カタカナでも使う「フレーク」です。ここでは動詞として使われています。

コンテクストから意味の想像はつくのですが、"flake out"は俗語の表現で、


to fail or neglect to do or participate in something previously scheduled, agreed upon, or assigned
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味なのでした。

つまり、予定していたことを取り止める、ということなんですが、意味合いとしては多少の非難が込められており、「ドタキャン」、あるいは「すっぽかす」が近いようです。

動詞の"flake"にはこの他、疲れて寝落ちするとか、奇抜な振舞いをする、といった意味もあるらしく、名詞の"flake"(フレーク)からは想像し難いものがあります。


When you're flaked out on the sofa watching TV in the evening, use the time for self-massage on those tired legs.
(Bicycling, 1999)



2023年5月4日木曜日

breadcrumb

デジタルの時代、技術は日進月歩、否、秒進分歩(!?)とも言われますが、1人1台のスマートフォンが当たり前のようになり、生活インフラとなっている世の中にあって、セキュリティのリテラシーとも言うべきものが追い付いていない状況は否めないのではないでしょうか。

既によく知っているという方には釈迦に説法ですが、以下に引用する記事によれば、スマホで撮影した写真を安易に共有すれば、撮影したデバイスや日時はおろか、居住地や訪問先までもが相手に分かってしまうという話です。


You meet someone new on a dating app., then take the conversation to text messages. Things are going well, and you send a picture of the sunrise one morning. Harmless, right? Boom! You may have just given away your exact location.

Our tech stores all kinds of tidbits about where we are, what we’re doing, when we’re doing it, you name it. Suspect someone is cheating? Tech leaves those breadcrumbs, too.

Our apps and services are tracking where we are, too. You can put a stop to that.
(Kim Komando. Most people make this major mistake sharing photos. Fox News. April 30, 2023.)


記事中、


Tech leaves those breadcrumbs, too.


とありますが、この"breadcrumb"というのが今日の1語です。

"breadcrumb"とはパン屑(くず)、パン粉のことですが、ここではどういう意味なのでしょうか?

正直を言いますと、"breadcrumb"に情報システム、あるいはセキュリティに関連する意味合いがあるとは知りませんでした。手元の辞書を確認しましたが載っていませんし、Merriam-Websterのオンラインでも出てきません。

グーグル検索しますと、Collins Dictionaryのサイトに以下のような定義がありました。


computing
a navigational aid which allows a person viewing a web page to see the various levels within the website's hierarchical structure through which he or she has navigated


日本語では「パンくずリスト」と呼ばれているそうなのですが、ウェブサイトなどを閲覧している時に、今見ているウェブページがサイトのどの位置(階層)に位置しているかを明示したものを"breadcrumb"と言うそうです。馴染みのあるものとしては、例えば、「ホームページ > (第1階層) > (第2階層)...」といった具合に、">"のシンボルで示される類の情報です。

しかし、どうもこの"breadcrumb"の意味合いは冒頭で引用した記事のコンテクストにはうまく当てはまらないように思われました。

そもそも、ウェブサイト内の階層表示を何故"breadcrumb"というのか、パンくずに例えるのか、疑問です。

ところが、Collins Dictionaryのサイトによれば、このような意味はグリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」のお話しから来ていると補足説明があります。

子供のころに読んでもらった記憶が微かにありますが、家を追い出されて森に追いやられたヘンゼルとグレーテルの兄妹は森への道すがらパンくずを道に落として、家に帰れるようにしたというものです。

なるほど、そう言われてみれば、"breadcrumb"の意味合いとしてしっくりくるというものです。ウェブサイトにおける"breadcrumb"の役割はサイト訪問者が迷子にならないための「パンくず」の役割を果たしているという訳ですね。

しかし、やはり冒頭の引用における"breadcrumb"はこれとは異なる意味で用いられていると考えられ、定義を検索してみましたが見当たりません。

情報システム、また情報セキュリティのコンテクストで検索してみますと、"digital breadcrumb"という表現が使われているものが目に留まりました。


It may seem harmless, but when you enter your email, you’re sharing a lot more than just that. I’m hoping this column, which includes some workarounds, persuades you to think twice before handing over your email address.

First, it helps to know why companies want email addresses. To advertisers, web publishers and app makers, your email is important not just for contacting you. It acts as a digital bread crumb for companies to link your activity across sites and apps to serve you relevant ads.
(Brian X Chen. Everyone Wants Your Email Address. Think Twice Before Sharing It. New York Times. January 25, 2023.)


このようなコンテクストにおける"breadcrumb"は意図せず残してしまう足跡、オンライン上のアクティビティの記録、といったもので、個人が特定されたり、公開することを意図していない内容が晒されたり、相手に渡ってしまうことを指しています。


2023年5月3日水曜日

flimsy

つい先日ですが、娘が英検の参考書を買いに行くというので近くの書店まで一緒に行きました。

ずらりと並んだ英検の過去問、単語集、リスニング強化、二次の面接対策本・・・。

英検もTOEICもTOEFLEも、およそ試験や検定といったものからご無沙汰している私は、久し振りにこれらの類いの書籍を前に、正直なところアドバイスもできず、どれを買っても同じように思えて戸惑いました。

頼りにならない私をよそに娘は品定めを始めましたが、私は英検1級の過去問集の1冊を手に取ってみました。

単語空所補充の問題は定番中の定番といえます。こういうのは変わらないんだなぁと思いながら見た第1問が以下のようなものでした。


The door was so (       ) that his foot went straight through the wooden panel.

1 musty    2 fuzzy    3 flimsy    4 hazy


正直を言いますと解答に一瞬迷いました。ただ、2のfuzzy、4のhazyでないことは明らかです。

文意は、ドアが非常に〜だったので、木製のパネルを蹴破った、というものです。

答えは4のflimsyです。弱い、薄っぺらな、脆い、という意味の形容詞ですが、これも直ぐに頭に出てきませんでした。(脳の老化が進んでいます・・・。)

カビ臭くて腐ったようなドアも簡単に蹴破れるよなぁ、などと思いながら帰宅し、改めて"flimsy"を辞書で引きます。

"flimsy"という単語は音位転換によりできた単語なのでした。

音位転換というのは、単語における音素が入れ替わってしまうことを指す言語学の用語で、言い間違いなどにより発音が変わってしまったものがスペルにも反映されることがあります。

"flimsy"に関して言えば、この単語は"film"の音位転換であると語源欄に説明があります。

つまり、"flimsy"とは"film"(薄い膜)が*flimへと変化したもので、これを知っていれば"flimsy"の意味合いも想像が付くというものです。

ところで当たり前のことかも知れませんが、試験対策本にこんな音位転換だとか、語源がどうだとかいう説明をしているものはありません。

必修ワードxxx語といった類の参考書はひたすら英単語とその和訳を並べて暗記を促すものです。勿論、暗記することも必要ですが、その努力の一部でも単語の成り立ちに注意関心を向けるならば、より楽しく、また深く理解が進むのではないかと思うのですが。

音位転換については以前取り上げた"tusk"もご覧下さい。


2023年5月2日火曜日

bank holiday

昨日に続き、イギリスで今週末行われる新国王の即位式に関連する記事から引用です。

国を挙げての一大イベントということもあって、即位式が行われる5月6日土曜日の翌週月曜日(8日)は祝日になるそうです。


What date is King Charles's Coronation?

King Charles's Coronation is set to take place on Saturday May 6, 2023 at Westminster Abbey.

When will the bank holiday take place? 

The Government announced last year that an additional bank holiday will take place to mark the Coronation. 

The bank holiday will fall on Monday, May 8, following the Coronation ceremony on the Saturday.
(Amira Arasteh. When is the bank holiday to mark King Charles’s coronation? The Telegraph. April 30, 2023.)


記事では"bank holiday"とあります。直訳すれば「銀行の休日」ですが、イギリスにおいて"bank holiday"とは法律で定められた休日(公休日)という意味合いです。

研究社新英和大辞典の説明によれば、1871年に制定された公休日は当初銀行だけに実施されたことからこのような名称になっているそうです。つまり他の業種はお休みにはならなかったということなのですが、銀行がやっていないとなると他の業種も仕事にならないので(!?)休むようになったとか。

このような背景のある"bank holiday"ですが、イギリスにおいては殆ど"public holiday"と同義で用いられているきらいがあります。

ちなみに昨日5月1日はイギリスでは休日でした。これは5月の第1月曜日が公休日("bank holiday")と定められてらいることによります。

日本では「メーデー」となりますが、祝日ではないですね。

海外の同僚にはこの時期(日本のオフィスはしばらくレスポンスが悪いよ、という予告の意味でも)日本のゴールデンウィークを説明するのですが、そもそも自身に関係の無い祝日など覚えてもくれません。各国の祝日というのはややこしいという印象がありますが、この辺でやめておきます。

2023年5月1日月曜日

coronation

このところ英メディアのヘッドラインを斜め読みしていますと、イギリス国内では目下、チャールズ新国王の即位式の話題で持ち切りのようです。

今週、5月6日土曜日に予定されている戴冠式(coronation)の準備が着々と進められている模様です。以下引用の記事によれば、記念コンサートがウィンザー城で予定されているようで、国を挙げてのお祭り騒ぎ(祝賀行事というべき!?)のようです。


Around 20,000 members of the public are expected to attend the event next Saturday where they will be greeted by a stage lit in red, white and blue against the background of the East terrace of Windsor Castle, according to mock-up pictures released by the BBC.

The stage will fan out into the audience and have a halo-like screen surrounding the roof, which the broadcaster said will "symbolise the Crown protecting the nation".
(King's Coronation Concert to feature Union Flag-shaped stage. Sky News. April 30, 2023.)


さて、改めて説明の必要もないかもしれませんが、戴冠式を意味する"coronation"という単語は、"coronate"という動詞から来ており、この動詞は王冠を意味する"corona"(そうです、新型コロナも!)から来ています。

王冠を意味する単語に、"crown"があるのはご存知でしょう。日本のクルマのブランド名にもあり、王冠のロゴが使われていますね。

"corona"と"crown"はいずれも同じラテン語を語源としていますが、英単語としては異なるスペルと意味を持つ2つの単語に派生しました。このような関係にある単語を言語学では二重語と呼び、英和辞書の語源欄にも補足説明がされているかと思います。

英語にはこのような二重語、さらには三重語とされる単語があり、単語数の豊富さに繋がっているものです。