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2021年11月29日月曜日

deferential

新型コロナの国内新規感染者数は大幅減少し、次なる第6波を如何に防ぐかということが議論されていますが、ここにきて新たな変異株が南アフリカで確認され、感染拡大の懸念が高まっています。

この新しい変異株は「オミクロン株」と報道されています。

新型コロナウィルスの変異株については、地名等を冠した名称が差別や偏見を助長するということで、当たり障りのないギリシャ語のアルファベットを用いた名称とすることがWHOにより決定されています。

ところで、直近では日本で第5波の感染拡大を招いた「デルタ株」が記憶に新しいところですが、新しい変異株に順番に命名されるとすると、「デルタ」の次が「オミクロン」とはちょっと意外でもあります。

大学時代、無謀にもギリシャ語の講座を取ったことを思い出しますが、アルファベットを暗記するのに精一杯(!?)でした。

それでも、「デルタ」から「オミクロン」の間にはまだいくつかあった、というくらいは記憶に残っているという訳でして・・・。

正確なところ、一般にはデルタが印象に残っているところではありますが、変異株として確認されているのはミューまでです。

そしてそのミューの次が「オミクロン」ということになっているのですが、この間には2つのアルファベットがスキップされており、それが「ニュー」(N)と「クサイ」(X)です。

(いわゆる「懸念される変異株(VOC)」ということでは、デルタに次いで5番目となるのがオミクロンとなります。)

この2つをすっ飛ばした今回の命名に疑問の声が上がっているという記事を見つけ、興味深く読みました。


Now the alphabet has created its own political headache. When it came time to name the potentially dangerous new variant that has emerged in southern Africa, the next letter in alphabetical order was Nu, which officials thought would be too easily confused with “new.”

The letter after that was even more complicated: Xi, a name that in its transliteration, though not its pronunciation, happens to belong to the leader of China, Xi Jinping. So they skipped both and named the new variant Omicron.
(Steven Lee Myers. The W.H.O. skips forward two Greek letters, avoiding a Xi variant. New York Times. November 27, 2021.)


WHOによれば、「ニュー」(N)をスキップしたのは、英単語の"new"(新しい)と混同しやすいというのが理由だとか。

その次の「クサイ」(X)については、"Xi"というスペルが中国の国家主席の名前を想起させる(というか、そのもの、です。)ということで、WHOがこれに「遠慮」したのではないか、という憶測が飛び交っているというのです。


The organization did not initially explain why it jumped from Mu, a lesser variant first documented in Colombia, to Omicron. The omission resulted in speculation over the reasons. For some, it rekindled criticism that the organization has been far too deferential in its dealings with the Chinese government.
(ibid.)


振り返ってみれば、全世界を混乱と恐怖に陥れた新型コロナウィルスパンデミックの発生源は中国・武漢のウィルス研究所とされるところ、WHOは徹底した調査には及び腰で、中国におもねるような態度を取り続けていると言われます。

変異株の命名に関する今回の一件も同様、中国政府への"deferential"な姿勢が見て取れる、というのが記事で取り上げられているものです。

さて、今日の単語、"deferential"ですが、"deference"という名詞は、敬意、尊敬、といった意味です。

英英辞典などを引くと、"deference"の類語として大抵の場合、honor、homage、reverence、veneration、などが挙げられています。

honorは、尊敬、敬意を表す最も一般的な表現。

homageには、それに忠誠とか忠心といった意味合いが含まれてきます。

reverenceは、尊敬の念の深さが強調され、畏敬とか崇敬といった意味です。

venerationは、reverenceに近く、尊敬の念と共にそれを崇め、また畏れるといった含意があります。

最後に、"deference"ですが、同じ尊敬ではありますが、相手に対してへりくだる、という礼儀としての意味合いが強いものです。

WHOの姿勢は確かに国際関係という視点に立った儀礼上の配慮でもあろうと思われますが、ある意味、腰が引けている、といっても良いかも知れません。("deferential"の訳語としては、誤訳かも知れませんが。)

クサイ(Xi)だけをスキップすると如何にも及び腰に見えるのを嫌ったか、ニュー(N)をスキップした理由が取って付けたようにも聞こえます。(新しく発見された変異株が「ニュー」(new)でなぜ悪い?)

なお、余談ですが、"deference"の動詞形は"defer"ですが、遅らせる、という意味と、敬意を払う、敬意を払って譲る、従う、という意味の2つがあり、どちらもスペルが同じですが、辞書では別の単語として扱われています。

因みに、スペルが似通っている"differ"(また、"difference")も2つの"deffer"と語源を同じくするもので、ラテン語の動詞ferre(運ぶという意味)から来ています。

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