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2025年3月31日月曜日

stall

英単語の動詞"stall"には、立往生させる、動けなくする、という意味があります。

クルマを運転する方は、「エンジンストール」と言えば、エンジンが不具合を起こして停止し、クルマが動けなくなることであると理解していると思いますが、この「ストール」がそうです。止める、止まる、という意味です。

"stall"という単語についてそういう程度の理解だったのですが、以下に引用する記事を読み、多少の違和感を覚えました。皆さんはいかがでしょうか?


President Trump said he is “very angry” and “pissed off” at remarks Russian President Vladimir Putin made Friday about Ukraine President Volodymyr Zelensky, suggesting he is not a legitimate leader.

The president threatened to slap a new tariff on Russia if it is at fault for stalling an end “to bloodshed.”

(中略)

The Russian president said Friday that his Ukrainian counterpart does not have the legitimacy required for a peace deal signature and suggested an interim government is needed, The Associated Press reported. Ukraine’s 2024 presidential elections were postponed due to martial law amid the war with Russia.
(Tara Suter. Trump ‘very angry’ at Putin’s remarks on Zelensky. The Hill. March 30, 2025.)


違和感を覚えたのは、中段に出てくる、


if it is at fault for stalling an end “to bloodshed.”


という部分です。

ここで"it"が指すのはロシアです。ウクライナとロシアの停戦を仲介するトランプ大統領が、停戦にあたって何かと難癖をつけて合意しようとしないロシアに対し怒り心頭、という話ですが、停戦(an end “to bloodshed.”)を"stall"という文に引っかかったのです。「停戦」も"stall"も、どちらも「止める」ということで頭がバグってしまったのかも(!?)

ここで記事の言わんとするところは、停戦「交渉」を停止させるような、あるいは立往生("stall")させるようなロシア側の態度、その愚(過ち)、ということだと思われます。

"stall"とは馬や家畜を一頭ずつ入れる囲いの一区画を指すのが原義のようです。動かないように留め置くということから、止める、止まる、また立往生する(させる)という意味合いになったのだろうと思われます。去勢していない種馬のことを"stallion"と言いますが、この"stall"と関連があります。

エンジンのストールや航空機の失速という"stall"の意味の拡張は当然エンジンや航空機が発明された以降のことですが、どういう背景なのか、説明は見当たりません。


2025年3月28日金曜日

shooting from the hip

トランプ政権でリストラを断行し政府のスリム化を図ると謳う政府効率化省(DOGE)。

同省を実質的に率いると目される実業家のイーロン・マスク氏と関係者らがFox Newsの直接のインタビューに応じ、その取り組みについて説明したそうです。


Department of Government Efficiency (DOGE) head Elon Musk and seven members of the team shed light on the department's cost-cutting mission in an exclusive sit-down interview with "Special Report" Thursday.

"We want to reduce spending by eliminating waste and fraud and reduce the spending by 15%, which seems really quite achievable," Musk told "Special Report" executive editor Bret Baier.
(Madeline Coggins. Elon Musk, DOGE team offer unprecedented peek behind the curtain of Trump's cost-cutting department. Fox News. March 27, 2025.)


これまでもDOGEに関する記事を取り上げましたが、マスク氏によれば連邦政府にはムダが山積しており、15パーセントの歳出削減が可能であると試算されているそうです。

DOGEによる歳出削減の取り組みはセンセーショナルに報道されることが多く、同省とマスク氏に多くの批判が寄せられていることはご存知の通りです。

記事に以下のようなくだりがあります。


Musk and DOGE have been a lightning rod for criticism due to the department's commitment to slashing waste, fraud and abuse in the federal government. Critics contend the organization has too much access to federal systems and should not be permitted to cancel federal contracts or make cuts to various agencies.

"They may characterize it as shooting from the hip, but it is anything but that," Musk said, noting the agency's approach to cuts is to "measure twice, if not thrice and cut once."
(ibid.)


批判に対するマスク氏の主張が引用されているものですが、


shooting from the hip


という表現に着目しましょう。

"hip"(腰)から撃つ(shoot)ということですが、どういう意味なのでしょうか?

"shooting from the hip"は衝動的な言動を取ることを意味する慣用表現です。

何故そのような意味になるのか?

銃器は通常腰に巻いたベルトにセットしておくもので、使う時にはベルトから外し、対象に向けて構え、照準を合わせて発射するものですが、そうしたステップを踏まないで、ほとんどベルトに付けたまま発砲するという行為(すなわち、shooting from the hip)になぞらえたものです。

銃器を目にしたり、触れたりすることのない我々日本人にはすんなり入って来ない表現ですが、日常に拳銃やライフルが溶け込んでいる米国人ならではの表現とも思われます。

この部分、"They may characterize it as shooting from the hip, but…"の主語である"they"はDOGEに対して批判的な人達(critics)を指します。

DOGEを批判する人達は同省が"shooting from the hip"と考えている、すなわち手当たり次第、思い付きや衝動でコストカットに動いている、と考えているようだけれども、実はそうではない、というのがマスク氏の主張です。

つまり、政府の支出やらをちゃんと分析した上で、ムダ削減に取り組んでいるのだ、と言いたいようです。


2025年3月27日木曜日

in the buff

まずはニュース記事の引用からお読みください。


A distressed woman stripped down to her birthday suit and allegedly assaulted airport workers in a viral freak-out caught on camera.

Samantha Palma allegedly stabbed two people with a pencil and bit a restaurant manager while parading around in the buff during a “manic episode” at the Dallas Forth Worth International Airport on March 14, TMZ reported.
(Shane Galvin. Manic woman strips naked and goes on wild stabbing, biting spree at Texas airport, video shows. New York Post. March 26, 2025.)


米テキサス州のダラス・フォートワース空港で、女性が突如として素っ裸になり、職員などに襲いかかるという乱痴気騒ぎがあったということです。

素っ裸(naked)になる、という表現ですが、"birthday suit"は以前取り上げました。記事ではもうひとつ、


in the buff


という表現が使われています。

この"buff"という単語は、〜通、〜マニアという意味があるということで以前取り上げたのですが、ここでは"naked"の意味、つまり裸という意味です。

"buff"はそもそもバッファロー(buffalo)を約めたもので、牛のなめし革のことですが、淡黄色の革の色というのは素肌の色にも似通っていることから、"in the buff"は裸を意味するようになったそうです。


2025年3月26日水曜日

Beltway

トランプ政権の国家安全保障担当がイエメンにおける軍事作戦に関する機密を漏洩した問題で、クビが飛ぶかという騒動に発展しています。

問題はバンス副大統領など、政権の主要閣僚が含まれるオンラインチャットに誤って部外者を招待してしまい、本来政権幹部の間に限定される会話内容が漏洩されたというものです。誤って招待された部外者というのがトランプ大統領に対し批判的なメディアのジャーナリストであったということで、チャットの内容は暴露され、一気に政権を揺るがす事態となった模様です。

舞台となったのはSignalというアプリだそうですが、この件で初めて知りました。


The leak has sparked fears about the potential mishandling of classified national security information.  

And now, a whole lot more of us know about Signal, a commercial messaging app that is celebrated for its security. If you already use Signal, you may be a Beltway insider, a journalist, a union organizer, or a rank-and-file American who is serious about privacy. 
(Daniel de Visé. How safe is 'Signal'? Pros and cons of the privacy app in the Hegseth leak. USA Today. March 25, 2025.)


このアプリでのチャットは暗号化されるそうで、セキュリティ的にはしっかりしたアプリとして定評のあるもののようです。しかし、部外者をチャットに招待してしまったのではセキュリティも何もありません。

Signalは実際多くの需要があるようですが、こうした秘匿性の高いアプリを重用するのはやはり限られた関係者のようです。

記事では、


Beltway insider


と出てきます。

"beltway"というのは、belt highwayとも言い、都市近郊の環状道路のことです。

ここでは大文字で始まる"Beltway"となっていますので、特定の"beltway"を指しますが、ワシントンD.C.のbeltwayのことを言っているものです。

American Heritage Dictionaryでは、


The political establishment of Washington, DC, including federal officeholders, lobbyists, consultants, and media commentators.


という定義がされています。

つまり、"Beltway insider"とは首都ワシントンD.C.で政治情勢などに通じた関係者ということになります。

日本だと霞が関界隈とか永田町界隈とかいうと、そういう場所に出入りする、政界に通じてた関係者のことを指しますが、それと類似した表現です。

いわゆるメトニミーに類する表現と言えます。


2025年3月25日火曜日

circumvent

ウクライナとロシアの停戦を仲立ちしている米国ですが、かねて報道されているようにトランプ政権のロシア寄りの姿勢が目立っています。

以下引用する記事ではロシアに対する経済制裁などの監視に米国があまり積極的に関わっていないと報じられています。


European officials have said that the Donald Trump administration has reduced its involvement in efforts to close loopholes for circumventing sanctions on Russia.

Details: The officials, who asked not to be named, said the United States was practically absent from several working groups set up by allies to combat attempts to circumvent sanctions imposed on the Kremlin.
(Bloomberg: US reduces its participation in countering Russian ways to circumvent sanctions. Yahoo! News. March 21, 2025>)


経済制裁とは言っても様々な抜け穴(loophole)が存在するようです。

法や規制の「抜け穴」を見つけることを表現する動詞に、


circumvent


があります。

"circumvent"という単語は、周囲を意味する接頭辞circum-と、ラテン語venire(英単語のcome、goに相当)からなる単語です。

元々は、周囲を取り巻くという意味で、ラテン語の動詞circumvenioは敵を包囲するという意味です。

その後、対象を回避する(get around)、また回避することで問題を切り抜けるという意味で使われるようになりました。

今日では法や規制の抜け穴を見つけて義務を回避するという意味合いで使われる方が多くなっています。

日本語で「潜脱」という言葉があることを知りました。法律などを自己に都合の良いように解釈し、法の網を「潜る」という意味です。


2025年3月24日月曜日

every name under the sun

昔の勤め先で、しょっちゅう海外出張に行っていた先輩社員から、スチュワーデスは肉体労働者だ、と聞いたのを今も覚えています。

今はフライトアテンダント、キャビンクルーなどと呼ばれるのが普通ですが、「スチュワーデス」という呼称がまだ健在だった頃の話です。華やかな女性の憧れの職業というイメージと裏腹に、その職務は過酷を極めるという先輩のお話に、そういう見方もあるかと思った次第です。

ウン十年前のそんな昔の話を思い出しました。


There’s a dark side to working 30,000 feet in the air.

Medical emergencies, sleep deprivation and 20-minute lunch breaks are all in a day’s work for Australia’s battler cabin crew.
(Duncan Evans. The dark side of being a flight attendant: Medical emergencies, sleep deprivation, entitled passengers and more. New York Post. March 23, 2025.)


わたしも回数は決して多くありませんが、飛行機に乗るとアテンダントの方々の仕事というのは大変だなぁと思います。

引用した記事は乗務員の過酷な勤務スケジュール、機内急病人へのケア、言うことを聞かない客への対処、さらには酔客の扱い方等々、様々な逸話と現場の声が取り上げられているものです。

ある事例。


“Being called every name under the sun because we can’t get them a toasted sandwich or a wrap.”
(ibid.)


機内食やドリンクで、客の要望に添えないことがありますが、欲しいものが無いと言われてブチ切れる客の話です。

面白い表現ですが、


Being called every name under the sun


とは、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられる、というような意味合いの慣用表現です。

英単語の"name"には、悪口の意味があります。以前も取り上げたように、name callingといった表現もあります。

また、ここで"under the sun"とはお日様の下、ということですが、"on the earth"や"in the world"といった表現に同じく、この世における、という意味合いがあります。

この世の中で使われてきたであろうありとあらゆる罵詈雑言、というのが"every name under the sun"の意味するところです。



2025年3月21日金曜日

kerflooey

今日取り上げる1語、"kerflooey"という単語を見たことがあるという方はいらっしゃいますでしょうか?

私は初めて見ました。

記事の引用をどうぞ。


The Metropolitan Transportation Authority on Wednesday threatened another “Summer of Hell” if the Big Apple doesn’t continue ponying up big bucks — even as a recent watchdog study warned the city’s payments keep snowballing. 

(中略)

The proposed plan to fix the deteriorating, aging subway system assumes New York City will cough up $4 billion, but that amount could increase as the state budget isn’t final and federal support is up in the air under new President Trump.

(中略)

The subways infamously went kerflooey during the summer of 2017, as a series of subway breakdowns regularly left straphangers stranded, delayed — or even trapped in hot train cars or hurt in derailments.
(MTA threatens another ‘Summer of Hell’ of subway disruptions if NYC doesn’t cough up billions — as transit agency touts its ‘great service’. New York Post. March 19, 2025.)


ニューヨーク市地下鉄に関する内容です。

老朽化が進むインフラ、設備等が問題になっているものですが、メンテナンスや修繕にかかる費用を誰が負担するのかという話です。運賃の値上げが計画されているようですが、それだけで賄えるはずもなく、地下鉄を運営するMTAはニューヨーク市の援助を求めている模様です。

引用した部分の最後の段落で、


The subways infamously went kerflooey 


と出てきます。

"kerflooey"という単語を載せている辞書はそう多くないようです。Merriam-Webster Dictionaryでは、"kerflooey"を載せています。

記事のコンテクストから意味合いは想像が付くというものです。老朽化した設備につきものは不具合や故障であり、列車は遅延したり、運休により大混雑を引き起こします。"kerflooey"がこうした望ましくない状況を指す意味合いだというのは想像がつきます。(この箇所、過去形になっていますが、2017年夏に起きた地下鉄の大混乱の記事を当ブログでも取り上げていました。)

"kerflooey"は形容詞で、上記の用例においても"go kerflooey"となっています。ランダムハウス英和辞書では、


(突然)止まる、調子が狂う


とあります。

"flooey"という俗語にそもそも機械の不具合、故障というような意味合いがあり、ker-というのは擬音語や擬態語に付けられる接頭辞で、効果や程度を強調するような働きをするものだそうです。

つまり、単に「壊れた」というのではなく、「ぶっ壊れた」という時の「ぶっ」に相当するというものです。

似たスペルの単語に、"kerfuffle"があります。元はcurfuffleというスペルのスコットランド方言でしたが、接頭辞ker-の影響を受けたとの説明がランダムハウス英和辞書にあります。

2025年3月20日木曜日

moolah

街を歩いていて宝くじやロトの売り場を見かけると、宝くじに当たったらなぁ〜、と思うことしばしばです。しかし、実際に買ったことはありません。(苦笑)

ウン億円に当選したら・・・、と夢想するだけで、実際には買わないのですから、見果てぬ夢です。

宝くじの高額当選者は不幸になる、という話を聞いたことがあります。当たらない人間の僻みという人もいますが、今日見かけた記事はそんな人の実話が取り上げられています。


Sure, the ching-ching and the bling-bling are nice — but if you’re hoping mountains of moolah will make you happy, you may want to think twice.

It’s cautionary advice from Alyssa Mosley, who exclusively tells The Post that hitting jackpot came with a side of unexpected surprises.
(Asia Grace. I won the lottery — here’s how I learned that money won’t make you happy. New York Post. March 19, 2025.)


一生を遊んで暮らせる程の大金を手にして何故ハッピーになれないのか、詳しくは記事をお読み頂ければと思います。

取り上げたいのは、


moolah


という単語です。

"moolah"とは金(money)を指す俗語だと辞書にあります。(moolaというスペルもあります。)

どの辞書を見ても語源不詳という説明なのですが、なんとなく後ろ暗い響きのある単語のようにも感じられます。

俗語というのも頷けるところです。お金があり過ぎるのもきっと良くないのだと・・・。(持たない者の僻みです。)


2025年3月19日水曜日

homebody

家の外にあまり出たがらない人、いわゆる出不精な性格の人のことを指すのに、


homebody


という単語があるそうです。知りませんでした。


In his February 2025 cover story for The Atlantic, journalist Derek Thompson dubbed our current era “the anti-social century.”

He isn’t wrong. According to our recent research, the U.S. is becoming a nation of homebodies.

Using data from the American Time Use Survey, we studied how people in the U.S. spent their time before, during and after the pandemic.
(America is becoming a nation of homebodies. The Conversation. March 10, 2025.)


パンデミックの影響もあって、家の中で事を済ますということを覚え、それが普通になったという傾向はあるにせよ、アメリカ人は基本的に家の中で過ごすことが好きなようであるという調査結果があるようです。

日本語の「引きこもり」には、深刻な対人関係の問題などを抱えている為に外出を拒否する精神状態を表す言葉であると共に、自身が外出に億劫であることを半ば自虐的に表現する言葉としても用いられていると思います。その意味では"homebody"には、後者の意味での引きこもりの意味合いも見て取れるかも知れません。

また、"recluse"という単語は、隠遁者、世捨て人と訳されますが、こちらは内向性の程度において"homebody"よりも甚だしいと言えるかと思います。

"homebody"という単語に特に変わった、目新しい発見は無いのですが、外に出かけるよりもウチが好き、という人を言うのにこんな表現があるとは知らなかったので今日の1語に取り上げました。


2025年3月18日火曜日

fish tale

海外で人気の日本食と言えば筆頭に上がるのは鮨でしょう。

しかし、アメリカ国内で供される鮨にはネタを偽ったものが増えているそうで、同種、あるいは全く異なる種の安価なネタを使って高く売り捌く傾向にあるといいます。マグロやサーモン、タイ、クルマエビといった人気の鮨ネタに多いそうです。


People are getting catfished — literally.

Experts warn that when it comes to sushi, what you sea is often not what you get — with the US clocking in as one of the world’s biggest fish forgers.

Studies have shown that cheaper fish alternatives are being mislabeled and masqueraded as salmon, tuna, snapper and other top-shelf raw seafood — with the cost-cutting counterfeits almost impossible to spot after the sushi’s been sliced and served.
(Ben Cost. ‘Fake’ sushi is taking over and can make you sick, experts say — here’s how to tell real from bogus. New York Post. March 17, 2025.)


個人的にはアメリカの日本食レストランで満足した経験はほとんどなく、料理人やスタッフが中国人だったりするのを見てきましたのて、然もありなんという気もします。

一方で、魚の味というものを見分けることができる人というのもどれほどいるかと考えると、仕方のないこととも思います。

ところで記事の締め括りに以下のようなくだりがあります。


How do you spot a so-called fish tale?

Dr. Cusa advised, “In general, fish products that are sold in supermarket chains and that have thorough labels indicating the species, catch location and catching gear, are also good choices.”

“On the other hand, processed products, canned products with little information if any are, almost by definition, mislabeled,” she added.
(ibid.)


ニセの鮨ネタをどうやって見抜くのか、という話です。

"fish tale"とは、魚の話し、ということですが、嘘、ほら話のことで、特に誇張や脚色された内容のものを言います。

釣り人が取り逃がした魚の大きさを大袈裟に話すというのは聞いたことがあるでしょう。内容が盛られていないか、誇張が含まれていないか、多少差し引いて捉える必要のある話を指して使う表現です。

"fish story"とも言います。

また、以前取り上げた"fishy"もご覧ください。



2025年3月17日月曜日

heat

先日、米ピッツバーグ大の女子学生が行方不明になっているというニュースを見かけました。旅行先のドミニカ共和国で行方不明になったようです。

今日見た記事によると、警察当局が事件の重要参考人としてアイオワ州の男を取り調べているということです。


Authorities in the Dominican Republic are turning up the heat on the Iowa man who was the last person to see University of Pittsburgh student Sudiksha Konanki before she went missing — grilling him into the early morning hours on Sunday.

Joshua Riibe, a senior at St. Cloud State University in Minnesota, was interrogated by Dominican Attorney General Yeni Berenice Reynoso and Navy Vice Admiral Agustin Morillo Rodriguez until nearly 3 a.m., the Spanish-language outlet Noticias SIN reported.
(Jorge Fitz-Gibbon. Authorities turn up the heat on ‘person of interest’ in Sudiksha Konanki case after revealing he’s ‘in custody’ in DR. New York Post. March 16, 2025.)


記事のタイトル、本文に、


turning up the heat


という表現が出てきます。

熱(heat)の度合いを上げる(turn up)というのが字句通りの訳です。この"turn up"という動詞句は以前も取り上げたことがありますが、目的語に"pressure"や"heat"などを取って、それを強める、つまり相手に対する圧力を増す、という意味で使われます。

今回引用した記事では行方不明の事情を知っていると思われる重要参考人に対する尋問、取り調べのことを言っている訳ですが、"heat"の俗語の意味には、


the intensification of law-enforcement activity or investigation
(Merriam-Webster Dictionary)


というものがあるそうです。

これは俗語として英和辞書にも載っており、警察による追及、取り調べの厳しさを増す、というような意味です。

昔、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演する「ヒート」(原題もHeat)という映画があったのを思い出しました。

劇場で観たのを覚えていますが、ストーリーの内容からもタイトルの"Heat"は今日取り上げた俗語の意味だったのだなと、30年を経て思う次第です。(映画「ヒート」は1995年の作品。)


2025年3月14日金曜日

fall through the cracks

米コネチカット州で、20年間にも渡り軟禁状態に置かれていた男性が解放されたというニュース記事を読みました。

男性は11歳の時から食べ物もろくに与えられず、風呂にも入れさせてもらえず、いわゆるネグレクトの状態で継母と実父により自宅に軟禁されていたそうです。

男性自らが自宅室内に火をつけ、長期間に渡る所業が明るみになったということらしいです。


New details have emerged in the shocking story of a 32-year-old Connecticut man allegedly held captive in a single room by his father and stepmother for 20 years.

(中略)

While authorities are investigating how the man fell through the cracks as a child, Spagnolo told the AP police only had two interactions with the family, both in 2005.

One call was a welfare check prompted by reports from classmates. Another was after the family filed a harassment complaint against school officials for reporting them to state child welfare officials, according to the report.
(Alexandra Koch. Man describes shocking living conditions he endured during 20-year home captivity: 'Unimaginable'. Fox News. March 13, 2025.)


継母は監禁などの容疑で逮捕されたとあります。

11歳の時から20年を経て現在32歳という男性は体重わずか30数キロということで、いかに虐待を受けていたか想像を絶するものがあります。

誰しもが、一体何故こんなことが罷り通っていたのか?と思うことでしょう。

引用した部分に、


authorities are investigating how the man fell through the cracks as a child


とあります。

"fall through the cracks"は慣用句表現で、気付かれることなく見過ごされる、というような意味合いです。

"crack"はヒビ、割れ目のことで、その隙間に落ちてしまって顧みられない、ということです。

このフレーズには、


fall between the cracks
slip through/between the cracks


というバリエーションもあります。

男性のケースの場合、実際にはネグレクトの可能性の報告が学校から上がったそうなのですが、調査不十分のまま、ウヤムヤになったようです。

日本においても児童虐待の疑いが相談所に報告されながら、十分な調査や措置が取られることなく、尊い命が失われる不幸が後を断ちません。

まさしく、"fall through the cracks"だという感じがします。


2025年3月13日木曜日

s’more

岩手県大船渡市の山火事は海岸沿いの山林を焼き尽くした末にようやく鎮火しました。

以下引用するニュースは米ニューヨーク州ロングアイランドでの山火事に関するものです。


A New York resident making s'mores in their backyard is suspected of accidentally igniting a series of wildfires over the weekend that swept through hundreds of acres of the Pine Barrens region of Long Island, authorities said Monday.

Suffolk County Police Commissioner Kevin Catalina said the "operating theory" is that a fire was started at about 9:30 a.m. ET Saturday when a resident used cardboard to start a fire to make s'mores, a confection that includes toasted marshmallows and chocolate sandwiched between graham crackers.
(Bill Hutchinson. Suspected cause of Long Island wildfires was a resident making s'mores: Police. ABC news. March 11, 2025.)


火事の原因は、住人が庭で"s'more"を作ろうと火おこししたところ飛び火した可能性があるとあります。

この"s'more"という単語を知りませんでした。変わったスペルの単語ですね。

辞書を引くと、"s'more"とはマシュマロを焦がしたものをクラッカーに挟んだお菓子だそうです。チョコレートも挟んだりするとか。

なぜ"s'more"というのかについては、このお菓子が美味しいのでもう少し欲しい(some more)と言いたくなるから、だそうです。


2025年3月12日水曜日

hypertrichosis

顔面を覆い尽くすかのように毛むくじゃらのインド人男性がギネス記録に認定されたというニュース記事を読みました。

記事の写真を見ると、毛の生えていないのはほとんど目と口の周りくらいしか残っていませんが、狼男症候群(werewolf syndrome)と呼ばれる疾患だそうです。


A teenager has landed a spot in Guinness World Records for having the world’s hairiest face.

Lalit Patidar, an 18-year-old from India, was found to have 201.72 hairs per square centimeter, covering 95% of his face, according to Guinness.

The excessive hair growth is the result of a rare medical condition called hypertrichosis, informally known as "werewolf syndrome."
(Melissa Rudy. Teen with ‘werewolf syndrome’ breaks world record for hairiest face
Rare medical condition causes abnormal hair growth. Fox News. March 11, 2025.)


狼男症候群(werewolf syndrome)とは俗称で、正式な医学用語としては、


hypertrichosis


という語がそえられています。多毛症と訳されます。

単語のスペルを見て、hyper-という接頭辞とtricho-という要素が結合したこの単語が毛の多いことを意味するというのは想像がつきました。ちなみに、tricho-はギリシャ語で毛髪を意味するthrixという語から来ています。

どこか見覚えがあるように感じたのは、昔、


trichotillomania


という単語に出会したのです。

これは抜毛症と訳されるのですが、毛髪(tricho-)を引き抜こう(tillo-は抜くという意味のギリシャ語tillesthaiから)とする強迫性の症状(mania)を指すものです。


2025年3月11日火曜日

third rail

実業家のイーロン・マスク氏がリストラの大ナタを振るっている政府効率化省(DOGE)の話題は先日も取り上げましたが、マスク氏の効率化目標は1兆ドルの歳出削減だそうです。

巨額の歳出削減の目論見がどのように達成され得ると試算しているのか、素人には分かりません。引用する記事によると、大量の政府職員を解雇した次に見据えているのは1.6兆ドル超ともされる社会保障費だそうです。


Musk is dangerously close to touching a political third rail.

Trump’s billionaire adviser called Social Security “the biggest Ponzi scheme of all time.” Department of Government Efficiency lieutenants have entered the Social Security Administration. The SSA is planning to slash staff.

The moves are stressing out some Republicans — and making Democrats optimistic — ahead of the 2026 midterms.

“If people think Medicaid is a hot-button issue, Social Security is 10 times that. He may think it’s a Ponzi scheme, but the people on it and the people about to be on it do not think that,” said CHRISTOPHER NICHOLAS, a longtime GOP consultant based in the battleground state of Pennsylvania.
(Musk grabs for the third rail. Politico. March 10, 2025.)


記事では想定されるマスク氏の取り組みは"third rail"だと言っていますが、この表現を初めて見ました。

"third rail"とは「3番目のレール」ということになりますが、鉄道の専門用語で第3軌条という訳語が英和辞書には見えます。これは電車が走る2本のレールに並行して敷設される3番目のレールのことで、電気を供給するためのものだそうです。

英和辞書の説明はここで終わってしまうのですが、"third rail"には政治のコンテクストで使われ、その意味合いは、


A subject that tends to be avoided because of its offensive or controversial nature
(American Heritage Dictionary)


というもので、議論を呼ぶ課題故に政治家が避けたがるテーマ、話題のことです。

電気を供給するための"third rail"は、感電の危険性があるため、設置箇所には警告の表示がされていることが多いものです。つまり触れれば感電、ヘタをすると死ぬかもしれないということですから、触れないのが一番、ということで、これを政治のコンテクストで使うようになったというのは興味深いものがありますね。

マスク氏は米国の社会保障費用にムダ削減の可能性を見出している訳ですが、社会保障費を減らすような政策提言をすれば国民、有権者の猛反発を浴びることになる、というのが周りの見立てであるということなんですね。記事では中間選挙を見据えて、共和党員からは不安の声が、対立する民主党からは(自党に有利な状況と)楽観的な見方が広がっているとあります。

日本においても、昨日、石破首相は高額療養費の上限負担の見直しを凍結すると国会で答弁しましたが、これなんかも"third rail"の類いと言えるでしょう。夏の参院選対策かと記者に問われた石破氏は否定してはいましたが。


2025年3月10日月曜日

autopen

"autopen"という単語をご存知でしょうか?

読んで字の如く(?!)、自動(auto-)筆記(pen)の機械のことで、何を自動で書くかというと、署名(サイン)を自動でしてくれるものだそうです。

私はこんな機械があるとは知りませんでしたので、へぇ〜と思ってしまいました。

ところでアメリカの大統領は文書などの署名にこの"autopen"なるものを使うことがあるそうなのですが、バイデン前大統領の時代に署名された大統領令の多数でこの"autopen"が使われたことが問題になっているそうです。


Dozens of executive orders signed by former President Joe Biden were authorized with identical autopen signatures — raising crucial questions about whether he was fully aware of what he was signing, critics say.

The conservative Heritage Foundation’s Oversight Project uncovered the situation, prompting Biden detractors such as Republican Missouri Attorney General Andrew Bailey to suggest it could be used to challenge the legitimacy of orders that the 82-year-old former president signed, especially given the concerns about his cognition.
(Ryan King. Biden used ‘autopen signature’ on many official WH docs, raising concerns over his awareness. New York Post. March 9, 2025.)


大統領令の署名というと、トランプ大統領が就任して以降、大統領令に署名と連日報道されています。関税に関するものを始めとしてその数は多数にのぼるようですが、先月でしたか、トランスジェンダーのアスリートが女性の競技種目に参加することを禁じる大統領令をトランプ氏自ら署名して掲げる様子を報道したニュースが記憶に新しいところです。(トランプ大統領に関しては、この大統領令について言えば、自らペンを取って署名したもののようです。)

"autopen"は辞書にもちゃんと載っていて、


A mechanical device used for writing imitations of a personal signature.
(American Heritage Dictionary)


といった定義が見えます。

"autopen"という単語は恐らく署名(autograph)とpenを掛け合わせたものだろうと思いますが、auto-という接頭辞には自動の意味もありますから、その意味合いも込めているのだろうと思います。なお、"autograph"のauto-は自己、自身(self)を意味するギリシャ語に由来しており、この接頭辞が「自動」の意味合いで使われるのは自動車(automobile)という言葉が世に出て以降です。

さて、"autopen"による署名を本人直筆の署名と同等とみなすというところがポイントだと思われますが、バイデン氏のケースでは本人がよく理解していないところで周囲が勝手に"autopen"による署名をしたのではないかという疑惑が持ち上がっているようです。特に任期の後半では、バイデン氏の認知機能は大丈夫かどうかが疑われたこともあることから、バイデン氏による大統領令の正統性が疑われる事態ともなっているようです。

"autopen"という機械を知らなかったので果たしてどんなものかネットで検索してみました。

画像検索では箱のような形の筐体に、文字通りのペンのようなものがアームに取り付けられたような機械で、これが紙に本人の直筆と全く同じ筆跡で署名を描き出すもののようです。この機械を製造販売しているアメリカの会社にThe Autopen Companyという会社があり、"autopen"は商標のようです。

個人的な印象としては、前時代的な機械だなぁと思いました。アメリカという国は先端を行っているようで、こんな所ではかなり古臭いやり方を残していると感じます。

大統領令と一般的な企業の契約書とでは重みが違うというものですが、日本の企業でも最近は電子契約が浸透しています。

日本はハンコ、印鑑の文化ですが、欧米はサイン(署名)です。"autopen"というやつは、さしづめ日本のシャチハタみたいなものかと思います。

2025年3月7日金曜日

オムレツについて ー You can’t make an omelet without breaking some eggs.

実業家のイーロン・マスク氏が事実上率いているとされる政府効率化省(DOGE)は第2次トランプ政権の目玉ですが、国際援助を管掌するUSAIDの解体、政府職員の大量解雇といった、過激にも思われる施策を次々と実行しています。

選挙によって選ばれた訳でもない実業家の振るう大ナタには、当然のことながら多くの反発や批判があるのはご存知の通りです。しかしながら、トランプ大統領は先日の施政方針演説においてマスク氏を称え、反発する職員は即座に解雇されるだろうとまで言いました。

以下の引用記事は少し前のものですが、マスク氏擁護派の上院議員の言です。


A MAGA senator said he liked “omelets better than sex” when coming to Elon Musk’s defense for shutting down the U.S. Agency for International Development (USAID). 

Louisiana Senator John Kennedy had a bizarre rant on Fox News when he compared the breakfast food to Musk putting USAID on the chopping block. “I like omelets better than sex. Not really, but you get the point,” Kennedy said on Fox News. “You can’t make an omelet without breaking some eggs.
(Amethyst Martinez. MAGA Senator Goes on Weird Rant About Sex and Omelets. The Daily Beast. February 5, 2025.)


「セッ◯スよりもオムレツの方が好き」という発言は訳が分かりませんね!?

この議員はオムレツ(omelets)なら毎日食べても飽きないとも言ったそうですが、これらの発言がなぜマスク氏擁護になるのでしょうか。

答えは引用部分の最後に出てくる、


You can’t make an omelet without breaking some eggs.


にあります。

この卵を割らないことにはオムレツは作れない、というこのフレーズは、


目的を達するためにはそれなりの努力(犠牲)を払わなければならない、「播かぬ種は生えぬ」
(研究社新英和大辞典)


ということわざです。

つまり、マスク氏のやっている大規模なリストラは米国の成長(MAGAの達成)に必要な犠牲である、ということなのでしょう。

議員の発言はこのことわざを念頭にしたものであり、「オムレツ」(omelets)とは痛みを伴う改革を象徴しているのだという主張のようですが、なかなか意味深な発言、コトバです。

オムレツついでに、英単語"omelet"(また、omelette)の語源について。

"omelet"という単語はフランス語から来ていますが、遡るとラテン語laminaであり、その意味は薄い板というものです。

ふっくら、ふんわり、トロリのオムレツをイメージすると少し違うように思われるかもしれませんが、「オムレツ」という名称は、それがフライパンの上で溶き卵が薄焼きにされて供され、薄板のようだから付いたのです。

でも、ラテン語laminaと英単語"omelet"のスペルは随分と違っていますね?

ラテン語laminaはlamellaという指小辞形があるのですが、これがフランス語ではalemelleとなります。ここがポイントで、"alemelle"というスペルは定冠詞の付いたla lemelleが誤って"l’alemelle"と解釈されたために生じたスペルなのです。つまり、言語学において異分析と呼ばれるものです。

フランスにおいて、alemelleはalumelleへと変化し、さらにalumette、そして音位転換と呼ばれる影響を経て古フランス語ではamletteとなり、最終的にはomeletteとなりました。

ちなみに英語のことわざになっている上記のフレーズのオリジナルはフランス語らしく、辞書には、


On ne fait pas d’omelette sans casser des œufs.


と添えられています。

2025年3月6日木曜日

joined at the hip

米俳優のジーン・ハックマンさんとその妻ベッツィ・アラカワさんが先月ニューメキシコ州の自宅で不審死を遂げたニュース記事を読みました。

ガス漏れによる一酸化炭素中毒が疑われたそうですが、捜査の結果、その可能性は薄いということで死亡原因の解明が待たれるというような内容でした。

また別の記事は生前ハックマンさん夫妻と親しかった関係者による回顧的内容のものでした。引用をどうぞ。


As Hackman aged, he became "reclusive", and Wells didn’t see him or Arakawa for years.

"The two of them were joined at the hip practically. So, if he became reclusive, I think she did, too. And she was very quiet. Anyway, if she went out on her own and was in the same grocery store with me, it would be easy to not see her. She was small and quiet and very, very focused. I thought she was great."
(Gene Hackman and wife were ‘joined at the hip,’ trained to fly together. Fox News. March 5, 2025.)


ハックマン夫妻について、


The two of them were joined at the hip practically.


というくだりがあります。

ここで使われている、"joined at the hip"とは慣用表現で、


used to describe two people who are often or usually together
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味です。

文字通りには、腰の部分で繋がっている、という意味ですが、(腰が繋がっていると思えるくらい)いつも一緒に居る、一心同体、仲睦まじい、というような意味です。ここでは、いわゆる日本語で言う「おしどり夫婦」に近いかと。

"joined at the hip"という表現の由来ですが、身体の一部が癒合して産まれてきた双生児から来ているそうです。(Phrase Finder


2025年3月5日水曜日

random

ウクライナ支援、停戦を巡る米・バンス副大統領の発言が物議を醸しているとの記事が目に留まりました。

冒頭から大荒れとなった先週の米ウ会談では鉱物資源に関する合意に至らず、物別れに終わりましたが、その後米国はウクライナへの軍事支援を一時停止することを決定。これを受けてイギリスやフランスはウクライナへの軍事支援を表明するという動きになっています。

問題になったバンス氏の発言というのは、この動きに対してのコメントなのですが、恐らくは英、あるいは仏を指して、


some random country


と呼んだというものです。

詳しくは記事の引用をどうぞ。


The US vice-president has sparked a row with his comments about a potential peacekeeping force in Ukraine.

UK opposition politicians accused JD Vance of disrespecting British forces after he said a US stake in Ukraine's economy was a "better security guarantee than 20,000 troops from some random country that hasn't fought a war in 30 or 40 years".

The UK and France have said they would be willing to put troops on the ground in Ukraine as part of a peace deal.

Vance has since insisted he did not "even mention the UK or France", adding that both had "fought bravely alongside the US over the last 20 years, and beyond".
(Becky Morton. Anger over Vance 'random country' peacekeeping remark. BBC News. March 4, 2025.)


バンス氏の"some random country"という言い草に英国会議員らが不敬だと反発したというのですが、"random"という表現に何かしら侮蔑的な意味合いがあるのだろうかと気になった次第です。

ごく基本的な単語としては中学の英語の授業に出てくると思いますが、カタカナでもランダムと言い、無作為による、任意の、といった意味合いがまず思い浮かぶのではないでしょうか。

しかし、"some random country"という表現が関係国を怒らせたという時、無作為の国、任意の国、といった訳はどうもしっくり来ないですね。果たして何と訳したものでしょうか。

"random"には成り行き任せとか、行き当たりばったり、といった意味合いもあり、これらの訳語はネガティブな意味合いが滲んではいますが、国(country)という名詞に対する修飾語としてはやはりピンときません。

辞書によっては、"random"の意味合いとして俗語、またインフォーマルな用法を載せているものがあります。変な、変わった、普通でない(odd, strange)というような意味合いです。バンス氏はウクライナへの軍事支援を表明した英仏を「ヘンな国だ」と当てこすったのでしょうか。

正解になかなか辿り付かないのですが、色々と調べているうちに、"random"という言葉について取り上げた興味深い記事を見つけました。


"It's described as a colloquial term meaning peculiar, strange, nonsensical, unpredictable or inexplicable; unexpected," he explains, before adding that random started as a noun in the 14th century, meaning "impetuosity, great speed, force or violence in riding, running, striking, et cetera, chiefly in the phrase 'with great random.' "
(Neda Ulaby. That's So Random: The Evolution Of An Odd Word. NPR. November 30, 2012.)


やはり、口語表現として、普通からちょっと外れた、変わっている、という意味合いがあるということなのですが、今日の辞書では形容詞としてエントリされている"random"は元は名詞であったとあります。語源を紐解くと"random"は走る(run)という意味を持つゲルマン語から来ており、性急さ、突発性といった意味合いが付加して今の意味になったようです。

これだけでは"random"の侮蔑的な意味合いはまだよく掴めていないのですが、バンス氏の発言への反発は、"some random country"による派兵(軍事支援)よりも米国(によるウクライナ鉱物資源関与)の方がベターだという比較に反応したものかも知れません。

ただ、敢えて明確に名指しせずに"some random country"と言う表現は、遠回しに当てこすったり、嫌味を言うような効果があったものと思われます。

コーパスで検索すると、"random person"や"random guy"といった用例が見られます。

日本語の表現で、「どこの誰とは言いませんが・・・」、「どこの馬の骨とも分からん奴」というものがありますが、それに近いのではと思います。

もちろんこんな訳語を載せている辞書は無いのですが、"random"という形容が侮蔑的に響くのは、よく分からない、素性が知れない(故に不可解である)、という話者の判断を滲ませているということだと思われます。


2025年3月4日火曜日

through thick and thin

大荒れのホワイトハウスでの米ウ首脳会談から3日経ちました。頭を冷やして次なるステップを・・・、というところかと思いますが、下記引用するCNNの記事によれば、トランプ氏の怒りはまだ収まっていないようです。


Top Trump Cabinet secretaries and national security officials are holding meetings this week to discuss the administration’s next steps on Ukraine – including the prospect of suspending military aid – following the spectacular collapse of Friday’s Oval Office meeting between President Donald Trump and Ukrainian President Volodymyr Zelensky.

(中略)

“I just think he should be more appreciative, because this country has stuck with them through thick and thin,” Trump told reporters in the Roosevelt Room on Monday when asked what it would take to revive a rare earths mineral deal.
(Trump continues to seethe at Zelensky as national security team gathers to discuss what’s next on Ukraine. CNN. March 3, 2025.)


引用部分でトランプ氏の発言が引用されています。その中に、


this country has stuck with them through thick and thin


というくだりがありますが、ここで使われている、


through thick and thin


というのは慣用句で、「大変な時も、また良い時も」、という意味です。

"thick"、また"thin"の持つ意味合いについてこれまでも取り上げたことがあります(thick vs. thinin the thick of)が、ここでの"thick"とは木々が生い茂っている状態のことで、"thin"とはその反対に木々もまばらという状況を言っています。

つまり、道も定かで無い鬱蒼とした森の中を歩くのは大変な困難を伴いますが、そうでない場合は何とか歩を進めることができるでしょう。これが、困難な状況にあっても、また良い状況にあっても、という比喩的な意味で使われるようになったものです。

トランプ氏の発言は、米国がウクライナに常に寄り添って来た、と言っているものです。だから、もう少し感謝したらどうか、という批判を滲ませたもののようです。

この"through thick and thin"というフレーズは古くからある英語の慣用表現だということですが、元は、


through thicket and thin woods


というものだったようです。(Phrase Finderのサイトによる。)

"thick"の意味に茂みや暗い中という意味や、密集した、混み合ったという意味があるのは、この単語が"thicket"(やぶ、雑木林)から派生していることと関連しています。


2025年3月3日月曜日

battle of wills

ロシアとウクライナの停戦を巡り、ホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が行われましたが、メディアにも公開されたやり取りでは、バンス副大統領も含めた米・ウの激しい応酬となり、合意どころか、物別れに終わりました。

土曜日の朝(日本時間)、その様子を伝える動画を見て、苛烈なやり取りにびっくりした次第です。

個人的な感想としては、バンス氏が「外交による平和云々と言い始めたところから両者の認識の相違が明らかとなり、議論に火が付いたように思います。ゼレンスキー大統領は、過去にロシアが合意を一方的に反故にしてウクライナへ攻め入ったことなどを挙げ、「アンタの言う外交って何だ?」と返し、バンス氏が「お前は米国に対し失礼だ!」とエスカレートしていったように思いました。

以下の記事はUSA TODAY紙のもので、会談が行われる前に、その行方を想定して書かれたものです。

会談は"battle of wills"になるだろう、と予想していますが、今読んでみて果たしてその通りになったなという感想です。


WASHINGTON –  President Donald Trump has been browbeating Ukrainian President Volodymyr Zelenskyy into signing a “breakthrough agreement” that would give the U.S. access to his country’s minerals, oil and natural gas.

Both nations have agreed to the deal in concept: Ukraine would deposit 50% of the revenues earned from future investments in government-owned natural resources into a jointly controlled fund.

But the framework agreement does not currently include security guarantees that have been insisted on by Ukraine.

A battle of wills is expected to ensue between the leaders on Friday, when Zelenskyy gets his first-ever, sit-down in the Oval Office with Trump.
(Francesca Chambers. Zelenskyy's visit with Trump to be a battle of wills in the Oval Office. USA TODAY. February 28, 2025.)


"battle of wills"を何と訳すのか、英和辞書にはこの表現は見当たりません。

"will"とは意思、意向といった意味ですが、ここでは「意地」と言った方がぴったりくるように思われます。

ネットで検索すると、Collins Dictionaryのサイトでは、


A battle of wills is a situation that involves people who try to defeat each other by refusing to change their own aims or demands and hoping that their opponents will weaken first.


という定義がされていました。

"battle of wills"は、意地の張り合い、意地のぶつかり合い、というような訳が適当かと思われます。

先週金曜日の当ブログの投稿では、ゼレンスキー大統領を独裁者と呼び、ロシア寄りのトランプ氏も良心の声に導かれて少しまともになってきたかもという話題を取り上げたのですが、ロシア寄りかどうかは置くとして、やはりトランプ氏、バンス氏陣営は米国の利益、権益ということしか頭に無く、鉱物資源の米ウ合意と引き換えにゼレンスキー大統領が要求する自国の安全保障はそっちのけという感じがします。

この状況で両者譲らず、"battle of wills"が続くことでほくそ笑むのはひとりプーチン大統領だという論評はその通りではないかと思います。