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2021年12月31日金曜日

auspicious

いよいよ大晦日、2021年が暮れようとしています。明日から新年、多くの家庭で年越しと新年の準備に忙しくされていることと思います。

この時期に食べるものには縁起を担いだものが多いですよね。

健康や長寿、商売繁盛を祈念して食べるものを選ぶのは世界中どこでも同じ。

USA Today紙の記事で特集しているのを興味深く読みました。


Some foods are just plain lucky to eat on New Year’s Eve. What associates these dishes with good fortune, exactly? That’s tough to pinpoint, but much of the answer has to do with symbolism and superstition.

(中略)

Round foods resemble coins and money, Pelaccio says. Eat these symbolic foods, many believe, for a financially successful new year.

(中略)

If you eat peas with greens and cornbread, then that's even more auspicious, what with green being the color of money and cornbread calling to mind gold.

Black-eyed peas are served with rice in the traditional Southern U.S. dish called “Hoppin’ John” for New Year’s Eve.
(Carly Mallenbaum. Lucky New Year's foods: Black-eyed peas, grapes and noodles promise prosperity. USA Today. December 30, 2021.)


色んな食べ物を取り上げていますが、最初に出てくる上記引用部分が豆類です。これは日本も同じですね。マメに生きられます様に、という語呂合わせで、黒豆をお節料理に食すのが伝統です。

欧米でも豆類は縁起が良いようで、丸い豆類をコイン(お金)に見立てて、豊かさ、経済的繁栄を祈念するのだそうです。さらに、つけ合わせとして、緑の野菜(グリーンはお金の色)、コーンブレッド(黄金)が縁起が良いのだとか。甚だ実利的ですね。

新しい年を迎えるにあたって、"auspicious"という単語を取り上げたいと思います。

縁起が良い、というような意味合いですが、この単語はラテン語auspexから来ており、鳥を意味するavis、見るという意味のspecereから成り立っています。

かつて古代ローマでは、卜占官(英語でauspex、またaugur)と呼ばれる官吏が任命され、鳥とその飛翔を見て物事の吉兆を占うということをしていたそうです。特に重大な事業などに着手する前にはこの占いが重要視されたそうで、ローマ建国の場所を決定するにあたっても卜占官の見解が重要視されたそうです。

2022年が良い年になりますよう。



2021年12月30日木曜日

good and proper

記事の引用からどうぞ。


Corrine Reynolds, a North Wales resident, quickly became enamored with a squirrel which she often fed in her back garden. That was until the squirrel, named Stripe, bit and drew blood of Reynolds and more than a dozen other local residents, The Guardian reported.

(中略)

“In the space of 48 hours he attacked 18 people,” she told The Guardian. “He started attacking people who are just taking their recycling bags to the bin, and they are quite gruesome injuries.”

(中略)

While another neighbor, Sheree Robinson told The Guardian the squirrel bit her on the finger as well as six other neighbors. 

"It had me good and proper. I’ve got teeth marks on the top and bottom of my finger. It latched on and I had to shake it off," Robinson said.
(Gabriela Miranda. 'It had me good and proper': Welsh squirrel turns on woman who fed him, attacks neighbors. USA Today. December 29, 2021.)


リスという動物は意外に凶暴な生き物なのでしょうか、庭にやって来る小動物にエサをやっていたイギリスの女性が突然噛みつかれて血をしたたかに吸われたそうです。その後も次々と近所の人を襲い、被害者は18名にも。

怪我をした一人のコメントに、


It had me good and proper.


とあります。

"good and proper"というのは副詞的に用いられているフレーズですが、したたかに、とか、完全に、という意味です。コテンパンにやられた、とでも訳せましょうか。

ところで、この"good and proper"というフレーズの説明を辞書に求めますと、研究社の新英和大辞典によれば、フレーズそのものとしては取り上げられていません。

しかし、"good"のエントリにおいて、"good and 〜"という形で、


(後に続く形容詞または副詞を強調して)非常に、全く(very); 十分に、完全に


という意味を成すべく用いられると解説されています。

つまり、"good and 〜"に続く形容詞、副詞は"proper"に限らないのです。

例文には、


He’s good and hungry. (とてもお腹がへっている。)
You must word good and hard. (しっかり勉強しなければならない。)


など、いくつかここにも引用しました。

同様のフレーズに、"nice and 〜"、"rare and 〜"というものもありますが、"rare and 〜"については意外というか、正直なところ知りませんでした。



2021年12月29日水曜日

off-line

言葉というものは面白いもので、特定の仲間内だけで通用するような言葉や表現というものがあります。

符牒とか隠語という日本語がありますが、いわゆる"business jargon"というのが身近かも知れません。

得意になって使っているつもりが時代遅れ・・・。面白い記事を見つけました。


As 2021 comes to an end, it's the perfect time for reflection. And let's be frank: Many of us wish the people in our lives would reflect on their communication skills. These days, there are some embarrassingly outdated buzzwords and clichés that make everyone want to scream.

Recently, we interviewed managers, recruiters and employees about the words and phrases they think should be retired in 2022 — or at least go on a long vacation. Here's that list, dashed with a healthy amount of our opinions as grammar experts:
(Want to sound more intelligent? Avoid these 15 words and phrases that are 'embarrassingly outdated,' say grammar experts. CNBC. December 26, 2021.)


記事では、もはや時代遅れの烙印を押された15の表現が取り上げられています。ある意味、今年の1語(Word of the Year)の逆を行く面白い企画と思いました。

一つひとつ見ていくと成る程と思うのですが、最も共感したのは以下に引用する"off-line"(オフライン)という表現です。


11. 'Take it offline'

"If one more person tells me they want to take it offline, I'll scream."

That's what one irritated manager told us, and we hear her pain. It seems like everyone wants to take things offline instead of talking about it later, like they used to say in the old days. Maybe we should all take "offline" offline.
(ibid.)


仕事で会議していると、「その件はまたオフラインで話しましょう」、などと聞くことがあるのですが、常々、この「オフライン」とはどういう意味合いで言っているのだろうか、また何処から来ているのだろうか、と疑問に思っていました。

コンテクストとしては、会議での議論の最中に、やや詳細に至る内容に入り込んでしまった場合や、あるいは出席者の全員には関係しない、ある特定の関係者のみに関わる様な事項に議論が及んだ場合に、そのような事項についての議論はまた別の機会に、あるいは後で(関係者だけで)議論しましょう、という意図で発せられるもののようであると理解しています。

日本語でも使われるこの表現は恐らく英語での"Let’s take it to off-line."から来ているのだと思います。

ところで、「オフライン」の逆は「オンライン」で、オンライン(で)とは昨今ではネットワークシステムに接続した状態を指すというのが一般的な理解でしょう。

Merriam-Webster Dictionaryによりますと、"off-line"という単語の初出は1919年だそうです。

当時はインターネットはまだ存在していませんが、その後、時代の変遷、情報技術の発展に伴って、人と人とのコミュニケーションにおいてシステムを介することは普通になってきたと思われます。従って、「オンライン」でなく、「オフライン」で、というのは、ネットワークやシステムを介してのコミュニケーションではなく、別途対面で、という意味合いがあったかも知れません。

一方、記事にもありますように、そのコミュニケーションが起きているその場ではなく、その後で、また別の機会に、という意味合いで用いられるのが通常の解釈のようでもあります。

皮肉なことには、パンデミック下、対面でのコミュニケーションの機会が制限され、オンラインでのコミュニケーションが主流となる中、"Let’s take it to off-line."と言いながら、その後、改めて別のオンライン会議で、あるいは電子メールやチャットでその話題の議論を継続せざるを得ないという状況があります。

もはや「オフライン」では成立し得ないビジネスコミュニケーションの時代と言うべきでしょうか。そうしたことからも、やはり、"Let’s take it to off-line."は時代遅れ?


2021年12月28日火曜日

措置入院 ― section

クリスマスのバッキンガム宮殿に男が侵入したとして逮捕されたとBBC Newsが報道しています。男はクロスボウを所持しており、エリザベス女王に危害を加える意図があったとされるということなのですが、動機や背景が今一つはっきりしないようでもあります。


Police are investigating a video linked to a man who was found with a crossbow at Windsor Castle on Christmas Day.

The footage, obtained by The Sun newspaper, appears to show a masked person in a hoodie holding a crossbow.

They are shown addressing the camera saying they wanted to "assassinate the Queen" in a "revenge" mission.

(中略)

A 19-year-old suspect was sectioned under the Mental Health Act after being found in the castle grounds.
(Windsor Castle: Queen 'assassination' bid video probed. BBC News. December 27, 2021.)


引用した記事で、"section"という単語が動詞で用いられています。実のところ、昨日もこの件に関する記事を閲覧したのですが、その記事のタイトルが以下のようになっていましたので、この"section"の意味が気になっていました。


Man found with crossbow at Windsor Castle sectioned
(BBC News)


本文を読むと、この"section"という動詞は、隔離する、といったくらいの意味になるかと思われましたが、辞書には区分する、という意味は載っていますが、隔離の意味は見当たりません。

が、イギリス英語では、特別な意味合いを持つようで、Cambridge Dictionaryのオンライン版では以下のような定義がされています。


to officially force someone who has mental health problems to stay in a hospital and receive treatment because they might harm themselves or other people


英国のMental Health Actに基づき、自傷他害の恐れがある精神疾患が疑われる患者を強制的に収容することを"section"という動詞で表すようです。日本語では「措置入院」と呼ばれるものに相当するかと思います。

ところで、当のMental Health Actはネットでもアクセスできるのでざっと斜め読みなどしてみるのですが、“admit” (admission)や“hospitalize”、“detain”といった動詞は使われていても、“section”は見当たらないのです。(法律の条項の、いわゆる「項」を指す"section"は多数。)

英国国民保健サービス(NHS)のホームページでは以下のような解説があります。


If someone says, "You're being sectioned under the Mental Health Act", they mean you're detained according to a particular section of the Mental Health Act.

In most cases, you'll be told which section of the Mental Health Act applied in your case. For example, "You're detained under Section 2 of the Mental Health Act".


これを読むと措置入院させるという動詞のsectionは、Mental Health Actという法令で用いられる正式な用語、専門用語というよりも、同法で細かく規定される項(section)のいずれかに当てはまることによって、同法が定める措置入院の対象となることを意味するようになったものと解釈でき、俗語的な意味合いに感じられます。


2021年12月27日月曜日

apartheid

南アフリカの人権活動家で、アパルトヘイト(人種隔離)政策の廃止に貢献したデズモンド・ツツ大司教が死去したことをロイターの記事が伝えています。

享年90歳。1984年のノーベル平和賞を受賞しました。


JOHANNESBURG, Dec 26 (Reuters) - Archbishop Desmond Tutu, a Nobel Peace Prize laureate and veteran of South Africa's struggle against apartheid who was revered as his nation's conscience by both Black and white, died on Sunday aged 90.

Tutu won the Nobel prize in 1984 in recognition of his non-violent opposition to white minority rule. A decade later, he witnessed the end of that regime and chaired a Truth and Reconciliation Commission, set up to unearth atrocities committed under it.
(Desmond Tutu, South Africa's 'moral compass', dies at 90. Reuters. December 27, 2021.)


アパルトヘイト政策を意味する“apartheid”という単語は、南アフリカ共和国などで使われるアフリカーンス語(Afrikaans)から来ています。

apart-は、英単語の“apart”に同じく、離れているという意味で、-heidは英語で性質や状態、境遇などを意味する接尾辞-hoodに同じです。

ところで、アフリカーンス語というのは別名South African Dutch、Cape Dutchなどとも呼ばれるそうで(研究社新英和大辞典)、かつて同国を植民地下に置いていたオランダの影響で、オランダ語の流れを汲む印欧語族の1言語とされています。

言われてみればスペルがオランダ語に似ている感があります。


2021年12月24日金曜日

死後硬直 ー rigor mortis

人間は死ぬとその直後から、死後硬直と呼ばれる状態に移行しますが、この死後硬直を英語で“rigor mortis”と言います。

実のところこの表現はラテン語であり、rigorは硬直、硬くなること、mortisは死を意味する名詞morsから来ています。

先日、日本人としては民間人初の宇宙旅行から帰還した実業家のことが新聞記事になっていましたが、近い将来、海外旅行のように宇宙旅行を楽しむ人が出てくるのも珍しいことではなくなるのかも知れません。

ところで、もしも宇宙で暮らしているうちに亡くなってしまったら、身体はどうなってしまうのでしょうか?


After death here on Earth, the human body progresses through a number of stages of decomposition. These were described as early as 1247 in Song Ci's The Washing Away of Wrongs, essentially the first forensic science handbook.

First the blood stops flowing and begins to pool as a result of gravity, a process known as livor mortis. Then the body cools to algor mortis, and the muscles stiffen due to uncontrolled build-up of calcium in the muscle fibers. This is the state of rigor mortis. Next enzymes, proteins which speed up chemical reactions, break down cell walls releasing their contents.

At the same time, the bacteria in our gut escape and spread throughout the body. They devour the soft tissues—putrefaction—and the gases they release cause the body to swell. Rigor mortis is undone as the muscles are destroyed, strong smells are emitted and the soft tissues are broken down.
(Tim Thompson. Death in space: Here's what would happen to our bodies. Phys.org. October 18, 2021.)


引用したのは少し前の記事ですが、宇宙空間、あるいは地球外の惑星(例えば、火星)で想定される死後の身体の変化について考察しており、興味深いものがあります。

簡単に言ってしまうと、地球とは重力や気温など、環境が全く異なるために、地球上で起こる死後の変化とは異なるものになるということなのですが、詳しいことは記事をお読みください。

人間の身体に起きる死後の変化については、死後硬直(rigor mortis)の他、その前段階としての変化に、


livor mortis
algor mortis


と呼ばれるものが記事中でも触れられています。(知りませんでした。)

“rigor mortis”に同じく、いずれもラテン語ですが、それぞれ、死斑、死冷、と訳されるようです。


2021年12月23日木曜日

fatphobia

近い将来、健康診断での体重測定がなくなるかも(!?)、です。

アメリカで登場した“Don’t Weigh Me”と呼ばれる手のひらサイズのカード。若者の摂食障害などの問題に取り組むカリフォルニア州の団体が作成しました。病院での体重測定をストレスに感じる人はこのカードを見せることで体重測定を拒否するそうです。


A body positivity website has created free “Don't Weigh Me" cards for patients who find stepping on the scale at the doctor's office stressful.

(中略)

The cards read: "Please don't weigh me unless it's (really) medically necessary," adding "If you really need my weight, please tell me why so that I can give you my informed consent," as shown in photographs on More-Love.org:

(中略)

The group supports a "Health at Every Size" philosophy, based around the assumption that "the current practice of linking weight to health using BMI (body mass Iindex) standards is biased and unhelpful.

"Because we live in a fatphobic society, being weighed and talking about weight causes feelings of stress and shame" the website states.
(Allegra Goodwin. 'Don't Weigh Me' cards aim to reduce stress at the doctor's office. CNN. December 22, 2021.)


そもそもbody-shamingとかfat-shamingなる概念が以前からある国です。最近は“fatphobia”という言葉が使われており、体型、容姿、体重といった側面を過剰に取り上げるのを“fatphobia”のあらわれであると批判し、こうした慣行を改めようとする動きがあります。

最近のニュースでは有名人が肥満に対する侮辱的発言をしたとして批難を浴びました。


In the video, which has 4.8 million views, the Keeping Up With The Kardashians star, 37, can be heard voicing her controversial opinion in an interview with British podcast host Jay Shetty.

The fitness aficionado tells Shetty: "I can't stand people that are like eating a bucket of Häagen-Dazs ice cream, [saying] 'I'm so fat!'

"And like, they won't work out, they won't change their diet, they won't drink more water, they won't whatever, but they're complaining, complaining, complaining."
(Lydia Veljanovski. Khloe Kardashian Slammed As Video of Her Being 'Fatphobic' Goes Viral. Newsweek. September 1, 2021.)


日本の健康診断では当たり前のように体重測定、身長測定から始まり、肥満の指標としてのBMI値が診断結果として報告されますが、BMIについても有用ではない、それどころか偏見を生んでいるという主張は今後一石を投じることになるでしょうか。

2021年12月22日水曜日

chips

日本のマクドナルドで、フライドポテトの販売制限がかかっていると報道されています。

北米から材料が調達できないという理由からだそうですが、Mサイズ、Lサイズの販売を当面取りやめ、Sサイズのみの販売となるようです。


The world's biggest fast food company McDonald's is suffering a chip shortage in Japan due to the global supply chain crisis.

For the home of the Big Mac though it is not a lack of semiconductors that is causing the problem.

The firm has said it is experiencing delays of shipments of the potatoes used to make its famous French fries.

As a result it will only sell small portions of its French fries in Japan from Friday until 30 December.
(McDonald's faces a French fries shortage in Japan. BBC News. December 22, 2021.)


さて、引用しましたのはイギリス、BBC Newsの記事です。

イギリスならでは(⁉)ですが、"a chip shortage"という表現に注目しましょう。なお、記事のタイトルは"a French fries shortage"です。

イギリス人が"chips"という時、それは"Fish & Chips"といったメニューに見られるように、フライドポテトのことを指しています。

ややこしいのは、アメリカでは"French fries"と言うことが多いということです。(アメリカなのに、「フレンチ」というのがまたややこしい。)

また、日本人にとっては、ポテトチップがお馴染みで、「チップ」というとジャガイモを薄切りにしてフライにしたポテトチップをまずイメージするのではないでしょうか。

ちなみに、薄切りにしたチップスについては、英国では"crisps"と言います。

“chips”は、我々に馴染みのあるフライドポテト(French fries)とほぼ同じで、スティック状に切ったポテトを揚げたものを指すイギリス英語の表現です。

引用した記事では、


it is not a lack of semiconductors that is causing the problem


などとおどけていますが、"chip"には半導体による電子集積回路の意味もあります。

マクドナルドなんて、久しく行っていませんが、フライドポテトが食べられないとなると無性に食べたくなってくるものです。



2021年12月21日火曜日

cheugy

"cheugy"という単語をご存知でしょうか?

今年も残り2週間足らず、この時期、2021年の"Word of the Year"が発表されます。(実のところ、発表は11月末頃で、チェックするのを忘れていました。)

Merriam-Webster Dictionaryが検索の統計を基に決定する2021年の"Word of the Year"は"vaccine"でした。

一方、Collins Dictionaryでは"NFT"が今年の1語に選出されました。候補となった単語のリストには、当ブログでも取り上げたことのあるmetaversepingdemicなどに混じって、この"cheugy"がありました。


Are you cheugy?

The term, which describes a person who is out of trend or trying too hard, has blown up on TikTok, prompting users, particularly 20 and 30-somethings, to wonder if they fall into the category.

Gucci belts, ripped skinny jeans and monogramed tops all made it onto user @youngnlipless' list of cheugy items, garnering nearly 300,000 likes. Other things called out as cheugy include Rae Dunn pottery, having #GirlBoss energy and decorative wooden signs of the "live, laugh, love" variety.

While cheugy (pronounced chew-gee) may seem like a playful label, it can have negative effects, particularly for women. Even so, experts say we shouldn't pay the trendy put-down too much attention, as it's just the latest version of a tired insult.
(Sara M Moniuszko. Are you 'cheugy'? Maybe. But here's why you shouldn't care. USA Today. June 28, 2021.)


引用したのは今年6月のUSA Today紙の記事からですが、Collins Dictionaryの定義では、


no longer regarded as cool or fashionable


とあり、かつては流行とされていたスタイルがもはやそうとはみなされなくなった状態を指すとあります。

この単語の初出は2013年とされるところ、広まったのはSNS上で、いわゆるZ世代(Generation Z)と呼ばれる若者が、ミレニアル世代(millennial)のファッションを揶揄したのがきっかけだということです。

ちなみに、間違った発音がされやすい単語のトップ10(⁉)のひとつらしく、カタカナ表記すれば「チューギー」と発音するのが正しいそうです。



2021年12月20日月曜日

go through the roof

オーストラリアで、クリスマスツリーに使われる針葉樹のマツが不足しているそうです。


It sounds like something out of a bad Christmas movie, but this year Australia has been hit by a fresh Christmas tree shortage, with those yet to buy one told to hurry up or miss out.

The issue appears to have hit hardest in Victoria, where customers have reported being forced to try multiple sources before securing a tree.

(中略)

Alex Costa, owner of Victoria Christmas Tree Farm in Ballarat, says he has had to turn down several requests from wholesalers and estimates he could have sold at least an additional 2500 trees this year had the supply been available.

“Demand has gone through the roof,” he said.
(Duncan Murray. Christmas tree shortage prompts warnings for Aussies to hurry up or miss out. News.com.au. December 13, 2021.)


大規模な森林火災の発生が原因のひとつにあるそうですが、パンデミックの影響で自宅にツリーを飾る人が増え、需要増になっているという見方があります。


“Demand has gone through the roof


というコメントがそうなのですが、この"go through the roof"というフレーズは、モノの値段や数量などが上昇し、屋根を突き抜けるほどである、つまり留まるところを知らず、という意味合いがあります。日本語で「天井知らず」と言うのに近いものがありますね。

小生も遅ればせながら、週末にクリスマスツリー(模造品)を買い求めました。選択肢としてはホンモノのツリーを調達するというのもあったのですが、この時期郊外の大型ホームセンターで見かけるアカマツやドイツトウヒなどの類がほとんど見られなかったように思います。

所詮模造品の小さなツリーですが、過去数年に渡って買いためた飾りを付けると豪華で華やいだ雰囲気になりました。



2021年12月17日金曜日

flout

英国で去年、パンデミック下、国民の外出制限を始めとするロックダウン(都市封鎖)が行われている最中、首相官邸でクリスマスパーティーなどが行われた件で、ジョンソン首相が批判を浴びているというニュースは先日の投稿でも取り上げたところです。

今日見かけた記事では、昨年5月にも官邸でパーティーが行われていたとすっぱ抜かれています。

ジョンソン首相自らも15分ほど参加していたとされ、風当たりはますます厳しくなりそうです。


Boris Johnson joined No 10 staff for a party in Downing Street during the first lockdown in May last year, sources have alleged, raising questions about whether there was a culture of flouting the rules over a number of months.

The prime minister spent about 15 minutes with staff at the alleged social gathering on 15 May 2020, telling one aide inside No 10 that they deserved a drink for “beating back” coronavirus, a joint investigation by the Guardian and Independent was told.
(Boris Johnson joined No 10 pizza party during May 2020 lockdown, say sources. The Guardian. December 16, 2021.)


国民には行動制限を押し付けておきながら・・・、ということなのですが、記事では官邸関係者のルール軽視の体質を指摘しています。記事の表現では、


a culture of flouting the rules


とある部分がそうですが、この"flout"という単語について、以前から取り上げようと思っていたところでした。

"flout"というのは、


To ignore or disregard (a rule or convention, for example) in an open or defiant way
(American Heritage Dictionary)


と定義されているところですが、ルールを順守しないことを半ば公然と、堂々とやってのける、という含みがあり、本来ならルール破りには後ろめたさがあるはずのところ、臆面もなく、というような意味合いが含まれています。

ところで、この"flout"とスペルが似た単語に、


flaunt


というものがあり、こちらは見せびらかす(showing off)という意味で用いられるものなのですが、何故か(恐らくはスペルが似ているからか?)"flout"と同じように、ルール軽視を意味するコンテクストで用いられることがあるそうです。

American Heritage Dictionaryでは、このような"flaunt"の用法を誤用であるとUsage Noteで説明しています。

一方、Merriam-Webster(オンライン版)では、"flaunt"をルール軽視という意味で用いる用法はある程度確立されていると説明しており、やや肯定的です。

日本語でもそうですが、誤用とされる言葉遣いも定着してくれば、いつしか正式な用法として認めざるを得なくなるものなのでしょう。



2021年12月16日木曜日

hookup

NYCで新しく建てられるビルでガス設備を禁止する法案が可決されたと報道されています。

温室効果ガス削減を意図したもので、ガス設備から電化設備への移行を促す狙いがあるようです。

NYCの高層ビル群が頭に浮かびますが、これらのビルの空調等の設備による二酸化炭素の排出が全体の7割を占めるとされています。


The Big Apple just became the biggest city yet to say goodbye to gas hookups in new construction. New York City Council passed a bill today that prohibits the combustion of fossil fuels in new buildings, effectively phasing out the use of gas for cooking and heating.

Addressing building emissions is critical to New York City meeting its climate goals; they’re responsible for 70 percent of the city’s greenhouse gas emissions.
(Justine Calma. New York becomes largest US city to ban new gas hookups -- It’s the biggest city yet to do so and a bellwether for the rest of the US. The Verge. December 15, 2021.)


この記事を最初に読んだ際に、"gas hookups"とある部分が引っ掛かったのですが、いわゆるガス等の配管設備のことを指しているというのが辞書を引いて分かったという次第です。

"hook (up)"とは、鉤で引っ掛ける、吊るす、ホックに掛ける、という意味ですが、"hookup"という名詞で、


(電気・水道・下水などの)配線(配管)設備
(ランダムハウス英和辞書)


という意味で使われるのです。

"hookup"とは、もともとは鈎針で編み物をすることを言ったもののようです。

その後、ラジオ、テレビが音声や画像を受信できるよう配線することを"hookup"と表現するようになり、更に発展して、友好関係の構築といった意味でも使われるようになっています。

何でもないような単語ですが、意味合いの変遷というか、発展というか、その辺りが興味深いと思います。



2021年12月15日水曜日

metaverse

スポーツアパレル大手のナイキ(Nike)が、RTFKTという新興企業の買収を発表したそうです。買収額は非公表。

RTFKT社(アーティファクト、と発音するそうです)は非代替性トークン(Non-Fungible Token; NFT)と呼ばれる技術を導入し、ヴァーチャルスニーカーなどを開発することで知られており、ナイキ社が目指している「メタバース」構想への一歩と目されています。


Nike announced its first substantial foray into the metaverse yesterday (Dec. 13) with the purchase of RTFKT (pronounced “artifact,” of course), a non-fungible token (NFT) studio that produces digital collectibles, including virtual sneakers. They did not disclose the value of the deal.

“This acquisition is another step that accelerates Nike’s digital transformation and allows us to serve athletes and creators at the intersection of sport, creativity, gaming and culture,” said Nike president John Donahoe. Nike last indicated it was getting into the metaverse in November, when it quietly filed over half a dozen of its signature trademarks with the US Patent and Trademark Office (USPTO) “for use online and in online virtual worlds.”

With the acquisition of RTFKT, Nike is one step closer to offering goods emblazoned with its signature swoosh to online communities. The opportunity looks lucrative—while RTFKT has only been around since 2020, it’s already raked in millions of dollars for virtual sneakers.
(Courtney Vinopal. Nike’s purchase of RTFKT hints at what its metaverse will look like. Quartz. December 14, 2021.)


ところで「メタバース」(metaverse)って、いったい何のこと?

今年になって聞くようになった単語です。特に、SNSのフェースブックが、"metaverse"を意識して、社名をMetaという名称に変更したことが記憶に新しいのではないでしょうか。

"metaverse"は、~の後に、あるいは~を超えた、という意味の接頭辞meta-と、universe(空間、世界)という単語が結合した、いわゆるかばん語です。

手元の辞書には載っていませんし、またオンライン辞書の類にもまだエントリとして掲載しているものはほとんど無いようですが、ウィキペディアなどによりますと、SF作家のNeal Stephensonが1992年に発表した小説で使われたのが最初ということですから、意外と古いものだということになります。

"metaverse"という言葉の成り立ちは上述したように、(既存の)空間、世界を超えたもの、ということから、ヴァーチャル空間の中で構築される三次元仮想空間という概念を指すそうです。

どんな世界なんでしょうね。アラフィフ親父にはだんだんとついていけない感じがしています(苦笑)



2021年12月14日火曜日

a heartbeat away

ちょうど先週の火曜日、カマラ・ハリス副大統領周辺の職員に退職者が相次いでいるという記事を取り上げましたが、またハリス氏に関する論評記事からの引用です。


In the last week, alarms started going off about Vice President Kamala Harris facing an embarrassing staff exodus by her communications team, including well-known strategist Symone Sanders.

By Saturday morning, December 4, The Washington Post reported on the front page that this morale problem "reignites leadership concerns." How can she take over for Biden?
(Tim Graham. Kamala Harris is a heartbeat away from the presidency, but media skips her struggles -- Networks celebrate Harris as 'historic,' which protects her from the kind of scrutiny reporters usually apply. Fox News. December 13, 2021.)


記事のタイトルで、


Kamala Harris is a heartbeat away from the presidency


とあるのですが、"a heartbeat away"という表現が何を意味するのか分かりませんでした。

恐らくは、"miles away from~"(~からxxマイル離れている)といった類の表現に同じものだろうとは思ったのですが、それが"a heartbeat"(心拍1つ分?)というのはイメージが湧かなかったのです。

辞書を当たってみたところ、研究社の新英和大辞典には載っていないのですが、ランダムハウス英和では、


・・・のすぐ近くに;鼓動が聞こえるほどの近距離に


という意味であると載っていました。

なるほど、心臓の鼓動が聞こえるくらい近い距離にある、ということかと得心しました。

"a heartbeat away from presidency"とは、大統領職に最も近い、つまり次期大統領になりうる、あるいは大統領にいつでも取って代わる立場にある、ということを言わんとしているようです。

記事ではハリス氏が副大統領として、大統領に何かもしものことがあった場合には、即座に大統領職を代行する立場にある、ということを言っているものと思われます。(実際に、今年11月9日、バイデン大統領が内視鏡手術を受けた85分間、ハリス氏が大統領職を代行。)

コーパスで"heartbeat away"を検索してみると、"a heartbeat away from presidency"という用例が多数ヒットします。

以下はそのひとつです。


Her personal story is impressive: former fisherman, mother of five. But that hardly qualifies her to be a heartbeat away from the presidency.
(CNN, 2012)


ちなみにここで出てくる"her"というのは共和党の副大統領候補であったSarah Palin氏のことです。



2021年12月13日月曜日

no lens big enough

金曜日の夜から米国中西部~南部を襲った複数の竜巻が甚大な被害を及ぼしました。

ケンタッキー州では50人以上の死者が確認されていますが、史上最悪とも言われる被害の全容は未だ明らかでない部分もあり、死者もさらに増加すると予想されています。


Kentucky Gov. Andy Beshear said at least 50 people were killed in western Kentucky, and the death toll from what he described as "the most devastating tornado event in our state's history" could exceed 100.

"To the people of America, there is no lens big enough to show you the extent of the damage here in Graves County, or in Kentucky. Nothing that was standing in the direct line of this tornado is still standing," Beshear said during a Sunday afternoon news conference with U.S. Homeland Security Secretary Alejandro Mayorkas and Deanne Criswell, administrator of the Federal Emergency Management Agency.
(Deadly tornado updates: Search for survivors continues after devastating storms. ABC News. December 13, 2021.)


ニュース映像を見ましたが、瓦礫の山の中に立つ被害者が、街のあらゆる建物がまるでマッチ棒のようになぎ倒されていったという証言するのは衝撃的でした。

上記ではケンタッキー州知事の声明が引用されていますが、その中で、


there is no lens big enough to show you the extent of the damage here


という箇所に目が留まりました。

竜巻が通過した後には何も残っていない、と続きますが、受けた被害の甚大さを伝えるのに、どんな大きなカメラのレンズも十分でない、とは、恐らく誇張ではなく、真実でしょう。

このような表現が人口に膾炙しているのか知りませんが、"no lens wide enough"ということもあるようです。



2021年12月10日金曜日

leaving do

イギリスで去年、パンデミックによる都市封鎖が敷かれる中、政府関係者らがクリスマスパーティーに興じていたとすっぱ抜かれました。

日本でも某省の職員が緊急事態宣言下に宴会に興じた結果、新型コロナに集団感染したりと似たような話で糾弾されたことが記憶にあります。国民は我慢しているのに、との恨み節ですが、どの国も政府職員たるものの責任感が欠如している証左で、宴会をやりたくてしょうがないのでしょうか。


Boris Johnson and his Downing Street staff have been accused of breaking Covid rules by attending parties at Number 10 in the run-up to last Christmas.

The Prime Minister gave a speech at a packed leaving do for a top aide last November when the country was in the grip of its second lockdown.

Then just days before Christmas, with London in tier 3 restrictions, members of his top team held their own festive bash in Downing Street.

Officials knocked back glasses of wine during a Christmas quiz and a Secret Santa while the rest of the country was forced to stay at home.
(Pippa Crerar EXCLUSIVE: Boris Johnson 'broke Covid lockdown rules' with Downing Street parties at Xmas. Daily Mirror. November 30, 2021.)


さて、


a packed leaving do for a top aide last November


という箇所がありますが、"leaving do"という表現を知りませんでした。

イギリス英語ということになるんですが、"do"という名詞自体に「宴会」、「パーティー」の意味があります。

そして、"leaving do"となると、これは退職者や部署異動などで、去っていく同僚などのために行う、いわゆる送別会の意味合いで使われます。

こういう表現に出会えるとは、英タブロイド紙のDaily Mirrorの記事だけありました。

去年の話なんて遠い昔のように思われますが、暴露されたパーティーは"Number 10"(首相官邸)で行われたということですから、ジョンソン首相は辞任すべきとの批判が沸き起こるのもむべなるかなといったところです。

リークされたビデオでは、パーティーについて記者会見で問い質される広報担当官が冗談半分の返答をする余興の様子を映し、かなり悪ふざけが過ぎるという印象です。



2021年12月9日木曜日

shut up and dribble

来年2月開催予定の北京冬季オリンピックについて、米国は外交的ボイコットを決定し、日米間に改めて緊張が走っています。

中国による少数民族への弾圧に対する批判が背景にあるものですが、中国はオリンピックに政治を持ち込むべきでないという理由で反発しています。

英国やオーストラリアも米国に追随する姿勢を示しています。


Chinese officials are fuming over President Joe Biden's decision this week to stage a diplomatic boycott of the 2022 Winter Olympics in Beijing.

The United States won’t send any government officials to the February games to protest “ongoing genocide and crimes against humanity in Xinjiang and other human rights abuses," White House press secretary Jen Psaki said Monday.

Chinese Foreign Ministry spokesperson Zhao Lijian on Tuesday called the boycott “contrary to the Olympic Charter Principle that sports should maintain political neutrality.” He vowed China would respond with “resolute countermeasures” but offered no details.

“The U.S. will pay for its wrongdoing," Zhao said. "You can wait and see."

It seems the U.S., where athletes protesting injustice have frequently been met with calls to “shut up and dribble,” is getting a taste of its own medicine.
(Ja'han Jones. China tells U.S. to shut up and dribble. MSNBC. December 8, 2021.)


引用した記事で、"shut up and dribble"という表現が使われているのですが、何が言いたいのか分からず、慣用句か何かの類かと思ってしまいました。

文字通りに訳せば、黙ってドリブルをしろ、ということになります。

色々調べてみると、このフレーズには背景があることが分かりました。

2018年に遡るようですが、当時のトランプ大統領に批判的な発言をしたNBAのプロバスケットボール選手に対し、Fox Newsのキャスターがそれを咎めたという一件です。


Journalist Laura Ingraham sought to rebuke the Cleveland Cavaliers' LeBron James for "talking politics" during a recent interview — something the Fox News host believes is out of bounds for an athlete.

(中略)

Ingraham responded to his comments Thursday, calling them "barely intelligible" and "ungrammatical" on her Fox News program The Ingraham Angle.

"It's always unwise to seek political advice from someone who gets paid $100 million a year to bounce a ball," she said. "Keep the political comments to yourselves. ... Shut up and dribble."
(Emily Sullivan. Laura Ingraham Told LeBron James To Shut Up And Dribble; He Went To The Hoop. NPR. February 19, 2018.)


2018年の「事件」に関する記事を上に引用しました。

バスケットボールプレーヤーが政治を批判するようなことを言うもんじゃない、黙ってドリブルしてなさい、とでもいったところでしょうか。

この一件が世論で取り沙汰されたことを契機に、"shut up and dribble"は、スポーツ選手は政治的なことに口を挟むな、というメッセージを表現するフレーズとして定着したようです。

今回北京オリンピックの外交的ボイコットを表明したバイデン氏は、見方によっては「スポーツに政治を絡める」ということをやっているとも取れる訳で、"shut up and dribble"を逆手に取られる格好となっている、というです。

なお、バイデン政権は"shut up and dribble"せよ、と中国が本当に言ったのかは不明です。




2021年12月8日水曜日

bow out

ドイツ初の女性首相として一時代を築いたアンジェラ・メルケル首相が今日退任です。

以下はAPの記事からの引用です。


BERLIN (AP) — Angela Merkel was assured of a place in the history books as soon as she became Germany’s first female chancellor on Nov. 22, 2005.

Over the next 16 years, she was credited with raising Germany’s profile and influence, working to hold a fractious European Union together, managing a string of crises and being a role model for women.

Now that near-record tenure is ending with her leaving office at age 67 to praise from abroad and enduring popularity at home. Her designated successor, Olaf Scholz, is expected to take office Wednesday.

Merkel, a former scientist who grew up in communist East Germany, is bowing out about a week short of the record for longevity held by her one-time mentor, Helmut Kohl, who reunited Germany during his 1982-1998 tenure.
(Geir Moulson. End of an era: Germany’s Merkel bows out after 16 years. Associated Press. December 7, 2021.)


16年という長きに渡り政権トップの座にありましたが、メルケル氏の師でもあるヘルムート・コール前首相の在任記録にはわずか1週間及ばなかったという事です。

さて、メルケル氏の退任について、"bow out"という表現が使われているのに目が留まりました。こういったコンテクストでは“step down”という表現をよく見かけるように思いますので、"bow out"はある意味新鮮でした。

ここでの"bow"はお辞儀をするという意味の動詞です。

外国人、特に欧米の人がお辞儀をするというのはあまり見ないように思うのですが、"bow out"を敢えて使うのはどのような意味が込められているのだろうと気になった次第です。

英和辞書を引いてみますと、"bow out"という動詞句で取り上げているものは見当たらないのですが、他動詞としての"bow"の意味に、(お辞儀をして)人を迎え入れる(in)、あるいは送り出す(out)、とあります。

英和辞書において自動詞としての"bow (out)"にはそれらしき説明がないところ、Merriam-Websterでは"bow out"を、"retire"、"withdraw"と定義しています。

また、主にスポーツの試合などのコンテクストでは、トーナメントなどで(途中)敗退する、という意味合いで使われるようで、コーパスでも多くの用例がヒットします。


Dimitrov, a two-time major semifinalist, bowed out 7-6 (4), 6-2, 6-4 in the third round against Fernando Verdasco, who is ranked 35th and seeded 30th.
(ESPN, 2018)


"bow"を英和辞書で引いていたところ、「かぶとを脱ぐ」という興味深い和訳も目に留まりました。

ドイツ国民に「お母さん」と慕われたメルケル氏は首相退任と同時に政界引退を表明しているということですが、激動の16年間を戦い終えてようやくかぶとを脱ぐことができるという心境なのかもしれません。



2021年12月7日火曜日

blink twice

カマラ・ハリス米副大統領の不人気が続いています。

移民問題などへの対応のまずさなどから手腕そのものが疑問視されていましたが、最近は不人気に拍車がかかっているのか、副大統領職を支える幹部スタッフの辞職が相次いでいるようです。

その最中、スタッフ職員の一人が投稿したツイートが話題になっています。


A tweet sent by one of Vice President Kamala Harris' staff members claiming he loved his job became the focus of intense mockery Monday as critics joked that he was tweeting while "under duress."

"Hi. My name is David Gins. I work for Vice President Harris on behalf of the American people as Deputy Director for Operations and absolutely love my job. Just thought some of you should know," wrote Gins, who has worked as Harris' Deputy Director of Operations since April according to his LinkedIn profile.

(中略)

Critics relentlessly mocked Gins' tweet, with many jokingly imploring the staffer to "blink twice" if he needed to be rescued, and others suggesting he only sent the tweet after being threatened by Harris.
(Brandon Gillespie. Kamala Harris staffer gets ribbed after insisting he loves his job: 'Blink twice if you need help'. Fox News. December 16, 2021.)


オペレーションの副責任者という肩書のGins氏によるツイートは、ハリス氏を支える職務を愛している、という内容なんですが、それって本心なの?という疑問を持たれているものです。

退職者が相次いでいる中のツイートということで、(上司であるハリス氏から)無理やり言わされているのでは、という憶測も。

中には、


with many jokingly imploring the staffer to "blink twice"


ということなのですが、この"blink twice"という表現は何を言わんとしているのでしょうか。

文字通りには「まばたきを2回(する)」ということですが、このような言い回しは辞書を引いてみたのですが載っていません。

尤も、直後に、"if needed to be rescued"とあるのがヒントになります。

"blink twice"、つまり2回まばたきをする、とは、何らかの事情により意思と裏腹の発言を強いられているような危機的状況に際して取る非言語コミュニケーションの一種なのです。

例えば、人質に取られた人間が、自身が無事であるとビデオメッセージで伝えることがあります。それが強制されているということを、言葉ではなく、まばたき("blink twice")で伝えることから、このような表現が定着したようです。



2021年12月6日月曜日

'Tis the season.

12月も第2週に入り、クリスマスシーズンたけなわといったところです。

街に出かける機会はほとんどありませんが、クリスマス商戦が喧しいのでしょう。スーパーマーケットでもBGMがクリスマスソングです。

この時期、色々なメディアで、


'Tis the season.


といったフレーズが使われているのを見ます。例えば、以下のような記事。(タイトル部分です。)


MOUNT DORA — Linda and Jeanette Bokland's “Letters to Santa” project has become a holiday tradition for local families.

Every year, kids are invited to drop off their letters to Santa in a certified mailbox, a landing point before they get shipped off to the North Pole. But the Boklands have made this an extra special experience as the kids receive a return letter from Mrs. Claus.
(Cindy Peterson. 'Tis the season! Annual Letters to Santa campaign has started. Yahoo! News. December 6, 2021.)


この’Tisというのは、It isを短縮したもので、'Tis the season.というのは、"It is the season."と言っているのと同じです。

ところで、'Tis the season.という時、それは決まってクリスマス~年末のことであり、春や夏に'Tis the season.ということはほとんどないようです。

このフレーズの背景にはクリスマスキャロルがあるからなんですが、正直なところ知りませんでした。

Merriam-Websterのサイトに詳しいのですが、'Tis the season.というフレーズは、皆さん誰もがきっと聞いたことがある(クリスマス定番と言ってもよいかと思います)クリスマスソングの歌詞に由来しているというのです。

私もそれを読んでなるほどと思いましたが、そのクリスマスソングというのは"Deck the Hall with Boughs of Holly"というもので、一部抜粋しますと以下のような歌詞です。


Deck the halls with boughs of holly,

Fa la la la la, la la la la.

'Tis the season to be jolly,

Fa la la la la, la la la la.


3行目の部分がまさにそうなのですが、'Tis the season.というこの時期特有のフレーズは、ここから来ているのです。

どんなクリスマスソングだったっけ?という方は、上記のタイトルで検索してみて下さい。



2021年12月3日金曜日

blank-check company

主に東南アジア圏でライドシェアサービス等を展開するGrabが、米国ナスダック市場への上場を果たしたそうです。

以下、上場後の株価は予想と期待に反して下げたという記事の引用です。


Shares in Grab , Southeast Asia's biggest ride-hailing and delivery firm, slid more than 20% in their Nasdaq debut on Thursday following the company's record $40 billion merger with a blank-check company.

Grab's shares rose as much as 21% minutes after the listing before retreating to trade 23% lower at $8.51 by 1834 GMT.
(Southeast Asia's Grab slumps in U.S. debut after record SPAC deal. Reuters. December 2, 2021.)


パンデミック前、2019年の夏にマレーシアに出張した際、このGrabのサービスを利用したことがあります。スマホのアプリから呼ぶタクシーというのは初めての経験でしたが、街中でもスムーズに利用できたのは興味深い体験でした。

ところで記事中に、"blank-check company"というのが出てきます。

金額の記載の無い(blank)小切手(check)ということかなと思ったのですが、よく分かりません。

別の記事では以下のようなくだりがあります。


It was touted as the biggest acquisition ever by a blank-check company (a nickname for a SPAC), which raises money with the purpose of seeking a target to merge with and take public.
(Brenda Bouw. Grab's IPO Fizzles in First Day of Trading. The Street. December 2, 2021.)


こちらでは"blank-check company"とは"SPAC"のニックネームだと説明しています。

この"SPAC"とは、Special Purpose Acquisition Companyの略だそうで、日本語では「特別買収目的会社」と訳されます。

SPAC、すなわち“ blank-check company”は事業としては特定のものを持たず、他社を買収することを目的として設立される会社のことを言うのだそうです。

経済や投資に疎い小生は、こんな事業というのがあるんだなぁ、というくらいですが。



2021年12月2日木曜日

down the rabbit hole

まずは記事の引用から。パンデミックを契機に多くの企業で拡がりをみせるリモートワークに関する記事からです。

引用箇所を短めにしたので唐突感が否めませんが、記事ではリモートワークの導入レベルにいくつか段階があり、多くの導入事例は単にオフィスワークをそのままリモートに移しただけのレベルに留まると主張しています。

中でも電子メールやチャットについては、1日に飛び交う多くのメールや割り込みのチャットは生産性を阻害していると手厳しく・・・。


Plugins such as BlockSite, Freedom, or Inbox Pause can block the constant influx of email for periods of the day. Gmail plugins such as Quick Compose open only the compose email window when we need to write an email, and help us avoid chasing furry rabbits down rabbit holes.
(Steve Glaveski. Remote Work Should Be (Mostly) Asynchronous. Harvard Business Review. December 01, 2021.)


小生もリモートワークが長くなり、色々と考えさせられるところがあります。メールやチャットを受信するとやりかけていた作業を中断してつい読んでしまいます。

引用箇所はそんな意思薄弱(!?)な人向けに開発された電子メールアプリのプラグインの話なんですが、


help us avoid chasing furry rabbits down rabbit holes


とあります。

ここで使われている"down rabbit holes"というのは恐らく慣用句の類なのだろうと想像がつきますが、初めて見るものでした。

コンテクストから言わんとしているところは何となく想像がつきます。

同僚に送信するためにメールを書いていたところ、別のメールを受信してそれを読んでいたら、最初に書きかけていたメールのことを忘れてしまって・・・、ということは起こりうることです。

辞書にこの表現を求めたのですが、研究社の新英和大辞典には載っておらず、VOAのサイトでこの表現を分かりやすく説明したものが見つかりました。


Rabbits, like many other animals, dig holes and complex underground passages, like tunnels, to build their homes. So, when rabbits want to go home, they must go down the rabbit hole. And that may lead to other holes, tunnels, and paths, or even other rabbit homes.

In English, we use the expression down the rabbit hole when we get so caught up in the search for something – like an answer to a problem – that we end up somewhere totally different.
(Falling 'Down the Rabbit Hole'. VOA Learning English. June 05, 2021.)


この解説を読むとよく分かりますね。

ウサギの習性として、地面に掘った穴を住処にするにですが、どのウサギも似たような穴を掘るので、穴に入り込むうちに全く違う住処にたどり着くことがある、そうです。

つまり、自分の住処に戻ろうとしていたところが(目的)、知らぬうちに全く違う場所にたどり着いてしまった(結果)、という意味合いで用いられる表現です。

この表現の由来については、ルイス・キャロルによる「不思議の国のアリス」にあるとか。


Well, the expression comes from the book Alice’s Adventures in Wonderland written by Lewis Carroll in 1865. Alice, the girl in the story, begins her adventure by falling and falling and falling down a very long rabbit hole. She falls slowly and sees things on the way down – strange things. And when she arrives at the bottom things only get stranger.
(ibid.)


この"down the rabbit hole"という表現は、当初の目的から逸れて(または見失って)、思いもしなかった(しばしば望ましくない)帰結に至るということを表現するのに用いられるようです。用例を探してみるとすぐにいくつかが見つかりました。


A personal friend described to me how her first encounter with QAnon belief in Australia resulted from a “rabbit hole” opening for her on Facebook while she searched recommendations of organic food for her dog.
(Van Badham. QAnon: how the far-right cult took Australians down a ‘rabbit hole’ of extremism. The Guardian. November 13, 2021.)


In addition to cracking down on menacing, harassing and offensive material, the inquiry will also investigate the algorithms used by social media platforms to recommend content.

“The worry is that kids get taken down a rabbit hole of increasingly harmful content.
(Parliamentary inquiry to go down the rabbit hole in crackdown on Big Tech. 2GB.com. December 1, 2021.)


2つ引用させていただきましたが、いずれもインターネットでの話です。

ネットで情報検索していたとろが、知らぬうちに最初に探していた情報とは全く関係のないサイトに誘導されていた、なんてことはよくありますね。



2021年12月1日水曜日

ugly sweater

「マインスイーパ」と聞いて、懐かしい!と思う人は平均何歳くらいの方でしょうか?

小生、俗に言う「アラフィフ」ですが、ウィンドウズ全盛期、OSにプレインストールされていたこのゲームはよく覚えています。(熱中したということはありません。)

マイクロソフト社が、そのマインスイーパをテーマにした"ugly sweater"を発売したとニュースになっています。


Microsoft has launched a new Windows software-themed ugly sweater on its Xbox Gear Shop dedicated to the infamous Windows game Minesweeper.

(中略)

This is Microsoft’s second year of Windows-themed ugly sweaters. Last year, the company released three ugly sweater designs, including one garment based on the timeless MS Paint application, which humorously looked as if it were designed in that very app.

(中略)

Microsoft is selling the Minesweeper ugly sweater for the explosive price of $74.99 — $5 more expensive than last year’s designs. The sweaters sold out in 24 hours last year with a late December restock, so if you want to look like a pro at flagging mines this holiday, then get one soon.
(Umar Shakir. Microsoft is selling ugly Windows sweaters again, and this time, it’s Minesweeper. The Verge. November 30, 2021.)


昨年は、これまた同社の看板ソフトウェア(!?)とも言える「ペイント」をテーマにしたセーターを発売していたそうです。

ところで、これらのセーターについては、繰り返し、"ugly sweater"と書かれているのが気になりました。

"ugly"とは文字通り、醜い、無様な、ということでありましょうが、他人様が着用するものに対して"ugly"とは失礼な話です。

しかも、この"ugly sweater"は70ドル以上もの値段で販売され、昨年などは発売後24時間も経たないうちに売り切れたということです。

"ugly sweater"をこぞって買い求めるというのは、不思議な話であります。

しかし!

クリスマスシーズンがいよいよスタートするこの時期、"ugly sweater"はいわば必須アイテムになっているということらしいです。

色々と調べてみますと、"ugly Christmas sweater"と呼ばれるプレゼントは、親の言う事を聞かない子供に対するクリスマスプレゼントの定番だったそうです。つまり、もらった子供ががっかりするようなプレゼント、ということで、その点では"ugly"に違い無かった訳です。

ところが、"ugly Christmas sweater"はその後、"ugly"ではない地位を獲得していったようで、クリスマスシーズンに欠かせないものとなっています。

詳しくは、CNNの記事に求めることができます。


Move over twinkling fir trees and wreaths, eggnog, stockings and the office secret Santa -- there's a new kid in town. Over the last decade the ugly Christmas sweater has firmly embedded itself in yuletide culture.

(中略)

The garment has quickly become an essential part of the holidays, ubiquitous as Christmas lights and wrapping paper. It's obnoxious and tacky, but also fuzzy and kind of wholesome -- the fashion equivalent of a Hallmark Christmas movie (with a healthy dose of tongue-in-cheek).
(Marianna Cerini. A cozy history of the ugly Christmas sweater. CNN. November 15, 2021.)


個人的には、ファッションセンスというのは難しいと思っており、クリスマスシーズンと言えども"ugly sweater"が受けるかどうかは微妙なところだと思います。

日本のクリスマスは商業イベントに違いありませんが、このような"ugly sweater"(ダサセーター、ダセーター、などと呼ばれるようです)は浸透しているのでしょうか。



2021年11月30日火曜日

gobbledygook

"gobbledygook"という、ちょっと変わったスペルの単語をご存知でしょうか?

辞書を引くと、「(公文書に見られるような)回りくどくて分かりにくい表現」、などと載っています。

以下に引用するのは、今年1月6日にワシントンの議事堂がトランプ元大統領支持者らによって襲撃された事件に関連して先日逮捕された俳優の裁判に関する記事からです。


A judge is allowing a Broadway actor arrested for his alleged walk-on role in the Capitol riot to remain free on pretrial release, despite his bizarre claims to be beyond the jurisdiction of the court.

At a contentious hearing held via videoconference Monday, James Beeks — a Michael Jackson impersonator who starred as Judas in a traveling “Jesus Christ Superstar” company until his arrest last week — narrowly escaped being jailed after a tense exchange with Chief Judge Beryl Howell of the U.S. District Court in Washington, D.C.

“I am an American standing under public law and I am here by special divine appearance,” Beeks told Howell.

(中略)

“I cannot represent myself because I am myself,” he said. “I reserve all rights at all times and waive none, ever.”

Howell snapped back at Beeks, declaring his statements unintelligible.

“That’s all gobbledygook. I have no idea what you’re saying,” the judge said.
(Josh Gerstein. Judge lets actor charged in Jan. 6 riot head home despite ‘gobbledygook’ at hearing. The Hill. November 29, 2021.)


James Beeks被告はマイケルジャクソンの物まねで有名な俳優だそうですが、マイケル張りの革ジャンを着た写真が仇となって先日逮捕されました。

裁判の冒頭で投げかけられたであろう問いに対する同被告の発言が意味不明です。

判事が、"That's all gobbledygook."とたしなめた、ということです。

この単語は、"gobbledegook"というスペルの場合もあるようですが、"gobble"は七面鳥の鳴き声を模した擬声語(七面鳥が鳴くのを聞いたことはありませんが)、"gook"とはつまらないもの、ばかげたこと、という意味の米俗語だと辞書の解説にあります。

また、この単語を初めて使ったのは1930年代の民主党議員Maury Maverick氏であったと、これまた英和辞書に載っているところです。(同議員による造語であるとされています。)

Wikipediaによると、議会などで使われる分かりにくい言葉遣いや持って回ったような言い回しを"gobbledygook"という言葉で批判したそうです。

裁判では被告の言動が「不規則発言」として問題になることがありますが、引用記事の"gobbledygook"はこの不規則発言というのに近いのかなと思います。



2021年11月29日月曜日

deferential

新型コロナの国内新規感染者数は大幅減少し、次なる第6波を如何に防ぐかということが議論されていますが、ここにきて新たな変異株が南アフリカで確認され、感染拡大の懸念が高まっています。

この新しい変異株は「オミクロン株」と報道されています。

新型コロナウィルスの変異株については、地名等を冠した名称が差別や偏見を助長するということで、当たり障りのないギリシャ語のアルファベットを用いた名称とすることがWHOにより決定されています。

ところで、直近では日本で第5波の感染拡大を招いた「デルタ株」が記憶に新しいところですが、新しい変異株に順番に命名されるとすると、「デルタ」の次が「オミクロン」とはちょっと意外でもあります。

大学時代、無謀にもギリシャ語の講座を取ったことを思い出しますが、アルファベットを暗記するのに精一杯(!?)でした。

それでも、「デルタ」から「オミクロン」の間にはまだいくつかあった、というくらいは記憶に残っているという訳でして・・・。

正確なところ、一般にはデルタが印象に残っているところではありますが、変異株として確認されているのはミューまでです。

そしてそのミューの次が「オミクロン」ということになっているのですが、この間には2つのアルファベットがスキップされており、それが「ニュー」(N)と「クサイ」(X)です。

(いわゆる「懸念される変異株(VOC)」ということでは、デルタに次いで5番目となるのがオミクロンとなります。)

この2つをすっ飛ばした今回の命名に疑問の声が上がっているという記事を見つけ、興味深く読みました。


Now the alphabet has created its own political headache. When it came time to name the potentially dangerous new variant that has emerged in southern Africa, the next letter in alphabetical order was Nu, which officials thought would be too easily confused with “new.”

The letter after that was even more complicated: Xi, a name that in its transliteration, though not its pronunciation, happens to belong to the leader of China, Xi Jinping. So they skipped both and named the new variant Omicron.
(Steven Lee Myers. The W.H.O. skips forward two Greek letters, avoiding a Xi variant. New York Times. November 27, 2021.)


WHOによれば、「ニュー」(N)をスキップしたのは、英単語の"new"(新しい)と混同しやすいというのが理由だとか。

その次の「クサイ」(X)については、"Xi"というスペルが中国の国家主席の名前を想起させる(というか、そのもの、です。)ということで、WHOがこれに「遠慮」したのではないか、という憶測が飛び交っているというのです。


The organization did not initially explain why it jumped from Mu, a lesser variant first documented in Colombia, to Omicron. The omission resulted in speculation over the reasons. For some, it rekindled criticism that the organization has been far too deferential in its dealings with the Chinese government.
(ibid.)


振り返ってみれば、全世界を混乱と恐怖に陥れた新型コロナウィルスパンデミックの発生源は中国・武漢のウィルス研究所とされるところ、WHOは徹底した調査には及び腰で、中国におもねるような態度を取り続けていると言われます。

変異株の命名に関する今回の一件も同様、中国政府への"deferential"な姿勢が見て取れる、というのが記事で取り上げられているものです。

さて、今日の単語、"deferential"ですが、"deference"という名詞は、敬意、尊敬、といった意味です。

英英辞典などを引くと、"deference"の類語として大抵の場合、honor、homage、reverence、veneration、などが挙げられています。

honorは、尊敬、敬意を表す最も一般的な表現。

homageには、それに忠誠とか忠心といった意味合いが含まれてきます。

reverenceは、尊敬の念の深さが強調され、畏敬とか崇敬といった意味です。

venerationは、reverenceに近く、尊敬の念と共にそれを崇め、また畏れるといった含意があります。

最後に、"deference"ですが、同じ尊敬ではありますが、相手に対してへりくだる、という礼儀としての意味合いが強いものです。

WHOの姿勢は確かに国際関係という視点に立った儀礼上の配慮でもあろうと思われますが、ある意味、腰が引けている、といっても良いかも知れません。("deferential"の訳語としては、誤訳かも知れませんが。)

クサイ(Xi)だけをスキップすると如何にも及び腰に見えるのを嫌ったか、ニュー(N)をスキップした理由が取って付けたようにも聞こえます。(新しく発見された変異株が「ニュー」(new)でなぜ悪い?)

なお、余談ですが、"deference"の動詞形は"defer"ですが、遅らせる、という意味と、敬意を払う、敬意を払って譲る、従う、という意味の2つがあり、どちらもスペルが同じですが、辞書では別の単語として扱われています。

因みに、スペルが似通っている"differ"(また、"difference")も2つの"deffer"と語源を同じくするもので、ラテン語の動詞ferre(運ぶという意味)から来ています。

2021年11月26日金曜日

cash in on

商魂というのは時に正常な判断を鈍らせるようです。金になると踏んだら、臆面もなく行動に走る人がいます。

Black Lives Matterの運動が始まるきっかけとなった、2020年5月の事件の被害者黒人をネタにしたオンラインゲームを作成した人に批判殺到ということなのですが、詳細を聞かずとも不謹慎な内容に想像がつきそうです。


It was a grotesque attempt to cash in on tragedy.

Iranian game developers are facing the music online over a tasteless video game in which the objective is to save the life of George Floyd.

Dubbed “Save The Freedom,” the mobile game is based on the killing of Floyd, who was black, by white police officer Derek Chauvin in Minnesota in May 2020, an incident that prompted protests around the world.
(Ben Cost. Sick George Floyd video game sparks outrage online. New York Post. November 25, 2021.)


"cash in on"という表現は一種の慣用句で(米口語とも)、前置詞on以下の対象について、金儲けをする、利益を得ようとする、という意味です。

金儲けは悪いことではありませんが、"cash in on"の表現はそのやり方に対する批判が滲んでいます。

このゲームの作者が“tone-deaf”と言われても仕方がありません。



2021年11月25日木曜日

tusk

数百万年前に生息しその後絶滅したマンモスの牙(tusk)が深海底から発見されたとニュースになっています。

地上に生息していたはずのマンモスの遺跡がカリフォルニア沖の深海底から発見されるのは初めてと見られます。


Mammoths are long to be known as ancient land dwellers, so scientists were shocked to find remains from the animal at the bottom of the ocean.

Pilot Randy Prickett and scientist Steven Haddock, researchers with Monterey Bay Aquarium Research Institute (MBARI), discovered a Columbian mammoth tusk 185 miles offshore and 10,000 feet deep in the ocean in 2019, the institution said in a news release.
(Lauren M. Johnson. Mammoth tusk recovered from an unlikely place: the bottom of the ocean. CNN. November 24, 2021.)


さて、牙を指す単語、"tusk"についてです。

"tusk"の語源は、遡ると同じく歯を意味する"tooth"や"dental"といった他の単語と同じものなのですが、"tusk"は古英語でtuxとつづられていた単語が変化したものだと辞書の語源欄にあります。

専門的には音位転換(metathesis)と呼ばれる現象だそうです。

この音位転換というのは何かというと、分かりやすく言えば、ある語を発音する過程で誤って音の順序が前後入れ替わってしまう現象を指しています。(例えば、「茶がま」を誤って「茶まが」と言ってしまう、等。)

英単語の中にはその成り立ちの過程で、音位転換が関係している単語が多くあります。

今回取り上げた"tusk"に似た例では、同じような発音の"task"という単語は、ラテン語taxa(税を意味する"tax")の、夕暮れを意味する"dusk"は古期英語dox(薄暗い)の、それぞれ音位転換形とされています。



2021年11月24日水曜日

demonize

人種差別デモの参加者二人を射殺した白人男性被告の正当防衛が認められて無罪判決となったニュース記事についてはつい先日も取り上げましたが、今日も関連する記事からの引用です。

無罪となったRittenhouse元被告を巡る裁判はメディアで大きく取り上げられましたが、その報道内容が偏向しているという指摘があるようです。


Jesse Watters slammed the mainstream media and President Joe Biden for their comments about Kyle Rittenhouse, saying media used to focus on demonizing politicians but have now turned their focus on everyday Americans.

"The mainstream media has now moved from demonizing politicians to demonizing regular people," Watters said. "I have never seen anybody look so different than what they're portrayed on in the media."

(中略)

"Mr. President, if I could say one thing to you, I would urge you to go back and watch the trial and understand the facts before you make a statement," Rittenhouse said

Rittenhouse hinted on "Tucker Carlson Tonight" Monday that lawyers may be looking into a possible defamation case. During the interview, Rittenhouse accused President Biden of acting with "malice" and defaming him.

(中略)

Then-candidate Biden had tweeted out a video condemning White supremacy that featured an image of Rittenhouse in Kenosha, Wisconsin. Biden later said, "Allegedly [Rittenhouse is] part of a militia coming out in the state of Illinois."

"Joe might have to pony up some dough here because that was libelous," Watters said.
(Hannah Grossman. Joe Biden may have to 'pony up some dough' for 'libelous' comments about Kyle Rittenhouse: Jesse Watters. Fox News. November 23, 2021.)


少し引用が長くなってしまいましたが、記事で"demonize"("demonizing")という表現が複数回出てきます。

スペルからお分かりのように、"demon"(悪魔)という単語に、他動詞を作る接尾辞-izeが付いたものです。

手元の辞書には、悪魔化する、悪魔のようにする、などと載っています。

言わんとするところは分かるのですが、和訳として悪魔化する、ではちょっと問題があるように思われます。

Merriam-Websterの定義を見てみますと、


to portray (someone or something) as evil or as worthy of contempt or blame


とあり、さらに同義語として"vilify"(中傷する、貶す)とありました。

"demonize"の言わんとするところは誹謗中傷ということであり、悪者扱いする、ということだと思われます。

SNSなど、ネット上での誹謗中傷が未だかつてない程まで社会問題化していますが、Rittenhouse元被告を巡る一部の報道(事実誤認があるという指摘もあります)やアメリカ社会における反応も誹謗中傷と見なされかねない要素が満ちている、ということなのだと思います。

記事の引用が長くなってしまったのですが、後半部分に目を移すと、バイデン大統領までもがその批判の対象とされており、(大統領就任前の昨年に)この誹謗中傷とも取れるコメントをしていた、とあります。

元被告は誹謗中傷に対し、名誉棄損で訴える構えを見せており、今後の動向が注目されるところです。

先日の記事でも取り上げましたが、今回の事件については銃による自衛権を行使したという擁護論と、過剰な正当防衛であるという銃規制論の立場が対立しています。

Rittenhouse元被告が訴追されたことに対してトランプ前大統領は批判的で、元被告を擁護する発言をしていたと言われています。

この問題もやはり、共和対民主という政治対立とは無縁ではありません。



2021年11月23日火曜日

magic minute

共和党のKevin McCarthy議員が8時間半を超える長大な議会演説を行ったということでニュースになっています。


It’s no secret that Kevin McCarthy wants to be the next speaker of the House. The Republican leader made that clear Thursday night and into Friday morning in the most literal way possible: by speaking — longer than any member of the chamber ever has.

McCarthy (R-Bakersfield) commanded the floor for 8 hours and 32 minutes, breaking Speaker Nancy Pelosi’s February 2018 record of 8 hours and 7 minutes, while stalling passage of a $1.7-trillion social spending bill that congressional Democrats intend to pass without any bipartisan support.

(中略)

The "magic minute" House rule allows party leaders to speak for an unlimited amount of time during debate.
(Marathon McCarthy speech highlights GOP leader’s play for speaker. Los Angeles Times. November 19, 2021.)


国会等、議会で長時間に及ぶ演説というと、いわゆる牛歩戦術(の一つの態様)を思い出します。

しかし、今回の長演説に関しては、"magic minute"という各党のリーダーにのみ与えられる特別ルールで認められているもので、"filibuster"とは別物だそうです。

8時間32分という時間は、民主党のペロシ氏が2018年の演説で記録した8時間7分を超える新記録。その際の記事がありました。


House Minority Leader Nancy Pelosi, D-Calif., seized on the “magic minute” phenomenon at 10:04 a.m. ET Wednesday to rally support for a DACA agreement.

“I am going to go on as long as my leadership minute allows,” said Pelosi.
(Chad Pergram. Pelosi gets most out of 'magic minute' in record-setting speech for DACA. Fox News. February 8, 2018.)


"magic minute"に関しては以下のような解説も。


Three members of the House are allowed to speak for unlimited amounts of time during floor debate in what's known as a "magic minute": the speaker, majority leader and minority leader.
(Cristina Marcos. McCarthy delays swift passage of spending plan with record-breaking floor speech. The Hill. November 18, 2021.)



2021年11月22日月曜日

vigilante

アメリカで2020年8月、人種差別抗議デモに参加の3人を銃撃、2人を死なせた当時17歳の男性に対して無罪判決が下されました。

被告はデモ参加者に暴行を受け、命の危険を感じて発砲したと主張し、正当防衛が認められたものです。

この裁判についてはここ数週間トップで報じられていましたので目にしない日はありませんでした。


Kyle Rittenhouse's acquittal on murder charges on Friday opened yet another front in America's longstanding fight over gun rights: Is it acceptable for a teenager to bring an assault-style rifle to a protest?

Conservatives hailed Rittenhouse as a hero for exercising his right to self-defense when he fatally shot two demonstrators and wounded a third who he said attacked him last year at a racial justice protest in Kenosha, Wisconsin.
(Joseph Ax. Hero or vigilante? Rittenhouse verdict reignites polarized U.S. gun debate. Reuters. November 19, 2021.)


無罪となった被告は当時17歳という「少年」でしたが、殺傷能力の高いライフル銃を使ったとされています。

銃社会と言われるアメリカにあって、その使用が正当防衛か否かが論争になることは少なくありませんが、今回もそこが争点となりました。

ところで、記事のタイトルで、


Hero or vigilante?


と対比のように書かれているのですが、"vigilante"を辞書で引いてみると、自警団、などと載っています。

"vigilance"、"vigilant"や"vigil"といった単語に並んで、これらの単語は警戒するというラテン語vigilareに語源を持ちますが、この"vigilante"はスペイン語のスペルがそのまま輸入されたものだということです。

タイトルに戻りますと、ヒーローか、それもも自警団か?では、何が言いたいのかよく分かりませんね。

"Hero"に関しては、引用部分にもありますように、自衛の手段としての銃の所持を認める立場の保守層は、今回の判決を評価しており、被告の行為を称えていると言われています。

一方、"vigilante"で何が言いたいのか、少し深読みが必要なようです。

記事では以下のようなくだりがあります。


Gun control advocates warned the jury's verdict could inspire a new wave of armed vigilantism, after Rittenhouse traveled in August 2020 from his Illinois home to Kenosha after demonstrations erupted following the police shooting of a Black man, Jacob Blake.

(中略)

Rittenhouse's decision, at age 17, to roam the streets of Kenosha toting a weapon in the name of protecting private property from rioters struck a particular nerve about just how far gun rights should extend.
(ibid.)


こちらは銃規制を強化すべきだとの立場の声です。今回の判決が"a new wave of armed vigilantism"を生じさせると懸念を表明しているもので、ここでも"vigilantism"という単語が使われています。

Merriam-Webster Dictionary(オンライン版)で"vigilante"を参照すると、通常の定義に加えて以下のような解説に目が留まりました。


The word may often be found in an attributive role, as in the phrases “vigilante justice,” or “vigilante group.” In this slightly broadened sense it carries the suggestion of the enforcement of laws without regard to due process or the general rule of law.


"it carries the suggestion of..."という箇所がポイントなのだと思いますが、「自警」、「自衛」といった言葉が表す守る、防御、というよりも、攻撃、制裁の面を強く出しているように思われました。

つまりヒーローか、それとも"vigilante"か?という対比は、被告を「自衛の権利を行使したヒーロー」と捉えるのか、「自己防衛を盾に過剰な力の行使に及ぼうとする者」と見なすのか、ということであろうと思われました。

無罪判決であることにより「犯罪者」とは言えませんが、対比としてはそれに近いものがあるかと。



2021年11月19日金曜日

fire up base

新型コロナワクチンの接種義務化は推進するバイデン政権に対して、共和党の反発が激しくなっていますが、フロリダ州では接種義務化を違法とする州法が成立しました。

共和党のDeSantis知事が法案に署名したとトップで報じられています。


Florida Republican Gov. Ron DeSantis on Thursday signed what he called "the strongest piece of legislation that's been enacted anywhere in the country" in opposition to coronavirus vaccination mandates on workers.

(中略)

The steps taken by Florida this week represent a significant escalation in the fight between Republican-led states and the federal government over President Joe Biden's push to get the country inoculated against the coronavirus, and they reflect just how politicized the pandemic has become.
(Steve Contorno. Florida Gov. DeSantis signs legislation against Covid-19 mandates. CNN. November 18, 2021.)


その州法の中身というのは、従業員に接種を強制する企業等には罰金を科すといったもので、これまでに類を見ない内容となっています。

引用したCNNの記事では、パンデミックが如何に政争の具と化しているかを示すものだと報じています。

さて、同じくCNNから、約1週間前の記事ですが、同じくワクチン接種義務化を話題とした記事では以下のようなくだりとなっています。


Republicans seeking to energize their core voters and appeal beyond their base to others concerned about the fragile economic recovery are turning to the Biden administration's vaccine mandates.

With more than 70% of adult Americans now fully vaccinated, Republicans are advocating for a slender minority of Americans as they champion the rights of the unvaccinated. It's a group dominated by voters within their base, which is why objections to federal mandates have become a key talking point for several potential 2024 hopefuls as they make the case that government overreach under Biden knows no bounds and must be stopped.
(Maeve Reston. Republicans seize on federal vaccine mandates to fire up their base and try to court new voters worried about the economy. CNN. November 12, 2021.)


パンデミックが如何に政争の具と化しているか、については、民主、共和両党がこの問題を梃に支持層を拡げようとしているという見方です。

記事のタイトルに、


fire up their base


という表現が使われています。

記事中にも度々出てくる、"base"という単語は政策や政党をサポートする「支持基盤」を指していると思われます。

その支持基盤を"fire up"する、というのは具体的にどう訳すのがふさわしいでしょうか。

"fire"という動詞には火をつけるという意味があります。英和辞書に"fire up (one's) base"という表現を取り上げたものは見当たりませんでしたが、この表現は似たようなコンテクストで(つまり、政治の話題で)よく使われるようです。(コーパスでは多数の用例がヒットします。)

以下は、今年の始め、首都ワシントンDCで勃発した暴動に関してのAPの記事です。


A faction of local, county and state Republican officials is pushing lies, misinformation and conspiracy theories that echo those that helped inspire the violent U.S. Capitol siege, online messaging that is spreading quickly through GOP ranks fueled by algorithms that boost extreme content.

The Associated Press reviewed public and private social media accounts of nearly 1,000 federal, state, and local elected and appointed Republican officials nationwide, many of whom have voiced support for the Jan. 6 insurrection or demanded that the 2020 presidential election be overturned, sometimes in deleted posts or now-removed online forums.
(Some local GOP leaders fire up base with conspiracies, lies. Associated Press. February 27, 2021.)


この記事でもタイトル部分で使われているのですが、暴動事件を思い起こすに、「(火を)焚きつける」といった和訳がぴったりくるように思われます。

「扇動する」と言っても良いかもしれません。

個人的にはワクチンの効果は絶大と思うところです。サイエンスを政治問題にしてしまうのは誰の所為でしょうか。



2021年11月18日木曜日

sock away

アメリカの国内経済がかつてないインフレに見舞われています。

食料品、ガソリンなどの物価高が主に取り上げられていますが、小売大手のウォルマートやターゲットはインフレを消費者に転嫁しないで、価格据え置きの姿勢を示していると報道されています。

これに投資家サイドは反発、両者の株価は3~5%下落したそうです。


Walmart and Target put up strong third-quarter performances this week, beat Wall Street’s expectations and spoke of holiday shoppers already starting to splurge on gifts and gatherings this season. Yet the investor response was swift: A brutal sell-off.

(中略)

The two sides are at odds on the retailers’ strategy of absorbing some of the rising costs of shipping, labor and materials rather than passing them on to customers with higher prices.

(中略)

Both Walmart CEO Doug McMillon and Target CEO Brian Cornell have drawn a clear line. Their strategy: Keep prices low in a bid for customer loyalty — even if it means a hit to profits.
(Melissa Repko. Walmart and Target clash with investors over strategy to keep prices low despite inflation. CNBC. November 17, 2021.)


投資家サイド、ビジネス側の見方について、以下のようなくだりがあります。


The pushback they’re hearing is: Why not charge shoppers more? Americans have had a ravenous appetite for shopping. They socked away money during the pandemic and the holiday forecasts are rosy.

McMillon said Walmart must uphold its reputation for value — or risk scaring away customers who feel sticker shock.
(ibid.)


これからのシーズン、感謝祭(Thanksgiving)にクリスマス、年末年始と、消費欲を刺激するイベントが目白押しです。そこに加えて、パンデミックで行動が制限されていた時期に使われなかったお金があるわけで、多少の値上げでも顧客離れにはならないだろうというのが投資家側の見立て、と要約できそうです。

ここで、


sock away


という表現が出てきました。

"sock"という動詞は叩くとか強く打つ、という意味ですが、"sock away"の"sock"は靴下のことです。(詳細がはっきりしませんが、これら2つの"sock"は語源が異なる単語のようです。)

"sock away"の意味するところは、お金を貯め込む、というものなのですが、アメリカ英語のインフォーマルな表現となっています。

昔、へそくりを靴下に隠したことに因むそうです。



2021年11月17日水曜日

bruin

小生が「クマ出没注意」の看板を初めて見たのは東北地方の山野だった記憶がありますが、実際にクマに遭遇した経験はありません。

もし遭遇したら、果たして落ち着いて行動できるか?と思います。

カリフォルニア郊外のセブンイレブンに突如現れたクマがSNSで話題になっています。


Perhaps he needed his bear necessities.

A screaming 7-Eleven clerk in Olympic Valley, California got a closer wildlife encounter than she desired after a black bear strolled into the store and “used” the hand sanitizer station.

A clip of the critter’s bizarre convenience store stop boasts 8.1 million views on TikTok as of Tuesday morning.

(中略)

The accompanying 40-second footage shows the cinnamon-colored bruin opening the door a la the “Jurassic Park” velociraptors while Ducusin screams at it to “get out!”
(Ben Cost. Bear strolls into 7-Eleven, uses hand sanitizer as worker screams ‘get out!’ New York Post. November 16, 2021.)


SNSにアップロードされた動画では、クマがコンビニのドアを押して「入店」する様子が映されています。几帳面にも(!?)新型コロナ感染拡大防止の手指消毒液を使っているようにも見えます。

ちなみに引用した記事の冒頭の"bear necessity"は、"bare necessity"にかけたしゃれですね。

"bear"を表現する別の単語に、


bruin


があります。

オランダ語では茶色(brown)を意味しますが、これは児童向けの絵本に出てくるクマの名前に使われる単語で、元は中世の動物物語Reynard the Fox(邦題:狐物語)から来ているそうです。

フランス語でrenardが狐を意味するように、Bruinは普通名詞化してクマを意味する単語になりました。

狐物語に馴染みがない人には、クマのプーさん(Winnie the Pooh)の方が身近でしょうか。



2021年11月16日火曜日

navy blue

フランス国旗はいわゆるトリコロールと呼ばれる、左側から青、白、赤の3色ですが、その青色には実は2つのパターンがあるということは知りませんでした。

明るい色調の青(bright blue)と少しくすんだ、濃い青(navy blue)の2色があり、どちらもフランス国旗として使われているというのです。

明るい色調の青は遡ること、ジスカール・デスタン大統領の時、1976年に採択されたそうですが、先日、この青が「ネイビーブルー」、つまりやや濃い青色に変わったということです。ほとんどの人は気づかないとか!?


President Emmanuel Macron has switched to using a darker navy blue on the official French flag, replacing the previous brighter shade, officials have told local media.

The move saw flags in the new hue hoisted on the presidential palace last year without any accompanying fanfare.

Mr Macron wanted to bring back the navy blue flag, a symbol of the French Revolution, Europe 1 said.
(Macron switches to using navy blue on France's flag - reports. BBC News. November 15, 2021.)


濃い目の青色を"navy blue"と言いますが、「ネイビー」はカタカナでも浸透しており、服飾などで色合いを示すのにも普通に用いられていますね。

"navy"が青色を指すのはどういう背景があるのでしょうか?

誰もが海の青色だとすぐに答えるでしょう。

たしかにそうなのですが、語源はラテン語で船を意味するnavisに由来します。

船であり、ボート、そして軍艦が海軍で採用されましたが、その海軍(英海軍)の制服が青色であったことから、"navy blue"が生まれたそうです。

ところで、ガーディアン紙は冗談も交えてこの件を伝えています。


Emmanuel Macron’s office has darkened the blue in the French flags flying around the Élysée Palace to bring the tricolore in line with how it looked after the French revolution.
(Kim Willsher. Sacré bleu: French flag changes colour – but no one notices. The Guardian. November 15, 2021.)


フランス語で"sacre bleu"、直訳すると「神聖なる青」、となりますが、このフランス語は英語に輸入されて、くそっ、とか、ちくしょう!とか、驚きを表現する際に使われる間投詞になっています。

ネイビーブルーへの変更はフランス海軍筋の「推し」があったようですが、EUの国旗で用いられている明るい色調の青への反発ではないかとの声もあがっているようで、単純に色の話とも片づけられない話になってきています。



2021年11月15日月曜日

pull off

50年以上も前、米・オハイオ州のクリーブランドで起きた横領事件の容疑者が特定されたそうです。

今の貨幣価値にして1億円以上の金が銀行員の男に横領されたものらしいですが、その後行方をくらました男の所在が分からず仕舞いで、いわゆる迷宮入りになっていたようです。

偽名を使って生きていた容疑者が遂に同定されましたが、既にこの世を去っていました。


One of America’s Most Wanted fugitives credited with pulling off one of the largest bank robberies in the history of Cleveland, Ohio, had spent five decades living a quiet life in a Boston suburb, not far from where the movie investigators say inspired his notorious real-life heist was filmed.
(Danielle Wallace. One of America's most wanted fugitives for 52 years who was inspired by movie identified. Fox News. November 14, 2021.)


従業員が大金を持ち逃げするなど、今日では考えられませんが、50年以上も前となると管理は穴だらけだったのでしょう。

容疑者は映画に触発されて横領を企んだと言われているそうですが、事実は小説より奇なりを地で行くような話です。

さて、この件について、


pulling off one of the largest bank robberies in the history of Cleveland


と表現されている、"pull off"という動詞句については、


見事にせしめる、(悪事などを)やってのける


という意味合いで使われます。

コーパスでいくつか用例を拾ってみました。


Although she was searched repeatedly, Payne said she was able to hide the stone in the hem of a girdle. In the end, police couldn't figure out how she pulled off the heist, though she says she simply stood up and took the ring from a box, despite witnesses swearing she never left her seat.
(Orange County Register, 2015)


「見事に」やってのけるのは、悪事に限らず、称賛に値するような行為も含まれます。

例えば、スポーツの試合などのコンテクストでも多く用いられています。


With a touchdown catch against the New Orleans Saints, Vikings receiver Randy Moss would become only the fifth player to pull off the feat in 10 straight games.
(Chicago Sun-Times, 2004)



2021年11月12日金曜日

give an inch, they'll take a mile

ちょっと長いですが、今日取り上げるのは、


give an inch, they'll take a mile


というフレーズです。慣用句の類と言ってよいかと思います。

1インチは約2.54センチ、1マイルは大体1,600メートル、ですね。

あなたが「1インチ」を与えると、相手は「1マイル」取る、ということなんですが、ちょっとだけの積もりが、結果的に沢山持っていかれてしまう、というのがこの表現の肝です。

つまり、少しでも譲歩しようものなら、要求が過大になり膨らんで、収拾がつかなくなる、というような意味合いが込められています。

Collins Cobuild Dictionary of Idiomsでは以下のように解説しています。


If you say 'give someone an inch and they'll take a mile', you mean that if you do a small favour for someone, they will become greedy and ask you to do bigger and bigger favours for them and make you regret doing the first favour.


つまりは、下手に出ると相手をつけ上がらせることになる、ということですね。

なお、"they'll take a mile"の部分は可変的で、"a mile"でない場合もあるようです。


The problem with him was that if you gave him an inch he'd take six.
(Collins Cobuild Dictionary of Idioms)


用例を探し求めると、時宜を得た記事がヒットしました。


I know that there are people on both sides of the mask/vaccine issue who are well-meaning and I’m trying to understand it all, but I’m also sick to death of it all, especially those on the pro-mask/vaccine side.

(中略)

These mandates have never been about safety and the health of the people; they're about power, control and money. If you feel the need to take the vaccine or wear a mask, then do it; no one is stopping you. Give an inch, they’ll take a mile. If you give away one freedom, they’ll take them all. And they’ve got a leg up already.
(Chris Barnes. Bullying tactics used by pro-vaccine, pro-mask, anti-COVID people driving me crazy: Letter. News Leader. August 17, 2021.)



2021年11月11日木曜日

dog's breakfast / dog's dinner

"dog's breakfast"という表現をご存知でしょうか。

直訳すると犬の朝ご飯、ですが、イヌを飼ったことのない小生にもあまり美味しそうな、食欲がわくような感じはしません。

一種のイディオムですが、


If you refer to a situation, event, or piece of work as a dog's breakfast or a dog's dinner, you mean that it is chaotic, badly organized, or very untidy.
(Collins-Cobuild Dictionary of Idioms)


という説明にもあるように、乱雑で整理されていないような状況を表現するものです。


The Government is providing up to $940 million per fortnight to support businesses through the challenging Delta outbreak, particularly those in Auckland.

Enable Me's Hannah McQueen told Jack Tame the Government's announcement yesterday was a dogs breakfast.

"There is a misunderstanding around what small businesses need at the moment."
('Dogs breakfast': Hannah McQueen blasts Government's announcement. Newstalk ZB. October 23, 2021.)


引用した定義にもありますが、"dog's dinner"ということもあります。

"dog's dinner"は残飯という意味合いもありますが、それ故にか、"dog's breakfast"と同じような意味合いでも用いられます。


Doctors have called the situation ‘a dog’s dinner’. One GP told The Mail on Sunday: ‘It’s a total mess. The third primary dose is still a complete blind spot, and yet, at the same time, perfectly healthy adults are getting boosters.’
(Eve Simmons. The most vulnerable Britons are missing out on their third jabs, with one GP branding the scheme 'a dog's dinner', so why is the Covid booster programme failing? Daily Mail. October 27, 2021.)



2021年11月10日水曜日

conglomerate

ゼネラルエレクトリック、略してGEと呼ばれることが多いですが、世界的な巨大企業として知らない人はいないのではないでしょうか。

そのGEが今後数年かけて3社に分社化するという決定を下したとのことです。


General Electric Co. is finally ditching its conglomerate structure, ending an era of corporate sprawl that even in the best of times never made much sense and in the worst of times brought the company to the brink of destruction.
(Brooke Sutherland. GE Finally Slays the Beast That Jack Welch Built. Bloomberg. November 10, 2021.)


時価1200億ドル超の複合企業(コングロマリット; conglomerate)は、2023年に予定するヘルスケア事業部門の分社化を皮切りに、今後分社化を進める模様です。

ところで、"conglomerate"という単語はカタカナとしても馴染みがあるものですが、語源を辿ると、ラテン語glomusに行き着きます。

このglomusというのは糸の玉のことだそうです。

多くの糸を丸めて球体にしたもの、ということになります。

礫岩(質)という意味もある単語としては、ゴツゴツした塊が集まっている(con-)イメージなのですが、意外にも糸だとは思いませんでした。

偶然か否か、今日の朝刊では日本のコングロマリット、東芝がやはり3社へ分社化する動きであることを報じています。



2021年11月9日火曜日

cold-call

日本では秋篠宮家のご長女の結婚を巡って先日まで大騒ぎでした。似た者同士と言っては大変失礼かもしれませんが、英国王室を離脱し、米国に移住しているハリー元王子とメーガン元妃の夫妻も何かとマスコミで取り上げられているようです。

やはりロイヤルパワーとでも言うのでしょうか、夫妻の言動は影響力があるもので、直近ではメーガン元妃が政界でロビー活動をしているとの報道です。


Meghan Markle was blasted Thursday after it emerged she has been cold-calling US senators on their private numbers — and using her royal title while lobbying them about the disastrous $3.5 trillion spending bill.

The exiled UK royal — long rumored to have her eyes on the White House — startled the GOP lawmakers when she unexpectedly called them to lobby for federal paid parental leave as part of President Biden’s divisive proposals, they told Politico.
(Lee Brown. Meghan Markle blasted for lobbying US senators, using her royal title. Page Six. November 4, 2021.)


メーガン元妃から突然電話がかかってきたと、共和党の上院議員が告白しているものですが、元妃が自らを"Duchess of Sussex"という肩書と共に名乗ったということで批判の声が沸いています。

ここで記事は、"cold-calling"という表現を使っているのですが、この単語を知りませんでした。

辞書を引いてみると、(生命保険・投資信託などへの)勧誘電話、と載っていたのですが、ロビー活動に勧誘電話、という訳語も今一つしっくりこないものがあります。

他の辞書も含め、色々調べてみますと、


a telephone call soliciting business made directly to a potential customer without prior contact or without a lead
(Merriam-Webster Dictionay)


などとあり、やはりコンテクストとしてはセールスの話で、事前のコンタクトや前触れなく、唐突にかける電話、というのが"cold-calling"のポイントのようです。

そこで思い出したのが、最近の若者言葉(!?)である、「凸電」、「凸る」、などといった表現です。

この「凸」は「突撃」、「突然」のことであると解釈されるようですが、知り合いでもないメーガン元妃から突然に電話を受けた議員はびっくりだったでしょう。

上記の引用はゴシップを得意とするタブロイド紙のものですが、この件についてはFox Newsや他のメディアでも取り上げられています。


Senators from both parties received a surprising phone call from the Duchess of Sussex. 
(Stephanie Nolasco. Meghan Markle cold-calls senators to lobby for paid parental leave using royal title. Fox News. November 4, 2021.)


"cold-call"は、"surprising call"とも言い換えられていますが、要は前触れの無い突然のコンタクトというところでしょうか。

ちなみになぜ"cold"(冷たい)なのかについては説明が見当たりませんでしたが、突然の勧誘電話は受け手に冷たくあしらわれるから、という一説は分かるような気がしました。

ちなみに、"warm call"という表現も存在するらしく、こちらは既存顧客など、ある程度確立されたコンタクト先に対して売込みをかける電話のことらしいです。

ちなみにいずれもマーケティング用語なのだそうです。



2021年11月8日月曜日

propaganda

新型コロナウィルスのワクチン接種を巡って、義務化を進める政府や接種の推進派と、接種強制を拒否する立場の人たちがいることはご存知の通りです。

ファイザー社のワクチンについては、米国で5~11歳の子供に対しても使用が承認されましたが、子供向け番組のセサミストリートを使ったワクチン接種推進キャンペーンがSNSなどで物議を醸しています。


Plenty of Twitter users uttered some less-than-family-friendly words after Sesame Street characters began promoting coronavirus vaccines on social media and CNN. 

On Saturday, CNN’s Erica Hill and Dr. Sanjay Gupta hosted a virtual town hall featuring various characters from the long-running PBS children’s series "Sesame Street." 

This followed the recent announcement from the FDA last month that approved of children ages 5-11 receiving a kid-sized version of the Pfizer/BioNTech vaccine.

The CNN town hall was promoted not only by the network and its journalists, but the characters as well. Big Bird’s Twitter account read, "I got the COVID-19 vaccine today! My wing is feeling a little sore, but it'll give my body an extra protective boost that keeps me and others healthy. Ms. @EricaRHill even said I’ve been getting vaccines since I was a little bird. I had no idea!"
(Lindsay Kornick. Twitter reacts to CNN's Sesame Street town hall on COVID vaccines: 'Government propaganda.' Fox News. November 7, 2021.)


同番組の人気キャラクターであるビッグ・バードのツイッターアカウントも援用したワクチン接種推進に、


'Government propaganda for your 5-year-old'
(ibid.)


との批判コメント、リツイートが寄せられているようです。

さて、以前に取り上げたかなと思ったのですが、"propaganda"という単語についてです。

日本語でもカタカナで「プロパガンダ」となっていますが、スペルから想像つきますように、ラテン語から来ています。

英単語の"propagate"、"propagation"は、広めること、伝播すること、ですが、これらの単語と同じく、"propaganda"も、元はラテン語の動詞propagareから来ています。

ラテン語動詞propagareの動形容詞(所相的形容詞)と呼ばれる形がpropagandus (-a, -um) で(〜されるべき、というような意味合いです)、その女性形、奪格が、propaganda、です。(つまり、広められるべき、という意味になります。)

そもそもは宗教の用語で使われていたものが、"propaganda"という言葉として切り離されたと語源解説にあります。

カトリック教会が、Congregation de propaganda fide(=Congregation for propagating the truth)、即ち真実を流布するための修道会と呼んでいたもので、教皇グレゴリウス15世が1622年に設立したものと言われています。

このように元々はカトリックの教義を広く流布するという目的だったのが"propaganda"ですが、今や、


The systematic propagation of a doctrine or cause or of information reflecting the views and interests of those advocating such a doctrine or cause.
(American Heritage Dictionary)


という一般的な意味で用いられるようになっています

意味合いはさらに変容しており、以下の定義に見られるように、広めようとされている内容が誤ったものである、という含みもあります。


ideas or statements that are often false or exaggerated and that are spread in order to help a cause, a political leader, a government, etc.
(Merriam-Webster Dictionary)


ワクチン接種の是非は議論のあるところですが、子供に人気のキャラクターを援用して接種を推進するというのはプロパガンダの一種には違いありません。

2021年11月5日金曜日

feet of clay

"feet of clay"という表現をご存知でしょうか。

欠点、弱点、という意味ですが、特に尊敬される人や高い地位にある人に認められる隠れた弱み、欠点という含みがある表現です。

"clay feet"とも言います。

いくつか用例を。


Leaders disappoint. They always do. Even the greatest have clay feet.
(John Podhoretz. Andrew Cuomo’s fall is a reminder NEVER to idolize politicians. New York Post. August 11, 2021.)


Many of the great founders of the American republic had feet of clay - Thomas Jefferson and Daniel Webster, for example - yet remain high in public esteem. 
(Christian Science Monitor, 1990)


さて、"clay"とは粘土、土のことです。

"feet of clay"は、土で出来た足、ということなのですが、この表現は旧約聖書のダニエル書から来ているとほとんどの辞書に載っています。

ダニエル書の該当箇所を手元にある聖書で読んでみました。

巨大な像の夢を見た王が、占い師や賢者らにその夢の解釈をさせるという話から始まるのですが、誰にもそれができないでいたところ、預言者のダニエルが登場します。

ダニエルは王の見た夢の内容とその解釈をするのですが、巨大な像については「頭が純金、胸と腕が銀、腹と腿が青銅、すねが鉄、足は一部が鉄、一部が陶土」(新共同訳)で出来た像であると言います。この「一部が鉄、一部が陶土」である足、という箇所が"feet of clay"に相当する箇所です。

そして、一つの石が、この像の鉄と陶土の足を打ち砕いた、とあります。像は倒れ、金も銀も青銅も、皆跡形もなくなった、と続きます。

足の一部を構成してる陶土(clay)は脆いものの象徴であり、夢の内容はいずれ起こるであろう国の分裂と崩壊を予言するものである、というのがダニエルの解釈となっています。



2021年11月4日木曜日

こんな意味もあったの? ― fatigue

疲労、疲れという意味の"fatigue"はごく基本的な単語だと思いますが、こんな意味でも使われるとは不勉強にして知りませんでした。


Prison fatigues, except for those worn by mechanics when they're on the job, have no pockets.
(Stephen King. Rita Hayworth and Shawshank Redemption.)


ファッションにはどちらかというと疎い方です。

"fatigue"の意味をチェックすると、最後の方に、軍事の用語として雑役という意味が載っています。

雑役というのは土木作業や清掃などを指すようですが、そういった作業の際に着用する服装を指して、


fatigue clothes


というそうです。

つまり、作業服、作業着、という意味です。

これは知りませんでした。

"fatigue"の形容詞としての意味には、作業着のような、という意味があります。

ここから、


fatigue pants/trousers(作業ズボン)
fatigue jacket(作業着の上衣)


などのように使われます。



2021年11月3日水曜日

keep one's ear to the ground

この表現は、文字通りですと、地面に耳を付ける、ということになります。

地面に耳を付けるのは近づいてくる敵(!?)の接近を知るためかもしれませんし、地震の予兆かもしれませんが、自らの身を守るために情報収集をする、ということが目的です。

このことから、社会などの動向に注意関心を持つ、といったような意味で用いられます。

Collins Cobuild Dictionary of Idiomsの定義を引用します。


If you keep your ear to the ground, you make sure that you find out about the things that people are doing or saying.


"keep"という動詞以外に、"have"が用いられることもあります。


For healthcare entrepreneurs and investors, having an ear to the ground on healthcare policy disrupters and priorities is valuable for anticipating trends, challenges, and opportunities for healthcare innovation now and in the future.
(Contributed: A Biden health policy retrospective: Implications for healthcare innovation. Mobile Health News. September 23, 2021.)


もうひとつ、コーパスから。


Where other metropolitan chief executives take care to maintain their political viability, Fenty keeps no close political counsel, putting his faith in his own sense of what "regular people" think. But Fenty either did not keep his ear to the ground or misunderstood that people often tell you what you want to hear.
(Washington Post, 2010)



2021年11月2日火曜日

even-Steven

"even-Steven"というちょっと変わった単語表現は、五分五分、とか対等、互角、公平平等、といった意味です。

そもそも、"even"という単語にそれらの意味があることはご存知でしょう。

一方、"Steven"の方はというと、これは人の名前のようですが、こちらには意味はありません。単に、韻を踏むためだけに挿入されているもので、いわゆる押韻合成語の類です。

最近の若者言葉(!?)で、「マジ卍(まじまんじ)」というものがありますが、似たものがありますね。

以下の用例はコーパスから拾ってきました。


"Just because one of my sons needs soccer shoes doesn't mean the other gets a new pair, too. I don't subscribe to the even-Steven mentality," says Ann Marie Maglino, a Cranford, New Jersey, mom of two boys, 8 and 6. Growing up in a big family, she learned early that everything wasn't always about her and that your parents can't give you a constant flow of material things.
(Parenting, 2006)


What were your rigid ideas of what a feminist marriage would look like?

Oh, man. It would be totally 50/50, you know - that when it came to the finances, when it came to the children, when it came to the housework, everything would be even-steven. Everybody pulls their weight. Everybody has a say.
(NPR, 2016)


以前特集しました、押韻俗語についてもご覧ください。



2021年11月1日月曜日

Dutch courage

"Dutch courage"とは、酒の上の空元気、という意味だそうです。

酒に酔った勢いで態度が大きくなったり、威勢が良い様子などを軽蔑的に表現するものです。


Dutch courage,” liquid confidence—the value of alcohol as a social lubricant is widely acknowledged, and now science has confirmed its existence. Researchers from the University of Pittsburgh and the University of Oslo dug into the phenomenon of “social bravery” induced by alcohol, and found that the effect is more pronounced in men than women, at least when it comes to smiling in social settings.
(Stefan Constantinescu. Science proves that “Dutch courage” is a real thing. Quartz. October 2, 2014.)


ところで、辞書を眺めていると、"Dutch"とつく表現には、軽蔑的な意味合いのものが多いことに気が付きます。

Online Etymology Dictionaryでもその点について触れられており、"Dutch treat"(割り勘での食事; ちなみに、"go Dutch"は割り勘にするという意味)などが挙げられています。