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2020年6月5日金曜日

weigh in

今週の米国内トップニュースはミネソタ州で発生した黒人男性の死亡事件に関する話題ですが、その死を悼み、不当な人種差別に抗議する声明が、人権団体や著名人はもとより、一般企業からも発信されているという事実があります。

中でもアイスクリーム製造メーカーのBen & Jerry'sが、白人至上主義への反発を鮮明にしていることが取り上げられています。


It's hard for brands to weigh in on social issues. At best, it can reaffirm a loyal customer base of the company's values, and at worst, it'll be seen as a disingenuous publicity stunt.

After protests over the killing of George Floyd while in Minnesota police custody erupted around the nation, many brands have taken the rare step of weighing in.

Brands ranging from Amazon to Peppa Pig have shown their support for the Black Lives Matter movement or against racism. Ben & Jerry's went one step further to call out white supremacy.

The ice cream company posted Wednesday on Twitter, "The murder of George Floyd was the result of inhumane police brutality that is perpetuated by a culture of white supremacy."
(Josh Rivera. Ben & Jerry's calls for the dismantling of 'culture of white supremacy.' USA Today. June 3, 2020.)


一企業が、人種差別のようなセンシティヴな問題に見解を示すというのは、簡単なことではないという見方があります。表層的な、上辺だけの意見表明は却って顧客の反発を招くことになります。

引用した記事の中で、


weigh in (on social issues)


という表現が使われています。

この“weigh in”というフレーズはこれまでにも見かけることがあったのですが、何となく分かったような気になって、きちんと調べてみることをしていませんでした。

日本語には少し訳しにくい気がします。まずは、"weigh”という動詞には目方(重さ)を測る、という意味が最初に思い浮かびますが、ここでは物理的な計測のことを指しているのではないことは明らかですね。

"weigh in"という動詞句として辞書を引いてみると、ボクサーやレスラーの(試合前の)計量という意味の他、


(事実・意見などを)得意になって持ち出す(論じる)、ひっさげて参加する
(ランダムハウス英和辞書)


という意味が載っており、恐らくはこれが相当すると思われます。

ところで、辞書では、"weigh in"という動詞句として載っていますが、上記の意味合いで使われる場合に前置詞withが続くというように補足されています。研究社の新英和大辞典(第五版)においても、


(・・・をもって)参加する、加わる;援助する、仲裁に入る [with]


となっており、"weigh in with~"のパターンを示唆していますが、最初に引用した記事では、"weigh in on~"です。

前置詞がwithとonとで違いがあるのでしょうか。

"weigh in on"の用例が多いですが、それに劣らず、"weigh in with"もかなり定着した用法のようです。

英和辞典では具体的な英文例が記載されていないので、コーパスを頼ってみます。


Memories of hurricane Katrina are still fresh, and anxieties are building over this new disaster. So thousands of Americans would like to pitch in and help as they did after the 2005 hurricane. But with no easy avenue for volunteering, average citizens, along with many independent scientists and entrepreneurs, are instead weighing in with their own ideas for cleaning up America's worst-ever environmental disaster.
(Christian Science Monitor, 2010)


前置詞withを用いた用例は上記の引用のように、手段としての意味合いで使われているようです。(つまり、〜をもって、の意味。)

一方、前置詞onを用いた用例は、対象、トピックを指すもの(つまり、〜について、の意味)であり、そうした違いで前置詞が選択されているものと思われます。

英和辞書で前置詞withについては言及しながら、前置詞onを取る用法が取り上げられていない理由はよく分からないのですが、取り上げても良さそうに思います。

“weigh in”というフレーズに戻りますと、目方を測る、という意味から発展したのではないかという気がしてきます。

つまり、議論の的となっている話題に対して、主語にくる個人、もしくは団体(企業)の表明する意見(立場)がどのように受け止められるのかを「(推し)測る」ということなのだと解釈できるように思います。


1 件のコメント:

  1. 蘭です。
    丁寧の解説、ありがとうございます。今日はなかなか難しい表現です。on と with の違いは従来の使い方と同じようですね。withは手段を表し、onは着目点です。
    とても勉強になりました。

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