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2020年5月13日水曜日

a reckoning

新型コロナウィルス感染症拡大による緊急事態宣言下で、企業や官公庁等に勤める人たちの在宅勤務が推奨されています。

対面や現場での従事を必要とするような、在宅勤務が適さない職種の方も勿論多くいますが、オフィスワーカーとかデスクワーカーと呼ばれる事務職の人は、パソコンさえあれば、ほとんどの仕事をオフィスに出社せずともこなすことができるということで、長い在宅勤務期間に入っている人もおられるでしょう。(小生も2月後半以降、一度も出社することなく自宅で仕事を行っています。)

通勤から解放され、時間や心持ちに余裕ができたことは有難い一方、果たしてこの後、また元のような生活(朝早く起床して、満員電車に揺られて、オフィスで会議や事務作業をこなし、またラッシュアワーの通勤で帰宅し・・・、といったルーチン)に戻れるのか、という不安も覚えます。

これまでにも在宅勤務や時差通勤の推奨というキャンペーンはあったのですが、そういったどんな取り組みよりも、今回のパンデミックを契機とした大規模な在宅勤務がその効果を示しているというのは皮肉な話です。こんな状況下でもある程度仕事が回っているということになると、経営層が何を考えるかは想像がつきますね。

多くの企業が大都市圏に本社や支社、支店など、オフィスの拠点を持っていますが、果たして本当に必要なのか、多くの社員を一箇所に集めるのが効率的なのかどうか、といった議論は当然出てくることでしょう。

今日読んだNew York Timesの記事が、まさに我が意を得たりの内容でした。


Before the coronavirus crisis, three of New York City’s largest commercial tenants — Barclays, JP Morgan Chase and Morgan Stanley — had tens of thousands of workers in towers across Manhattan. Now, as the city wrestles with when and how to reopen, executives at all three firms have decided that it is highly unlikely that all their workers will ever return to those buildings.

The research firm Nielsen has arrived at a similar conclusion. Even after the crisis has passed, its 3,000 workers in the city will no longer need to be in the office full-time and can instead work from home most of the week.

The real estate company Halstead has 32 branches across the city and region. But its chief executive, who now conducts business over video calls, is mulling reducing its footprint.
(Matthew Haag. Manhattan Faces a Reckoning if Working From Home Becomes the Norm. The New York Times. May 12, 2020.)


銀行や証券会社の名だたる大企業がひしめくニューヨーク・マンハッタンでは、いわゆる「コロナ後」のオフィス需給にギャップが出てくるであろうと想定されています。

オフィスのみならず、移動のための交通インフラ、オフィス街のレストランやカフェなど、あらゆるものが影響を受けると予測されています。


Manhattan has the largest business district in the country, and its office towers have long been a symbol of the city’s global dominance. With hundreds of thousands of office workers, the commercial tenants have given rise to a vast ecosystem, from public transit to restaurants to shops. They have also funneled huge amounts of taxes into state and city coffers.

But now, as the pandemic eases its grip, companies are considering not just how to safely bring back employees, but whether all of them need to come back at all. They were forced by the crisis to figure out how to function productively with workers operating from home — and realized unexpectedly that it was not all bad.
(ibid.)


大都市は開発に再開発を重ね膨張してきましたが、パンデミックに至って一転、ある意味、見直しを迫られていると言えるでしょう。

それが、記事のタイトルで、


Manhattan Faces a Reckoning...


という表現が使われていることになっていると思うのですが、この"reckoning"という単語に注目したいと思います。

"reckon"という単語は基本的な単語ではありますが、あまり使うことがないように思います。計算する、思う、みなす、という意味で暗記しているくらいで、「計算する」なら代わりに"calculate"を、「思う」なら"think"、"suppose"を使うことのほうがどちらかと言えば多いのではないでしょうか。

ここで名詞としての"reckoning"には、応報、報い、という意味があるようです。

応報、報い、というと、自らが行った行為に対する罰のようなイメージがありますが、"reckon"のそもそもの意味は、支払う、また支払うための計算、勘定、ということです。(ドイツ語rechnenと同語源らしいです。)

つまり、貸し借りの精算(settling, summing up)ということなのですが、一旦リセットするということとも解釈できます。(それが望ましい結果となるとならないとに関わらず。)

ある出来事を契機として、見直しを迫られている状況、それが“face a reckoning”の意味するところと言っても良さそうです。



1 件のコメント:

  1. 蘭です。
    とても勉強になりました。先生のおっしゃる通りに、計算ならcalculate、思うならthinkなどのような単語を使っていますが、reckonはあまりにも使うチャンスがなくて、一見すると意味も忘れてしまいました。そして、reckoningは応報という意味で、日本語の応報とちょっと違っていますね。悪いことにつながるだけではなく、いいことでもreckoningですね。ありがとうございました。

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