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2022年10月31日月曜日

stampede

ソウルの繁華街で、狭い路地に人々が殺到した結果、150人以上が死亡するという惨事が起きました。コロナ禍のため、3年振りとなったハロウィンの狂騒の果ての悲劇に世界が戦慄しています。


South Korean authorities are investigating the crowd surge that killed at least 154 partygoers in Seoul, as the rattled nation attempts to come to terms with one of its worst-ever disasters.
(Seoul crowd disaster leaves South Korea reeling, as death toll rises to 154. CNN. October 30, 2022.)


日本国内でもトップニュースで、雑踏事故と報じられています。

引用したCNNの記事では、


crowd surge


とあります。他メディアでも、crowd crush、crowd disaster、crush disaster、などの表現が見られます。

一方、以下はロイターの記事ですが、


stampede


という表現を使っています。


President Yoon expressed condolences to the victims and his wishes for a speedy recovery to the many injured in one of the South Korea's worst disasters and the world's worst stampedes in decades.
(South Korea mourns, wants answers after Halloween crush kills 153. Reuters. October 29, 2022.)


"stampede"を辞書で引くと、


大勢が(どっと)押し寄せること、殺到


と載っています。また、動詞としても使われるとあります。

"stampede"の語源欄を見ると、スペイン語estampidaから来ているそうで、estamparというスペイン語の動詞は英語の"stamp"(踏み付ける、足を踏み鳴らす)に同じとありました。

"stampede"という単語の-pedeという語尾が、ラテン語で足を意味するpesから来ているのでは、と想像したのですが、関係はないようです。("impede"や"centipede"といった単語に見られる-pedeという語尾は、ラテン語pesに由来するものです。)

ソウルの事故で亡くなった方の多くは自らの力ではどうしようもない状況に巻き込まれ、押し合いへし合いの中で圧死したと報道されています。倒れて来る周囲の人から踏みつけにされた被害者もいたようですが、防ぎようは無かったのかと何ともやりきれない気持ちになります。



2022年10月28日金曜日

こんな意味もあったの? ー guide

アマゾンの株価が急落というニュースです。これから年末年始のホリデーシーズンを迎えますが、ドル高やインフレ、景気後退などで例年のような売上げが期待できないらしく、第四四半期予想が想定を下回ることが背景にあるようです。


Amazon (AMZN) shares tanked nearly 20% in after-hours trading on Thursday after it reported misses on revenue and sales for its Amazon Web Services cloud business, along with disappointing fourth-quarter guidance.
(Alexandra Garfinkle. Amazon stock tanks 20% after revenue and guidance miss expectations. Yahoo! News. October 28, 2022.)


記事は以下のように続きます。


For the fourth-quarter, Amazon guided to between $140 billion and $144 billion instead of the expected $155 billion. The company, like others that operate internationally, has been hurt by the strong dollar. Amazon also faces headwinds from inflation, rising interest rates, and fears of a recession. Q4 notably includes the holiday season, which the company is predicting to be tempered.
(ibid.)


ここで、"guided to between"という表現に引っかかりました。紛れもなく、動詞であり、その主語はAmazonです。

"guided to"を何と訳すのか、戸惑いました。"between"以下は、between xxx and yyyというパターンであり、すなわち四半期の売上高(予想)の数値が入っています。

従って、アマゾンが売上げ予想をこれくらいになる、と予測して公表している、というのが、記事の文脈からして適当であろうと思われます。

しかし、辞書を引いてみたものの、"guide"という動詞にそのような意味合い(つまり、予測する、公表する、等の意味)は見当たりません。案内することを予測することと同義に解釈できなくもありませんが、釈然としないものが残ります。

"guided to"のtoという前置詞(副詞?)もよく分かりません。

何となくモヤモヤしたものを抱えつつ、ネットを検索していますと、この"guided to between"という言い回しは業績予測のコンテクストでよく使われているようであることが分かりました。


The company had guided to between
$11 million and $12 million in revenue during the second quarter and between $6 million and$7.5 million in cash available for distribution.
(S&P Global, Market Intelligence)


もうひとつ引用します。


CEO Ed Bastian said the carrier has increased its full-year 2017 guidance to between $6.35 and $6.70 a share “due to additional benefits from tax reform.” At investor day last month, Delta guided to between $5.35 and $5.70.
(Ted Reed. Delta Projects Earnings And Unit Revenue Will Gain While Costs Will Fall. Forbes. January 11, 2018.)


これを読んで気が付くに至ったのですが、


the carrier has increased its full-year 2017 guidance to between $6.35 and $6.70 a share


というくだりにある、"guidance"という単語です。

"guide"は動詞でしたが、"guidance"は名詞(しかも同根!)です。

この"guidance"という単語を見た瞬間、あっ、これはまさに業績予想(として企業が開示する書類)のことだ、と気が付きました。

"guidance"の定義(これも普通の英和辞典には載っていませんが)は以下のようにありました。


Guidance is an informal report a public company issues to shareholders detailing the earnings it expects to achieve in the upcoming fiscal quarter or year ahead.
(Investopedia)


ということで、"guided to between"もいう一風変わった言い回しにおける"guide
 (to)"という動詞は、恐らく業績予想の開示を意味する"guidance"から生じたものであろう、という勝手な?!結論に至った次第です。

さて、何と訳すのかですが、やはり、予測(した、していた)というのが適当でしょうか。

"guided to "のtoが何なのか、という疑問が残りますが、"guidance to"を引きずっているのかな、と。

どなたか、教えて下さい。


2022年10月27日木曜日

carpetbagger

米中間選挙が迫ってきました。先日はコロラド州の情勢を伝える記事から引用しましたが、今日はもうひとつの激戦州とされるペンシルベニア州で行われた候補者の討論会についての記事が目に留まりました。

記事では、脳梗塞を患ったために言葉に詰まる場面も見られた民主党のフェッターマン候補と、対照的によどみなく持論を展開する共和党のオズ候補を評価しています。


Each candidate faced a particular challenge. Oz, who owns several properties around the US and seems to have primarily lived in his New Jersey mansion until 2020, has made a series of embarrassing gaffes that critics say reflect his elitism and out-of-towner status; he needed to prove he wasn’t an out-of-touch carpetbagger. And Fetterman, who had a stroke in May, needed to show that he is physically and cognitively healthy, and up to the task of being a US senator.

Neither succeeded.
(Jill Filipovic. Opinion: Heartbreaking Fetterman-Oz faceoff. CNN. October 26, 2022.)


引用部分で、共和党のオズ候補については、


carpetbagger


と呼ばれているとあるのですが、この単語を知らず、辞書を引きました。

簡単に言うと「アウトサイダー」、つまり「よそ者」という意味なのですが、American Heritage Dictionaryの定義は以下です。
 

1. A Northerner who went to the South after the Civil War for political or financial advantage.
2. An outsider, especially a politician, who presumptuously seeks a position or success in a new locality.

[So called because they carried their belongings in carpetbags.]


2番目の意味が相当するようです。

記事にもありますように、オズ氏はペンシルベニア州が地元ではなく、すぐ隣のニュージャージー州を本拠としているようです。

地元でもない選挙区に候補として名乗りをあげているということが、"carpetbagger"との謗りを受ける原因のようです。

1番目の定義、また語源解説にもあるように、"carpetbagger"という単語の由来は南北戦争の時代に遡るそうで、戦後の再建期にチャンスを求めて南部にやって来る北部の人を指したそうです。

"carpetbag"というのは、カーペット(じゅうたん)を素材にした旅行カバンのことで、このカバンひとつに財産をまとめて旅したそうです。(American Heritage Dictionaryに挿絵がありますが、ズタ袋のようにも見えます。)


2022年10月26日水曜日

project car

昨日に引き続き、フェースブック社が手掛けるメタバース事業についての記事から引用です。

同社は、バーチャルリアリティー体験を支えるヘッドセットを開発したオキュラス社を2014年に買収しましたが、創業者であったPalmer Luckey氏によるメタ事業の評価は辛口です。


The creator of Meta’s Oculus virtual reality headsets shredded Mark Zuckerberg’s version of the metaverse — arguing the platform is currently “terrible” and in need of an overhaul.

Palmer Luckey, who sold Oculus VR to Facebook for $3 billion and was later ousted by the company, compared Zuckerberg’s foray into the metaverse to a “project car” — a pet initiative requiring a massive investment with no guarantee that others will find it worthwhile.

“I don’t think it’s a good product. It’s not. It’s not fun, it’s not good,” Luckey said during an appearance at the Wall Street Journal’s Tech Live conference Monday. “I think actually most of the people probably on the team would agree that it’s not currently a good product. It’s like a project car.”
(Thomas Barrabi. Mark Zuckerberg’s ‘terrible’ metaverse shredded by Oculus founder:’It’s not fun’. New York Post. October 25, 2022.)


そのコメントというのが、フェースブックのメタバースについてのものなのですが、


It’s like a project car.


というものです。

"project car"とはどういう意味でしょうか?

引用した記事の冒頭には、


the platform is currently “terrible” and in need of an overhaul


とありますから、否定的な意味合いであると想像がつきますね。また、


a pet initiative requiring a massive investment with no guarantee that others will find it worthwhile


ともありますから、いわゆる「金食い虫」のような存在とも言えます。

実のところ辞書には載っていないのですが、ネットを検索してみますと、"project car"というのはクルマ愛好家の間で使われる用語のようで、旧式の古い自動車を指すようです。

俗語のジャンルに入ると思いますが、Guide to classic car terminologyというサイトに、以下のような定義がありました。


Project Car: A vehicle that is in restorable condition.


諸外国の車検制度については知りませんが、旧式の車をレストア(再生)して乗るなどというのは、大変にお金も時間もかかることで、よほどのクルマ好きでなければやらないことでしょう。

言い方は悪いですが、オンボロ車を入手して、金を注ぎ込み、やっと乗れるか乗れないか、・・・というようなイメージでしょうか。「プロジェクト」は半永久な取り組みで、費やす時間とお金に見合うものなのか・・・。

「メタ」事業に話を戻すと、こちらもザッカーバーグ氏の熱中を冷めた目で見ている市場関係者、という構図が見えてくるようです。


2022年10月25日火曜日

thread the needle

このところSNS大手フェースブックの業績不振をよく耳にするようになりました。

社名をMeta(メタ)に変更したのは2019年?だったでしょうか、メタバースと言われるインターネット上の仮想空間を利用したサービスへ注力していくことを表明していたところでしたが、メタバースという概念がその分かり難さ故に未だ浸透しておらず、本業(!?)のSNS事業もユーザー離れが否めないようです。


Meta, the company formerly known as Facebook, should start focusing on making Facebook Facebook again.

Over the past year, CEO Mark Zuckerberg has zeroed in on his passion project: the metaverse. It's a squishy concept that can describe a number of things, but in the broadest sense it's the idea that people connect with each other through virtual worlds rather than on a traditional social network.

But as I wrote recently, Meta's big pivot into the metaverse has been a disaster, with little to show for it other than a mediocre experience, increasingly expensive headsets, and its stock plunging over 60% this year.
(Travis Clark. Mark Zuckerberg should dial down the metaverse crap and make Facebook 'Facebook' again. Insider. October 23, 2022.)


こうした状況を受けて、株主や投資家の間からは、SNSへの回帰が必要という声が上がっているようです。


Staring down the barrel of a potential recession, Meta should be growing the engagement and revenue of those apps, which have billions of users worldwide.

(中略)

Instead of angering users by trying to make Instagram more of a TikTok clone, Meta should be spending its time and energy on threading the needle to monetize that usage as much as possible without turning people off.
(ibid.)


如何にSNS事業を収益化するかが重要である、(メタバースよりも)そちらに注力すべき、という訳です。

今日は"threading the needle"というフレーズを取り上げます。

針の穴に糸を通す、


to pass a thread through the eye of (a needle)


というのが字句通りの意味で、困難なことを成し遂げるという比喩で使われます。

ところで、「字句通り」と書きましたけれども、英語には針の「穴」とは出てきません。単に"needle"です。

なぜこんなことを言うのかと訝しまれるかもしれませんが、動詞の"thread"自体に、狭い場所などに物を通す、という意味合いがあるからです。

上記の定義は、Merriam-Webster Dictionaryの"thread"の動詞の意味として最初に出てくるものですが、同じく動詞の意味に、


to make one's way through or between
threading narrow alleys
also : to make one's way usually cautiously through a hazardous situation


とあり、こちらもやはり困難な状況下で何とか物事を先に進めようとするという場合の比喩として用いられると解釈できます。

2022年10月24日月曜日

bottle

イギリスのトラス首相が就任1ヶ月半足らずで退陣を表明しましたが、後継候補が取り沙汰されています。

トラス氏と首相の座を争ったスナク氏が有力候補として名前が上がるのは当然のようにも思われますが、前任だったジョンソン氏の名前が出てくるとは思いませんでした。

尤も、今日のニュースでは、本人は出馬しないという意向を表明しているようです。


Former prime minister Boris Johnson pulled out of the contest to become Britain's next leader on Sunday, saying he had the support of enough lawmakers to progress to the next stage but far fewer than front-runner former finance minister Rishi Sunak.
(Boris Johnson pulls out of UK Conservative leadership race. Reuters. October 23, 2022.)


ところで、別記事では以下のようにありました。


It was all too predictable. Indeed, it was predicted, because Boris Johnson has done it before. In 2016, winded by his betrayal by Michael Gove, he pulled out of the leadership election rather than risk humiliation.
(John Rentoul. Boris Johnson bottles it – again – clearing the way for Rishi Sunak. The Independent. October 23, 2022.)


不出馬を表明したジョンソン氏について、きっとそうだろうと思っていた、というオピニオン記事です。

記事のタイトルで、


Boris Johnson bottles it – again


とありますが、この"bottle"の意味が気になって調べてみました。

手元にある辞書には載っていなかったのですが、Cambridge Dictionary Onlineで、


to not do something because you are frightened; to fail at something because you are frightened


と定義されています。

つまり、怖気付いて踏み留まる、という意味なんですが、イギリス英語の俗語表現だということです。

改めて説明するまでもなく、"bottle"というのはビン(瓶)のことですが、動詞としての意味にはビンに詰める、保存するという意味があり、"bottle up"というフレーズには、隠す、(感情を)抑える、といった意味もあります。

今日取り上げた意味での"bottle"は、"bottle out"と表現することもあるそうです。




2022年10月21日金曜日

Jack Frost

関東地方はここ数日すっきりした秋晴れが続き、外に出て青空を仰ぐのが気持ち良いです。一方、朝晩の冷え込みは、気象予報によれば、11月並みとか。

それでは今日の記事の引用をどうぞ。


Jack Frost will be nipping at the noses of Hampton Roads residents tonight as temperatures are forecast to dip near freezing across the region.

The National Weather Service predicts temperatures may fall into the mid- to upper-30s late Wednesday and into early Thursday morning. The frosty temperatures are likely to persist into early Thursday before the region warms up to approximately 65 degrees.
(Caitlyn Burchett. Turn up the heat: Cold snap brings frost advisories to Hampton Roads. The Virginian-Pilot. October 20, 2022.)


のっけから、"Jack Frost"という人が誰かの鼻に噛み付いたのか?とでも勘違いしそうな出だしですが!?

ここでの"Jack Frost"は実在する人の名前ではありません。単に寒さを意味する表現です。

第2段落を読めば、気候の話であることは明らかなんですけどね。

"Jack Frost"(もしくは、Old Jack Frostとも)は急な冷え込みや霜注意報、厳寒を擬人化した表現です。日本語の「冬将軍」に近いでしょうか?

さて、"Jack Frost"の用例を探していますと、興味深い記事に行き当たりました。


Winter has been Russia’s great strategic asset in previous wars, literally freezing the ambitions of Napoleon and Hitler in their tracks on the long road to Moscow. The season has become Putin’s last hope for salvaging an outcome in Ukraine that he might call victory. If voters in Germany, Italy and other Western countries get cold enough without the Russian gas they rely on for their heaters, they could force their governments to back away from NATO’s unified support for Zelensky.

But even Jack Frost might turn his back on Putin.
(David Von Drehle. Opinion  A potential new snag for Putin: The retreat of Jack Frost. The Washington Post. September 2, 2022.)


(9月時点の記事ですが)ロシアとウクライナの戦争は終わりが見えず、これから厳しい冬を迎えます。

プーチン大統領にとっては厳寒の到来が露軍に有利に働くという思惑があるようですが、どうやら思う通りには行かないようだ、という内容です。

ここでも、


But even Jack Frost might turn his back on Putin.


と出てきますが、擬人化の表現が効いていますね。


2022年10月20日木曜日

row-back

昨日に続き、英・トラス首相の話題です。

目玉の減税政策を撤回し、英ポンド急落など国内経済にも影響を招いたことから、支持率は急降下、早くも辞任かと言われています。

昨日の記事では、減税政策の撤回を、"U turn"と表現していました。カタカナでも通じますから、すぐ分かります。

以下の記事では、


row-back


とあります。


LONDON — British Prime Minister Liz Truss insisted Wednesday she was a "fighter not a quitter" as she was grilled by parliamentarians for the first time since being forced to scrap almost all of her flagship fiscal policies.

(中略)

The row-back of her huge program of tax cuts, originally announced on Sept. 23, came after it sparked massive volatility in financial markets, with the pound plunging against the dollar and U.K. government bonds being sold off at such a rapid rate it threatened to topple pension funds. Mortgage deals were also pulled as interest rate hike expectations rose rapidly.
(Jenni Reid. UK PM Liz Truss says she’s a ‘fighter not a quitter’ as lawmakers plot to oust her. CNBC. October 19, 2022.)


正直に言うと、最初一読した際、この"row-back"が直ぐに飲み込めず、はてな?となりました。

"row-back"という単語に馴染みが無かったからですが、実際、辞書を引いてみましたが、載っていません。手元にある英和辞書、またいつも参照するAmerican HeritageにもMerriam-Websterにも見当たらないのです。

昨日からのニュースを読んでいるので、政策を転換、もしくは撤回、の意であることは想像がつくというものですが、辞書に定義が無いのが気になりました。

ネット検索では、Cambridge Dictionary Onlineで(動詞句として)、


to change a previous decision, opinion, or statement


とあります。

"row-back"の"row"を取り上げれば、これは船を漕ぐという意味です。つまり、漕ぎ出したところから戻る、というのがその意味で、やると決めたのにやっぱり止める、という意味になるのは自然だと言えます。

この動詞句としての"row back"が名詞化して"row-back"になったものと思われますが、動詞句としても辞書に見当たらず、あまり定着していない表現なのかなとも思わされます。

コーパスを頼ってみましたが、一度決めたことを止めるという意味合いでの"row-back"、もしくは"row back"の用例はわずかでした。

得られたのは動詞句での用例のみですが、いくつか拾ってみました。


Wilbon, gutless and phony troll that he is, promptly rowed back his criticism of D.C. -- suddenly it was not " terrible, " but " a pretty good sports town...
(Deadspin, 2012)


Marks and Spencer is rowing back on its foreign business and closing a number of clothing and home stores.
(Market Watch, 2016)


イギリス英語の表現という訳でも無さそうですが・・・。

2022年10月19日水曜日

PMQ

ラジオで国会中継を聞きながら・・・。

参院予算委員会では、統一教会問題で野党議員の質問攻めにあう岸田首相。内閣支持率は下落傾向にあると報道されています。

一方、英国では、就任したばかりのトラス首相が早くも苦境に立たされています。公約していた減税政策を取り下げ、担当閣僚も解任という事態に、新首相の資質が疑問視され、トラス氏下ろしが始まったとも言われています。


Liz Truss has told right-wing Tory MPs her tax U-turns were "painful," as she continues to try and shore up her support within the party.

The PM told Eurosceptic backbenchers she was still committed to boosting growth through economic reforms, No 10 sources said.

She has been meeting MPs to appeal for support, with her authority undermined after she abandoned flagship tax cuts.

She will appear at PMQs for the first time since the U-turns later.

This is only the third time since taking office that Ms Truss will face PMQs and it will be a crucial test of her leadership.
(Paul Seddon. Tax U-turns were painful, Liz Truss tells Tory MPs. BBC News. October 18, 2022.)


PMQ(s)という略語が出てくるので、何のことかと思ったら、何の事はない、


Prime Minister’s Questions


の略でした。

ですが、これは「首相の質問」ではなく、"Questions to Prime Minister"(首相への質問)です。

PMQについては英国議会のオフィシャルサイトにも解説があります。


Prime Minister's Questions (PMQs) in the Commons Chamber is a ticketed event which takes place every Wednesday at 12 noon. Tickets are free of charge and are available only to UK residents, who should contact their Member of Parliament or a Member of the House of Lords.


下院議会において、開会期間中の毎週水曜日正午から行われるということですが、興味深いことに英国在住者には一般公開されており、無料で傍聴できるそうです。


2022年10月18日火曜日

sleeper

11月の米中間選挙が近づいていますが、上院における民主党と共和党の勢力が拮抗する中で、コロラド州が注目されています。

同州の共和党候補であるJoe O’Dea氏は、対立候補である現職のMichael Bennet氏の後塵を拝しているようですが、バイデン大統領の支持率の行方次第では、O’Dea氏優位も期待されるそうです。

コロラド州の他、接戦が予測される州には、ペンシルベニア、ネバダ、ジョージアがあり、民主の青と共和の赤が混ざった紫色(purple)が最終的にどちらに染まるのかという観測がもっぱらのようです。


For months, top party operatives have mused that Joe O’Dea is the best Republican candidate running for Senate this year.

(中略)

The moderate Colorado Republican Senate nominee has never led a public poll in the race, and polling averages show O’Dea continues to trail his opponent, Democratic Sen. Michael Bennet, by 8 percentage points. But Bennet’s approval ratings are in line with President Joe Biden’s, in the low 40s, and both parties see the potential for a surprise.

So, in the final weeks of the 2022 midterm campaign, with the GOP’s pickup prospects fading in states like Arizona and Georgia, national Republicans are looking for backup opportunities and holding out hope that O’Dea can eke out an upset in a state that’s on the bluer side of purple.
(Natalie Allison. The sleeper state Republicans are targeting to win the Senate. Politico. October 17, 2022.)


期待がかかるO’Dea氏について、記事のタイトルでは(他の州における同様の候補者も含め)、


The sleeper state Republicans


と表現されています。

"sleeper"と聞くと、列車の寝台車、とか子供のパジャマを想起しますが、ここでは勝ち目が薄いと思われていたところが予想外に優位に立つような人(あるいはもの)を指します。

American Heritage Dictionaryの定義を引用します。


One that achieves unexpected recognition or success, as a racehorse or movie.

A spy or saboteur who is planted in an enemy country and who lives unobtrusively as a citizen of that country until activated into clandestine operations by a prearranged signal.


選挙戦の報道ではしばしば馬に関する表現、また競馬で使われる用語が使われます。「ダークホース」というのもそのひとつで、「予想外の勝ち馬」ですが、「泡沫候補」などと言われた候補者が当選した時など決まって使われる表現です。"sleeper"の訳語としても適当でしょう。

また、2番目の定義は「伏兵」の意味と思われますが、この言葉もスポーツの試合などで用いられることが多いように思います。スタープレイヤー、あるいは主力とは目されていなかった選手が予想外の活躍をした場合などに使われますね。


2022年10月17日月曜日

charade

リモートワークと見せかけながら海外旅行をしていたという猛者の話を読みました。

米国シカゴでマーケティング関係の仕事をする男性は、コロナ禍の最中、リモートワークに従事しながら、南米など5カ国を旅行したそうです。

今更驚くような話でもなく、オンラインで仕事が完結してしまう勤め人であれば、さもありなん、と思わされます。


Work-from-home policies have allowed employees to log in from their living rooms in their pajamas, but some workers have taken the idea to an extreme, secretly logging in from across the world while keeping their bosses in the dark.

It can be a tough charade to keep up. A marketing specialist based in Chicago who since 2020 has secretly lived in more than five countries while working 9-to-5 jobs recalled joining a Zoom meeting from Colombia as his coworkers lamented a recent storm that had covered the Midwestern city in snow.

"I need to go to the beach right now," he recalled a coworker saying. "I'm so tired of this awful weather." 

"Yeah, I really want to go to the beach. This is so terrible," the marketing specialist replied.

Little did his snowbound compatriots know he was actually a 10-minute walk from the Caribbean Sea and had just returned from an outdoor yoga session.
(Hannah Towey. 4 remote workers who've secretly worked from abroad without their employers knowing describe how they keep up the charade. Business Insider. October 16, 2022.)


男性は同僚とのオンライン会議で話を合わせるのに苦労したと術回しています。ここでの話というのは、つまり天候とかの話です。

記事で、


a tough charade to keep up


と出てきます。"charade"というのは、見えすいた嘘、見せかけ、演技、といった意味です。

海外にいることがバレないように、天候の話題をその場凌ぎに合わせるというのは、身につまされるような気分かも知れません。

ところで、ここで使われている"charade"の意味は最初からあったものではなく、"charade"という「なぞなぞ」ゲームの一種に因むものです。

"charade"とは、いわゆる判じ物の類いのゲームで、ある人の身振り、ジェスチャーから、それが何を指しているかを当てる遊びです。(宴会の余興でお馴染み!?)

このなぞなぞはフランスが起源だそうで、同じスペルの単語がフランス語にありますが、語源はおしゃべり(chat)を意味する言葉から来ているそうです。また、スペイン語ではcharradoは「道化の言動」という意味があるとか。

上に、"charade"はジェスチャーを見てそれが現しているものを当てるゲームと書きましたが、元々は言葉だけでそれを推測させるものでした。具体的には、出題者は言葉でいくつかヒントを出すのですが、推測する側はそれらを手掛かりにして答えを探るというものです。

例えば以下のような具合です。


My first places men in it.
My second, men places it in the lap.
My whole places men on it.
(速川和男「英語パズル」(講談社現代新書)から引用)


My first〜が、"car"、My second〜は、"pet"、従って、My wholeは"carpet"(答え)、ということです。

このゲームは英語だとなかなか難易度が高く、良い頭の体操になります。

2022年10月14日金曜日

red phone

"red phone"、または、"president’s red phone"という表現をご存知でしょうか?

直訳すると、赤い電話(赤電話)で、公衆電話という概念すら無くなろうとしている現代では、昭和世代の店舗に設置されていた赤い電話やピンク色の電話を思い浮かべるのは困難かもしれません。

"president’s red phone"とも言われるこの電話は、公衆電話ではなく、特別なものです。


It's not red, or even a telephone, but the secure Washington-Moscow communications line known in Cold War legend as the red phone is primed to ring again as the two powers jostle over the Kremlin's nuclear threats.

With President Vladimir Putin openly brandishing the possibility of using nuclear weapons against Ukraine, where his conventional army is struggling to consolidate a seven-month-old invasion, US officials say secret channels are a key tool in pushing back.

"The answer to your question is yes," National Security Advisor Jake Sullivan told NBC on Sunday when asked if the hotline was busy.
(Sebastian Smith. Moscow Calling? Red Phone Line Remains Crucial In US-Russia Standoff. Barron’s. September 29, 2022.)


言うなれば、「ホットライン」、つまり緊急時の連絡手段、ということです。

下記はGoogleが開発に力を入れているStarlineと呼ばれる新しい遠隔コミュニケーション技術に関する記事からの引用です。


Starline only works with one person for one-to-one chats, and you can only talk to other Starline booths. Is there a market for VIP-to-VIP communication booths, like a modern version of the president's red phone?
(Ron Amadeo. Google is serious about its giant video chat booths, starts real-world testing. Ars Technica. October 13, 2022.)


ところで、"president’s red phone"の由来は冷戦時代、米露首脳が互いの意思疎通を図るために特別に設置したコミュニケーションラインにあるそうですが、実際は赤い電話ではなく、また電話ですらなかったらそうです。(当時はテキストメッセージを送受信するテレタイプ(電信)端末で、現在は電子メールだそうです。)


But, in actuality, it wasn’t a phone at all. Known as the Moscow-Washington Hotline, it was a direct line of communication between the White House and the Kremlin (where the Soviet Communist Headquarters resided). The line was established in 1963 after the Cuban Missile Crisis so that President John F. Kennedy, Russian leader Nikita Khrushchev and their advisors could connect directly and quickly. 
(Bethaney Phillips. The origin of the famous ‘red phone’ in the Oval Office. We Are the Mighty. June 26, 2022.)


2022年10月13日木曜日

mendacity

約10年前ですが、米・コネティカット州の小学校で銃乱射が発生し、生徒と職員を含む28人が死亡するという痛ましい事件がありました。

その事件を、でっち上げだなどと主張して、被害者と遺族を冒瀆するような情報発信をし続けてきたウェブサイトの主宰者に損害賠償が言い渡されたとトップで報じられています。

その額、何と10億米ドル。

巨額の賠償額が法廷で読み上げられるとどよめきが起こったそうですが、いわゆる陰謀論(conspiracy theory)が渦巻く米国にあって、今回の判決は大きな意義を持つものと評する記事も見かけました。

当の被告も、銃乱射事件の背景には銃規制を推進する側の思惑が背景にある、といった主張を展開していたようです。こうした主張がどれほど遺族の心を踏みにじるものであったかは想像を絶するものがあります。


Right-wing conspiracy theorist Alex Jones must pay at least $965 million in damages to numerous families of victims of the 2012 Sandy Hook mass shooting for falsely claiming they were actors who faked the tragedy, a Connecticut jury said on Wednesday.

(中略)

Douglas E. Mirell, a lawyer and defamation expert who was not involved in the case, said the sizable verdict sent a clear message of "revulsion" from the jury.

"His refusal to own up to the mendacity and lies that he promulgated time and time again over many years has now caught up with him," Mirell said of Jones.
(Alex Jones must pay Sandy Hook families nearly $1 billion for hoax claims, jury says. Reuters. October 12, 2022.)


主に陰謀論に基づいて被告の発信してきた情報、主張が虚偽であり、名誉を毀損するものである、と明確に認められたということです。


the mendacity and lies that he promulgated time and time again over many years


とあります。

"mendacity"も"lie"もほぼ同義、嘘、虚偽という意味です。"lie"がたわいも無い嘘も含む一般的な概念の単語とすれば、"mendacity"はやや重たい響きがある表現で、嘘に常習性、悪質性があるという含意があります。

"mendacity"という単語はあまり馴染みが無いのではないかと思います。"mendacious"という形容詞の方が、どちらかと言えば、使われることが多いかもしれません。

どちらも、ラテン語mendax(嘘つきの、という形容詞)から来ています。

ところで、"mendacity"とスペルが似ている、"mend"や"amend"、また"emend"は、修繕する、とか修正、訂正する、といった意味ですが、これらは、誤り、誤謬を意味するラテン語mendumから来ており、語源的には同じです。

"mend"は"amend"の頭音消失であり、"amend"、"emend"は誤り("mendum")を取り去る(分離の接頭辞a-、もしくはe-, ex-)というところから来ています。



2022年10月12日水曜日

cabal

米・民主党のハワイ州選出の議員が党を批判して離党を表明したそうです。

同様に3年前に民主党を離党し共和党に移籍した議員が賛同の意を示しています。


The congressman who left the Democratic Party three years ago to join the GOP commended former Hawaii Rep. Tulsi Gabbard for leaving the party as well, saying that moderate Democrats "don’t exist anymore."

Rep. Jeff Van Drew, R-N.J., commended Gabbard for her departure, saying in a statement to Fox News Digital that Democrats who love America have no other choice than to leave the party.

(中略)

In her video announcement, Gabbard blasted the Democratic Party as being controlled by "an elitist cabal of warmongers driven by cowardly wokeness" who are dividing Americans "by racializing every issue" and stoking "anti-white racism."

Gabbard also called on other moderate Democrats to leave the party in the video.
(Houston Keene. Democrat-turned-GOP congressman commends Gabbard for leaving party: moderate Dems 'don't exist anymore’. Fox News. October 11, 2022.)


離党を表明した議員のコメントでは、米・民主党は、


"an elitist cabal of warmongers driven by cowardly wokeness"


と批判しています。

"cabal"という単語は見慣れないものだったのですが、グループ、団体、というような意味であろうと文脈から判断出来ますし、実際のところほとんど同義です。

辞書を引いてみると、


(小人数の)陰謀団、秘密結社;徒党


などの日本語が見え、どうやらネガティヴな意味合いがあるようです。

動詞の"cabal"は、徒党を組む、陰謀を企てる、策動する、という意味で、これらは明らかにネガティブなものです。

ところで、辞書を眺めていますと、興味深いことに、かつて17世紀後半の英国を治めたチャールズ2世王が政治顧問団として任命した5名の頭文字*を取るとCABALになったという解説があります。(語源という訳ではありません。"cabal"という単語の由来は、ヘブライ語からラテン語を経て英語に入ったものです。)

"Cabal cabinet"(カバル内閣)とも呼ばれたこの5人による政治が陰謀めいたものだったのかは、世界史教科書を改めて読んだのですが分かりませんでした。


*Clifford、Arlington、Buckingham、Anthony、Lauderdaleの5名



2022年10月11日火曜日

one-trick pony

クリミア半島の鉄橋破壊を受けて、ロシア側はウクライナ首都への攻撃を激化、ロシアとウクライナ間の緊張が一層高まっています。そんな中、ロシア(のプーチン大統領)を"one-trick pony"と評するコメントを見かけました。


Retired Army Lt. Col. Alexander Vindman on Monday called Russia a “one-trick pony” and knocked Moscow’s recent strikes against civilian targets in Ukraine.  

“Russia really is a one-trick pony. It cannot do anything on the battlefield. It’s getting defeated at every turn,” Vindman said in an interview on CNN’s “New Day.” 
(Julia Mueller. Vindman on wave of attacks in Ukraine: Russia is a ‘one-trick pony’. The Hill. October 10, 2022.)


"one-trick pony"を手元の英和辞書では見つけられなかったのですが、Merriam-Websterでは、


one that is skilled in only one area
also : one that has success only once


とありました。また、American Heritage Dictionaryでも、


One noted for or limited to a single ability or skill.


とあり、大体、同じような定義です。

ひとつのことに長けているものの、それしか出来ない人、を指すと解釈できます。一芸に秀でることは賞賛の対象ですが、一芸しか出来ない、という言い方は蔑みが含まれています。

ポニーと言えば、サーカスに出てくる子馬のことで、どのステージでも同じ芸をする子馬を、いつも同じ事しか出来ない、という事の例えに用いたものです。

日本語で、馬鹿の一つ覚え、という表現がすぐに思い浮かびましたが、少しニュアンスが違うかもしれません。

「一発屋」という皮肉もあります。こちらは芸人などが一時的に売れても長続きしないことを皮肉ったもので、またちょっと違うかと。

(プーチン氏の)何が"one-trick pony"なのかについては後段に出てくる以下のコメントが相当すると思われます。


“The only thing [Putin] could do in response is not on the military battlefield — he could terrorize the population. He could make it a miserable winter for the population,” Vindman said.
(ibid.)


前線ではウクライナ軍の反撃に押され気味のロシアは、ウクライナの民間人を恐怖に陥れることしかできないのだという見方です。

核兵器使用をちらつかせるのも然り。

個人的に思うのは、先日来ミサイル発射に余念が無い彼の国も"one-trick pony"の称号に相応しいかと。

2022年10月10日月曜日

in the nick of time

日本では台風被害が多くなる秋口ですが、アメリカではハリケーンが猛威を振るう季節です。

(先週ですが)ハリケーン・イアンに関するニュースから引用です。


A former cop rescued his disabled mother from her Florida home right in the nick of time after she decided not to evacuate ahead of Hurricane Ian.
(Elizabeth Pritchett. Former Chicago cop Johnny Lauder saves disabled mom from Hurricane Ian. Fox News. October 5, 2022.)


"in the nick of time"というのは、際どいタイミングで、とか、土壇場で、という意味の慣用句です。

"nick"は刻み目のことを指し、「タイミング」の意味合いは昔、時間の経過を木に刻んで記録していたことに因むそうです。

もうひとつ用例を。


A Chicago woman was rescued Sunday morning just in the nick of time when a stranger allegedly approached as she embarked on a routine stroll and tried to drag her inside a van.
(Billy Hallowell. ‘Her Screams Were Deafening’: Good Samaritans Help Save Frantic Woman From Kidnapping Just in the Nick of Time. CBN News. September 28, 2022.)



2022年10月7日金曜日

cosmonaut

Space X社のロケットが10月5日正午(米国時間)、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられました。日本の若田光一さんら4名を乗せたクルードラゴンカプセルが無事、ISS(国際宇宙ステーション)とのドッキングに成功したと最新ニュースで伝えられています。


Four astronauts rocketed toward the International Space Station from a SpaceX ship Wednesday, including the first Russian to launch from the U.S. in 20 years, alongside NASA and Japanese astronauts despite tensions over the war in Ukraine.

The 230-foot Falcon 9 rocket blasted off at noon, taking NASA's Josh Cassada and Nicole Mann, Japan's Koichi Wakata, and Russia's Anna Kikina to orbit in a Crew Dragon capsule. The mission known as Crew-5 is SpaceX's sixth crewed flight under contract from NASA and eighth overall when including private spaceflights.

“We’re so glad to do it together," said Kikina, Russia’s lone female cosmonaut and the fifth Russian woman to rocket off the planet, offering thanks in both English and Russian. “Spasibo!”
(Emre Kelly. 'Instantly unites us': Russian launches to space from US, 1st time in 20 years, amid tensions over Ukraine. USA Today. October 6, 2022.)


乗員はNASAから2名の宇宙飛行士とJAXAの若田光一さん、そしてロシアの宇宙飛行士1名の計4名です。

ロシアとウクライナの戦争で緊張が高まっている中、日露米の宇宙飛行士共同のミッションがスタートしたとハイライトされています。

ところで、この件に関するCNNの記事では以下のようなくだりがあり、おや、と思わされました。


The crew members include astronauts Nicole Mann and Josh Cassada of NASA; astronaut Koichi Wakata of JAXA, or Japan Aerospace Exploration Agency; and cosmonaut Anna Kikina of Russia's Roscosmos space agency.
(Jackie Wattles. SpaceX capsule docks with space station carrying international astronauts — and 1 cosmonaut. CNN. October 6, 2022.)


NASAの2名と若田さんは"astronaut"で、もうひとりのロシア人宇宙飛行士は"cosmonaut"となっています。また、記事タイトルでも、


carrying international astronauts — and 1 cosmonaut


とあります。

はてな?"astronaut"と"cosmonaut"は意味が違う?

慌てて辞書を引いたものです。

どちらも宇宙飛行士の意味ではあるのですが、"cosmonaut"は「ロシア人の宇宙飛行士」を指すということでした。

これは知りませんでした。こんな記事に接することがなければ、"astronaut"、"cosmonaut"の別を特に気にすることもなく、読み飛ばしていただろうと思います。

ところで、"cosmonaut"は、宇宙、世界を意味するギリシャ語kosmosを語源とするロシア語kosmonavtがあって、それを英語に輸入したものだそうです。

一方、"astronaut"の方はというと、やはりギリシャ語astron(天体、星の意)が語源となっているのですが、こちらは"aeronaut"(飛行士)という単語になぞらえて生まれた造語らしく、1880年のフィクションで使われたのが最初だということです。(Online Etymology Dictionaryによる。)

ちなみに、これらの単語に共通する-nautという接尾辞は、船乗りを意味するギリシャ語nautesから来ています。


2022年10月6日木曜日

dictate

食事をする時間帯はやっぱり大事らしい、ということが最新の研究で示されたようです。

かいつまんで言うと、朝食を抜いたり、夜遅くに食事すると空腹感が増すことになり、ひいては肥満につながる可能性が高い、ということです。これに対し、決まった時間に食事をする人は空腹感が抑えられるので、カロリーオーバーにはなりにくい、ということなのです。


We all know that eating later in the day isn't good for our waistlines, but why? A new study weighed in on that question by comparing people who ate the same foods -- but at different times in the day.

"Does the time that we eat matter when everything else is kept consistent?" said first author Nina Vujović, a researcher in the division of sleep and circadian disorders at Boston's Brigham and Women's Hospital.

The answer was yes -- eating later in the day will double your odds of being hungrier, according to the study published Tuesday in the journal Cell Metabolism.
(Sandee LaMotte. When you eat may dictate how hungry you are, study says. CNN. October 5, 2022.)


研究では、全く同じ食事(3食)であるにも関わらず、3食の各タイミングが4時間ずつ遅く設定されたグループでは、空腹感が増すという結果が得られました。空腹感の指標となるホルモンであるグレリンの血中濃度の上昇が認められた他、脂肪の燃焼の度合いにも違いが認められたということです。

さて、記事の内容をおおまかに押さえた上で、タイトルに注目していただきたいのですが、


When you eat may dictate how hungry you are, study says


とあるところ、"dictate"という動詞の使い方を考察してみたいと思います。

"dictate"という動詞の意味を改めておさらいすることもないかと思いますが、命令する、指図する、といった意味をまず思い浮かべるかと思います。口述筆記させる(読み上げた内容を書き取らせる)という意味もありますね。

ここでは、AがBを"dictate"する、という構文になっています。命令する、指図する、でも理解できないことはありませんが、日本語にするにあたってはもう少し適した訳語をあてたいところです。

A、B、について考えてみると、Aは「いつ食事するか」であり、Bは「どれくらい空腹感があるか」、ということになります。

つまり、「いつ食事するか」によって、「どれくらい空腹感があるか」が決まる、と解釈できます。

"dictate"という動詞のこのような用法について、不思議と手元にある英和辞書には説明を見つけることができませんでした。

Merriam-Webster Dictionaryでは、命令(order)の意味合いの他、以下のような定義を挙げており、これが該当すると思われます。


to require or determine necessarily


以下のような例文が添えられており、


injuries dictated the choice of players
The weather will dictate how long we stay.


先程のAがBを"dictate"する、という構文として考えると、日本語としては、


AによってBが決まる、
BはA次第


といった訳出が自然です。


2022年10月5日水曜日

count the house

米国では名門と言われるニューヨーク大学(NYU)で、講義内容が難し過ぎるという理由で教授が解雇されるという珍事が起きました。


An NYU chemistry professor says he was fired after students complained his class was too hard.

(中略)

“They weren’t coming to class, that’s for sure, because I can count the house,” Jones added, defending himself and saying the kids simply were not studying hard enough. “They weren’t watching the videos, and they weren’t able to answer the questions.”
(Ben Kesslen. NYU chem professor says he was fired after students complained class was too hard. New York Post. October 4, 2022.)


学生の嘆願がきっかけとなったようですが、教える側と教えられる側との乖離は、講義内容やそのレベルに限らず、コロナ禍で対面コミュニケーションが減ったということもあったのかも知れません。

当の教授によるコメントがそれを物語っています。


“They weren’t coming to class, that’s for sure, because I can count the house,”


ここでの"count the house"という表現に着目したいと思います。

文脈からして、これは講義の出席者の数を数えられる(すぐに分かる)くらいに少ない、ということを言っていると分かります。

"house"を改めて辞書で引いてみると、家、議事堂という意味の他、興行が行われる劇場、音楽ホールの意味があり、そのコンテクストで、


聴衆、観衆、見物人


の意味で用いられるとあります。

つまり、興行の場所を意味する"house"が、その場所に集う人を指すようになったもので、メトニミー(換喩)の一種であると言えるかと思います。

辞書を眺めていますと、"full house"が大入り、"poor house"が不入り、をそれぞれ意味するとあり、"house"は場所であり、そこに集う人のことでもあり、またその全体を捉えたものでもあるようです。

余談ですが、小生が好きなJ. D. Salingerの短編集「ナインストーリーズ」に、"For Esmé - With Love and Squalor"という作品がありますが、その中で以下のようなくだりがあります。


She was about thirteen, with straight ash-blond hair of ear-lobe length, an exquisite forehead, and blasé eyes that, I thought, might very possibly have counted the house.


主人公が偶然立ち寄った教会でコーラスの練習風景を見学し、その中の少女のひとりに気を引かれるというところです。

また、その後の部分にも、"with those house-counting eyes of hers"というくだりがあります。このような表現はサリンジャーならではの言い回しといいましょうか。




2022年10月4日火曜日

finna

記事の引用からどうぞ。


BURNET, Texas (KXAN) — A student was arrested over the weekend after making a threat against Burnet High School, according to the Burnet Consolidated ISD.

The district was made aware on Saturday night of a photo posted to Snapchat of what appeared to be an assault rifle with the caption, “School finna be crazy Monday.”
(Abigail Jones. Burnet High School student arrested after threat made on Snapchat. KXAN Austin. October 7, 2022.)


高校で銃乱射事件を起こすかのような投稿をSNSで行った疑いで、米・テキサス州の生徒が逮捕されたという記事です。

銃乱射の悲劇が絶えない米国でなくとも、このような犯行予告には当局も敏感に反応するものです。

ライフル銃(偽物だったようですが)を構えた写真に添えられたキャプションは、


“School finna be crazy Monday.”


というものだったとあります。まさに脅迫ですが、"finna"という部分に着目しましょう。

知らなかったのですが、"finna"は、


(be) going to〜


と同じような意味だそうです。

"finna"は馴染みが無くても、"gonna"は米"going to"の短縮形として馴染みがあるのではないでしょうか。

"finna"は、


(be) fixing to〜


を短縮したものだそうですが、動詞の"fix"には、to不定詞で、〜するつもりである、また、〜するだろう、といった近い将来のことを表す意味で使われ、これは米南部の方言だそうです。


Chiefly Southern US 
To be on the verge of; to be making preparations for. Used in progressive tenses with the infinitive: We were fixing to leave without you.
(American Heritage Dictionary)


なお、Merriam-Websterによれば、初出は1985年で、同辞書は"finna"を2020年に新語として追加したそうですから、"fixing to"という表現としては方言とは言え、"finna"はごく最近の言葉のようです。



2022年10月3日月曜日

PDA

インスタグラムで公表されたイギリス王室の写真が話題です。

チャールズ新国王とカミラ王妃、ウィリアム王子夫妻を撮影したものなのですが、


rare royal PDA


を写していると記事のタイトルにあります。

PDAという略語が何を意味するのか知りませんでした。

知っていたのは、携帯端末を意味するPDA(Personal Data Appliance)でしたので、戸惑ったという訳です。

本文中にPDAの説明は出てきます。


A newly released royal portrait of King Charles with Camilla, the Queen Consort, alongside Prince William and Kate Middleton shows both couples engaged in subtle public displays of affection (PDA).

The photograph, taken by long-time royal photographer Chris Jackson, depicts Charles along with his eldest son and their wives, and was shared by the official royal family Instagram account on Saturday.

(中略)

PDAs by royals are not officially restricted, but it is rare to see them engaging in tactile moments with significant others. Instead, most keep to an unwritten rule, preferring to maintain a healthy distance on official business.
(Maria Noyen. A new portrait of King Charles, Camilla, William, and Kate Middleton contains rare royal PDA. Insider. Oct 2, 2022.)


ここでのPDAは、


public displays of affection


の略で、日本語にすると、親愛の情を表に出すこと、くらいの意味合いになるでしょうか。

"public"とありますから、近親者に対する親愛の情を他人にも見えるように(隠すことなく)表す、ということですが、PDAという表現にはどちらかというと、人前でいちゃつく、というような、多少の非難のニュアンスを含んでいることが多いようです。(ランダムハウス英和では、「いちゃつく」という日本語が見えます。)

記事の写真を改めて見てみましたが、故エリザベス女王の国葬を前に喪服姿で撮影されたもので、夫婦同士が軽く手を相手の後ろに回している、といった程度のもので、当然といいますか、いちゃつく、というのとは隔たりがあります。


尤も、王室の権威というのもあって、身内といえども親愛の情をあからさまに表に出すというのは通常は控えるもののようです。


Queen Elizabeth II and Prince Philip, who were married for 73 years, famously followed the no-PDA rule and were rarely ever seen holding hands.

But on closer inspection of the new portrait, there are signs that both couples are actually engaging in a PDA. Charles' right arm is looped under Camilla's left arm, and appears to be resting on her back. 

Similarly, Kate's right arm seems to be gently placed behind William's back, while he clasps his hands together.
(ibid.)


"public displays of affection"という表現をわざわざPDAという略語にしているのは英語(米語!?)ならではかもしれません。携帯情報端末のPDAと並んで、一般に使われており、手元にある辞書にもちゃんと載っています。

先日、日本の皇室も英国に倣ってSNSでの情報発信を進めるとかいう話を聞きましたが、同じような観点から批評されるのだろうと思ったりします。