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2025年3月5日水曜日

random

ウクライナ支援、停戦を巡る米・バンス副大統領の発言が物議を醸しているとの記事が目に留まりました。

冒頭から大荒れとなった先週の米ウ会談では鉱物資源に関する合意に至らず、物別れに終わりましたが、その後米国はウクライナへの軍事支援を一時停止することを決定。これを受けてイギリスやフランスはウクライナへの軍事支援を表明するという動きになっています。

問題になったバンス氏の発言というのは、この動きに対してのコメントなのですが、恐らくは英、あるいは仏を指して、


some random country


と呼んだというものです。

詳しくは記事の引用をどうぞ。


The US vice-president has sparked a row with his comments about a potential peacekeeping force in Ukraine.

UK opposition politicians accused JD Vance of disrespecting British forces after he said a US stake in Ukraine's economy was a "better security guarantee than 20,000 troops from some random country that hasn't fought a war in 30 or 40 years".

The UK and France have said they would be willing to put troops on the ground in Ukraine as part of a peace deal.

Vance has since insisted he did not "even mention the UK or France", adding that both had "fought bravely alongside the US over the last 20 years, and beyond".
(Becky Morton. Anger over Vance 'random country' peacekeeping remark. BBC News. March 4, 2025.)


バンス氏の"some random country"という言い草に英国会議員らが不敬だと反発したというのですが、"random"という表現に何かしら侮蔑的な意味合いがあるのだろうかと気になった次第です。

ごく基本的な単語としては中学の英語の授業に出てくると思いますが、カタカナでもランダムと言い、無作為による、任意の、といった意味合いがまず思い浮かぶのではないでしょうか。

しかし、"some random country"という表現が関係国を怒らせたという時、無作為の国、任意の国、といった訳はどうもしっくり来ないですね。果たして何と訳したものでしょうか。

"random"には成り行き任せとか、行き当たりばったり、といった意味合いもあり、これらの訳語はネガティブな意味合いが滲んではいますが、国(country)という名詞に対する修飾語としてはやはりピンときません。

辞書によっては、"random"の意味合いとして俗語、またインフォーマルな用法を載せているものがあります。変な、変わった、普通でない(odd, strange)というような意味合いです。バンス氏はウクライナへの軍事支援を表明した英仏を「ヘンな国だ」と当てこすったのでしょうか。

正解になかなか辿り付かないのですが、色々と調べているうちに、"random"という言葉について取り上げた興味深い記事を見つけました。


"It's described as a colloquial term meaning peculiar, strange, nonsensical, unpredictable or inexplicable; unexpected," he explains, before adding that random started as a noun in the 14th century, meaning "impetuosity, great speed, force or violence in riding, running, striking, et cetera, chiefly in the phrase 'with great random.' "
(Neda Ulaby. That's So Random: The Evolution Of An Odd Word. NPR. November 30, 2012.)


やはり、口語表現として、普通からちょっと外れた、変わっている、という意味合いがあるということなのですが、今日の辞書では形容詞としてエントリされている"random"は元は名詞であったとあります。語源を紐解くと"random"は走る(run)という意味を持つゲルマン語から来ており、性急さ、突発性といった意味合いが付加して今の意味になったようです。

これだけでは"random"の侮蔑的な意味合いはまだよく掴めていないのですが、バンス氏の発言への反発は、"some random country"による派兵(軍事支援)よりも米国(によるウクライナ鉱物資源関与)の方がベターだという比較に反応したものかも知れません。

ただ、敢えて明確に名指しせずに"some random country"と言う表現は、遠回しに当てこすったり、嫌味を言うような効果があったものと思われます。

コーパスで検索すると、"random person"や"random guy"といった用例が見られます。

日本語の表現で、「どこの誰とは言いませんが・・・」、「どこの馬の骨とも分からん奴」というものがありますが、それに近いのではと思います。

もちろんこんな訳語を載せている辞書は無いのですが、"random"という形容が侮蔑的に響くのは、よく分からない、素性が知れない(故に不可解である)、という話者の判断を滲ませているということだと思われます。


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