最近30日間のアクセス数トップ3記事

2025年4月4日金曜日

measure twice, cut once

今日取り上げる表現、


measure twice, cut once


ですが、英和辞書には載っていないのではないでしょうか?知らないと分からない類いの表現かも知れません。

字句通りには、「2回測って、1回(で)切る」となります。ここで「2回」測るとはものの例えであって、3回かも知れませんし、4回ということもあるかも知れません。要は「切る」(カットする)前に、きちんと測定する、ということであり、慎重に事を行う、念入りに準備等した上で実行する、という意味です。(切ってしまった後で修正はききませんからね。)

それでは用例として記事の引用をどうぞ。


Podcast megastar Joe Rogan spoke out against President DonaldTrump’s mass deportation.

(中略)

“There’s still people coming through, and there’s probably still people coming through that are criminals... But the thing is that you gotta get scared that people who are not criminal are getting, like, lassoed up and deported and sent to like El Salvador prisons,” Rogan said, mentioning an instance where someone got deported without evidence that he had a criminal background.

(中略)

“This is the thing, you know, measure twice, cut once,” Rogan said. “Let’s not... innocent gay hairdressers get lumped up with the gangs. Like, how long before that guy can get out?”
(Kinsey Crowley. 'Measure twice, cut once:' Joe Rogan voices concern over mass deportations to El Salvador. USA TODAY. February 2, 2025.)


トランプ大統領の公約に不法移民の強制送還がありますが、敵性外国人法(Alien Enemies Act)という、1798年に制定され、先の第二次世界大戦で敵対国の在留外国人を強制退去させた法律を発動させ、南米ベネズエラのギャングをエルサルバドルの刑務所送りにしています。

この中にはギャングでも何でもない、一般のベネズエラ人が含まれていたといい、批判が高まっているようです。(当局も誤りを認めているとのことです。)

人の人生を左右するような決定に誤りがあってはならないものですが、こんなことが起きてしまったのは行政の不作為では済まされないと憤るのもむべなるかな。

"measure twice, cut once"という表現は先日の投稿での引用記事にも出てきました。


"They may characterize it as shooting from the hip, but it is anything but that," Musk said, noting the agency's approach to cuts is to "measure twice, if not thrice and cut once."


上記はDOGE(政府効率化省)の歳出削減案はいい加減な、衝動的な取り組みではない、と釈明しているマスク氏の発言中です。

削減(cut)の対象は、(思い付きや衝動で決めているのではなく)"measure twice, if not thrice and cut once"、つまりよくよく考えて、検討しているのだ、と。


2025年4月3日木曜日

gloat

米ウイスコンシン州の最高裁判事の選挙が行われ、トランプ政権が支持する保守派候補者がリベラル派の候補に敗れたと報じられています。

トランプ政権にとっては手痛い敗北となり、野党民主党は一矢報いた、というところでしょうか。

この選挙ではトランプ政権下で政府効率化省(DOGE)のブレーンでもあるマスク氏が選挙資金を注ぎ込むなどして保守派候補に肩入れしていたこともあり、マスク氏の敗北でもあると言われています。


Democrats were tasting unfamiliar triumphalism on Wednesday after the election for a vacant Wisconsin supreme court seat turned into an emphatic repudiation of Elon Musk, Donald Trump’s richest supporter and key ally.

Musk endured a wave of gloating on Twitter/X, his own social media platform, after Brad Schimel, a Trump-endorsed judge that he spent $25m supporting lost by 10 percentage points to Susan Crawford, whose victory sustained a 4-3 liberal majority on the court.
(Robert Tait. ‘Loser’: Musk endures wave of gloating on X after liberal judge wins Wisconsin race. The Guardian. April 2, 2025.)


ここ数ヶ月報道されているように、選挙で選ばれた訳でもないマスク氏が政府の歳出削減の大ナタを振るうことに対して批判が高まっていました。

ウイスコンシン州最高裁判事の選挙は、ある意味マスク氏に対する国民投票のような側面があったとされています。

結果、マスク氏が支持する候補は敗れた訳ですが、これはトランプ政権を、またマスク氏のDOGEにおける活動を支持しないという意思表示とも捉えられるということになります。

記事で、


Musk endured a wave of gloating on Twitter/X


とある部分ですが、ここで使われている"gloat"という単語を知りませんでした。

Merriam-Webster Dictionaryでは、


to observe or think about something with triumphant and often malicious satisfaction, gratification, or delight
gloat over an enemy's misfortune


定義されています。物事を満足そうに眺める、ということですが、ここでポイントなのは"often malicious satisfaction"(しばしば悪意を持って)という部分です。

例文にも見られるように、人の不幸を嘲笑うごとく、意地悪さが含まれる感情を指します。

マスク氏の活躍を忌々しく思っている人たちが今回の選挙戦の敗北をそれみたことかとほくそ笑んでいるといったところでしょうか。

2025年4月2日水曜日

エイプリルフールとfish

時間が経つのは早いもので、もう4月です。

昨日4月1日、東京は冷たい雨が降りましたが、ニュースは新社会人の入社式や入学式の話題でしたね。

もう一つ、4月1日はエイプリル・フールでもあります。昨日はそんなこと気にもとめなかったのですが、どこやらの企業がSNSでつまらない投稿をしたために炎上しているというような話を翌日のニュースで見て思い出したような次第です。

エイプリル・フールの起源は諸説あるらしいのですが、数百年前に遡るとも言われるそうです。

ところで、海外ではエイプリル・フールと魚(fish)がセットにされるようなのですが、これはどうしてでしょうか?


The jokesters’ custom has been around for hundreds of years, although its exact birth is difficult to pinpoint. These days, depending on your location, it could be marked with a fish secretly pinned to someone’s back or a whoopee cushion or even news reports of flying penguins (yes, that actually happened ).

(中略)

In France, the day is known as poisson d’avril, or “April Fish,” and has long had a fish-themed pranking tradition. In modern times, it’s become more of a day for children to relish in attaching paper fish to their friends’ backs, Atlas Obscura says.
(How April Fools’ Day is celebrated around the world. New York Post. April 1, 2025.)


英語の"fish"には、


騙されやすい人、まぬけ、カモ


という口語の意味があります。

引用した記事で、フランスにおいてエイプリル・フールは"poisson d’avril"と呼ばれ、魚(fish)を描いた紙を人の背中に張り付けるいたずらをするのが慣例になっているとあります。(ちなみにイタリアにおいても、"pesce d’Aprile"という表現があるそうです。)

興味深いことに、キリスト教文化における四旬節(Lent)には魚を贈る習慣があるところ、偽物の魚を贈るいたずらが流行り、これが四旬節の終わりに当たる4月1日と魚を結びつけることになったという記事を見かけました。

このような背景が、騙されやすい人を意味する英単語の"fish"と関連しているのかは資料等無く、判然としません。


2025年4月1日火曜日

end run

ここ数日、トランプ大統領が3期目を画策しているという報道を目にします。

ご存知の通り、トランプ氏は昨年の大統領選でバイデン氏に勝利しました。今年1月からの任期は2期目であり、任期は2029年1月までとなりますが、もう3期目の野望とは気が早いというか・・・。


President Trump has once again floated the idea of testing the Constitution's presidential term limits by seeking a third term, as his administration continues to challenge constitutional provisions and push an expansive view of executive power.
(Hansi Lo Wang. Presidents can be elected twice. Trump could try end runs around that, experts say. NPR. March 31, 2025.)


実のところ、アメリカ合衆国大統領の任期は2期までというルールがあるそうで(合衆国憲法修正第22条)、このルールの下ではトランプ氏の3期目というのは無いことになります。

唯一の例外がルーズベルト大統領で、1933年〜1945年に渡り4期に渡り大統領職にありました。(ルーズベルト大統領は1945年、4期目就任の数ヶ月後に病没。)

その後、1947年に大統領任期を2期までに制限するルールが出来たということです。

従って、トランプ氏が3期目も大統領を務めるためには、ルールを変えるか何かしない限り無理な訳ですが、記事は以下のように続きます。


Changing presidential term limits with a new constitutional amendment would need support from three-fourths of the states.

But some legal experts point to plausible strategies for attempting end runs around the 22nd Amendment under unusual scenarios.
(ibid.)


ルール変更となると憲法改正となり、これには米国の全州の3/4以上の同意が必要となるということで、かなりハードルが高そうです。

そこで考えられるのが、ルール回避という手段なのですが、


attempting end runs around the 22nd Amendment under unusual scenarios


とありますね。

ここで"end run"とは、アメフトのプレー用語エンドランのことで、


ボールを持った選手が防御陣のエンドを回避して駆け抜けるプレー
(ランダムハウス英和辞書)


を言うそうです。

アメフトのことをほとんど知らない私でも、ボールを脇に抱えて疾走し、敵をかわしてトライを決めるプレーのイメージが浮かびます。

そして、"end run"は口語表現として、巧みな身のかわし、回避策という意味合いで使われると辞書にあります。

トランプ氏の3期目の可能性に関しては、様々なトリックが想定されており、例えば2029年1月に大統領任期が切れた後、一旦副大統領に就任して、その後大統領の辞任に伴い、副大統領から大統領に就任するなどのシナリオが挙げられています。

Merriam-Webster Dictionaryでは、


an evasive trick or maneuver


と定義されています。日本語で、姑息な手段、という表現がありますが、近いものがあるかと。


2025年3月31日月曜日

stall

英単語の動詞"stall"には、立往生させる、動けなくする、という意味があります。

クルマを運転する方は、「エンジンストール」と言えば、エンジンが不具合を起こして停止し、クルマが動けなくなることであると理解していると思いますが、この「ストール」がそうです。止める、止まる、という意味です。

"stall"という単語についてそういう程度の理解だったのですが、以下に引用する記事を読み、多少の違和感を覚えました。皆さんはいかがでしょうか?


President Trump said he is “very angry” and “pissed off” at remarks Russian President Vladimir Putin made Friday about Ukraine President Volodymyr Zelensky, suggesting he is not a legitimate leader.

The president threatened to slap a new tariff on Russia if it is at fault for stalling an end “to bloodshed.”

(中略)

The Russian president said Friday that his Ukrainian counterpart does not have the legitimacy required for a peace deal signature and suggested an interim government is needed, The Associated Press reported. Ukraine’s 2024 presidential elections were postponed due to martial law amid the war with Russia.
(Tara Suter. Trump ‘very angry’ at Putin’s remarks on Zelensky. The Hill. March 30, 2025.)


違和感を覚えたのは、中段に出てくる、


if it is at fault for stalling an end “to bloodshed.”


という部分です。

ここで"it"が指すのはロシアです。ウクライナとロシアの停戦を仲介するトランプ大統領が、停戦にあたって何かと難癖をつけて合意しようとしないロシアに対し怒り心頭、という話ですが、停戦(an end “to bloodshed.”)を"stall"という文に引っかかったのです。「停戦」も"stall"も、どちらも「止める」ということで頭がバグってしまったのかも(!?)

ここで記事の言わんとするところは、停戦「交渉」を停止させるような、あるいは立往生("stall")させるようなロシア側の態度、その愚(過ち)、ということだと思われます。

"stall"とは馬や家畜を一頭ずつ入れる囲いの一区画を指すのが原義のようです。動かないように留め置くということから、止める、止まる、また立往生する(させる)という意味合いになったのだろうと思われます。去勢していない種馬のことを"stallion"と言いますが、この"stall"と関連があります。

エンジンのストールや航空機の失速という"stall"の意味の拡張は当然エンジンや航空機が発明された以降のことですが、どういう背景なのか、説明は見当たりません。