昨日の投稿から続きます。
労働市場は従業員優位とも思われた"Great Resignation"から、経営者側が主導権を取り戻そうとする"Great Reset"に入った、というリクルーター視点を紹介した記事を引用しました。
具体的には、昨年半ばくらいから大きく報じられているように、大手IT企業などによる大量解雇の動きです。
同じ記事で、また別の専門家の視点を紹介していますが、以下のくだりがあります。
Aaron Sojourner, a senior researcher at the W.E. Upjohn Institute for Employment Research, said that "certainly, layoffs reduce workers' bargaining power."
With more layoffs, there might be the creation of what's called monopsony power, a term that refers to the power that employers hold over dictating wages and labor-market conditions. Monopsony increases, Sojourner told Insider, when there are fewer substitute jobs for workers to move into — which is what happens when there are layoffs or companies hiring less.
"The days of expanding and offering richer and richer compensation to try to attract more and more talent to the sector — that's on pause right now," Sojourner said.
(Companies are using layoffs to cut new-hire salaries and win back the power they held before the pandemic, some recruiters say. The Insider. February 12, 2023.)
大手企業による大量解雇には、労使関係を逆転させる効果がある、というものです。
ここで、
monopsony
という見慣れない単語が出てきます。専門用語のように見えますが、企業側が解雇に走ることで、この"monopsony"が強まる、ということのようです。
"monopsony"を辞書で引くと、買手独占、とあり、
売手は多数だが買手が1人のみの需要独占市場
(研究社新英和大辞典)
という説明が付いていました。
似たスペルの単語に"monopoly"がありますが、こちらは「売手独占」であり、"monopsony"はその逆の概念と言えます。
労働市場を買手としての雇用者(企業)と売手としての被雇用者(採用希望者)に準えることはよくありますが、"Great Reset"にあっては企業側が大量解雇することで買手優位の市場を形成しつつある、ということを言わんとしているのでしょう。
"monopsony"という単語の語源ですが、単独を意味する接頭辞mono-と、ギリシャ語opsonia(食料品を買う、の意)から成っています。(ギリシャ語でopsonは食料品、oneisthaiは買う、の意。)
つまり、買う人がひとつに限られる、ということです。
"monopoly"の類語に"oligopoly"(売手寡占)があるように、"oligopsony"(つまり、買手が少数;買手寡占)という単語もあります。
0 件のコメント:
コメントを投稿