最近30日間のアクセス数トップ3記事

2023年8月31日木曜日

roller coaster

新型コロナウィルス禍はひと段落したというところではありますが、ここのところまた感染者が増加しているというニュースを耳にします。

日本国内では定点観測による感染者増加が報じられています。海外ニュースで見るのは新しい変異種の話題ですが、実際のところマスク着用を推奨するという話にもなっていふのはやや驚きです。


If you’re at high risk of serious illness or death from Covid-19, it’s time to dust off those N95 masks and place them snugly over your nose and mouth to protect yourself from a recent uptick of the virus, according to a growing number of experts.
(Sandee LaMotte. It may be time to break out the masks against Covid, some experts say. CNN. August 23, 2023.)


外出時、店舗や電車内でマスクをしている人も段々と少なくなってきているように感じます。

果たして新しい変異種による感染拡大が今後発生するのでしょうか?再び、ソーシャルディスタンスが呼び掛けられる日が?

Covidのウィルスは完全には無くならない、というのが正しい認識のようです。


Levels of the virus in wastewater from toilets — which can be an early indication of a Covid spike in a community — have doubled, said Dr. Robert Wachter, professor and chair of the Department of Medicine at the University of California San Francisco.

(中略)

“The virus is always lurking, waiting for openings, so I think Covid is just going to be a bit of a roller coaster, probably forever,” Wachter said.
(ibid.)


ウィルスは無くならず、感染者も一時的に増えたり、また減ったりを繰り返す、つまり、


roller coaster


だというのです。

"roller coaster"(ローラーコースター)は登ったり下がったりするスリルを楽しむ遊園地のアトラクションです。ちなみに、「ジェットコースター」は和製英語です。

そのようなローラーコースターの動きを比喩的に捉えた表現ですが、景気や経済、感染者数、人気など、上がり下がりの変化を言うのに用いられるようになったのは1940年以降だそうです。(Merriam-Webster)




2023年8月30日水曜日

Gadsden flag

ガズデン旗(Gadsden flag)というものをご存知でしょうか?

黄色地にトグロをまいたヘビが描かれている旗で、ヘビの下には"DON’T TREAD ON ME"と書かれています。

この旗を模したワッペンをバックパックに付けて登校した小学生の男児が学校から閉め出されたということで、母親は学校側に抗議、学校側はルールに則った対応したまで、と対立している模様です。

やり取りの詳細はSNS上で公開され、議論を呼んでいます。


A video circulating on social media platform X, formerly Twitter, this week depicted a young elementary school student in Colorado Springs, Colorado, being removed from class for having a Gadsden flag patch on his backpack.

(中略)

According to the staffer at the Colorado charter school, the patch was "disruptive to the classroom environment" and that it has "origins with slavery."
(Gabriel Hays. 12-year-old boy booted from class over Gadsden flag patch on backpack: ‘Origins with slavery’. Fox News. August 29, 2023.)


小生はこのガズデン旗というものを知らず、正直を申しますと初めて見たのですが、アメリカの歴史に根付く旗だとは、不勉強にして知りませんでした。

学校側はガズデン旗が奴隷制度に由来するものであり、人種差別的な主張に関連するものであるから不適切であるとしています。

これに対し男児の母親は学校側の認識は誤っており、ガズデン旗そのものはアメリカ独立戦争において英国への抵抗のシンボルとなったものであり、奴隷制を主張するものでは無いと主張、真っ向から対立しています。

実のところ、このガズデン旗なるものはアメリカ独立戦争時に海軍指揮官であったEsek Hopkinsが用いたもので、植民地化を進める英国への抵抗を示したものです。

ヘビの図柄は、当時流布していた、植民地化に翻弄される米国東部諸州をバラバラに切り刻まれヘビの絵に例えた風刺画に由来するもので、各州が団結することを呼び掛けたものだったそうです。

つまり、ガズデン旗の由来自体には何ら奴隷制度と関係するものは無いのですが、トグロを巻いたヘビのシンボルは抵抗のシンボルとして好んで用いられることとなり、政治的な主張、特に保守層や白人至上主義の色合いを帯びて来ます。

こちらのサイトの説明が詳しいですが、特に最近では、2020年の米国大統領選の結果を不服としたトランプ元大統領の支持者らが議事堂襲撃の際にガズデン旗を翻して集結したという事例からも、特定のイデオロギーとのリンクするものとなっているという事実も否めないようです。


2023年8月29日火曜日

whoopie

今日は成人向けの内容となります。良い子はご遠慮下さい。

記事の引用をどうぞ。


A Chinese couple who tried for years to conceive was flummoxed after discovering that they’d been having sex wrong the whole time, per a resurfaced report making its rounds on digital media.

“Four years of marriage and neither the husband nor wife knew how to get pregnant,” obstetrician Liu Hongmei, who saw the flustered Guizhou Province couple, told the Guiyang Daily News of their nil-conceived attempt, per the Mirror. “Couples so lacking in general knowledge are very rare.”

The married pair, ages 24 and 26, had sought out medical attention after they were unable to get pregnant despite making whoopie on the reg for four years straight.
(Ben Cost. This couple tried to conceive for years — turns out they were having sex all wrong. New York Post. August 28, 2023.)


子作りに励む若い夫婦は、4年間の努力も虚しく子宝に恵まれないと産科医を訪れたそうです。

記事では、


they were unable to get pregnant despite making whoopie on the reg for four years straight


とあります。

"whoopie"を辞書で引くと、どんちゃん騒ぎ、などと載っていますが、"make whoopie"といった言い回しは、しばしば性行為(を行う)という意味で用いられます。なお、手元にある辞書ではそのスペルは"whoopee"となっており、大きな声、歓声を意味する"whoop"から来ているようです。

さて、夫婦を診察した産科医は驚愕の事実を発見します。

引用した箇所にもありますように、この夫婦は妊娠するための、「正しい」性行為のやり方を知らなかったということなのです。

では、何が間違っていたのか?

今日の投稿は成人向け(!)ではありますが、ここに詳しく書くのも憚られますので、興味のある方は記事をお読み下さい。


2023年8月28日月曜日

Hades

ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が死亡した事件は世界に衝撃を与えました。乗っていた飛行機がモスクワ郊外で墜落したもので、ワグネルの他の幹部と共に、かつてプーチン大統領の側近であった同氏の死亡が確認されました。

以下は、ジョンソン元英首相が英デーリーメール紙に寄せた談話記事からの引用です。


He knew whose hidden hand was sending him 28,000 ft down, to be immolated with the rest of his Wagner group companions in a fireball in the countryside of the Tver region north of Moscow — and then on downwards, of course, for the shade of Prigozhin: down, down to Hades and the Tartarean pit below.

He understood what was going on because for the past few weeks he must, at the back of his mind, have been expecting it to happen — either that or something very like it.

Prigozhin knew whodunnit, and so do we all, don’t we?
(BORIS JOHNSON: That tumbling plane, and Prigozhin's televised immolation, are the ultimate proof there can never be a negotiated peace with Putin in Ukraine. Daily Mail. August 25, 2023.)


ジョンソン元首相は、プリゴジン氏を葬ったのは誰か、疑う余地も無いと言っています。飛行機が墜落した原因は未だはっきりしないようですが、ミサイル攻撃だろうと、積荷に仕掛けた爆薬だろうと、原因は何であれ、それをやった人間は明白だと言い切っており、他国の指導者が沈黙する中、激しい物言いだと思います。

"Hades"とはギリシャ神話に出てくる冥府、また黄泉の国、つまり死者が赴く場所のことです。

ジョンソン氏は、


down to Hades and the Tartarean pit below


と言っていますが、"Tartarus"とはHadesよりもさらに下の方にある、底無しの淵とされ、神話ではゼウスが神々に背いた巨人族(Titans)を罰して幽閉した、「悪人の懲罰所; 地獄」(研究社新英和大辞典)とされます。(以前の投稿"turtle"もご覧下さい。)

こうした表現が出てくるあたり、ジョンソン氏はギリシャ神話に精通しているのか、あるいは西洋人にとっては素養なのだろうと思います。



2023年8月25日金曜日

z's

アルファベット最後の文字である“Z”ですが、俗語で睡眠(sleep)の意味があります。(American Heritage Dictionary)

用例をどうぞ。


Window shopping could help you catch some z’s. Getting some steps in pre-boarding can actually help your quality of sleep, Martin says.
(Emily Lefroy. Sleep expert reveals five surefire ways to sleep peacefully on a plane. New York Post. August 14, 2023.)


正確に言うと、辞書では、"z’s"、つまり文字Zの複数形で使われる時、睡眠の意味になるとあります。

Merriam-Webster Dictionaryでは、z’sのエントリに"wink"と同義であるとあります。

以前取り上げた”forty winks"もそうですが、うたた寝や短い睡眠を複数形で表しているというのは共通していますね。

漫画などに出てくる、"zzz"もそうです。

用例として引用した記事は飛行機のフライトで眠るにはどうしたら良いかというテーマを取り上げたもので、機内ではアルコールは避けて、水を飲んだ方が良いということです。


If you want to get sleep on a plane, Martin says to avoid alcohol and sip on some water instead.

“If you are looking to sleep on a plane, always opt for water instead of alcohol,” he explained. “While it may make it easier for you to drift off, alcohol actually disrupts your sleep and lowers the quality —  making you more tired in the morning.”
(ibid.)






2023年8月24日木曜日

take your ball and go home

パンデミックの終焉に合わせるように、リモートワークからオフィス回帰(RTO)への動きが大手企業を中心に拡がりました。

リモートワークのベネフィットを享受していた従業員側の反発を受け、最低週3日(あるいは2日)はオフィス勤務、それ以外はリモートワークを認める、といった運用が多くの企業で採用され、それがスタンダードになるかとも思われましたが、今日読んだ記事によると週5日のオフィス勤務、つまり週休2日制前提とすると、リモートワークは一切無し、という動きが一部あるようです。


Goldman Sachs just upped the ante on the remote work reckoning.

The company is asking workers to come back to the office five days a week, according to a Bloomberg report. This is a much stricter policy than many other corporations, who have asked employees to return for at least two to three days a week.

And Goldman's move to raise the stakes on RTO could spur others to do the same.

"It's time to face reality. We're getting back to five days a week, because that's the reality. That's what we saw before COVID and that's what we're currently seeing," said Jason Greer, the founder and president of Greer Consulting, on CNBC Wednesday.
(Cadie Thompson. Goldman just threw down the gauntlet in the remote work reckoning. Your company could follow its lead. Business Insider. August 23, 2023.)


完全オフィス勤務へと先頭を切るのは金融大手のゴールドマン・サックスですが、予想される従業員の反発も物ともせず強行できるのは、会社側が余程優位にあるものと思われます。

記事でコンサルタントのコメントが引用されていますが、これが新しい現実だ、ということのようですね。そして以下のように続きます。


"Companies are coming from the perspective of this… If I pay you every two weeks to come into the office, you come into the office and if you don't like it, take your ball and go somewhere else because there are thousands of employees looking to get your position," Greer said.
(ibid.)


ここで、


if you don't like it, take your ball and go somewhere else 


というフレーズが出てきます。

初めて見る表現だったのですが、文脈から意味合いは想像ついたものの、こんな表現があったのかと気になって調べてみました。

辞書には載っていないようなのですが、ネットで検索してみるとこのフレーズは、


take one’s ball and go home


というもので、一種の慣用句として定着していると分かりました。

記事では命令形で出てくるのですが、このフレーズの成り立ちは、


I take my ball and go home


という能動形の発話文にあるようです。

いくつか拾い読みしたところでは、ここでの"ball"とは、野球のボールでもサッカーボールでも何でもいいのですが、子供達がボールで遊んでいるところ、自分の思い通りに事がいかない1人が癇癪を起こして・・・、という状況をイメージすると分かりやすい、ということです。

遊んでいるボールを持って来たのが癇癪を起こした1人だった、というケースです。「面白くないからもう辞めた、帰る。」

子供時代にそんなこともあったなぁと思い出しますが、その1人がボールを持って帰ってしまえば、そこで遊び(ゲーム)は終わり、残された子供は他のことをして遊ぶしかありません。

よって、


take one’s ball and go home


とは、集団の中で自分が思うように行かないからと途中で投げ出して家に帰る行為を言ったもので、行為者に対する蔑みみたいなものが込められています。

そしてこれが記事中のコメントのように命令形で用いられると、そのニュアンスはどうなるでしょうか。

前後の文脈と相俟って、相手の子供っぽさやひ弱さを仄めかしているのは明らかです。

この会社の場合、代わりはいくらでも居る、「嫌なら辞めていいよ」、というのがピッタリで、やはり会社優位ということでしょう。


2023年8月23日水曜日

read the room

大規模な山火事被害に見舞われたハワイ・マウイ島をバイデン大統領夫妻が訪問しました。遅ればせながらというのもありましたが、大統領の不用意な一言が批判を呼んでいます。


President Biden joking about the "hot ground" in Maui didn’t go over well for many X users on Monday.

Biden arrived in Hawaii that day to give remarks on the aftermath of that devastating wildfires that have taken the lives of over 110 people. Prior to his speech, he met and shook hands with a group of officials, stopping in front of a search and rescue dog. While petting the dog, he joked the boots the canine was wearing.

"You guys catch the boots out here?" Biden appeared to ask the press watching him. He smiled and said, "That’s some hot ground, man." 
(Lindsay Kornick. 'Read the room:' Biden jokes about the 'hot ground' while observing Maui fire damage. Fox News. August 22, 2023.)


マウイ島での死者は現時点で110人に上っているそうですが、まだ行方の分からない人もあり、捜索犬が投入されています。

バイデン氏は捜索犬の脚に装着されているブーツを認めて、


"That’s some hot ground, man." 


と声を掛けたといいます。これが、SNSで取り上げられ、島民や保守派の批判を呼んでいるものです。

バイデン氏のコメントは被災者感情を逆撫でしている、というところでしょうか。

山火事の中で死んでいった人たちを見舞うはずが、まだ火の燻る地面の捜索はさぞ熱かろうとコメントしたのは、単に笑いを取りたかったのだとしたら不適切の謗りを免れません。


"Read the room my guy," conservative commentator Steve Guest implored.
(ibid.)


と批判の声が上がりました。

"read the room"とはその場の雰囲気を読んで、適切に振る舞うという意味です。

部屋に共にいる人たちが形作る空気感みたいなものを敏感に感じ取り、振る舞いや発言を合わせるということは誰でも普通にやっている事で、最近では「空気を読む(読めない)」というのはKYと略されてしばしば中傷の対象になります。


When you read the room, you use your powers of observation to learn the general mood or emotional state of people in a particular setting. You may then act in a way that is similar to that mood. You match it.
(Learn How to 'Read the Room'. Voice of America. August 6, 2022.)


以前に取り上げた、"tone-deaf"もご覧下さい。


2023年8月22日火曜日

bougie

全米で最も"bougie"な州にニューヨークがランクインした、という話です。

ところで、"bougie"ってどういう意味?


When it comes to a taste for the finer things in life, New Yorkers have it in the bag.

A new survey ranked our state as the “most bougie” in the US, thanks to ritzy residents’ insatiable appetite for classy couture, glam gems and dazzling designer handbags. 

The Empire State was granted its “most bougie” moniker via an analysis conducted by gold and silver retailer SD Bullion. The report reviewed the Google trend data for 50 keywords related to expensive taste including brands, products and precious metals — and New York took the top spot for interest in authentic luxury labels.
(Asia Grace. NY ranks as ‘most bougie’ state in US — and $28K #BirkinMoms are damn proud of it. New York Post. August 21, 2023.)


記事の内容からは、グルメや高級ファッション、ジュエリーなど、要はお金のかかることにかけてはニューヨークが最高!ということのようです。

"bougie"を辞書で引いてみると、「坐薬」という意味がありましたが、まさかその意味ではありません。

ここでの"bougie"は俗語らしく、"bourgeois"、また"bourgeoisie"の事だそうです。


Bougie,” slang from “bourgeoisie,” has often used as an insult meaning someone with a lot of money but no taste.
(ibid.)


カタカナでも「ブルジョワ」ですが、その意味するところは「中産階級」のことで、決してお金持ちのことではありません。

ところが、この「ブルジョワ」という表現はお金持ちを指す形容に用いられる傾向があり、しばしば誤用の典型とされます。


2023年8月21日月曜日

ancillary

お盆休みが終わりました。今夏は行動制限の無い夏休みとあって、新幹線や飛行機の利用客が大幅増加という報道を目にしました。なお、小生は予定なく、自宅でおとなしくしておりました。

ところで、最近の飛行機のサービスというのは随分と複雑化している、という記事を見かけ、春にアメリカへ行った時のことを思い出し、妙に納得してしまいました。


And there is no doubt that buying a flight has become more complicated.

Airlines now offer us a plethora of extras at the booking stage, from speedy boarding and checking cabin bags to seat selection, all of which come at a price.

(中略)

So-called "ancillary" services have become a major part of airlines' business models, generating some $103bn (£81bn) globally last year - up from $40bn in 2013.

Airlines say that by "unbundling" extras such as food and drink or cabin baggage from the ticket price, travellers get more choice and cheaper fares overall.
(Daniel Thomas. Have airlines gone too far with their extra fees? BBC News. August 20, 2023.)


一言で言うと、やたらとオプションが多い、ということなのです。

座席の事前指定や、機内食選択、手荷物(持込、預け)の追加、等々、事細かにオプションがあり、しかも選択により料金が違ってくるという始末です。

「オプション」と書きましたが、記事中、


So-called "ancillary" services


と表現されています。

ここでの"ancillary"という形容詞は、二次的な、とか補助の、付随の、という意味で、同義語に、


extra
supplementary
accessory


などがあります。

ところで、この"ancillary"という単語の語源が興味深いのですが、ラテン語ancillaから来ており、その意味は女中(a female servant)というものです。

このラテン語ancillaはそのままのスペルで英単語にもなっており、辞書には付属物、役立つもの、手引き、といった意味が載っていますが、"ancillary"に比べるとあまり馴染みがない単語ではないかと思います。


2023年8月18日金曜日

spam

ハワイに壊滅的な打撃をもたらした山火事。米国内の食品会社が物資の支援を表明しました。

その支援物資ですが、「スパム」(Spam)だということです。


This is the best type of spamming.

The canned meat brand Spam has announced it’s partnering with the humanitarian organization Convoy of Hope to send food to Hawaiian residents who have been affected by the deadly wildfires ravaging the state.
(Emily Lefroy. Spam sends food to Maui amid devastating wildfires: ‘We see you and love you’. New York Post. August 16, 2023.)


そう、「スパム」です。

ネット時代に生きる我々は「スパム」と聞けば、迷惑メールを反射的に想起します。

ご存知の方も多いとは思いますが、"Spam"はそもそも缶詰にしたハムの商品名で、商標です。(故に大文字で始まります。)

"Spam"という商標名は、spiced hamを約めたものであると辞書に載っています。

そして、この"Spam"が迷惑メールの意味になったのは、イギリスのコメディ番組で"Spam"というフレーズが連呼されたことに因むという説があります。単語の連呼が、メール受信トレイを埋め尽くす迷惑メールを想起させたのでしょう。

商標の"Spam"は迷惑メールを送信する行為を意味する動詞になり、American Heritage Dictionaryでは、


To send (a message) indiscriminately to multiple mailing lists, individuals, or newsgroups.


という定義が見えます。

ハムの缶詰としての「スパム」は、当初は米軍人の食糧として重宝され、特にハワイ州ではスパムの消費量が多いそうです。

ハワイに行ったことがありませんが、スパムを使った「スパムにぎり」や「スパムおむすび」は現地で人気のグルメだそうで、いわゆるソウルフードみたいな位置付けのようです。


2023年8月17日木曜日

pound sand

ハワイでの大規模な山火事被害がクローズアップされています。マウイ島では広範囲が焼け、死者数も100人余りに上っています。

地球温暖化の影響が指摘されています。観光地故の地元民とツーリストの間にある確執を取り上げる記事も見られます。

ところで、この惨事に際してバイデン大統領は現地に赴くどころか、デラウェア州のビーチで休暇を過ごしたとか。コメントを求められても、「ノーコメント」というつれない返事だといいます。


The White House has responded after both Democrats and Republicans criticized President Biden, who said he had "no comment" on the rising death toll from the destructive Hawaiian wildfires during his weekend beach getaway in Delaware.

One Hawaii Democrat called the president’s response "shocking" and out of character.
(Lawrence Richard. White House shoots down critics over Biden's 'no comment' Hawaii response. Fox News. August 16, 2023.)


バイデン氏らしからぬ態度だと言われていますが、災害に見舞われた人達に寄り添う姿勢が政治家には求められるのは当たり前で、その欠如は時に政治生命を危うくします。

別記事では以下のようなくだりがあります。


President Joe Biden’s brand is empathy, but his actions told the devastated victims of the Maui wildfires to pound sand.

(中略)

Given the scope of this disaster, it wasn’t surprising to see Biden on a sandy beach this weekend. It’s the usual protocol for the president to visit the scenes of major natural disasters. But Biden had a view of the Atlantic Ocean — not the Pacific. He spent Sunday lounging on a beach in Delaware. Instead of comforting grieving families, he was soaking in some rays.
After his beach day, he was asked about the rapidly increasing death toll in Hawaii. He replied, “No comment.”
(Victor Joecks. Biden suntans while Hawaii burns. Las Vegas Review Journal. August 15, 2023.)


この記事でも同様に、惨事に対するバイデン氏の態度に疑問を投げかけているものです。

冒頭の部分で、


pound sand


という見慣れない表現が使われています。

被災者に同情を示すどころか、"pound sand"するよう言った、という解釈になるかと思いますが、この部分をどう解釈すべきでしょうか?

字義通りには、砂を打つ、ということになるかと思いますが、一体どういう意味なのでしょうか?

手元にある辞書には載っておらず、ネットで検索しますと、俗語、あるいはかなりインフォーマルな言い回しの類いに分類されるようです。

砂地をいくら叩いたところで何ら有意義とは考えられないことから、意味のない行為に及ぶ、無駄な取り組みをする、というのが"pound sand"の含意するところらしいです。

ネットに散見される説明では、そのような意味合いから、気に入らない相手に対して突き放すような態度を示す時に使うフレーズらしく、あっちへ行け、とか、失せろ、消えろ、というような意味合いだと言います。

しかし、いくら今回の件でバイデン氏にいつもの優しさ(被災者に寄り添う態度)が見られないと言っても、山火事被害に見舞われたハワイの住民に「消え失せろ」は無いと思います。

そこで、"pound sand"の用例を色々と調べてみるのですが、この言い回しには多少の幅があると言いますか、一概に上記のような訳語を当てはめるのは無理があるように思われます。

では、記事の問題の箇所はどう訳すのか?

"pound sand"の基本的な意味は、砂を打つが如く、無意味で得るところの無い行為に及ぶ、ということであり、その心は、相手に対する話者のフラストレーションや突き放そうとする態度であるということです。

文脈によっては、それは「失せろ」だったりする訳ですが、「勝手にしろ」とか、「好きなようにすれば」、というような意味合いかも知れません。

相手に対するフラストレーションというものは、時に無関心という形で非難の感情を表したりもすると思いますが、その場合、日本語だと「(どうなろうと)知ったこっちゃない」、「知らんわ」、ということになるでしょうか。

多数ある用例を整理できていないのですが、一筋縄では行かない表現のようです。


2023年8月16日水曜日

convoy

豪メルボルンを巨大なトラクターが車列を成して進行するという異様(威容?)な光景です。

主に西部の農地から集結した50台余りのトラクターは、政府が進めている送電線の建設に反対しているものだそうです。


Melbourne commuters were left shocked after dozens of trucks drove through peak hour traffic to voice their frustrations against Labor’s renewable energy plans.

The rally, which included a convoy of 50 trucks, saw hundreds of farmers descend on state parliament to oppose new power lines being built in the state’s west.
(Eleanor Campbell. Bizarre sight as farmers storm Melbourne on tractors. News.com.au. August 15, 2023.)


送電線の建設は現政権が進める再生可能エネルギー政策の一環のようですが、農地所有者などにとっては高圧電線がもたらす作物や生活への影響を懸念しているということのようです。

巨大なトラクターの車列、記事中


a convoy of 50 trucks


とありますが、"convoy"には護送、護衛、また護送する、という動詞の意味があります。大きなクルマが列を成して通過する光景は要人などを護衛するためのものがイメージされます。

この"convoy"とスペルがよく似た単語に、


convey


がありますが、こちらは運ぶ、運搬する、という意味です。

似ているのはスペルだけでなく、意味的にもそうですが。

実はこの2つの単語は二重語とされ、語源を同じくするところ、英単語としては別の単語として存在するようになったというものです。

"convoy"も"convey"も、フランス語convoyerから英語に入ってきたものですが、さらに遡ると接頭辞con-と、道を意味するラテン語viaに辿り着きます。

二重語については、以前取り上げた"coronation"(coronaとcrownが二重語の関係)もご覧下さい。

2023年8月15日火曜日

grandiose

新しくスタートしたメタ社によるSNS「スレッド」をきっかけに、X(旧Twitter)のマスク氏はCEOのザッカーバーグ氏を公然と非難しましたが、両者のやり取りが格闘技で決着をつけるという話にエスカレートしているというのを興味深く読んでいました。

マスク氏が挑戦状を叩きつけると、場所を指定しろとザッカーバーグ氏が応じるなど、両者の場外乱闘(!?)を多くのメディアが報じました。

と言っても、もう何週間か前の話でその後どうなったのか聞かないなぁと思っていたら、今日読んだ記事では、マスク氏がザッカーバーグ氏宅を訪問して決着をつけるというような投稿をしているということでした。

一方、ザッカーバーグ氏は(呆れて?)これに応じていない、という話です。


Mark Zuckerberg dismissed Elon Musk's latest attempt to lure him into a fight after the executive chair of X, formerly known as Twitter, claimed he was going to show up at Zuckerberg's home and livestream it.

In a post on X Monday, Musk said he was going to test drive a Tesla model by taking it to Zuckerberg's home in Palo Alto.
(Mark Zuckerberg dismisses Elon Musk's latest attempt to egg him into a backyard fight: 'Mark takes this sport seriously and isn't going to fight someone who randomly shows up at his door'. Business Insider. August 15, 2023.)


当初の報道から、これはおふざけの類いではないのかと訝っておりましたが、やはりという感が否めません。

両者の確執を逐一取り上げるメディアは、結局のところSNSの宣伝になってしまっているようにも思えます。

今回は、格闘をけし掛けるマスク氏に対し、相手にしない、と態度表明をしたザッカーバーグ氏の方がオトナに見えます。


…the Meta CEO wrote on Threads: "I think we can all agree Elon isn't serious and it's time to move on."

"If Elon ever gets serious about a real date and official event, he knows how to reach me," he added.

Musk has made grandiose claims in the past with uncertain follow-through.
(ibid.)


マスク氏の奇行は今回に限りませんが、大袈裟な物言い、誇大を特徴とする言動は見透かされているようです。

今日の1語、"grandiose"は気取っていて、大袈裟で、仰々しい、という意味です。


Characterized by excessive self-importance or affected grandeur; pompous
(American Heritage Dictionary)


この形容詞は勿論、大きいことを意味する"grand"から来ていますが、雄大、壮大であるという意味の"grand"はニュートラルな意味合いであるのに対し、"grandiose"の方はそれが見せかけであるという批判的意味合いがあります。

実際は大したことはないのに、大きく見せかけている、という事なんですね。"grand"に余計な文字がくっついているのが、背伸びしている証拠、という訳です。

昔々、中学校の頃のことですが、ケンカする、やっつけてやると周囲に繰り返し言い続けて、結局何にも起きなかった、という威勢だけいい、そういう不良生徒がよくおりましたが、マスク氏に同じものを感じます。


2023年8月14日月曜日

bankroll

記事の引用からどうぞ。


A leading climate crisis author has staged a walkout at the Edinburgh international book festival in protest at its sponsor’s links to fossil fuel companies.

(中略)

She said to the audience: “I can’t actually in good faith continue just talking about these issues without doing something, especially given that the festival is sponsored by an investment firm that is bankrolling this climate crisis.

“Baillie Gifford are an investment firm that have £5bn of investments in the fossil fuel industry. Edinburgh book festival: you wouldn’t burn books, so why are you burning the planet? Drop Baillie Gifford.”
(Emily Dugan. Author walks out of Edinburgh book festival over sponsor’s fossil fuel links. The Guardian. August 13, 2023.)


記事の要旨は、地球温暖化問題を憂慮し、環境保護を訴える活動家らがブックフェスティバルをボイコットした、というものです。

その背景には、フェスティバルのスポンサー企業が化石燃料の会社に投資しているということがありました。化石燃料は温暖化の元凶、その化石燃料で利潤を得ている企業に投資するようなスポンサーはけしからん、ということです。

以下のようなくだりがあります。


the festival is sponsored by an investment firm that is bankrolling this climate crisis


ここで、"bankrolling"という表現が使われていますが、"bankroll"とは札束、お金のことです。"bank"は銀行で、"roll"には札束の意味がありますが、"bankroll"は資金的な援助をするという動詞の意味で使われるようになり、American Heritage Dictionaryによればインフォーマルな表現として定着しました。どことなく、ネガティヴな含みがあるようにも思える言い回しです。単に経済的、資金面での支援、援助というよりは、日本語で言う「加担」のニュアンスが漂います。

ところで、このブックフェスティバルにはあの有名な環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんも参加予定だったそうですが、同じ理由でボイコットしていたという前置きがあります。


It followed the announcement earlier this month by climate activist Greta Thunberg that she was cancelling her scheduled appearance at the festival, accusing Baillie Gifford of “greenwashing”.
(ibid.)


糾弾されているスポンサーの投資会社は化石燃料企業への投資額は全体の2パーセントにも満たないもので、それよりはるかに大きな額をクリーンなエネルギー開発企業に投資している、と主張しています。

2023年8月11日金曜日

agamograph

X(書くのも読むのもまだ慣れませんが、旧Twitter)が本社オフィスの備品などをオークションに出しているというニュースを読みました。

会社がオフィス移転に際して家具や什器、備品を売り払うというのはよくある話ですが、Xが本社移転を計画しているというのでは無さそうです。

オークションのきっかけは同社のロゴが変わったことによるもので、あの「青い鳥」のアイコンを始め、古き良き(!?)ツイッターの時代の物品が一掃されているようです。

日本からオークション参加して買い取るのは厳しそうですが、なかなか興味深い出品が窺えます。(記事はこちら。)

その中で、"agamograph"という見慣れない単語を見かけました。


A 34-foot agamograph

An agamograph (for those unaware) is a type of image that changes depending on what angle you view it from. In this example, the piece shifts from a wide-eyed emoji, to the question “What’s Happening?” — something I’m sure the remaining legacy employees at X have been asking themselves for months.
(Jesse Weatherbed. Here are the funniest things being auctioned off at Twitter HQ. The Verge. August 10, 2023.)


説明と記事の写真を見て、なるほど、あれのことを"agamograph"というのか、と知った次第です。街中などでも看板広告が通過するうちに見え方が変わるものがありますが、「あれ」のことです。

一応補足しますと、見る角度、方向によって見え方が異なる平面のイメージのことで、レンチキュラー(lenticular)とも言うようです。"lenticular"というのは凸レンズのことで、これが見る角度によりイメージが異なって見えるからくりになっています。

"agamograph"という単語ですが、これはヤーコブ・アガム Yaakov Agam (1928〜)というイスラエルの彫刻家の名前から来ているのだそうです。

手元の英和辞書、オンライン辞書でも載せていないようです。




2023年8月10日木曜日

deviancy

イラクは国内のメディアなどに対し、"homosexual"という言葉の使用を禁止したと報じられています。

では、何と表現するのか、というと、


sexual deviancy


と言い換える、ということです。


Iraq's Media and Communications Commission has issued a directive instructing all media and social media platforms in the country to refrain from using the terms "homosexual" or "homosexuality" and instead use "sexual deviancy."

The decision, reported widely by Iraq's state and private news outlets, was made to safeguard societal values and public order, the commission said, noting that the terms "homosexuality, homosexual, and Gender" hold undesirable connotations within Iraqi society.
(Khaled Wassef. Iraq bans the word "homosexual" on all media platforms and offers an alternative. CBS News. August 8, 2023.)


同国のメディア規制当局はこの他、ジェンダー(gender)という言葉の使用も禁じましたが、こちらは何と言い換えるのか、いくつか記事を拾い読みしましたが不明です。

さて、"deviancy"という見慣れない単語ですが、スペルに着目すると、"deviate"との類似性に気がつくと思います。

"deviancy"とは、"deviate"している状態を指す名詞で、"deviate"とは道から外れる、逸脱する、という意味です。分離、離脱を意味する接頭辞de-と、道を意味するラテン語viaから成る単語です。

"deviancy"は"deviance"とも書くことがありますが、常軌を逸している、一般に受け入れられている規範から外れている状態、という意味です。

研究社新英和大辞典で"deviance"は、「(性欲)異常(の行動)」とあり、またランダムハウス英和で"sexual deviant"には「(性的)倒錯者」との訳語が見えます。

イスラム教国家ではLGBTQに対する反発が強く、同性愛は罪とされますが、イラクも同性愛に対する死刑制度こそ無いものの、今回のような統制は性的マイノリティに対する同国の姿勢を示したものと言えそうです。

2023年8月9日水曜日

acrophobia / aichmophobia

イギリス人によく見られる恐怖症(phobia)のトップは?という見出しに釣られました。

人それぞれ、忌み嫌うものがあって、女性だと蜘蛛(クモ)が嫌いだとか、人によっては閉所恐怖症といったものがあります。

英国人の"phobia"のトップは高所恐怖症でした。

"phobia of heights"(もしくは、fear of heights)と言いますが、専門用語は、


acrophobia


と言います。


Lots of us have a fear of something, whether it be spiders, the dark or needles.

And a survey by YouGov  has revealed that, of the 10 phobias asked about, almost a quarter of Brits (23 per cent) say they have a phobia of heights.

(中略)

The medical term for fear of heights is acrophobia, and it doesn’t need to be a skyscraper building to trigger panic.
(Vanessa Chalmers. The UK’s most common phobia revealed – and it’s not spiders, needles or the dark. The Sun. August 8, 2023.)


"phobia"というのは、ある対象や事象に過剰とも言える恐怖感や嫌悪感を催すことで、当人以外の人間にはさして気にもならないのに、当人には激しい動揺を引き起こし、時に嘔吐などの身体症状をもたらすものです。


According to the Cambridge Dictionary, a phobia is “an extreme fear or dislike of a particular thing or situation, especially one that is not reasonable”.
(ibid.)


高所恐怖症という意味の"acrophobia"という単語は、先端、始点、頂点を意味する接頭辞acro-と"phobia"が結合したものです。

高所の綱渡りをものともしない曲芸をアクロバット(acrobat)、一連の単語の頭文字だけを取って略したものを"acronym"、身体の末端が肥大化する疾患をアクロメガリー(acromegaly)と言いますが、これらの単語に見られる接頭辞acro-はギリシャ語akrosから来ているものです。

ところで、同じく恐怖症に先端恐怖症というのがあります。こちらは針など鋭い先端(尖端)に言いしれぬ恐怖感を覚えることですが、先述のacro-に先端の意味があるところ、先端恐怖症は何というのか、ふと疑問に思いました。

調べてみますと、


aichmophobia


というそうです。

実のところ、手元の研究社新英和大辞典には載っていないのですが、Merriam-Websterによると槍の先端を意味するギリシャ語aichmeから来ているそうです。

ということで、今日は1日1語ならず、1日2語となりました。

2023年8月8日火曜日

side channel attack

コンピュータのキーボードを叩く音を解析することで、入力内容を解析できる・・・!?

そんな驚愕の報告があるという記事を読みました。

記事によれば、タイピングの音を拾い、AI(人工知能)に学習させることにより、かなりの精度で入力内容を解析できるそうです。

想像したことすらありませんでしたが、キーボードのストロークにはキーによって音が異なるらしく、その違いを解析するのだそうです。こうした解析は例えばZoomやSkypeのようなコミュニケーションツールによりオンライン上で得られる音声でも可能であり、つまりはキーを叩く音を聞かれてしまえばパスワードも機密情報もダダ漏れということなのです。


Researchers in the UK claim to have translated the sound of laptop keystrokes into their corresponding letters with 95 percent accuracy in some cases.

That 95 percent figure was achieved with nothing but a nearby iPhone. Remote methods are just as dangerous: over Zoom, the accuracy of recorded keystrokes only dropped to 93 percent, while Skype calls were still 91.7 percent accurate. 
(Brandon Vigliarolo. Boffins say they can turn typing sounds into text with 95% accuracy. The Register. August 7, 2023.)


パスワードの漏洩に関しては、コンピュータウィルスの感染とか、ハッカーによる不正アクセス、近年ではソーシャルエンジニアリングと呼ばれる手口による不正な取得などがよく知られています。

一方、今回の報告にあるような、ターゲットとなるデバイス等への直接のアクセスに依らない情報窃取のことを、


side channel attack


と呼ぶそうです。日本語では「サイドチャネル攻撃」と訳されます。

"side channel"のチャネル(channel)とは経路のこと、即ちターゲットへの直接的なアクセスによらず、副次的な(side)経路による攻撃、ということです。


In other words, this is a side channel attack with considerable accuracy, minimal technical requirements, and a ubiquitous data exfiltration point: Microphones, which are everywhere from our laptops, to our wrists, to the very rooms we work in. 

To make matters worse, the trio said in their paper that they've achieved what they claim is an accuracy record for acoustic side-channel attacks (ASCA) without relying on a language model. Instead, they used deep learning and self-attention transformer layers to capture the sounds of typing and translate it into data for exfiltration.
(ibid.)


人を騙す手口、人のものを盗む悪知恵というのは次々と新手が編み出されるもの。

"side channel attack"についてはネットで検索すると小難しい用語や技術解説を交えたものが目に付きますが、最近のAIと組み合わせた、キーボードの音を拾う"acoustic side channel attack"はスマホなどを使えば可能とも言われており、えらい世の中になったものだと思います。


2023年8月7日月曜日

stomach

来年の大統領選指名候補に名乗りをあげているデサンティス・フロリダ州知事に、同州に本拠地を置くプロバスケットチームが5万ドルの献金を行ったそうですが、批判の声が高まっています。


The Orlando Magic’s decision to donate money to a Ron DeSantis super PAC was "difficult to stomach" for a CNN sports anchor on Friday.

Rachel Nichols, who previously anchored with ESPN, spoke about the recent news that Orlando Magic LTD donated $50,000 to Never Back Down Inc., which describes itself as a "grassroots movement to elect Governor Ron DeSantis for President in 2024."

From her 25 years of NBA experience, Nichols claimed to "CNN Tonight" host Jim Acosta that she had "never seen" a political donation like this that "was made on behalf of the team."
(Lindsay Kornick. NBA team's DeSantis donation is 'difficult to stomach:' CNN Sports anchor. Fox News. August 6, 2023.)


政治家にプロスポーツ団体が献金するというのはあまり聞いたことがありません。

今回の件に関しても、チームメンバー個人の政治信条を無視したものという批判があります。チームのファンに対しても同様のことが言えるように思われます。

記事ではCNNのアンカーによる批判が取り上げられていますが、


difficult to stomach


とある部分の"stomach"はここで動詞として使われており、"accept"、"endure"の意味です。

"stomach"の名詞の意味はご存知のように、内臓器官としての胃であり、おなか(腹)のことですね。

日本語でも、腹に据えかねる、とか腑に落ちない、という表現がありますが、英語でも理解や納得にかかるメタファーは腹部なんですね。


2023年8月4日金曜日

junta

先日、ニュースのヘッドラインで、外務省がニジェール首都に渡航中止勧告、という見出しを見かけたので何事かと思っていたら、西アフリカのニジェールでクーデターが発生したということでした。

現職大統領は監禁され、クーデターを主導した軍政が実権支配している状況です。


Niger’s coup d’état, which was its first since President Mamadou Tandja was ousted in February 2010, followed similar events in Guinea, Burkina Faso, Mali, and Chad and underscored the collapse of democracy in the Sahel region. Even though the Niger coup could have palpable negative implications for West Africa’s security, international reactions to Tchiani’s seizure of power varied considerably.

The United States and France condemned the coup and reaffirmed Bazoum’s legitimacy, while the African Union issued Niger’s junta a 15-day ultimatum to dissolve its regime. The United Arab Emirates (UAE) also condemned the coup, possibly because it wanted to dispel rumors of its support for Tchiani in regional media outlets. Other regional powers in the Middle East and North Africa (MENA), such as Turkey, Egypt, and Saudi Arabia, released milder statements of “concern.” China’s statement on the coup had a similarly neutral tone and emphasized the safety of its nationals.
(Samuel Ramani. Who Benefits From Niger’s Coup? Foreign Policy. August 2, 2023.)


現職のバズム大統領は民主的な選挙を経て選出された大統領であり、米、仏などはクーデター主導者を批判しています。

記事に、


junta


という言葉が出てきます。

これは、クーデター直後の暫定政府、臨時政府、といった意味の単語で、つまり今回クーデターを主導した側のことを指します。

スペイン語からの借用語なのですが、ラテン語jungere(英語でjoinの意味)から来ています。

借用語の発音に関してですが、英語では、外来語からの借用であっても英語式の発音になることが多いです。

"junta"も、最初はカタカナで「ジャンタ」のような発音でしたが、スペイン語式に「フーンタ」という発音が優勢になったとされます。(American Heritage Dictionary)



2023年8月3日木曜日

bogus

ワシントンの連邦議事堂に銃を持った人がいるという通報を受けて、警察が約200人体制で出動するという騒動があったと報じられています。

警察当局は議事堂の建物内、周辺をくまなく捜査しましたが、犯人も不審な点も見当たらず、「いたずら電話」だったと結論し、警戒を解除した、とあります。


WASHINGTON, Aug 2 (Reuters) - Police gave an all-clear at the U.S. Capitol complex on Wednesday, finding no gunman or suspicious activities after a report of a possible active shooter that was most likely "bogus," U.S. Capitol Police Chief Thomas Manger told reporters.

After about 90 minutes of investigating, police allowed workers in three Senate office buildings adjacent to the U.S. Capitol to return to work.

"I think at this point we can say we've found no confirmation of an active shooter and this may have been a bogus call," Manger said.
(Moira Warburton. No shooter, no injuries at US Capitol after 'bogus call,' police say. Reuters. August 3, 2023.)


「いたずら電話」と訳しましたが、記事での英語は、


a bogus call


です。

"bogus"という形容詞ですが、


偽物の、いんちきの


という意味です。

語源欄を見ると、"bogus"とは19世紀頃の偽造貨幣を作る機械を指す名称だったそうで、そこから生じた形容表現だということです。

2023年8月2日水曜日

ストロボ ー strobe

ツイッターが名称をX(エックス)に変更したという話題はつい先日も取り上げました。

ネット上では改名について賛否両論(どちらかと言うと否定の意見が多いようですが)が展開されています。小生のケータイのアプリも青い鳥のアイコンは真っ黒な背景のXに置き換わり、漏れなく名称変更が反映され始めた模様です。

サンフランシスコの本社ではTwitterという社名の看板が降ろされ、代わって巨大なXという文字のサイネージが同社屋上に設置されたとメディアで取り上げられています。

ところが、この新しいサイネージが頗る不評らしく、また市当局の必要な許可を得てないといったことで、早くも取り外されたということです。


It is gone. A giant, glowing X no longer marks the spot on the San Francisco high-rise that is headquarters to Elon Musk’s messaging company X, formerly known as Twitter.

The city building department logged 24 complaints after a weekend of the big X, which on Friday was erected on the roof of the company’s downtown San Francisco headquarters, on Market Street, to the chagrin of neighbors who complained about intrusive lights.

(中略)

Locals over the weekend recorded video of the giant X glowing, pulsing and strobing, with some criticizing its intrusive lights.
(Elon Musk’s X sign removed from San Francisco HQ after complaints. New York Post. July 31, 2023.)


周辺で生活する人に不評で、市には複数の苦情が寄せられたとあります。単純にアルファベット一文字のサイネージが苦情を申し立てるほど酷いというのが今一つ分からなかったのですが、記事のビデオを見て合点が行きました。

夜間映像なのですが、屋上のXのサイネージは燦然と光り輝くのみならず、周期的に照明パターンを変化させるようになっており、時に激しく明滅を繰り返しています。まるで、日本のパチンコ屋(!?)を彷彿とさせるのですが、これは苦情になってもおかしくないと思いました。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、記事で、


the giant X glowing, pulsing and strobing


とある部分です。

"strobing"というのは、カタカナで言うところの「ストロボ」を指しているんですね。

"strobe"というのがそのスペルですが、"stroboscope"、"strobe lightning"を短くした単語ということになっています。そして、それが動詞としての意味、


To emit intense flashes of light in rapid succession
(American Heritage Dictionary)


で使われているものです。

ところで、"stroboscope"というのは、我々がストロボと呼んでいる、強い周期的な光を高速回転する物体に当てて観察する装置やそのような照明を指すものですが、strob-という部分はギリシャ語で回転すること、渦を巻くことを意味するstrobosから来ているんですね。

ギリシャ語から遡ること印欧祖語streb(h)-は、ストロボ以外にも、


apostrophe
catastrophe


といった単語につながっており、これらの単語には向きを変えるとか捻る、といった意味合いが含まれているんですね。


2023年8月1日火曜日

leapfrog

電気自動車(EV)メーカーとして市場を席巻するテスラ。

同社の株価は上昇を続け、今年のはじめから倍以上に高騰しています。この勢いで行くと、同社の規模はアップルやグーグル、アマゾンなど、名だたるトップ企業に追い付き、はたまた追い越すのではないかと言われているそうです。


Only two stocks that trade on U.S. exchanges currently boast market caps of more than $2 trillion. Apple is in a league of its own with a market cap of over $3 trillion. Microsoft's market cap stands near $2.5 trillion.

Google parent Alphabet (GOOG 0.07%) (GOOGL 0.11%), Amazon (AMZN 1.11%), and Nvidia (NVDA -0.04%) rank as the closest contenders to join the $2 trillion club. But could Tesla (TSLA 0.37%) beat them to the punch?

(中略)

Coming up with the ideal scenario that would enable Tesla to leapfrog Alphabet, Amazon, and Nvidia isn't as easy as it might seem. A strengthening economy would help all of the stocks. Conversely, an economic downturn would probably hurt Tesla as much as it would the others.
(Keith Speights. Could Tesla Beat Google, Amazon, and Nvidia in Joining the $2 Trillion Club? Motley Fool. July 31, 2023.)


引用した記事は、テスラの勢いが、株式時価総額2兆ドルを越すと言われるグーグル(Alphabet)、アマゾン、Nvidiaに並び、さらには追い越す可能性について触れています。

結論として、あり得ないことではないが、当面は無さそう、ということなのですが、後段では以下のように記載されています。


Coming up with the ideal scenario that would enable Tesla to leapfrog Alphabet, Amazon, and Nvidia isn't as easy as it might seem.


ここで使われている"leapfrog"を辞書で引くと、「馬跳び」とあります。子供の頃にやったことがありますね。両手を膝に当てて背中を丸めたところを後ろから来た人が飛び越え、同じように背中を丸め、後ろからまた人が飛び越えて行く、ということを次々に繰り返すものです。

比喩的には「抜きつ抜かれつ」ということなのですが、動詞としては


To advance or progress beyond (a competitor or an obstacle, for example) in dramatic fashion
(American Heritage Dictionary)


とありますように、競合を凌いで先頭に躍り出る、躍進する、出し抜く、といった訳語が近いようです。

日本語では馬、英語では"frog〜"なのでカエル、という違いがあるようですが、馬跳びのことを「蛙跳び」と呼ぶ地方もあるそうです。