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2022年4月29日金曜日

jack-in-the-box

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2ヶ月以上経ちます。

当初よりロシア軍の攻勢は圧倒的と見られていましたが、意外にも苦戦しているとの報道を目にします。

今日読んだCNNの記事によりますと、ロシア軍の戦車には構造的な欠陥があるという専門家の指摘を取り上げていました。

ウクライナ軍の攻撃を受けて破壊され、無残を晒す戦車がその欠陥を物語るそうです。


(CNN) Russian tanks with their tops blown off are just the latest sign that Russia's invasion of Ukraine isn't going to plan.

Hundreds of Russian tanks are thought to have been destroyed since Moscow launched its offensive, with British Defense Secretary Ben Wallace on Monday estimating it had lost as many as 580.

But Moscow's problems go beyond the sheer number of tanks it has lost. Experts say battlefield images show Russian tanks are suffering from a defect that Western militaries have known about for decades and refer to as the "jack-in-the-box effect." Moscow, they say, should have seen the problem coming.
(Brad Lendon. Russia's tanks in Ukraine have a 'jack-in-the-box' design flaw. And the West has known about it since the Gulf war. CNN. April 28, 2022.)


ロシア軍戦車の構造的欠陥を、


jack-in-the-box effect


と表現しています。

"jack-in-the-box"というのは子供の玩具で、いわゆるびっくり箱のことです。

箱の蓋を開けると、中に入っている人形がバネ仕掛けで飛び出してくるものです。


a toy consisting of a small box out of which a figure (as of a clown's head) springs when the lid is raised
(Merriam-Webster Dictionary)


記事によれば、ロシア軍の戦車は最上部の回転式砲塔(turret)に多数の弾丸を装備する構造となっているそうです。従って、戦車が受ける攻撃は連鎖反応的に砲塔部分へと波及し、戦車に甚大なダメージをもたらすそうです。

何故、このことが"jack-in-the-box effect"と呼ばれるのか、初めはよく分りませんでしたが、恐らくは砲塔部分が吹っ飛んでしまう様を、びっくり箱(jack-in-the-box)の飛び出す人形仕掛けになぞらえたものだろうと分かりました。


The problem relates to how the tanks' ammunition is stored. Unlike modern Western tanks, Russian ones carry multiple shells within their turrets. This makes them highly vulnerable as even an indirect hit can start a chain reaction that explodes their entire ammunition store of up to 40 shells.

The resulting shockwave can be enough to blast the tank's turret as high as a two-story building, as can be seen in a recent video on social media.
(ibid.)




2022年4月28日木曜日

doo-doo

強盗や銃撃事件などの犯罪率が高いニューヨークシティで最近問題になっているのがイヌのフン(糞)だそうです。

散歩をさせている飼い主のマナーの問題として、警察が取り締まりに乗り出したとか。

罰金は250ドルだそうです。


Amid skyrocketing rents, a surge in crime and rising rates of homelessness, fed-up New Yorkers are now also facing a pileup of poop.

The number of complaints about dog feces festering on city sidewalks has been soaring in recent weeks, especially on Manhattan’s West Side.

The Big Apple’s sanitation police are now trying to cut the crap — launching a blitz to catch dog owners and walkers as they flee from the doo-doo.
(Andrew Court. NYC cracks down on lazy dog walkers: ‘There is no poop fairy’. New York Post. April 26, 2022.)


"doo-doo"というのはフン(糞)のことで、幼児が使う言葉です。

"poop"も幼児語ですが、どちらかと言うと"doo-doo"よりもなじみがあります。


2022年4月27日水曜日

political bullhorn

かねてよりツイッター社の株を買い増ししていたテスラCEOのイーロン・マスク氏ですが、その後同社を買収をする意向を表明。

ツイッター社内には激震が走ったようですが、今日になって買収提案に合意、何と440億ドル(5.6兆円)という巨額の買収劇となりました。


Elon Musk has struck a $44 billion deal to buy the world’s most powerful political bullhorn. So will Musk let former President Donald Trump back on Twitter?

Musk has not said whether he would reinstate Trump. Twitter permanently banned Trump after the Jan. 6 Capitol riot, citing “the risk of further incitement of violence.” 

Trump, a likely 2024 presidential candidate, said Monday that he would not return to Twitter even under new ownership. Instead, he will formally join his own TRUTH Social app, he told Fox News.
(Will Elon Musk let Donald Trump back on Twitter? All signs point to yes. USA Today. April 26, 2022.)


非買収企業となったツイッター社の足掻きなのでしょうか、あるいは小生がここ数日、関連記事にアクセスしていたからでしょうか、SNSのタイムラインはマスク氏の買収提案に関するニュース記事のツイートばかりで辟易します。

上に引用した記事で、ツイッターのことを、


the world’s most powerful political bullhorn


と表現しているのを興味深く思いました。

"bullhorn"というのは拡声器、メガホン(megaphone)のことです。(因みに、拡声器が何故、雄牛(bull)の角(horn)なのか、調べてみたのですが、分からず仕舞いです。形が似ているようにも思われず。ご存知の方ありましたら教えて下さい。)

"Twitter"(鳥のさえずり)が"bullhorn"とは!

ツイッターは創業は2006年、140字以内で「つぶやき」を投稿できるという、マイクロブログとも呼ばれたウェブサービスでした。

それが今や、有名人や政治家、専門家が公式な意見表明をしたり、自らの信条を開陳する一大プラットフォームです。

小生は2009年にアカウント開設しましたが、当時は恐らくは物好きなユーザーに限られており、投稿内容もテキスト限定でした。今は画像は勿論、動画やライブ配信にも対応していることを考えると隔世の感があります。

世界中のユーザーが日々投稿するツイートは最早、「つぶやき」、「さえずり」(tweet)ではなく、拡声器よろしく大声での主張とも言えます。

マスク氏はツイッターにおける言論の自由を取り戻すと公言していますが、凍結されたトランプ前大統領のアカウントへの対応が注目されています。

トランプ氏のツイッターにおける言論活動はまさしく"political bullhorn"を体現したものでした。

マスク氏は買収を機に社名も変更してはどうでしょうか。


2022年4月26日火曜日

supercentenarian

世界最高齢の日本人女性の田中カ子(かね)さんが119歳で逝去したと報じられています。

ギネス記録にも登録されており、外国メディアも報じています。


Kane Tanaka, a Japanese woman who was certified as the world’s oldest person, died last Tuesday at 119 years old. Officials reported that the supercentenarian died of old age at a hospital in Fukuoka city, the Independent reported.

(中略)

Born Jan. 2, 1903, in the Fukuoka Prefecture, Tanaka was confirmed by Guinness in 2019 as the oldest person on Earth at the age of 116 years.
(Ben Cost. World’s oldest person, Kane Tanaka, dead at 119. New York Post. April 25, 2022.)


お生まれは1903年、明治36年で、ライト兄弟による飛行機が初めて空を飛んだ年です。

田中さんについて、


supercentenarian


と書かれています。

"centenarian"のさらに上を行く、というのは明らかなのですが、こんな単語が存在するのかと思って調べてみたところ、

Merriam-Websterオンラインで、


a person who is 110 years old or older


と定義されていました。

110歳以上、ということですから、101歳ではsuper〜とはならないものと思われます。

Wikipediaによりますと、101歳以上に対しては"ultracentenarian"なる呼称が存在するそうです。また年齢区分にして、105〜109歳に対しては、"semisupercentenarian"という呼称が使われるとか。

余談ですが、故人のお名前「カ子」(かね)の「カ」はカタカナなのか、それとも漢字の「力」(ちから)なのか、という疑問がありました。(フォントによってはわかりづらいのです。)

新聞の記事ではカタカナの「カ」に見えましたが、漢和辞典で「力」を引いてみると、人名の読みでは「か」もあるそうで・・・。

ネットで検索したところ、「カ子」さんの「カ」についてはカタカナが正しいということのようです。

しかも、「子」を「ね」と読ませるのも、古くはカタカナとして「ネ」と「子」の両方が存在していたと言いますから、驚きです。

ご冥福をお祈りします。


2022年4月25日月曜日

rap sheet

先週でしたが、ボクシングヘビー級元チャンピオンのマイク・タイソンに飛行機内で殴られた男性がいるというニュースの記事を読みました。

例によって、同乗していた別の客が撮影したという動画がSNSにアップロードされており、記事でも引用されているのを見ました。

殴られてしまったのは男性に非があるようでしたが、ボクサーが素人を殴るというのは凶器でもって暴行するのに等しいと昔聞いたことがあります。

男性はタイソン氏を訴えているそうですが、その後の報道によりますと、どうやら男性自身曰く付きの経歴の持ち主らしいと言われており、タイソン氏はむしろ被害者というような扱いです。


The man Mike Tyson was filmed striking on an airplane has criminal convictions going back to 2008, according to Florida state records.

(中略)

Tyson was filmed striking Townsend on a JetBlue flight from San Francisco to Miami last Thursday. The man and his companion were reportedly harassing Tyson for several minutes prior to the incident.
(Jon Brown. Man punched by Mike Tyson for alleged harassment has long rap sheet, state records show. Fox News. April 24, 2022.)


男性について、記事のタイトルで、


has long rap sheet, state records show


とあります。

"rap sheet"という表現を知りませんでしたが、本文を読むと"criminal convictions going back to 2008"を指しており、"criminal record"(犯罪歴)の意であろうことは想像がつきます。

果たして、英和辞書には、"rap sheet"は米俗語で警察記録のことであると載っていました。

この"rap"というのは、叩く、という意味の動詞ですが、叱る、非難する、という意味もあり、また俗語表現としては逮捕するという意味もあるそうです。

Merriam-Websterオンラインに拠れば、このような"rap"の意味は18世紀に遡る古いものだそうで、名詞としても犯罪の容疑とか刑罰という意味で用いられるようになりました。

"bad rap"というと、「曰く付きの」、つまり評判が悪い、という意味です。



2022年4月22日金曜日

抱き合わせ販売 ー tie sale

最近のアイフォーンは充電器の電源アダプタが付属していないということに気がついたのは、確か昨年、愚息にiPhone 12を購入してやった時でした。Lightningケーブルは付属しており、取り敢えずは持っているMacBookに繋いで充電するか、という話に。それで商品の箱が以前より薄くなっている訳です。

ところが、ブラジルでは電源アダプタが付属していないのは違法だとして、裁判所はアップル社に対して、顧客への賠償を命じました。


A judge in Brazil has told Apple to pay an iPhone customer $1,075 as compensation for not including a charger with the smartphone.

As MacRumors reports, Judge Vanderlei Caires Pinheiro, of the 6th Civil Court of Goiânia, cites article 39 of the Consumer Code, which states "tie sales" are prohibited. By tie sale, the article is referring to a situation where purchasing one product requires the other to function. The judge clearly felt not shipping the device required to charge the iPhone with the phone infringes article 39.
(Matthew Humphries. Customer Who Sued Apple Over Lack of iPhone Charger Gets $1,075. PC Mag. April 20, 2022.)


ブラジルの法律では商品を購入する際、当該商品の利用のためにまた別の商品の購入が必要になるようなケースを"tie sale"と規定し、そのような商法を禁じているそうです。

つまり、充電しなければ使うことができない携帯電話なのに、付属品の充電器を別売りする行為は違法、ということになります。

この"tie sale"という表現を見て、日本語にどう訳すのか、しばし考えました。

老化が始まっており(苦笑)、直ぐには出てこなかったのですが、なるほど、これはいわゆる「抱き合わせ販売」という奴だな、と思い当たりました。

それで、この"tie sale"を辞書でも確認しようとしたところ、手元にある辞書では、


tie-in sale


という表現で載っていました。

"tie"とは、結ぶ、つなぐ、という意味です。2つの異なる商品をつなげて一緒に売る、ということでしょう。

別名、cross-sellingとも言うようですが、厳密な定義やその違いはよく分かりません。

実際、日本においてはアイフォーンの件は抱き合わせ販売とは見做されていないようです。日本では電源アダプタ別売りで堂々と販売されている訳ですから。

公正取引委員会が是正勧告した過去の事例としては、不人気商品と人気商品とセット購入を強いるようなケースを抱き合わせ販売としており、アイフォーンの事例とは少し性質が違うものを指しているようにも思われました。(お国柄というのもあるのでしょう。)


2022年4月21日木曜日

take it on the chin

新型コロナの感染者、死亡者数が世界一多いアメリカですが、マスクを着用しなくとも良いとする動きが出てきています。

今週初め、米国CDCによる航空機内などでのマスク着用義務化は違法との司法判断が下されました。


(CNN) — Air passengers in the US have been removing their Covid-19 face coverings after a federal judge ruled that the government's mask mandate on commercial planes was unlawful.

The Centers for Disease Control and Prevention had previously insisted mask rules remain in place until May 3, but the judge in Florida struck down that directive on Monday.
(Tamara Hardingham-Gill. Masks and flying: Everything you need to know about new US rules? CNN. April 20, 2022.)


率直な感想として、日本とは大違い、ではないでしょうか・・・。

ところで、この判例を歓迎できない、頭を痛めている人もいます。

マスク製造業者です。


(Reuters) - A U.S. judge's ruling this week that the Biden administration's mask mandate for public transportation was unlawful dealt another blow to an industry that built dozens of small U.S. mask factories during the darkest days of the COVID-19 pandemic.
(Timothy Aeppel. America's mask manufacturers take it on the chin. Yahoo! Finance. April 20, 2022.)


そもそもアメリカではマスク着用の効果の程には懐疑的でしたが、感染対策としての効果が科学的にも証明されると着用が推奨され、マスクを着用する人々が増えたということがあります。

それを受けてアメリカ国内のマスク製造業者も生産を拡大してきたという背景があります。

ところが、今日に至って、マスク着用の強制は違法とする司法判断が出されてしまっては、メーカー側としては生産体制を見直さざるを得ません。

記事のタイトルで、


America's mask manufacturers take it on the chin


とありますが、"take it on the chin"というのは、苦難などに耐え忍ぶ、という意味の慣用句です。

ボクシングに因む表現だそうですが、顎(chin)に強烈なパンチを受けながらもそれを何とか凌いでいる、というイメージでしょうか。

手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsでは、


If someone takes it on the chin, they bravely accept criticism or a difficult situation and do not make a fuss about it.


と解説されています。

打たれながらも黙って耐え忍ぶというということですが、コロナ禍ではみんな耐えてきました、よね?

そろそろ終わりにしてもらいたいものです。




2022年4月20日水曜日

big naturals

記事の引用からどうぞ。


Adrienne Airhart was celebrating her birthday when a woman at the table next to her started shaming her for her breast size, she shared in a now-viral tweet.

The Los Angeles-based podcaster said she was told her chest was “distracting” before the woman got up and moved tables. 

“Tonight at my birthday dinner I took off my shawl and the lady at the next table said, ‘Well those are distracting’ and moved tables. Still got it!” Airhart tweeted.

She clarified that the incident was “prejudice against big naturals.”
(Brooke Steinberg. Woman shamed for ‘distracting’ breasts at dinner: ‘Prejudice against big naturals’. New York Post. April 19, 2022.)


以前、"body-shaming"という表現を取り上げたことがありますが、レストランの席で大きな胸をしていることを貶すような発言をされた女性が怒っています。

豊胸に対する偏見だ(“prejudice against big naturals”)、という怒りのコメントなのですが、


big naturals


という表現が目に留まりました。

ここでの"natural(s)"は名詞です。

生まれつきの才能、といった意味がありますが、女性の言いたかったのは、自分は生まれつき胸が大きい方である、ということだと思われます。

“natural”に胸(breast)の意味がある訳ではありませんが、コンテクストからすれば“big naturals”と複数形になっているのは両乳房のことを指すのは明らかです。

初めて見る表現でしたのでこのような表現が定着しているのか否か、コーパスを検索してみますと、なるほど、いくつかの用例は見られるようですが、折り目正しい(!?)メディアや雑誌の記事で使われるような表現ではなさそうです。(なお、グーグル検索ではご注意下さい。特に画像検索は、NSFWです。)

つきましては、成人向け(!)のラベルを付させて頂きました。



2022年4月19日火曜日

conscription

先週4月15日、黒海に展開しているロシア海軍の戦艦モスクワが、ウクライナ軍のミサイル攻撃を受けて沈没しました。

沈没により戦死したロシア兵の中には、徴兵により従軍していた19歳の若者が含まれていたそうです。胸が痛む記事の引用をお読み下さい。


For days after the Moskva cruiser sank in the Black Sea, Yulia Tsyvova had been desperately searching for information about her son Andrei.

Like hundreds of other Russian families of the crew members, she had not been told whether he had survived the reported Ukrainian missile attack that had sunk the Russian flagship of the Black Sea fleet.

Then on Monday morning she received a call from the Russian defence ministry. Her son was dead.

“He was only 19, he was a conscript,” said Tsyvova, who wept as she spoke by telephone. “They didn’t tell me anything else, no information on when the funeral would be.
(‘We need answers’: relatives seek Moskva warship’s missing crew. The Guardian. April 18, 2022.)


徴兵制度というのは、国が国民に対して強制的に兵役を課す制度のことを言いますが、英語では"conscription"と言います。

徴兵制度の歴史は古く、古代にまで遡るそうですが、"conscription"、また"conscript"という単語についても、ラテン語conscriboに由来します。scriboとは、書く、記す、という意味で、兵士として登録する、即ち、兵隊を徴募する、という意味で使われました。

徴兵制度というと、"draft"という単語もあります。こちらは米国において主に用いられるようですが、"conscription"との違いは無いようです。

ところで、今問題になっているのは、ロシアが"conscript"と呼ばれる徴募兵を戦線に送り込んでいるという事実です。


New information on the young sailors who died will also renew scrutiny about the Russian government’s use of conscripts in battle, something Putin had explicitly denied was the case early in the war.
(ibid.)


ここでの"conscript"というのは徴兵して間もない、未経験の若い兵士を指しているようです。

ロシアのプーチン大統領や国防相は徴募兵をウクライナの前線には送らないとしていましたが、ウクライナ軍により捕虜となった兵士の中には徴募兵が含まれていたことが判明し、一転してその事実を認めざるを得ない立場に立たされています。



2022年4月18日月曜日

consortium

さすがは訴訟社会アメリカだ、と感心してしまいました。

ドライブスルー店舗で購入したホットコーヒーで膝に火傷を負った夫婦が、店舗を運営する会社を相手取って賠償を請求する訴えを起こしたというニュースです。


Evan Arlington and Stephanie Arlington-Macias bought two cups of coffee and an iced coffee from a Totowa Dunkin’ Donuts on Aug. 25, 2021, according to an April 4 lawsuit they filed in Passaic County.

Arlington suffered second- and third-degree burns after the coffee spilled in his lap at the drive-thru, said the couple’s attorney, William Gold.

Arlington had medical bills, while Arlington-Macias, 37, suffered "a loss of her husband’s aid, comfort, conjugal fellowship and consortium," they claim in the legal filing.

The pair are seeking unspecified damages. Dunkin’ Donuts didn’t return a message.
(New Jersey couple sues Dunkin’ after hot coffee severely burns husband. Fox Business. April 16, 2022.)


熱いコーヒーが膝にこぼれてしまったようですが、どうしてそのようなことが起きたのか、店舗側に明らかな過失があるのか、本人がこぼしたのか、その辺りは他記事も参照しましたがよく分かりません。(しかしながら、1990年代における同様の訴訟でマクドナルド社から億単位の賠償金支払いを受けた女性のケースでは、火傷を負ったのは店舗で購入後のコーヒーを自身が膝にこぼしたことが直接の原因であったことから、今回も同様かもしれません。)

ところで、訴状によれば、火傷の治療費の請求(これは分からなくもない)に加えて、


a loss of her husband’s aid, comfort, conjugal fellowship and consortium


が損害賠償の対象に含まれているとあります。

最後の部分、"consortium"という単語ですが、カタカナでも「コンソーシアム」と書きますけれども、協会とか組合団体という意味で使われるコンソーシアムではありません。

前の部分で"conjugal"などとあるのが解釈の助けになりますが、"consortium"というのは「配偶者権」という意味の法律用語なのでした。

では、その「配偶者権」たる"consortium"の定義はというと、手元にあるOxford Dictionary of Law(Fourth Edition 1997)によりますと、


The right of one spouse to the company, assistance, and affection of the other.


とあり、夫婦のうち一方が他方に対して、同居、扶助や愛情を求める権利、と読めますが、つまりは夫婦間の相互扶助(を頼とする権利)ということになります。

訴訟では、夫が火傷してしまったことで、その妻が本来ならば得られるはずであったはずの夫からの扶助の機会が失われてしまったことを賠償請求の対象としているものです。

この配偶者権の喪失("loss of consortium")というのはアメリカならではの概念だそうで、第三者(今回のケースではドライブスルー店舗)の不法行為により夫婦のいずれかの権利が侵害されることを指します。尤も、ここで不法行為とされるものの代表的なものは不貞行為(不倫など)ということで、アメリカでは自分の配偶者(妻)と不倫関係にある相手を訴えるということがあるそうです。

ちなみに、日本法において「配偶者権」という言葉は無く、似た概念の用語として「貞操権」があるようですが、こちらはあくまでも個人における貞節を保持する権利のことを指すようで、配偶者権とは概念的には少し異なるもののようです。

以前取り上げた"consort"もご覧頂きたいと思いますが、"consortium"という単語のsort-という部分は、"share"を意味するラテン語sorsから来ています。


2022年4月15日金曜日

envenomation

世の中には爬虫類好きの人がいますが、124匹ものヘビを自宅に飼っているという人も珍しいのではないでしょうか。

米メリーランド州の男性は飼っていたヘビに咬まれたことが原因で死亡が確認されたと報じられています。


A man found dead with 124 snakes in his home died of a snake bite, officials confirmed this week.  

David Riston, 49, died of snake envenomation, the Maryland Department of Health confirmed to USA TODAY. Officials also confirmed his death was accidental. 

Riston died in January in Pomfret, Maryland. Some of the snakes in his home included rattlesnakes, cobras, black mambas and a 14-foot-long Burmese python, according to multiple reports. The snakes included venomous and nonvenomous varieties.
(Marina Pitofsky. Maryland man with 124 snakes in his home died of a snake bite, officials say. USA Today. April 12, 2022.)


飼っていたヘビの中には毒を持つものもあったようです。死因は、


snake envenomation


と書かれています。

"envenomation"という単語に目が留まりました。

よくよく見れば、毒を意味する名詞venomに、動詞を作る接頭辞en-が付加され、さらに名詞化の接尾辞-ion、が付加されたもので、単語を知らずとも意味の想像がつくというものです。

一応、"envenomation"の定義は、


an act or instance of poisoning by venom (as of a snake or spider)
(Merriam-Webster Dictionary)


となっています。

ところで、毒を意味する"venom"の語源はVenus(そうです、ローマ神話のヴィーナス、です)、美の女神であることをご存知でしょうか。

美と豊穣の女神とされるヴィーナスですが、ギリシャ神話において対応するアフロディーテ(Aphrodite)が、媚薬を意味する"aphrodisiac"の語源になっているように、ラテン語venumは催淫作用のある"love potion"の意味でもあったのです。現代において、"venom"が"love potion"の意味で使われることはありませんが、愛欲は毒にもなり得るという、人間の性に通じるといったところでしょうか。

因みに、ヴィーナスに由来する他の英単語には性病を意味する"venereal (disease)"があります。

件の男性もヘビへの過剰な愛が仇となったのかも知れません。(ある意味本望!?)




2022年4月14日木曜日

blow a gasket

"blow a gasket"というフレーズをご存知でしょうか?私は初めて見ました。


The internet is blowing a collective gasket over a perplexing optical illusion that can purportedly only be solved by 1% of people.
(Ben Cost. Optical illusion eye test: Are you part of ‘one percent’ who can solve it? New York Post. April 12, 2022.)


この記事は偶々見つけたんですが、とあるクイズを巡ってネットが騒然としているという話です。(そのクイズ自体興味深いのですが、気になる方はこちらをご覧下さい。)

"blow a gasket"の意味は、


ひどく怒る、カンカンに怒る


だそうです。(クイズが解けなくて苛立っているという感じですかね。)

もう一つ引用します。


Nick Kyrgios has blown a gasket again, bowing out of a third successive US tournament in ugly meltdown mode.
(Nick Kyrgios blows up and bows out in Houston as umpire admits error. The Guardian. April 10, 2022.)


さて、そもそも"gasket"という単語自体に馴染みがありません。

"gasket"はカタカナでもガスケットと書くようですが、


シリンダー・管継手などの継目を埋めるために用いる繊維板・コルクなど
(研究社新英和大辞典)


のことを言うようです。

つまり、機械などで構造から気体、あるいは液体などが漏れ出さないようにするためのもので、画像検索ではリング状の留め具のような感じです。

そのような役割を持つ"gasket"を吹き飛ばしてしまう(blow)というのが"blow a gasket"の字義通りの意味となります。

このフレーズの由来に関する説明は見当たりませんが、抑えている怒りを爆発させる、溜まっている憤懣をぶちまける、というイメージでしょうか。

ちなみに"gasket"というスペルが"gas"(ガス)を想起させますが、気体のガスとは関係はなく、フランス語で細紐を意味するgarcetteが語源だそうです。"gasket"の別の意味には、船舶の帆布を繋ぎ止める小綱の意味があります。


2022年4月13日水曜日

psychedelic

幻覚剤のシロシビンに抗うつ作用があるという研究報告が話題になっています。


The psychedelic compound found in magic mushrooms helps to open up depressed people’s brains and make them less fixed in negative thinking patterns, research suggests.

According to the findings, psilocybin makes the brain more flexible, working differently to regular antidepressants, even weeks after use. Researchers say the findings indicate that psilocybin could be a viable alternative to depression treatments.

They say patterns of brain activity in depression can become rigid and restricted, and psilocybin could help the brain to break out of the rut in a way traditional therapies cannot.
(Psilocybin for depression could help brain break out of a rut, scientists say. The Guardian. April 12, 2022.)


シロシビンという成分はマジックマッシュルームと呼ばれることもあるキノコの類から取れる物質です。

マジックマッシュルームというといかがわしいイメージがあります。実際、幻覚作用があることから、その所持等については法規制されているものです。

英語の"psychedelic"は幻覚をもたらす、また幻覚剤という意味ですが、ギリシャ語で霊魂とか精神、精神医学用語のプシュケーを意味するpsycheが元になっています。-del-という部分は、現れる、というような意味です。

多くの製薬会社が抗うつ薬を発売していますが、巨額の開発費をかけた薬の効果のほどはどうなんでしょうか。マジックマッシュルームの方が効果がある、などと言われると残念な気もします。


2022年4月12日火曜日

death doula

"death doula"という言葉をご存知でしょうか?

私は初めて見ました。特に"doula"という単語は見たことが無かったのですが、手元の英和辞書にも載っておらず、意味を掴みあぐねたというところです。

それでは記事の引用をどうぞ。


There's also been a rise in personalized care and grieving options. Take death doulas: someone who helps people at the end of their life with dying, just like birth doulas help at the beginning of life.

Dr. Jamie Eaddy Chism, director of program development at the International End of Life Doula Association (INELDA), has seen an increased interest from people who are seeking death doulas and those who wish to become death doulas.
(Sara M Moniuszko. From virtual reality afterlife games to death doulas: Is our view of dying finally changing? USA Today. April 11, 2022.)


比較的長い記事なのですが、前置きは省略し、"death doula"という言葉が出てくる箇所をピンポイントで引用しました。

上記引用箇所からお分かりのように、"death doula"については、死の淵にある人々、またはその近親者に寄り添う人を指すようです。

そして、"birth doula"という言葉も出てくるのですが、こちらは新しい生命が誕生する際に寄り添う人を指すようです、そうすると助産師さんのようなイメージでしょうか。

英和辞典には載っていない"doula"という単語ですが、American Heritage Dictionaryでは、


A woman who assists another woman during labor and provides support to her, the infant, and the family after childbirth.


と定義されており、やはり助産師という言葉が思い浮かびます。

しかし、助産師には"midwife"という単語がありますから、"doula"はまた別の概念だと考えるべきでしょう。Merriam-Websterでは、


a person trained to provide advice, information, emotional support, and physical comfort to a mother before, during, and just after childbirth


と定義されており、分娩時のみならず、出産前後においてもケアを提供する人を指すようです。

語源はギリシャ語で、奴隷、また給仕をする女性のことを指す言葉だそうです。

"death doula"という言葉は恐らく"birth doula"に倣って生まれたのだと思いますが、その背景には、パンデミックの時代、我々の死生観も大きな影響を受けているという状況があるようです。

記事を読んでいて、映画の「おくりびと」を思い出しました。アカデミー賞を始め、数多くの賞を受賞した2008年の日本映画話題作です。

納棺師である主人公が葬式に際して納棺を手掛ける故人らのそれぞれの生前が印象的でした。英語タイトルがもしや、と思ったのですが、"Departure"でした。



2022年4月11日月曜日

bay window

"bay window"と聞いて、何をイメージするでしょうか?

入江を望む大きな窓、でしょうか。眺めが良い、立地に恵まれた家を想像しそうです。ホテルのお部屋?


When people poked me with their fingers and made jokes about his Bay Window his forced laughter could not conceal his rage. He ceased to judge his friends on their wit and intelligence and began to judge them on their waist bands.
(John Cheever. Three Stories. The Stories of John Cheever. Vintage International.)


小説を読んでいたら出くわしたのですが、上記に引用した"his Bay Window"が何を指すのか分からず、辞書を引いたところ、"bay window"とは張り出し窓、出窓のことなんですね。

張り出し窓とか出窓というのは建築の用語で、その構造が前面に張り出しているような形になっている窓のことです。別名、"bow window"、"oriel window"とも言うそうです。

で、その前面に張り出している様子から、太った人の出っ腹、太鼓腹のことを指すのに使われる表現なのでした。妊婦さんの突き出たお腹にも用いられるそうです。

入江を望む窓、なんていうのは勘違いだった訳ですが、何かと誤解が多い"bay"という単語だと思いました。

"bay window"における"bay"は、入江、湾のことではなく、柱間とか径間(わたりま)、格間(ごうま)などと呼ばれる、壁の支柱と支柱で区切られる空間を指す建築用語なのでした。


2022年4月8日金曜日

globe-spanning

映画か何かの話かと思いました。


A Japanese Yakuza boss and three others were busted in a globe-spanning scheme to buy missiles for Burmese rebels in exchange for massive amounts of drugs, federal prosecutors said Thursday.

(中略)

The alleged traffickers were planning to distribute the drugs in New York and provide heavy-duty weapons like surface-to-air missiles to two militant groups engaged in the ongoing violence in war-torn Burma, the US Attorney for the Southern District of New York said.
(Mark Lungariello. Yakuza boss schemed to buy missiles in exchange for meth, heroin: feds. New York Post. April 7, 2022.)


日本のヤクザ映画は米国でも有名だと思いますが、引用した記事の話はフィクションではなく、実際に起こったことです。

が、街中でドンパチやった、というレベルではなく、


globe-spanning scheme


という壮大さ(!?)

言うまでもなく、"globe"というのは地球のことで、グローバル(global)と言えば、地球規模、また世界規模のことです。

記事によれば、日本のヤクザがニューヨークでミサイルなどの銃器を調達し、それをビルマの反政府軍に提供し、見返りに違法薬物を調達する、という計画が囮捜査で摘発された、というものです。

世界を股にかけた悪行、とでも訳せるところでしょうか。

"globe-spanning"は悪事に限りません。用例をいくつか拾ってみました。


But the invention of the World Wide Web is creating a new digital economy, a globe-spanning network of information and services for almost every conceivable market, large or small.
(Fortune, 1998)

Chicago is the final stop for a five-city, globe-spanning tour of the 52 works in this show, a grouping that represents the cream of the Sara Lee art collection.
(Chicago Sun-Times, 2000)



2022年4月7日木曜日

Great Resignation

最近巷では、"Great Resignation"という言葉が聞かれるそうです。

一体、何のことなのでしょうか?


Google’s voluntary work-from-home policy ended on Monday, April 4. Now employees who didn’t apply for an extension or permission to work from home permanently have to come into the office three times a week.

(中略)

The possible end of the work-from-home era might be fueling the Great Resignation as workers seek out more flexible companies, says psychologist Anthony Klotz, the expert who coined the term. He recently predicted that the Great Resignation could last several more years as workers continue to “sort out” their lives. At Apple, workers have expressed interest in quitting rather than returning to the office.
(Colin Lodewick. Good riddance to work from home, Google’s former CEO says? Fortune. April 6, 2022.)


リモートワークを巡る労使間の対立の話題についてはつい先日も取り上げましたが、パンデミックの収束(果たして収束するのでしょうか!?)に伴って、オフィス勤務を求められる側は、それならば辞めて別の仕事を、と考える人も多いようです。

という訳で、米国では大量の離職者が発生しており、今後もその動きが加速するとも言われています。

"Great Resignation"という言葉は、テキサスA&M大学の教授が用いたのが始まりとされています。


For four months in a row — a third of the year — a record number of Americans quit their jobs.

It's like nothing else we've seen in two decades. So when organizational psychologist Anthony Klotz coined the phrase "the Great Resignation," it resonated across the workforce — and media. He said it took off after he was quoted by Bloomberg Businessweek on how to quit your job.
(Juliana Kaplan. The psychologist who coined the phrase 'Great Resignation' reveals how he saw it coming and where he sees it going. 'Who we are as an employee and as a worker is very central to who we are.' Insider. October 2, 2021.)


上に引用した記事は2021年のものです。

この記事では、リモートワークを続けられないから、辞める、ということではなく、パンデミックを機会に、仕事との向き合い方を見直すようになった人が増えた、ということです。

(The) Great〜の言い回しは、"(the) Great Depression"(大恐慌)という言葉を想起させます。

大離職(時代)、とでも訳しましょうか。

日本においてはアメリカ人のように権利を主張する人が少ないからでしょうか、リモートワークが叶わないから離職するというような話はあまり聞きません。


2022年4月6日水曜日

kludgy

記事の引用からどうぞ。


Twitter’s functionality has always been kludgy. Search, editing and sharing tools, for example, have improved at a painfully slow pace. That hasn’t served the company’s users or investors well. Twitter still hasn’t fully figured out how to manage advertising and marketing on the platform, either. Musk could bring fresh thinking to these problems.
(Timothy L O'Brien. How Will Elon Musk Change Twitter? Bloomberg. April 6, 2022.)


小生はフェースブックよりもツイッターの方に親しみを感じます。当ブログで取り上げるニュース記事もツイッター経由で仕入れることが多いです。

そのツイッターの株をテスラCEOのイーロン・マスク氏が買い増しし、筆頭株主に躍り出たと話題です。

マスク氏がツイッターの経営にどう参画するのか、注目されます。

その件に関する記事の一部なんですが、


kludgy


という見慣れない単語です。

これ、"kludge"という名詞から派生した形容詞だそうですが、"kludge"というのは、


各構成要素が適合していない設計の悪いコンピューターシステム
(研究社新英和大辞典)


だそうです。

ちなみに語源不詳となっていますが、Merriam-Websterによると、ドイツ語のklugから来ているとか。

しかしながら、ドイツ語klugは賢いという意味なので、矛盾するようにも思われますが。

興味深いことにAmerican Heritage Dictionaryによると、


Probably alteration of mid-20th century American military slang kluge, complex device with a simple function, perhaps of imitative origin or perhaps after the Kluge (paper feeder), a piece of printing equipment first manufactured in 1919 by Brandtjen & Kluge, Inc., and reputedly difficult to repair.


とあり、とあるメーカーの印刷機械の名称(その部品が修理困難だったという話!?)に由来する、アメリカ英語のスラングという説明です。

ツイッターの操作性に特に不満はありませんが、偶々聴いていたラジオのニュースでは、投稿内容を後で編集する機能を追加する計画があるとか。

最後にこれまた偶然ですが、ツイッターの通知が来ていたのでチェックすると、本日は小生のツイッターアカウント開設から13年目ということでした。





2022年4月5日火曜日

dig in one’s heels

新型コロナによるパンデミックが3年目に突入し、長らくリモートワークへと移行していた企業などでも、そろそろオフィスへの回帰を呼び掛けるということが始まっています。リモートワークでもある程度仕事をこなせ、またプライベートとの両立も出来ることを実感してきたオフィスワーカーの間では、完全オフィス勤務へ戻ってしまうのか、オフィスとリモートワークのハイブリッドがベストなのか、またその割合はどれくらいが適当なのか、といったことが高い関心事項となっています。

ニュース記事を斜め読みしていますと、アップルやグーグルなどのテクノロジー大手でも、スタッフに対してオフィスへの回帰を明確に呼び掛けているものの、従業員側はそれに対して反発しているという現実があります。


D.C.-area companies in businesses that are able to continue offering post-pandemic remote work are not embracing it as much as might have been thought would be the case. In fact, an overwhelming majority of hiring managers are digging in their heels against it.

“From the survey that we sent out, 65% of local managers want their teams to be on-site full time. Employers may believe the office is still the best place to work, to collaborate and be innovative,” said Trey Barnette, regional vice president at staffing firm Robert Half.
(Jeff Clabaugh. DC employers are showing resistance to remote work?  Wtop News. April 4, 2022.)


引用した記事では、ワシントンD.C.エリアの企業の話です。

ここでもやはり、雇用側と従業員側とで意識の差が明確なようですが、雇用側には完全オフィス勤務を主張する人が多いということのようです。

これに対して、従業員側はオフィスに行かなくて済む方が有難い訳ですが、現実は、


an overwhelming majority of hiring managers are digging in their heels against it


ということなのです。

"dig in one’s heels"というのは慣用句で、自分の立場に固執する、頑として譲らない、という意味です。

引用した記事では、"against"とあるのが理解を助けてくれますね。

この表現にはいくつかバリエーションがあって、"dig one’s heels in"という語順であったり、"heels"の代わりに、"feet"や"toe"が使われることもあるようです。

さて、"dig"とは地面を掘るという意味ですが、踵にしろ、爪先にしろ、足で地面を掘るというのは、自分の立ち位置をしっかりと確保する、ということで、譲らない、という意味合いになったものと思われます。

"dig in"には塹壕を掘るという意味もありますから、敵の攻撃に備えて自らを守る、という意味合いからも理解できるフレーズではないかと思います。

2022年4月4日月曜日

a thorn in one’s side

ウクライナの戦況に見通しが立たない中、隣国のハンガリーで議会選挙が行われ、現職のオルバーン氏が首相に再選されました。

既に3期12年在位しているところ、4期目の当選を果たした模様です。

問題は、強権的と言われるオルバーン氏が親露派であるというところで、EU諸国の中でも最もクレムリンに近いとされるところにあります。


Hungary's nationalist Prime Minister Viktor Orban declared victory in Sunday's nationwide election, with partial results showing his Fidesz party leading the vote by a wide margin.

(中略)

Orban, widely regarded as the most pro-Kremlin leader of the 27 nations of the European Union, has spent 12 years in power in Budapest. He is the country's longest-serving leader since the fall of communism in 1989 and has long been a thorn in the side of the EU.
(Matt Clinch. Nationalist Viktor Orban declares victory in Hungary election. CNBC. April 3, 2022.)


オルバーン氏については、記事中、


a thorn in the side of the EU


と表現されています。"a thorn"はとげ(棘)のことですから、何が言いたいかは大体分かるというものですが、この表現は成句で、


苦痛を与えるもの、悩みの種
(研究社新英和大辞典)


という意味です。直訳すると、脇腹に刺さったとげ、ということになるのですが、ランダムハウス英和では、「目の上のたんこぶ」という訳がありました。なお、


a thorn in one’s flesh


という場合もあるそうです。

興味深いことに、この表現は聖書の表現に因むそうで、新訳聖書のコリンとの信徒への手紙においてこの表現が使われています。(以下、聖書からの引用は新共同訳。)


それで、そのために思い上がることがないようにと、わたしの身に一つのとげが与えられました。
(コリントの信徒への手紙 12:7)


ここでの英語は、"a thorn in one’s flesh"(King James Version)となっています。

"a thorn in one’s side"については、以下に引用する民数記では「茨(いばら)」と訳されています。


もし、その土地の住民をあなたたちの前から追い払わないならば、残しておいた者たちは、あなたたちの目に突き刺さるとげ、脇腹に刺さる茨となって、あなたたちが住む土地であなたたちを悩ますであろう。
(民数記 33:55)


この他、"a thorn〜"は、聖書中の他の書でも見られるようです。


2022年4月1日金曜日

giveaway

米議会で、糖尿病治療薬であるインシュリンのコスト負担に月額の上限を設定する法案が可決された模様です。

700万人とも言われる糖尿病患者の薬剤費負担が社会問題となりつつある中での救済措置とも思われる立法ですが、果たして?


The House voted Thursday in favor of a bill to cap out-of-pocket costs on insulin at $35 a month, a policy Democrats hope will give them a concrete win to campaign on when they face voters in November as the rest of their health care agenda remains stalled.

(中略)

Despite concerns about the bill’s policy and strategy from both sides of the aisle, nearly all House Democrats as well as a dozen Republicans voted for it Thursday.

(中略)

The insurance industry tried to persuade lawmakers to oppose the measure, arguing it does not lower the actual price of insulin and could lead to higher premiums.

One insurance industry source close to the negotiations told POLITICO they’ve stressed that the bill “lets pharma off the hook,” calling it a “giveaway” to the drug industry.
(House passes insulin bill over insurers' opposition. Politico. March 31, 2022.)


実のところ、この立法は民主党議員の肝入りによるもので、今秋の選挙戦を見据えて成果をアピールするのが目的という指摘があります。有権者に阿る意図が見え透いているというところでしょうか。

また、患者負担に上限を設定というと聞こえは良いのですが、実際には製薬大手の価格設定には踏み込めていない、という批判が保険業界関係者から上がっています。

つまり、


the bill “lets pharma off the hook,” calling it a “giveaway” to the drug industry


ということなんですが、"giveaway"という単語に着目しましょう。

"giveaway"と聞いて思い浮かべるのは、タダで貰えるもの、景品、という意味です。

記事のコンテクストでも分からないでもありませんが、辞書を引いてみました。これ以外にも、うっかりと漏らしてしまうこと、といった意味があるのですが、これはあたりませんね。

ランダムハウス英和では、


(特定の階層・地域・州などだけに有利な)不公平税法(立法)


とあり、これが相当するのではないかと思われました。

つまり、今回の立法で笑うのは製薬業界だけ、保険会社にとっては(また恐らく被保険者にとっても)良いことはない、不公平な内容の法案だ、ということです。

"giveaway"のこのような意味はアメリカ英語特有のものなのか分かりませんが、辞書で確認できるのはランダムハウス英和とCollins Dictionaryのオンライン版(下記)くらいです。


a tax law or other legislation designed to benefit one segment of the population, one area or state, etc


American Heritage Dictionaryにも載っていませんでしたので、ちょっと珍しい用法の部類に入るのではないかと。