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2025年5月30日金曜日

aisle

飛行機を利用すると必ずと言って良いほどお目にかかる光景に、搭乗ゲートの人だかり、降機時の機内での行列があります。

飛行機の出入口は一つ、これに乗客全員が集中するのですから仕方ありません。降りる際は出口に近い座席の乗客から順序良く降りるのが最も効率的なのですが、着陸してシートベルトの着用サインが消えるか消えないかのタイミングで座席から立ち上がって通路に並ぼうとする人は絶えません。少しでも早く降りたいのは皆同じなのですが・・・。

アテンダントはベルト着用サインが消えるまでは立たないよう呼び掛けるものですが、マナーに訴えるのも限界ということでしょうか、トルコでは我れ先にと通路に出ようとする乗客に罰金を科すことを決めたようです。


Turkish aviation authorities will fine passengers who stand up early and crowd aircraft aisles while waiting to deplane, with penalties for that and other annoying antics reaching nearly $70.

(中略)

Aisle crowders — known in circles online as “aisle lice” — have long faced the ire of irritated travelers who say the behavior is rude and delays everybody’s deplaning process.

Etiquette experts told the Washington Post that the most polite way to deplane is to wait until nearby rows ahead are emptied before entering the aisle, with exceptions for people rushing to catch connections.
(Alex Oliveira. New airline fines will penalize ‘aisle lice’ who stand up and crowd other passengers after landing: ‘Strictly forbidden’. New York Post. May 27, 2025.)


降りる順番にならないのに立ち上がり、荷物を取り出す、また通路に並ぼうとする乗客らは、


aisle lice


と呼ばれ、忌み嫌われています。

ん、どこかで聞いたことがありますね?

搭乗の時も自分の番にならないのに搭乗口付近に押し寄せる客が後を断ちませんが、そうした人達のことを"gate lice"と呼ぶのでした。

さて、今日の1語、"aisle"です。

当ブログの読者の皆さんに対して、この単語は「アイル」と発音します、というのは釈迦に説法というものですね。

しかし、"aisle"とはトリッキーなスペルではありませんか。学校英語の単語テストでは常連かも知れませんね。

この"aisle"という単語は、中英語ではeleというスペルの語だったそうです。語源はラテン語のalaで、肩とか翼という意味です。

中英語ele、"aisle"は教会の堂の真ん中に位置する身廊と呼ばれるスペースの両脇にあり、柱で区切られる細長いスペースを指す言葉だったんですね。これが通路を意味するようにもなったのです。

シンプルだったスペルに発音しないsが加わったのは"isle"(島)という単語の影響を受けたとされています。("isle"という単語もsを発音しませんが、ラテン語で島を意味するinsulaから来ています。)

余談ですが、ラテン語のinsulaは、in saloというフレーズ(salumは海のことで、塩を意味するsalとも関連)から来ているという話があります。海水の海に浮かぶのが島(isle)という訳ですが、言語学者の中ではちょっと眉唾ものの扱いらしいです。

以上はいつもお世話になっているOnline Etymology Dictionaryから引きました。


2025年5月29日木曜日

chicken out

トランプ大統領による‘関税砲’はその鳴りを潜めた感があります。

対中国では、米中が相互に関税を課す応酬の果てに145パーセントという前代未聞の関税率まで上昇しましたが、5月半ばに行われた米中首脳会談で10パーセントの暫定税率を90日間限定で運用することで合意しました。

当事者ならぬ一般庶民とても、トランプ氏は何がしたいのか?と思わずにいられません。

法外な関税をまず突きつけ、その後交渉により合意可能な関税率で妥結する、ということなのかも知れませんが、トランプ氏は結局のところ交渉で一歩も引こうとしない中国に怯んだのではないかという見方が出ています。


Wall Street has been riding a historic roller coaster the past few months due to President Donald Trump’s on-again, off-again tariff threats. Now, investors are learning to take his words with a grain of salt — and a bit of salsa, too.

That’s because there’s a new type of trade taking hold: TACO, short for Trump Always Chickens Out. In other words, don’t fret too much about Trump’s latest tariff threat and go on a selling spree, because eventually he’ll back down and a relief rally will ensue.

Trump said he first learned of the term, coined by Financial Times commentator Robert Armstrong, on Wednesday when a reporter sought his reaction to it.
(Elisabeth Buchwald. Trump was just asked about the ‘TACO trade’ for the first time. He called it the ‘nastiest question’. CNN. May 28, 2025.)


関係者の間では、TACOという言葉が流行っているとあります。フィナンシャル・タイムズのコメンテーターによる造語というこのTACOという言葉は、


Trump Always Chickens Out


を約めたものということです。"chicken out"、つまりトランプ氏は結局のところ怖気付いて引く、というものです。

関税を巡る米中の応酬は「チキンレース」だとも言われてきました。意地を張り合ったところで、最終的にはどちらかが引くことになるということです。

チキン(chicken)は臆病者を指す俗語でもあります。"chicken out"はその動詞句であり、臆病になって尻込みするという意味です。

記者からTACOと言われていることをどう思うかと問われたトランプ氏は下らない質問をするなと一蹴したということです。


2025年5月28日水曜日

put one’s fingers in the dam

昨日取り上げたニュース記事、ベトナム訪問中のマクロン大統領夫妻の諍いは、その様子を捉えたビデオが多くのメディアで報じられ、ネット上でも拡散しているようです。

この動画について、フランスの大統領府は当初、AIによるフェイクだと主張したようですが、その後事実であると認めたようです。

ところで、問題の動画は事実であるものの、これを積極的に拡散しているのはロシアだとの見方があります。

その背景にはマクロン大統領のイメージを毀損する意図があるということなのですが・・・。


Darren Linvill, co-director of the Media Forensics Hub at Clemson University, told NPR that it's not surprising that a video showing a world leader in such a position would go viral — or that it would be used to promote a certain agenda.

"In today's digital environment, I think it is not a question of whether it goes viral, it's to what ends people want to use that video for," he said. In this case, Macron — and other disinformation experts — say Russia is seizing the moment to try to make him look weak. 

(中略)

Linvill says it's not unusual for Russia to target Western leaders in this way, but Macron's prominence and his advocacy role in NATO make him "target number one." Every moment Macron and his team have to spend defending against these kinds of attacks, Linvill says, is a moment that is "keeping them away from keeping the West together."

(中略)

"And these incremental attacks on leaders like Macron — who are trying to put their finger in the dam, as it were, and hold the West together — these attacks are going to continue and they're going to continue to work to undermine his legitimacy."
(Rachel Treisman. A video of the French president's wife shoving him went viral. Here's why it matters. NPR. May 27, 2025.)


何故ロシアはマクロン大統領を攻撃するのかということについては、マクロン氏がEUにおける、またNATOにおける重鎮であることに他なりません。ウクライナとロシアの戦争においても西側陣営を結束させる要になっているマクロン大統領は、ロシアにとって目の上のたん瘤みたいなものなのかも知れません。

引用した記事で、


these incremental attacks on leaders like Macron — who are trying to put their finger in the dam, as it were, and hold the West together — these attacks are going to continue


というくだりがあります。

ここで使われている、"put one’s finger in the dam"というフレーズの意味が掴めませんでした。

辞書にも載っていないようなのでネット検索を頼ると、このフレーズはどうやら、


put one’s finger in the dike


というものと同じようであることが分かりました。"dike"というのは堤防のことです。決壊しようとしている堤防に指(finger)を突き刺してそれを食い止めようとしたオランダの男の子の話に由来するということらしく(Phrase Finderのサイトによる)、惨事を食い止めるために対策を講じるという意味合いで使われるようです。

決壊しそうな堤防に指を突き刺してそれを食い止めるとは如何にも非現実的で効果の程が疑わしい方策のように思われますが、"put one’s finger in the dam"、また"put one’s finger in the dike"というフレーズには非効率とか虚しい努力というような含意はないようです。と言いますのも、堤防の決壊を防ごうとした男の子の話は子供向けのお話に出てくるそうですが、街を堤防の決壊から守った男の子を英雄として描いており、そのお話のバージョンはいくつかあるそうなのですが、オランダ国内には男の子の銅像も建てられているらしいのです。(Wikipediaによる。)

上述したようにマクロン大統領やEUのリーダーは西側諸国の結束を守ろうとしてきた(put their finger in the dam)訳ですが、対立するロシアはそうしたリーダーらを貶める機会を常に窺っており、今回の動画は格好のネタであったということです。


2025年5月27日火曜日

squabble

今日の気になったニュース、フランスのマクロン大統領夫妻の痴話喧嘩(?!)が激撮されています。

ベトナム・ハノイを訪問しているマクロン大統領ですが、飛行機から降りる直前、妻のブリジットさんといざこざがあったようです。

APの記者が撮影した動画では、飛行機のドアが開けられ、マクロン大統領が見えますが、機内で誰かに話しかけているような様子が映し出されているところ、赤い上着の腕が伸び、大統領の顎のあたりを掴んで押しやる様子が映し出されています。

赤い上着の主は大統領夫人であることが、マクロン大統領に続いてタラップを降りてきた夫人を見て明らかです。また、こういう場合、手を繋いで降りてくるシーンをよく見かけるものですが、マクロン大統領の手は虚しく空を掴んだようにも見えました。


French first lady Brigitte Macron was seen shoving her husband, French President Emmanuel Macron, in the face while the couple was waiting to disembark their plane in Hanoi, Vietnam.

(中略)

As the clip, recorded by The Associated Press, quickly went viral, Macron said that he and his wife were play-fighting.

The headline of a story on the website of the daily Le Parisien newspaper asked, "Slap or ‘squabble’? The images of Emmanuel and Brigitte Macron disembarking in Vietnam trigger a lot of comment."

(中略)

"We are squabbling and, rather, joking with my wife," he said, according to the AP, adding that the incident was being overblown into "a sort of geo-planetary catastrophe."
(Danielle Wallace. Emmanuel Macron's wife seen shoving him in the face in viral clip as France's first couple arrives in Vietnam. Fox News. May 26, 2025.)


どんな諍いがあったのか分かりませんが、


squabble


があったようだと記事にあります。

"squabble"とは、


つまらないけんかをする、言い争う、口論する
(ランダムハウス英和辞書)


という意味です。"squabble"と言いながらも、マクロン大統領は(深刻な諍いなどではなく)おふざけの類いだとの釈明もしているようで、体面を繕った感もあります。

マクロン大統領夫人は、大統領が高校生の時の担任の教師であったということで、歳の差婚が話題になりました。

いわゆる「姉さん女房」ということになりますが、なかなか気性も激しい人のようですね。

小生の妻は同い年ですが、"squabble"は絶えません・・・。


2025年5月26日月曜日

It’s music to the ears.

アルツハイマー病や痴呆症、記憶障害・・・。加齢に伴う認知機能の低下に対抗するにはどうすればよいのか?

中年〜高齢者を対象にした最近の研究では、歌を歌ったり、楽器を演奏することが認知機能を保つのに有用であるという結果が得られたそうです。


It’s music to our ears.

A study published in the International Journal of Geriatric Psychiatry tracked more than 1,100 adults over 40 — with an average age of 68 — to see which pastimes packed the biggest cognitive punch.

Researchers compared participants who’d engaged with music — whether by singing, playing an instrument or listening to tunes — against those who hadn’t.

The results showed that lifelong musicians outperformed non-musicians on tests of memory, problem-solving and mental processing speed.
(Diana Bruk. Want to keep your mind sharp as you age? Try this activity. New York Post. May 25, 2025.)


引用した記事の冒頭に、


It’s music to our ears.


と出てきます。歌や楽器演奏、つまり音楽(music)が認知機能の維持に有効であるという話題にかけたものですが、このフレーズは、


耳に心地よい


という意味であると英和辞書に載っています。

この慣用的フレーズにおける"music"とは音楽自体を指すというよりは、聞く者にとって快い内容を指す比喩的な表現と言えます。

このフレーズを知りませんでしたが、頻繁に使われるもののようです。使われるコンテクストも音楽に限らず、実に様々なコンテクストで使われていることがコーパスの検索結果からも見て取れます。

いくつか拾ってみました。


And all of a sudden, here he is sitting down with "The New York Times" to describe a policy position that he knew would be music to the ears of Vladimir Putin, who is trying to get rid of those sanctions.
(CNN, 2018)

It's music to their ears: Students at Wilberforce University will benefit from a $2 million gift from Ray Charles to fund entertainment scholarships and pay visiting artists.
(Associated Press, 2000)


「耳に心地良い」は卒のない訳だと思われます。コンテクストや立場変われば、それは都合が良い、とか好都合な、という意味になりますし、お誂え向き、というような多少の皮肉を込めた訳語も考えられるでしょう。


2025年5月23日金曜日

physical AI

人口知能(AI)分野においてChatGPTで有名なOpenAI社が、元アップルのデザイナーが立ち上げたスタートアップを買収した、というニュースが話題になっています。

買収されたio社は、かつてアップル社でiPhoneのデザイン責任者であったJohny Ive氏が立ち上げたスタートアップ企業で、これがなぜ話題になるかというと、これからAI全盛期に入って行く中で、iPhoneに取って代わるような新しいテクノロジー、デバイスが誕生するのではないかという見方があるようです。


OpenAI, maker of leading artificial intelligence chatbot ChatGPT, is about to get physical.

The company announced that it is buying a device startup called io, launched by former Apple designer Jony Ive, in a deal worth just under $6.5 billion. It's OpenAI's biggest acquisition to date.
(John Ruwitch. OpenAI forges deal with iPhone designer Jony Ive to make AI-enabled devices. NPR. May 22, 2025.)


記事によれば、OpenAI社は買収がもたらす今後について具体的なことはほとんど言及していないようです。しかしながら、AI分野において現在主流とされる生成AIの次の世代となる、


physical AI


が念頭にあることは間違いないようです。


Several other companies are vying for a toehold in the arena of AI-enabled devices, which are able to sense the real world and process information about it in real time using artificial intelligence. Devices could include robots, autonomous vehicles, glasses or other wearable technologies.

The technology is often referred to as "physical AI," because it moves AI from the realm of software into tangible objects.
(ibid.)


今年に入ってからのこの分野における新しい用語として、"physical AI"は見かけたり、聞くことが多くなった言葉です。

日本語では「フィジカルAI」、「物理的AI」といった訳語が定着しているようです。

たしかに"physical"は「物理的な」という意味ではあるのですが、ここでは、有形の、あるいは現実世界に関わる、といった概念として捉えるのが適当と思われます。

Merriam-Webster Dictionaryでは、"physical"を


having material existence : perceptible especially through the senses and subject to the laws of nature


と定義しています。

"physical AI"がこれまでの生成AIと異なるのは、生成AIがPCやスマートフォン等のデバイスを通じて人間が入力(インプット)した内容に基づいて様々なレスポンスを返す(結果を生成する)というのに対し、"physical AI"は現実世界においてもたらされる刺激を認識、判断して自律的に反応することができるというところにあるようです。

これによりクルマの自動運転や、自律的に働くロボット(ヒューマノイド)などを実現することが可能になると言われており、OpenAIのみならず多くの企業が参入しようとしていると言われます。

引用した記事の冒頭にある、


OpenAI… is about to get physical.


という文の"physical"は、"physical AI"のことを指しているのでしょうが、AIが仮想空間から現実世界("physical")へと移行しようとしている現在を言ったものと思います。

"virtual"(仮想の)という言葉の対義語は"real"(現実の)であることは疑いありませんが、AI分野では"physical"と言えるのではないでしょうか。

2025年5月22日木曜日

あり余るほど ー plenty

江藤農水相が辞任しました。地方遊説先で、コメを買ったことが無い、と発言したことが、米価高騰に苦しむ国民の神経を逆撫でするものとされ、内外から批判を浴びていました。

批判を受けて釈明したものの、この状況では夏の参院選を戦えないと判断した石破首相は江藤氏を更迭せざるを得なかった模様です。

つまらない失言をしたものだと思いますが、このニュースは海外メディアでも報じられています。以下はBBC Newsの記事からの引用です。


When Japan's farm minister declared that he never had to buy rice because his supporters give him "plenty" of it as gifts, he hoped to draw laughs.
Instead Taku Eto drew outrage - and enough of it to force him to resign.
(Mariko Oi. How a joke about rice cost a Japan cabinet minister his job. BBC News. May 2a, 2025.)


江藤農水相の失言は、冒頭に書いた、「コメを買ったことが無い」、に続けて、その理由として、「支持者の方々がたくさん下さるので、家の食料庫に売るほどある」(産経新聞)というものだったそうです。

上記BBC Newsでは、"plenty"という表現が引用符付きで使われています。

"plenty"の定義は、


an adequate or more than adequate number or amount of something
(Merriam-Webster Dictionary)


とあります。英和辞書を引くと「たくさん」という訳語が見えますが、"plenty"とは十分、またそれ以上、ということで、あり余るほどある、という意味合いです。農水相が「売るほどある」と発言したニュアンスを反映していると思いました。

ちなみに他紙(他メディア)ではこの失言をどんなふうに伝えているのかざっと見てみたところ、"plenty"という表現を使っているのはBBCのみのようでした。

いくつか拾ってみたものを以下引用します。


“I have never bought rice myself. Frankly, my supporters give me quite a lot of rice. I have so much rice at home that I could sell it,” Eto said in a speech over the weekend, drawing the ire of the public.
(Japan’s farm minister resigns over rice gaffe, as stubbornly high prices threaten government’s grip on power. CNN. May 21, 2025.)


Eto said on Sunday that he has never had to buy rice as he received ample amounts of the grain as gifts from supporters — a comment that struck a nerve with locals struggling with rocketing prices of the beloved staple.
(Lee Ying Shan. Japan's farm minister said he has never had to buy rice. That cost him his job. CNBC. May 21, 2025.)


But addressing a gathering over the weekend, Eto said he has “never bought rice myself because my supporters donate so much to me that I can practically sell”.
(Japan’s farm minister is in trouble after boasting that he never buys rice after getting so much of it for free. AFP. May 20, 2025.)


TOKYO — Japan's agriculture minister resigned Wednesday because of political fallout over recent comments that he "never had to buy rice" because he got it from supporters as gifts. The resignation comes as the public struggles with record high prices of the country's traditional staple food.
(Associated Press)


国民の怒りが向けられたのは、「買ったことが無い」という部分なのか、あるいは「有り余るほどある」、もしくは「売るほどある」という部分なのか、はたまた、「支持者がタダでくれる」という部分なのか —— 言うまでもなくこれら全てなのですが、メディアにより表現の仕方や焦点を当てていると思われる部分に微妙な差異があるのは興味深いところです。

2025年5月21日水曜日

cereal

朝食にシリアルを食べています。かれこれ10年以上になりますが、"cereal"という英単語がローマ神話で農業の神であるケレス(Ceres)から来ているとは知りませんでした。

日本語では穀物加工食品というものですが、"cereal"という単語は元は食用の穀物を実につける植物のことを指していました。

今日では朝食の定番ともなった「朝食シリアル」を指すようになったのはアメリカ英語だそうです。


Sprinkling a handful of raisins on your bowl of cereal could help you live longer.

Scientists found adding any kind of dried fruit to the morning meal slashed the risk of dying from heart disease by 18 per cent and cancer by 11 per cent.

Tucking into muesli, porridge or bran cereals first thing had a similarly beneficial effect, lowering the risk of a premature death by 10 to 15 per cent.
(Pat Hagan. How raisins with your morning cereal could help you live longer. Daily Mail. April 25, 2025.)


引用した記事は、シリアルにドライフルーツなどを混ぜるとカラダに良いという話が取り上げられています。

オーツ(大麦)にドライフルーツやナッツを加えたものはグラノーラ(granola)と呼ばれます。

ちなみに、この"granola"は元は商標であり、朝食シリアルの代表格として名詞になったものです。

元は病人食だったらしく、"granula"と呼ばれていた(恐らく、粒、顆粒を意味するgranularから付けられた名前)そうですが、後に誕生した類似品には"granola"という名前が付けられたそうで、この命名はコーンフレークで有名なケロッグ社の創業者John Harvey Kellog博士だということです。(Merriam-Webster Dictionaryオンラインの解説による。)



2025年5月20日火曜日

toe-curling

唐突ですが、"toe-curling"という表現をご存知でしょうか?

爪先(toe)を巻き上げる(curl)、あるいは丸くする、というのが字句通りの訳になると思いますが、不快感を催すとか、嫌な気分にさせるというような意味で使われるようです。

この表現を知りませんでしたので、英紙デーリーメールの見出し(以下)に使われているのを見て、これは何だ?となった訳です。


Jake Tapper called out over toe-curling dismissal of Biden health fears as he prepares to cash in with book


記事の内容はというと、認知機能の低下が取り沙汰されていたバイデン前大統領に関して最近暴露本を出すというCNNのJake Tapper氏のことを批判して"toe-curling"と言っているものなんですが、一応記事を以下に引用します。

批判しているのはウォールストジャーナルで、同紙が2024年にバイデン氏の健康、認知機能の問題を取り上げた際にはTapper氏はそれを否定するような立場を取っていた、というのです。

つまり、今頃になって立場を変えて暴露本を出すようなTapper氏の挙動は不可解である、嫌悪感を催す、というのです。


The Wall Street Journal has issued a damning assessment of CNN's Jake Tapper in his quest to legitimize a tell-all book he's written about Joe Biden's administration.

In a scathing takedown, the editorial board at the WSJ pointed out that Tapper dismissed an article they had published in June 2024 highlighting concerns about Biden's cognitive decline.
(Daily Mail)


ちなみに、"toe-curling"の表現は記事のタイトルだけで、本文中には出てきません。

以下(やはり記事タイトルですが)は、政治家の失言の話です。


Keir Starmer laughs off Antonio Costa's Gibraltar gaffe in toe-curling moment
(GB News)


この"toe-curling"という表現は上記に見られるように形容詞的に使われることが多いようです。

手元の英和辞書には載っておりませんでしたが、ネット検索では以下のような定義がされています。


making you feel extremely embarrassed and ashamed for someone else
(Cambridge Dictionary)

If you describe something as toe-curling, you mean that it makes you feel very embarrassed.
(Collins Dictionary)


他人を当惑させる、傍にいる人にとてもバツの悪い思い、恥ずかしい思いをさせるような、という意味合いですが、そういう思いをする時に、は足の先を丸めたくなるようなものでしょうか?

よく分からないところではありますが、英語国民は不快な感情を覚えると爪先が反応する(?!)のかも知れません。

因みにイギリス英語の表現のようです。

日本語には「片腹痛い」という表現がありますが、「片腹」は元々「傍ら」、つまり傍にいる人のことだといいます。当人の言動が傍にいる人には滑稽で苦々しく感じられるという場合に使われますが、"toe-curling"という表現に通じるものがあるように思います。


2025年5月19日月曜日

skeezy

先週金曜日の投稿で、トランプ大統領にカタールから贈られるという4億ドルもするジェット機の是非を巡って議論百出という話題を取り上げました。

以下引用する記事も同じ話題なのですが、お読みください。


The Qatari royal family plans to give the luxury Boeing 747-8, estimated to be worth $400m (£300m), to the US Department of Defence to be used as part of a fleet of planes dubbed Air Force One – the president's official mode of air travel.

(中略)

After the news broke on Sunday, the backlash was fierce and immediate.

"I think the technical term is 'skeezy'," deadpanned conservative Daily Wire commentator Ben Shapiro on his podcast.
(Mike Wendling. Trump's critics and supporters unite against Qatar plane deal. BBC News. May 15, 2025.)


今回の件はトランプ氏の身内からも疑問視する声が少なくないと報じられていますが、保守派のひとりはこの件を、


skeezy


と表現したとあります。

"skeezy"とは見慣れない単語ですが、


汚らしくて[みすぼらしくて]嫌な
(ランダムハウス英和辞書)


という意味だそうです。

ちょっと変わったスペルだと思いますが、1950〜1970年代の俗語のようです。

忌み嫌うという意味のイタリア語schifareから来ているとされます。

また、辞書の定義には、同義語に"sleazy"という単語も見えます。


2025年5月16日金曜日

pass up

中東を歴訪問中のトランプ大統領。カタールがボーイング社の航空機を大量購入する合意に漕ぎつけ、「ディール」全開の模様です。

一方、カタール側はトランプ氏に対し、4億ドルもするジャンボジェット機を贈与すると表明、これが物議を醸しています。

「空飛ぶ宮殿」と言われるジャンボジェット機は大統領専用機にする意向だそうですが、大統領任期終了後にはトランプ氏の資産になるそうです。


By now, you’ve probably heard about the big headline out of Donald Trump’s trip to the Middle East: The $400 million luxury plane he’s set to receive as a gift from the nation of Qatar. Trump says he wants the plane to become the new Air Force One, but only for the duration of his presidency, after which ownership of the plane would be transferred to Trump’s presidential library.

The whole thing is super shady, and even a lot of conservatives don’t want the president to accept this plane. But Trump says it’s just too good a deal to pass up. In a post on Truth Social, Trump called the new plane a “GIFT, FREE OF CHARGE,” which is definitely not true.
(Jen Psaki. The $400M jet is the tip of the iceberg. Gulf property deals could make Trump millions. MSNBC. May 16, 2025.)


この高額な贈り物に関しては、そもそも贈賄に当たらないのかという法的問題を始め、利益相反、また大統領専用機にしても大丈夫なのか、盗聴による情報漏洩のリスクがあるのでは、など様々な問題が指摘されています。

トランプ氏自身はこの高価な贈り物を受け取る意向のようで、タダでくれると言っているものを断るのはバカだけだ、などと発言しているようです。

引用記事では、


it’s just too good a deal to pass up


と出てきます。

ここで使われている、"pass up"という動詞句は、


(申し出などを)断る、(機会、チャンスを)みすみす逃す


という意味で用いられます。

引用したのはMSNBCのオピニオン記事ですが、バイデン前政権でホワイトハウス報道官であったJen Psaki氏によるものです。

タダほど高いものは無いと言います。カタールから贈られる航空機は大統領専用機にするのに整備やらセキュリティ対策やらで仕様変更に大変なお金をかけなくてはならず、それは結局アメリカ国民の税金で賄われると指摘しています。

今回の「高価なギフト」を巡っては、民主党のみならず、内輪の共和党関係者からも受け取るべきではないとの懸念が表明されています。


2025年5月15日木曜日

toupee

今日の1語、"toupee"というのはカツラのことです。

カツラというと"wig"という単語がまず思い浮かびますが、"toupee"は男性用のカツラを指すと辞書にあります。

少し前のニュースになりますが、カツラに違法薬物のコカインを隠して渡航しようとした男が逮捕されたという記事から引用です。


A Colombian man was arrested for attempting to smuggle cocaine worth thousands under his toupee, officials announced on Monday.

The suspect was caught before taking a flight to Amsterdam from Cartagena's Rafael Nunez International Airport, according to Reuters and Sky News.
(Taylor Ardrey. Man busted in airport smuggling cocaine under toupee: Watch video of hairy situation. USA Today. February 25, 2025.)


"toupee"という単語はそのスペルからフランス語のように見えますが、その通り、フランス語toupetから来ているそうで、toupetとは髪の毛の房、前髪を指します。

このことからも、"toupee"は頭全体に被るような大きなカツラというよりも、髪の毛が薄くなった一部を覆う、部分的なものを指すようです。

頭頂部(top)の髪の足りない部分を覆うものであり、添え髪とか入れ髪などと呼ばれるそうですが、要は薄くなった箇所、禿を隠すものです。

"top"という単語はゲルマン語系ですが、ドイツ語でおさげの髪を意味するZopfという単語と同語源とされます。


2025年5月14日水曜日

omnishambles

今日の1語、"omnishambles"は辞書には載っていない単語のようです。

以前、"shambles"という単語を取り上げました。「メチャクチャ」、という意味です。

"omnishambles"はomni-という接頭辞がついていますが、ラテン語で全て、あらゆるという意味の形容詞omnisから来ていますので、「あらゆる点でムチャクチャ」という状況を表現したものということになります。


This weekend, there was a new whiplash as U.S. negotiators announced that they would scale back tariffs to around 30%. In response, China reduced its tariffs on U.S. goods to 10%. Even though the details of the negotiation are still trickling out, the White House is already trumpeting the “Art of the Deal.”

While the U.S. did avoid a major economic calamity, this is not a deal. The U.S. blinked. Welcome to the tariff "omnishambles."
(Abraham Newman. The U.S.-China ‘deal’ is no deal. The U.S. just blinked. MSNBC. May 13, 2025.)


米中が関税の引き下げで合意しましたが、「ディール」だとか何だとか言ったところで、結局のところアメリカの負けだという見方がされているようです。また最悪の事態は避けられたものの、トランプ関税は経済を混乱に陥れているとの見方も支配的であり、関係者にしてみれば"omnishambles"ということになるようです。

この"omnishambles"という表現は英国BBCの政治風刺ドラマで使われたのをきっかけに広く使われることになったそうで、その後、オックスフォード辞書のWord of the Yearにも選出されたとか。


"Omnishambles" has been named word of the year by the Oxford English Dictionary.

The word - meaning a situation which is shambolic from every possible angle - was coined in 2009 by the writers of BBC political satire The Thick of It.
(Omnishambles named word of the year by Oxford English Dictionary. BBC News. November 13, 2012.)


2025年5月13日火曜日

Teflon Don

今日の朝刊、1面のトップ記事は「米中 関税115%引き下げ」でした。(産経新聞)

トランプ大統領が中国に対し追加関税を次々と発動、最終的に145%という関税率に達し、対する中国側も米国に報復関税を課すなど泥沼のような状況となっていましたが、ジュネーブで行われた米中両政府の会談で関税の115%引き下げを合意したというものです。

90日間の暫定措置とは言うものの、最悪の景気後退を免れて関係者と市場は一抹の安堵に包まれたと報じられています。


President Donald Trump’s deal to dramatically slash tariffs on China thrilled markets and offered a sliver of relief for businesses across the country. It also revealed an important lesson: Even Teflon Don can’t outrun economic reality.

The deal brokered in Geneva, in which both sides agreed to lower tariff rates by triple-digit percentages, came as anxiety mounted about a potential downturn in the U.S.
(Trump and China call off the divorce. Politico. May 11, 2025.)


上記はポリティコ紙より引用しました。多くの関係者が感じているであろうことですが、


Even Teflon Don can’t outrun economic reality.


という思いです。

"Teflon Don"のDonはトランプ氏のファーストネーム「Donald」を指しているのは明らかです。

そして、"Teflon"は、これもご存知のようにフライパンなどに使われる表面加工の「テフロン」であり、これは商標です。

この"Teflon Don"という表現は実のところ、かつてアメリカ国内で暗躍したマフィアのボス、John Gottiを指したものだったそうです。数々の犯罪を首謀した罪で起訴されたものの、裁判官や陪審を買収したり脅すなどして有罪を免れたといいます。

また、Merriam-Webster Dictionary(オンライン)によりますと、レーガン元大統領(Donald Reagan)も"Teflon Don"と呼ばれたそうですが、政権に対する様々な批判も功を奏さず、全く受け付けない大統領の姿勢を揶揄してついたあだ名だそうです。

トランプ大統領も批判は枚挙に暇がありませんし、訴追もされていますが、それらは全く本人の言動に影響するところがありません。

故に"Teflon Don"呼ばわりされる訳ですが、そのトランプ氏をもってしても、米中貿易摩擦がもたらす米国経済への悪影響をはね飛ばすことは出来なかった、ということですね。

「テフロン」のあだ名が付いた政治家はアメリカの大統領ばかりではありません。16年前のことになりますが、日本のあの首相も"Teflon PM"と呼ばれました。


2025年5月12日月曜日

crop

乗馬のことはあまり詳しくありませんが、馬を駆るために使用する鞭にはその使用回数のルールがあるそうです。下に引用する記事が目に留まりました。


The jockey who won the Kentucky Derby has been fined and suspended for using the riding crop too much during the race.

Jockey Junior Alvarado struck Sovereignty, the three-year-old colt that won the crown, eight times during the race, officials say.

Regulations say a rider may strike a horse a maximum of six times with a crop.
(Robin Levinson King. Kentucky Derby-winning jockey banned for use of crop. BBC News. May 11, 2025.)


記事によれば、ケンタッキーダービーで優勝した騎手が、最大6回という鞭の使用回数を超えて馬を鞭打ったということで、騎乗停止と罰金を課されたということです。

さて、記事のタイトル、本文で、


a crop
a riding crop


と出てくるのですが、"crop"に乗馬の鞭の意味があるとは知りませんでした。

"crop"と聞くと農作物の意味がまずは思い浮かびますし、動詞であれば(農作物を)収穫する、刈り取る、という意味が出てきます。

乗馬に使う短い鞭という意味は"crop"のエントリの最後の方に出て来ますので、農作物の"crop"と語源を同じくする単語ということになります。

ゲルマン語系であり、やはり農作物を意味する古高地ドイツ語Kropfから来ているとされますが、根から生じる実や穂、つまり作物を指すのが原義です。

鞭は英語で"whip"とも言いますが、鞭の先についた紐の部分(lash)が無い、柄の部分(stick)を"crop"と言ったもののようです。(Online Etymology Dictionary)乗馬用の鞭はこの柄の先端には、紐(lash)の代わりに輪っかの形状のものが付いています。

以前取り上げた"crop up"もご覧下さい。


2025年5月9日金曜日

roll in the hay

恐縮ながら、本日も成人向けの内容となります。

記事の引用をどうぞ。


A new study revealed the socially acceptable number of sexual partners for each gender — and it might surprise you.

According to the study, featured in “Social Psychological and Personality Science,” the magic number for guys is 4-5 lifetime partners — with 2-3 of them being casual hookups.

The study also revealed that a first roll in the hay for men often happens between the ages of 18 and 20.

For women, the magic number shrinks to 2-3 partners — with only 1-2 casual flings. Their first romp often happens between 16 and 18, originally reported by Vice.
(Marissa Matozzo. What’s the ‘ideal’ number of sexual partners? Study reveals the sweet spot — and it’s not what you think. New York Post. May 8, 2025.)


アメリカ人というのは性に対しては奔放でしょうか。少なくとも日本人よりは、とは思いますが・・・。

しかし、


first roll in the hay for men often happens between the ages of 18 and 20


というくだりに関して言えば、最近の日本の若い人はもっと早くに初体験を迎えると聞きますので、アメリカと言えど、意外と保守的(?!)なのかな、と思います。

説明が前後してしまいましたが、


roll in the hay


というのは、アメリカ英語の俗語表現で、性行為(セックス)を意味するものです。

"hay"は干し草のことです。以前取り上げましたが、"hit the hay"は「寝る」という意味になります。


2025年5月8日木曜日

Alcatraz

トランプ大統領がアルカトラズ刑務所を復活再開させて凶悪犯罪者は全てそこに収容すると発言し、物議を醸しています。

アルカトラズ刑務所は米国西部、カリフォルニア州の沖合に浮かぶ島で、かつて大物マフィアや凶悪犯罪者が収容された刑務所として、その名はアメリカ国外でも有名です。

離れ小島であり、周囲の海流は速く、脱走は極めて困難とされます。この刑務所を舞台にした脱走劇が映画にもなりました。

このアルカトラズ刑務所の地名"Alcatraz"に関しては、スペイン語(また、ポルトガル語)で鳥のペリカンを意味するalcatrazから来ているのだそうです。

英和辞典にも語源解説にありますが、スペインの航海者がこの島を見つけて、


Isla de Alcatraces
(Island of Pelicans)


と名付けたということです。実際のところ、アルカトラズ島には多くのペリカンが生息していたそうです。


"English (language) got the term alcatraz from Spanish and/or Portuguese," says Jess Zafarris, the author of word etymology books including Words from Hell and the upcoming Useless Etymology. The word means pelican or diving bird and is thought to have been introduced from Arabic sometime after the Moors conquered the Iberian peninsula in 711 C.E., she says.

(中略)

"There is a cool folk etymology twist, a linguistic swoop, you might say, in English that is pertinent to this discussion," Zafarris says. When English mariners in the 1600s adopted the Spanish word alcatraz, they believed it to be influenced by the Latin albus, meaning whiteness — thus the word for the white seabird, the albatross, she says.
(Scott Neuman. Trump wants to reopen Alcatraz. Here's a look at how it got its name. NPR. May 7, 2025.)


上記の引用記事ではさらに、"alcatraz"(ペリカン)は"albatross"(アホウドリ)と混同されたという逸話に触れています。この逸話もランダムハウス英和辞典に見ることができるのですが、"albatross"は"alcatruz"が変化したものだという説があるようです。アホウドリ("albatross")は体毛が白いですが、"alcatraz"のalca-という部分が、ラテン語で白を意味するalbusに間違って解釈された、いわゆる異分析に基づくもののようです。

実際にはペリカン(alcatruz)とアホウドリ(albatross)は全く別の鳥です。

以前、"albatross"という単語について取り上げたことがありますが、有名な詩の中で、"albatross"を殺めたためにその後の航海で嵐や様々な苦難を強いられたという船乗りの話があります。この詩作に因み、"albtross"は付き纏う苦痛や悩みの種という意味で用いられます。

アルカトラズ刑務所もある意味、刑務所としては水道や電気などのインフラを欠く、大変にお金のかかる、困った施設であったということで、閉鎖され、今は観光地として残っているものです。

"albatross"と"alcatruz"が語源的にも切っても切れないように、アルカトラズ刑務所はアメリカ(とりわけ加州)にとっては"albatross"みたいなものだった、というオチでした。


2025年5月7日水曜日

boudoir

全米で変態度ナンバーワンの州(kinkiest US states) -- というタイトルにつられてアクセスした記事から引用です。

一応18禁(成人向け)ということで・・・。


Those looking to spice up their sex life should move to Nevada, which was recently ranked the kinkiest state in the USA, according to a salacious new study by SmutFinder.

The site, which uses artificial intelligence to create custom erotic stories, compiled “kink scores” based on five key metrics to look at the steamiest states in the Union.

New York ranked 13th when it comes to getting freaky while our neighbors across the Hudson in New Jersey clocked in as the most boring in the boudoir.
(Ben Cost. Kinkiest US states revealed: Is yours steamy — or just plain dull? New York Post. May 6, 2025.)


ナンバーワンに輝いた(?!)のはネバダ州だそうです。Sin City(悪徳の町)の別称を持つラスベガスを抱える州として納得といったところでしょうか。

変態度をどうやって決めるのかの解説は記事にありますが、ストリップクラブやアダルト関連ショップの数など、統計に基づいてスコアを算出しているようです。

因みにニューヨークはランク13位で、最下位はニュージャージー州だとか。

ところで、記事に出てくる"boudoir"という単語を取り上げたいと思います。

"boudoir"を辞書で引くと、


婦人の私室、寝室、閨房


とあります。

ここでは男女間の秘め事が展開される場所のメタファーとして使われている訳ですが、この"boudoir"という単語はフランス語から輸入されたものだそうです。

そして、フランス語の動詞bouderは機嫌を悪くする、拗ねる、という意味らしく、"boudoir"というのは機嫌を損ねた御婦人が入る部屋というのが原義だそうです。

フランス語の"boudoir"は婦人が化粧したり身なりを整えたりするためのプライベートルーム、というくらいの意味のようですが、寝室という意味合い、さらには引用した記事のように、性的な内容に絡めて使うのは英語に特徴的なもののようです。

2025年5月6日火曜日

dad power

野球の試合で、観客がホームランボールやファウルボールをキャッチするというのを聞くことがありますね。

以下引用する記事では、ニューヨーク・ヤンキース対タンパベイ・レイズの試合でファウルボールをファンがキャッチした話が取り上げられています。


As the Yankees played the Rays at home, a Bronx Bombers fan had his glove ready as a foul ball was on its way. But his daughter, who was sitting on his shoulders, ended up making the catch extra challenging.

As the foul ball came closer, the smiling daughter covered her dad’s eyes with her hands.

Still, he was able to make the grab with his glove, pulling it into his chest to secure the ball and raising his hands in triumph.

“That’s dad power right there,” Yankees broadcaster Jeff Nelson said as the highlight played on YES Network.
(Bridget Reilly. Dad makes wild catch on foul ball while daughter covers his eyes at Yankees game. New York Post. May 4, 2025.)


フ観客席に飛んで来たボールを首尾良くキャッチするというのは、たまたまキャッチできる位置に座っていたという偶然や運もあるでしょうが、このケースは肩車をしていた子に目隠しされながらもキャッチできたということで話題になっています。

キャッチする気で構えていたとは言え、直前で視界を塞がれてなお、よくそんな上手くキャッチ出来たものだと思います。

中継のアナウンサーは、


That’s dad power right there


と称賛したそうですが、"dad power"という言葉が印象に残りました。

和訳すると「父親パワー」ということになると思いますが、肩車した娘に突然両手で目隠しされながらも首尾良くボールをキャッチしたというところに父親の秘めたるカリスマ性みたいなものを認めているようです。

この"dad power"という表現はまた、


dad strength


とも言われることがあります。


Shohei Ohtani’s “Dad Strength” is finally beginning to kick in as the Los Angeles Dodgers' slugger hit his first home run since the birth of his daughter to jump-start a 15-2 victory over the Miami Marlins on Tuesday night.
(Mike DiGiovanna. Watch: Shohei Ohtani's first home run since the birth of his daughter jump-starts Dodgers' 15-2 win. NBC Los Angeles. April 30, 2025.)


引用記事は先月女児が誕生し、「パパ」となった大谷翔平選手がホームランを打ったニュースからです。

邦紙などでは「パパ1号」などと報じられていますが、ここでも「父親パワー」がもてはやされています。

父親という責任のある役割、立場になることで発揮される"dad power"、"dad strength"というのは若さ、また本人の自覚というのもあるでしょうが、この表現は周りの期待や新米パパに対する応援みたいなものも滲んでいるように感じられます。

いかにもアメリカ人が好きそうな表現ではないでしょうか。

2025年5月5日月曜日

spurn

トランプ大統領が合衆国憲法では認められていない、異例の大統領任期3期目を画策しているという報道があったのは4月のことでしたが、先日行われたNBCニュースのインタビューではその目論見をあっさり否定したというニュースです。


President Trump threw cold water on the notion of seeking a third term in 2028 — an idea that has gained currency in some MAGA circles despite being unconstitutional.

"This is not something I'm looking to do. I'm looking to have four great years and turn it over to somebody, ideally a great Republican, a great Republican to carry it forward," Trump told NBC News' Kristen Welker in a "Meet the Press" interview airing Sunday morning.
(Alex Isenstadt. Trump spurns third-term talk: "Not something I'm looking to do". Axios. May 4, 2025.)


発言がコロコロ変わるトランプ氏だけに、どういういきさつや背景があるのか気にかかるところですが、インタビュー中の発言では、2期を満了後は次の大統領に引き継ぐとの明確な発言があったようです。

さて、本日の1語ですが、記事のタイトルで、


Trump spurns third-term talk


とある部分、"spurn"という単語です。

拒絶する、という意味の動詞で、"reject"や"refuse"と同義だとありますが、


To spurn is to reject scornfully or contemptuously
(American Heritage Dictionary)


とあり、"spurn"には拒絶の意思や背景にその対象への蔑みや嫌悪が滲んでいるというものです。

"spurn"は古英語spurnanに遡るそうですが、そのspurnanには蹴飛ばす(kick away)という意味があったそうです。また、さらに遡るとラテン語の動詞spurnoにも由来しますが、この語にも踏み付けるという意味があります。

"spurn"というスペルを見て、"spur"(拍車、駆り立てる)との類似に気が付きますが、実際2つの単語は同語源であり、足首、くるぶしを意味する印欧祖語sperr-に遡ることが出来るそうです。



2025年5月2日金曜日

catachresis

言葉の誤用をテーマにお届けしてきた今週ですが、最終日の今日取り上げるのは、


catachresis


です。

ギリシャ語で「誤用」(misuse)を意味するのですが、カタい(!?)語感がする単語です。文法用語でもあり、英和辞書には濫喩という訳語が見えます。(cata-は〜に反してという意味の接頭辞、-chresisは"use"の意味です。)

この"catachresis"は言葉の誤用を幅広く捉えたものであり、今週取り上げた"malapropism"も含む概念です。

また、"catachresis"は本来的な語の意味や用法から外れた使用を指す概念であるということでは、誤った形容詞や修飾語の使用、いわゆる形容矛盾(以前取り上げた例のひとつとして、conspicuous absence)も含むようです。

また、研究社大英和新辞典の説明では、


(語源的)混用、俗綴法(語源の誤解に基づく綴り字の語を用いること)


も"catachresis"の一種とされ、これはいわゆる民間語源(folk etymology )のことです。以前取り上げた例としては、"avocado"や"cockroach"などがあります。


2025年5月1日木曜日

spoonerism

言葉の誤用、4日目にお送りするのは、


spoonerism


ですが、カタカナの「スプーナリズム」という言葉を耳にしたことがあるという方もあるかと思います。("mondegreen"や"malapropism"よりはメジャーかと。)

"spoonerism"も言い間違いを取り上げた言葉です。具体的には特定の語の発音を間違えるというところに特徴があります。

当ブログで音位転換という現象による単語を取り上げてきましたが、"spoonerism"と音位転換はよく似ています。

ただ、"spoonerism"の特徴は1単語の発音を誤るというよりも連続する2語以上の語において、頭音が入れ替わってしまうというところにあります。

研究社大英和新辞典に載っている例として、


well-oiled bicycle


を、


well-boiled icicle


と言い間違えるというものがあります。このような言い間違いも"malapropism"と同様、滑稽な効果を生み出すものです。

"spoonerism"という単語もやはり人の名前から来ており、この類の言い間違いをすることで有名だった(?)オックスフォード大学New College学長であったWilliams Spooner氏に由来します。

言い間違いというのは誰しも経験があるのではないでしょうか?特に人前で喋る時、早口になってしまい、"spoonerism"のような言い間違いをしてしまうということはよくあることです。

こちらも具体例はネットやAIに譲りますが、"spoonerism"の類で私が思い出すのは幼児、子供が間違う発音です。

愚息が幼い頃、「タカシマヤ」を「タカシヤマ」と言ったりしていたのを思い出し笑ってしまいます。

"spoonerism"は言語学の専門用語としては、"mataphasis"というそうです。