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2025年2月28日金曜日

better angels

大統領に就任したらウクライナとロシアの戦争を24時間で終わらせる —— そう豪語していたトランプ大統領は、有言実行と言うべきか、停戦に意欲的な姿勢を示しています。(単に自己顕示欲の表れではないか、という批判もありますが。)

しかしながら、トランプ氏はウクライナ支援に積極的であったバイデン前政権の姿勢から180度の転換をしたようにも見え、ウクライナに対して鉱物資源と引き換えの軍事支援を交渉のテーブルに上げ、ゼレンスキー大統領を独裁者とまで呼びました。逆に、ロシアのプーチン大統領とは融和的な関係を見せているという状況です。

このアメリカの変節は西側諸国に少なからぬショックを与え、フランスのマクロン大統領らが会談を通じてトランプ氏を説得した模様ですが、その効果があったでしょうか。

「独裁者」発言については、そんなこと言ったかな、とまさかの発言否定という報道がありますが、今週に入ってからのトランプ氏は先週からはやや軌道修正した模様です。

オピニオン記事からの下記引用をお読み下さい。


On Wednesday, Trump confirmed he’d be sitting down with Ukrainian President Volodymyr Zelensky in Washington Friday to discuss an end to the war and sign the long-awaited mineral-rights deal.

That’s a welcome change, after a couple of weeks of back-and-forth sniping between the two leaders, with our prez even saying Ukraine “should never have started” the war and calling Zelensky a “dictator.”

(中略)

So it’s a very good thing, for Ukraine and the West at large, that Trump seems to now be listening to his better angels.
(Trump’s adjustment on Ukraine sends the right message to Putin. New York Post. February 26, 2025.)


ここで、


listening to his better angels


という言い回しが出て来ますが、"better angels"とはどういう意味合いなのでしょうか?

"angel"は「天使」のことですが、神の使者となって人間に神意を伝えたり、慈悲を施す存在であるというのが一般的な定義です。

その天使の中でもより良い(better)とされる"better angels"はどう解釈するのかということになりますが、天使の中にも堕天使と呼ばれるような悪の側に落ちるケースを考えると、"better angels"というのはその逆の善の側にある天使ということになるでしょうか。

この"better angels"という言い回しは英和辞典にはどうやら載っていないようなのですが、Merriam-Webster Dictionaryでは、


the part of a person's character or nature that is said to guide the person's thoughts and behavior


という定義と共に"better angels"の用例が挙げられています。

この定義からすると、"better angels"とはやはりその人の言動を(良い方向に)導くものであり、日本語でいうところの良心とかいうものに近いと思われます。

人間誰しも良心の咎め、悪意と良心のせめぎ合いというところがあるものですが、トランプ氏もようやく自身の良心に耳を傾けることができるようになったと!?

ウクライナへの侵略を開始したロシアが悪で、それに抵抗するウクライナは善である、という単純な2項対立の話ではありませんが、少なくともコンテクストとしては極端なロシア寄りの姿勢が目立っていたトランプ氏がまともになってきた、ということは西側の見方としてはあるかと。


2025年2月27日木曜日

off the wall

戦火の絶えることがないイスラエルのガザ地区ですが、トランプ大統領は就任後、ガザを米国が所有して経済開発などを行なうというアイデアを提示し、物議を醸していました。

そして最近になってトランプ氏がSNSに投稿した動画がさらに反発を招いているようです。AIにより生成された動画だそうですが、その内容はというと、米国による開発がガザ地区をまるでビーチリゾートのように変貌させ、その立役者たるトランプ大統領の黄金の立像が街中に立っているという、見る側としてはちょっと引いてしまうようなものです。


Trump's no stranger to off-the-wall posts himself (especially on Truth Social), and, well, he's at it again. This time, on Tuesday evening, he posted a truly bonkers video, seemingly made by generative AI, of Gaza being transformed into a Trump-ified resort town.

(中略)

One person called the video "the most disgusting, the most shameful, the most hideous public communication by a US President in living memory."
(Alana Valko. People Genuinely Cannot Believe This "Disgusting," "Nauseating," And "Offensive" Post From Donald Trump Is Real. Yahoo! News. February 27, 2025.)


動画には札束をバラまくマスク氏や上半身裸になってビーチで横になっているトランプ、ネタニヤフ両大統領などの画像が含まれており、甚だ奇怪な、また突拍子もないという印象を受けるものです。

今日取り上げる表現、


off the wall


がまさにその「突拍子もない」、奇妙な、という意味のフレーズですが、辞書には俗語表現として載っています。

"off the wall"が突拍子もないという意味になるのはどういう背景からでしょうか?

諸説あるらしいですが、壁に向けて打ったボールが跳ね返って(off the wall)、あらぬ方向に飛んで行き翻弄される様を指したという説明があります。

また別の説明によると、"wall"はサーフィンの高波のことで、こちらも波に乗ろうとしたところが跳ね返されたり波の勢いに乗れずで(off the wall)、翻弄されることからそのような意味になったというものです。

引用記事では、名詞を修飾する語としてハイフンで繋がった形になっていますが、


off-the-wall remarks/comments/joke/ideas/thoughts/questions


などといった用例があります。

2025年2月26日水曜日

commode

昨日の投稿で18金のトイレが盗まれたという事件の記事を取り上げましたが、もうひとつ取り上げたいと思った単語がありましたので、今日の1語とします。

記事を再掲します。


The one-of-a-kind, 215-pound, fully functioning commode was carried out of Blenheim Palace by the thieves in under 5 minutes in the predawn hours of Sept. 14, 2019, prosecutor Julian Christopher told a jury during his opening statement in Oxford Crown Court on Monday.
(Chris Nesi. Seat of power: Three men on trial for swiping $3.5M gold toilet from Churchill’s home. February 24, 2025.)


その1語というのは、


commode


という単語ですが、トイレの意味であることにお気づきでしょうか。

"commode"というスペルの単語、つまり接頭辞com-とmodeという語が結合したと見える単語がトイレの意味になるというのは不思議というか、ちょっと意外に感じますね。

実際、接頭辞com-とmodusというラテン語が結合したこの単語の元の意味は、便利な、とか、都合の良い、という意味です。この後説明するように、トイレは人間の都合に合わせるものではあるのですが。

ここでの接頭辞com-は強調の意味合いだそうですが、modusとは方法とかマナー、様式という意味です。最初は昔の女性の間で流行した大きな髪飾りを指す単語でしたが、その後、やはり女性の持つ沢山の衣装や小物などを入れておく引き出し付きの箪笥、それも装飾の施されたオシャレな箪笥のことを指すようにもなったということです。

その箪笥(commode)は以降恐らく、用途に応じて形態を変化させていったものと思われますが、手洗いのボウルを備えた食器棚にもなり、そういった家具を指す名称として定着したようです。さらには"commode"は、寝室に設えられる簡易トイレ(椅子の形状で、座面の下に排泄物を受ける容器がある)を指す名称にもなったということですから、言ってみれば何でもアリ、という感じもします。

養護施設などで使われる"commode"はやがて、おまる、尿瓶などの意味に拡張しますが、最終的にアメリカ英語では現代の腰掛けタイプの便座、つまり水洗式トイレを指す単語として定着しています。

当ブログでもこれまで、以下のようなトイレを意味する色んな単語を取り上げてきました。




ということで、新しく「トイレ」というタグを作りました!

2025年2月25日火曜日

can

2019年、イギリスのチャーチル首相の生家で、世界遺産にも登録されているブレナム宮殿から18金(!!)のトイレを盗んだ犯人の公判が行われたそうです。

トイレが18金とはなんという成金趣味かと思いますが、芸術作品として製作されたものらしいです。


Three men snatched an 18-carat-gold toilet worth $3.5 million from an English country mansion where Winston Churchill was born — and now they could be headed to the can, authorities say.

The one-of-a-kind, 215-pound, fully functioning commode was carried out of Blenheim Palace by the thieves in under 5 minutes in the predawn hours of Sept. 14, 2019, prosecutor Julian Christopher told a jury during his opening statement in Oxford Crown Court on Monday.
(Chris Nesi. Seat of power: Three men on trial for swiping $3.5M gold toilet from Churchill’s home. February 24, 2025.)


その価値、350万ドルとも言われる黄金の便座2019年9月14日未明に忽然と持ち去られたそうです。

さて、引用した記事に、


and now they could be headed to the can


というくだりがあります。

ここで使われている"can"は名詞ですが、アメリカ英語の俗語表現で刑務所の意味があります。日本語でいう「豚箱」というほどの意味合いかと思います。

また、"can"には同じく俗語表現で、トイレの意味もありますので、ここはシャレを効かせた単語のチョイスだと思われます。

缶("can")がこれらの意味に用いられるのはどういう背景があるのでしょうか?

手元にあるOxford Dictionary of Euphemisms (1996) によりますと、「豚箱」の意味は独房の狭いスペースを意味することから、また、トイレの意味はかつて使用の度に中身を捨てる必要があったブリキのバケツから来ているとか。


2025年2月24日月曜日

vertiport

先日ネット配信のニュース動画を見ていたら、東京都が「空飛ぶクルマ」の実証実験を2026年にも開始するということでした。早ければ2027年中にも商用運行を開始するとのことで、東京の空をクルマが飛んでいるのを目にすることになるかも、という話でした。

「空飛ぶクルマ」なんて子供の頃読んだ漫画に出て来る遠い未来のことだと思っていましたが、この1〜2年のうちに実現するとは驚きです。

そして今日ですが、同じように"flying cars"の現実味に関するアメリカ国内ニュースを目にしました。


By 2028, the city of Orlando, Florida, could resemble scenes from “Blade Runner” and “The Fifth Element” — with traffic from flying cars buzzing overhead.

Orlando International Airport this week revealed it has been seeking partners who can help it develop launch and landing pads for “Jetsons”-esque flying cars called a “vertiport,” reported ArcaMax.

The Greater Orlando Aviation Authority will put out bids for the project next month, according to the outlet.
(Chris Harris. Jetsons’-like flying cars could be a reality in Orlando by 2028: report. New York Post. February 22, 2025.)


こちらはフロリダ州のオーランド国際空港において、空飛ぶクルマが離着陸できる整備を行うという構想で、2028年までに実現という計画は東京より1年遅いですが、やはり空飛ぶクルマの実現を視野に入れているということです。

空飛ぶクルマの実現に必要なインフラのひとつが、


vertiport


というものです。

これは、"vertical"と"port"を組み合わせた、いわゆるかばん語です。

垂直離着陸のためのポートということになります。カタカナでベルティポート(また、バーティポート)と書いているものもあります。

"vertiport"という単語は辞書には見当たりませんが、辞書に載る日も近いのかもしれません。


2025年2月21日金曜日

sweat like a pig

本日ですが、今日の1語に取り上げる適当なニュースネタが見つかりませんでした。こういう日もあります。

こういう日のために、日頃目に留まった表現で面白いと思ったものを書き留めているのですが、そのストックの中から取り上げます。

取り上げるのは、


sweat like a pig


という表現です。ブタのように汗をかく、ということですが、大汗をかく、汗だくになる、という意味の慣用表現です。

この表現ですが、たしかアニメの字幕英語で使われていたのを見たのを書き留めたものと記憶します。


You're sweating like a pig.
(お前、汗びっしょりだぞ。)


みたいな感じだったと思います。

ところで、どうして「ブタのように」汗をかく、なのでしょうか?ブタは汗かきなのでしょうか?

どうやらそうではないらしいです。


If someone is sweating like a pig, it can mean they are perspiring a lot. But pigs don't sweat. In this case, a 'pig' is actually referring to pig iron which sweats as it's cooled.
(Pig idioms and expressions. ABC Education. February 1, 2019.)


ブタはそんなに汗をかく動物ではないそうです。では、"like a pig"とはどういうことなのかと言うと、ここでの"pig"とは"pig iron"のことで、鉄の原材料になる銑鉄というものを指すらしいのです。

この銑鉄を溶かして鋼にするそうですが、銑鉄の冷却の過程で生じる水分(sweat)のことを指して、"sweat like a pig"という表現になったのだとか。一体誰が言い始めたんでしょうか!?

ところで、"pig"が"pig iron"(鉄の原料)のことだというのはそう言われればそれまでですが、何でそうなるの?という疑問が出てきます。

研究社新英和大辞典で"pig"を引くと、"pig iron"の意味は、


鋳床に鋳型を並べた所が子豚の乳を飲む様に似ているところから


という興味深い解説があります。

金属加工の専門用語では、鋳床のことを"pig bed"というらしいのですが、その溝(ランナー)の沿う個々の銑鉄が乳飲み子の子豚に似ているということのようです。さらに、金属加工の専門用語でこの鋳型、溶銑の流れる道を"sow"というそうですが、その"sow"には雌豚の意味があることと関係があるようです。

字面だけからは想像もつかない、未知の世界を見た思いです。

それでは皆様、よい三連休を!

2025年2月20日木曜日

"check out"の意味

スーパーマーケットなどで購入した品物を客自身が精算する仕組み、いわゆる「セルフレジ」はかなり浸透しているように思われます。小生も品数が少ない買い物などではセルフレジのコーナーで済ますことがありますが、時間帯によっては長蛇の列になっていて閉口した経験もあります。有人レジの手際の良さとセルフレジのそれには当然差があるということもあるでしょう。そもそも店舗側のスタンスとして、有人レジを減らして人件費を削減したいということもあるだろうと思われますが、店舗内の混雑は顧客サービスの観点からは不満に直結する話でもあります。

以下の記事は米ウォルマートでの話です。


Some Walmart shoppers are grumbling about the retailer's self-checkout lanes.

The benefit of self-checkout is in the eye of the consumer. For every shopper who is upset there's no self-checkout lane to use – and long lines at registers – there's another one who is upset about having to use self-checkout and sometimes having to wait to do so.

Retailers face a difficult balancing act, said Santiago Gallino, an associate professor of marketing, and of operations, information, and decisions at the Wharton School of the University of Pennsylvania.

"Too few staffed registers can frustrate customers who prefer traditional checkout, while an over-reliance on self-checkout can introduce inefficiencies and revenue loss," Gallino told USA TODAY.
(Mike Snider. Walmart self-checkout: How retailer's DIY lanes don't check out with some shoppers. USA Today. February 18, 2025.)


セルフレジと有人レジのバランスをどう取るのか?ウォルマートも大体同じような問題を抱えていると思われます。

セルフレジを意味する、


self-checkout


という英語に格段の説明の必要はないでしょう。。

「チェックアウト」(check out)には購入した商品の精算をするという意味があるのはご存知かと思います。ホテルでのチェックアウトという言葉は日本語としても通じます。

ところで引用した記事のタイトルに注目です。ここでも"check out"という表現が使われています。


Walmart self-checkout: How retailer's DIY lanes don't check out with some shoppers


ここでの"check out"をどう訳したら良いでしょうか?

明らかに"self-checkout"の「チェックアウト」とは異なる意味合いで使われていると思われます。

"check out"という動詞句には様々な意味があることは辞書を見ても明らかですが、実のところ、この用例にぴったり合うような意味合いが見つからず・・・。(複数の辞書、オンライン、コーパス、等々あたり、久しぶりに難儀しました。こんなにあちこちを当たったには"double down"以来かも知れません。)

記事の内容に戻りましょう。

セルフレジにまつわる顧客視点での不満がテーマな訳ですから、


DIY lanes don't check out with some shoppers


という文が言いたいことは自ずと分かるというものです。つまり、この文の主語は「セルフレジ」であり、動詞"check out"に続く"with some shoppers"という部分がポイントです。文意は、セルフレジがイマイチ客に受け入れられていない、というようなことだと思われます。

それではそのような意味合いが"check out"にあるかというと、どの辞書を見てもそういう意味を載せていないのでこれはどうしたことか、と思ったのです。やや特殊な用法、あるいはアメリカ英語に特有の言い回しの類いだろうか、などと思案。

次なる手立てはコーパスです。恐らく同じような使われ方をしていると思われる以下のような用例(少し分かりにくいですが)がありました。


The filmmakers assert that Obama had a nose job ahead of his 2004 run for Senate, that his mother posed for naked photos when she was five weeks pregnant with him and that Bill Ayers nurtured Obama's career. I haven't seen the film, but that all checks out with me. Seems about right. I guess I kinda always assumed something like that, you know?
(Birthers Divided on Whether or Not to Get Behind Ridiculous)


共通するのは、


sth check out with sb


という構文です。ある物事(sth)が、ある人にとって(with sb)、正しく思われる、受け入れられる、しっくりくる、というような意味合いと思われます。

ここで、再び英和辞書で"check out"を引きます。少し頭の整理がついたせいもあってか、以下の意味合いが目に止まりました。


必要条件を満たす、性能テストに合格する
(研究社新英和大辞典)

(機械・人が)性能[能力]テストに合格する
(小学館プログレッシブ英和辞典)


セルフレジが顧客に受け入れられない(don't check out)という意味合いに近しいと言えます。

また、


To be verified or confirmed; pass inspection: The suspect's story checked out.
(American Heritage Dictionary)


to prove to be consistent or truthful
The description checks with the photograph.
—often used with out
The story checked out.
(Merriam-Webster Dictionary)


といった定義も今回の用法を説明するものかと思われました。

しかし、ここまで書いてきて思うのは、やはり、


sth check out with sb


という構文を成す用例とその訳、意味合いを辞書に載せても良いのでは、ということです。

2025年2月19日水曜日

PSA

記事の引用からどうぞ。


A California traveler has received a flurry of sympathy online after chastising an aisle seat occupant for refusing to get up so she could use the bathroom.

“You just gotta get up,” the user — who goes by @deetsontheeats — declared in the impromptu airline etiquette PSA taking off online.
(Ben Cost. Airplane passenger delivers furious PSA following seatmate’s inconsiderate move: ‘You can’t hold the row captive’. February 18, 2025.)


記事のタイトル、また本文に、


furious PSA 

the impromptu airline etiquette PSA 


などと出てくるのですが、この"PSA"というのが一体何の事なのか分からず、暫し考えてしまいました。記事の内容としては、飛行機の座席を巡る話で、窓側の席の客がトイレに行きたいのに通路側の客が立ち上がってスペースを空けてくれないから困る、というのは分かるのですが、では"PSA"は何を指すのかが分かりませんでした。

略語はコンテクストによって色々ありますから、"PSA"に関しても複数あります。

結論から言うと、"PSA"は、


Public Service Announcement


の略なのです。Merriam-Webster Dictionaryでは以下のように定義されています。


an announcement made for the good of the public


つまり、公共の利益につながる広告ということで、マナー向上などを目的とした啓発広告のことなんですね。

以下の用例はタイトルでは略語ですが、本文では"Public Service Announcement"と書いており、またコンテクストとしても分かりやすい例です。


The FDNY and FDNY Foundation are urging New Yorkers to never block fire hydrants with parked cars in a newly released Public Service Announcement (PSA).

It’s illegal to park within 15 feet of a fire hydrants. Seconds matter in an emergency, and blocking a hydrant could delay firefighters when responding.
(In new PSA, the FDNY reminds New Yorkers to never block fire hydrants. FDNY Foundation.)


最初の引用では、略語のみで、また広告というよりもSNSの投稿の話なので、分かりにくいといえば分かりにくいのですが、こうした苦情をSNSに投稿することがマナー意識を高める一種の啓発につながるという意味では、現代の"PSA"とも言えるのでしょう。



2025年2月18日火曜日

thrifting

告白しますと、小生は大変なけちん坊です。お金を使う時、勿体無い、といつも考えてしまいます。使わないで済む方法が無いか、安く済ませられないか、と考えてしまいます。

移動の際、駅一駅分くらいの距離であれば歩きます。自動販売機で飲み物は買いません。必要なら自宅から水筒を持参します。

ということで、以下の引用記事に出てくる倹約家のお話には大いに共感する部分があります。


A mom says she has saved $5,000 thrifting her son’s birthday and Christmas presents every year.

Natalie Joy Miller, 38, has always loved scouring second hand stores and even started collecting clothes for her son, Artie Allen, 5, when she was aged 16 — years before he was even born.

The mom-of-one says “pretty much all of his stuff” is second hand and she loves to find gems in thrift stores and occasionally online on Facebook Marketplace.
(I saved $5K on my son’s gifts by thrifting — he doesn’t need anything new. New York Post. February 17, 2025.)


記事の登場人物は、"thrifting"により年間5,000ドルあまりを節約したとあります。

"thrift"という単語はご存知でしょう。倹約、節約という意味ですが、どちらかというと良い意味でお金につましいことを指します。ケチ、吝嗇という日本語にはネガティブな意味合いがありますが、英語だと"stingy"が相当します。(小生の場合はこちらかもしれません。)なお、倹約、節約志向を表現するのに"frugal"という単語もあります。

上記引用記事の用例に見られるように、"thrift"には動詞としての意味もあって、


To shop in thrift stores, especially for clothing
(American Heritage Dictionary)


と定義されています。中古品、特に古着などを売っているお店は"thrift shop"、"thrift store"などと呼ばれます。新品ではなく、ユーズドで済ます、という発想ですね。

ところで、"thrift"の語源を紐解くと実に興味深い事実に行き当たります。

遡ること古ノルド語thrifaskという語から中期英語thrivenを経ているのですが、同語源の単語に"thrive"があるのです。

"thrift"と"thrive"、スペルも似ていますが、倹約と繁栄が同じルーツとは示唆に富む話ではありませんか!

"frugal"が果実(fruit)と関連があるように、"thrift"とは倹約により得た蓄えという意味があり、浪費を意味する"spendthrift"とは蓄えを使ってしまうということです。

2025年2月17日月曜日

plan B

アメリカの大学構内に経口避妊薬の自販機設置、というニュース記事を見かけました。


The University of Connecticut started providing Plan B through new vending machines on campus in early February following the passage of a 2023 law expanding contraception access in the state.

The state law — introduced after the overturning of Roe v. Wade — allows licensed pharmacists to prescribe contraception at pharmacies across the state following a brief training program and also permits over-the-counter medications like the emergency contraceptive Plan B to be sold in vending machines.
(Caitlin McCormack. UConn installs emergency ‘Plan B’ contraception vending machines on campus. New York Post. February 16, 2025.)


日本の大学で避妊薬の自販機を設定しているようなところはあるでしょうか?(多分無いと思いますが。)

記事で引っ掛かったのが、


started providing Plan B through new vending machines on campus


というくだりの"Plan B"です。読み進めていくと、


over-the-counter medications like the emergency contraceptive Plan B 


とあり、大文字で始まる"Plan B"とは経口避妊薬そのものを指していると分かります。

果たして"Plan B"とは経口避妊薬(一般名レボノルゲストレル)のブランド名なのでした。

ところで、一般的に"plan B"というと、想定していた状況に対する対策がうまく行かないことが分かったときに取る「次善策」という意味で用いられます。

つまり「プランA」がダメだったので、「プランB」に切り替える、というようなコンテクストで用いられるもので、英語においても、"plan B"とは、


an alternative plan of action for use if the original plan should fail
(Merriam-Webster Dictionary)


と定義されているところです。

経口避妊薬"Plan B"は、別名"morning-after pill"とも呼ばれ、避妊をせずに性行為を行った後に服用するもので、日本語では緊急避妊薬と訳されます。

こういう状況における「プランA」は恐らくはきちんと事前に避妊対策をしておくということなのでしょうが、野暮を承知で言えば、それがうまく行かなかった時のための次善策としての"Plan B"を避妊薬の商品名にするとは、なかなかしたたかなマーケティングのようにも思われます。

大学の構内で避妊薬の自販機を設置するというのも驚きですが、ご存知のように避妊や中絶に係る女性の権利(birth control)にまつわる議論は米国においては特別なものがあります。特に2022年、女性の中絶する権利を認めたRoe v. Wade判決が覆されたことを受け、リベラルな州では独自の州法により女性の権利擁護を図っており、上記引用におけるコネチカット州もそのひとつです。

中絶に慎重な立場を取る共和党は"Plan B"の流通、使用拡大を問題視しており、こうした州の取り組みと政府の対立が浮き彫りになりそうです。

今日の1語の投稿のラベル「商標」は、商標名が一般名詞化した英単語に付けてきたものです。"Plan B"は一般名詞の表現が商標に用いられているもので、言わば逆のパターンなのですが、興味深い例として同じラベルとしました。

2025年2月14日金曜日

loosie

「バラ売り」を英語で何と言うかご存知でしょうか?

答えは、


loosie


です。

では、記事の引用をどうぞ。


New York City bodegas are selling “loosie”-style eggs — à la notorious single cigarettes — as bird flu shortages send the prices of cartons skyrocketing, The Post has learned.

Fernando Rodriguez, 62, owner of Pamela’s Green Deli in the Bronx said many of his customers simply can’t shell out $10.99 for a full carton of the beloved breakfast food.

“These people don’t have enough money to buy a dozen eggs, so I have to sell them separately,” said Rodriguez, 62. “When I saw how high the price of eggs has become, we decided to break it down into small bags.”
(Can’t shell it out! NYC bodegas selling ‘loosie’ eggs as bird flu causes prices of cartons to skyrocket. New York Post. February 12, 2025.)


鳥インフルエンザの影響で卵の価格が高騰しているアメリカでは、1パック(1ダース)が10.99ドル(1,600〜1,700円!)もするため、とても買えないという客が続出しているそうです。

そうした人のためにバラ売りの卵が重宝されているという話なんですが、この"loosie"という表現は元はバラ売りされる紙巻きタバコの1本を指すものだったそうです。

American Heritage Dictionaryには"loosie"のエントリがあります。


A cigarette sold individually rather than as part of a pack, often in violation of local or state laws.


俗語表現となっていますが、"loosie"はそのスペルから想像がつくように、"loose"という形容詞から来ています。形容詞の"loose"には、束ねられていない、包装されていないという意味があり、故にバラ売りという意味になるんですね。


Not bound, bundled, stapled, or gathered together
(American Heritage Dictionary)


よって、"loose milk"は量り売りの牛乳のことを指し、"loose change"は小銭のことを指します。



2025年2月13日木曜日

bat a thousand

トランプ政権下で政府の効率化、ムダの排除を掲げて人員削減を進めるイーロン・マスク氏。

このところの報道では国際援助を管轄するUSAIDの解体を巡って議論が喧しいところです。

USAIDの活動による支援が法外な額に上ると批判が展開されていました。矛先になったのはガザ地区へ送られる避妊具の総額が5,000万ドルという数字でしたが、どうやら間違いだったようです。


Elon Musk acknowledged Tuesday that there might not have been a federal plan to spend $50 million on condoms for Gaza — two weeks after the White House press secretary told the false story at an official briefing and more than a week after the president baselessly doubled the phony figure to $100 million and said the condoms were going to Hamas.

“Some of the things that I say will be incorrect, and should be corrected,” Musk, the billionaire businessman who is leading a Trump administration initiative they call the Department of Government Efficiency, said when a reporter told him the Gaza story was wrong. “So, nobody’s going to bat a thousand. I mean, any – you know, we will make mistakes, but we’ll act quickly to correct any mistakes.”
(Daniel Dale. ‘Some of the things that I say will be incorrect’: Musk backs away from false claim of $50 million for Gaza condoms. CNN. February 12, 2025.)


引用した記事によれば、ホワイトハウスの大統領執務室で記者に囲まれ問い質されたマスク氏は誤りを認め、誰にでも間違いはある、と釈明したようです。

マスク氏の発言中、


So, nobody’s going to bat a thousand.


というくだりがあります。これは、誰も完璧ではない(間違えることもある)、という意味の慣用表現です。

"bat a thousand"というフレーズは、完璧を意味します。

"bat"(バット)からお分かりのように、このフレーズは野球から来ています。

"a thousand"(1,000)は打率のことなんですが、10割、つまり全打席でヒットという意味で、故に「パーフェクト」の意味になります。

何故、数字の1,000なのでしょうか?

通例、野球の打率は小数点以下第3位までの数値で表し、例えば、2割5分1厘などと言います。

数値にすると、0.251です。10割というのはまずあり得ませんが、数値にすると1.000となりますが、1,000(one thousand)に見えることから、"bat a thousand"の表現が定着したそうです。


2025年2月12日水曜日

shill

今日の1語は、"shill"です。

では、記事の引用をどうぞ。


McGovern (D-Mass.) had laced into Johnson (R-La.) over his suggestion that the Dems walked away from the negotiating table on efforts to avert a government shutdown.

(中略)

The Massachusetts Democrat had claimed that Dems haven’t ditched negotiations, and countered that the GOP isn’t “interested in hearing from us.”

“First of all, he’s full of s‑‑t. He’s a liar. And he’s a total shill for Donald Trump and Elon Musk,” McGovern said, the Hill reported.  
(Ryan King. Speaker Mike Johnson savages Dem Rep. Jim McGovern who called him a Trump ‘shill’ – in the most Southern way. New York Post. February 11, 2025.)


引用した記事の内容は、アメリカ議会で民主党、共和党の対立が起きているというものです。

互いを批判している訳ですが、後半部分では民主党議員が共和党のジョンソン議員を、


he’s a total shill for Donald Trump and Elon Musk


と罵ったとあります。

この"shill"という単語を知らなかったので辞書を引くと、


さくら、おとり、ちょうちん持ち
(ランダムハウス英和辞書)


とありました。

「ちょうちん持ち」とは面白い日本語です。久しぶりに広辞苑を引きました。暗い夜道を照らすため、ちょうちんを持って先導する人のことを指すのですが、それが転じて、「他人の手先に使われ、また頼まれもしないのに(!)他人のためにその長所などを吹聴する」(広辞苑第三版)人を蔑んで言う表現になりました。

つまり、民主党議員はジョンソン議員をトランプ大統領やマスク氏に使われるだけの手先だと罵った訳です。

"shill"の語源はよく分かっていないそうですが、"shillaber"という単語が約まったものらしいです。この"shillaber"は人の名前(苗字)でもあるそうですが、ちょうちん持ちのShillaberさんという人がかつていた、という訳でもないようです。

元々の意味はギャンブルなどで賭け金を出させ釣り上げるために、さも勝っているように見せかけてカモを集める囮役、「さくら」を指すものだったそうです。


2025年2月11日火曜日

true form

ここ数日のアメリカのニュース記事を見ていますとスーパーボウルの話題一色のようです。

アメフトについては全く詳しくなく、かつて米国に短期滞在した際、日曜の午後などは勤務先の同僚に誘われて自宅を訪問、テレビ観戦などしたこともあるのですが、ルールが分からず、私にとってはテレビの前でバドワイザーを飲みながら野菜スティックをかじったという記憶しか残っていません(笑)

さて、そのスーパーボウルの試合ではフィラデルフィアを本拠とするイーグルスが勝利したそうなのですが、ファンの喜びようを伝える記事からの引用です。


Eagles fans in Philadelphia were in true form following their team’s 40-22 win over the Chiefs to win Super Bowl 2025.

Hundreds of fans flocked to the city’s Broad Street to celebrate the franchise’s second Super Bowl title.

After the city decided to not grease the poles in the area, according to the Philadelphia Inquirer, some decided to climb them, including one who sat atop a traffic light on the corner of Broad Street and Pine Street.
(Jared Schwartz. Philadelphia descends into chaos as rowdy Eagles fans celebrate Super Bowl 2025 win. New York Post. February 9, 2025.)


引用した記事に、


in true form


という表現が出てきます。これは慣用表現で、"true to form"というフレーズでも用いられるのですが、


behaving or proceeding in the usual and expected way
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味合いで、


いつもと同じで、予想通りで、例のごとく
(ランダムハウス英和辞書)


という日本語に訳されます。"form"(行動パターン)に忠実な、合致している(true)という字句通りの訳とも言えます。

例のごとく、という言い回しからは、お決まりの~、やはり、またか、という感が滲んでいますが、人の悪い癖、行動パターンについて用いられることが多いものです。つまり、「地が出た」ということなのです。

イーグルスのファンはビッグイベントでのひいきチームの勝利に歓喜するあまり、繁華街で喜びを爆発させたようですが、どんちゃん騒ぎはエスカレートし、往来のトラックの屋根に登ったり、信号機によじ登ったりする人で騒然となったようです。

それもこれも毎年繰り返される光景なのでしょう、傍から見れば、いつものこと、「またか」という半ば呆れられもする話だと思われます。"true form"に込められた意味合いはそんなところでしょうか。

日本では、某球団が優勝したあかつきにはドブ川に飛び込むことも厭わない「アレ」を思い出します。


2025年2月10日月曜日

daylight

石破首相が米国を訪問、トランプ大統領と初の首脳会談を行いました。

心配された会談の行方・・・ですが、いきなり関税をふっかけられることもなく、石破首相の面目が丸潰れになるような扱いもなく・・・。まずまずの成果に政府関係者は胸を撫で下ろしていることでしょう。(SNSでは色々と貶されているようではありますが。)

首脳会談について報じた記事をいくつか斜め読みしたのですが、ポリティコ紙の記事の一部に以下のようなくだりがありました。


Amid fast-growing doubts about America’s reliability as an ally, Trump downplayed any daylight between the U.S. and Japan, speaking glowingly about his counterpart and the importance of the bilateral relationship. Trump began an East Room press conference by presenting Ishiba with a photo of them in the Oval Office earlier, then declared the U.S. “totally committed” to Japan’s security and vowed to strengthen economic ties.
(No tariffs? Trump plays nice with Japan’s new leader. Politico. February 7, 2025.)


アメリカファースト(米国第一主義)を公言して憚らないトランプ大統領ですが、中国や北朝鮮、ロシアなど周辺国の脅威が増す一方、有事の際にアメリカは同盟国として日本を守ってくれるのかとの懸念は常にあるところです。首脳会談では同盟国としての位置付けを再確認するということも最重要課題のひとつとしてあった訳ですが、こちらも取り敢えずは再確認が果たせたということのようです。

ところで、記事では、


Trump downplayed any daylight between the U.S. and Japan


と出てきます。"daylight"という表現に注目します。

"daylight"とは日光、昼の光のことですが、


a perceptible space, gap, or difference
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味があるんですね。

認識の差とかギャップという意味合いでも使われるのですが、記事と同じようなコンテクストの例文が辞書に見えます。


denied there was any daylight between the two governments' positions


ランダムハウス英和辞書では、


(密着すべき2つの物の間の)はっきり見えるすき間


という定義があります。「密着すべき」ところがすき間がある、ということでそこから光が漏れてくるのが見える、故に"daylight"なのでしょうか。

認識の差異、ギャップという意味合いでこの"daylight (between) 〜"という表現が使われるのは政治のコンテクストで多いようで、ちょっと検索すると最近の報道記事でも多数の用例を確認できます。


Speaker Mike Johnson on Monday celebrated President Donald Trump's weekend trade war threat against Colombia, adding there will be "no daylight" between Congress and Trump on his use of economic sanctions to force countries to repatriate nationals who immigrated illegally into the U.S.
 (Meredith Lee Hill. Johnson vows ‘no daylight’ between Congress and Trump on tariff-immigration threats. Politico. January 27, 2025.)


"daylight"の意外な意味(こんな意味もあったの?)でした。

2025年2月7日金曜日

bullpen

ドジャースの大谷翔平選手の銀行口座から、不正送金により1700万ドルという多額のお金を騙し取った容疑で逮捕起訴された元通訳の水原被告に懲役57ヶ月の有罪判決というニュースです。


Shohei Ohtani’s former interpreter Ippei Mizuhara went from the dugout to the bullpen on Thursday.

Judge John W. Holcomb sentenced Mizuhara to 57 months in jail and ordered him to pay $18 million in restitution.

He will report to prison on March 24.
(Josh Kosman. Ippei Mizuhara, Shohei Ohtani’s ex-interpreter who stole $17 million from Dodgers star, sentenced to 57 months in jail. New York Post. February 6, 2025.)


米球界を揺るがした大事件ですが、引用記事の冒頭で、


Ippei Mizuhara went from the dugout to the bullpen on Thursday


とあります。判決が降った木曜日(米国時間)のことを言っているものですが、"bullpen"という単語に注目です。

カタカナでも「ブルペン」と言い、野球ファンならその意味するところは交代予定のピッチャーがウォームアップをするスペースのことだというのは説明の必要も無いでしょう。

ここでは水原被告が"bullpen"に向かった、と言っている訳ですが、"bullpen"には野球の用語の他、留置場、刑務所の意味があるということを知りませんでした。

"bullpen"とはそもそも牛の囲い場を指すのですが、


A temporary holding area for prisoners, as in a courthouse
(American Heritage Dictionary)


という意味があります。野球用語としての「ブルペン」は後になって付け加わったようです。

牛の囲い場、また囚人の収容所がピッチャーのウォームアップの場所を意味するようになったというのは若干の飛躍のようにも思われます。実際のところ、控え投手がウォームアップする場所を何故「ブルペン」と呼ぶようになったのかははっきりしないようです。

Baseball Almanacのサイトによれば諸説あるそうで、かつて控え投手がウォームアップをする辺りのフェンスには決まって掲げられていたBull Durham Tobaccoというタバコの広告に因むという説が紹介されています。


2025年2月6日木曜日

sound out

今日の朝刊、1面の見出しで最初に目に入ったのが、ホンダと日産の経営統合が白紙撤回、というニュースです。

海外でも関心は高いと見え、ロイターの記事を読みました。


TOKYO, Feb 5 (Reuters) - Nissan looks set to step back from merger talks with rival Honda, two sources said on Wednesday, calling into question a $60 billion tie-up to create the world's no.3 automaker and potentially leaving Nissan to drive its turnaround alone.

Talks between the two Japanese automakers have been complicated by growing differences, according to multiple people familiar with the matter, all of whom declined to be named because they were not authorised to speak to the media.
(Nissan set to step back from merger with Honda, sources say. Reuters. February 6, 2025.)


統合により世界第3位のメーカーが誕生すると期待されましたが、お互いの思惑にギャップがあったということでしょうか、呆気なく萎んでしまった印象があります。

恐らくは協議が進むにつれて両社の認識のズレが少しずつ見え始めたものと思われますが、決定的な要因と思しき点については以下のくだりがあります。


Reuters reported earlier that Nissan could call off talks after Honda sounded it out about becoming a subsidiary. Nissan baulked as this was a departure from what was originally framed as a merger of equals, one of the people said.
(ibid.)


邦紙でも読みましたが、ホンダが日産を子会社化する、つまり傘下に置くという提案に日産が反発したというのが事の次第のようです。

記事では、


Honda sounded it out about becoming a subsidiary


とありますが、ここで使われている"sound out"が今日取り上げる表現です。

ここでの"sound"は音、サウンドの意味ではなく、


水深を測る、(海底などを)探査する


という意味で、語源も異なる別の単語です。

"sound out"という動詞句は、


相手の考えを当たってみる、腹の内を探る


という意味合いで用いられます。

記事での用法からお分かりのように、


sound A out (about, on 〜)


のようなパターンで用いられることが多く、〜について、A(相手)に打診する、という意味になります。

日産にしてみれば、対等だと思っていたところが、ホンダの姿勢は日産を傘下に収める提案だと分かって、格下に置かれるとあってはとても承服できないということになったのでしょう。


2025年2月5日水曜日

lakh

米・ペンシルベニア州で卵が大量に盗まれるという事件があったそうです。盗まれたのは10万個に上る卵で、総額にして4万ドル相当。

鳥インフルエンザ多発などを背景に卵の価格は高騰していることが背景にあるようです。


Pennsylvania state police are scrambling to find the thieves who poached 100,000 organic eggs worth an estimated $40,000, officials say — as the nation grapples with the dreaded egg-flation.

The thieves cracked open the distribution trailer at Pete & Gerry’s Organics LLC, in Greencastle, on Saturday night, and made off with the eggs — leaving the company shell-shocked, cops said.
(Ronny Reyes. 100K eggs worth $40K poached from Pennsylvania business as nation scrambles with egg-flation: police. February 4, 2025.)


同じ盗難事件を伝える別記事の引用です。


Thieves stole about one lakh eggs from a distribution trailer in Pennsylvania, authorities told CNBC. According to the report, the theft took place around 8:40 pm at Pete and Gerry’s Organics LLC in Greencastle, police said in a report. The eggs are worth about $40,000.
(US: 1 lakh eggs worth $40,000 stolen in Pennsylvania amid nationwide shortage: Report. Hindustan Times. February 5, 2025.)


この記事では盗まれたのは、


one lakh eggs


とありますが、"lakh"って何だ!?となってしまいました。

ただの不勉強なのですが、"lakh"は10万を意味する単語で、英和辞書にも載っているものです。

"one lakh" (1 lakh) で10万(個)です。

ヒンディー語から来ている単語ですが、上記記事のソースがHindustan Timesということで納得。

"lac"というスペルもありますが、10万ルピー、もしくは非常に大きい数、を意味する英単語になっているものです。

2025年2月4日火曜日

de minimis

トランプ大統領による貿易相手国への関税引き上げが次々と発動されています。

その一環で、これまで非課税であった少額の輸入品へも課税することになったと報じられています。


President Donald Trump will close a loophole that allows online retailers to send small packages to the U.S. without paying a tax as part of his trade tariffs clampdown - a move that could have an impact on the wallet of everyday Americans.

Under the “de minimis” exemption, a longstanding rule that applies to packages entering the U.S. worth under $800, retailers overseas are allowed to sell products at lower prices by shipping them straight to consumers, bypassing domestic warehouses.

The loophole is commonly used by online Chinese retail giants such as Shein and Temu. It has allowed the brands to sell goods at extremely cheap prices and seen their popularity grow in recent years.
(Rhian Lubin. What is the 'de minimis exemption' to tariffs and why its end could have a huge impact on your wallet? The Independent. February 3, 2025.)


"de minimis"と呼ばれる例外ルールの下、800米ドル以下の輸入品はこれまで非課税でしたが、この例外を無くすというものです。

"de minimis"はラテン語です。

ラテン語minimisは、スペルから想像が付くと思いますが、最小という意味で、deは英語ではof、あるいはaboutに相当する前置詞ですから、"de minimis"の意味するところは、最小のものについて、ということになります。

Merriam-Webster Dictionaryによると、この"de minimis"という表現は実のところ、以下のラテン文、


de minimis non curat lex 


に由来しており、その意味は英文では、


"the law does not concern itself with trifling matters"


となります。

つまり、最小(些少)のものに対しては気にしない(敢えて取り沙汰すことはしない)、という意味です。


lacking significance or importance : so minor as to merit disregard
(Merriam-Webster Dictionary)


法律のコンテクストから生じた表現ですが、貿易関係や経済の用語として用いられることの多い表現のようです。カタカナで、「デ・ミニミス」(また、デ・ミニマス)規定などと書かれることもあります。



2025年2月3日月曜日

not worth the paper it’s written on

先日も取り上げたところですが、中国発の人工知能(AI)、ディープシークが突如として躍進、米国ハイテク株の急落を招くなど、市場を揺るがす事態となっていますが、その実力のほどはメディアでも様々に報じられており、毀誉褒貶相半ばのように見受けられます。

アプリのダウンロード数では首位に立ったようですが、中国製ということではやはりセキュリティやプライバシー保護の観点での懸念が拭えません。

CNBCの記事によれば、TikTokのようにアプリ利用の禁止になるのも時間の問題と言われているようです。


Matt Pearl, a special advisor to the deputy national security advisor at the National Security Council in the Biden administration and now the Strategic Technologies Program director at the Center for Strategic and International Studies, said DeepSeek's privacy policy implies that people have control over what is collected, but it should induce alarm.

"DeepSeek's privacy policy is not worth the paper it is written on," Pearl said. DeepSeek is subjected to PRC laws and anything entered into the app is fair game. Through keystroke patterns, a DeepSeek user can be tracked across all devices, information gathered from advertisers, and DeepSeek could also seek to leverage cameras and microphones, according to Pearl.
(Kevin Williams. Chinese AI app DeepSeek was downloaded by millions. Deleting it might come next. CNBC. February 2, 2025.)


記事ではセキュリティ専門家のコメントで、


DeepSeek's privacy policy is not worth the paper it is written on


と引用されています。

ディープシークアプリにも一応のプライバシーポリシーは規定されているものの、その内容に実効性は無い、というのが専門家の見解です。

この、"not worth the paper it's written on"というのは慣用表現です。Merriam-Webster Dictionaryでは以下のように定義されています。


not worth the paper it's written/printed on
idiom
: not of real value : not legally valid


それが書かれている(印字されている)紙の価値も無い、とは、紙自体にもそんなに価値が無いという前提からすれば、「紙ほどの価値も無い」、「紙の価値すら無い」ということであり、ある意味強意表現とも言えます。

書面や契約者について、日本語で「紙屑同然」と言ったりしますが、そのニュアンスに近いでしょうか。