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2025年2月17日月曜日

plan B

アメリカの大学構内に経口避妊薬の自販機設置、というニュース記事を見かけました。


The University of Connecticut started providing Plan B through new vending machines on campus in early February following the passage of a 2023 law expanding contraception access in the state.

The state law — introduced after the overturning of Roe v. Wade — allows licensed pharmacists to prescribe contraception at pharmacies across the state following a brief training program and also permits over-the-counter medications like the emergency contraceptive Plan B to be sold in vending machines.
(Caitlin McCormack. UConn installs emergency ‘Plan B’ contraception vending machines on campus. New York Post. February 16, 2025.)


日本の大学で避妊薬の自販機を設定しているようなところはあるでしょうか?(多分無いと思いますが。)

記事で引っ掛かったのが、


started providing Plan B through new vending machines on campus


というくだりの"Plan B"です。読み進めていくと、


over-the-counter medications like the emergency contraceptive Plan B 


とあり、大文字で始まる"Plan B"とは経口避妊薬そのものを指していると分かります。

果たして"Plan B"とは経口避妊薬(一般名レボノルゲストレル)のブランド名なのでした。

ところで、一般的に"plan B"というと、想定していた状況に対する対策がうまく行かないことが分かったときに取る「次善策」という意味で用いられます。

つまり「プランA」がダメだったので、「プランB」に切り替える、というようなコンテクストで用いられるもので、英語においても、"plan B"とは、


an alternative plan of action for use if the original plan should fail
(Merriam-Webster Dictionary)


と定義されているところです。

経口避妊薬"Plan B"は、別名"morning-after pill"とも呼ばれ、避妊をせずに性行為を行った後に服用するもので、日本語では緊急避妊薬と訳されます。

こういう状況における「プランA」は恐らくはきちんと事前に避妊対策をしておくということなのでしょうが、野暮を承知で言えば、それがうまく行かなかった時のための次善策としての"Plan B"を避妊薬の商品名にするとは、なかなかしたたかなマーケティングのようにも思われます。

大学の構内で避妊薬の自販機を設置するというのも驚きですが、ご存知のように避妊や中絶に係る女性の権利(birth control)にまつわる議論は米国においては特別なものがあります。特に2022年、女性の中絶する権利を認めたRoe v. Wade判決が覆されたことを受け、リベラルな州では独自の州法により女性の権利擁護を図っており、上記引用におけるコネチカット州もそのひとつです。

中絶に慎重な立場を取る共和党は"Plan B"の流通、使用拡大を問題視しており、こうした州の取り組みと政府の対立が浮き彫りになりそうです。

今日の1語の投稿のラベル「商標」は、商標名が一般名詞化した英単語に付けてきたものです。"Plan B"は一般名詞の表現が商標に用いられているもので、言わば逆のパターンなのですが、興味深い例として同じラベルとしました。

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