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2026年9月9日水曜日

algorithm

オーストラリアは16歳未満のSNS利用を禁止する法律を制定した最初の国ですが、SNS事業者に対する規制をさらに強化するようです。

その規制の内容はというと、事業者はSNSユーザーがアルゴリズムに基づくフィードが表示されないよう選択できるオプションを提供しなければならない、というものです。

今時のSNSでは好むと好まざるとに関わらず、いわゆる「オススメ」というような形式で、ユーザーの興味や関心のあるコンテンツが自動的に表示されますが、その仕組みはユーザーの検索や利用履歴などのデータに基づいてコンピュータアルゴリズムが生成するものです。

新しい規制の趣旨は、わかりやすく言えば、このアルゴリズムを拒否する権利をユーザーに与えなければならないというものです。


Australian social media users would be given a choice to opt out of algorithms under proposed laws announced by the government Tuesday that would let users have more control over what they see on their social media feeds.

"We'll require social media platforms to provide user empowerment tools that give people over the age of 16 genuine and enduring choice about what they see in their feeds," Prime Minister Anthony Albanese told reporters in Canberra.
(Australian social media users to be offered choice to opt out of algorithms. NPR. September 8, 2026.)


さて、今日の1語は"algorithm"です。日本語でもカタカナで「アルゴリズム」という言葉を当たり前のように使う今日ですが、この単語が人の名前に由来するということをご存知でしたでしょうか?しかも、現代のコンピュータの専門用語にも思われる"algorithm"という単語はコンピュータが発明されるはるか以前から存在していました。

"algorithm"という単語は元は、


algorism


というスペルの語だったそうですが、この"algorism"は8世紀のイスラムの数学者


Muhammad ibn-Musa al-Khwarizmi (780?-850?)


の名前から来ているのだそうです。えっ、全然違う!?

そうですね、その名前がどうやったら"algorism"というスペルの語になるのかと言われると確かに分かりにくいのですが、名前のal-Khwarizmiという部分なんですね。カタカナで書くと、アル=フワーリズミー、となるようなんですが、これが「アルゴリズム」になった、ということなんですね。(ちなみに、al-Khwarizmiは、Khwarazm生まれの人、という意味らしく、Khwarazmは今のウズベキスタンにある都市Khivaに当たるそうです。)

さて、その数学者アル=フワーリズミーさんの偉業というのが、インド数学の記数法や演算をアラビア語で記した著作で、これが"algorism"として知られることになった、というのです。

"algorism"という語はその後、"arithmetic"(算術)という単語のスペルに影響を受け、現在の"algorithm"になったという訳です。

「アルゴリズム」(algorism)は数学の基本的な内容に触れたものだった訳ですが、解を求めるための計算のステップやルールを指す意味合いに拡張しました。

そして、インターネット時代、AIの時代におけるアルゴリズムは、ユーザーの行動に基づいて最適なコンテンツを表示する仕組みを指すようになったものです。その意味合いはMerriam-Webster Dictionary(オンライン版)の定義、


a hidden system used by an online platform (such as a social media, streaming, or retail site) to curate content for each user based on the user's behavior, profile, etc.


に見てとれます。

2026年7月24日金曜日

ALPR

最近のスーパーマーケットの駐車場は料金徴収のゲートが設置されていないところが増えています。精算機では自分のクルマのナンバーを入力し、入場時に撮影された画像を自車と確認した上で、画面に表示される料金を支払うというものです。入場と退場の時刻、自動車のナンバーという3つの要素により、料金を負担すべき個人が特定される訳で、これを人手を介さずに自動で行うというところにイノベーションがあります。

入り口にはナンバープレートを読み取るカメラが設置されていますが、このカメラが特に優れ物でしょう。

こういった自動ナンバー読み取り装置のことをALPRと呼ぶそうです。ALPRとは、


Automatic License Plate Reader


の略称です。

今、アメリカ国内では、ALPRがもたらすプライバシーの問題が取り沙汰されているという記事を読みました。


Flock cameras are automatic license plate readers, or ALPRs. There are other ALPRs in the market, but Flock cameras are some of the most well-known ALPRs.

The cameras, however, capture more than just license plate information.

Flock Safety defines their cameras as: "a license plate reader camera built to identify vehicle details that may help generate investigative leads. That includes the license plate, along with attributes like make, model, color, and other visible characteristics. Flock cameras are not general-purpose surveillance systems designed to identify people," according to Flock Safety's website.
(Ernesto Centeno Araujo. What are Flock cameras? Why have they caused a stir in California? Desert Sun. July 22, 2026.)


カリフォルニア州で、Flockという新興の会社が提供するALPRであるFlock Cameraは、警察当局などに提供され、犯罪捜査やスピード違反の取り締まりにも使われているということです。

しかしながら収集されたナンバープレートの情報や画像が正当な捜査活動以外にも使われているのではないかとの疑惑が拡がり、Flock Cameraの設置に対する不安の声や装置を破壊する活動まで起きているそうです。

Flock Cameraはナンバープレートのみならず、車種や車体の特徴なども判別できるそうで、こうしたディテールの蓄積により、どこまでが正当な使用範囲なのか、プライバシーが侵害されているとの指摘があるようです。

2026年3月10日火曜日

asset

イランは米軍とイスラエルの攻撃によって暗殺されたハメネイ師の後継となる最高指導者に、ハメネイ師の次男であるモジタバ師を選出したと報じられています。

ハメネイ師殺害後、短波放送で報復テロを指示すると思われる不審なメッセージを米軍は傍受したようです。外国に潜伏する"sleeper cell"と呼ばれるスパイを動員し、無差別テロを実行する危険性が指摘されています。


Iran has potentially sent out “an operational trigger” to activate “sleeper assets” across the globe as the war with the U.S. and Israel escalates, according to a report.

The U.S. has intercepted encrypted communications believed to have originated in Iran that were sent out following the death of Supreme Leader Ali Khamenei in a U.S.-Israeli attack on February 28, ABC News reported, citing a federal alert sent to law enforcement agencies.
(Isabel Keane. Iran may have activated ‘sleeper cells’ to carry out attacks around the globe, US officials say. The Independent. March 9, 2026.)


"sleeper cell"という表現は、昨年6月にイラン国内の各施設を米軍が攻撃したとのニュース記事でも使われていました。本日の引用記事においても、記事タイトルには"sleeper cell"とありますが、本文中では、


sleeper assets


と出て来ます。

"assets"にもスパイの意味があるそうで、何故か研究社新英和大辞典には載っていなかったのですが、American Heritage Dictionaryには、


A spy working in their own country and controlled by a foreign power or an enemy.


と定義されています。

"asset"という名詞は資産、財産、また長所、利点、強みといった意味ですが、スパイの意味で用いられるとは知りませんでした。Oxford Dictionary of Euphemismsにも載っており、「役に立つもの」ということで"asset"なんだそうです。

ところで、"asset"という単語の成り立ちについてですが、元は"assets"というスペルであり、このスペルの語尾のsを複数形の-sと誤解したために"asset"というスペルになったという背景だそうです。(いわゆる逆成。)

更に遡るとラテン語ad satisに由来し、これは充分な(に)、満足のいく程度に(in sufficiency)という意味で、借入金、負債に対する(充分な)返済能力(すなわち資産)を指すことからだそうです。


2026年2月3日火曜日

au pair

米ヴァージニア州で起きた殺人事件のニュース記事から、冒頭部分の引用をお読み下さい。


A Virginia jury found Brendan Banfield guilty of killing his wife and another man as part of an elaborate scheme with the family’s au pair.

Prosecutors argued Banfield plotted with the au pair – with whom he was having an extramarital affair – to lure another man, Joseph Ryan, into their home with a fetish website and frame him for the murder of his wife, Christine Banfield.
(Brendan Banfield convicted of double murder in au pair affair trial. CNN. February 2, 2026.)


記事のタイトルに、"au pair affair"、本文中にも"au pair"という単語が出てきます。スペルからどうもフランス語のように見えますがどういう意味なのでしょうか。

Merriam-Webster Dictionaryでは、


a usually young foreign person who cares for children and does domestic work for a family in return for room and board and the opportunity to learn the family's language


と定義されています。住み込みで家事、育児を手伝う傍らで現地の言葉を勉強させてもらう外国人を指すもので、"au pair"はフランス語で、英語にすると"on even terms"(即ち、公平、同等の条件で、の意)ということだそうです。

カタカナではオペアというそうなんですが、不勉強にして知りませんでした。

ヴァージニアの事件は、同居していたオペアのブラジル人女性と不倫関係にあった容疑者が共謀して妻を殺害したというものです。

2025年12月9日火曜日

aura farming

昨日の投稿でOxford Dictionaryの2025年の1語に選出されたという、"rage bait"という表現を取り上げました。

Word of the Yearに関しては複数の辞書出版社が独自の基準で毎年発表していますが、その年の1語に選出される単語がある一方で、次点となった表現、選出されなかった単語、表現というのも興味深いものです。

Oxford Dictionaryによれば、最終選考には3つの表現が残ったようですが、次点となったのは、


aura farming


という表現だそうです。


The wait is over—the official Oxford Word of the Year 2025 is rage bait.

Our language experts shortlisted three contenders—rage bait, aura farming, and biohack—that reflect our conversations and preoccupations over the past year. After three days of voting in which more than 30,000 people had their say, our experts chose rage bait after considering votes, the sentiment of public commentary, and their analysis of our lexical data.
(The Oxford Word of the Year 2025 is rage bait. Oxford University Press. December 1, 2025.)


"rage bait"という表現の意味するところについては、記事の解説を読む前から大体わかっていました。一方、"aura farming"については初めて聞くもので、意味も想像がつきませんでした。

やはり2025年に流行った表現のようですが、この表現を取り上げた今年半ばくらいの記事を引用します。


Aura farming is all about cultivating the coolest version of yourself. Think well-tailored suits, lots of grayscale, serious stares and sharp angles.

(中略)

Kids have always wanted to be cool – now they get to farm for it.

By the simple act of being cool or mysterious: striking a cool pose, or performing great feats of coolness – a strike when you go bowling, flawlessly landing rubbish in the bin from 5 metres away, or completing a new personal best at the gym.
(Explain it to me quickly: What is aura farming, and is it cool or cringe? The Guardian. June 6, 2025.)


この説明を読むと、"aura farming"とは自分自身をよく見せる、クールさを演出するための努力、みたいなところかと思われます。

他人に対して、自分の好印象を植え付けたいという本能的な欲求は誰にでもあろうかと思います。

そうした欲求は現代においてはネット、とりわけSNS上でいやがうえにも増幅されているのではないでしょうか。


It refers to actively curating your personality by choosing the way you look, behaving a certain way, and associating yourself with things that make you desirable, interesting and appear effortlessly cool. It is like cultivating a charisma, an aura, especially on digital mediums.
(Aakanksha Mahendra Ahire. Aura farming: New word in the Gen Z dictionary. Times of India. August 25, 2025.)


SNSのタイムラインを覗けば、"rage bait"がある一方、投稿者自身を見栄えの良い写真や動画と共にこれでもかとアピールする投稿に溢れています。

結局のところ、"aura farming"も如何にSNSで「勝ち組」となるか、という心理を映し出したインターネット時代の単語(表現)なのだと思いました。

なお、"aura"とはカリスマ(charisma)、それを"farm"するとは、耕す、飼育する、世話する、という意味ですが、"farm"にはビデオゲームにおいてポイントを稼ぐためのアクション(しばしば単純で反復的)を繰り返す、という意味あり、そこから来ているもののようです。

自身のカリスマのためには写真や動画を「盛る」努力はかかせません・・・。

"aura farming"という表現には多少の皮肉が込められていると言えます。

2025年11月7日金曜日

affordability

昨日の投稿に続き、同じく米国内経済の状況を表す話題の単語に、


affordability


があります。

来年の中間選挙の前哨戦とも位置付けられるこのほどのヴァージニア、ニュージャージーの各州知事選、ニューヨーク市長選ではいずれも民主党候補が勝利し、トランプ政権は苦境に立たされることになりましたが、"affordability"が争点のひとつでした。インフレ、物価高に苦しむ国民が政権に「ノー」の声を突き付けたということです。


In the first major election cycle since President Donald Trump retook office, Democratic candidates who put affordability at the heart of their campaigns won big Tuesday.

A new NBC News exit poll found the economy and cost of living were the issues voters across the country said were among their top priorities.

In New York City, Zohran Mamdani’s campaign leaned heavily into policies related to affordability, including increasing the amount of affordable housing and implementing free buses and child care. It was a winning strategy, with historic levels of voter turnout lifting him to victory.
(Erum Salam. Exit poll shows economy, affordability were top of mind for voters. MSNBC. November 7, 2025.)


今回選挙戦において、民主党候補らは、"affordability"を争点に掲げて支持を得ました。住居費や家賃、食料品、生活必需品などあらゆるものの値段が上昇し、家計を圧迫しているという現状があります。

"affordable"とは、お金を出す余裕がある、という意味合いですが、モノを買うだけの経済的余裕がある、値段に関して言えば、値頃感、といったところでしょうか。してみれば、"affordability"とは経済的余裕とでも訳せそうです。

動詞"afford"は高校英語で出てくるレベルでしょうか。〜するだけの(時間、資金の)余裕がある、という意味を丸暗記した記憶があります。

実のところ、当ブログでは"affordable"という単語を以前取り上げていました。15年前の投稿では、吉野家の牛丼(並)が280円とあります。今いくらするのかと思って調べると465円だそうです。

吉野家に行くことも無くなりましたが、決して払えないような値段では無いにしろ、外食ではお店に入る前に値段を見て躊躇しますし、どこで外食しても割高感ばかりを感じます。"affordability"とは経済的余裕と書きましたが、個々人の感覚的なものだとも思います。

"affordability"を巡って、トランプ政権は今後苦境を強いられることでしょう。トランプ氏自身はバイデン前政権の時よりも改善されていると、"affordability"問題を躍起になって否定しているようですが。


2025年5月30日金曜日

aisle

飛行機を利用すると必ずと言って良いほどお目にかかる光景に、搭乗ゲートの人だかり、降機時の機内での行列があります。

飛行機の出入口は一つ、これに乗客全員が集中するのですから仕方ありません。降りる際は出口に近い座席の乗客から順序良く降りるのが最も効率的なのですが、着陸してシートベルトの着用サインが消えるか消えないかのタイミングで座席から立ち上がって通路に並ぼうとする人は絶えません。少しでも早く降りたいのは皆同じなのですが・・・。

アテンダントはベルト着用サインが消えるまでは立たないよう呼び掛けるものですが、マナーに訴えるのも限界ということでしょうか、トルコでは我れ先にと通路に出ようとする乗客に罰金を科すことを決めたようです。


Turkish aviation authorities will fine passengers who stand up early and crowd aircraft aisles while waiting to deplane, with penalties for that and other annoying antics reaching nearly $70.

(中略)

Aisle crowders — known in circles online as “aisle lice” — have long faced the ire of irritated travelers who say the behavior is rude and delays everybody’s deplaning process.

Etiquette experts told the Washington Post that the most polite way to deplane is to wait until nearby rows ahead are emptied before entering the aisle, with exceptions for people rushing to catch connections.
(Alex Oliveira. New airline fines will penalize ‘aisle lice’ who stand up and crowd other passengers after landing: ‘Strictly forbidden’. New York Post. May 27, 2025.)


降りる順番にならないのに立ち上がり、荷物を取り出す、また通路に並ぼうとする乗客らは、


aisle lice


と呼ばれ、忌み嫌われています。

ん、どこかで聞いたことがありますね?

搭乗の時も自分の番にならないのに搭乗口付近に押し寄せる客が後を断ちませんが、そうした人達のことを"gate lice"と呼ぶのでした。

さて、今日の1語、"aisle"です。

当ブログの読者の皆さんに対して、この単語は「アイル」と発音します、というのは釈迦に説法というものですね。

しかし、"aisle"とはトリッキーなスペルではありませんか。学校英語の単語テストでは常連かも知れませんね。

この"aisle"という単語は、中英語ではeleというスペルの語だったそうです。語源はラテン語のalaで、肩とか翼という意味です。

中英語ele、"aisle"は教会の堂の真ん中に位置する身廊と呼ばれるスペースの両脇にあり、柱で区切られる細長いスペースを指す言葉だったんですね。これが通路を意味するようにもなったのです。

シンプルだったスペルに発音しないsが加わったのは"isle"(島)という単語の影響を受けたとされています。("isle"という単語もsを発音しませんが、ラテン語で島を意味するinsulaから来ています。)

余談ですが、ラテン語のinsulaは、in saloというフレーズ(salumは海のことで、塩を意味するsalとも関連)から来ているという話があります。海水の海に浮かぶのが島(isle)という訳ですが、言語学者の中ではちょっと眉唾ものの扱いらしいです。

以上はいつもお世話になっているOnline Etymology Dictionaryから引きました。


2025年5月8日木曜日

Alcatraz

トランプ大統領がアルカトラズ刑務所を復活再開させて凶悪犯罪者は全てそこに収容すると発言し、物議を醸しています。

アルカトラズ刑務所は米国西部、カリフォルニア州の沖合に浮かぶ島で、かつて大物マフィアや凶悪犯罪者が収容された刑務所として、その名はアメリカ国外でも有名です。

離れ小島であり、周囲の海流は速く、脱走は極めて困難とされます。この刑務所を舞台にした脱走劇が映画にもなりました。

このアルカトラズ刑務所の地名"Alcatraz"に関しては、スペイン語(また、ポルトガル語)で鳥のペリカンを意味するalcatrazから来ているのだそうです。

英和辞典にも語源解説にありますが、スペインの航海者がこの島を見つけて、


Isla de Alcatraces
(Island of Pelicans)


と名付けたということです。実際のところ、アルカトラズ島には多くのペリカンが生息していたそうです。


"English (language) got the term alcatraz from Spanish and/or Portuguese," says Jess Zafarris, the author of word etymology books including Words from Hell and the upcoming Useless Etymology. The word means pelican or diving bird and is thought to have been introduced from Arabic sometime after the Moors conquered the Iberian peninsula in 711 C.E., she says.

(中略)

"There is a cool folk etymology twist, a linguistic swoop, you might say, in English that is pertinent to this discussion," Zafarris says. When English mariners in the 1600s adopted the Spanish word alcatraz, they believed it to be influenced by the Latin albus, meaning whiteness — thus the word for the white seabird, the albatross, she says.
(Scott Neuman. Trump wants to reopen Alcatraz. Here's a look at how it got its name. NPR. May 7, 2025.)


上記の引用記事ではさらに、"alcatraz"(ペリカン)は"albatross"(アホウドリ)と混同されたという逸話に触れています。この逸話もランダムハウス英和辞典に見ることができるのですが、"albatross"は"alcatruz"が変化したものだという説があるようです。アホウドリ("albatross")は体毛が白いですが、"alcatraz"のalca-という部分が、ラテン語で白を意味するalbusに間違って解釈された、いわゆる異分析に基づくもののようです。

実際にはペリカン(alcatruz)とアホウドリ(albatross)は全く別の鳥です。

以前、"albatross"という単語について取り上げたことがありますが、有名な詩の中で、"albatross"を殺めたためにその後の航海で嵐や様々な苦難を強いられたという船乗りの話があります。この詩作に因み、"albtross"は付き纏う苦痛や悩みの種という意味で用いられます。

アルカトラズ刑務所もある意味、刑務所としては水道や電気などのインフラを欠く、大変にお金のかかる、困った施設であったということで、閉鎖され、今は観光地として残っているものです。

"albatross"と"alcatruz"が語源的にも切っても切れないように、アルカトラズ刑務所はアメリカ(とりわけ加州)にとっては"albatross"みたいなものだった、というオチでした。


2025年3月10日月曜日

autopen

"autopen"という単語をご存知でしょうか?

読んで字の如く(?!)、自動(auto-)筆記(pen)の機械のことで、何を自動で書くかというと、署名(サイン)を自動でしてくれるものだそうです。

私はこんな機械があるとは知りませんでしたので、へぇ〜と思ってしまいました。

ところでアメリカの大統領は文書などの署名にこの"autopen"なるものを使うことがあるそうなのですが、バイデン前大統領の時代に署名された大統領令の多数でこの"autopen"が使われたことが問題になっているそうです。


Dozens of executive orders signed by former President Joe Biden were authorized with identical autopen signatures — raising crucial questions about whether he was fully aware of what he was signing, critics say.

The conservative Heritage Foundation’s Oversight Project uncovered the situation, prompting Biden detractors such as Republican Missouri Attorney General Andrew Bailey to suggest it could be used to challenge the legitimacy of orders that the 82-year-old former president signed, especially given the concerns about his cognition.
(Ryan King. Biden used ‘autopen signature’ on many official WH docs, raising concerns over his awareness. New York Post. March 9, 2025.)


大統領令の署名というと、トランプ大統領が就任して以降、大統領令に署名と連日報道されています。関税に関するものを始めとしてその数は多数にのぼるようですが、先月でしたか、トランスジェンダーのアスリートが女性の競技種目に参加することを禁じる大統領令をトランプ氏自ら署名して掲げる様子を報道したニュースが記憶に新しいところです。(トランプ大統領に関しては、この大統領令について言えば、自らペンを取って署名したもののようです。)

"autopen"は辞書にもちゃんと載っていて、


A mechanical device used for writing imitations of a personal signature.
(American Heritage Dictionary)


といった定義が見えます。

"autopen"という単語は恐らく署名(autograph)とpenを掛け合わせたものだろうと思いますが、auto-という接頭辞には自動の意味もありますから、その意味合いも込めているのだろうと思います。なお、"autograph"のauto-は自己、自身(self)を意味するギリシャ語に由来しており、この接頭辞が「自動」の意味合いで使われるのは自動車(automobile)という言葉が世に出て以降です。

さて、"autopen"による署名を本人直筆の署名と同等とみなすというところがポイントだと思われますが、バイデン氏のケースでは本人がよく理解していないところで周囲が勝手に"autopen"による署名をしたのではないかという疑惑が持ち上がっているようです。特に任期の後半では、バイデン氏の認知機能は大丈夫かどうかが疑われたこともあることから、バイデン氏による大統領令の正統性が疑われる事態ともなっているようです。

"autopen"という機械を知らなかったので果たしてどんなものかネットで検索してみました。

画像検索では箱のような形の筐体に、文字通りのペンのようなものがアームに取り付けられたような機械で、これが紙に本人の直筆と全く同じ筆跡で署名を描き出すもののようです。この機械を製造販売しているアメリカの会社にThe Autopen Companyという会社があり、"autopen"は商標のようです。

個人的な印象としては、前時代的な機械だなぁと思いました。アメリカという国は先端を行っているようで、こんな所ではかなり古臭いやり方を残していると感じます。

大統領令と一般的な企業の契約書とでは重みが違うというものですが、日本の企業でも最近は電子契約が浸透しています。

日本はハンコ、印鑑の文化ですが、欧米はサイン(署名)です。"autopen"というやつは、さしづめ日本のシャチハタみたいなものかと思います。

2025年1月13日月曜日

abridgement

アメリカで若者に人気のソーシャルメディアTiktokについて、米国内での利用禁止命令を巡る議論は4年くらい前から起きていると記憶していますが、このところ再び沸騰しています。

というのも、提供元であるByteDance社に対して、アプリを売却するか否かの決断を求めた期限が1月19日に迫っているからですが、トランプ次期大統領が利用禁止措置に対する融和的な態度を示したことなどから、期限の延期ということも視野に入っているようです。


WASHINGTON, Jan 11 (Reuters) - The lawyer for TikTok and its Chinese parent company ByteDance offered a warning during Supreme Court arguments over a law that would compel the sale of the short-video app or ban it in the United States: If Congress could do this to TikTok, it could come after other companies, too.

The law, which was the subject of arguments before the nine justices on Friday, sets a Jan. 19 deadline for ByteDance to sell the popular social media platform or face a ban on national security grounds. The companies have sought, at the very least, a delay in implementation of the law, which they say violates the U.S. Constitution's First Amendment protection against government abridgment of free speech.
(David Shepardson. TikTok warns of broad consequences if Supreme Court allows ban. Reuters. January 11, 2025.)


ByteDance社はここが正念場という感じでしょうか、利用禁止措置がもたらす弊害を広く訴えるやり方にでたようです。

曰く、


the law, which they say violates the U.S. Constitution's First Amendment protection against government abridgment of free speech


ということなのですが、要はアプリの利用禁止措置は言論の自由に反したものであるという主張です。

ここで使われている"abridgement"という単語が今日の1語です。動詞は"abridge"です。

短縮する、要約する、という意味がありますが、ここでは、


(人)から(権利などを)奪う
(研究社新英和大辞典)


という意味で用いられており、動詞"deprive"と同義語です。辞書のエントリには古語とあり、Merriam-Webster DictionaryでもArchaicとあります。(American Heritage Dictionaryでは特に注記はなく、"To limit"、"curtail"と定義されています。)

"abridge"という単語には、"abridged dictionary"といった表記に見覚えがあります。内容を縮約した版というような意味合いですので、やはり"abridgement"には、短くする、という基本的な意味があるようです。

ところで、"abridgement"、"abridge"のスペルから〜bridgeのスペルが目につくところですが、語源欄を見てみますと、"abbreviate"と二重語との説明があります。

"abbreviate"という単語は、接頭辞ab-と、短くするという意味のラテン語breviare(また、短いという意味のラテン語brevis)から来ています。"abridge"も語源を同じくしていますが、両者は異なる音韻変化を経て、"abbreviate"と"abridge"という全く別の単語に派生したのです。

2024年4月23日火曜日

adaptogen

アメリカで最近流行る健康、ストレス対処法に、


adaptogen


というものがあるそうです。

"adaptogen"というのは天然のハーブなどを原料とした、いわゆるサプリメントの類いのようですが、社会的なストレスや不安を和らげる効果があるとされ、SNS等を通じて注目を集めているといいます。


Has the secret to stress-free living been here all along?

In the never-ending quest to fend off feelings of exhaustion, one craze that’s taken the wellness world by storm has ancient roots — literally. 

Yes, we’re talking about adaptogens, the herbs, roots and plants that will allegedly help our bodies manage stress and restore balance after tough situations, according to UCLA Health.
(Amy Eisinger. I’m a doctor — patients won’t stop asking about these 2 adaptogens. New York Post. April 22, 2024.)


"adaptogen"という単語はスペルからも想像がつくように、適応を意味する"adapt"に接尾辞-gen(生む、生じさせる、の意)が付いたものです。

Merriam-Webster Dictionary(オンライン版)には載っていて、


a nontoxic substance and especially a plant extract that is held to increase the body's ability to resist the damaging effects of stress and promote or restore normal physiological functioning


と定義されています。語源はロシア語(adaptatsiya)というのがまた興味深いところです。

ところで、記事によれば"adaptogen"の代表的なものとしては朝鮮人参(ginseng)などがあり、要は漢方?と思ってしまいます。

免疫力を高めたり、抗酸化作用のあるこうした植物由来の天然成分が注目されるのには古代インド、古代中国に遡る歴史やルーツに魅了される面はあるでしょう。

サプリメントと言えば、死亡例も発生して世間を騒がせた紅麹問題(こちらはハーブではなく、菌ですが)が記憶に新しいところです。

"adaptogen"も特効薬ではないと記事にはありますから、過信と過剰摂取は慎むべきでしょう。

2024年4月19日金曜日

alibi

アイダホ州で大学生ら4人が殺害された事件の容疑者の審理を報じる記事を読みました。

4人の殺人容疑で逮捕されたBryn Kohberger容疑者の弁護側は、事件発生時刻とされる2022年11月13日午前4時過ぎ、容疑者は事件現場から遠く離れた場所に居たため、事件への関与は無いと主張しているようです。

いわゆるアリバイがある、というやつです。

容疑者は深夜ドライブや早朝にかけてのハイキングを趣味にしていたといい、当日も現場から30マイル以上離れた公園にいたと主張しています。


Lawyers representing Bryan Kohberger, the suspect in the killing of four University of Idaho students, plan to call in an expert on cellphone tower data to bolster his claim of being far away from the scene of the crime when the victims were stabbed to death in November 2022, according to a court document filed by the defense.

Kohberger’s attorneys beat a Wednesday deadline with an alibi defense filing that provided details of their client’s purported whereabouts at the time of the homicides, as required by Idaho law. Kohberger, 29, is facing quadruple-murder charges.
(Jorge L Ortiz. Expert will testify on cellphone data behind Idaho killing suspect Bryan Kohberger’s alibi. USA Today. April 18, 2024.)


ということで、今日の1語は、


alibi


です。

刑事ドラマなどでもお馴染みのこの「アリバイ」は法律用語で現場不在証明と訳されたりもしますが、ラテン語です。

ラテン語の辞書にもalibiというスペルで載っています。「アリバイ」は英語の発音です(「ア」に強勢が置かれます)が、ラテン語はローマ字読みしますので、その発音は「アリビー」のようになります。

ラテン語alibiの品詞は副詞であり、他の所で(また、他の点で、他の人によって)というような意味ですが、ラテン語alius(英単語のanotherに相当)とibi(英単語のthereに相当)が組み合わさったものです。

2024年4月3日水曜日

anthem

先日、といっても3月の話ですが、豚児の高校卒業式に出席しました。コロナ禍に翻弄された3年間、入学式を始め、学校行事なるものにはほとんど参加することは叶わず、卒業式が子の通う校舎を訪れるほとんど唯一最後の機会となったのでした。

さて、開式にあたり、参加者全員起立、国歌斉唱。日本人として当たり前ですが、かつては君が代の斉唱をしない、起立しないという問題が取り上げられたものです。

同じような話はアメリカでもあるものだと思いました。

引用する記事は学生バスケットボール部の試合に際し、試合開始前の国歌演奏の場を無視してその場に居合わせなかったということで、ルイジアナ州立大学のチームの不遜が取り沙汰されているものです。

州知事の怒りを買ったようです。


Louisiana’s top executive joined the conversation on LSU’s national anthem controversy — and he has an idea that could potentially punish players if something similar happens again.

After coach Kim Mulkey’s team was noticeably absent from the playing of the national anthem before the Tigers’ Elite Eight loss to Caitlin Clark and Iowa in Albany on Monday night, Louisiana Gov. Jeff Landry pushed for a move that would punish student-athletes for missing “The Star-Spangled Banner.”

Iowa, however, was on the court, holding hands as the anthem was performed at MVP Arena.
(Andrew Battifarano. Gov. Jeff Landry wants athletes to lose scholarships for avoiding national anthem after LSU controversy. New York Post. April 2, 2024.)


我々日本人の間でもよく知られているように、米国の国歌は星条旗(The Star-Spangled Banner)です。

国歌を、


national anthem


というのも、英語を学ぶ者には基本的な知識であろうと思います。

ところで、"anthem"という単語の語源には興味深いヒストリーがあるのをご存知でしょうか?

そのスペルに着目してみましょう。

"anthem"という語のan-はanti-(アンチ)から来ていると言ったら意外に思われるでしょう。

"anthem"は後期ラテン語antefana、更にギリシャ語antiphonaに遡ると辞書の語源解説にあります。

ギリシャ語antiphonaに接頭辞anti-を見て取れる訳ですが、このギリシャ語の意味するところは合唱音楽における応答歌、交唱と呼ばれるもので、これは賛美歌や聖歌において、2組の歌い手が交互に歌うスタイルの楽曲を指したものです。

ギリシャ語antiphonaはほぼそのままのスペルで、"antiphon"という英単語になり、残っていますが、"anthem"はスペルを変えながらまた別の単語として派生したということなのです。(いわゆる、二重語と呼ばれるものです。)

従って、"anthem"も元々は宗教行事などにおける聖歌を指していましたが、その意味は賞賛や愛国などを内容とした賛歌や頌歌というものに拡張され、さらに国歌(national anthem)ともなった、ということなのです。

2024年2月15日木曜日

au naturel

今日の1語はフランス語なんですが、


au naturel


という表現です。ご存知でしょうか?

自然のまま、という意味です。コンテクストにより、裸で、ヌードで、という意味合いで用いられます。

記事の引用をどうぞ。


Cover up when you go Down Under.

Nudists may soon be prohibited from going au natural [sic] at a popular clothing-optional Australian beach — despite them staunchly defending naked recreation as a “legitimate way of life.”

The NSW Parks and Wildlife Service (NPWS) is considering enacting the ban at Tyagarah Beach, one of the few remaining nudist spots in New South Wales, according to 9 News.

Nudity is “not consistent with the values the reserve is managed under,” the NPWS wrote in a December letter to the local government.
(Katherine Donlevy. Nudist beach in Australia threatened with closure: ‘Not consistent with values’. New York Post. February 14, 2024.)


ヌーディストビーチというものを体験したことはありませんが、海外ではプールなどでもヌーディスト専用区域というのがあるのを目にしたことがあります。

記事はオーストラリアのとあるヌーディストビーチが存続の危機にある、といった内容のものです。

"au natural"となっていますが、正しくはフランス語スペルの"au naturel"で、英和辞典にもこのスペルでエントリがあります。

ヌードで、という意味の他、(食材などを)生のままで、という意味でも用いられます。



2023年12月28日木曜日

asylum

移民問題、特に南米からメキシコを経由して越境する移民は米国を二分する大きな問題となっていますが、ニューヨーク市のアダムズ市長はテキサス州から同市に流入する移民を抑制する政令を発布しました。

具体的には、移民を乗せたバスの受入れ時間帯の制限や事前申請の徹底などということですが、テキサス州がニューヨーク市に一方的に移民を押し付けているという不満があるようです。


NEW YORK — Mayor Eric Adams issued an executive order Wednesday to restrict the flow of migrant charter buses sent by Texas Gov. Greg Abbott to New York City.

Adams said the order mandates any buses carrying migrants arrive in the city only between 8:30 a.m. and noon on weekdays. The buses’ arrival must also be announced 32 hours in advance, he said. The order specifically applies to buses contracted by the state of Texas — whose governor Adams routinely blames for sending asylum seekers into the five boroughs.
(Jason Beeferman. Mayor Adams announces executive order aimed at restricting Texas Gov. Greg Abbott’s migrant busing. Politico. December 27, 2023.)


さて、移民は"migrant"ですが、記事では、


asylum seeker


とも表現されています。

"asylum seeker"とは「亡命希望者」と訳されますが、圧政や人権侵害などから逃れるため、他国へ保護を求める人々を指す用語です。

先日ですが、高校生の娘から、難民と亡命者はどう違うか、という質問をうけました。英和辞書の"refugee"のエントリには、両方の日本語が載っているのですが、私は「亡命者」という日本語に対しては"asylum seeker"という英語がまず思い浮かんだのですが、正直なところこれらの日英語の明確な使い分けについては説明が出来なかったのでした。

質問を受けて調べたAmnesty Internationalの解説によると、"migrant"、"refugee"、"asylum seeker"はそれぞれ異なる概念であるということになっています。

このうち、"migrant"には国際的な定義は明確化しておらず、様々な理由を背景として他国へ移動する人々を指すということですが、"asylum seeker"は「亡命希望者」という日本語にある通り、他国による保護を求めている人のことであり、その結果「難民」と認定された人が"refugee"という扱い、ということのようです。

さて、"asylum"ですが、保護施設、収容所を意味するこの単語はラテン語asylumから来ており、さらに遡るとギリシャ語であると語源欄から確認できます。

"asylum"という単語のa-は欠落、除外を意味する接頭辞であり、続く部分のギリシャ語sulonは"right of seizure"(逮捕の権利)を意味するとあります。つまり、"asylum"とは捕われることから免れている状態を指しているもので、故に保護施設ということなのです。

この意味で"asylum"は"refuge"(避難場所)と同じであり、"asylum seeker"は"refuge"を求める人ということですから、Amnesty Internationalの説明は腑に落ちます。

因みに、"refuge"という単語はラテン語fugere(逃げる)から来ています。


2023年10月5日木曜日

atto-

2023年のノーベル物理学賞が欧米の3氏に授与されることが発表されました。

ニュース記事などによりますと、電子(electron)の動きを観測するためにごく短い時間だけ光るレーザー技術を開発したことが評価されたということです。

同じタイミングで発表された医学賞、生理学賞の方は、新型コロナウィルスのワクチン開発につながったメッセンジャーRNA(mRNA)の研究者に授与されましたが、一般人にはこちらの方が馴染みが深いせいか、物理学賞の授賞理由は素人にはピンと来ません。

ニューヨークタイムズ紙から引用です。


The Nobel Prize in Physics was awarded to Pierre Agostini, Ferenc Krausz and Anne L’Huillier on Tuesday for techniques that illuminate the subatomic realm of electrons, providing a new perspective into a previously unexplored domain.

Electrons move at a whopping 43 miles a second. This speed has long made them impossible to study. The new experimental techniques created by the three scientist-laureates use short light pulses to capture an electron’s movement at a single moment in time.
(Nobel Prize in Physics Awarded to 3 Scientists for Illuminating How Electrons Move. New York Times. October 3, 2023.)


電子の動くスピードというにはものすごい速いそうで、何と秒速43マイル(!?)なんだそうです。故に電子の挙動を観測することはこれまで困難とされていました。

電子の挙動を観察するためにはごく短い時間だけ光るフラッシュのような技術が求められていたということなのですが、「ごく短い時間」というのがこれまた常人の理解を超えた世界の話で、


attosecond


という単位なのだそうです。これは10のマイナス18乗秒(one quintillionth)のことで、日本語では「アト秒」と訳されています。


To study the movement of electrons, the scientists had to use pulses of light that last only on the scale of attoseconds; an attosecond is one quintillionth of a second. The number of attoseconds in a single second is the same as the number of all the seconds that have elapsed since the universe burst into existence 13.8 billion years ago, according to the Royal Swedish Academy of Sciences, which awards the Nobel Prizes.
(ibid.)


上述の通り、"attosecond"のatto-は、10のマイナス18乗を表す接頭辞なんですが、国際単位系(SI)で定められているものです。

調べてみると、小生も「マイクロ」、「ナノ」、「ピコ」までは聞いたことがありますが、その次が「フェムト」、次いで「アト」と続きます。

atto-という接頭辞はデンマーク語の数詞で18を表すattenから来ています。

ちなみに、「フェムト」(10のマイナス15乗)もデンマーク語で15を表すfemtenから来ています。



2023年8月21日月曜日

ancillary

お盆休みが終わりました。今夏は行動制限の無い夏休みとあって、新幹線や飛行機の利用客が大幅増加という報道を目にしました。なお、小生は予定なく、自宅でおとなしくしておりました。

ところで、最近の飛行機のサービスというのは随分と複雑化している、という記事を見かけ、春にアメリカへ行った時のことを思い出し、妙に納得してしまいました。


And there is no doubt that buying a flight has become more complicated.

Airlines now offer us a plethora of extras at the booking stage, from speedy boarding and checking cabin bags to seat selection, all of which come at a price.

(中略)

So-called "ancillary" services have become a major part of airlines' business models, generating some $103bn (£81bn) globally last year - up from $40bn in 2013.

Airlines say that by "unbundling" extras such as food and drink or cabin baggage from the ticket price, travellers get more choice and cheaper fares overall.
(Daniel Thomas. Have airlines gone too far with their extra fees? BBC News. August 20, 2023.)


一言で言うと、やたらとオプションが多い、ということなのです。

座席の事前指定や、機内食選択、手荷物(持込、預け)の追加、等々、事細かにオプションがあり、しかも選択により料金が違ってくるという始末です。

「オプション」と書きましたが、記事中、


So-called "ancillary" services


と表現されています。

ここでの"ancillary"という形容詞は、二次的な、とか補助の、付随の、という意味で、同義語に、


extra
supplementary
accessory


などがあります。

ところで、この"ancillary"という単語の語源が興味深いのですが、ラテン語ancillaから来ており、その意味は女中(a female servant)というものです。

このラテン語ancillaはそのままのスペルで英単語にもなっており、辞書には付属物、役立つもの、手引き、といった意味が載っていますが、"ancillary"に比べるとあまり馴染みがない単語ではないかと思います。


2023年8月11日金曜日

agamograph

X(書くのも読むのもまだ慣れませんが、旧Twitter)が本社オフィスの備品などをオークションに出しているというニュースを読みました。

会社がオフィス移転に際して家具や什器、備品を売り払うというのはよくある話ですが、Xが本社移転を計画しているというのでは無さそうです。

オークションのきっかけは同社のロゴが変わったことによるもので、あの「青い鳥」のアイコンを始め、古き良き(!?)ツイッターの時代の物品が一掃されているようです。

日本からオークション参加して買い取るのは厳しそうですが、なかなか興味深い出品が窺えます。(記事はこちら。)

その中で、"agamograph"という見慣れない単語を見かけました。


A 34-foot agamograph

An agamograph (for those unaware) is a type of image that changes depending on what angle you view it from. In this example, the piece shifts from a wide-eyed emoji, to the question “What’s Happening?” — something I’m sure the remaining legacy employees at X have been asking themselves for months.
(Jesse Weatherbed. Here are the funniest things being auctioned off at Twitter HQ. The Verge. August 10, 2023.)


説明と記事の写真を見て、なるほど、あれのことを"agamograph"というのか、と知った次第です。街中などでも看板広告が通過するうちに見え方が変わるものがありますが、「あれ」のことです。

一応補足しますと、見る角度、方向によって見え方が異なる平面のイメージのことで、レンチキュラー(lenticular)とも言うようです。"lenticular"というのは凸レンズのことで、これが見る角度によりイメージが異なって見えるからくりになっています。

"agamograph"という単語ですが、これはヤーコブ・アガム Yaakov Agam (1928〜)というイスラエルの彫刻家の名前から来ているのだそうです。

手元の英和辞書、オンライン辞書でも載せていないようです。




2023年8月9日水曜日

acrophobia / aichmophobia

イギリス人によく見られる恐怖症(phobia)のトップは?という見出しに釣られました。

人それぞれ、忌み嫌うものがあって、女性だと蜘蛛(クモ)が嫌いだとか、人によっては閉所恐怖症といったものがあります。

英国人の"phobia"のトップは高所恐怖症でした。

"phobia of heights"(もしくは、fear of heights)と言いますが、専門用語は、


acrophobia


と言います。


Lots of us have a fear of something, whether it be spiders, the dark or needles.

And a survey by YouGov  has revealed that, of the 10 phobias asked about, almost a quarter of Brits (23 per cent) say they have a phobia of heights.

(中略)

The medical term for fear of heights is acrophobia, and it doesn’t need to be a skyscraper building to trigger panic.
(Vanessa Chalmers. The UK’s most common phobia revealed – and it’s not spiders, needles or the dark. The Sun. August 8, 2023.)


"phobia"というのは、ある対象や事象に過剰とも言える恐怖感や嫌悪感を催すことで、当人以外の人間にはさして気にもならないのに、当人には激しい動揺を引き起こし、時に嘔吐などの身体症状をもたらすものです。


According to the Cambridge Dictionary, a phobia is “an extreme fear or dislike of a particular thing or situation, especially one that is not reasonable”.
(ibid.)


高所恐怖症という意味の"acrophobia"という単語は、先端、始点、頂点を意味する接頭辞acro-と"phobia"が結合したものです。

高所の綱渡りをものともしない曲芸をアクロバット(acrobat)、一連の単語の頭文字だけを取って略したものを"acronym"、身体の末端が肥大化する疾患をアクロメガリー(acromegaly)と言いますが、これらの単語に見られる接頭辞acro-はギリシャ語akrosから来ているものです。

ところで、同じく恐怖症に先端恐怖症というのがあります。こちらは針など鋭い先端(尖端)に言いしれぬ恐怖感を覚えることですが、先述のacro-に先端の意味があるところ、先端恐怖症は何というのか、ふと疑問に思いました。

調べてみますと、


aichmophobia


というそうです。

実のところ、手元の研究社新英和大辞典には載っていないのですが、Merriam-Websterによると槍の先端を意味するギリシャ語aichmeから来ているそうです。

ということで、今日は1日1語ならず、1日2語となりました。

2023年7月25日火曜日

AWOL

先日、韓国から国境を越えて北朝鮮に入国した米兵のことがニュースになりました。

北朝鮮側で拘束されたものと見られますが、その後の状況ははっきりしないまま時間が経過しています。

記事を引用しますが、ここで、AWOLという略語が出てきます。


The American-led U.N. Command in South Korea said Monday a conversation was started with Pyongyang about a U.S. soldier who ran into North Korea last week across, amidst nuclear-submarine movements in the area.

“None of us know where this is going to end,” a British lieutenant general and deputy commander at U.N. Command, Andrew Harrison, said during a news conference in Seoul.

(中略)

Harrison refused to give more details on a timeframe, or whether the conversation was constructive with the North Koreans, citing the sensitivity of the discussions. He also declined to comment on the AWOL Pvt. Travis King’s condition.
(UN Command confirms contact with N. Korea over AWOL U.S. soldier. i24 News. July 24, 2023.)


突然北朝鮮側へ越境するという奇行とも思える行動を取った米兵のことをAWOLと言っているものですが、これは、


absent without leave


を略したものです。(WOは"without"を略したもので、w/oと書かれることもあります。)

さて、その"absent without leave"とは、無断(無許可での)離隊、と辞書にありますが、いわゆる無断外出、無許可で持ち場(職務)を離れる、という意味です。

"absent"とはその場に居ないということ、「欠席」で、"leave"はここでは、許し、許可、の意味の名詞です。

辞書には軍事の用語として載っていますが、軍事か否かに関わらず用いられます。


A Tesco sales assistant who had worked at the supermarket for 26 years was unfairly dismissed after she was “erroneously” declared absent without leave while she was on holiday, a tribunal has ruled. 

The London South Croydon tribunal found Julie Churcher was unable to respond to the letters inviting her to disciplinary hearings, nor could she appeal her eventual dismissal, because she was away. 
(Elizabeth Howlett. Customer sales assistant sacked for being AWOL when she was actually on holiday was unfairly dismissed, tribunal rules. People Management Magazine. July 24, 2023.)


ここでは無断欠勤の概念に近いでしょうか。