"becalm"という単語をご存知でしょうか?普段あまり見ることがない単語ではないかと思います。
そのスペルからして、"be-"と"calm"という単語が結合してできたことは容易に想像がつくかと思います。
"be-"という接頭辞の役割として、名詞や形容詞、動詞などと結合して新しく動詞を作るというものがあります。"belittle"や"behead"などがそうです。
"becalm"は、"calm"、つまり、平穏という意味の名詞とも取れますし、穏やかなという意味の形容詞、もしくは静める、なだめるという意味の動詞とも取れる単語と結合している訳ですが、意味も同様の意味合いかというと、そこはちょっと違うようです。
この単語にお目にかかったのは、例の米国の“財政の崖”問題に関する記事でした。
The deal that kept the nation short of the fiscal cliff also spared wind energy advocates a tax consequence they had feared would becalm the industry.
Among provisions of the legislation to avert automatic Jan. 1 tax increases and spending cuts was the extension for another year of the renewable energy production tax credit that expired at the end of 2012.
(Emily Pickrell. Wind industry avoids a tax blow - Renewable energy credit lives on for another year in fiscal cliff legislation. The Houston Chronicle. January 2, 2012.)
減税措置などの特例法が2012年末で期限切れを迎え、2013年に入ってしまうと実質増税となり不況にいっそう深刻な影響を与えるとして年末のぎりぎりまで米国の議会で落とし所を探る議論が続いていたものですが、何とか増税になることが回避されたというニュースが流れたのは日本時間では既に新年に突入した後だったように思います。
上記の引用記事ではエネルギー関連産業に関しては減税措置がさらに1年間延長されることになったというものですが、"becalm"は仮に減税が廃止になってしまった場合、つまり最悪の事態を表現して、
a tax consequence (that) would becalm the industry
という形で使われています。
つまり、ここでは(通常、"calm"という単語に見られる)良い意味で使われていると言うよりも、どちらかと言えば悪い意味で用いられているのです。
英和辞書を引くと、
(帆船を)風が凪いで進めなくする
という訳語が見えます。つまり、減税措置という風があったお陰である程度持ち堪えていた(エネルギー関連)業界が、財政の崖問題による減税措置終了によって停滞しかねない、ということを言おうとしているという訳です。
記事はエネルギー関連でも特に風力発電を取り上げているのですが、風の力が必要だけに、凪ぎが悪影響になると言う意味の"becalm"を使うとは記者のしゃれのセンスが効いているということでしょうか。
ところで、"calm"には凪ぎ(無風状態)の意味はありますが、その語源に目を向けると、元々は焼けるような暑さを意味するギリシャ語kaumaに由来するとあります。暑い日中には働く気も起きず、仕事は一旦止めて休息する、ということから、平穏、平静の意味に発展したということです。(ランダムハウス英和)
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