新型コロナウィルスの感染拡大で経済が大打撃を受ける中、各国で現金給付などの緊急支援策が講じられています。
日本では、やれ10万円だ、30万円だ、とか、所得制限をどうするだとか、揉めていますが、米国では景気刺激策としての給付が先日から実施されたらしく、メディアでも取り上げられています。
一人あたり1,200米ドルの支援策は"stimulus check"と呼ばれています。"check"というからには小切手が郵送されるのかと思ったら、どうやら現金が口座に直接振り込まれるようです。
この給付金が既に死亡した家族にも支払われたというのがニュースになっています。
The federal stimulus checks received by millions of Americans Wednesday to help ease the economic windfall caused by the coronavirus pandemic were also sent to unexpected recipients — dead people.
Numerous Americans took to social media to share tales of the misdirected dough delivered as part of the $2.2 trillion bailout package passed by Congress last month, including Republican Congressman Thomas Massie.
The Kentucky lawmaker tweeted an image of a text from a friend whose deceased father received a $1,200 check. The father died in 2018.
(Kenneth Garger. Coronavirus stimulus checks are being sent to dead people. New York Post. April 15, 2020.)
この記事を読んで、あっと思ったのです。それは、
to help ease the economic windfall caused by the coronavirus pandemic
という箇所の"windfall"です。
この"windfall"については以前取り上げたことがありますが、意味するところは「棚ぼた」、つまり思いがけない収入や利益のことを指すと理解していました。
ところが、ここでの"(economic) windfall"はまるで逆の意味のようです。パンデミックによってもたらされた("caused by the coronavirus pandemic")という形容が付いていますから。
文の解釈を誤ったかと思い、何度か読み返してみたものの、"ease"(軽減する、緩和する)という動詞の目的語となっていることからも、やはり"windfall"にはネガティヴな意味があると解釈せざるを得ないと思われました。
同じく"stimulus check"についての別の記事を引用してみます。
While wealthy Americans are not eligible for the comparatively measly $1,200 stimulus checks that are now being disbursed to many Americans, they are on pace to do even better. 43,000 taxpayers, who earn more than $1 million annually, are each set to receive a $1.7 million windfall, on average, thanks to a provision buried in the Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security (CARES) Act.
(Shahar Ziv. How Some Rich Americans Are Getting Stimulus ‘Checks’ Averaging $1.7 Million. Forbes. April 14, 2020.)
同じ"windfall"ですが、先に引用した記事とは意味合いの違いが読み取れると思います。つまり、ニュアンスが全く逆です。
そこで片っ端から手元の辞書、オンライン辞書を当たるのですが、利益や臨時収入といったポジティヴな意味に加えて、その逆の「損失」や「収入減」を載せているものは皆無でした。
果たして、誤用では?とも思われるのですが、ご存知の方はお教えいただけると幸いです。
ちなみに、コーパスも当たってはみましたが、ネガティヴな用例は見当たりません。
そもそも"windfall"とは強い風の影響で地面に落ちてしまった果実を指していたもので、思いがけない利得という意味はそこから発展したものです。
The notion connecting the tree sense of windfall with the sense of an unexpected gain comes from the notion of fallen fruit being there for anyone’s taking.
(Merriam-Websterオンラインより)
ところで、地面に落下してしまった果実は、通りがかった人がそれを拾う分には利得でしょうが、果実園の人にとっては損失、という見方もできるかもしれません。
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蘭です。
返信削除記事を読んでみると、ここに出た「economic windfall」は経済のつらい時期のように捉えられると私は思いますが、windfallはどういうネガティブな意味があるかはわかりません。