最近30日間のアクセス数トップ3記事

2012年12月31日月曜日

ドイツ紙が大ポカ ― obituary

2012年も今日でお終いです。えいご1日1語は期せずして最終の投稿が本日12月31日(月)となりました。今年も当ブログをご愛読いただきありがとうございました。

ネタを探しながら色々なメディアを斜め読みしましたが、"killed"とか、"xxx deaths"とか、トップニュースは暗い話題ばかりです。せめて明るい話題をと思いましたがなかなか見つかりません。

そんな中、ドイツの新聞社が大ポカをやらかしたという記事を見つけました。


Magazine mistakenly publishes Bush obit

Germany's respected news weekly Der Spiegel has mistakenly published an obituary for former US president George Bush senior, hours after a family spokesman said the 88-year-old was recovering from illness.
(The Sydney Morning Herald. December 31, 2012.)


大ポカの内容とは、前アメリカ大統領のジョージ・ブッシュ(父)氏の死亡記事を誤って掲載したというものです。

ブッシュ前大統領がICU(集中治療室)で治療中というような報道があったのは11月でしたが、その後病状が改善しICUから出たそうですが、何かの手違いで死亡記事を載せてしまったようです。

問題の死亡記事はウェブサイトに掲載されたもので、閲覧者からの指摘を受けてすぐに削除され、その間"only a few minutes"だったそうですが大失態です。

さて、今日の単語、"obituary"は死亡広告、死亡記事のことです。新聞やメディアに取り上げられるのは著名人だけですから、"obituary"の対象になるのは存命中にそれなりに功を遂げた人だけです。日本語には、“点鬼簿”という表現があります。今年も多くの著名人が鬼籍に入りました。年末テレビを見ていると2012年に亡くなった著名人の特集をよくやっていますね。

"obituary"の語源に目を向けてみましょう。

American Heritage Dictionaryによると、"obituary"はラテン語のobituarius、さらにobitusに由来するとあります。obitusとは、死の意味でこれは、obireというラテン語動詞に由来します。obireとは、ob-("toward"の意)と-ire("to go")から成っています。つまり、(あの世へ)行く、ということでしょうか。


2012年12月28日金曜日

アメリカ俗語特集(3) ― pokey

アメリカ俗語特集、今日は3日目です。

昨日の記事と引用箇所は同じですが、今日の単語は、"pokey"です。


Douglas, who is doing a nearly 10-year stretch for dealing crystal meth and smuggling in drugs for himself while in the pokey, was inadvertently exposed as a turncoat by his shrink during a bail hearing in 2010.
(Brad Hamilton. Michael Douglas' son seriously injured in prison after bounty placed on him. New York Post. December 16, 2012.)


"poky"というスペルもあるそうです。意味は、“ブタ箱”、つまり刑務所、牢獄の意味です。

この単語の語源欄を見ると、"pogey"という単語に由来するようです。そう言われて、"pogey"を引いてみると、"pogey"という単語にも、監獄という意味があります。

以上はランダムハウス英和辞書の語源解説なのですが、一方、American Heritage DictionaryやMerriam Websterでは、"origin unknown"とされています。

ところで、"pokey"とスペルが近い単語に"poke"がありますが、この"poke"にも刑務所、監獄の意味があります。

この"poke"には、“小さな袋”の意味もありますが(a pig in a poke)、狭苦しい場所、窮屈な場所、という意味から、さらに、刑務所、監獄を意味するようになったという説明はもっともらしく聞こえます。(以上は、Oxford Dictionary of Euphemismsによります。)

記事はこちら

いよいよ年の瀬、裏社会の隠語の特集は今日で終わりにします。


2012年12月27日木曜日

アメリカ俗語特集(2) ― stretch

昨日の記事の続きで、アメリカ俗語特集の2日目です。

今日の単語は、"stretch"です。運動前にやるストレッチと同じ単語ですが、怖い怖い闇の世界のコンテクストでは、有罪判決を受けた容疑者が壁の中で過ごす“刑期”のことを意味します。


Douglas, who is doing a nearly 10-year stretch for dealing crystal meth and smuggling in drugs for himself while in the pokey, was inadvertently exposed as a turncoat by his shrink during a bail hearing in 2010.
(Brad Hamilton. Michael Douglas' son seriously injured in prison after bounty placed on him. New York Post. December 16, 2012.)


懲役刑がなぜ“ストレッチ”なのでしょうか?刑務所の囚人部屋に入れられて、“ストレッチ”することくらいしかなくなるという意味でしょうか。

この俗語表現についての語源は明らかではありませんが、Oxford Dictionary of Euphemismsによりますと、


stretch of years


という表現に由来するものであるとの解説があります。"stretch of years"という表現における、"stretch"とは一続きの期間を表しているものですが、なるほど懲役刑の刑期とは通じているように思われます。

記事はこちら


2012年12月26日水曜日

アメリカ俗語特集(1) ― rat

ギャング映画を地で行くような、そんなニュースではないかと思います。

1週間くらい前のニュース記事なのですが、私個人にとっては「ブラックレイン」の映画が特に印象深い、Michael Douglasさんの名前がヘッドラインにあります。


Michael Douglas' son seriously injured in prison after bounty placed on him


マイケル・ダグラスさんには息子がいるそうですが、この息子さんというのが麻薬中毒だったらしく、麻薬密売の逮捕歴もあるとか。有名人のゴシップにはあまり関心はないほうですが、過激な内容のタイトルにつられてアクセスしたような次第です。

有名人の2世に色々と問題があって世間を騒がせるというのは日本でもアメリカでも同じでしょうか。


The jailed, heroin-addict son of Oscar-winning actor Michael Douglas suffered a broken leg and finger behind bars after a crime-family captain put a $100 bounty on him for being a “rat,” a prison insider says.
(Brad Hamilton. Michael Douglas' son seriously injured in prison after bounty placed on him. New York Post. December 16, 2012.)


さて、今日からのえいご1日1語では、このギャング映画を地で行くような記事から、恐らくはヤクザまがいの世界でしか通用しないような隠語(俗語)表現を取り上げたいと思います。

まず、上記の引用に出てくる、"rat"ですが、これは、


裏切り者


を意味するアメリカ英語の俗語です。記事中には、"turncoat"(変節者)という表現も出てきますが、上記で引用した冒頭部分での、引用符付きの"rat"は隠語ならではのインパクトがあるように思えます。

なぜ裏切り者のことを"rat"と言うのでしょうか?ネズミという小動物の小賢しさのイメージからでしょうか?(トムとジェリーを思わずイメージしてしまいますが。)

ストーリーを読むと、マイケル・ダグラスの息子は麻薬の取引で、いわゆるその筋の組織に絡んでいたそうなのですが、逮捕されるに及んで、当の組織に不利な証言をしたことから、組織から裏切り者とされ、その命(?)に懸賞金(bounty)まで掛けられたということですから、まさしくギャング映画を見るようです。

記事はこちら


2012年12月25日火曜日

サンタ泥棒 ― Santa impostor

今日は12月25日、クリスマスです。昨日はクリスマスイブ、皆さんのところにサンタクロースはやって来ましたか?

多くの子供たちがサンタクロースのプレゼントに期待しています。

が、中には有難くないサンタも。


He's supposed to give gifts and bring joy around the world, but a man dressed as Santa has stolen a large sum of cash from a Sydney shopping centre.

The Santa impostor broke into a store's office and raided a safe at Westfield shopping centre in Liverpool, south-west Sydney, about 8pm on Sunday, police said.

Police are appealing for help with their inquiries and have released an image of the man.
(Ilya Gridneff. Bad Santa steals cash from safe. The Sydney Morning Herald. December 24, 2012.)


オーストラリア、シドニーのショッピングセンターに現れたサンタクロースは、実はサンタの格好をした泥棒でした。ショッピングセンター内のある店舗事務所に押し入り、金庫破りをした疑いがもたれています。

今日の単語、"impostor"とは、詐欺師、ペテン師を意味すると辞書にありますが、American Heritage Dictionaryの定義では、


One who engages in deception under an assumed name or identity.


とあり、その詐欺、ペテンの方法とは偽名や偽のアイデンティティーを騙るところにあります。

"Santa impostor"とはつまり、見かけはサンタの格好をしているが実は泥棒、ということです。

皆さん、ご注意を!


2012年12月24日月曜日

飲酒運転は許されません! ― DUI

クリスマスイブです。今年は三連休ですが、これから年末の慌ただしさがピークを迎えます。忘年会やクリスマスパーティーなど、お酒を楽しむ機会に事欠きませんが、飲酒運転は許されるものではありません。

英語で飲酒運転のことを、"DUI"と表現することをご存知でしょうか?

D.U.I.とは、


driving under the influence


の頭文字を取ったものです。"the influence"とは、


the influence of alcohol


のことです。


Police: Sen. Crapo arrested, charged with DUI

ALEXANDRIA, Va. (AP) — Idaho U.S. Sen. Michael Crapo was arrested early Sunday morning and charged with driving under the influence in a Washington, D.C., suburb, authorities said.

Police in Alexandria, Va., said Sunday that the Idaho Republican was pulled over after his vehicle ran a red light. Police spokesman Jody Donaldson said Crapo failed field sobriety tests and was arrested at about 12:45 a.m. He was transported to the Alexandria jail and released on an unsecured $1,000 bond at about 5 a.m..
(USA Today. December 23, 2012.)


アメリカの上院議員が飲酒運転で逮捕されたというニュースです。記事のタイトルに、"DUI"が使われています。

DUIと似た表現に、"DWI"というものがあります。これは、


driving while intoxicated


の頭文字を取ったものです。意味は同じです。


2012年12月21日金曜日

元オリンピック選手が衝撃告白 ― escort

アメリカの陸上中距離種目の女性選手で、1992年のバルセロナオリンピックを始めオリンピックに3度出場したSuzy Favor Hamiltonさんが、"escort"として働いたことがあることを認めたというニュースが関係者に衝撃を与えているようです。

ところで、"escort"って何のことでしょうか?


Olympic runner Suzy Hamilton admits to double life as an escort
(Boston Herald. December 20, 2012.)


Suzy Favor Hamilton says she has worked as escort
(San Francisco Chronicle. December 20, 2012.)


Former U.S. Olympic runner Suzy Favor-Hamilton admits to working as Las Vegas escort
(Vancouver Sun. December 20, 2012.)


3-TIME US OLYMPIAN WORKED AS ESCORT
(Fox Sports. December 20, 2012.)


上記は各紙の見出しですが、判で押したように(?)、"escort"という単語を使っています。私は、この"escort"の意味が最初分からなかったのですが、何となくスキャンダラスな匂いを感じながら記事を読み始めたところ、下記で意味が明らかになりました。


Suzy Favor Hamilton was such a Midwestern sports icon the Big Ten’s female athlete of the year award is named for the former Wisconsin runner.

That image is in stunning contrast with Hamilton’s admission that she has spent parts of the last year as a $600-per-hour call girl.
(Olympic runner Suzy Hamilton admits to double life as an escort. Boston Herald. December 20, 2012.)


"$600-per-hour call girl"(時給600ドルのコールガール)という表現が、"escort"を説明しています。

ところが、辞書で"escort"を引いてもそのような意味は確認できません。これは不思議ではないでしょうか?

ランダムハウス英和では、


要人の護衛者、付添
(社交上の集まりに)付き添う異性、エスコート役


などとあります。“コールガール”の意味はどこにも見えません。

American Heritage Dictionaryも同様で、


One or more persons accompanying another to guide, protect, or show honor.
A man who is the companion of a woman, especially on a social occasion.


などとあり、護衛役、ガイド役、付添役、の意味でしかありません。

“エスコート”というと、綺麗な女性に付き添う紳士をイメージしますが、それは過去の話で、現代では売春婦の意味になり下がってしまったのでしょうか。

"escort"という単語は、元々“護衛する”という意味のラテン語excorrigereから、イタリア語などを経て生まれたものであると語源欄の解説にあります。語源的には、"correct"という単語と同根のようです。

つまりその心は、正す、ということ、おかしな方向に行かないようにしっかりガイドする、付き添う、ということなのだと思うのですが、どちらかと言えば後ろ暗いイメージのあるセックス産業の単語になってしまったというのは語源的に見て皮肉なものです。

というようなことをつらつらと考えていたところ、Oxford Dictionary of Euphemismsを持っていたことを思い出し、"escort"を引いてみると、ありました!

a paid heterosexual partner


"escort"という単語は売春婦の婉曲表現ということであれば、メディア各社が判で押したように見出しに"escort"を用いたのも何となく分かるような気がします。


2012年12月20日木曜日

コーヒー好きの方には朗報 ― Joe

コーヒーをよく飲む人は口腔癌にかかりにくい(Coffee drinkers less likely to die from oral cancers)、という疫学調査の結果が話題になっています。

コーヒーが大好きな方には朗報ではないでしょうか。


It’s been proven that a daily cup of Joe has many health benefits – ranging from cardiovascular and skin protection to warding off certain diseases like Parkinson’s.

Now, a large-scale study from the The American Journal of Epidemiology has found coffee drinkers are less likely to die from oral cancer, the New York Times reported.
(Coffee drinkers less likely to die from oral cancers. Fox News. December 19, 2012.)


さて、引用した記事の冒頭、


a daily cup of Joe


とは見慣れない表現ですがご存じでしょうか?

"Joe"という人の名前に、“コーヒー”の意味があるとは知りませんでした。日本人なら、“太郎”に当たるような平凡な名前だそうですが、辞書にもちゃんと、“コーヒー”の意味が出ています。

気になるのは語源です。

American Heritage Dictionaryによると、


Short for (old black) joe, military slang for coffee, from the title of a song by Stephen Foster.


とあり、アメリカ人が軍隊で使っていたスラングだそうですが、“Old Black Joe”という歌のタイトルに由来するそうです。

ところが、Merriam Websterによると、


perhaps alteration of java
First Known Use: 1927


とあり、説明が違っています。

どちらが正しいのでしょうか?

よく分かりませんが、何となくAmerican Heritage Dictionaryの語源に親しみを感じます。歌の歌詞とは直接関係なさそうですが、ブラックコーヒー(black coffee)と"Black Joe"の韻を踏んでいるということもあるようにも思われます。

ということで、本記事のラベルには、“人の名前”のラベルもつけておきました。


2012年12月19日水曜日

zing

アメリカでまたしても悲惨な銃乱射事件が発生し、尊い子供の命が奪われました。

またか、という感があります。

そして事件を受けて繰り返される銃規制に関する論争。これも、またか、と思わずにいられません。

下記の引用は、ニューヨークのブルームバーグ市長が銃規制に関してオバマ大統領を批判している記事からです。


Mayor Bloomberg yesterday unleashed his strongest criticism yet of President Obama’s record on gun control, saying thousands will die if the president doesn’t act, and ripping his current policies as “ridiculous.”

Obama needs to show leadership following Friday’s elementary-school massacre, Bloomberg said, or more deaths will follow.

(中略)

Bloomberg, who founded the Mayors Against Illegal Guns coalition, then zinged Obama for signing 2009 legislation allowing people to carry guns in national parks and Amtrak trains.
(Mayor Bloomberg calls on President Obama to take action on gun control. New York Post. December 17, 2012.)


引用の最後の段落に、"zing(ed)"という見慣れない単語があります。コンテクストから意味はほぼ明らかですが、知らない単語でしたので辞書を引きました。

色々な意味があるようですが、米俗語ということで、


痛烈に非難(批判)する


という意味で用いられる動詞だそうです。

"zing"という単語は元々擬声語、擬音語で、“ヒューン”とか、“ビューン”など、物体が高速で移動する様を表現するものだということです。車が高速でびゅんびゅん走っている様、また矢などがヒュンと飛んでいく様、などです。

その意味を基本として発展したのかどうかよく分かりませんが、銃弾やボールなどを打ち込む、投げつけるという意味でも用いられます。

批判、非難の意味はそこからさらに発展したものでしょうか。


2012年12月18日火曜日

今週金曜日、地球滅亡!? ― doomsday

"doomsday"という言葉をご存知でしょうか?この世の終わりの日、というほどの意味です。まさか!?

馬鹿げた話ではありませんか?


Have you heard the doomsday theory about how a rogue planet is going to crash into Earth on Friday and kill us all?

Amateur astronomer Bill Hudson says that it simply isn't true, and he can prove it — scientifically.

The prediction is supposedly based on the end of a cycle of the Mayan calendar on Dec. 21, 2012, which some have interpreted to mean that the Mayans believed the world would end on that day. According to the prophecy, doom may come in a variety of ways, but one key claim is that a 12th planet in our solar system, called Nibiru and orbiting the sun every 3,600 years, will ram into the Earth and destroy it.
(Shirley S. Wang. The End of the World Is (not) Nigh. The Wall Street Journal. December 14, 2012.)


今週の金曜日は2012年12月21日、金曜日、ですが、その日に太陽系のとある惑星(Nibiru)が地球に衝突するというまことしやかな(??)風説がささやかれているようです。

困ったのがこうした風説を本気にしてしまう人達です。(そう言えば、つい先日、愚息がこの話を食事の時に話していたことを思い出しました。)

若い人ほど信じる傾向があるのでしょうか、自殺者まで出ているということで、上記の記事では科学的な根拠の無いこの"doomsday theory"を批判的に取り上げているものです。記事中にも出てきますが、www.2012hoax.orgというサイトでは、"debunking the 2012 doomsday"として、"doomsday theory"を利用した詐欺などに警鐘を鳴らしています。

さて、英語の話題に戻りますと、"doomsday"という単語は、古英語では、"domesdaeg"でした。

"domes"(dom)とは、審判のこと、"daeg"は"day"(日)の意味です。つまり、最後の審判の日を意味したものです。

心配性の方々へ、今週の金曜日、12月21日は世界の終わりではありません。学校では2学期の終わり、つまり終業式の日、次の日から楽しい冬休みです!


2012年12月17日月曜日

衆院選終わる ― deliver on

12月16日、日曜日の衆院選が終わって一夜明けました。新聞の朝刊は1面に大きな見出しで、自民党、公明党が320議席を獲得し、与党・民主党の惨敗を報じています。投票率が低かったという事実が影を落としていますが、結果は結果。

海外メディアに目を向けると、米国を始め多くのメディアが日本の衆院選結果を大きく報じています。

まず目に付いたのが、今回の結果を受けて新しく首相となるであろう、安倍・自民党総裁に関する記事です。下記はロイターの見出しです。


Japan's next PM Abe must deliver on economy, cope with China
(Reuters. December 17, 2012.)


今日は、"deliver on"という表現を取り上げたいと思います。

"deliver"という動詞は、“配達する”という意味がありますが、ここでは、"deliver on"であり、自動詞として用いられています。


(約束・誓いなどを)果たす


という意味です。特に政治や選挙の話題としては、


公約を果たす


という表現になるでしょうか。"deliver (on)"という表現は、政治、選挙のコンテクストでよく使われる表現です。今回の衆院選の報道においても、簡単に見つけることができます。言うまでもなく、与党・民主党が今回大幅に議席を失うことになった理由が、マニフェストや公約に謳った公約を果たせなかったことに大きく関連しているからでしょう。


The LDP, which governed for all but 11 months between 1955 and 2009, has capitalised on popular anger over the DPJ government's failure to deliver on a promise to replace pork-barrel politics with a new focus on families, welfare and healthcare.
(Japanese voters go to the polls. The Guardian. December 16, 2012.)


LDP(Liberal Democratic Party of Japan)は自民党、DPJ(Democratic Party of Japan)は民主党のことです。(ご存知かとは思いますが、念のため・・・。)


Since the landslide DPJ win, critics say the party has failed to deliver on a series of promises, including vows to crackdown on wasteful government spending, and promises of cash incentives to encourage young couples to start families.
(Japan Votes in Key Parliamentary Polls. Voice of America. December 15, 2012.)


上記引用の2つの記事では、"deliver on"に続く名詞として、"promise"が使われています。


The results were a rebuke to Prime Minister Yoshihiko Noda's Democrats for failing to deliver on a series of campaign pledges and for doubling the sales tax to 10 percent to meet growing social security costs as the population ages and shrinks.
(Exit Polls Suggest Japanese Opposition Party Victory. NPR News. December 16, 2012.)


この引用記事では、"(campaign) pledge"という単語が使われています。

どちらも、“(選挙)公約”の意味であると解釈して差し支えないでしょう。

新しく政権を担う自民党にも、"deliver on"することが求められています。冒頭引用したロイターの記事では、


deliver on economy


ですから、経済再生(デフレ脱却)で成果を出すことが特に強調されているようです。期待に沿うことができるのでしょうか?果たしてどうなることでしょう。


2012年12月14日金曜日

面通し ― line-up

“ラインナップ”(英語では、"lineup"もしくは"line-up")と聞いてまず思い浮かべるのは、製品のラインナップ、つまりある製品の型違いや色違いなどの一連のシリーズ、という意味だと思いますが、コンテクストが犯罪捜査ということになると、容疑者の“面通し”という意味になります。


Police are questioning the heartless brute who allegedly mugged an elderly woman and stole her heirloom wedding ring in the Meatpacking District, authorities said.

The suspect has been linked to three other elevator robberies and will undergo lineups later today, police said.
(Jessica Simeone. Cops quiz heartless 'wedding-ring thug' suspect: authorities. New York Post. December 12, 2012.)


上記の引用は強盗事件に関するものですが、ある事件の容疑者が他の強盗事件にも関与した疑いがあるということで、容疑者の"lineups"(面通し)を行うことになった、というものです。

私が日本語の“面通し”という表現からイメージするのは、テレビドラマなどで見る、容疑者が取調室で刑事に尋問されているのを、目撃者や被害者が取調室の外から、マジックミラー越しにそっと確認する、というようなものなのですが、英語の"lineup"は複数の容疑者を横一列に並べるというもののようです。

まさしく、容疑者が“ラインナップ”されているわけです。

ちなみに、"lineup"はアメリカ英語の表現で、イギリス英語では、


identity parade(あるいは、identification parade)


というそうです。

2012年12月13日木曜日

波及効果 ― trickle-down

知りませんでしたが、先日グーグルのメールサービスであるGmailに不具合があったそうです。サービス中断は20分間ほどに及んだということです。


Many people were left frustrated yesterday when Google's popular email service Gmail crashed for around 20 minutes, but the cause of the crash portends big problems for future technology.

The dire warning comes after Gmail failed yesterday because of a glitch in Google's cloud-computing service Sync, according to Wired.com.
(Michael Blaustein. Gmail's crash a preview of future technology disasters. New York Post. December 11, 2012.)


私もGmailアカウントを持っていて日々アクセスするのですが、この記事に興味を持ったのは、


Gmail's crash a preview of future technology disasters


というタイトルに引かれたためです。今回のGmailの不具合がネット上で将来発生するかもしれない大規模なトラブルの前兆である、というように読めます。どういうことなのかと興味を持ったのです。

記事を読みますと、今回のトラブルはいわゆるクラウドサービスを管理するサーバーに不具合が見つかり、それがGmailやその他、クラウドサーバーに依存している全サービスに影響を及ぼしたらしいのですが、インターネットがどんどん進化していってこれからはクラウドが主流となることが予測される中、今回のような不具合がもたらすかも知れない不利益は計り知れないものになるかもしれない、というような論旨でした。

で、この記事の最後の段落にある締め括りが下記です。


Yesterday's problem at Google demonstrates the downside because any little glitch in the main servers will cause a trickle down of problems for every single user who tries to access the server.
(ibid.)


"trickle down"(恐らく、ここでは"trickle-down"とハイフンでつなぐのがふさわしいと思われます)が今日取り上げる単語です。

見慣れない表現ですが、元は経済用語のようです。ランダムハウス英和辞書では、“通貨浸透(説)”とあります。政府の財政支出を大企業に向けることで次第に規模の小さな企業や一般大衆にその効果が波及する、というような論理のことを言うようです。カタカナでも“トリクルダウン理論”として知られるそうですが、私は知りませんでした。

さて、難しい経済の理論は置いておいて、上記の引用記事における、"trickle down"はどのように解釈すべきでしょうか?

まず、"trickle"という動詞の意味をチェックすると、


(液体などが)少しずつ流れる; ぽたぽたと落ちる(流れる、落とす)


という意味であることが分かります。少量が移動するというイメージですが、経済用語の“トリクルダウン理論”も考えると、“波及”という言葉が思い浮かびます。

“浸透”でもよいかも知れませんが、ことGoogleのサーバーのトラブルについて、メインのサーバーでの不具合が、(クラウドサービスに依存しているサービスを利用する)全ユーザーに影響を及ぼす、というコンテクストであり、“波及”がふさわしいように思われます。


2012年12月12日水曜日

サメを飛び越えるとは? ― jump the shark

単刀直入に、"jumped the shark"という表現をご存知でしょうか?見るのも聞くのも初めてだった私は下のような記事のタイトルを見て意味不明でした。


Has 'Homeland' jumped the shark?
(Linda Stasi. New york Post. December 11, 2010.)


タイトルが分からないでも記事を読んでみたら分かるかもとアクセスしたのですが、これがまたよく分かりません。分かったのは、'Homeland'というのがテレビ番組のタイトルらしいということと、"jumped the shark"は間違いなく成句の類で、意味合いとしては、もはや(視聴者に)受けなくなった、というようなネガティヴな意味合いで使われているようだ、というくらいでした。

中身についてある程度の知識がないテーマについて、英文で読んで解釈していくのは骨が折れます。上記の記事についてはとりあえず諦めて、"jumped the shark"はよく使われる成句であろうという予測の元、グーグルニュースで検索をしてみました。

そこで色々とヒットした記事の中で、下記の記事はいかがでしょうか?


Friday Poll: Has Facebook jumped the shark?

Google+ and Pinterest are growing. Are Facebook's glory days already behind it?

A lot of things have jumped the shark. The Fonz did it first, literally donning water skis for the stunt and marking the beginning of the end for "Happy Days."

MySpace did it. Even the phrase "jumped the shark" has done it.

And what about the most popular social-networking site? In some people's eyes, Facebook is pulling on its swim trunks and eyeing the big beastie.

Bradley Horowitz, chief of rival Google+, argues that Facebook has already landed on the other side of the shark. Horowitz recently called Facebook out for the way it implements ads and for irritating users and brands alike. Granted, his opinions on this are going to be absolutely biased.
(Amanda Kooser. CNET. November 30, 2012.)


フェースブックの話題なら多くの方に馴染みがあるのではないかと思います。私はフェースブックユーザーではありませんが、当ブログでも今年はフェースブックの話題に事欠きませんでしたので、ある程度は分かります。

さて、フェースブックはサメを飛び越えたか("jumped the shark")か否か?あなたはどう思いますか?(投票してください、というのがこの記事の話題です。)

記事の冒頭、数段落は何を言っているのかすぐには分かりづらいですが、上記引用の最終段落を読めば、"jumped the shark"の意味するところが何となく分かるはずです。

最初に想定した通り、"jumped the shark"はここではフェースブックによって提供されるサービスがユーザー受けしなくなった、というような意味で用いられていると考えることができます。

このフレーズの由来はどこにあるのでしょうか?つまり、なにゆえ、“サメを飛び越える”ことがこのような意味になるのでしょうか?

Wikipediaオンライン辞書等の解説にありますが(ランダムハウス英和にエントリはありませんでした)、"jumped the shark"の由来はテレビ番組なのだそうです。

1970年代のアメリカでのあるテレビドラマのシリーズで、登場人物が水上スキーに乗ってサメを飛び越えるシーンがあったそうなのですが、そのシーン自体がその番組の凋落(要はこれ以上視聴者を引き付けるようなネタや魅力が尽きた、ということでしょうか)を印象付けるものであったということで、象徴的に"jumped the shark"というフレーズが定着したのだそうです。

基本的にはテレビ番組について用いられることが多く、由来となった上記のテレビ番組と同じく、シリーズ物などで視聴者が見たいと思うそのピークを過ぎてしまったものを"jumped the shark"と表現するようですが、表現が次第に定着するに従ってテレビ番組に限らず、ピークを過ぎてしまったもの、受けなくなってきたものについてこのフレーズが使われるようになったようです。

それにしても、随分と変わった語源ではないかと思います。

試験に出ることはまずないでしょうが、知っていれば鼻高々かも・・・。


2012年12月11日火曜日

いたずら電話が引き起こした悲劇 ― prank call

国内のマスコミでも報道されているようですのでご存知の方も多いかと思いますが、いたずら電話が悲劇を引き起こしました。

イギリスのウィリアムズ王子と結婚したKate Middletonさんについて、おめでたの報道があったのはつい先日だったかと思いますが、その後つわりなどを訴えて入院しているとの報道が続きました。

オーストラリアのラジオ番組のDJが、エリザベス女王になりすまして病院に電話をかけたところ、本人と信じて疑わなかった看護師がカモにされてしまいました。当の看護師はそのことを苦にして自殺するという悲劇が起きました。


The Aussie DJs who pranked the hospital where Kate Middleton was being treated, apparently driving a nurse to kill herself, broke their silence yesterday, saying they never thought their trick would work.

“We wanted to be hung up on,” said Mel Greig.

In a joint interview with Australia’s “A Current Affair,’’ her co-host, Michael Christian, said their production team thought of the idea just before going on air.

“[We] just had the idea for just a simple harmless phone call . . . We thought . . . it was going to go for 30 seconds [and] we were going to be hung up on,” he said.

(中略)

She added, “These prank calls are made every day on every radio station in every country around the world and . . . no one could’ve imagined this to happen.”
(David K. Li. DJs break silence on 'royal' nurse's suicide, saying they can't believe prank worked. New York Post. December 10, 2012.)


今日の単語、"prank"は、いたずら、悪ふざけを意味します。"prank call"は、“いたずら電話”のことです。

上記の引用は、いたずら電話をしたラジオ番組のDJ2人が、今回の悲劇の後初めてインタビューに応じたものです。記事には看護師が自殺するに至ったいたずら電話の内容のトランスクリプトへのリンクがあります。内容は生々しく、看護師が偽のエリザベス女王の質問にまじめに答えており、ところどころはプライバシーに関わる情報もありカットされています。

インタビューでは、DJの2人はまさか看護師が真に受けるとは思わなかった、すぐに電話を切られると思ったという旨のことを涙ながらに説明しています。

すべて後の祭りですが、悲劇という他ありません。


2012年12月10日月曜日

“マイル”の意外な用法 ― mile

今日のタイトル、“マイルの意外な用法”とはやや思わせぶりですが、こんな用法があったとは知りませんでした。

“マイル”というのは、距離の単位のマイルのことです。飛行機のマイレージでもお馴染みかと思います。

日本はメートル法の国ですから、マイルと言われてもピンと来ない人もいるかもしれません。私も以前はそうでしたが、1マイルは約1.6キロ、と頭で換算しています。アメリカに滞在した際、道路標識も自動車のメーターもマイル表示だったのがきっかけで覚えてしまいました。

さて、本題ですが、下記の引用記事を読んでみましょう。


Two boys, ages 7 and 11, are accused of trying to carjack and rob a woman outside of a Portland, Ore., church with a loaded weapon, according to reports Sunday.

Portland police said the juveniles approached Ami Garrett, 22, of southeast Portland on Saturday as she waited for her parents in the Freedom Foursquare Church parking lot in her truck.
(Erik Ortiz. Portland, Ore., police capture two boys, ages 7 and 11, accused of attempted robbery, carjacking. New York Daily News. December 9, 2012.)


アメリカ・オレゴン州で、7歳の11歳の子供が女性に拳銃を突き付けて車や金品を奪おうとした事件があったとのことです。

恐るべし、銃社会、アメリカ。

女性は拒否しましたが、幸い殺されることも怪我をすることもなく、無事でした。女性は拳銃を見せられた際、それが本物だとは思わなかったそうですが、弾も込められており、本物の拳銃であったことが分かっています。

女性がテレビのインタビューに答えているくだりが以下です。


“They told me they were going to blow my brains out if I didn't give them something,” she said. “My heart was beating a million miles an hour. I definitely didn't think I was going to get out of there alive. I thought I was going to die.”
(ibid.)


お気づきでしょうか?


My heart was beating a million miles an hour.


これが今日取り上げたい表現、“マイル”の意外な用法です。

拳銃を突きつけられて、心臓がバクバクした、という意味だと思いますが、殺されるかもしれないという場面ですからそりゃそうでしょう。

ところで、心臓が、"a million miles an hour"(のスピード)でビートする、とはちょっと変わった表現だとは思いませんか?

"a million miles an hour"という表現は、


at a speed of 60 miles an hour(時速60マイルのスピードで)


という表現と同じですが、移動の速さを示すものです。心臓が早鐘を打つことを言うのに、スピードの表現を用いていることにやや違和感がありました。

1時間に百万マイル(で走った?)くらいのスピードで経験するような心臓のバクバクした感じを言わんとしているのだと解釈することもできるかも知れません。勿論、時速百万マイルというのはありえないスピードですが・・・。

ここで、ふと思ったのが、"mile (an hour)"という表現はひょっとして、単純に物理的なスピードを示す以外に、上記のようなコンテクストでの強意表現として用いられることがあるのだろうか、ということです。

調べてみると、どうやら答えは、“Yes”のようです。

大抵の英和辞書に載っていますが、


talk a mile a minute


という表現があり、これは、“早口でひっきりなしにしゃべり続ける”(ランダムハウス英和)という意味なのだそうです。

この表現も、スピードの表現(分速1マイル)が強意表現として用いられている点で、"million miles an hour"と同じであると言えます。

ちなみに分速1マイルは時速60マイル(時速約96キロ)であり、走ることを考えるとあり得ないスピードですが、自動車などでは速いとは言えありえないスピードではありません。その点、"million miles an hour"というようなどんな手段でもあり得ないようなスピードの強意表現とちょっと違いますが。

ネットで検索すると、"a mile a minute"という表現は、"very fast; quickly"の意味で比喩的に用いられる口語表現であるというものもありました。

"very fast; quickly"と言われればそれまでですが、“心臓が時速100万マイルで早鐘を打ち”という表現はやはりユニークではないでしょうか。


2012年12月7日金曜日

空港での手荷物検査にご注意! ― fleece

年末年始が近づいていますが、この休暇に海外旅行など計画されている方も多いのではないでしょうか?

海外旅行となると飛行機で移動することになりますが、空港でのセキュリティチェックの厳しさは増すばかりで、なるべく時間をかけずに通過したいと思うものですが、チェックを待つ長い行列や、靴を脱いだり、PCは取り出して別のトレイに載せたりという面倒さ、金属探知機で引っかかれば決して気分がよいとは言えない"pat-down"をされたり、と挙げればきりがないくらいストレスのたまるプロセスです。

ところで、我々乗客は調べられる立場であり、調べるのは検査官。これは当たり前のことですが、何だか我々乗客が容疑者で、調べる立場の検査官は正義、のような感覚をもってしまうのもこのプロセスの嫌なところです。

ところが!調べる側の検査官にも悪い野郎が!

私は想像したこともありませんでしたが、アメリカでは検査官が手荷物検査で乗客の持ち物をくすねるというインシデントが増加しているのだそうです。


TSA screeners are doing their holiday shopping in your luggage.

Port Authority cops on Tuesday busted a crooked 32-year-old TSA screener for stealing iPads and laptops from checked baggage at JFK Airport as part of a sting into the increasing problem of sticky-fingered screeners.

Screener Sean J. Henry of Brooklyn was arrested leaving the airport Tuesday with two Port Authority GPS-equipped “bait iPads,” a 17-inch MacBook Pro, and possibly another laptop in his bag; a stolen Apple laptop was also found in his home, according to a law enforcement source.

(中略)

The sting comes after New York Sen. Chuck Shumer called on the agency to conduct stings and to subject screeners to the same searches as passenger when they leave work to make sure they aren’t looting luggage.

“These are exactly the type of stings that should be done nationwide, and at random. Clearly there is a small minority of agents that are prone to fleece travelers, and this is precisely the type of check that will deter would be thieves, or catch them,” said Sen. Schumer, when informed of the sting.

According to Shumer’s office, 381 TSA agents were terminated for theft from May 2003 to December 2011, and FAA figures show the agency received reports of missing items from 206 people last year.
(TSA screener busted for stealing iPads, laptops from luggage. New York Post. December 5, 2012.)


アメリカ、ニューヨークはJFK空港での話ですが、乗客のカバンからiPadやラップトップPCを盗んだ検査官が逮捕されたというニュースです。以前より同様の盗難事件が相次いでいたことから、おとり捜査が行われていたところ、32歳の検査官がまんまと引っかかったようです。おとり捜査に使われたiPadにはGPSが仕掛けられていたということで、それを知らずに盗んだ検査官はGPSにより御用となったのでしょう。

さて、今日の単語は、"fleece"です。

カタカナで“フリース”、これはこの寒い時期お役立ちの上着アイテム、フリースのジャケットの“フリース”と同じですが、


(詐欺・強奪などで金品を)巻き上げる、ふんだくる、だまし取る


という動詞の意味があります。名詞としての元々の意味は羊毛のことであり、動詞においても、羊の毛を刈る、という意味がありますが、羊の毛を刈る行為が、強奪のイメージに発展してこのような意味が生まれたというところでしょうか。

私もつい先日、出張で飛行機を利用しましたが(国内線ですが)、まさか自分の荷物から貴重品が検査官に盗まれるなど思いもしません。

年末年始、飛行機を利用される方、特に国際線、また特にJFK空港利用の方はお気を付けくださいませ。


2012年12月6日木曜日

ニューヨーク発:ブランドファッションのレンタルが人気 ― threads

ツイッターでNew York Post紙のタイムラインを追っていたら、


Holiday looks for hire


というタイトルが目に留まりました。クリスマスや年末年始を控え、ホリデーシーズンの華やかなファッションをレンタルするというのがニューヨークでここ最近流行っているのだそうです。


Cashing in your 401(k) is no longer the quickest way to don designer threads. Over the past few years, an impressive number of fashion rental companies have sprung up from obscurity, offering the style-obsessed a chance to rock the hottest clothes, jewels, bags and even nail polish for a fraction of the price.
(Leah F. Cooper. Holiday looks for hire. New York Post. December 4, 2012.)


記事によりますと、高級ブランドのドレスやバッグ、さらにはネイル関連用品までもがレンタルの対象になっており、例えば高級ブランドのバッグを1つ買うお金を払えば、年間12種類の異なるバッグをレンタルすることができるのだそうです。

このサービスが流行の先端を行くニューヨークの女性の間で非常に受けているらしく、同様のサービスを手掛ける新規参入業者も多く出ているとのこと。

さて、今日取り上げる単語は、"threads"です。言うまでもありませんが、名詞"thread"の複数形です。

"thread"とは、糸、撚り糸のことであることも言うまでもないでしょう。ここでは、複数形で、"threads"なのですが、実はこれが着物や服のことを指しています。(ネットの掲示板の“スレッド”ではありません(笑))

ただし、単に着る物のことを指すのに"threads"は使いません。特に高級で、おしゃれな服について、"threads"を用いるようです。

研究社の大英和では、米俗語ということで、“スーツ”を意味するということになっています。

上記の引用も、"designer threads"となっていることから、値が張る服であることは想像に難くありません。

私のような貧乏サラリーマンが調達するユニクロのジャケットは、"threads"とは言わないのでしょう(笑)


2012年12月5日水曜日

仏男性の精子減少傾向 ― gender bender

昼休みにグーグルニュースを斜め読みしていたら、


French sperm count 'falls by a third'
(BBC News)


というタイトルが目を引きました。何故フランス人に限って?ゴシップやタブロイド紙の記事かと思いましたがそうではないようです。内容は極めてサイエンティフィックなものです。


Falling sperm counts in France are a ‘serious warning’ to British men, scientists said yesterday.

A major French study has revealed that sperm counts and quality have fallen sharply since the start of the 1990s.


It is believed the trend is linked to diet, lifestyle and ‘gender bender’ chemicals.
(Jenny Hope. Male fertility falls in France... and will UK be next? Sperm counts fall rapidly due to diet and lifestyle. The Daily Mail. December 5, 2012.)


上記はDaily Mail紙からの引用ですが、長いタイトルを読むと分かりますが、食事やライフスタイルが影響しているものと目されているようです。

ところで、今日の単語ですが、


gender bender


という聞きなれない(見慣れない)単語です。つい先日、fender-bender、という単語を取り上げましたが、韻を踏んでいるという点では共通点がありそうです。

さて、辞書のエントリにはないのではないかと思いながら辞書を引いてみると、果たしてエントリがありました。


外見を性別不明に装う人
(ランダムハウス英和辞書)


とあります。これは名詞ですが、上記の引用では、


gender bender chemicals


となっており、"gender bender"は"chemicals"を修飾する形容詞として使われていると考えられます。

なぜか、ランダムハウスにしても、American Heritage Dictionaryにしても、名詞のエントリだけで、形容詞のエントリがありません。(gender-bendingというスペルの形容詞としては載っていますが。)

Wikipediaの解説にしても、


Gender bender is an informal term used to refer to a person who actively transgresses, or "bends," expected gender roles.


となっていますが、この解説に"gender bender"という単語の語源を垣間見ることができます。

"gender bender"とは、通常の"gender"(性別)を"bend"(曲げる)する、つまり逸脱する(させる)、ということであり、生物学上の性を受け入れることが出来ない人のことを指しています。このように考えていくと、形容詞としての"gender bender"の意味合いも自ずと明らかでしょう。

"gender bender chemicals"とは、要は、男女の性別の垣根を曖昧にしてしまうような化学物質のこと、近年よく言われている、内分泌かく乱物質のことであろうと思われます。

ネットで、"gender bender chemicals"を検索すると科学論文を含む多くの検索結果が示され、いくつか拾い読みしてみると、まさしく内分泌かく乱物質のことを指しています。


2012年12月4日火曜日

呑兵衛は遺伝!? ― hard-wire

イギリスBBCによりますと、大酒呑みの遺伝子(binge-drinking gene)というものが見つかったそうです。

その名は、RASGRF-2というらしいのですが、名前を聞いてもピンときません。尤も、一般の人にはピンと来ないのが普通かと・・・。


Scientists believe some people have a gene that hard-wires them for binge drinking by boosting levels of a happy brain chemical triggered by alcohol.

The gene - RASGRF-2 - is one of many already suggested to be linked with problem drinking, PNAS journal reports.

The King's College London team found animals lacking the gene had far less desire for alcohol than those with it.
('Binge-drinking gene' discovered. BBC News. December 4, 2012.)


この遺伝子の詳しい説明は記事を見ていただくとして、今日取り上げる単語は、


hard-wire


という単語です。"hardwire"という、ハイフンが入らないパターンもあります。この単語、はじめてお目にかかったので、どういう意味だろうかと辞書を引きました。

上記の引用では動詞として使われていますが、手元のランダムハウス英和では動詞のエントリはなく、"hard-wired"という、恐らく動詞の過去分詞形から派生した形容詞のエントリのみでした。

一方、American Heritage Dictionaryでは、動詞としてエントリされています。

まずは本来の意味と思われる定義が下記です。


To implement (a capability) through logic circuitry that is permanently connected within a computer and therefore not subject to change by programming.


コンピュータなどにおいて、ハードウェアとして組み込まれた機能のことを指していて、プログラミングなどにより改変することができないもののことです。要は、“後から変更ができない、変更が難しい”という点がポイントです。

この本来の意味から発展して、


To determine or put into effect by genetic inheritance
To provide with a response or capability by genetic inheritance


といった、遺伝に関する話題のコンテクストで用いられるようになったようです。

尤も、この単語は遺伝子が関与しているということに確信がないと使えないかというとそうではありません。我々は誰もがサイエンティストという訳ではありませんし、実生活では、多少の誇張は了解のうえで、人の行動や特性を遺伝によるものであると言ったりすることはよくあることで、"hard-wire"という単語もそのように使われることの方が多いようです。

要は、ある行動や特性について、それが容易に変えられないものであることを言いたい場合に、"hard-wire"が使われると言ってよいでしょう。

その意味では、呑兵衛というものはやはり簡単には治らないことはずっと昔から分かっていたことであり、今さら遺伝子が関与しているという話もサイエンスとしてはニュースなのかもしれませんが、分かり切ったことと言えばそうかもしれません。


2012年12月3日月曜日

中央道トンネル崩落事故 ― negligence

山梨県内の中央自動車道のトンネルで天井板が崩落する事故が発生しましたが、それを知ったのはちょうど見ていたテレビでニュース速報のテロップが流れたのがきっかけでした。

とんでもない事故が起きたという第一印象を持ちましたが当初はニュースを見ても被害の程度もよく分からず気になっていたところ、その後昨夕から今朝にかけて死者が確認されると共に、その数も次第に増えてきており、大惨事の様相を徐々に呈しています。

海外メディアもこの事故を大きく取り上げており、少なくともABC(アメリカ)、The Australian(オーストラリア)、BBC(イギリス)による記事を目にしました。

そのうち、BBCから引用します。


Nine people are now confirmed to have died after a major tunnel collapsed in Japan, officials say.

The bodies were found in three vehicles that were crushed by fallen concrete panels in the Sasago tunnel, about 80km (50 miles) west of the capital Tokyo.

A fire broke out after the tunnel caved in on Sunday, and a number of survivors fled to safety on foot.

The usually busy tunnel remains closed, as police are investigating potential negligence.

There will be serious questions about how a major tunnel on one of Japan's most important traffic arteries could have failed so catastrophically, the BBC's Rupert Wingfield Hayes in Tokyo reports.

The private company that runs the highway has said the tunnel was given a major inspection just two months ago and was given a clean bill of health, our correspondent adds.
(Japan Sasago tunnel collapse killed nine. BBC News. December 3, 2012.)


報道でも言われていますが、崩落事故のあったトンネルはついこの前の9月に定期点検が行われ、“異常なし”とされたところだったということですが、ここ数時間の報道では、構造物を直接叩くなどして異常を検知する異音検査は行われなかったと言われており、果たして適正で十分な検査だったのかどうかが今後問われそうです。

報道の初期段階より、今回の事故原因の捜査について、業務上過失致死傷が視野に入ってくるとありました。英語では、


investigating potential negligence


と表現されています。BBCの記事に限らず、多くの英文記事ではこの、"negligence"が使われています。

"negligence"は、怠慢、不注意を意味する単語ですが、法律のコンテクストでは“過失”という日本語が適当です。

上記に引用した記事の後段、事故のあったトンネルの検査が行われたのがつい2か月ばかり前であったことに触れられていますが、今後はこの検査が適正であったのかどうかが焦点になるのでしょう。

ところで、"clean bill of health"という表現は以前取り上げました。

American Heritage Dictionaryでは、


Informal. An attestation as to condition, especially a favorable one: gave the structure a clean bill of health in spite of its age.


と定義されています。添えられた例文、


gave the structure a clean bill of health in spite of its age


はまさしく今回の崩落事故にそのままあてはまりますが、何とも皮肉な気がします。