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2011年3月9日水曜日

良い意味ばかりではない ― full-fledged

"full-fledged"という修飾語があります。ご存じの方は多いでしょう。よく使われる表現です。

例えば、 


 a full-fledged lawyer


といった具合に、“一人前の”という意味で用いられます。

"fledge"とはドイツ語源で、動詞の"fly"とも同根なのですが、飛ぶために必要な羽が生えそろっていることを指します。“羽が生えそろっていない”のはまだ未熟な訳で、"full-"ということは巣立つのに十分だということです。

さて、本題ですが、私は"full-fledged"を上記のように解釈して、イコール“一人前”という和訳で理解していたものですから、下記の実例には少々面食らったというか、これって正しい用法なの?と正直なところ思いました。


In the biggest government study of its kind, researchers found that more than half a million American teenagers have an eating disorder – and many are not being treated for the problem.

The data, which was released online Monday in the Archives of General Psychiatry, includes interviews from more than 10,000 teenagers between the ages of 12 and 18 from across the country.

The most popular eating disorder was binge eating, which affects more than 1.5 percent of the teens studied. Less than 1 percent had bulimia, and 0.3 percent suffered from anorexia. Overall, 3 percent had a lifetime prevalence of one of the disorders. An additional 3 percent of teens in question had some symptoms, but not full-fledged eating disorders.
(Study: More Than Half a Million Teens Have an Eating Disorder. Fox News. March 8, 2011.)


"full-fledged"が"eating disorders"を修飾しているところに違和感を感じたのです。摂食障害に一人前とか、そうじゃないとか、言いませんよね?

そうすると、"full-fledged"には、“一人前”とか、“成熟した”といったポジティブな意味の他に、何か病気や症状などがある程度まで“進行した”、といった意味を想定しなくてはならないのですが、手持ちのランダムハウス英和辞書では“発達した、進展した”といった意味はありましたが、どちらかというと今回のようなネガティブな意味をカバーしていなかったのです。 

American Heritage Dictionaryでは、


Having full status or rank


という定義(こちらはいわゆる一人前、とか“ひとかどの”、という意味です)に加えて、


Having reached full development; mature


という定義がありますので、これが相当するようです。コーパスを頼りに実例を探しますと、確かに今回のような用例は見られます。


When the memo was released by a congressional committee in January, it turned what was then just a record-breaking bankruptcy into a full-fledged scandal. It revealed that the problems were known and documented at all levels of the company even earlier than previously reported.
(Tom Fowler. THE FALL OF ENRON. Houston Chronicle. 2002.)


“一人前”、“発達した”、“進展した”という意味はいずれもポジティブに使われることがほとんどだと思います。対して、今回取り上げたような対象はネガティブな点にフォーカスしており、それらは、“(病状として)進行した”とか、“(スキャンダルなどが)発展した”といった意味で用いられています。

全ての英和辞書をチェックした訳でもありませんが、案外盲点になっているのかな、と思います。

2 件のコメント:

  1. マンガの英語版 Master Keaton の1巻で、中学生の娘さんが授業に出てなくてfull-fledged drop out になるかもという表現が有りました

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    1. コメントありがとうございます。興味深い用例ですね。

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