最近30日間のアクセス数トップ3記事

2010年2月26日金曜日

待ち伏せ的な・・・ ― insidious

待ち伏せ、という表現には明らかにネガティヴなイメージがあります。待ち伏せされる方はそのことに対する準備はおろか意識すらしていないのに対し、待ち伏せする方は容赦なく襲い掛かる、というイメージがあります。

今日取り上げる単語、"insidious"はまさしくそのような概念を伝えるのにうってつけの形容詞ではないでしょうか。

英和辞典を引くと、


油断のならない、とか
狡猾な、とか
(病気などに関連して)潜行性の


といった意味があることが分かりますが、要は対象について、じわじわと影響を及ぼしていくという性格を表現するものであり、形容詞ですから、名詞を直接に修飾する形で現れることが多いです。

例えば・・・


insidious disease
insidious threat
insidious effects
insidious attack

などですが、何よりも用例で見るのが一番だと思いますので、下記に引用します。


Air is mainly polluted by vehicles, industry and power plants.

Environmental pollution is contamination of air, water and land from man-made waste. Pollution is an insidious destroyer, and certain forms of it like air pollution are said to spur depletion of the ozone layer, global warming and climate change.
(Renewed alert on health risks of air pollution. Business Day. February 26, 2010.)

2010年2月25日木曜日

1ダースはいくつ? ― baker's dozen

”ダース”という単位を学校で習うのは、小学校4年生くらいでしょうか?小学生レベルの話で恐縮ですが、1ダース、イコール12、は常識ですね。

最近は小学校でも英語が取り上げられるようですが、わたしの場合、中学校からでしたので、ダースが、英語では、"dozen"と綴るというのは、英語を習い始めた中学からです。

さて、

baker's dozen

という表現がありますが、こちらは12ではなく、13を意味します。

パン屋(baker)が焼いたパンを納入(?)する際に、目方で計ったら足らないというクレームを避けるため、1ダースを12個ではなく、13個で納めた、というところに由来するそうです。1つおまけしておくから文句言うな、ということでしょう。

実はこれに類する慣習は今日でもありますね。xx個入り、と称しながら実際は少し多めに入っているお菓子や食料品などがあると思います。マージンを持たせているということですね。

ただ、dozenという単語が厳密に12を意味する場合もあれば、10程度、あるいは漠然と多数を意味するように、"baker's dozen"も厳密に13というよりは、10かそこらの数を意味するものとして使われるように思われます。


If Tiger wanted to maintain a healthy marriage, he shouldn't have cheated with more than a baker's dozen of women in the first place. Now he should do what is right and make amends to everyone he hurt, not just the people that the media believe "deserve" his apologies.
(Jo Piazza. Tiger Woods' Mistresses Deserve an Apology, Too. February 22, 2010. PopEater.)


タイガー・ウッズの不倫騒動の記事ですが、不倫相手が”13人”というよりも、恐らく12、3そこら、ということだと思われます。

下記の引用例はやや特殊と思われるのですが、承認された新薬の化合物の”13価”にかけた形で、"baker's dozen"が用いられていると思われます。


Pfizer Inc. won its first multibillion-dollar boost from the acquisition of Wyeth Pharmaceuticals when the U.S. Food and Drug Administration approved Wednesday its Prevnar 13 vaccine to fight a baker's dozen of early-childhood diseases.

Prevnar 13, meant to fight strep and ear infections, is a follow-up vaccine to Prevnar, developed by Wyeth Pharmaceuticals before its merger with Pfizer last fall. Prevnar sales were expected to contribute $3 billion a year in revenue to Pfizer's financial performance this year, according to industry estimates, with most of those sales numbers now likely to revert to Prevnar 13, according to analysts.
(Lee Howard. Wyeth deal starting to pay off with Prevnar OK. The Day. February 25, 2010.)


ちなみに、出版社も12冊分として実際には13冊を卸売りする習慣があったことから、"a printer's dozen"と表現されることもあるようです。(ランダムハウス英和辞典)

"printer's dozen"については、何故か用例が見当たりませんでした。もっぱら、"baker's dozen"ばかりです。

2010年2月24日水曜日

シャツに関連して・・・ ― stuffed shirt

昨日は、“シャツの持つ意味合い”と題して、"hold one's shirts on"という成句を取り上げました。shirt(s)という単語が、成句の形で色々な意味に現れてくることを述べました。

今日取り上げる、


stuffed shirt


は、アメリカの俗語で、


頭の固い連中


という意味です。American Heritage Dictionaryでは、


n. Informal. A person regarded as pompous or stiff.


と定義されています。中身がないのに尊大な人、頭でっかちの人を皮肉る表現のようです。

"stuffed"とは、“詰め込まれた”という程の意味だと思いますが、これは太っていて、着ているシャツがはちきれんばかりになっている状態を示しているのでしょうか?

尊大な人物=太っている=お腹まわりのぜい肉=はちきれそうなシャツ

という図式からなのでしょうか?

尊大な、もったいぶった人が太っているとは限らないとは思いますが、なんとなくそういう連想をしてしまいます。語源をご存知の方はお教えください。


...Better watch yourself." The white-haired woman gave an unrefined, unladylike snort. "If you aren't careful you'll end up a stuffed shirt like your father."
(Carly Phillips. Simply scandalous. 2003.)


ハイフンを挟んだ、"stuffed-shirt"という形容詞としても用いられることがあります。


I have little patience with the dress rules of stuffed-shirt establishments.
(Collins Cobuild Dictionary of Idioms. 1995.)

2010年2月23日火曜日

シャツの持つ意味合い ― hold your shirts on

イライラしないで、怒らないで冷静にしている、という意味の成句です。何かいらだたせるような状況があってもそれに反応しないで、辛抱強く待つ、という意味合いがあります。動詞holdの代わりに、keepが使われている場合もあります。

現れ方としては、命令形を取ることが多いようで、下記の用例でもそうですが、“まあ、そうあせらずに・・・”という程の意味合いです。

これと反対の意味と思われるものが、

have (get) one's shirts out

という成句だと思うのですが、こちらは、癇癪を起こす、怒る、という意味です。

シャツを脱ぐ(あるいは出す?)のは怒ること、脱がないでじっと耐えているのが辛抱強い、ということでしょうか?喧嘩になるときはシャツを脱ぐから、というような説もあるそうですが・・・。

米Apple社のiPad発売日が公表されないのに業を煮やしているユーザーが多いのでしょうか、予約受付が始まるらしいというニュースが話題になっています。


Gadget - Hold Your Shirts On, iPad Orders Taken Soon

Cleverly Apple never gave an exact date for when you could satiate your techno-lust with an iPad, but according to the Associated Press (News - Alert), the Apple rumor blog Appadvice is saying that “Apple will start taking pre-orders of the iPad as soon as Thursday, Feb. 25, only in the U.S. and only for the Wi-Fi model.”
(David Sims. Gadget - Hold Your Shirts On, iPad Orders Taken Soon. Gadget. TMCnet.com. February 22, 2010.)


この他にも、shirt という単語は成句で色々な意味に現れており、興味深いので今後取り上げてみたいと思います。

2010年2月22日月曜日

カレーライスの事ではありませんよ ― curry

スペルは同じですが、皆さんが好きな”カレー”、”カレーライス”とは何の関係もありません。

ご機嫌を取る、こびへつらう

という意味のある動詞です。

多くの英和辞書では、いわゆる”カレー”の意味に続いて、この意味の単語がエントリに上がっているのですが、American Heritageでは、まず”こびへつらう”という動詞のcurryがあって、次にいわゆる”カレーライス”のcurryがあるのが興味深く思われます。

この単語、馬の毛並みを手入れする櫛(馬櫛)=currycomb と関連があるようなのですが、馬の毛並みを整える行為が多くは商売などの準備の行為として認知されることが多かったことから、だんだんと、(買い手への)へつらいやご機嫌取りの行為、というように解釈されたと思われます。

原義としては、馬に櫛を(ブラシを)かけるということですが、へつらうという意味での動詞は、目的語として大体の場合、"favor"を取るようです。


But a person who later emerged as perhaps the most memorable -- to the Clintons and their associates, anyway -- was a well-connected figure with a checkered past who helped organize the event. He is Peter Paul, a man who pleaded guilty to cocaine possession and trying to defraud Fidel Castro's government out of millions of dollars in 1979, among other things. Mr. Paul said he spent nearly $2 million of his own on the fund-raiser as a way to curry favor with Mr. Clinton, and photographs show him chatting with Mr. Clinton at a dinner table, having a discussion with Mrs. Clinton and striking poses for the camera with both of them. Associates of the Clintons say the couple did not know of Mr. Paul's troubled past at the time, and in the months after the event, Mr. Paul turned on the Clintons, later urging investigators to look into the fund-raiser.
(Clinton Benefit Has a Lesson: Double-Check That Donor List. New York Times. 2005.)

2010年2月19日金曜日

覚えられない単語 ― vindicate

この単語もあまりお目にかかることは多くないと思いますが、語源をたどるとラテン語の、

vindex

という語に行き着くそうです。語源を同じくする単語として、

avenge
revenge

があるというとイメージが湧いてくるでしょうか?どちらの単語も、vindicateに比べれば、より馴染みがあるものではないでしょうか?avengeとrevengeの違いはさて置き、どちらも


復讐する、仕返しする


という意味です。


vindicateにも、復讐する、という意味があるのですが、この単語はどちらかというと、復讐、仕返しといった血生臭い行為を指すというよりも、


汚名(疑惑、嫌疑)を晴らす、名誉回復する


といったコンテクストで用いられることのほうが多いようです。

用例として引用する下記の記事では、最近他界したマイケル・ジャクソンに付き添っていた医師が殺人罪に問われているケースについてのものですが、通話記録(留守番電話)の内容が検察側、弁護側双方の争点となっている、というものです。


Voicemail could convict -- or vindicate -- Jackson's doctor

Conrad Murray sounds calm in message allegedly left around an hour into giving singer CPR

Dr. Conrad Murray pleaded not guilty to a charge of involuntary manslaughter last week.

Michael Jackson's doctor could either be cleared of the star's manslaughter or found guilty over the same piece of evidence.

Both the prosecution and the defence have submitted a voicemail left by Dr. Conrad Murray -- the last person to see Jackson alive -- on the day of the late "Thriller" singer's death, June 25 of last year.
(The Province. February 15, 2010.)


検察側、弁護側双方が取り上げる証拠が、医師の起訴材料になるのか、はたまた名誉回復、嫌疑を晴らす材料として採用されるのか、というポイントを記事のタイトルが伝えています。

今週は、”覚えられない単語”というテーマでお届けしました。私にとって”覚えられない単語”、覚えにくい単語はまだまだあるのですが、これくらいにして、来週はまた新しいテーマで色々な単語を取り上げたいと思います。お楽しみに!

2010年2月18日木曜日

覚えられない単語 ― histrionic

難解な単語、極めて複雑な概念を表現するための術語が覚えにくいのはある意味当然のことだろうと思われます。

一方で、見かけ(スペル)が原因で、何となく記憶に留まりにくい、あるいは見かけ(スペル)と実際の意味がかけ離れているために意味を想起しにくい(つまり覚えられない)という類の単語もあると思われます。

histrionic という単語は私にとってそのような単語の1つなのですが、これは、単語のスペルがhistory(歴史)を想起させるためだと思います。

実際、histrionic は、


芝居がかった、不自然な、わざとらしい


というような意味で用いられます。語源的にも、historyとは関連はなく、エトルリア語に遡ると言われています。エトルリア語ではもともと、”俳優”という意味で用いられていた語が発展して、このような意味になったもののようです。

histrionicは形容詞ですが、名詞として、あるいはhistrionicsという単語は名詞そのものとして、芝居や演劇、俳優という意味もあるようです。実例では、名詞として用いられるよりも、”芝居がかった”というネガティヴな意味で用いられることのほうが多いようです。


Sometimes the foster care system absorbs mentally ill children even when their parents do not voluntarily give up custody. For the Kendalls, the trouble with their daughter, Jamie, started roughly at age 12. She told outlandish lies, once producing a photo of a baby cousin as proof that she had a son. She disappeared for days at a time. The diagnosis was histrionic personality disorder, an illness characterized by a pathological need for attention.
(Parents of Mentally Ill Children Trade Custody for Care. New York Times. 2003.)

2010年2月17日水曜日

覚えられない単語 ― vituperate

この単語もそうそうお目にかかるものではないと思うのですがいかがでしょうか?

vituperateは動詞ですが、お目にかかるパターンとしては、vituperativeという形容詞、あるいはvituperationという名詞での場合が多いように思われます。

意味は、American Heritage Dictionaryでも、"scold"(叱る)という動詞のシノニムとして掲載されています。

動詞であるvituperateは、日本語では、


酷評する、ののしる


という表現が使われています。

"especially stress the use of disparaging or abusive language"(American Heritage Dictionary. Third Edition.)とあるように、批難の言葉が殊に強烈である場合に用いられるようです。

vituperateという動詞よりも、vituperativeという形容詞の方が用例として多いようだと上に書きましたが、コーパスなどで検索すると、以下のような用例が多いことが分かります。


vituperative rhetoric
vituperative name-calling
vituperative attack
vituperative tone
vituperative address


Ulysses H. Grant's scathingly strident opinion of “Obama's leftist government” as “the enemy of democracy,” full of “left-winged radical Democrats” trying to “brainwash you” sounds remarkably akin to nothing less than that of a right-winged radical.

Instead of tossing off such vituperative comments, it would have been nice if Grant had deigned to elucidate constructive solutions to the problems he perceives. As is so often the case with such derision, however, no answers are forthcoming.
(It's time to unite. The Desert Sun. February 2, 2010.)

2010年2月16日火曜日

スペルミスにご用心! ― チリ造幣局幹部の代償

南米チリへ旅行される予定のある方は、ゲットできるか挑戦してみてはいかがでしょうか? 

50ペソ硬貨に刻まれた“チリ”の国名にスペルミスがあったそうです・・・。 

信じられない!という方は、そのモノの画像も含むリンク先の記事を読んでみてください。 

関係者一同、クビだそうです・・・。

高い代償? 


The 50-peso coins - worth about 10 cents (6p) - were issued in 2008, but no-one noticed the mistake until late last year. 

Instead of C-H-I-L-E, the coins had C-H-I-I-E stamped on them. The coins have since become collectors' items and the mint says it has no plans to take them out of circulation. 

The BBC's Gideon Long, in the Chilean capital Santiago, says people have been hoarding the coins in the hope their value rises. But the mistake has cost the mint's general manager, Gregorio Iniguez, and several other employees, their jobs. 
(Chile mint boss pays the price of coin spelling howler. BBC News. February 13, 2010.)



覚えられない単語 ― sanctimonious

ネイティヴと話しているときに、覚えたばかりのある単語を使ったところ、"You use a big word!"と言われたことがあります。難しい言葉を使うのね!という意味だと思います。

言いたいことを言うのに簡易な表現(単語)があるのにも関わらず、やたら難しい単語を使いたがる、と思われたのでしょう。こちらとしてはわざわざ難しい単語を使うつもりもなかったのですが、英単語のボキャブラリー拡張という学習の過程では、そのような傾向になってしまうのかも知れません。

一時的にその単語を知ったつもりでも、やはり覚えていない、実際には使えない単語というものがあるなあ、とよく思います。今日取り上げる、sanctimonious もそうですが、"sanct-"というスペルから"sanctus"、"saint"という語に近い意味があることは想像できますが、単語だけを取り上げてしまうと、コンテクストが分からず、結局は身についていないということになるでしょう。

辞書を引くと、


信心家らしい、殊勝らしい


というような日本語訳が見られ、American Heritage Dictionaryでは、


religious
devout
pious


といった単語と同義とされています。しかしながら、sanctimoniousについては、これらの単語と同義であるというよりも、どちらかといえばこれらの単語と比してネガティヴな意味が強く、コンテクストとしてもそのような場合に多く用いられるというべきだと思われます。

また、必ずしも宗教や信心に関連した話題で用いられるというよりも、実際の用例ではより発展して、いわゆる見せかけと実態のギャップを示したいような場合に用いられる表現、と言えるのではないでしょうか?

ぶっちゃけた話、“胡散臭い”ということではないかと思います。でも“胡散臭い”という訳語はどの辞書にも見当たらないんですよね・・・。不思議ですが。


With Rockefeller I didn't hear that private voice -- in fact, I didn't hear any voice at all. The director showed me the 1,700-page transcript of an interview done between 1917 and 1920 that had never been made public. In the transcript Rockefeller recounted blow-by-blow every aspect of his career, and I was utterly fascinated. He was fiery, articulate, often funny and amazingly analytical. I instantly disliked many things. There was a sanctimonious tone, he denigrated his critics automatically, and he had a chilling capacity to rationalize his behavior. But compared to the cold-blooded monster of myth, this was a much more human and interesting figure, and I immediately realized I had an extraordinary opportunity. I decided on the spot to do the book.
(Finding the soul of the world's richest man. Chicago Sun-Times. 1998.)

2010年2月15日月曜日

覚えられない単語 ― opprobrium

英語の語彙の幅広さは大変なものだと思うときがあります。英語に限らないかもしれませんが、どんなに勉強してきたと思っても、ニュース記事、雑誌や小説を読んでいると、必ず知らない、見たこともない単語に出くわします。

勉強が足らないのでしょう?もちろん、その通り(笑)! 知らない単語は、犬猫の毛についたシラミを一匹ずつ潰していくように対処していくしかないのでしょうか?

今日の単語 opprobrium を、不意に質問されて意味を答えられる方はそう多くないのではないかと思います。私の学習の記録によれば、10年くらい前に一度学んでいるようなのですが、やはり身についていませんでした・・・。

今週は、覚えられない単語、というテーマでお届けしたいと思います。あくまでも私レベルでの話ですが・・・。

"opprobrium"を英和辞書で引くと、 不名誉、不面目、名折れ などとあります。英語辞書では、


disgrace
dishonor
shame


などの類義語としてリストされています。

中でもこの"opprobrium"という単語は、ラテン語起源のためか、disgraceやdishonorなどと比べて、ひときわ強い意味を持つ単語のようです。


Any assessment of protest cycles in China would suggest that the absence of nationwide demonstrations for over a decade is attributable in part to the harshness with which the 1989 movement was repressed. On the surface, it appears that PRC recovered quickly from the domestic trauma and the international opprobrium brought on by Tiananmen Square. The leadership turmoil surrounding the incident quickly subsided as Jiang Zemin consolidated his control over the party's leadership.
(Tiananmen Square Thirteen Years After: The Prospects for Civil Unrest in China. Asian Affairs. 2002.)


2010年2月12日金曜日

日本には不思議な鳥が・・・ - albatross

今週のテーマ、“日本には不思議な鳥が・・・”、は本日が最終回です。

さて、albatrossは、日本語では“アホウドリ”とされています。何ゆえ、“阿呆”なのか?

東邦大学の長谷川教授によりますと、陸上での移動がのろまで、人にも簡単に捕まえられることに対して付けられた蔑称であるということです。私の出身地である山口では、沖に住む美しい鳥という意味で“沖の太夫”と呼ばれているそうですが知りませんでした。長谷川教授は、“アホウドリ”という侮蔑的な呼称を改めることを提唱されているようです。

英語のalbatrossには、当然ですが、“阿呆”のような意味は勿論、メタファーとしてもありません。その代わり、ということでもないでしょうが、文学史上に輝く詩作においてある象徴として用いられたために、メタファーとしても特別な意味で用いられます。

その詩作とは、Samuel Taylor ColeridgeのThe Rime of the Ancient Marinerというものなのですが、航海中にalbatrossを殺めた漁夫はその後ずっとその罪に苛まれることになります。

an albatross around one's neck

という成句があります。頭痛の種、とか罪の烙印、というような意味で使われます。首の周りにまつわりついてくる厄介なものということですが、私は何故か飛行機に乗るときに首周りに装着する簡易まくらを思い出します。エコノミークラス御用達のアレですが・・・。エコノミークラス利用は前世の罪の烙印・・・?


Daniel Sullivan, who pleaded guilty to assault causing bodily harm in the attack that sent Gallagher to hospital after a 2008 concert on Toronto Island. "Mr. Sullivan has had this unfortunate matter hanging like an albatross around his neck for a year and a half," lawyer John Collins said in court Friday.
(The Vancouver Sun. February 6, 2010.)


2010年2月11日木曜日

日本には不思議な鳥が・・・ - crow

カラスから連想されるイメージは日本語では必ずしも良いものではありません。

“日本には不思議な鳥が・・・”でも、カラスのように“真っ黒”、と“黒”というカラーの持つネガティヴなイメージが前面に押し出されています。

英語ではどうなのでしょうか?

英和辞書などを見ますと、やはりカラーとしての“黒”ということから、軽蔑的に黒人を指す意味としても用いられるようです。また、やはりイメージとしてはネガティヴなようであり、文学などでも死や悪運の前触れとして描かれたり、引き合いに出されることが多いようです。

興味深い表現のひとつに、


eat crow


というものがあります。カラスを食べる!?

食用のカラスなんて聞いたことありません。そういう連想からか、


屈辱に耐える、苦しみなどを甘受する


という意味になるようです。

Between then and now, our mayor-elect learned his lesson. And it wasn't about eating crow or lowering his standards. It was about being wise enough to look, listen and learn.
(The Open Forum. Denver Post. 2003.)


もう1つ引用しますが、これは意味がよく掴めない用例です。

On the Toyota Menu this Week: Crow

Toyota will endure perhaps the two most distasteful aspects of Toyotagate this week: First, a recall on their crown jewel, the Prius. Second, a calling on the carpet Wednesday the 24th in front of lawmakerswho will barely grasp the answers to their own questions but have a lot of cameras there as they don't.
(Brian Cooley. CBS News. February 9, 2010.)


トヨタのプリウスのリコール問題に関する記事なのですが、記事見出しの"crow"の意味が掴めないでいました。

先に引用した、"eat crow"という成句について調べてから、何となくこの記事見出しの言いたいことがわかるような気がします。"menu"という語も、なるほど!という感じがしませんか?

一連の不祥事を受けて、トヨタが甘受しなければならない苦しい状況が話題になっているのです。

トヨタの社員食堂のメニューにカラスはあり得ないとは思いますが・・・。


2010年2月10日水曜日

日本には不思議な鳥が・・・ - pigeon

本日、目出度く200件目の投稿となりました。みなさま、当ブログ記事のご愛読ありがとうございます。

さて、今週のテーマ、”日本には不思議な鳥が・・・”ですが、本日取り上げる単語は”本丸”でしょうか、pigeonです。

鳩は平和の象徴として知られますが、さて、英語のpigeonにもそういう象徴的意味があるのか?

American Heritage Dictionary、Merriam Webster Dictionar・・・など、pigeonと平和(peace)を関連付ける記述は見当たりません。

むしろ俗語ですが、

Slang. One who is easily swindled; a dupe.
(American Heritage Dictionary of English Language. Third Edition.)

というような定義が見つかります。

これは意味的には、一昨日取り上げた単語、duckと同じだと思うのですが、騙されやすい人=カモ、ということだと思います。

しかしながら、色々なソースをあたったのですが、"duck"と同様、”カモ(騙されやすい人)”という意味での用例を見つけるに至りませんでした。

もっぱら出てくるのは、


pigeon hole


という表現です。これは、ハトの巣箱を形容した表現ですが、ハトが出入りする巣箱のように、”狭苦しい”という意味のようです。動詞としても用いられ、書類や情報を分類する、分類の仕切りに従って仕分ける、という意味があるようです。

ポイントはその仕切り方が、”細かい”というところにあるようです。系統立てて仕舞うことには違いないのですが、ニュアンスとしては細かすぎる、という含意があると思われます。


Willie Mays's baseball career did have something of the mythic about it—magical throws, dervish moves on the basepaths, home runs whacked into upper decks. And, always, that baseball cap flying off, as if Superman were madly shedding his cape. You watched Willie Mays and you understood that baseball was a glad game, meant to be played in the sunshine.

I once asked major-league baseball's official numbers-keeper, Seymour Siwoff, if he could put Willie into perspective. "When you think of other great ballplayers," Seymour said, "you think of them in a certain way—DiMaggio loping after a fly ball, Williams with that swing. But Willie Mays—you can't pigeon-hole him."

It must not be any easier writing his biography—where do you start?— but James S. Hirsch has done the job admirably, if at times annoyingly, in "Willie Mays: The Life, the Legend."
(Eskenazi G. A Giant of the Diamond. Wall Street Journal. February 6, 2010.)

2010年2月9日火曜日

日本には不思議な鳥が・・・ - parrot

お馴染みの鳥、オウムです。

話しかけるとそのとおりを繰り返す、というのを体験した方も多いでしょうか?American Heritage Dictionaryの定義を引用すると、下記のようにありました。


Any of numerous tropical and semitropical birds of the order Psittaciformes, characterized by a short hooked bill, brightly colored plumage, and, in some species, the ability to mimic human speech or other sounds.
(American Heritage Dictionary of English Language. Third Edition.)


"mimic"という動詞は、真似る、という意味ですが、オウムという鳥が持つこの特殊な能力から発展した意味として、

(機械的に)反復する、繰り返す、
(訳も分からず)猿真似する、


という意味があります。この用法にはやや軽蔑が込められており、”機械的に”、あるいは”分けも分からずに”というところがポイントです。

この話題にしてこの引用、という感がありますが、まさしくぴったりの引用です。


The secretary-general of the governing party declared war against prosecutors in a party convention, and was applauded by party members. The prime minister, who heads the party, fanned Ozawa's battle against prosecutors saying, "Please stand firm." The gloomy and chilly scene of the convention, which was characterized by absolute obedience to Ozawa, will be long remembered and handed down to the next generation.

When asked how he views Ozawa's hostility against prosecutors, one DPJ legislator replied, "It's a fight between the DPJ-led government elected by the public and bureaucracy (which includes prosecutors' offices)." An idea like this has undoubtedly poisoned the party.

(中略)

The legislator explained the situation by combining such words as "the public" and "bureaucracy" in an easy-going manner, but his explanation shows that he does not understand the feelings of ordinary people and bureaucrats. Democracy in which legislators like him are mass-produced under the leadership of a strong-armed secretary-general will obviously lead to a gloomy future. The legislator simply parroted Ozawa's words.
(Japan's gloomy political scene. The Mainichi Daily News. January 18, 2010.)

2010年2月8日月曜日

日本には不思議な鳥が・・・ - duck

日本には不思議な鳥がいる・・・、というネットの落書きが注目を集めているようです。

現職総理大臣を揶揄したもののようですが、言い得て妙、という感があります。

読んでいて思ったのですが、言語が鳥の名称に込めたメタファーには興味深いものがあります。

英語のduckは、日本語では"カモ"もしくは"アヒル"です。"カモにされる"という表現からは、騙される、という意味がありますが、英語のduckにも俗語として、騙されやすい人間という意味があるようです。

ただ、実例を探したのですが、そのものずばりというものがありませんでした。

英語のduckは果たして、日本語でいうところの"カモ"(騙されやすい人間)という意味で名詞的に使われているのでしょうか?実例をご存知の方はお寄せください。

調べていて分かったのですが、 lame duck という表現が、特に政治のコンテクストではよく用いられているようです。

日本語では、"お払い箱"、つまり後任が決まっていて、もはや用済みという感のある人(そのようなポジションにある人)のことを言うようです。


If he loses it's hard to see how he can ever regain his authority. He's already seen widely as a lame duck Prime Minister.
(Dictionary of Idioms. Collins Cobuild.)



2010年2月5日金曜日

雪に関する表現(5) ― snow job

漢字の“雪”は、自然現象としての降雪で見られる雪そのものの他に、“清い”という意味や、“雪辱”というような語句に見られる、“すすぐ、そそぐ”というような意味がありますが、英語のsnowには意外な意味があることを知りました。俗語としての意味ですが、“まやかし”とか“まことしやかな巧言”という意味があるようです。

これと関連していると思われますが、動詞として、


(言葉巧みに)だます、いっぱい食わせる、まるめ込む


という意味もあるようです。

"a snow job"は、相手に聞こえのいいことを言ってそそのかす行為を指し、口車にのせる、という日本語がぴったりです。

American Heritage Dictionaryでは、以下のような定義がされています。


snow job
n. Slang. An effort to deceive, overwhelm, or persuade with insincere talk, especially flattery.


In 1867, Alaska was widely viewed as a worthless wasteland of snow. When U.S. Secretary of State William H. Seward purchased Alaska from Russia for $7.2 million, Americans mockingly called the purchase "Seward's Folly." However, it turned out to be the greatest real-estate deal in history. The value of Alaska's resources has since paid back its cost many, many times over. Seward did a snow job on the Russians.
(Bill Costello. Make money by thinking the unthinkable. Futurist. May 1999.)


ところで、"snow"がこのような意味、つまり巧言や相手を言葉巧みにだます、という意味を持つように至ったのはどうしてなのでしょうか?

Oxford Dictionary of Euphemismsを見ると、下記のような説明がありました。


snow
deliberately to obfuscate (an issue) or deceive (a person)

As the landscape may be obscured by a snowfall.
To snow an issue is to produce masses of print-outs and other documentation which make it difficult for the recipient to pick out and understand the relevant points.


なるほど、雪が降ると地面を覆い、下地(地面)や境界などが分からなくなってしまうことから、このような意味が発展したのですね。


2010年2月4日木曜日

雪に関する表現(4) ― snowball's chance in hell

昨晩も雪がちらつき、帰宅時は吹雪になって、家に辿り着くまでに頭が真っ白になってしまい、家族に笑われた次第です。(苦笑)

今朝も外を見ると地面を覆うくらいには積もっており、子供たちは雪合戦に興じたことでしょう。

雪合戦といえば、手当たり次第に雪を掴んでは投げるわけですが、英語のsnowballはそのまま”ボール”であり、違和感なく耳に入ってくる英単語です。

しかし、"snowball chance"が、”万に一つの見込み”というのはいったいどういうことでしょうか?

私は最初、雪合戦で投げる雪の球が当たる確率の話(つまり、確率はとても低い)かと思いましたが、どうやら違うようです。

この成句は、"snowball's chance in hell"とも言うようなのですが、ポイントは"in hell"(地獄における)という部分らしく、地獄の灼熱で、雪のボールなどすぐに融けてしまう、つまり効き目がない、ということのようなのです。(ランダムハウス英語辞典)

なるほど・・・。


NAPLES — Despite talk about creating jobs and creating niche markets, most Southwest Florida political and business leaders were hesitant Thursday to comment on stimulus money for high-speed trains.

President Barack Obama on Thursday said he’d send $1.25 billion in federal money for high speed trains to Florida. But would any of it make it to Southwest Florida? Wednesday night, Obama mentioned high-speed trains in his State of the Union address.

(中略)


“We need $2.5 billion. Without that, no rail,” Grady said Thursday.

The $1.25 billion just isn’t going to cut it, Grady said, noting he was one of the few voices in Tallahassee who voted against Florida’s high-speed train petition.

Furthermore, from the federal standpoint, Southwest Florida has less than a snowball’s chance of getting any of that money, because it was a set-aside for the Tampa-to-Orlando route, politicos said.
(Proposed rail system wouldn't mean much to Southwest Florida, some say. Naples News. January 28, 2010.)

2010年2月3日水曜日

雪に関する表現(3) ― avalanche

何年に1回というレベルで積雪を体験する地方とは対照的に、冬季の積雪が日常茶飯事のところでは、雪の問題は深刻であることは言うまでもありません。

山岳部での脅威の1つは雪崩でしょう。


Fairfield resident Shannon Wolf was one of six people killed by avalanches in the Rocky Mountain states over an eight-day stretch spanning last week.

Wolf, 44, died Thursday, Jan. 28, after his snowmobile triggered an avalanche on a steep slope in the Boardman Pass area, about 15 miles northwest of Fairfield.
(Camas snowmobiler dies in avalanche. The Idaho Mountain Express and Guide. February 3, 2010.)


私のように体験したことのない人間にはイメージでしかないかもしれませんが、雪崩というものが、ある時点を境に、大量の雪が一気に崩れて下方へと押し寄せてくるところから、あるものが大量にどっと押し寄せてくる状況、殺到する状況、というコンテクストで使われることもしばしばです。


Amid the avalanche of news reports about Toyota's of sticky accelerator pedals, some drivers still have questions. Here are some answers.
(Questions and answers on Toyota's gas pedal fix. Waterbury Republican American. February 3, 2010.)


米国でのトヨタのアクセルペダルの問題は深刻化の一途と辿っているようです。

2010年2月2日火曜日

雪に関する表現(2) ― slush

2年ぶりの積雪となった首都圏ですが、今朝は雪明かりのせいかいつもより少し明るい中を庭に出て、ポストの朝刊を取りに行きました。雪を踏みしめる時のザックザックという音が心地よかったのですが、玄関に戻る途中で危うくすべりそうになりました。

朝6時台のラジオニュースでは、これから陽が差してきて雪がシャーベット状になり凍結するので、転倒に気をつけて下さい、とさかんに呼びかけていました。この時期の降雪が日常茶飯事の地域の方にすれば過剰反応でしょうか、勤務先で向かいのデスクに座る同僚が、長野なら(この程度の積雪は)放置レベルですね、といっていました。都内では転倒事故が相次いだとか。

今日取り上げる単語、slushは、積もった雪が半分融けてシャーベット状になっている状態のものを指します。


The big blizzard might have blown Knoxville by, but its last hurrah Saturday night — plunging temperatures and refreezing slush — led to a rash of wrecks and closed interstates.

Nor does it mean your driveway’s free of ice, slush or some leftover snow this morning. The same goes for area roads. The National Weather Service says to anticipate hazardous travel, at least through this afternoon.
(Snow causes traffic woes as slush refreezes. Knoxville News Sentinel. January 30, 2010.)


これが気温の低下により、路面に凍結すると大変危険なことになるのですが、こちらについては、氷になって黒い路面と見分けがつかなくなることから、black iceと表現されます。

昨日引用した記事で、"black ice"という表現が使われているので、参照して下さい。

2010年2月1日月曜日

雪に関する表現(1) ― squall

日本の南海上にある低気圧が発達しながら東に進んでおり、今夜から明日未明にかけて都心でも積雪するという予報になっています。

今日は雨の予報で、午後から自宅付近でもやや強い雨が降り始めましたが、夕方6時くらいには雪になってきました。

さて、今週は雪に関する表現をテーマにしたいと思っているのですが、今日取り上げる単語、

squall

は日本語でも多少なじみのある、いわゆる”スコール”ですが、この語が”雪に関連する表現の1つ”というと変に思われる方も多いのではないでしょうか?

”スコール”というと、夏場の通り雨というのが一般のイメージでしょうか?

私も知らなかったのですが、squallとは強風のことで、しばしば雨もしくは雪を伴う、という定義がAmerican Heritage Dictionaryに見えます。つまり、夏の通り雨に限定されません。

スコール=夏の通り雨=なんとなくすがすがしい・・・、というイメージを持っていましたが、修正が必要のようです。

ちなみに、子供の頃飲んだスコールという清涼飲料水があり、懐かしく思い出したのですが、squallとは全く関係ないようで(スペルもSkalで、デンマーク語由来のようです)、当方がイメージを勝手に作り上げていたようです。(同じようなイメージを持っていた方はいますか?)

With yesterday's snow squalls and plummeting temperatures, watch for black ice on the roads this morning; so use caution while driving to work.

Very cold arctic air will be with us today and through the weekend with temperatures in the teens and 20s.
(The Cold Is On In Connecticut. The Hartford Courant. January 29, 2010.)


明日以降、雪(snow)に関連する意外な単語や表現を取り上げてみたいと思います。