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2025年3月11日火曜日

third rail

実業家のイーロン・マスク氏がリストラの大ナタを振るっている政府効率化省(DOGE)の話題は先日も取り上げましたが、マスク氏の効率化目標は1兆ドルの歳出削減だそうです。

巨額の歳出削減の目論見がどのように達成され得ると試算しているのか、素人には分かりません。引用する記事によると、大量の政府職員を解雇した次に見据えているのは1.6兆ドル超ともされる社会保障費だそうです。


Musk is dangerously close to touching a political third rail.

Trump’s billionaire adviser called Social Security “the biggest Ponzi scheme of all time.” Department of Government Efficiency lieutenants have entered the Social Security Administration. The SSA is planning to slash staff.

The moves are stressing out some Republicans — and making Democrats optimistic — ahead of the 2026 midterms.

“If people think Medicaid is a hot-button issue, Social Security is 10 times that. He may think it’s a Ponzi scheme, but the people on it and the people about to be on it do not think that,” said CHRISTOPHER NICHOLAS, a longtime GOP consultant based in the battleground state of Pennsylvania.
(Musk grabs for the third rail. Politico. March 10, 2025.)


記事では想定されるマスク氏の取り組みは"third rail"だと言っていますが、この表現を初めて見ました。

"third rail"とは「3番目のレール」ということになりますが、鉄道の専門用語で第3軌条という訳語が英和辞書には見えます。これは電車が走る2本のレールに並行して敷設される3番目のレールのことで、電気を供給するためのものだそうです。

英和辞書の説明はここで終わってしまうのですが、"third rail"には政治のコンテクストで使われ、その意味合いは、


A subject that tends to be avoided because of its offensive or controversial nature
(American Heritage Dictionary)


というもので、議論を呼ぶ課題故に政治家が避けたがるテーマ、話題のことです。

電気を供給するための"third rail"は、感電の危険性があるため、設置箇所には警告の表示がされていることが多いものです。つまり触れれば感電、ヘタをすると死ぬかもしれないということですから、触れないのが一番、ということで、これを政治のコンテクストで使うようになったというのは興味深いものがありますね。

マスク氏は米国の社会保障費用にムダ削減の可能性を見出している訳ですが、社会保障費を減らすような政策提言をすれば国民、有権者の猛反発を浴びることになる、というのが周りの見立てであるということなんですね。記事では中間選挙を見据えて、共和党員からは不安の声が、対立する民主党からは(自党に有利な状況と)楽観的な見方が広がっているとあります。

日本においても、昨日、石破首相は高額療養費の上限負担の見直しを凍結すると国会で答弁しましたが、これなんかも"third rail"の類いと言えるでしょう。夏の参院選対策かと記者に問われた石破氏は否定してはいましたが。


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