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2013年10月16日水曜日

抜き打ち ― snap

日本語でもカタカナでよく使われているような英語の表現に限って、英語での意味合いは微妙に日本語のそれと違っているということはこれまでにも色々な例で見てきたところですが、“スナップ”というカタカナについてもそのきらいがあると思います。

まずは引用です。


Report: Iran will accept snap visits of nuclear sites

Iran is willing to accept short-notice visits of its nuclear sites, the Agence France-Presse news service reported Wednesday as world powers resumed talks Wednesday in Geneva over Tehran's nuclear program.

No other details of the reported proposal were immediately available, and on Tuesday Abbas Araqchi, Iran's chief negotiator at the two-day summit in Switzerland, reportedly said snap visits to the nation's atomic facilities did "not exist" in its three-step plan to resolve its nuclear standoff with international powers "within a year."
(Kim Hjelmgaard. Report: Iran will accept snap visits of nuclear sites. USA Today. October 16, 2013.)


"snap visit(s)"という表現が出てきますが、本文では"short-notice visits"とも表現されています。ここでの"snap"とは日本語で言えば、“抜き打ち”というような意味合いがあるかと思います。Merriam Websterに見られる、


called or taken without prior warning


という、形容詞"snap"の定義の1つを解釈すると“抜き打ち”という日本語がぴったりではないでしょうか。

ところで、“スナップ”というカタカナを使った表現で最もなじみがあるのは、“スナップショット”(スナップ写真)という表現ではないでしょうか。

広辞苑(第三版)によると日本語では“速射”とされるようですが、


動く被写体を手早く撮影すること、またその写真


という定義が見られます。これは上記のMerriam Websterの"...without prior warning"という定義にも通ずるところがあると思われます。

しかしながら、現代において“スナップショット”は、ほとんど写真と同義で用いられている傾向があります。本来は、スタジオなどで照明などのセッティングがなされた中で撮影される写真に対比した概念として、そのような事前のセッティング無しに、自然な風景や人物を撮影した写真を意味する表現です。

また、コンピュータシステムのコンテクストにおいては、ある一時点におけるファイルシステムの状態を切り取ったようなものを言うのに使われる表現としても定着しています。

つまり、予定外の、抜き打ちの、といった意味合いはカタカナの“スナップ”からは薄れつつある一方、英語ではそのような意味を保持した表現が主流であるということなのです。

枚挙に暇がありませんが、そのような表現が多数あります。


snap decision
snap judgement
snap election
snap poll
snap inspection


"snapshot"という表現も元々は狩猟用語で、


銃を構えてよくねらわずに素早く撃つこと
(ランダムハウス英和辞書)


という意味であったことを今日知りました。


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