大統領に就任したらウクライナとロシアの戦争を24時間で終わらせる —— そう豪語していたトランプ大統領は、有言実行と言うべきか、停戦に意欲的な姿勢を示しています。(単に自己顕示欲の表れではないか、という批判もありますが。)
しかしながら、トランプ氏はウクライナ支援に積極的であったバイデン前政権の姿勢から180度の転換をしたようにも見え、ウクライナに対して鉱物資源と引き換えの軍事支援を交渉のテーブルに上げ、ゼレンスキー大統領を独裁者とまで呼びました。逆に、ロシアのプーチン大統領とは融和的な関係を見せているという状況です。
このアメリカの変節は西側諸国に少なからぬショックを与え、フランスのマクロン大統領らが会談を通じてトランプ氏を説得した模様ですが、その効果があったでしょうか。
「独裁者」発言については、そんなこと言ったかな、とまさかの発言否定という報道がありますが、今週に入ってからのトランプ氏は先週からはやや軌道修正した模様です。
オピニオン記事からの下記引用をお読み下さい。
On Wednesday, Trump confirmed he’d be sitting down with Ukrainian President Volodymyr Zelensky in Washington Friday to discuss an end to the war and sign the long-awaited mineral-rights deal.
That’s a welcome change, after a couple of weeks of back-and-forth sniping between the two leaders, with our prez even saying Ukraine “should never have started” the war and calling Zelensky a “dictator.”
(中略)
So it’s a very good thing, for Ukraine and the West at large, that Trump seems to now be listening to his better angels.
(Trump’s adjustment on Ukraine sends the right message to Putin. New York Post. February 26, 2025.)
ここで、
listening to his better angels
という言い回しが出て来ますが、"better angels"とはどういう意味合いなのでしょうか?
"angel"は「天使」のことですが、神の使者となって人間に神意を伝えたり、慈悲を施す存在であるというのが一般的な定義です。
その天使の中でもより良い(better)とされる"better angels"はどう解釈するのかということになりますが、天使の中にも堕天使と呼ばれるような悪の側に落ちるケースを考えると、"better angels"というのはその逆の善の側にある天使ということになるでしょうか。
この"better angels"という言い回しは英和辞典にはどうやら載っていないようなのですが、Merriam-Webster Dictionaryでは、
the part of a person's character or nature that is said to guide the person's thoughts and behavior
という定義と共に"better angels"の用例が挙げられています。
この定義からすると、"better angels"とはやはりその人の言動を(良い方向に)導くものであり、日本語でいうところの良心とかいうものに近いと思われます。
人間誰しも良心の咎め、悪意と良心のせめぎ合いというところがあるものですが、トランプ氏もようやく自身の良心に耳を傾けることができるようになったと!?
ウクライナへの侵略を開始したロシアが悪で、それに抵抗するウクライナは善である、という単純な2項対立の話ではありませんが、少なくともコンテクストとしては極端なロシア寄りの姿勢が目立っていたトランプ氏がまともになってきた、ということは西側の見方としてはあるかと。