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2025年3月28日金曜日

shooting from the hip

トランプ政権でリストラを断行し政府のスリム化を図ると謳う政府効率化省(DOGE)。

同省を実質的に率いると目される実業家のイーロン・マスク氏と関係者らがFox Newsの直接のインタビューに応じ、その取り組みについて説明したそうです。


Department of Government Efficiency (DOGE) head Elon Musk and seven members of the team shed light on the department's cost-cutting mission in an exclusive sit-down interview with "Special Report" Thursday.

"We want to reduce spending by eliminating waste and fraud and reduce the spending by 15%, which seems really quite achievable," Musk told "Special Report" executive editor Bret Baier.
(Madeline Coggins. Elon Musk, DOGE team offer unprecedented peek behind the curtain of Trump's cost-cutting department. Fox News. March 27, 2025.)


これまでもDOGEに関する記事を取り上げましたが、マスク氏によれば連邦政府にはムダが山積しており、15パーセントの歳出削減が可能であると試算されているそうです。

DOGEによる歳出削減の取り組みはセンセーショナルに報道されることが多く、同省とマスク氏に多くの批判が寄せられていることはご存知の通りです。

記事に以下のようなくだりがあります。


Musk and DOGE have been a lightning rod for criticism due to the department's commitment to slashing waste, fraud and abuse in the federal government. Critics contend the organization has too much access to federal systems and should not be permitted to cancel federal contracts or make cuts to various agencies.

"They may characterize it as shooting from the hip, but it is anything but that," Musk said, noting the agency's approach to cuts is to "measure twice, if not thrice and cut once."
(ibid.)


批判に対するマスク氏の主張が引用されているものですが、


shooting from the hip


という表現に着目しましょう。

"hip"(腰)から撃つ(shoot)ということですが、どういう意味なのでしょうか?

"shooting from the hip"は衝動的な言動を取ることを意味する慣用表現です。

何故そのような意味になるのか?

銃器は通常腰に巻いたベルトにセットしておくもので、使う時にはベルトから外し、対象に向けて構え、照準を合わせて発射するものですが、そうしたステップを踏まないで、ほとんどベルトに付けたまま発砲するという行為(すなわち、shooting from the hip)になぞらえたものです。

銃器を目にしたり、触れたりすることのない我々日本人にはすんなり入って来ない表現ですが、日常に拳銃やライフルが溶け込んでいる米国人ならではの表現とも思われます。

この部分、"They may characterize it as shooting from the hip, but…"の主語である"they"はDOGEに対して批判的な人達(critics)を指します。

DOGEを批判する人達は同省が"shooting from the hip"と考えている、すなわち手当たり次第、思い付きや衝動でコストカットに動いている、と考えているようだけれども、実はそうではない、というのがマスク氏の主張です。

つまり、政府の支出やらをちゃんと分析した上で、ムダ削減に取り組んでいるのだ、と言いたいようです。


2025年3月27日木曜日

in the buff

まずはニュース記事の引用からお読みください。


A distressed woman stripped down to her birthday suit and allegedly assaulted airport workers in a viral freak-out caught on camera.

Samantha Palma allegedly stabbed two people with a pencil and bit a restaurant manager while parading around in the buff during a “manic episode” at the Dallas Forth Worth International Airport on March 14, TMZ reported.
(Shane Galvin. Manic woman strips naked and goes on wild stabbing, biting spree at Texas airport, video shows. New York Post. March 26, 2025.)


米テキサス州のダラス・フォートワース空港で、女性が突如として素っ裸になり、職員などに襲いかかるという乱痴気騒ぎがあったということです。

素っ裸(naked)になる、という表現ですが、"birthday suit"は以前取り上げました。記事ではもうひとつ、


in the buff


という表現が使われています。

この"buff"という単語は、〜通、〜マニアという意味があるということで以前取り上げたのですが、ここでは"naked"の意味、つまり裸という意味です。

"buff"はそもそもバッファロー(buffalo)を約めたもので、牛のなめし革のことですが、淡黄色の革の色というのは素肌の色にも似通っていることから、"in the buff"は裸を意味するようになったそうです。


2025年3月26日水曜日

Beltway

トランプ政権の国家安全保障担当がイエメンにおける軍事作戦に関する機密を漏洩した問題で、クビが飛ぶかという騒動に発展しています。

問題はバンス副大統領など、政権の主要閣僚が含まれるオンラインチャットに誤って部外者を招待してしまい、本来政権幹部の間に限定される会話内容が漏洩されたというものです。誤って招待された部外者というのがトランプ大統領に対し批判的なメディアのジャーナリストであったということで、チャットの内容は暴露され、一気に政権を揺るがす事態となった模様です。

舞台となったのはSignalというアプリだそうですが、この件で初めて知りました。


The leak has sparked fears about the potential mishandling of classified national security information.  

And now, a whole lot more of us know about Signal, a commercial messaging app that is celebrated for its security. If you already use Signal, you may be a Beltway insider, a journalist, a union organizer, or a rank-and-file American who is serious about privacy. 
(Daniel de Visé. How safe is 'Signal'? Pros and cons of the privacy app in the Hegseth leak. USA Today. March 25, 2025.)


このアプリでのチャットは暗号化されるそうで、セキュリティ的にはしっかりしたアプリとして定評のあるもののようです。しかし、部外者をチャットに招待してしまったのではセキュリティも何もありません。

Signalは実際多くの需要があるようですが、こうした秘匿性の高いアプリを重用するのはやはり限られた関係者のようです。

記事では、


Beltway insider


と出てきます。

"beltway"というのは、belt highwayとも言い、都市近郊の環状道路のことです。

ここでは大文字で始まる"Beltway"となっていますので、特定の"beltway"を指しますが、ワシントンD.C.のbeltwayのことを言っているものです。

American Heritage Dictionaryでは、


The political establishment of Washington, DC, including federal officeholders, lobbyists, consultants, and media commentators.


という定義がされています。

つまり、"Beltway insider"とは首都ワシントンD.C.で政治情勢などに通じた関係者ということになります。

日本だと霞が関界隈とか永田町界隈とかいうと、そういう場所に出入りする、政界に通じてた関係者のことを指しますが、それと類似した表現です。

いわゆるメトニミーに類する表現と言えます。


2025年3月25日火曜日

circumvent

ウクライナとロシアの停戦を仲立ちしている米国ですが、かねて報道されているようにトランプ政権のロシア寄りの姿勢が目立っています。

以下引用する記事ではロシアに対する経済制裁などの監視に米国があまり積極的に関わっていないと報じられています。


European officials have said that the Donald Trump administration has reduced its involvement in efforts to close loopholes for circumventing sanctions on Russia.

Details: The officials, who asked not to be named, said the United States was practically absent from several working groups set up by allies to combat attempts to circumvent sanctions imposed on the Kremlin.
(Bloomberg: US reduces its participation in countering Russian ways to circumvent sanctions. Yahoo! News. March 21, 2025>)


経済制裁とは言っても様々な抜け穴(loophole)が存在するようです。

法や規制の「抜け穴」を見つけることを表現する動詞に、


circumvent


があります。

"circumvent"という単語は、周囲を意味する接頭辞circum-と、ラテン語venire(英単語のcome、goに相当)からなる単語です。

元々は、周囲を取り巻くという意味で、ラテン語の動詞circumvenioは敵を包囲するという意味です。

その後、対象を回避する(get around)、また回避することで問題を切り抜けるという意味で使われるようになりました。

今日では法や規制の抜け穴を見つけて義務を回避するという意味合いで使われる方が多くなっています。

日本語で「潜脱」という言葉があることを知りました。法律などを自己に都合の良いように解釈し、法の網を「潜る」という意味です。


2025年3月24日月曜日

every name under the sun

昔の勤め先で、しょっちゅう海外出張に行っていた先輩社員から、スチュワーデスは肉体労働者だ、と聞いたのを今も覚えています。

今はフライトアテンダント、キャビンクルーなどと呼ばれるのが普通ですが、「スチュワーデス」という呼称がまだ健在だった頃の話です。華やかな女性の憧れの職業というイメージと裏腹に、その職務は過酷を極めるという先輩のお話に、そういう見方もあるかと思った次第です。

ウン十年前のそんな昔の話を思い出しました。


There’s a dark side to working 30,000 feet in the air.

Medical emergencies, sleep deprivation and 20-minute lunch breaks are all in a day’s work for Australia’s battler cabin crew.
(Duncan Evans. The dark side of being a flight attendant: Medical emergencies, sleep deprivation, entitled passengers and more. New York Post. March 23, 2025.)


わたしも回数は決して多くありませんが、飛行機に乗るとアテンダントの方々の仕事というのは大変だなぁと思います。

引用した記事は乗務員の過酷な勤務スケジュール、機内急病人へのケア、言うことを聞かない客への対処、さらには酔客の扱い方等々、様々な逸話と現場の声が取り上げられているものです。

ある事例。


“Being called every name under the sun because we can’t get them a toasted sandwich or a wrap.”
(ibid.)


機内食やドリンクで、客の要望に添えないことがありますが、欲しいものが無いと言われてブチ切れる客の話です。

面白い表現ですが、


Being called every name under the sun


とは、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせられる、というような意味合いの慣用表現です。

英単語の"name"には、悪口の意味があります。以前も取り上げたように、name callingといった表現もあります。

また、ここで"under the sun"とはお日様の下、ということですが、"on the earth"や"in the world"といった表現に同じく、この世における、という意味合いがあります。

この世の中で使われてきたであろうありとあらゆる罵詈雑言、というのが"every name under the sun"の意味するところです。



2025年3月21日金曜日

kerflooey

今日取り上げる1語、"kerflooey"という単語を見たことがあるという方はいらっしゃいますでしょうか?

私は初めて見ました。

記事の引用をどうぞ。


The Metropolitan Transportation Authority on Wednesday threatened another “Summer of Hell” if the Big Apple doesn’t continue ponying up big bucks — even as a recent watchdog study warned the city’s payments keep snowballing. 

(中略)

The proposed plan to fix the deteriorating, aging subway system assumes New York City will cough up $4 billion, but that amount could increase as the state budget isn’t final and federal support is up in the air under new President Trump.

(中略)

The subways infamously went kerflooey during the summer of 2017, as a series of subway breakdowns regularly left straphangers stranded, delayed — or even trapped in hot train cars or hurt in derailments.
(MTA threatens another ‘Summer of Hell’ of subway disruptions if NYC doesn’t cough up billions — as transit agency touts its ‘great service’. New York Post. March 19, 2025.)


ニューヨーク市地下鉄に関する内容です。

老朽化が進むインフラ、設備等が問題になっているものですが、メンテナンスや修繕にかかる費用を誰が負担するのかという話です。運賃の値上げが計画されているようですが、それだけで賄えるはずもなく、地下鉄を運営するMTAはニューヨーク市の援助を求めている模様です。

引用した部分の最後の段落で、


The subways infamously went kerflooey 


と出てきます。

"kerflooey"という単語を載せている辞書はそう多くないようです。Merriam-Webster Dictionaryでは、"kerflooey"を載せています。

記事のコンテクストから意味合いは想像が付くというものです。老朽化した設備につきものは不具合や故障であり、列車は遅延したり、運休により大混雑を引き起こします。"kerflooey"がこうした望ましくない状況を指す意味合いだというのは想像がつきます。(この箇所、過去形になっていますが、2017年夏に起きた地下鉄の大混乱の記事を当ブログでも取り上げていました。)

"kerflooey"は形容詞で、上記の用例においても"go kerflooey"となっています。ランダムハウス英和辞書では、


(突然)止まる、調子が狂う


とあります。

"flooey"という俗語にそもそも機械の不具合、故障というような意味合いがあり、ker-というのは擬音語や擬態語に付けられる接頭辞で、効果や程度を強調するような働きをするものだそうです。

つまり、単に「壊れた」というのではなく、「ぶっ壊れた」という時の「ぶっ」に相当するというものです。

似たスペルの単語に、"kerfuffle"があります。元はcurfuffleというスペルのスコットランド方言でしたが、接頭辞ker-の影響を受けたとの説明がランダムハウス英和辞書にあります。

2025年3月20日木曜日

moolah

街を歩いていて宝くじやロトの売り場を見かけると、宝くじに当たったらなぁ〜、と思うことしばしばです。しかし、実際に買ったことはありません。(苦笑)

ウン億円に当選したら・・・、と夢想するだけで、実際には買わないのですから、見果てぬ夢です。

宝くじの高額当選者は不幸になる、という話を聞いたことがあります。当たらない人間の僻みという人もいますが、今日見かけた記事はそんな人の実話が取り上げられています。


Sure, the ching-ching and the bling-bling are nice — but if you’re hoping mountains of moolah will make you happy, you may want to think twice.

It’s cautionary advice from Alyssa Mosley, who exclusively tells The Post that hitting jackpot came with a side of unexpected surprises.
(Asia Grace. I won the lottery — here’s how I learned that money won’t make you happy. New York Post. March 19, 2025.)


一生を遊んで暮らせる程の大金を手にして何故ハッピーになれないのか、詳しくは記事をお読み頂ければと思います。

取り上げたいのは、


moolah


という単語です。

"moolah"とは金(money)を指す俗語だと辞書にあります。(moolaというスペルもあります。)

どの辞書を見ても語源不詳という説明なのですが、なんとなく後ろ暗い響きのある単語のようにも感じられます。

俗語というのも頷けるところです。お金があり過ぎるのもきっと良くないのだと・・・。(持たない者の僻みです。)


2025年3月19日水曜日

homebody

家の外にあまり出たがらない人、いわゆる出不精な性格の人のことを指すのに、


homebody


という単語があるそうです。知りませんでした。


In his February 2025 cover story for The Atlantic, journalist Derek Thompson dubbed our current era “the anti-social century.”

He isn’t wrong. According to our recent research, the U.S. is becoming a nation of homebodies.

Using data from the American Time Use Survey, we studied how people in the U.S. spent their time before, during and after the pandemic.
(America is becoming a nation of homebodies. The Conversation. March 10, 2025.)


パンデミックの影響もあって、家の中で事を済ますということを覚え、それが普通になったという傾向はあるにせよ、アメリカ人は基本的に家の中で過ごすことが好きなようであるという調査結果があるようです。

日本語の「引きこもり」には、深刻な対人関係の問題などを抱えている為に外出を拒否する精神状態を表す言葉であると共に、自身が外出に億劫であることを半ば自虐的に表現する言葉としても用いられていると思います。その意味では"homebody"には、後者の意味での引きこもりの意味合いも見て取れるかも知れません。

また、"recluse"という単語は、隠遁者、世捨て人と訳されますが、こちらは内向性の程度において"homebody"よりも甚だしいと言えるかと思います。

"homebody"という単語に特に変わった、目新しい発見は無いのですが、外に出かけるよりもウチが好き、という人を言うのにこんな表現があるとは知らなかったので今日の1語に取り上げました。


2025年3月18日火曜日

fish tale

海外で人気の日本食と言えば筆頭に上がるのは鮨でしょう。

しかし、アメリカ国内で供される鮨にはネタを偽ったものが増えているそうで、同種、あるいは全く異なる種の安価なネタを使って高く売り捌く傾向にあるといいます。マグロやサーモン、タイ、クルマエビといった人気の鮨ネタに多いそうです。


People are getting catfished — literally.

Experts warn that when it comes to sushi, what you sea is often not what you get — with the US clocking in as one of the world’s biggest fish forgers.

Studies have shown that cheaper fish alternatives are being mislabeled and masqueraded as salmon, tuna, snapper and other top-shelf raw seafood — with the cost-cutting counterfeits almost impossible to spot after the sushi’s been sliced and served.
(Ben Cost. ‘Fake’ sushi is taking over and can make you sick, experts say — here’s how to tell real from bogus. New York Post. March 17, 2025.)


個人的にはアメリカの日本食レストランで満足した経験はほとんどなく、料理人やスタッフが中国人だったりするのを見てきましたのて、然もありなんという気もします。

一方で、魚の味というものを見分けることができる人というのもどれほどいるかと考えると、仕方のないこととも思います。

ところで記事の締め括りに以下のようなくだりがあります。


How do you spot a so-called fish tale?

Dr. Cusa advised, “In general, fish products that are sold in supermarket chains and that have thorough labels indicating the species, catch location and catching gear, are also good choices.”

“On the other hand, processed products, canned products with little information if any are, almost by definition, mislabeled,” she added.
(ibid.)


ニセの鮨ネタをどうやって見抜くのか、という話です。

"fish tale"とは、魚の話し、ということですが、嘘、ほら話のことで、特に誇張や脚色された内容のものを言います。

釣り人が取り逃がした魚の大きさを大袈裟に話すというのは聞いたことがあるでしょう。内容が盛られていないか、誇張が含まれていないか、多少差し引いて捉える必要のある話を指して使う表現です。

"fish story"とも言います。

また、以前取り上げた"fishy"もご覧ください。



2025年3月17日月曜日

heat

先日、米ピッツバーグ大の女子学生が行方不明になっているというニュースを見かけました。旅行先のドミニカ共和国で行方不明になったようです。

今日見た記事によると、警察当局が事件の重要参考人としてアイオワ州の男を取り調べているということです。


Authorities in the Dominican Republic are turning up the heat on the Iowa man who was the last person to see University of Pittsburgh student Sudiksha Konanki before she went missing — grilling him into the early morning hours on Sunday.

Joshua Riibe, a senior at St. Cloud State University in Minnesota, was interrogated by Dominican Attorney General Yeni Berenice Reynoso and Navy Vice Admiral Agustin Morillo Rodriguez until nearly 3 a.m., the Spanish-language outlet Noticias SIN reported.
(Jorge Fitz-Gibbon. Authorities turn up the heat on ‘person of interest’ in Sudiksha Konanki case after revealing he’s ‘in custody’ in DR. New York Post. March 16, 2025.)


記事のタイトル、本文に、


turning up the heat


という表現が出てきます。

熱(heat)の度合いを上げる(turn up)というのが字句通りの訳です。この"turn up"という動詞句は以前も取り上げたことがありますが、目的語に"pressure"や"heat"などを取って、それを強める、つまり相手に対する圧力を増す、という意味で使われます。

今回引用した記事では行方不明の事情を知っていると思われる重要参考人に対する尋問、取り調べのことを言っている訳ですが、"heat"の俗語の意味には、


the intensification of law-enforcement activity or investigation
(Merriam-Webster Dictionary)


というものがあるそうです。

これは俗語として英和辞書にも載っており、警察による追及、取り調べの厳しさを増す、というような意味です。

昔、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演する「ヒート」(原題もHeat)という映画があったのを思い出しました。

劇場で観たのを覚えていますが、ストーリーの内容からもタイトルの"Heat"は今日取り上げた俗語の意味だったのだなと、30年を経て思う次第です。(映画「ヒート」は1995年の作品。)


2025年3月14日金曜日

fall through the cracks

米コネチカット州で、20年間にも渡り軟禁状態に置かれていた男性が解放されたというニュース記事を読みました。

男性は11歳の時から食べ物もろくに与えられず、風呂にも入れさせてもらえず、いわゆるネグレクトの状態で継母と実父により自宅に軟禁されていたそうです。

男性自らが自宅室内に火をつけ、長期間に渡る所業が明るみになったということらしいです。


New details have emerged in the shocking story of a 32-year-old Connecticut man allegedly held captive in a single room by his father and stepmother for 20 years.

(中略)

While authorities are investigating how the man fell through the cracks as a child, Spagnolo told the AP police only had two interactions with the family, both in 2005.

One call was a welfare check prompted by reports from classmates. Another was after the family filed a harassment complaint against school officials for reporting them to state child welfare officials, according to the report.
(Alexandra Koch. Man describes shocking living conditions he endured during 20-year home captivity: 'Unimaginable'. Fox News. March 13, 2025.)


継母は監禁などの容疑で逮捕されたとあります。

11歳の時から20年を経て現在32歳という男性は体重わずか30数キロということで、いかに虐待を受けていたか想像を絶するものがあります。

誰しもが、一体何故こんなことが罷り通っていたのか?と思うことでしょう。

引用した部分に、


authorities are investigating how the man fell through the cracks as a child


とあります。

"fall through the cracks"は慣用句表現で、気付かれることなく見過ごされる、というような意味合いです。

"crack"はヒビ、割れ目のことで、その隙間に落ちてしまって顧みられない、ということです。

このフレーズには、


fall between the cracks
slip through/between the cracks


というバリエーションもあります。

男性のケースの場合、実際にはネグレクトの可能性の報告が学校から上がったそうなのですが、調査不十分のまま、ウヤムヤになったようです。

日本においても児童虐待の疑いが相談所に報告されながら、十分な調査や措置が取られることなく、尊い命が失われる不幸が後を断ちません。

まさしく、"fall through the cracks"だという感じがします。


2025年3月13日木曜日

s’more

岩手県大船渡市の山火事は海岸沿いの山林を焼き尽くした末にようやく鎮火しました。

以下引用するニュースは米ニューヨーク州ロングアイランドでの山火事に関するものです。


A New York resident making s'mores in their backyard is suspected of accidentally igniting a series of wildfires over the weekend that swept through hundreds of acres of the Pine Barrens region of Long Island, authorities said Monday.

Suffolk County Police Commissioner Kevin Catalina said the "operating theory" is that a fire was started at about 9:30 a.m. ET Saturday when a resident used cardboard to start a fire to make s'mores, a confection that includes toasted marshmallows and chocolate sandwiched between graham crackers.
(Bill Hutchinson. Suspected cause of Long Island wildfires was a resident making s'mores: Police. ABC news. March 11, 2025.)


火事の原因は、住人が庭で"s'more"を作ろうと火おこししたところ飛び火した可能性があるとあります。

この"s'more"という単語を知りませんでした。変わったスペルの単語ですね。

辞書を引くと、"s'more"とはマシュマロを焦がしたものをクラッカーに挟んだお菓子だそうです。チョコレートも挟んだりするとか。

なぜ"s'more"というのかについては、このお菓子が美味しいのでもう少し欲しい(some more)と言いたくなるから、だそうです。


2025年3月12日水曜日

hypertrichosis

顔面を覆い尽くすかのように毛むくじゃらのインド人男性がギネス記録に認定されたというニュース記事を読みました。

記事の写真を見ると、毛の生えていないのはほとんど目と口の周りくらいしか残っていませんが、狼男症候群(werewolf syndrome)と呼ばれる疾患だそうです。


A teenager has landed a spot in Guinness World Records for having the world’s hairiest face.

Lalit Patidar, an 18-year-old from India, was found to have 201.72 hairs per square centimeter, covering 95% of his face, according to Guinness.

The excessive hair growth is the result of a rare medical condition called hypertrichosis, informally known as "werewolf syndrome."
(Melissa Rudy. Teen with ‘werewolf syndrome’ breaks world record for hairiest face
Rare medical condition causes abnormal hair growth. Fox News. March 11, 2025.)


狼男症候群(werewolf syndrome)とは俗称で、正式な医学用語としては、


hypertrichosis


という語がそえられています。多毛症と訳されます。

単語のスペルを見て、hyper-という接頭辞とtricho-という要素が結合したこの単語が毛の多いことを意味するというのは想像がつきました。ちなみに、tricho-はギリシャ語で毛髪を意味するthrixという語から来ています。

どこか見覚えがあるように感じたのは、昔、


trichotillomania


という単語に出会したのです。

これは抜毛症と訳されるのですが、毛髪(tricho-)を引き抜こう(tillo-は抜くという意味のギリシャ語tillesthaiから)とする強迫性の症状(mania)を指すものです。


2025年3月11日火曜日

third rail

実業家のイーロン・マスク氏がリストラの大ナタを振るっている政府効率化省(DOGE)の話題は先日も取り上げましたが、マスク氏の効率化目標は1兆ドルの歳出削減だそうです。

巨額の歳出削減の目論見がどのように達成され得ると試算しているのか、素人には分かりません。引用する記事によると、大量の政府職員を解雇した次に見据えているのは1.6兆ドル超ともされる社会保障費だそうです。


Musk is dangerously close to touching a political third rail.

Trump’s billionaire adviser called Social Security “the biggest Ponzi scheme of all time.” Department of Government Efficiency lieutenants have entered the Social Security Administration. The SSA is planning to slash staff.

The moves are stressing out some Republicans — and making Democrats optimistic — ahead of the 2026 midterms.

“If people think Medicaid is a hot-button issue, Social Security is 10 times that. He may think it’s a Ponzi scheme, but the people on it and the people about to be on it do not think that,” said CHRISTOPHER NICHOLAS, a longtime GOP consultant based in the battleground state of Pennsylvania.
(Musk grabs for the third rail. Politico. March 10, 2025.)


記事では想定されるマスク氏の取り組みは"third rail"だと言っていますが、この表現を初めて見ました。

"third rail"とは「3番目のレール」ということになりますが、鉄道の専門用語で第3軌条という訳語が英和辞書には見えます。これは電車が走る2本のレールに並行して敷設される3番目のレールのことで、電気を供給するためのものだそうです。

英和辞書の説明はここで終わってしまうのですが、"third rail"には政治のコンテクストで使われ、その意味合いは、


A subject that tends to be avoided because of its offensive or controversial nature
(American Heritage Dictionary)


というもので、議論を呼ぶ課題故に政治家が避けたがるテーマ、話題のことです。

電気を供給するための"third rail"は、感電の危険性があるため、設置箇所には警告の表示がされていることが多いものです。つまり触れれば感電、ヘタをすると死ぬかもしれないということですから、触れないのが一番、ということで、これを政治のコンテクストで使うようになったというのは興味深いものがありますね。

マスク氏は米国の社会保障費用にムダ削減の可能性を見出している訳ですが、社会保障費を減らすような政策提言をすれば国民、有権者の猛反発を浴びることになる、というのが周りの見立てであるということなんですね。記事では中間選挙を見据えて、共和党員からは不安の声が、対立する民主党からは(自党に有利な状況と)楽観的な見方が広がっているとあります。

日本においても、昨日、石破首相は高額療養費の上限負担の見直しを凍結すると国会で答弁しましたが、これなんかも"third rail"の類いと言えるでしょう。夏の参院選対策かと記者に問われた石破氏は否定してはいましたが。


2025年3月10日月曜日

autopen

"autopen"という単語をご存知でしょうか?

読んで字の如く(?!)、自動(auto-)筆記(pen)の機械のことで、何を自動で書くかというと、署名(サイン)を自動でしてくれるものだそうです。

私はこんな機械があるとは知りませんでしたので、へぇ〜と思ってしまいました。

ところでアメリカの大統領は文書などの署名にこの"autopen"なるものを使うことがあるそうなのですが、バイデン前大統領の時代に署名された大統領令の多数でこの"autopen"が使われたことが問題になっているそうです。


Dozens of executive orders signed by former President Joe Biden were authorized with identical autopen signatures — raising crucial questions about whether he was fully aware of what he was signing, critics say.

The conservative Heritage Foundation’s Oversight Project uncovered the situation, prompting Biden detractors such as Republican Missouri Attorney General Andrew Bailey to suggest it could be used to challenge the legitimacy of orders that the 82-year-old former president signed, especially given the concerns about his cognition.
(Ryan King. Biden used ‘autopen signature’ on many official WH docs, raising concerns over his awareness. New York Post. March 9, 2025.)


大統領令の署名というと、トランプ大統領が就任して以降、大統領令に署名と連日報道されています。関税に関するものを始めとしてその数は多数にのぼるようですが、先月でしたか、トランスジェンダーのアスリートが女性の競技種目に参加することを禁じる大統領令をトランプ氏自ら署名して掲げる様子を報道したニュースが記憶に新しいところです。(トランプ大統領に関しては、この大統領令について言えば、自らペンを取って署名したもののようです。)

"autopen"は辞書にもちゃんと載っていて、


A mechanical device used for writing imitations of a personal signature.
(American Heritage Dictionary)


といった定義が見えます。

"autopen"という単語は恐らく署名(autograph)とpenを掛け合わせたものだろうと思いますが、auto-という接頭辞には自動の意味もありますから、その意味合いも込めているのだろうと思います。なお、"autograph"のauto-は自己、自身(self)を意味するギリシャ語に由来しており、この接頭辞が「自動」の意味合いで使われるのは自動車(automobile)という言葉が世に出て以降です。

さて、"autopen"による署名を本人直筆の署名と同等とみなすというところがポイントだと思われますが、バイデン氏のケースでは本人がよく理解していないところで周囲が勝手に"autopen"による署名をしたのではないかという疑惑が持ち上がっているようです。特に任期の後半では、バイデン氏の認知機能は大丈夫かどうかが疑われたこともあることから、バイデン氏による大統領令の正統性が疑われる事態ともなっているようです。

"autopen"という機械を知らなかったので果たしてどんなものかネットで検索してみました。

画像検索では箱のような形の筐体に、文字通りのペンのようなものがアームに取り付けられたような機械で、これが紙に本人の直筆と全く同じ筆跡で署名を描き出すもののようです。この機械を製造販売しているアメリカの会社にThe Autopen Companyという会社があり、"autopen"は商標のようです。

個人的な印象としては、前時代的な機械だなぁと思いました。アメリカという国は先端を行っているようで、こんな所ではかなり古臭いやり方を残していると感じます。

大統領令と一般的な企業の契約書とでは重みが違うというものですが、日本の企業でも最近は電子契約が浸透しています。

日本はハンコ、印鑑の文化ですが、欧米はサイン(署名)です。"autopen"というやつは、さしづめ日本のシャチハタみたいなものかと思います。

2025年3月7日金曜日

オムレツについて ー You can’t make an omelet without breaking some eggs.

実業家のイーロン・マスク氏が事実上率いているとされる政府効率化省(DOGE)は第2次トランプ政権の目玉ですが、国際援助を管掌するUSAIDの解体、政府職員の大量解雇といった、過激にも思われる施策を次々と実行しています。

選挙によって選ばれた訳でもない実業家の振るう大ナタには、当然のことながら多くの反発や批判があるのはご存知の通りです。しかしながら、トランプ大統領は先日の施政方針演説においてマスク氏を称え、反発する職員は即座に解雇されるだろうとまで言いました。

以下の引用記事は少し前のものですが、マスク氏擁護派の上院議員の言です。


A MAGA senator said he liked “omelets better than sex” when coming to Elon Musk’s defense for shutting down the U.S. Agency for International Development (USAID). 

Louisiana Senator John Kennedy had a bizarre rant on Fox News when he compared the breakfast food to Musk putting USAID on the chopping block. “I like omelets better than sex. Not really, but you get the point,” Kennedy said on Fox News. “You can’t make an omelet without breaking some eggs.
(Amethyst Martinez. MAGA Senator Goes on Weird Rant About Sex and Omelets. The Daily Beast. February 5, 2025.)


「セッ◯スよりもオムレツの方が好き」という発言は訳が分かりませんね!?

この議員はオムレツ(omelets)なら毎日食べても飽きないとも言ったそうですが、これらの発言がなぜマスク氏擁護になるのでしょうか。

答えは引用部分の最後に出てくる、


You can’t make an omelet without breaking some eggs.


にあります。

この卵を割らないことにはオムレツは作れない、というこのフレーズは、


目的を達するためにはそれなりの努力(犠牲)を払わなければならない、「播かぬ種は生えぬ」
(研究社新英和大辞典)


ということわざです。

つまり、マスク氏のやっている大規模なリストラは米国の成長(MAGAの達成)に必要な犠牲である、ということなのでしょう。

議員の発言はこのことわざを念頭にしたものであり、「オムレツ」(omelets)とは痛みを伴う改革を象徴しているのだという主張のようですが、なかなか意味深な発言、コトバです。

オムレツついでに、英単語"omelet"(また、omelette)の語源について。

"omelet"という単語はフランス語から来ていますが、遡るとラテン語laminaであり、その意味は薄い板というものです。

ふっくら、ふんわり、トロリのオムレツをイメージすると少し違うように思われるかもしれませんが、「オムレツ」という名称は、それがフライパンの上で溶き卵が薄焼きにされて供され、薄板のようだから付いたのです。

でも、ラテン語laminaと英単語"omelet"のスペルは随分と違っていますね?

ラテン語laminaはlamellaという指小辞形があるのですが、これがフランス語ではalemelleとなります。ここがポイントで、"alemelle"というスペルは定冠詞の付いたla lemelleが誤って"l’alemelle"と解釈されたために生じたスペルなのです。つまり、言語学において異分析と呼ばれるものです。

フランスにおいて、alemelleはalumelleへと変化し、さらにalumette、そして音位転換と呼ばれる影響を経て古フランス語ではamletteとなり、最終的にはomeletteとなりました。

ちなみに英語のことわざになっている上記のフレーズのオリジナルはフランス語らしく、辞書には、


On ne fait pas d’omelette sans casser des œufs.


と添えられています。

2025年3月6日木曜日

joined at the hip

米俳優のジーン・ハックマンさんとその妻ベッツィ・アラカワさんが先月ニューメキシコ州の自宅で不審死を遂げたニュース記事を読みました。

ガス漏れによる一酸化炭素中毒が疑われたそうですが、捜査の結果、その可能性は薄いということで死亡原因の解明が待たれるというような内容でした。

また別の記事は生前ハックマンさん夫妻と親しかった関係者による回顧的内容のものでした。引用をどうぞ。


As Hackman aged, he became "reclusive", and Wells didn’t see him or Arakawa for years.

"The two of them were joined at the hip practically. So, if he became reclusive, I think she did, too. And she was very quiet. Anyway, if she went out on her own and was in the same grocery store with me, it would be easy to not see her. She was small and quiet and very, very focused. I thought she was great."
(Gene Hackman and wife were ‘joined at the hip,’ trained to fly together. Fox News. March 5, 2025.)


ハックマン夫妻について、


The two of them were joined at the hip practically.


というくだりがあります。

ここで使われている、"joined at the hip"とは慣用表現で、


used to describe two people who are often or usually together
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味です。

文字通りには、腰の部分で繋がっている、という意味ですが、(腰が繋がっていると思えるくらい)いつも一緒に居る、一心同体、仲睦まじい、というような意味です。ここでは、いわゆる日本語で言う「おしどり夫婦」に近いかと。

"joined at the hip"という表現の由来ですが、身体の一部が癒合して産まれてきた双生児から来ているそうです。(Phrase Finder


2025年3月5日水曜日

random

ウクライナ支援、停戦を巡る米・バンス副大統領の発言が物議を醸しているとの記事が目に留まりました。

冒頭から大荒れとなった先週の米ウ会談では鉱物資源に関する合意に至らず、物別れに終わりましたが、その後米国はウクライナへの軍事支援を一時停止することを決定。これを受けてイギリスやフランスはウクライナへの軍事支援を表明するという動きになっています。

問題になったバンス氏の発言というのは、この動きに対してのコメントなのですが、恐らくは英、あるいは仏を指して、


some random country


と呼んだというものです。

詳しくは記事の引用をどうぞ。


The US vice-president has sparked a row with his comments about a potential peacekeeping force in Ukraine.

UK opposition politicians accused JD Vance of disrespecting British forces after he said a US stake in Ukraine's economy was a "better security guarantee than 20,000 troops from some random country that hasn't fought a war in 30 or 40 years".

The UK and France have said they would be willing to put troops on the ground in Ukraine as part of a peace deal.

Vance has since insisted he did not "even mention the UK or France", adding that both had "fought bravely alongside the US over the last 20 years, and beyond".
(Becky Morton. Anger over Vance 'random country' peacekeeping remark. BBC News. March 4, 2025.)


バンス氏の"some random country"という言い草に英国会議員らが不敬だと反発したというのですが、"random"という表現に何かしら侮蔑的な意味合いがあるのだろうかと気になった次第です。

ごく基本的な単語としては中学の英語の授業に出てくると思いますが、カタカナでもランダムと言い、無作為による、任意の、といった意味合いがまず思い浮かぶのではないでしょうか。

しかし、"some random country"という表現が関係国を怒らせたという時、無作為の国、任意の国、といった訳はどうもしっくり来ないですね。果たして何と訳したものでしょうか。

"random"には成り行き任せとか、行き当たりばったり、といった意味合いもあり、これらの訳語はネガティブな意味合いが滲んではいますが、国(country)という名詞に対する修飾語としてはやはりピンときません。

辞書によっては、"random"の意味合いとして俗語、またインフォーマルな用法を載せているものがあります。変な、変わった、普通でない(odd, strange)というような意味合いです。バンス氏はウクライナへの軍事支援を表明した英仏を「ヘンな国だ」と当てこすったのでしょうか。

正解になかなか辿り付かないのですが、色々と調べているうちに、"random"という言葉について取り上げた興味深い記事を見つけました。


"It's described as a colloquial term meaning peculiar, strange, nonsensical, unpredictable or inexplicable; unexpected," he explains, before adding that random started as a noun in the 14th century, meaning "impetuosity, great speed, force or violence in riding, running, striking, et cetera, chiefly in the phrase 'with great random.' "
(Neda Ulaby. That's So Random: The Evolution Of An Odd Word. NPR. November 30, 2012.)


やはり、口語表現として、普通からちょっと外れた、変わっている、という意味合いがあるということなのですが、今日の辞書では形容詞としてエントリされている"random"は元は名詞であったとあります。語源を紐解くと"random"は走る(run)という意味を持つゲルマン語から来ており、性急さ、突発性といった意味合いが付加して今の意味になったようです。

これだけでは"random"の侮蔑的な意味合いはまだよく掴めていないのですが、バンス氏の発言への反発は、"some random country"による派兵(軍事支援)よりも米国(によるウクライナ鉱物資源関与)の方がベターだという比較に反応したものかも知れません。

ただ、敢えて明確に名指しせずに"some random country"と言う表現は、遠回しに当てこすったり、嫌味を言うような効果があったものと思われます。

コーパスで検索すると、"random person"や"random guy"といった用例が見られます。

日本語の表現で、「どこの誰とは言いませんが・・・」、「どこの馬の骨とも分からん奴」というものがありますが、それに近いのではと思います。

もちろんこんな訳語を載せている辞書は無いのですが、"random"という形容が侮蔑的に響くのは、よく分からない、素性が知れない(故に不可解である)、という話者の判断を滲ませているということだと思われます。


2025年3月4日火曜日

through thick and thin

大荒れのホワイトハウスでの米ウ首脳会談から3日経ちました。頭を冷やして次なるステップを・・・、というところかと思いますが、下記引用するCNNの記事によれば、トランプ氏の怒りはまだ収まっていないようです。


Top Trump Cabinet secretaries and national security officials are holding meetings this week to discuss the administration’s next steps on Ukraine – including the prospect of suspending military aid – following the spectacular collapse of Friday’s Oval Office meeting between President Donald Trump and Ukrainian President Volodymyr Zelensky.

(中略)

“I just think he should be more appreciative, because this country has stuck with them through thick and thin,” Trump told reporters in the Roosevelt Room on Monday when asked what it would take to revive a rare earths mineral deal.
(Trump continues to seethe at Zelensky as national security team gathers to discuss what’s next on Ukraine. CNN. March 3, 2025.)


引用部分でトランプ氏の発言が引用されています。その中に、


this country has stuck with them through thick and thin


というくだりがありますが、ここで使われている、


through thick and thin


というのは慣用句で、「大変な時も、また良い時も」、という意味です。

"thick"、また"thin"の持つ意味合いについてこれまでも取り上げたことがあります(thick vs. thinin the thick of)が、ここでの"thick"とは木々が生い茂っている状態のことで、"thin"とはその反対に木々もまばらという状況を言っています。

つまり、道も定かで無い鬱蒼とした森の中を歩くのは大変な困難を伴いますが、そうでない場合は何とか歩を進めることができるでしょう。これが、困難な状況にあっても、また良い状況にあっても、という比喩的な意味で使われるようになったものです。

トランプ氏の発言は、米国がウクライナに常に寄り添って来た、と言っているものです。だから、もう少し感謝したらどうか、という批判を滲ませたもののようです。

この"through thick and thin"というフレーズは古くからある英語の慣用表現だということですが、元は、


through thicket and thin woods


というものだったようです。(Phrase Finderのサイトによる。)

"thick"の意味に茂みや暗い中という意味や、密集した、混み合ったという意味があるのは、この単語が"thicket"(やぶ、雑木林)から派生していることと関連しています。


2025年3月3日月曜日

battle of wills

ロシアとウクライナの停戦を巡り、ホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が行われましたが、メディアにも公開されたやり取りでは、バンス副大統領も含めた米・ウの激しい応酬となり、合意どころか、物別れに終わりました。

土曜日の朝(日本時間)、その様子を伝える動画を見て、苛烈なやり取りにびっくりした次第です。

個人的な感想としては、バンス氏が「外交による平和云々と言い始めたところから両者の認識の相違が明らかとなり、議論に火が付いたように思います。ゼレンスキー大統領は、過去にロシアが合意を一方的に反故にしてウクライナへ攻め入ったことなどを挙げ、「アンタの言う外交って何だ?」と返し、バンス氏が「お前は米国に対し失礼だ!」とエスカレートしていったように思いました。

以下の記事はUSA TODAY紙のもので、会談が行われる前に、その行方を想定して書かれたものです。

会談は"battle of wills"になるだろう、と予想していますが、今読んでみて果たしてその通りになったなという感想です。


WASHINGTON –  President Donald Trump has been browbeating Ukrainian President Volodymyr Zelenskyy into signing a “breakthrough agreement” that would give the U.S. access to his country’s minerals, oil and natural gas.

Both nations have agreed to the deal in concept: Ukraine would deposit 50% of the revenues earned from future investments in government-owned natural resources into a jointly controlled fund.

But the framework agreement does not currently include security guarantees that have been insisted on by Ukraine.

A battle of wills is expected to ensue between the leaders on Friday, when Zelenskyy gets his first-ever, sit-down in the Oval Office with Trump.
(Francesca Chambers. Zelenskyy's visit with Trump to be a battle of wills in the Oval Office. USA TODAY. February 28, 2025.)


"battle of wills"を何と訳すのか、英和辞書にはこの表現は見当たりません。

"will"とは意思、意向といった意味ですが、ここでは「意地」と言った方がぴったりくるように思われます。

ネットで検索すると、Collins Dictionaryのサイトでは、


A battle of wills is a situation that involves people who try to defeat each other by refusing to change their own aims or demands and hoping that their opponents will weaken first.


という定義がされていました。

"battle of wills"は、意地の張り合い、意地のぶつかり合い、というような訳が適当かと思われます。

先週金曜日の当ブログの投稿では、ゼレンスキー大統領を独裁者と呼び、ロシア寄りのトランプ氏も良心の声に導かれて少しまともになってきたかもという話題を取り上げたのですが、ロシア寄りかどうかは置くとして、やはりトランプ氏、バンス氏陣営は米国の利益、権益ということしか頭に無く、鉱物資源の米ウ合意と引き換えにゼレンスキー大統領が要求する自国の安全保障はそっちのけという感じがします。

この状況で両者譲らず、"battle of wills"が続くことでほくそ笑むのはひとりプーチン大統領だという論評はその通りではないかと思います。


2025年2月28日金曜日

better angels

大統領に就任したらウクライナとロシアの戦争を24時間で終わらせる —— そう豪語していたトランプ大統領は、有言実行と言うべきか、停戦に意欲的な姿勢を示しています。(単に自己顕示欲の表れではないか、という批判もありますが。)

しかしながら、トランプ氏はウクライナ支援に積極的であったバイデン前政権の姿勢から180度の転換をしたようにも見え、ウクライナに対して鉱物資源と引き換えの軍事支援を交渉のテーブルに上げ、ゼレンスキー大統領を独裁者とまで呼びました。逆に、ロシアのプーチン大統領とは融和的な関係を見せているという状況です。

このアメリカの変節は西側諸国に少なからぬショックを与え、フランスのマクロン大統領らが会談を通じてトランプ氏を説得した模様ですが、その効果があったでしょうか。

「独裁者」発言については、そんなこと言ったかな、とまさかの発言否定という報道がありますが、今週に入ってからのトランプ氏は先週からはやや軌道修正した模様です。

オピニオン記事からの下記引用をお読み下さい。


On Wednesday, Trump confirmed he’d be sitting down with Ukrainian President Volodymyr Zelensky in Washington Friday to discuss an end to the war and sign the long-awaited mineral-rights deal.

That’s a welcome change, after a couple of weeks of back-and-forth sniping between the two leaders, with our prez even saying Ukraine “should never have started” the war and calling Zelensky a “dictator.”

(中略)

So it’s a very good thing, for Ukraine and the West at large, that Trump seems to now be listening to his better angels.
(Trump’s adjustment on Ukraine sends the right message to Putin. New York Post. February 26, 2025.)


ここで、


listening to his better angels


という言い回しが出て来ますが、"better angels"とはどういう意味合いなのでしょうか?

"angel"は「天使」のことですが、神の使者となって人間に神意を伝えたり、慈悲を施す存在であるというのが一般的な定義です。

その天使の中でもより良い(better)とされる"better angels"はどう解釈するのかということになりますが、天使の中にも堕天使と呼ばれるような悪の側に落ちるケースを考えると、"better angels"というのはその逆の善の側にある天使ということになるでしょうか。

この"better angels"という言い回しは英和辞典にはどうやら載っていないようなのですが、Merriam-Webster Dictionaryでは、


the part of a person's character or nature that is said to guide the person's thoughts and behavior


という定義と共に"better angels"の用例が挙げられています。

この定義からすると、"better angels"とはやはりその人の言動を(良い方向に)導くものであり、日本語でいうところの良心とかいうものに近いと思われます。

人間誰しも良心の咎め、悪意と良心のせめぎ合いというところがあるものですが、トランプ氏もようやく自身の良心に耳を傾けることができるようになったと!?

ウクライナへの侵略を開始したロシアが悪で、それに抵抗するウクライナは善である、という単純な2項対立の話ではありませんが、少なくともコンテクストとしては極端なロシア寄りの姿勢が目立っていたトランプ氏がまともになってきた、ということは西側の見方としてはあるかと。


2025年2月27日木曜日

off the wall

戦火の絶えることがないイスラエルのガザ地区ですが、トランプ大統領は就任後、ガザを米国が所有して経済開発などを行なうというアイデアを提示し、物議を醸していました。

そして最近になってトランプ氏がSNSに投稿した動画がさらに反発を招いているようです。AIにより生成された動画だそうですが、その内容はというと、米国による開発がガザ地区をまるでビーチリゾートのように変貌させ、その立役者たるトランプ大統領の黄金の立像が街中に立っているという、見る側としてはちょっと引いてしまうようなものです。


Trump's no stranger to off-the-wall posts himself (especially on Truth Social), and, well, he's at it again. This time, on Tuesday evening, he posted a truly bonkers video, seemingly made by generative AI, of Gaza being transformed into a Trump-ified resort town.

(中略)

One person called the video "the most disgusting, the most shameful, the most hideous public communication by a US President in living memory."
(Alana Valko. People Genuinely Cannot Believe This "Disgusting," "Nauseating," And "Offensive" Post From Donald Trump Is Real. Yahoo! News. February 27, 2025.)


動画には札束をバラまくマスク氏や上半身裸になってビーチで横になっているトランプ、ネタニヤフ両大統領などの画像が含まれており、甚だ奇怪な、また突拍子もないという印象を受けるものです。

今日取り上げる表現、


off the wall


がまさにその「突拍子もない」、奇妙な、という意味のフレーズですが、辞書には俗語表現として載っています。

"off the wall"が突拍子もないという意味になるのはどういう背景からでしょうか?

諸説あるらしいですが、壁に向けて打ったボールが跳ね返って(off the wall)、あらぬ方向に飛んで行き翻弄される様を指したという説明があります。

また別の説明によると、"wall"はサーフィンの高波のことで、こちらも波に乗ろうとしたところが跳ね返されたり波の勢いに乗れずで(off the wall)、翻弄されることからそのような意味になったというものです。

引用記事では、名詞を修飾する語としてハイフンで繋がった形になっていますが、


off-the-wall remarks/comments/joke/ideas/thoughts/questions


などといった用例があります。

2025年2月26日水曜日

commode

昨日の投稿で18金のトイレが盗まれたという事件の記事を取り上げましたが、もうひとつ取り上げたいと思った単語がありましたので、今日の1語とします。

記事を再掲します。


The one-of-a-kind, 215-pound, fully functioning commode was carried out of Blenheim Palace by the thieves in under 5 minutes in the predawn hours of Sept. 14, 2019, prosecutor Julian Christopher told a jury during his opening statement in Oxford Crown Court on Monday.
(Chris Nesi. Seat of power: Three men on trial for swiping $3.5M gold toilet from Churchill’s home. February 24, 2025.)


その1語というのは、


commode


という単語ですが、トイレの意味であることにお気づきでしょうか。

"commode"というスペルの単語、つまり接頭辞com-とmodeという語が結合したと見える単語がトイレの意味になるというのは不思議というか、ちょっと意外に感じますね。

実際、接頭辞com-とmodusというラテン語が結合したこの単語の元の意味は、便利な、とか、都合の良い、という意味です。この後説明するように、トイレは人間の都合に合わせるものではあるのですが。

ここでの接頭辞com-は強調の意味合いだそうですが、modusとは方法とかマナー、様式という意味です。最初は昔の女性の間で流行した大きな髪飾りを指す単語でしたが、その後、やはり女性の持つ沢山の衣装や小物などを入れておく引き出し付きの箪笥、それも装飾の施されたオシャレな箪笥のことを指すようにもなったということです。

その箪笥(commode)は以降恐らく、用途に応じて形態を変化させていったものと思われますが、手洗いのボウルを備えた食器棚にもなり、そういった家具を指す名称として定着したようです。さらには"commode"は、寝室に設えられる簡易トイレ(椅子の形状で、座面の下に排泄物を受ける容器がある)を指す名称にもなったということですから、言ってみれば何でもアリ、という感じもします。

養護施設などで使われる"commode"はやがて、おまる、尿瓶などの意味に拡張しますが、最終的にアメリカ英語では現代の腰掛けタイプの便座、つまり水洗式トイレを指す単語として定着しています。

当ブログでもこれまで、以下のようなトイレを意味する色んな単語を取り上げてきました。




ということで、新しく「トイレ」というタグを作りました!

2025年2月25日火曜日

can

2019年、イギリスのチャーチル首相の生家で、世界遺産にも登録されているブレナム宮殿から18金(!!)のトイレを盗んだ犯人の公判が行われたそうです。

トイレが18金とはなんという成金趣味かと思いますが、芸術作品として製作されたものらしいです。


Three men snatched an 18-carat-gold toilet worth $3.5 million from an English country mansion where Winston Churchill was born — and now they could be headed to the can, authorities say.

The one-of-a-kind, 215-pound, fully functioning commode was carried out of Blenheim Palace by the thieves in under 5 minutes in the predawn hours of Sept. 14, 2019, prosecutor Julian Christopher told a jury during his opening statement in Oxford Crown Court on Monday.
(Chris Nesi. Seat of power: Three men on trial for swiping $3.5M gold toilet from Churchill’s home. February 24, 2025.)


その価値、350万ドルとも言われる黄金の便座2019年9月14日未明に忽然と持ち去られたそうです。

さて、引用した記事に、


and now they could be headed to the can


というくだりがあります。

ここで使われている"can"は名詞ですが、アメリカ英語の俗語表現で刑務所の意味があります。日本語でいう「豚箱」というほどの意味合いかと思います。

また、"can"には同じく俗語表現で、トイレの意味もありますので、ここはシャレを効かせた単語のチョイスだと思われます。

缶("can")がこれらの意味に用いられるのはどういう背景があるのでしょうか?

手元にあるOxford Dictionary of Euphemisms (1996) によりますと、「豚箱」の意味は独房の狭いスペースを意味することから、また、トイレの意味はかつて使用の度に中身を捨てる必要があったブリキのバケツから来ているとか。


2025年2月24日月曜日

vertiport

先日ネット配信のニュース動画を見ていたら、東京都が「空飛ぶクルマ」の実証実験を2026年にも開始するということでした。早ければ2027年中にも商用運行を開始するとのことで、東京の空をクルマが飛んでいるのを目にすることになるかも、という話でした。

「空飛ぶクルマ」なんて子供の頃読んだ漫画に出て来る遠い未来のことだと思っていましたが、この1〜2年のうちに実現するとは驚きです。

そして今日ですが、同じように"flying cars"の現実味に関するアメリカ国内ニュースを目にしました。


By 2028, the city of Orlando, Florida, could resemble scenes from “Blade Runner” and “The Fifth Element” — with traffic from flying cars buzzing overhead.

Orlando International Airport this week revealed it has been seeking partners who can help it develop launch and landing pads for “Jetsons”-esque flying cars called a “vertiport,” reported ArcaMax.

The Greater Orlando Aviation Authority will put out bids for the project next month, according to the outlet.
(Chris Harris. Jetsons’-like flying cars could be a reality in Orlando by 2028: report. New York Post. February 22, 2025.)


こちらはフロリダ州のオーランド国際空港において、空飛ぶクルマが離着陸できる整備を行うという構想で、2028年までに実現という計画は東京より1年遅いですが、やはり空飛ぶクルマの実現を視野に入れているということです。

空飛ぶクルマの実現に必要なインフラのひとつが、


vertiport


というものです。

これは、"vertical"と"port"を組み合わせた、いわゆるかばん語です。

垂直離着陸のためのポートということになります。カタカナでベルティポート(また、バーティポート)と書いているものもあります。

"vertiport"という単語は辞書には見当たりませんが、辞書に載る日も近いのかもしれません。


2025年2月21日金曜日

sweat like a pig

本日ですが、今日の1語に取り上げる適当なニュースネタが見つかりませんでした。こういう日もあります。

こういう日のために、日頃目に留まった表現で面白いと思ったものを書き留めているのですが、そのストックの中から取り上げます。

取り上げるのは、


sweat like a pig


という表現です。ブタのように汗をかく、ということですが、大汗をかく、汗だくになる、という意味の慣用表現です。

この表現ですが、たしかアニメの字幕英語で使われていたのを見たのを書き留めたものと記憶します。


You're sweating like a pig.
(お前、汗びっしょりだぞ。)


みたいな感じだったと思います。

ところで、どうして「ブタのように」汗をかく、なのでしょうか?ブタは汗かきなのでしょうか?

どうやらそうではないらしいです。


If someone is sweating like a pig, it can mean they are perspiring a lot. But pigs don't sweat. In this case, a 'pig' is actually referring to pig iron which sweats as it's cooled.
(Pig idioms and expressions. ABC Education. February 1, 2019.)


ブタはそんなに汗をかく動物ではないそうです。では、"like a pig"とはどういうことなのかと言うと、ここでの"pig"とは"pig iron"のことで、鉄の原材料になる銑鉄というものを指すらしいのです。

この銑鉄を溶かして鋼にするそうですが、銑鉄の冷却の過程で生じる水分(sweat)のことを指して、"sweat like a pig"という表現になったのだとか。一体誰が言い始めたんでしょうか!?

ところで、"pig"が"pig iron"(鉄の原料)のことだというのはそう言われればそれまでですが、何でそうなるの?という疑問が出てきます。

研究社新英和大辞典で"pig"を引くと、"pig iron"の意味は、


鋳床に鋳型を並べた所が子豚の乳を飲む様に似ているところから


という興味深い解説があります。

金属加工の専門用語では、鋳床のことを"pig bed"というらしいのですが、その溝(ランナー)の沿う個々の銑鉄が乳飲み子の子豚に似ているということのようです。さらに、金属加工の専門用語でこの鋳型、溶銑の流れる道を"sow"というそうですが、その"sow"には雌豚の意味があることと関係があるようです。

字面だけからは想像もつかない、未知の世界を見た思いです。

それでは皆様、よい三連休を!

2025年2月20日木曜日

"check out"の意味

スーパーマーケットなどで購入した品物を客自身が精算する仕組み、いわゆる「セルフレジ」はかなり浸透しているように思われます。小生も品数が少ない買い物などではセルフレジのコーナーで済ますことがありますが、時間帯によっては長蛇の列になっていて閉口した経験もあります。有人レジの手際の良さとセルフレジのそれには当然差があるということもあるでしょう。そもそも店舗側のスタンスとして、有人レジを減らして人件費を削減したいということもあるだろうと思われますが、店舗内の混雑は顧客サービスの観点からは不満に直結する話でもあります。

以下の記事は米ウォルマートでの話です。


Some Walmart shoppers are grumbling about the retailer's self-checkout lanes.

The benefit of self-checkout is in the eye of the consumer. For every shopper who is upset there's no self-checkout lane to use – and long lines at registers – there's another one who is upset about having to use self-checkout and sometimes having to wait to do so.

Retailers face a difficult balancing act, said Santiago Gallino, an associate professor of marketing, and of operations, information, and decisions at the Wharton School of the University of Pennsylvania.

"Too few staffed registers can frustrate customers who prefer traditional checkout, while an over-reliance on self-checkout can introduce inefficiencies and revenue loss," Gallino told USA TODAY.
(Mike Snider. Walmart self-checkout: How retailer's DIY lanes don't check out with some shoppers. USA Today. February 18, 2025.)


セルフレジと有人レジのバランスをどう取るのか?ウォルマートも大体同じような問題を抱えていると思われます。

セルフレジを意味する、


self-checkout


という英語に格段の説明の必要はないでしょう。。

「チェックアウト」(check out)には購入した商品の精算をするという意味があるのはご存知かと思います。ホテルでのチェックアウトという言葉は日本語としても通じます。

ところで引用した記事のタイトルに注目です。ここでも"check out"という表現が使われています。


Walmart self-checkout: How retailer's DIY lanes don't check out with some shoppers


ここでの"check out"をどう訳したら良いでしょうか?

明らかに"self-checkout"の「チェックアウト」とは異なる意味合いで使われていると思われます。

"check out"という動詞句には様々な意味があることは辞書を見ても明らかですが、実のところ、この用例にぴったり合うような意味合いが見つからず・・・。(複数の辞書、オンライン、コーパス、等々あたり、久しぶりに難儀しました。こんなにあちこちを当たったには"double down"以来かも知れません。)

記事の内容に戻りましょう。

セルフレジにまつわる顧客視点での不満がテーマな訳ですから、


DIY lanes don't check out with some shoppers


という文が言いたいことは自ずと分かるというものです。つまり、この文の主語は「セルフレジ」であり、動詞"check out"に続く"with some shoppers"という部分がポイントです。文意は、セルフレジがイマイチ客に受け入れられていない、というようなことだと思われます。

それではそのような意味合いが"check out"にあるかというと、どの辞書を見てもそういう意味を載せていないのでこれはどうしたことか、と思ったのです。やや特殊な用法、あるいはアメリカ英語に特有の言い回しの類いだろうか、などと思案。

次なる手立てはコーパスです。恐らく同じような使われ方をしていると思われる以下のような用例(少し分かりにくいですが)がありました。


The filmmakers assert that Obama had a nose job ahead of his 2004 run for Senate, that his mother posed for naked photos when she was five weeks pregnant with him and that Bill Ayers nurtured Obama's career. I haven't seen the film, but that all checks out with me. Seems about right. I guess I kinda always assumed something like that, you know?
(Birthers Divided on Whether or Not to Get Behind Ridiculous)


共通するのは、


sth check out with sb


という構文です。ある物事(sth)が、ある人にとって(with sb)、正しく思われる、受け入れられる、しっくりくる、というような意味合いと思われます。

ここで、再び英和辞書で"check out"を引きます。少し頭の整理がついたせいもあってか、以下の意味合いが目に止まりました。


必要条件を満たす、性能テストに合格する
(研究社新英和大辞典)

(機械・人が)性能[能力]テストに合格する
(小学館プログレッシブ英和辞典)


セルフレジが顧客に受け入れられない(don't check out)という意味合いに近しいと言えます。

また、


To be verified or confirmed; pass inspection: The suspect's story checked out.
(American Heritage Dictionary)


to prove to be consistent or truthful
The description checks with the photograph.
—often used with out
The story checked out.
(Merriam-Webster Dictionary)


といった定義も今回の用法を説明するものかと思われました。

しかし、ここまで書いてきて思うのは、やはり、


sth check out with sb


という構文を成す用例とその訳、意味合いを辞書に載せても良いのでは、ということです。

2025年2月19日水曜日

PSA

記事の引用からどうぞ。


A California traveler has received a flurry of sympathy online after chastising an aisle seat occupant for refusing to get up so she could use the bathroom.

“You just gotta get up,” the user — who goes by @deetsontheeats — declared in the impromptu airline etiquette PSA taking off online.
(Ben Cost. Airplane passenger delivers furious PSA following seatmate’s inconsiderate move: ‘You can’t hold the row captive’. February 18, 2025.)


記事のタイトル、また本文に、


furious PSA 

the impromptu airline etiquette PSA 


などと出てくるのですが、この"PSA"というのが一体何の事なのか分からず、暫し考えてしまいました。記事の内容としては、飛行機の座席を巡る話で、窓側の席の客がトイレに行きたいのに通路側の客が立ち上がってスペースを空けてくれないから困る、というのは分かるのですが、では"PSA"は何を指すのかが分かりませんでした。

略語はコンテクストによって色々ありますから、"PSA"に関しても複数あります。

結論から言うと、"PSA"は、


Public Service Announcement


の略なのです。Merriam-Webster Dictionaryでは以下のように定義されています。


an announcement made for the good of the public


つまり、公共の利益につながる広告ということで、マナー向上などを目的とした啓発広告のことなんですね。

以下の用例はタイトルでは略語ですが、本文では"Public Service Announcement"と書いており、またコンテクストとしても分かりやすい例です。


The FDNY and FDNY Foundation are urging New Yorkers to never block fire hydrants with parked cars in a newly released Public Service Announcement (PSA).

It’s illegal to park within 15 feet of a fire hydrants. Seconds matter in an emergency, and blocking a hydrant could delay firefighters when responding.
(In new PSA, the FDNY reminds New Yorkers to never block fire hydrants. FDNY Foundation.)


最初の引用では、略語のみで、また広告というよりもSNSの投稿の話なので、分かりにくいといえば分かりにくいのですが、こうした苦情をSNSに投稿することがマナー意識を高める一種の啓発につながるという意味では、現代の"PSA"とも言えるのでしょう。



2025年2月18日火曜日

thrifting

告白しますと、小生は大変なけちん坊です。お金を使う時、勿体無い、といつも考えてしまいます。使わないで済む方法が無いか、安く済ませられないか、と考えてしまいます。

移動の際、駅一駅分くらいの距離であれば歩きます。自動販売機で飲み物は買いません。必要なら自宅から水筒を持参します。

ということで、以下の引用記事に出てくる倹約家のお話には大いに共感する部分があります。


A mom says she has saved $5,000 thrifting her son’s birthday and Christmas presents every year.

Natalie Joy Miller, 38, has always loved scouring second hand stores and even started collecting clothes for her son, Artie Allen, 5, when she was aged 16 — years before he was even born.

The mom-of-one says “pretty much all of his stuff” is second hand and she loves to find gems in thrift stores and occasionally online on Facebook Marketplace.
(I saved $5K on my son’s gifts by thrifting — he doesn’t need anything new. New York Post. February 17, 2025.)


記事の登場人物は、"thrifting"により年間5,000ドルあまりを節約したとあります。

"thrift"という単語はご存知でしょう。倹約、節約という意味ですが、どちらかというと良い意味でお金につましいことを指します。ケチ、吝嗇という日本語にはネガティブな意味合いがありますが、英語だと"stingy"が相当します。(小生の場合はこちらかもしれません。)なお、倹約、節約志向を表現するのに"frugal"という単語もあります。

上記引用記事の用例に見られるように、"thrift"には動詞としての意味もあって、


To shop in thrift stores, especially for clothing
(American Heritage Dictionary)


と定義されています。中古品、特に古着などを売っているお店は"thrift shop"、"thrift store"などと呼ばれます。新品ではなく、ユーズドで済ます、という発想ですね。

ところで、"thrift"の語源を紐解くと実に興味深い事実に行き当たります。

遡ること古ノルド語thrifaskという語から中期英語thrivenを経ているのですが、同語源の単語に"thrive"があるのです。

"thrift"と"thrive"、スペルも似ていますが、倹約と繁栄が同じルーツとは示唆に富む話ではありませんか!

"frugal"が果実(fruit)と関連があるように、"thrift"とは倹約により得た蓄えという意味があり、浪費を意味する"spendthrift"とは蓄えを使ってしまうということです。

2025年2月17日月曜日

plan B

アメリカの大学構内に経口避妊薬の自販機設置、というニュース記事を見かけました。


The University of Connecticut started providing Plan B through new vending machines on campus in early February following the passage of a 2023 law expanding contraception access in the state.

The state law — introduced after the overturning of Roe v. Wade — allows licensed pharmacists to prescribe contraception at pharmacies across the state following a brief training program and also permits over-the-counter medications like the emergency contraceptive Plan B to be sold in vending machines.
(Caitlin McCormack. UConn installs emergency ‘Plan B’ contraception vending machines on campus. New York Post. February 16, 2025.)


日本の大学で避妊薬の自販機を設定しているようなところはあるでしょうか?(多分無いと思いますが。)

記事で引っ掛かったのが、


started providing Plan B through new vending machines on campus


というくだりの"Plan B"です。読み進めていくと、


over-the-counter medications like the emergency contraceptive Plan B 


とあり、大文字で始まる"Plan B"とは経口避妊薬そのものを指していると分かります。

果たして"Plan B"とは経口避妊薬(一般名レボノルゲストレル)のブランド名なのでした。

ところで、一般的に"plan B"というと、想定していた状況に対する対策がうまく行かないことが分かったときに取る「次善策」という意味で用いられます。

つまり「プランA」がダメだったので、「プランB」に切り替える、というようなコンテクストで用いられるもので、英語においても、"plan B"とは、


an alternative plan of action for use if the original plan should fail
(Merriam-Webster Dictionary)


と定義されているところです。

経口避妊薬"Plan B"は、別名"morning-after pill"とも呼ばれ、避妊をせずに性行為を行った後に服用するもので、日本語では緊急避妊薬と訳されます。

こういう状況における「プランA」は恐らくはきちんと事前に避妊対策をしておくということなのでしょうが、野暮を承知で言えば、それがうまく行かなかった時のための次善策としての"Plan B"を避妊薬の商品名にするとは、なかなかしたたかなマーケティングのようにも思われます。

大学の構内で避妊薬の自販機を設置するというのも驚きですが、ご存知のように避妊や中絶に係る女性の権利(birth control)にまつわる議論は米国においては特別なものがあります。特に2022年、女性の中絶する権利を認めたRoe v. Wade判決が覆されたことを受け、リベラルな州では独自の州法により女性の権利擁護を図っており、上記引用におけるコネチカット州もそのひとつです。

中絶に慎重な立場を取る共和党は"Plan B"の流通、使用拡大を問題視しており、こうした州の取り組みと政府の対立が浮き彫りになりそうです。

今日の1語の投稿のラベル「商標」は、商標名が一般名詞化した英単語に付けてきたものです。"Plan B"は一般名詞の表現が商標に用いられているもので、言わば逆のパターンなのですが、興味深い例として同じラベルとしました。

2025年2月14日金曜日

loosie

「バラ売り」を英語で何と言うかご存知でしょうか?

答えは、


loosie


です。

では、記事の引用をどうぞ。


New York City bodegas are selling “loosie”-style eggs — à la notorious single cigarettes — as bird flu shortages send the prices of cartons skyrocketing, The Post has learned.

Fernando Rodriguez, 62, owner of Pamela’s Green Deli in the Bronx said many of his customers simply can’t shell out $10.99 for a full carton of the beloved breakfast food.

“These people don’t have enough money to buy a dozen eggs, so I have to sell them separately,” said Rodriguez, 62. “When I saw how high the price of eggs has become, we decided to break it down into small bags.”
(Can’t shell it out! NYC bodegas selling ‘loosie’ eggs as bird flu causes prices of cartons to skyrocket. New York Post. February 12, 2025.)


鳥インフルエンザの影響で卵の価格が高騰しているアメリカでは、1パック(1ダース)が10.99ドル(1,600〜1,700円!)もするため、とても買えないという客が続出しているそうです。

そうした人のためにバラ売りの卵が重宝されているという話なんですが、この"loosie"という表現は元はバラ売りされる紙巻きタバコの1本を指すものだったそうです。

American Heritage Dictionaryには"loosie"のエントリがあります。


A cigarette sold individually rather than as part of a pack, often in violation of local or state laws.


俗語表現となっていますが、"loosie"はそのスペルから想像がつくように、"loose"という形容詞から来ています。形容詞の"loose"には、束ねられていない、包装されていないという意味があり、故にバラ売りという意味になるんですね。


Not bound, bundled, stapled, or gathered together
(American Heritage Dictionary)


よって、"loose milk"は量り売りの牛乳のことを指し、"loose change"は小銭のことを指します。



2025年2月13日木曜日

bat a thousand

トランプ政権下で政府の効率化、ムダの排除を掲げて人員削減を進めるイーロン・マスク氏。

このところの報道では国際援助を管轄するUSAIDの解体を巡って議論が喧しいところです。

USAIDの活動による支援が法外な額に上ると批判が展開されていました。矛先になったのはガザ地区へ送られる避妊具の総額が5,000万ドルという数字でしたが、どうやら間違いだったようです。


Elon Musk acknowledged Tuesday that there might not have been a federal plan to spend $50 million on condoms for Gaza — two weeks after the White House press secretary told the false story at an official briefing and more than a week after the president baselessly doubled the phony figure to $100 million and said the condoms were going to Hamas.

“Some of the things that I say will be incorrect, and should be corrected,” Musk, the billionaire businessman who is leading a Trump administration initiative they call the Department of Government Efficiency, said when a reporter told him the Gaza story was wrong. “So, nobody’s going to bat a thousand. I mean, any – you know, we will make mistakes, but we’ll act quickly to correct any mistakes.”
(Daniel Dale. ‘Some of the things that I say will be incorrect’: Musk backs away from false claim of $50 million for Gaza condoms. CNN. February 12, 2025.)


引用した記事によれば、ホワイトハウスの大統領執務室で記者に囲まれ問い質されたマスク氏は誤りを認め、誰にでも間違いはある、と釈明したようです。

マスク氏の発言中、


So, nobody’s going to bat a thousand.


というくだりがあります。これは、誰も完璧ではない(間違えることもある)、という意味の慣用表現です。

"bat a thousand"というフレーズは、完璧を意味します。

"bat"(バット)からお分かりのように、このフレーズは野球から来ています。

"a thousand"(1,000)は打率のことなんですが、10割、つまり全打席でヒットという意味で、故に「パーフェクト」の意味になります。

何故、数字の1,000なのでしょうか?

通例、野球の打率は小数点以下第3位までの数値で表し、例えば、2割5分1厘などと言います。

数値にすると、0.251です。10割というのはまずあり得ませんが、数値にすると1.000となりますが、1,000(one thousand)に見えることから、"bat a thousand"の表現が定着したそうです。


2025年2月12日水曜日

shill

今日の1語は、"shill"です。

では、記事の引用をどうぞ。


McGovern (D-Mass.) had laced into Johnson (R-La.) over his suggestion that the Dems walked away from the negotiating table on efforts to avert a government shutdown.

(中略)

The Massachusetts Democrat had claimed that Dems haven’t ditched negotiations, and countered that the GOP isn’t “interested in hearing from us.”

“First of all, he’s full of s‑‑t. He’s a liar. And he’s a total shill for Donald Trump and Elon Musk,” McGovern said, the Hill reported.  
(Ryan King. Speaker Mike Johnson savages Dem Rep. Jim McGovern who called him a Trump ‘shill’ – in the most Southern way. New York Post. February 11, 2025.)


引用した記事の内容は、アメリカ議会で民主党、共和党の対立が起きているというものです。

互いを批判している訳ですが、後半部分では民主党議員が共和党のジョンソン議員を、


he’s a total shill for Donald Trump and Elon Musk


と罵ったとあります。

この"shill"という単語を知らなかったので辞書を引くと、


さくら、おとり、ちょうちん持ち
(ランダムハウス英和辞書)


とありました。

「ちょうちん持ち」とは面白い日本語です。久しぶりに広辞苑を引きました。暗い夜道を照らすため、ちょうちんを持って先導する人のことを指すのですが、それが転じて、「他人の手先に使われ、また頼まれもしないのに(!)他人のためにその長所などを吹聴する」(広辞苑第三版)人を蔑んで言う表現になりました。

つまり、民主党議員はジョンソン議員をトランプ大統領やマスク氏に使われるだけの手先だと罵った訳です。

"shill"の語源はよく分かっていないそうですが、"shillaber"という単語が約まったものらしいです。この"shillaber"は人の名前(苗字)でもあるそうですが、ちょうちん持ちのShillaberさんという人がかつていた、という訳でもないようです。

元々の意味はギャンブルなどで賭け金を出させ釣り上げるために、さも勝っているように見せかけてカモを集める囮役、「さくら」を指すものだったそうです。


2025年2月11日火曜日

true form

ここ数日のアメリカのニュース記事を見ていますとスーパーボウルの話題一色のようです。

アメフトについては全く詳しくなく、かつて米国に短期滞在した際、日曜の午後などは勤務先の同僚に誘われて自宅を訪問、テレビ観戦などしたこともあるのですが、ルールが分からず、私にとってはテレビの前でバドワイザーを飲みながら野菜スティックをかじったという記憶しか残っていません(笑)

さて、そのスーパーボウルの試合ではフィラデルフィアを本拠とするイーグルスが勝利したそうなのですが、ファンの喜びようを伝える記事からの引用です。


Eagles fans in Philadelphia were in true form following their team’s 40-22 win over the Chiefs to win Super Bowl 2025.

Hundreds of fans flocked to the city’s Broad Street to celebrate the franchise’s second Super Bowl title.

After the city decided to not grease the poles in the area, according to the Philadelphia Inquirer, some decided to climb them, including one who sat atop a traffic light on the corner of Broad Street and Pine Street.
(Jared Schwartz. Philadelphia descends into chaos as rowdy Eagles fans celebrate Super Bowl 2025 win. New York Post. February 9, 2025.)


引用した記事に、


in true form


という表現が出てきます。これは慣用表現で、"true to form"というフレーズでも用いられるのですが、


behaving or proceeding in the usual and expected way
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味合いで、


いつもと同じで、予想通りで、例のごとく
(ランダムハウス英和辞書)


という日本語に訳されます。"form"(行動パターン)に忠実な、合致している(true)という字句通りの訳とも言えます。

例のごとく、という言い回しからは、お決まりの~、やはり、またか、という感が滲んでいますが、人の悪い癖、行動パターンについて用いられることが多いものです。つまり、「地が出た」ということなのです。

イーグルスのファンはビッグイベントでのひいきチームの勝利に歓喜するあまり、繁華街で喜びを爆発させたようですが、どんちゃん騒ぎはエスカレートし、往来のトラックの屋根に登ったり、信号機によじ登ったりする人で騒然となったようです。

それもこれも毎年繰り返される光景なのでしょう、傍から見れば、いつものこと、「またか」という半ば呆れられもする話だと思われます。"true form"に込められた意味合いはそんなところでしょうか。

日本では、某球団が優勝したあかつきにはドブ川に飛び込むことも厭わない「アレ」を思い出します。


2025年2月10日月曜日

daylight

石破首相が米国を訪問、トランプ大統領と初の首脳会談を行いました。

心配された会談の行方・・・ですが、いきなり関税をふっかけられることもなく、石破首相の面目が丸潰れになるような扱いもなく・・・。まずまずの成果に政府関係者は胸を撫で下ろしていることでしょう。(SNSでは色々と貶されているようではありますが。)

首脳会談について報じた記事をいくつか斜め読みしたのですが、ポリティコ紙の記事の一部に以下のようなくだりがありました。


Amid fast-growing doubts about America’s reliability as an ally, Trump downplayed any daylight between the U.S. and Japan, speaking glowingly about his counterpart and the importance of the bilateral relationship. Trump began an East Room press conference by presenting Ishiba with a photo of them in the Oval Office earlier, then declared the U.S. “totally committed” to Japan’s security and vowed to strengthen economic ties.
(No tariffs? Trump plays nice with Japan’s new leader. Politico. February 7, 2025.)


アメリカファースト(米国第一主義)を公言して憚らないトランプ大統領ですが、中国や北朝鮮、ロシアなど周辺国の脅威が増す一方、有事の際にアメリカは同盟国として日本を守ってくれるのかとの懸念は常にあるところです。首脳会談では同盟国としての位置付けを再確認するということも最重要課題のひとつとしてあった訳ですが、こちらも取り敢えずは再確認が果たせたということのようです。

ところで、記事では、


Trump downplayed any daylight between the U.S. and Japan


と出てきます。"daylight"という表現に注目します。

"daylight"とは日光、昼の光のことですが、


a perceptible space, gap, or difference
(Merriam-Webster Dictionary)


という意味があるんですね。

認識の差とかギャップという意味合いでも使われるのですが、記事と同じようなコンテクストの例文が辞書に見えます。


denied there was any daylight between the two governments' positions


ランダムハウス英和辞書では、


(密着すべき2つの物の間の)はっきり見えるすき間


という定義があります。「密着すべき」ところがすき間がある、ということでそこから光が漏れてくるのが見える、故に"daylight"なのでしょうか。

認識の差異、ギャップという意味合いでこの"daylight (between) 〜"という表現が使われるのは政治のコンテクストで多いようで、ちょっと検索すると最近の報道記事でも多数の用例を確認できます。


Speaker Mike Johnson on Monday celebrated President Donald Trump's weekend trade war threat against Colombia, adding there will be "no daylight" between Congress and Trump on his use of economic sanctions to force countries to repatriate nationals who immigrated illegally into the U.S.
 (Meredith Lee Hill. Johnson vows ‘no daylight’ between Congress and Trump on tariff-immigration threats. Politico. January 27, 2025.)


"daylight"の意外な意味(こんな意味もあったの?)でした。

2025年2月7日金曜日

bullpen

ドジャースの大谷翔平選手の銀行口座から、不正送金により1700万ドルという多額のお金を騙し取った容疑で逮捕起訴された元通訳の水原被告に懲役57ヶ月の有罪判決というニュースです。


Shohei Ohtani’s former interpreter Ippei Mizuhara went from the dugout to the bullpen on Thursday.

Judge John W. Holcomb sentenced Mizuhara to 57 months in jail and ordered him to pay $18 million in restitution.

He will report to prison on March 24.
(Josh Kosman. Ippei Mizuhara, Shohei Ohtani’s ex-interpreter who stole $17 million from Dodgers star, sentenced to 57 months in jail. New York Post. February 6, 2025.)


米球界を揺るがした大事件ですが、引用記事の冒頭で、


Ippei Mizuhara went from the dugout to the bullpen on Thursday


とあります。判決が降った木曜日(米国時間)のことを言っているものですが、"bullpen"という単語に注目です。

カタカナでも「ブルペン」と言い、野球ファンならその意味するところは交代予定のピッチャーがウォームアップをするスペースのことだというのは説明の必要も無いでしょう。

ここでは水原被告が"bullpen"に向かった、と言っている訳ですが、"bullpen"には野球の用語の他、留置場、刑務所の意味があるということを知りませんでした。

"bullpen"とはそもそも牛の囲い場を指すのですが、


A temporary holding area for prisoners, as in a courthouse
(American Heritage Dictionary)


という意味があります。野球用語としての「ブルペン」は後になって付け加わったようです。

牛の囲い場、また囚人の収容所がピッチャーのウォームアップの場所を意味するようになったというのは若干の飛躍のようにも思われます。実際のところ、控え投手がウォームアップする場所を何故「ブルペン」と呼ぶようになったのかははっきりしないようです。

Baseball Almanacのサイトによれば諸説あるそうで、かつて控え投手がウォームアップをする辺りのフェンスには決まって掲げられていたBull Durham Tobaccoというタバコの広告に因むという説が紹介されています。


2025年2月6日木曜日

sound out

今日の朝刊、1面の見出しで最初に目に入ったのが、ホンダと日産の経営統合が白紙撤回、というニュースです。

海外でも関心は高いと見え、ロイターの記事を読みました。


TOKYO, Feb 5 (Reuters) - Nissan looks set to step back from merger talks with rival Honda, two sources said on Wednesday, calling into question a $60 billion tie-up to create the world's no.3 automaker and potentially leaving Nissan to drive its turnaround alone.

Talks between the two Japanese automakers have been complicated by growing differences, according to multiple people familiar with the matter, all of whom declined to be named because they were not authorised to speak to the media.
(Nissan set to step back from merger with Honda, sources say. Reuters. February 6, 2025.)


統合により世界第3位のメーカーが誕生すると期待されましたが、お互いの思惑にギャップがあったということでしょうか、呆気なく萎んでしまった印象があります。

恐らくは協議が進むにつれて両社の認識のズレが少しずつ見え始めたものと思われますが、決定的な要因と思しき点については以下のくだりがあります。


Reuters reported earlier that Nissan could call off talks after Honda sounded it out about becoming a subsidiary. Nissan baulked as this was a departure from what was originally framed as a merger of equals, one of the people said.
(ibid.)


邦紙でも読みましたが、ホンダが日産を子会社化する、つまり傘下に置くという提案に日産が反発したというのが事の次第のようです。

記事では、


Honda sounded it out about becoming a subsidiary


とありますが、ここで使われている"sound out"が今日取り上げる表現です。

ここでの"sound"は音、サウンドの意味ではなく、


水深を測る、(海底などを)探査する


という意味で、語源も異なる別の単語です。

"sound out"という動詞句は、


相手の考えを当たってみる、腹の内を探る


という意味合いで用いられます。

記事での用法からお分かりのように、


sound A out (about, on 〜)


のようなパターンで用いられることが多く、〜について、A(相手)に打診する、という意味になります。

日産にしてみれば、対等だと思っていたところが、ホンダの姿勢は日産を傘下に収める提案だと分かって、格下に置かれるとあってはとても承服できないということになったのでしょう。


2025年2月5日水曜日

lakh

米・ペンシルベニア州で卵が大量に盗まれるという事件があったそうです。盗まれたのは10万個に上る卵で、総額にして4万ドル相当。

鳥インフルエンザ多発などを背景に卵の価格は高騰していることが背景にあるようです。


Pennsylvania state police are scrambling to find the thieves who poached 100,000 organic eggs worth an estimated $40,000, officials say — as the nation grapples with the dreaded egg-flation.

The thieves cracked open the distribution trailer at Pete & Gerry’s Organics LLC, in Greencastle, on Saturday night, and made off with the eggs — leaving the company shell-shocked, cops said.
(Ronny Reyes. 100K eggs worth $40K poached from Pennsylvania business as nation scrambles with egg-flation: police. February 4, 2025.)


同じ盗難事件を伝える別記事の引用です。


Thieves stole about one lakh eggs from a distribution trailer in Pennsylvania, authorities told CNBC. According to the report, the theft took place around 8:40 pm at Pete and Gerry’s Organics LLC in Greencastle, police said in a report. The eggs are worth about $40,000.
(US: 1 lakh eggs worth $40,000 stolen in Pennsylvania amid nationwide shortage: Report. Hindustan Times. February 5, 2025.)


この記事では盗まれたのは、


one lakh eggs


とありますが、"lakh"って何だ!?となってしまいました。

ただの不勉強なのですが、"lakh"は10万を意味する単語で、英和辞書にも載っているものです。

"one lakh" (1 lakh) で10万(個)です。

ヒンディー語から来ている単語ですが、上記記事のソースがHindustan Timesということで納得。

"lac"というスペルもありますが、10万ルピー、もしくは非常に大きい数、を意味する英単語になっているものです。

2025年2月4日火曜日

de minimis

トランプ大統領による貿易相手国への関税引き上げが次々と発動されています。

その一環で、これまで非課税であった少額の輸入品へも課税することになったと報じられています。


President Donald Trump will close a loophole that allows online retailers to send small packages to the U.S. without paying a tax as part of his trade tariffs clampdown - a move that could have an impact on the wallet of everyday Americans.

Under the “de minimis” exemption, a longstanding rule that applies to packages entering the U.S. worth under $800, retailers overseas are allowed to sell products at lower prices by shipping them straight to consumers, bypassing domestic warehouses.

The loophole is commonly used by online Chinese retail giants such as Shein and Temu. It has allowed the brands to sell goods at extremely cheap prices and seen their popularity grow in recent years.
(Rhian Lubin. What is the 'de minimis exemption' to tariffs and why its end could have a huge impact on your wallet? The Independent. February 3, 2025.)


"de minimis"と呼ばれる例外ルールの下、800米ドル以下の輸入品はこれまで非課税でしたが、この例外を無くすというものです。

"de minimis"はラテン語です。

ラテン語minimisは、スペルから想像が付くと思いますが、最小という意味で、deは英語ではof、あるいはaboutに相当する前置詞ですから、"de minimis"の意味するところは、最小のものについて、ということになります。

Merriam-Webster Dictionaryによると、この"de minimis"という表現は実のところ、以下のラテン文、


de minimis non curat lex 


に由来しており、その意味は英文では、


"the law does not concern itself with trifling matters"


となります。

つまり、最小(些少)のものに対しては気にしない(敢えて取り沙汰すことはしない)、という意味です。


lacking significance or importance : so minor as to merit disregard
(Merriam-Webster Dictionary)


法律のコンテクストから生じた表現ですが、貿易関係や経済の用語として用いられることの多い表現のようです。カタカナで、「デ・ミニミス」(また、デ・ミニマス)規定などと書かれることもあります。



2025年2月3日月曜日

not worth the paper it’s written on

先日も取り上げたところですが、中国発の人工知能(AI)、ディープシークが突如として躍進、米国ハイテク株の急落を招くなど、市場を揺るがす事態となっていますが、その実力のほどはメディアでも様々に報じられており、毀誉褒貶相半ばのように見受けられます。

アプリのダウンロード数では首位に立ったようですが、中国製ということではやはりセキュリティやプライバシー保護の観点での懸念が拭えません。

CNBCの記事によれば、TikTokのようにアプリ利用の禁止になるのも時間の問題と言われているようです。


Matt Pearl, a special advisor to the deputy national security advisor at the National Security Council in the Biden administration and now the Strategic Technologies Program director at the Center for Strategic and International Studies, said DeepSeek's privacy policy implies that people have control over what is collected, but it should induce alarm.

"DeepSeek's privacy policy is not worth the paper it is written on," Pearl said. DeepSeek is subjected to PRC laws and anything entered into the app is fair game. Through keystroke patterns, a DeepSeek user can be tracked across all devices, information gathered from advertisers, and DeepSeek could also seek to leverage cameras and microphones, according to Pearl.
(Kevin Williams. Chinese AI app DeepSeek was downloaded by millions. Deleting it might come next. CNBC. February 2, 2025.)


記事ではセキュリティ専門家のコメントで、


DeepSeek's privacy policy is not worth the paper it is written on


と引用されています。

ディープシークアプリにも一応のプライバシーポリシーは規定されているものの、その内容に実効性は無い、というのが専門家の見解です。

この、"not worth the paper it's written on"というのは慣用表現です。Merriam-Webster Dictionaryでは以下のように定義されています。


not worth the paper it's written/printed on
idiom
: not of real value : not legally valid


それが書かれている(印字されている)紙の価値も無い、とは、紙自体にもそんなに価値が無いという前提からすれば、「紙ほどの価値も無い」、「紙の価値すら無い」ということであり、ある意味強意表現とも言えます。

書面や契約者について、日本語で「紙屑同然」と言ったりしますが、そのニュアンスに近いでしょうか。


2025年1月31日金曜日

black box

米首都ワシントンD.C.近郊で、カンザス州ウィチタからのアメリカン航空機が米軍ヘリコプターと空中衝突するという事故が発生しました。航空機はレーガン・ナショナル空港の到着を目前にポトマック川に墜落、60名以上の乗員乗客の安否はほぼ絶望視されているという痛ましい事故となってしまいました。

現場付近、ワシントンD.C.の上空は多くの飛行機が飛び交う過密地域ですが、事故の発生原因の解明はこれからというところです。

さて、飛行機事故の原因を調査する上で鍵となるのがフライトレコーダーです。

別名、「ブラックボックス」(black box)ですが、まだ回収されていないとのUSA Today紙の報道です。


As the recovery operation continued Thursday after a commercial airliner collided with an Army helicopter near the nation's capital, federal aviation officials said they had not yet recovered the black boxes from the aircrafts.

The National Transportation Safety Board (NTSB), the lead agency handling the deadly crash, held a briefing Thursday afternoon. NTSB member Todd Inman said "We feel comfortable and confident" that the boxes would be recovered.

The fatal crash took place just before 9 p.m. Wednesday when American Airlines Flight 5342 attempted to land and collided in midair with a Black Hawk trying to land at the Ronald Reagan Washington National Airport (DCA) in Arlington, Virginia.
(Natalie Neysa Alund. What is a black box on a plane? What to know after AA Flight 5342 crash with helicopter. USA Today. January 30, 2025.)


この記事では"black box"について詳しく解説しており、興味深く読みました。が、そのうち、なぜ「ブラックボックス」と言うのだろうか、という疑問が湧いてきました。

手元の辞書などを引いてみましたが、特にそれらしい解説は見当たりません。

ネットの検索を頼ってみますと、いわゆる「ブラックボックス」はオーストラリアで誕生したそうです。


In 1954 Dr David Warren first came up with the idea of a device that would record not only flight data but also voices and other sounds in aircraft cockpits immediately prior to a crash.

The prototype he designed in the late 1950s met with indifference in Australia but was greeted with enthusiasm elsewhere in the world.

Today flight recorders are mandatory on all major aircraft throughout the world and have made a huge contribution to air safety.


USA Today紙の記事や上記のサイトには「ブラックボックス」そのものの写真がありますが、それはブラックなどではなく、明るいオレンジ色のものです。これは事故現場から回収する際に見つけ易いようにということで、言われてみれば当たり前なのですが、"black box"という名称が益々不審に思われます。

そうこうしていると、以下のような解説を見つけました。


How the term was coined is a little diffuse. Some people believe it’s due to the first prototypes used by the RAF (Britain’s Royal Airforce) being black. Those first flight recorders, back in the 1940s, were black.

Other versions, however, opt for the theory of systems’ standpoint, in which the black box is an element receiving input and producing a series of responses. This is where the name ‘black box’ would’ve originated from.
(What is the black box of an aeroplane? Grupo One Airのサイトより引用)


この解説によれば、"black box"という名称の由来ははっきりしない部分があるものの、一説には英空軍の飛行機に装備されていたプロトタイプが黒かったことに因むということです。

英空軍の飛行機などに装備された通信機やナビゲーションシステムなどは、万一敵の手に渡ることなどを恐れて、目立たないよう黒い筐体(「ブラックボックス」)に収められていたということらしいのですが・・・。

時代が進み航空機に設置が義務付けられ、色も見つけ易いように明るいオレンジ色塗装になっても、"black box"という言葉がそのまま残っている、という話です。


2025年1月30日木曜日

promoted outwards

当ブログの投稿にはタグには「クビ!」というものがありまして、クビ(解雇)を意味する英語表現を取り上げています。

久しぶりにそのコレクションに追加される表現に出会いました。

その表現ですが、


promoted outwards


というものです。


Bernard Arnault, CEO of LVMH and the world’s fifth richest man, has coined a new phrase for those who are being laid off — “being promoted outwards, so to speak.”

(中略)

The French billionaire made the “promoted outwards” comment while discussing social media company META’s decision to lay off low-performing employees, according to Fortune.

Arnault, 75, claimed that those who lost their jobs are actually being “promoted” to better jobs at different companies.
(Shane Galvin. World’s 5th richest man Bernard Arnault coins new phrase for being fired: ‘Promoted outwards’. New York Post. January 29, 2025.)


"promote"は昇進、"outwards"は外部に(向かって)、という意味ですから、勤め先外へ昇進させられる、というのが字義通りの意味になります。

現勤務先よりもより良い外のポジションに昇進、とはその実際のところはどうか置くとして、皮肉な表現です。

以前取り上げた"manage out"に近い表現にも思われます。

私もそろそろ"promoted outwards"されそうな感が?!


2025年1月29日水曜日

a shot across the bow

人口知能(AI)における中国の台頭を予感させる出来事がありました。

中国発のAI「ディープシーク」は、米国のOpen AIのチャットGPTに勝るとも劣らない性能をより安価に提供することができるらしいということなのですが、このような市場評価を受けて、AIの高性能チップを供給するNvidiaの株価が急落しました。同社は1日にして時価総額90兆円以上を失ったとされ、米国のハイテク関連株も大打撃を受けたと報道されています。


The release of Chinese AI app DeepSeek has spooked Wall Street as technology investors fear that American companies are falling behind in the race to develop super-intelligent computers.

Those fears have also reached Washington, D.C., where lawmakers of both parties have united around a policy of containing Chinese tech development. Trump administration officials said Monday that the U.S. is failing at that goal.

“DeepSeek R1 shows that the AI race will be very competitive,” wrote David Sacks, the Trump administration’s AI and crypto czar, on X on Monday.
(Why DeepSeek is a Chinese shot across Trump’s bow. Market Watch. January 28, 2025.)


トランプ政権は、TikTokの利用禁止措置に始まり、 AIに使われるチップの中国への輸出禁止、また対中国関税の引き上げなど、中国との対決姿勢を鮮明にさせていますが、今回の「ディープシーク」によるショックは米中のAI戦争を予感させます。

引用した記事のタイトルに着目しましょう。


Why DeepSeek is a Chinese shot across Trump’s bow


とありますが、ここで使われているのは、


a shot across someone's bow(s)


という慣用表現です。

その意味は、


a warning to not do something or to stop doing something
(Merriam-Webster Dictionary)


というもので、


計画の実行を思いとどまらせるための警告
(ランダムハウス英和辞書)


という意味です。

ここで"bow"とは船の舳先のことです。敵対する船舶の舳先に砲撃することは、相手の進行を阻むものであり、戦闘開始の意思表示に他なりません。つまり、警告射撃、ということになります。

「ディープシーク」の一件は、トランプ政権の対中国政策に対する警告射撃、すなわちアメリカがその気なんだったらこっちも考えがあるよ、というような感じでしょうか。


2025年1月28日火曜日

nakedly illegal

第47代大統領に就任したトランプ氏ですが、移民政策、関税等、次々と施策を実行に移していると報じられています。

人事に関しては、いわゆる多様性(DEI)推進からの決別を明確に打ち出してこれらのポストを廃止、また関係省庁の監察官(inspector general)を次々とクビにしたと報じられており、「独裁者」ぶりを発揮しているようです。


Norm Eisen explained this weekend how he believes Donald Trump — during the president’s first week back in the White House — is fulfilling his campaign promise to act like a “dictator.”

Trump told Fox News’ Sean Hannity in December 2023 that he’d be authoritarian in nature only on “day one” of his return to office.

But Trump has “carried that forward through the entire week,” Eisen, the former Obama White House ethics lawyer, told MSNBC’s Jen Psaki.

Trump’s Friday overnight firings of independent inspector generals “is a nakedly illegal action,” argued Eisen, who noted how they appeared to flout federal law of Congress requiring 30 days notice of and explanation for such a dismissal.
(Lee Moran. Ex-White House Ethics Lawyer Accuses Donald Trump Of ‘Nakedly Illegal Action’. Huffington Post. January 27, 2025.)


果たしてトランプ氏の暴走を止めることができる人はいるのでしょうか?

監察官の解任人事については、


nakedly illegal action


と批判されていると記事にありますが、ここで使われている"nakedly"という副詞を取り上げたいと思います。

"naked"とは、裸の、という意味ですが、この言葉と"illegal"(違法、不法)という単語が結びつくというのはちょっと意外に感じられます。

辞書で"naked"を引いてみると、衣服を身に着けていないという意味での「裸の」という意味合いの他、むき出しになっている、露出している、といった意味が続きます。こうした、物質に対して使われる形容の他に、


包み隠しのない、率直な、露骨な
(ランダムハウス英和辞書)

Being without addition, concealment, disguise, or embellishment
(American Heritage Dictionary)


といった意味もあることに着目です。

このような意味合いは、概念的なもの、考え方や感情といったものについて、それらが露わであり、また隠されることもなくむき出しであるということを表すのに使われています。

よって、"nakedly illegal"とは、明らかに違法である、という解釈になるかと思いますが、トランプ氏が自身が下した人事上の裁定を違法とも思わず、またそれらを敢えて隠そうともしない、という批判が滲んでいるとも解釈できます。

コーパスを検索してみると、"nakedly"が修飾するものにこうした感情やイデオロギー的な概念が来る用例として、


nakedly political
nakedly emotional
nakedly racist
nakedly aggressive


など多数認められます。


2025年1月27日月曜日

tentpole

コストコが店舗のフードコートで提供しているコーラを、ペプシからコカコーラに切り替えると発表したようです。念の為、アメリカの話です。(コストコに行ったことがないので知らないのですが、日本のコストコでもフードコートがあるんでしょうか。)


In a reversal of the cliché, Costco announced that soon it will no longer serve Pepsi products at its food court, so hopefully Coke is okay.

(中略)

The company switched from Coca-Cola to Pepsi products in its food courts in 2013 to maintain the price of its tentpole $1.50 hot dog combo, according to CNN.

Costco CFO Gary Millerchip said in 2024 that, "the $1.50 hot dog price is safe."
(James Powel. Costco confirms switch of food court sodas from Pepsi to Coca-Cola. USA Today. January 26, 2025.)


たかがコーラ・・・、という気もしますが、こだわりのある方にはペプシとコカコーラではやはり違うと聞いたことがあります。実のところ、コストコは2023年にコカコーラからペプシに切り替えた経緯があるとのことで、今回の変更はまた元に戻るということになります。

記事では、


to maintain the price of its tentpole $1.50 hot dog combo


という説明があります。

ここで使われている"tentpole"という単語を知りませんでした。

手元にある辞書では研究社新英和大辞典が("tent pole"というスペルで)、テントの支柱とだけ載せているようなのですが、Merriam-Webster Dictionaryのサイトでは、


a big-budget movie whose earnings are expected to compensate the studio for its less profitable movies


という定義がされています。ネットでの検索などからも、テレビや映画の作品に関連しており、いわゆる興行収入が制作コスト、特に他の振るわない作品のコストもカバーしてくれるようなヒット作品のことをいうようです。

つまり、金のなる木、営業の屋台骨、とでも言うべき位置付けというところでしょうか。

テントの支柱と、「屋台骨」という日本語とは共通項があると言えます。

記事のくだんの箇所では、コーラのブランド変更はコストコが提供するホットドッグのセット(hot dog combo)の提供価格維持のためであるとあります。

その価格は1.5米ドルとありますが、CNNの記事によれば1985年から値上げしておらず、年間1億5000万食を売り上げるヒットメニューなのだそうです。コストコはコーラの2大ブランドであるペプシとコカコーラを競合させて、自社に有利な取引、つまり安い方を調達しているものと思われます。

この安くて美味い(かどうかは知りませんが)メニューが客の来店、そして店舗の売上げ増大に繋がっており、文字通り、業績を支える屋台骨になっているのでしょう。