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2018年11月15日木曜日

勘違いしていました ― bailout

恥をさらすようですが、また勘違いしていました。

"bailout"という単語があります。財政的な援助を行うことを指すのですが、例えば政府による大企業への緊急財政援助といったお堅いコンテクストで使われることもあれば、以下のように身内の間で単に金銭的援助をするというようなコンテクストでも使われます。


Despite making more than $52,000 annually, 30-year-old British digital marketer Sian Teasdale cannot seem to pay her own way in life.

Sure, she banks well over the average UK salary of £27,271 (about $35,452 in US dollars), but Teasdale almost always has “no choice” but to beg for a $130-$650 bailout from mom and dad at the end of every month, she says in a TMI chat with Grazia UK that’s inciting outrage online.
(Hannah Fishberg. Why do millennials expect mom and dad to bail them out? New York Post. November 14, 2018.)


この"bailout"ですが、"bail out"という動詞のフレーズとしても同じような意味合いです。"bail"については比較的馴染みがある「保釈」、もしくは「保釈金」という意味の単語が思い浮かびますが、その"bail"に同じもの、あるいはそれから来ているのかと漠然と思っていましたが、それは勘違いでした。

"bail"という単語についてはいくつかの意味があり、それぞれ語源を異にする別の単語なのですが、"bailout"の"bail"は、


船から水を汲み出す


という意味なのでした。

語源を辿ると手桶、つまり水を汲み出すのに使う道具を指す中期フランス語のbailleから来ているそうです。

船から水を汲み出すのは船が沈んでしまわないようにする訳で、そこから「窮地を脱する」の意味が生まれたようです。"bailout"には、飛行機などからパラシュートで緊急脱出するという意味もあります。

ところで、"bail"という動詞の意味については、辞書によって扱い方が様々なようです。つまり、エントリの内容が一定ではないのです。

Merriam-Webster(オンライン版)では、「保釈金によって保釈する」(to procure the release of by giving bail)という意味と、「窮状を救う」(to help from a predicament)という意味が"bail"の1つのエントリ下で列挙されています。

ランダムハウス英和辞書では、「保釈」の意味の"bail"と、「(特に経済的危機にある人・会社などを)救う」という意味の"bail"は別エントリになっていました。

American Heritage DictionaryではMerriam-Websterに同じく、これら2つの意味は1つのエントリで列挙されています。

そしてさらにややこしいのですが、"bail"には「(責任回避などのため)手を引く;(窮境から)逃げ出す」(ランダムハウス英和)という意味もあり、この点についてはAmerican Heritageも"To abandon a project or enterprise"という意味を載せており一致しているのですが、Merriam-Websterでは定義そのものが見当たりません。

研究社大英和はどうかというと、「保釈」の意味と「窮地を救う」という意味は同じ”bail”のエントリにあり、American HeritageやMerriam-Websterなどと同じ扱いです。「手を引く」の意味は、American Heritageに同じく、「水を汲み出す」の意味がある”bail”のエントリにあります。

援助するのと手を引くのとでは全く正反対の意味になってしまいますが、面白いですね。


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