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2023年2月15日水曜日

off one’s pedestal

ハリーポッターの原作者として有名なJ.K. Rowlingさんですが、トランスジェンダーなど性的マイノリティに対するSNS上のコメントが物議を醸したのは確か数年前のことと記憶します。

コメントが"transphobic"として激しい批難を受けました。

今日読んだ記事によりますと、性自認に関する自身のスタンスについて、近日公開するポッドキャストで改めて釈明をするようです。


JK Rowling is addressing the controversy surrounding her stance on transgender rights head-on in an forthcoming podcast entitled The Witch Trials of J.K. Rowling.

The Harry Potter author has faced a sustained backlash in recent years for statements she’s made about gender ideology that critics and prominent voices in the LGBT+ community have described as “transphobic”.

“I never set out to upset anyone. However, I was not uncomfortable with getting off my pedestal,” Rowling says in the trailer for the podcast, which is hosted by Free Press.
(Tom Murray. JK Rowling says statements about trans people have been ‘profoundly’ misunderstood in new podcast. The Independent. February 14, 2023.)


Rowlingさんの言によれば、コメントについては誰かを傷付けるというような意図は全く無い、ということなのですが、


I was not uncomfortable with getting off my pedestal


と付け加えています。

"pedestal"とは土台とか台座のことで、例えば胸像などが置かれる台を指します。一段高いところにある人、また胸像として飾られるほどの人は凡人ではありません。

よって、


put (set) someone on a pedestal


という慣用句は、


(ある人を)尊敬する、崇拝する、理想化(偶像化)する、祭り上げる


といった意味で用いられます。

さて、Rowlingさんのコメントはその逆で、


(getting) off my pedestal


です。辞書には、"knock off a person off (one’s) pedestal"というフレーズが載っていますが、


(ある人を)尊敬されている立場から引きずり下ろす


という意味です。

手元にあるCollins Cobuild Dictionary of Idiomsには以下のように説明されています。


If someone or something knocks you off your pedestal, they show that you are not as good or talented as people generally think, or make people realize that you are not perfect. Other verbs such as ‘force’ can be used instead of ‘knock’.


尊敬されるような立場から引きずり下ろすという意味に加えて、その人が(評価されているような)優れた人間ではない、完璧ではない、(つまりはそこら辺の人と同じ凡人だ)ということを思い知らせる、ともあります。

Rowlingさんは自身のコメントが取り沙汰されていることについて釈明しながら、それによって自分自身が(有名作家という)地位から引きずり下ろされるのは特に不愉快にも思っていない、と言っているようです。

これはRowlingさんが、性的マイノリティに対する自身の見解を変えるつもりはない、と言っているように思われます。

ところで、辞書に載っているこの種のフレーズの動詞(knock, put, force)が他動詞であることに着目したいと思います。つまり、尊敬される立場に押し上げたり、祭り上げたり、あるいは引きずり下ろすのは、他人であるということです。

一方、Rowlingさんのコメントの動詞は"getting off"であり、自動詞に感じられます。つまり、他人がそうするのではなく、Rowlingさん自らが、というニュアンスがあるように思われます。

このコメントが前半部分と"However,…"という逆接の接続詞で繋がっていることにも注意したいと思います。

自身のコメントに他人を傷つける意図は無い、「しかしながら・・・」、という流れで、そのコメントのことで高み(pedestal)から降りることも何とも思っていない、完璧な人間でない(ただの凡人)と思われても構わない、という解釈ができそうです。

「高み」とはベストセラー作家というステータスでしょう。コメントに悪意はなく、(また取り下げるつもりもなく、)それがために評判が落ちてベストセラー作家でなくなっても一向に構わない、というようにも取れます。

深読みし過ぎでしょうか。


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