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2023年6月30日金曜日

MOT

昨日は定期健康診断でした。予約が混み合っているということで正午過ぎからの検査スタートでしたが、前日の夕食以降絶食となり、さすがに空腹を覚えました。

アラフィフともなると色んなところで数値が悪くなってきます。

ということで、健康診断(health check)の話題から引用です。


A DIY health check for the middle-aged to carry out in their own home is set to be rolled out from next spring.

Fifteen million adults aged 40 to 74 across England will be eligible for the NHS's new digital MOT. 

Patients will be invited to complete a health assessment on their phone or laptop, providing answers to questions about their weight, height, diet, alcohol intake and exercise. 
(Emily Craig. 'Midlife MOT' DIY test kits to be sent to all over-40s under huge shake-up of NHS scheme. Daily Mail. June 29, 2023.)


記事の中で、


MOT


という略語が出てきます。"midlife MOT"とありますが、話題から健康診断のことを言っているのだろうとは想像がつきますが、何の略なのか分かりません。

記事中、MOTが多数出てきますが、どこにもそれを説明したものが無いのです。

同様の話題の記事を検索してみますが、MOTは敢えて説明を必要としない、当たり前の用語なのか、その展開形を併記しているものは少ないようです。

ところで、色々な記事を見ていると、健康診断をクルマの車検に例えたものがちらほら。(車検を健康診断に例えるのが普通で、逆じゃないの!?という声がありそうですが。)

実のところ私も昨日の健康診断でそう思った(車検を思い出した)ものです。ちょうど自家用車が古くなって、色々不調が出てきていることもあって、車検も健康診断も同じだよなぁ、と。

英和辞書には、MOTは、


Ministry of Transportation


つまり運輸当局の略であり、MOT testとは車検のことを指す、とあります。

健康診断を指すMOTは、車検を意味する"MOT test"からきたものであると説明するサイトがありました。(ということは、健康診断を車検に例えるのはあながち逆ではなかった!?ということに・・・)

その一方で、MOTを、


Measurements, Observations, Testing


の頭文字をとったもの、と説明するサイトもいくつか見られます。

どうでも良いような気もしますが、どちらが正しいのでしょうか!?

昨日のMOTの結果が気になります。また再検査になるんだろうなぁ・・・。


2023年6月29日木曜日

braggadocious

富豪と結婚したという女性が、1日にウン百万を平気で消費するというSNSの投稿で話題です。


In a new TikTok titled “How Much I Spent in a Day as a Millionaire’s Wife,” the bragadocious (sic) beauty shared her spending habits, horrifying viewers with the extravagance of her purchases.

The average American spends about $164 per day according to the Bureau of Labor Statistics, but Andrade put those suckers to shame in her viral video, shelling out a staggering $16,000 across a single 24-hour period.
(Andrew Court. I’m married to a millionaire — here’s how I spend $16K a day. New York Post. June 28, 2023.)


金持ちになりたいかと問われれば、そりゃそうだと答える人がほとんどでしょうが、それは自慢したいがためでしょうか。


braggadocious


という単語を初めて見ましたが、そのスペルから、自慢(brag)と関係があるのだろうと想像がつきます。

この"braggadocious"というのは、


braggadocio


という単語の形容詞形です。

そして、"braggadocio"というのは自慢屋、ホラ吹きのことで、16世紀の英詩人Edmund Spenserが作品の登場人物に使ったものだそうです。

自慢するという意味の"brag"から来ていることは言うまでもありません。


2023年6月28日水曜日

dead to rights

機密文書の不正な持ち出し疑惑で訴追されているトランプ元大統領に、新たに不利な証拠が示されました。

トランプ氏自身が機密文書についてコメントしている録音テープの存在が明らかになったというもので、録音の内容からはトランプ氏が文書の機密性を認識しながら、その内容を本来共有するべきでない相手に語っていたことが明るみになっています。


Conservative attorney George Conway suggests a newly released audio recording of Donald Trump is a smoking gun in the Justice Department’s classified documents case against the former president.

“The special counsel already had Trump dead to rights because we knew this tape existed in some form,” Conway told CNN’s Anderson Cooper on Monday. “But to actually hear a former president of the United States committing a felony ― probably multiple felonies ― on audio tape while laughing about it ... I think it’s just stunning.”

CNN on Monday aired audio of Trump claiming after he left the White House that he possessed classified documents about potential attacks on Iran. He also admitted that he had not declassified them before leaving office, undermining his defense that everything he took to Mar-a-Lago was automatically declassified when he removed it from the White House.
(Josephine Harvey. 'Sociopathic Criminal': George Conway Says Tape Is Newest Nail In Trump's Coffin. Huffington Post. June 27, 2023.)


つまりトランプ氏は自身が持ち出した文書が機密文書であることを知った上で不適切な取り扱いをしている認識があったということで、確信犯であったことを示す証拠テープが明らかになったということです。

本文にありますように、まさしく"smoking gun"なのですが、続く部分に、


The special counsel already had Trump dead to rights because…


とあります。

"dead to rights"というフレーズは慣用句で、"bang to rights"とも言います。Collins Cobuild Dictionaryでは以下のように定義されています。


If you have got someone bang to rights, you have got enough evidence against them to accuse them of a crime and to prove that they are guilty. 


つまり、"have someone dead to rights"とは相手を糾弾するのに十分な証拠を押さえた、追い詰めた、という意味合いです。

訴追の行方、大統領選への影響が注目されます。


2023年6月27日火曜日

key

記事の引用からどうぞ。


A Rhode Island Democratic state senator was arrested after allegedly keying a car that had a “Biden Sucks” bumper sticker affixed to it, according to authorities.

State Sen. Joshua Miller, 69, was charged with vandalism/malicious injury to property for allegedly scratching a Nissan Pathfinder next to his pick-up truck at a shopping center parking lot Thursday night, police said.
(David Propper. Rhode Island state Sen. Joshua Miller charged with keying car that displayed ‘Biden Sucks’ bumper sticker. NewYork Post. June 27, 2023.)


タイトル、それから本文に、


keying a car


という部分がありますが、ここでの"key"の意味が最初分かりませんでした。

キー、つまり鍵を意味する"key"に違いありません。続く部分に、


vandalism/malicious injury to property for allegedly scratching a Nissan


とあることから、"keying"とは恐らくクルマのキーでキズをつける行為を意味する動詞なのだろうと想像はつきます。

果たして辞書を引いてみると、その通りの定義がちゃんと載っていますので、ちょっとびっくりです。(研究社の新英和大辞典には載っていませんが。)

ランダムハウス英和ではアメリカ英語の俗語表現とあります。

Online Etymology Dictionaryによれば、初出は1986年頃ということです。


2023年6月26日月曜日

climacteric

ラジオを聞いていましたら、更年期の話題でした。

英語で更年期を何と言うかご存知でしょうか?


Climacteric changes in women are associated with an increased probability of psychological symptoms. Identifying the relationship between adjustment to this period and mental health helps to plan for middle-aged women’s health improvement.
(Relationship between mental health and climacteric adjustment in middle aged women: a confirmatory analysis. BioMed Central. May 6, 2023.)


答えは、


climacteric


です。

女性の閉経を"menopause"といい、更年期とも訳されますが、男性にも等しく訪れる「更年期」を指すのには"climacteric"が用いられます。

スペルから、"climax"(クライマックス)を思い出した方、その通りです。

"climacteric"はラテン語climacter、climax(クライマックス、極点)からきています。このラテン語climaxはギリシャ語klimaxから来ているのですが、ギリシャ語の意味は梯子(はしご)の段のことだそうです。比喩的に、人生における重要なポイント、転換点を意味するようになり、よって、更年期を指すようになったものです。

古代ローマにおいては、7の倍数となる年齢(例えば、49歳、56歳など)はclimacterと呼ばれ、日本で言う厄年と通じる概念であったようです。

2023年6月23日金曜日

obscenely

1912年に沈没したタイタニック号の残骸を見るツアーと称した潜水艇が出発後に連絡が取れなくなり、米、カナダ両国をまたがっての懸命の捜索が行われていましたが、タイタニック号から少し離れた海域で残骸が発見され、乗員1名、乗客4名の5名全員が死亡という最悪の結果となりました。

ここ数日、潜水艇の捜索に関する記事が常にトップニュースに出てきていたので目を通していたのですが、潜水艇を運営する会社のCEOが、潜水艇の安全性について問題がない旨の発言をしていたという記事が印象に残っていました。

数日前の記事ですが、以下引用します。


As a huge search and rescue operation continues for a missing submersible in the Atlantic one thing has become apparent, that the vessel was not as “obscenely safe” as the company’s CEO had promised.

Stockton Rush, founder of Titanic exploration company OceanGate, is one of the five people on board the Titan, which disappeared while heading to the wreckage on Monday.

Titan has allegedly not been approved or certified by any regulatory body and didn’t require its passengers to have any diving experience, despite OceanGate offering the activity on its eight day voyages.
(Rebecca Borg. ‘Obscenely safe’: OceanGate CEO’s chilling interview. News.com.au. June 21, 2023.)


引っかかったのは、


obscenely safe


という表現です。

潜水艇が安全だ、と言っているのは分かるのですが、"obscenely"という修飾語が引っかかります。

"obscene"という単語はご存知のように、猥褻な、とか卑猥な、という意味です。そのような表現が何故、安全(safe)という言葉を修飾するのに使われるのか、意味を掴めずにいました。

潜水艇運営会社のCEOの発言ですので、一般的な用法ではないかもしれません。

他記事でも発言が引用符付きで取り上げられています。


The founder of the company behind the Titan submersible previously described his industry as "obscenely safe" and complained that passenger-vessel regulations held back innovation.
(Mia Jankowicz. The maker of the lost Titan submersible previously complained about strict passenger-vessel regulations, saying the industry was 'obscenely safe'. Insider. June 20, 2023.)


ところで、Merriam-Webster Dictionaryでは、"obscene"の定義に、


so excessive as to be offensive


というものがあり、例として、


obscene wealth
obscene waste


などを挙げています。

これは、猥褻、卑猥、といった"obscene"の意味からは離れて、単に強調のために用いられていると考えられます。

"obscene"が意味する猥雑性といったものは人に嫌悪を催させるものですが、人に嫌気を起こさせるくらいの、という強意表現なのだと思われます。

それにしても、嫌になるくらい、もしくは嫌悪を催すくらいに安全である("obscenely safe")とは、一体どういうことでしょうか?

実のところ、最初に引用した記事と2番目に引用した記事とでは、微妙にコンテクストが異なっており、2番目の"obscenely safe"は、潜水艇に要求される安全性の業界水準についてコメントしているものです。つまり、その水準に対応しなければならない人が嫌気を起こすくらいに(高い安全性の要求基準)、ということと思われます。

こうした"obscenely"の用法、つまり強意表現としての用法がどれくらい定着しているのか、コーパスを検索してみますと、多くの用例がヒットしました。

"obscene"を猥褻という概念だけで捉えていると戸惑う表現とも言えます。



2023年6月22日木曜日

off-script

ブリンケン国務長官が中国を訪問して、習近平主席と会談しました。米中関係が冷え込む中、関係改善を図る目的であったとされます。

ところが、会談が終わって間も無いというのに、バイデン大統領が習主席を「独裁者」(dictator)と言い放ったということで、波紋を呼んでいます。


WASHINGTON -- President Joe Biden’s remarks calling Chinese leader Xi Jinping a “dictator” and China a country with "real economic difficulties” drew fast condemnation from China on Wednesday, cracking open a new rift just after the two countries agreed to tentative steps to stabilize the relationship.

(中略)

The clash of words comes after Secretary of State Antony Blinken concluded a visit to Beijing on Monday that sought to break the ice in a relationship that has hit a historical low. 

(中略)

China's quick response to Biden, a president known for seemingly off-script remarks that venture beyond his administration's policies, raises questions whether his remarks would undo the limited progress that had been made in Blinken's carefully engineered trip or whether the two sides would move on.
(Biden calling China's leader a 'dictator' opens new rift just after Blinken's tensions-easing trip. ABC News. June 21, 2023.)


バイデン氏の発言については、


seemingly off-script remarks


と記事にあります。

"off-script"というのは、台本(script)に無い、あるいは外れた、という意味かと思います。

政治家のスピーチや発言というものは、その内容が批判や揚げ足取りの材料にならないよう、よく考えてなされるもので、特にスピーチなどでは官僚や側近が準備した原稿を読み上げるものですが、"off-script"はそうした原稿が無い状況でなされるということを言わんとしているのだろうと思われます。

記事中、もう一箇所、"off-script"が出てきます。


Despite the administration's diplomatic efforts to soothe relations, analysts point to the Republican political pressure, and note Biden regularly seems to go off-script to criticize Xi.
(ibid.)


他メディアの報道でも"off-script"が使われていまが、一部"unscripted"というものもみられます。

"off-script"でニュース検索してみると、バイデン氏の発言に関する記事が多くヒットします。

バイデン氏はこうした"off-script"な発言をする傾向にあるらしく、そういった意味では、"off-script"というのは予定外の突飛な(発言)という意味合いがあるのかなとも思われます。

以下は、全く別の話題です。


A daring Nebraska high school graduate shocked audiences Sunday when he went off-script from his admin-approved commencement speech that was penned by ChatGPT.
(Brooke Kato. ChatGPT wrote my graduation speech — then I went off-script to blast school. New York Post. May 18, 2023.)


ここでは、"went off-script"であり、"off-script"は副詞的に用いられています。


2023年6月21日水曜日

jack up

昨夕帰宅すると、某電力会社から電気料金値上げを知らせる葉書が届いていました。

電力各社による値上げ申請が政府に認可されたというニュースは聞いていましたが、いよいよその負担がのしかかってくると知ると憂鬱な気分に・・・。

燃料価格の高騰を背景とする電気料金値上げには、海外でも消費者の悲鳴が上がっています。

以下は今朝読んだオーストラリアの記事から。


Aussie’s insane bill shocks as prices almost double

In ten short days, thousands will see an unavoidable expense jacked by up to 83 per cent.

Customers say they have been left in shock after being told that they'll be hit with a massive hike to their electricity rates next month - with some facing increases of up to 83 per cent.
(Emily McPherson. 'It's insane': Aussies share power price shock with some bills to surge by up to 83 per cent. 9News. June 20, 2023.)


記事のタイトルに続くリード部分、


an unavoidable expense jacked by up to 83 per cent


という箇所が印象に残りました。

言うまでもなく、電気は生活に欠かせないインフラであり、値上げされたから使うのを止めるというわけにはいきません。

なんと83%もの値上げ率とはショッキングなことに違いありません。

さて、値上げについて、


jack up


という動詞句の表現が使われていますね。値を吊り上げるという意味でよく使われます。

自動車をボディの下から持ち上げる道具をジャッキ(jack)と言いますが、その"jack"に同じです。

ところで、"jack"は人の名前でもありますが、道具としてのジャッキ、持ち上げるという意味の動詞の"jack"もやはり人の名前から来ているんですねぇ。

英語では"Jack"という名前はごく一般的な人を指す呼称のような位置づけにあって、おそらく日本語での太郎とかに近いものがあるんだと思いますが、こうした概念は"jack-of-all-trades"、"hijack"といった表現にも見て取れるものです。

どちらかと言うと低い身分の人に対する呼称として定着した"Jack"ですが、クルマをリフトアップする道具としての"jack"(ジャッキ)はそうした作業に携る人間を指す呼称から生まれたとされます。(Online Etymology Dictionary)


2023年6月20日火曜日

wacky

銃規制の集会でのバイデン大統領の発言がマスコミに取り沙汰されています。

銃規制の強化を訴えたスピーチの締め括りに、


God save the queen, man.


と発言したものですが、一体何が言いたかったのか、関係者を困惑させているというものです。


The White House had no explanation for President Biden's "God Save the Queen" remarks at the end of a speech on gun control, according to Axios, which spoke to several aides about the president's "wacky phrases."

Olivia Dalton, White House principal deputy press secretary, told reporters after his speech that he "was commenting to someone in the crowd."

Biden's aides are often confused by his "quirky aphorisms," Axios reported. 

The outlet concluded that the president's weird phrases were "Biden being Biden." 
(Hanna Panreck. Biden's White House aides admit they don't know what his odd sayings mean: report. Fox News. June 19, 2023.)


この件は邦紙でも取り上げられています。上記の発言、邦訳では「女王陛下万歳」となりますが、どう考えても奇妙であります。

引用した記事では、


wacky phrases


と言っています。

"wacky"というのは、


風変わりな、とっぴな、おかしな、気違いじみた
(ランダムハウス英和辞典)


という意味で、スペルは微妙に違いますが、"whack"(打つ、叩く)から来ているとされます。

頭を殴られて少しおかしくなったんじゃないの!?というのが、"wacky"ということなんですが、またひとつ、バイデン氏の次期大統領としての資質が疑問視される事例となったような感じです。


2023年6月19日月曜日

mosquito magnet

週末は梅雨の晴れ間とあって気温上昇、夏日となりました。

降雨後の水溜まりから増える蚊の季節でもあります。庭に出る際には蚊取り線香が必要です。

体臭、特に汗は蚊を引きつけると言われます。蚊のターゲットになり易い人とそうでない人がいるそうですが、蚊を寄せ付ける人のことを、


mosquito magnet


と表現するそうです。


Mosquitoes love Kim Zarins. The insects’ preference for Zarins, an English professor at Sacramento State University, is so extreme that her 18-year-old son likes her to come outside with him because she serves as a decoy and “he knows he’ll be safe,” Zarins says.

Now mosquito magnets like Zarins are helping scientists pinpoint what entices these thirsty bloodsuckers. Along the way, there’s new hope for relief.
(Connie Chang. You really are a mosquito magnet. Here’s what you can do about it. National Geographic. June 16, 2023.)


"mosquito magnet"とは面白い言い回しです。マグネット(magnet)は磁石のことで、金属(鉄)を引き寄せるのはご存知の通りです。

英単語の"magnet"には磁石という意味以外に、あるものを引き寄せる(性質を持った)人とかモノ、場所、という意味もあるのでした。

つまり、"mosquito magnet"とは蚊を寄せ付ける人、言い換えると蚊に狙われ易い人、ということになります。

こういった"magnet"の用法はごく一般的なもののようで、コーパスで検索してみたところ、sの用例は枚挙に暇がありません。


Like Colorado, the Sunshine State is a tourist magnet
(Minneapolis Star Tribune, 2018)

Frank was a people magnet (especially female people)…
(Southwest Review, 2009)

The EC is a financial and political magnet for the entire continent, especially the new democracies of Central and Eastern Europe.
(Christian Science Monitor, 1992)

The most popular jump site in the United States is the Golden Gate Bridge in San Francisco, a suicide magnet for people all over the country.
(The Stranger, 2012)



2023年6月16日金曜日

ラップトップ階級!? ー laptop class

新型コロナ収束に伴い、リモートワークに対する風当たりが強くなってきています。

IT大手のリーダーはオフィスでの対面勤務の有用性を説き、週3日以上のオフィス勤務を義務化するなどの動きが見られます。

引用する記事は、アップルやグーグルといったIT大手の動きを紹介した流れで、ツイッターに触れているものです。


Twitter's former CEO Parag Agrawal memorably announced in 2022 that he'd continue the option of working from home "forever." Elon Musk's takeover quickly brought that promise crashing down. 

Musk has criticized remote work on several occasions and recently called it "morally wrong." He accused the "laptop classes" of living "in la-la land." Martha Stewart has also weighed in on the productivity of remote workers, saying: "You can't possibly get everything done working three days a week in the office and two days remotely."
(Office mandates show tech companies are getting tougher on remote workers. Business Insider. June 12, 2023.)


ツイッターはパンデミックの最中、リモートワークを全面的に取り入れ、恒久的な勤務制度とすることを宣言したことはよく知られています。

ところがCEOがマスク氏に変わり、その約束は反故に。

マスク氏はリモートワークを、道徳的に間違った働き方と断じ、リモートワーカーを、


"laptop classes" of living "in la-la land"


と糾弾したそうです。

"laptop class"という言葉に詳しい説明はありませんが、リモートワークをするためには会社支給のラップトップPCが前提となっていることが多いことから、ラップトップPCの支給を受けることができるスタッフ(レベル)を揶揄してこのように表現しているのだと思われます。

昔の話になりますが、社員ひとりに1台のパソコンが支給されるようになってからも、そのパソコンはデスクトップが標準で、持ち運び可能なラップトップは出張の機会が頻繁にある社員限定という扱いであった時期がありました。ラップトップPCがデスクトップよりもコスト高であった時代ですが、内勤者はしゃな社内会議にラップトップPCを持ち込む社員をある種、羨望の眼差しで眺めたものです。

ラップトップ階級(!?)とでも言いましょうか。

さて、社員に支給されるPCとしてラップトップが当たり前のようになったかと思われる今日、リモートワークの是非を巡る議論でよく引き合いに出されるのが、リモートでも可能な仕事内容とそうでない仕事との間に生じる差別です。

対面を前提とするサービス業や工場での生産ラインでの勤務など、「職場」に赴かなければ成り立たない職種はリモートワークという訳には行きません。

会社のネットワークにアクセスができるラップトップPCがあれば事欠かない事務職というものは、勤務場所を選ばない側面は確かにあるため、このような仕事に就いている人を"laptop class"というのでしょう。

仕事の内容と性質が違うのだと言ってしまえばそれまでですが、"laptop class"という言葉は社員間の分断も呼びそうな表現だと思います。

2023年6月15日木曜日

long-shot candidate

来年2024年のアメリカ大統領選候補に、現マイアミ市長のFrancis Suarez氏が名乗りを上げる見込みであると報じられています。


Miami GOP Mayor Francis Suarez has filed paperwork to run for president, according to new FEC filings, marking the long-shot candidate’s formal entry to the race.

Suarez is set to speak Thursday at the Ronald Reagan Presidential Library in Simi Valley, California. During an appearance on Fox News over the weekend, the mayor said he would make a “major announcement” in the coming weeks and pointed to his remarks at the Reagan Library as “one that Americans should tune in to.”
(Miami Mayor Francis Suarez files to run for president in 2024. June 14, 2023.)


Suarez氏は共和党員であり、トランプ前大統領、デサンティス・フロリダ州知事が既に出馬表明している中、共和党の指名を勝ち取る必要があります。

記事中、Suarez氏について、


long-shot candidate


とあります。

ここでの"long-shot"というのは、勝ち目が無い、勝つ見込みが薄い、という意味合いの慣用表現です。

日本語では「泡沫候補」という言葉がありますが、それに近いかと・・・。

さて、"long shot"を辞書で引くと、写真や映画でのロングショット(遠景)という意味も載っています。その反対は接写で、"close shot"です。

見込みが薄いという意味の"long shot"は、遠くにあるターゲットを狙って打つショット、例えばゴルフで遠く離れたところからホールインワンを狙うように、成功率が低くなる試みということから生まれた表現のようです。

2023年6月14日水曜日

smattering

昨日に続き、機密文書持ち出し問題で起訴されたトランプ前大統領に関する記事から引用です。

大方の予想通り、フロリダ州マイアミの裁判所に出廷したトランプ氏は無罪を主張したとあります。


Donald Trump pleaded not guilty Tuesday to the first federal charges ever filed against a U.S. president, former or current.

Trump turned himself in at a Miami federal courthouse in the afternoon and was booked on the second set of criminal charges he has faced this year. The leading 2024 Republican presidential candidate was arraigned and pleaded not guilty to 37 counts related to allegations that he kept hundreds of classified documents after he left the White House and resisted efforts to return them to federal recordkeepers.

(中略)

Ahead of the court proceedings, local police ramped up the security presence in Miami. A smattering of protesters, supporters and critics of Trump, gathered outside the federal courthouse throughout the day.
(Trump indictment live updates: Ex-president leaves for New Jersey fundraiser after Miami arraignment. CNBC. June 13, 2023.)


元大統領の起訴という前代未聞の事態と、大統領選の行方を左右するということもあって、裁判所周辺は厳戒態勢が敷かれた模様です。

後段にそのくだりがありますが、


smattering of protesters, supporters and critics of Trump, gathered outside the federal courthouse throughout the day.


ともあります。

ここでの"smattering"の意味ですが、


少数の、まばらの


という意味で、"a smattering of 〜"というパターンで使われているもので、


a group of (名詞)
a number of (名詞)


などといったフレーズに並ぶ表現と言えます。

それでは"smattering"とは何か?

"smatter"という単語から来ていますが、その意味は、生半可な知識、うろ覚え、片言、といったものです。

"a number of 〜"などと同じパターンとはいえ、ちょっと変わった表現ですね。

ところで、この件に関する報道映像などを見るにつけ、裁判所周辺に集まっている人達はとても「少数、まばら」(a smattering of)には見えないのですが、これはどうしたことでしょう。

厳戒態勢を敷いたということからも、矛盾するようにも思われるのですが・・・。


2023年6月13日火曜日

run the table

トランプ前大統領が2度目の訴追を受けました。

1度目の訴追については先日も取り上げました。今回は、大統領退任時にホワイトハウスから持ち出したとされる機密文書に関連したものです。

報道によれば、機密文書問題では37件の罪状で起訴されているということです。世論調査では半数近くが起訴を妥当と考えている一方、今回の起訴の背景に大統領選に絡む政治的な思惑があると考えている層も一定数いるようです。

大統領選への出馬表明を既に行なったトランプ氏ですが、公判の行方が注目されます。


Fox News legal analyst Jonathan Turley says former President Trump could die in prison if convicted on just one count after being indicted by the Justice Department last week on dozens of charges related to his handling of classified documents.

“The problem is, he’s got to run the table — he’s 76 years old,” Turley, a former opinion contributor for The Hill, said of Trump during an appearance on Fox News. “All the government has to do is stick the landing on one count, and he could have a terminal sentence. You’re talking about crimes that have a 10- or 20-year period as a maximum.”
(Dominick Mastrangelo. Fox News’s Turley: Trump could face ‘terminal sentence’ if DOJ proves even one count. The Hill. June, 12, 2023.)


上記に引用した記事によれば、37ある罪状のうち、ひとつでも有罪になると、トランプ氏は(投獄され)余生を塀の中で終える可能性があると指摘されています。

さて、今日目に留まった表現ですが、識者コメントが引用されており、


“The problem is, he’s got to run the table — he’s 76 years old,”


とありますが、ここでの"run the table"というフレーズの意味するところが分かりませんでした。

手元の英和辞書に載っていなかったのですが、Merriam-Websterによれば、


run the table
1
: to sink all remaining shots without missing in pool
2
: to win all remaining contests


とあります。

どうやらこの表現は、ビリヤードゲームから来たもののようで、ゲームで全ての球をミスせずに突く(ビリヤード台のポケットに落とす)ことを言うようです。つまりノーミスで勝つ、ということなんですが、ビリヤードに限らず、多少のニュアンスの違いはあれ、相手に得点や攻撃の余地を与えないで勝つ、全勝優勝する、というような意味合いで用いられるようです。

ということで、引用部分の発言に戻りますと、トランプ氏は37の罪状を前にして、全ての罪状で無罪を勝ち取らなければならない、つまり、“got to run the table”という解釈になるものと思われます。


2023年6月12日月曜日

serendipitous

ポスト・コロナの時代、働き方を巡る労使対決の話題をしばしば目にします。

リモートワークか、オフィス回帰か。

今日読んだ記事からの引用です。


At Amazon, tensions boiled over last week as hundreds of office workers staged a walkout to call attention to their grievances, including the three-day return-to-office mandate that was implemented in May.

(中略)

But the employee criticism isn’t stopping tech companies, who have spent billions on sprawling campuses over the years and often preach the value of serendipitous workplace interactions, from moving forward with their return to office policies.
(Catherine Thorbecke. Silicon Valley escalates the battle over returning to the office. CNN. June 10, 2023.)


後段に、


serendipitous


という単語が出てきます。

"serendipity"という単語をご存知でしょうか?

"serendipity"とは、簡単に言うと、宝ものなどを偶然に、運良く発見することを意味します。

この単語の語源は、Horace Walpoleという人の書いたお伽話の題名、The Three Princes of Serendipに因むと英和辞典に載っています。

このお伽話の主人公らが「探してもいない珍宝をうまく偶然に発見する」(研究社新英和大辞典)という設定なのだそうです。

ちなみにAmerican Heritage Dictionaryの解説によると、"Serendip"とはペルシア語でスリランカを指すそうです。


2023年6月9日金曜日

Rogers test

ウィスキーの名門ブランドであるジャック・ダニエルズが、同社商品を明らかに模倣したと思われるイヌ用おもちゃを販売したVIP Products社を訴えていた件で、最高裁判決が出たようです。

この件については先日も取り上げましたので、そちらもお読み下さい。

最高裁判決は一審を棄却し、商標権侵害を認定するというものでした。


The Supreme Court on Thursday sided with Jack Daniel’s in a dispute over a poop-themed dog toy that parodies its iconic liquor bottle, ruling that a lower court erred when it said the toy was covered by the First Amendment’s free speech protections.

The unanimous opinion written by Justice Elena Kagan allows the liquor maker to revive its trademark lawsuit against VIP Products in lower courts. In the meantime, the “Bad Spaniels Silly Squeaker” toy remains on the market.

(中略)

“Today’s opinion is narrow. We do not decide whether the Rogers test is ever appropriate, or how far the ‘noncommercial use’ exclusion goes,” Kagan wrote, adding: “The use of a mark does not count as noncommercial just because it parodies, or otherwise comments on, another’s products.”
(Devan Cole. Supreme Court sides with Jack Daniel’s in poop-themed dog toy trademark fight. CNN. June 8, 2023.)


有名ブランドの商標を利用したパロディー商品が商標権侵害に当たるか否かが争われたものですが、一審は侵害に当たらないとの判断でした。

引用された判事のコメントに、


the Rogers test


と出てきますが、これが何のことか分かりませんでした。

それで別記事を参照しますと、以下のくだりがあり、"the Rogers test"とは過去の判例を指していることが分かります。


Lower courts had ruled in favor of VIP Products after applying what is called the Rogers test, which has allowed artists to lawfully use another's trademark when doing so has artistic relevance to their work and would not explicitly mislead consumers about its source.
(U.S. Supreme Court rules for Jack Daniel's in fight over parody dog toy. Reuters. June 8, 2023.)


"the Rogers test"というのは、1989年に商標権と言論の自由を巡って争われた裁判を指すらしく、"the Rogers test"の"Rogers"さんは女優の名前で、自身が出演した映画のパロディー作品に対して訴えを起こしたもののようです。

こちらのサイトの説明がわかり易いですが、その裁判の最終判決は、パロディー作品が芸術的要素を備えているものであることなどから、商標権侵害の訴えを退けたということです。また、消費者を誤認させるものか否かという点でも、否と判断され、爾来この判例が商標権を巡る裁判での判断基準になっているということのようです。


2023年6月8日木曜日

hot wiring

ニューヨーク市が、韓国の自動車メーカー2社を訴えた、という記事に目がとまりました。

訴状の中身はというと、製造する自動車の盗難を防止するための措置を怠った、というものだそうです。


South Korean automakers Hyundai and Kia are being sued for causing a "public nuisance," according to a complaint filed in Manhattan federal court.

New York City is accusing the two firms of failing to install devices that prevent cars from being stolen, after a social media challenge prompted young teens to steal vehicles off the street by hot wiring them using a USB cable.
(Jihye Lee. 'Public nuisance': New York sues Hyundai and Kia, alleging their cars are easy to steal. CNBC. June 7, 2023.)


記事によれば、ヒュンダイと起亜自動車が製造したモデルにはイモビライザーなど、盗難を防止する機能が備わっておらず、他のメーカーの自動車に比べて盗難件数が突出しているという統計があるそうです。

盗む方が悪いというのは当たり前ですが、盗まれるリスクを放置しているということに焦点を当てた訴追の背景には自動車盗難に留まらず、犯罪を助長している側面があるという、市側のやむにやまれぬ事情があるように思われます。

さて、自動車を盗むその具体的な方法ですが、


hot wiring


という手段だそうです。

"hot wiring"とは、通常キーを差してエンジンをかけるところ、その機構をバイパスして、キーという正当な手段に依らずエンジンを始動させることで、車内の配線、回路を短絡させることにより可能となるのだそうです。

古典的なやり方(!?)では針金(wire)を使ったことからこのように呼ばれたようですが、最近の自動車は色々と技術が進歩していますから、針金ではなく、USBケーブルを使っての"hot wiring"だそうです。

メーカー2社の特定のモデルでは盗難防止機能が無く、"hot wiring"がやり易いことから、SNSなどでその手口がシェアされ、ターゲットにされてきたという状況があったようです。



2023年6月7日水曜日

lounger

アメリカで、乳幼児向けのベビークッションの使用にまつわる死亡事故が増加しているとそうです。

問題の製品は既にリコールされていますが、SNS上のサービスを通じて未だ流通している現実があるということで、広く注意喚起されているというのが以下に引用する記事の趣旨です。

この「ベビークッション」ですが、記事では"lounger"、"baby lounger"、"baby pillow"という名称になっています。

"lounger"はゆったりとした椅子を指すようですが、記事の写真で見てみると、椅子(ベビーチェア)というよりも座布団みたいなクッションというのが近いように思われます。


Two more infants have died since the Boppy Newborn Lounger was recalled in 2021, bringing the total number of known deaths linked to the baby pillow to 10.

On Tuesday, federal safety regulators at the U.S. Consumer Product Safety Commission once again urged consumers to immediately stop using the product, which has been banned from sale since the recall. The agency also pressured Facebook to block the sale of recalled Boppy loungers on Facebook Marketplace, saying that on average the agency finds 1,000 of the products listed there each month.
(Tricia L Nadolny. Two more deaths linked to recalled baby lounger still for sale on Facebook Marketplace. USA Today. June 6, 2023.)


 "lounger"については、"lounge"という単語から来ているのですが、"lounge"とは日本語でもカタカナで言うところの「ラウンジ」に同じです。

この「ラウンジ」は社交場だったり、クッションのある椅子やソファがしつらえられた酒場など、リラックスした雰囲気を醸すスペースのことです。英単語の"lounge"にもこれらの意味合いがありますが、名詞としては寝椅子、安楽椅子の意味があり、"lounger"はこの拡張であろうと思われます。

ところで、"lounge"の動詞の意味には、ぶらぶらする、もたれかかる、横になる、というものがあり、これらに共通するのは怠け者という概念で、"lounge"の語源は怠け者を意味する古フランス語longisだそうです。

興味深いことに、"lounge"という単語の語源欄を見ると、古フランス語longis、さらに遡るとラテン語Longinum(十字架のイエスの脇腹を槍で突いたと伝えられる兵士の名)から来ているという説明があります。(研究社新英和大辞典)

確かに、聖ロンギヌスはローマ帝国の百卒長として、イエスキリストがゴルゴタの丘で磔になった際に、その生死を確かめるためにその脇腹に槍を突き刺した、とされるのですが、その人物の名前が「怠け者」という概念と結びつけられた経緯、また"lounge"という英単語になった背景について詳しい説明は見当たりません。

いわゆる民間語源(folk etymology)のようにも思われますが、ちょっと変わった、また意外なストーリーではないでしょうか。



2023年6月6日火曜日

dame

ニュージーランドの元首相、ジャシンダ・アーダーン氏に同国から勲章が授与されることになったと報道されています。
 
記事のタイトルに、
 
 
Jacinda Ardern becomes a dame
 
 
とあります。
 
この“dame”というのはナイトに相当する勲位だそうで、"knight"は男性、"dame"は婦人に対するものとなっています。
 
 
New Zealand has awarded Jacinda Ardern one of the country’s highest honours, making the former prime minister a dame for her service to the country during the Covid-19 pandemic and Christchurch terror attacks.
 
(中略)
 
The former leader’s tenure was marked by a series of national and international crises, and the prime minister, Chris Hipkins, said the recognition was for her leadership during these “periods of intense challenge”.
(Tess McClure. Jacinda Ardern becomes a dame as New Zealand honours former PM. The Guardian. June 4, 2023.)
 
 
アーダーン元首相への勲位は、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックに際してのリーダーシップ、貢献に対して贈られるとあります。そう言えばニュージーランドではCOVID-19に対する厳格な措置を推し進め、他国に比べて非常に低い死者数、感染者数に留めることに成功したという話が記憶に新しいです。
 
さて、“dame”という単語については、辞書の語源欄を見るとラテン語domina (dominus) に由来するとあります。ラテン語dominaは女主人(dominusは男性)の意味です。さらに遡ると、これらの語はdomus(家)から来ています。
 
“dame”は“gentleman”(紳士)に対しての婦人というように覚えていましたが、男性でいうナイトに相応する称号とは不勉強にして知りませんでした。
 
ちなみに、婦人に対する尊称として使われる“Madam”は元はフランス語で、ma dame(つまり、my lady)から来ています。
 
 
 

2023年6月5日月曜日

panacea

ミスター・ビーンで知られるイギリス人コメディアンのローワン・アトキンソンさんが自動車好きとは知りませんでしたが、数ある愛車の中には電気自動車も含まれていると聞き興味をそそられました。

アトキンソンさんは大学では電気・電子工学を専攻したそうで、故に電気自動車にも当然関心があり、ハイブリッド車は18年前から、電気自動車は9年前から運転し始めたということで、いわゆるアーリーアダプターです。

ところが、そのアトキンソンさんが、最近になって電気自動車の掲げる理想には騙されたように感じる、というちょっと意外な意見。ガーディアン紙への寄稿を興味深く読みました。


Electric vehicles may be a bit soulless, but they’re wonderful mechanisms: fast, quiet and, until recently, very cheap to run. But increasingly, I feel a little duped. When you start to drill into the facts, electric motoring doesn’t seem to be quite the environmental panacea it is claimed to be.
(Rowan Atkinson. I love electric vehicles – and was an early adopter. But increasingly I feel duped. The Guardian. June 3, 2023.)


アトキンソンさんが投げかける疑問は、電気自動車は本当に環境に優しいのか、というものです。

EUでは内燃機関を動力とする自動車(ガソリン車、ディーゼル車)の販売を2030年に全面的に禁止すると打ち出しています。目的は温室効果ガスの排出削減です。

しかしながら、アトキンソンさんは、冷静に事実に目を向ければ電気自動車が温室効果ガスの削減に貢献するものなのか、疑問が残る、と言います。

そして、


electric motoring doesn’t seem to be quite the environmental panacea it is claimed to be


というくだりになるのですが、ここで、"panacea"という表現が使われています。

"panacea"とは、"cure-all"(万能薬)という意味で、ギリシャ神話に出てくる治療の女神パナケイアに由来する単語です。

そこから、病を治すというだけに留まらず、困難や問題に対処するにあたっての万能の方策というような意味で用いられます。

"panacea"という単語のスペルには、ギリシャ語で「全」、全て(all)を意味する接頭辞pan-が含まれています。

つまり、電気自動車が温室効果ガス削減、脱炭素社会実現のための切り札とも期待されている現状がある訳ですが、非の打ち所がない万能の技術かと言えば疑問が残る、ということです。

アトキンソンさんは、電気自動車のバッテリーとなるリチウムイオン電池の製造にはレアアースが不可欠であり膨大なエネルギーが消費される他、流行り廃りで3年くらいで買い替えられる自動車のライフサイクルを考えると果たして環境に優しいと言えるのかと疑問を呈しています。

なるほどです。小生は最近クルマの買い替えを検討していて、電気自動車という選択肢も一応視野にはあるのですが、専門家が同様の意見を述べているのを読んだことがあります。また、電気自動車の充電に伴う電力についても、日本においては火力が7割を占める現状を考慮するならば、いくら電気自動車が排気ガスを出さないといっても、その駆動力である電気の源(すなわち、火力)を無視することは出来ないという主張もあります。

詳細は記事をお読みいただくとして、ここのところ声高に唱えられるエコやSDGといった掛け声に感じる漠然とした違和感に近いものがあるようにも思うのですが、みなさんはどう思われるでしょうか?

2023年6月2日金曜日

spill

バイデン大統領が、コロラド州の空軍士官学校でスピーチの際、舞台上で躓いて転倒しました。

次期大統領選への出馬を既に正式表明したバイデン氏ですが、高齢故の体力面、精神面での資質がとかく疑問視される中、今回の件も多くのメディアで取り上げられることとなりました。


WASHINGTON − President Joe Biden took a dramatic spill Thursday while passing out diplomas to graduates after giving the commencement address at the Air Force Academy in Colorado Springs, Colo.

The president did not appear to sustain any injuries. Gasps from the crowd followed Biden's fall, which came as he handed out the last diploma, forcing him to come down on his hands and knees.
(Joey Garrison. 'I got sandbagged': Biden trips and falls while handing out diplomas at Air Force Academy graduation. USA Today. June 1, 2023.)


ビデオ映像を見ると、舞台上で何かに躓いたようですが、幸い大した怪我にもならず、バイデン氏本人はほぼ自力で立ち上がった様子です。

さて、今日取り上げるのは、


spill


という単語なんですが、記事中で転倒について、


President Joe Biden took a dramatic spill 


と表現しています。他紙では"stumble"とか"fall"という表現が使われているのですが、"spill"にも同様に転倒や転落の意味があるとは不勉強にして知りませんでした。

というのも、(液体を)こぼす、とか(うっかり)喋る、漏らす、といった意味の方が印象が強かったからですが、"spill"には馬や乗り物などから投げ出されるという意味がちゃんとあるんですね。

バイデン氏が公衆の面前で転んだり、躓いたりするにはこれが初めてではありません。

昨年11月にはサイクリングで減速、停車しようとしたところで自転車と共に倒れており、これについても"spill"という表現が使われています。


The latest fall likely hands Republicans − who have repeatedly questioned Biden's fitness to be president − new material for future ads in the 2024 presidential election after they've already made Biden's bicycle spill a go-to clip.
(ibid.)


対立する共和党にとっては格好の攻撃材料がまたひとつ加わったということなんですが、大統領選の行方は果たして・・・。



2023年6月1日木曜日

bed rotting

最近の若者に流行りの言葉に、


bed rotting


というものがあるそうです。

以下、最初に引用する記事では、"bed rotting"ばかりではいけない、外に出よう!みたいな論調の記事です。

特にパンデミック下で在宅を余儀無くされ、リモートワークが拡大した状況を踏まえ、新しく働き始めた若者に対人交流の重要さを説くような内容になっています。


It’s time for Gen Z to stop “bed rotting” and leave the house.

Working from home could stunt career growth and romantic relationships, Scott Galloway, a marketing professor at New York University’s Stern School of Business, said at the Wall Street Journal’s CEO Council Summit last week. 
(Jeanette Settembre. ‘Bed rotting’ Gen Z is destroying their future: ‘Never be at home’. New York Post. May 30, 2023.)


これを読んだだけでは、"bed rotting"とはなんぞや?という疑問が湧きます。

字義通りだと、ベッドを腐らせる、あるいはベッドで朽ちる、という意味合いになるかと思います。こんな言葉が流行り始めたのはやはりSNSの影響が大きいようです。


Lazy days spent enjoying the comfort of your own mattress has been rebranded as 'bed rotting.'

The term seems to be taking the internet by storm with the hashtag receiving more than 89.1 million views on TikTok. 
(Raven Saunt. How 'BED ROTTING' became the internet's most popular form of 'self care'. Daily Mail. May 29, 2023.)


長時間、あるいは一日中をベッドで寝て過ごすというようなイメージがありますが、寝るということに限らず、ベッドに横になって好きなことをして時間を過ごすこと全般を指すようです。その態様は人それぞれ、というところでしょうか。


Some people are “bed rotting” while binge-watching Netflix, stuffing their faces with sugary snacks or simply staring at the ceiling, while others are falling a bit more into the “clean girl” aesthetic by doing face masks, sleeping on silk pillowcases and meditating in bed.

Fans claim “bed rotting” can be a great way to reclaim both physical and mental health whether people are recovering from a cold, a busy week or a nasty hangover.
(Adriana Diaz. Why ‘bed rotting’ is the newest hot self-care trend for lazy Gen Zers. New York Post. May 29, 2023.)


"bed rotting"はセルフケアの一環と捉えられているらしく、何事もマイペースな現代の若者の感性に合うのでしょう。

アラフィフ親父としては学生時代の下宿の万年床を思い出しました(笑)