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2024年10月31日木曜日

garbage

アメリカ大統領選、ここ数日沸騰しているキーワードが、"garbage"です。

ゴミ、クズという意味ですが、政策議論を戦わせることなく、対立候補への口汚い非難中傷に終始するのは日本だけではなく、かの大国も同じようです。


The controversy began Tuesday — at the same time Harris was speaking near the White House — when Biden participated in a campaign call organized by the Hispanic advocacy group Voto Latino. Biden used the opportunity to criticize Sunday’s Madison Square Garden rally, where a comedian described Puerto Rico as a “floating island of garbage.”

“The only garbage I see floating out there is his supporters. His demonization of Latinos is unconscionable, and it’s un-American,” Biden said. “It’s totally contrary to everything we’ve done, everything we’ve been.”
(Harris promises to ‘represent all Americans’ after Biden’s remark on Trump supporters and ‘garbage’. The Associated Press. October 31, 2024.)


ことの発端はトランプ陣営がニューヨーク、マジソンスクエアガーデンで開催した集会で、支援者のコメディアンがプエルトリコを「カリブ海に浮かぶ"garbage"」と揶揄する発言をしたことにあります。

この発言を念頭に、今度はバイデン大統領がヒスパニック系の有権者の集会で、トランプ氏支持者は"garbage"だと発言。

お互いがお互いを"garbage"と罵り合うという、何とも醜悪な事態になっているというものです。

バイデン氏の発言を受けてハリス氏は、支持、不支持に関係なく、自分は全てのアメリカ国民のための大統領になる、とオトナの対応を見せましたが、正直なところは投票目前に有権者の離反を招くようなバイデン氏の発言を迷惑に思っているのではないでしょうか。

さて、"garbage"という単語についてですが、辞書の語源欄を見ると元は食肉のはらわた、内臓など、食べられずに捨てる部分のことを指したものだということです。その後、この単語は食肉の内臓に限らず、野菜屑など、いわゆる生ゴミ一般を指すものとなり、くだらないもの、酷いものや人を指すのに使われるようにもなりました。以前取り上げた、"hot garbage"もご覧下さい。

余談ですが、食肉の内臓と聞くとホルモンを思い出します。

「ホルモン」の語源は関西弁の「放る」(捨てる)もん(モノ)、と聞いたことがあります。俗説のようですが、"garbage"の語源解説を読んでいてそんなことを思い出した次第です。

ただ、人を貶す表現としてホルモンという言葉は使われませんし、焼肉にしてもホルモン鍋にしても、捨てるどころか・・・。


2024年10月30日水曜日

gut check

アメリカ大統領選を目前にトランプ、ハリス両陣営は支持率が拮抗しており、票の掘り起こしに躍起です。

以下引用する記事ではユダヤ人票を如何に獲得するかという話と読みました。


In an 11th-hour pitch to Jewish voters, second gentleman Doug Emhoff told a crowd in Pennsylvania that his wife, Vice President Kamala Harris, "feels it in her gut" what it means to support Israel. 

"Let me be direct and answer the question that Jews have asked for generations. Yes, she feels it in her gut. Kamala feels it, as we say, in her kishkes," Emhoff said during an address in Pittsburgh.

The so-called gut test came up during the days of former President Barack Obama, when some Jews questioned how deep his support for Israel was. 
(Morgan Phillips. Doug Emhoff says wife Kamala Harris supports Israel 'in her soul' and passes gut-check for Jewish priorities. Fox News. October 29, 2024.)


記事のタイトルにある、


gut-check


という表現が目に留まりました。

本文中では、


Vice President Kamala Harris, "feels it in her gut" what it means to support Israel


とあります。

これは、(ハリス氏が)イスラエル(ユダヤ人)へのサポートを本心から表明している、という意味だろうと思われます。つまり、上辺だけ、口先だけではない、ということです。

"gut-check"とはつまり当事者の決意の程、本気度を試すこと、という意味で、Merriam-Webster Dictionaryでは、


a test or assessment of courage, character, or determination


と定義されています。

"gut"(内臓、はらわた)が感情や本心、また勇気の源泉と結び付けられるのは"gut"という単語が使われている他の慣用表現などからも自明でしょう。「ガッツ」というカタカナの日本語は英語から来ているものと思いますが、「心の底から」という意味で「腹の底から」という表現を用いる我々日本人にも共通する感覚であろうと思います。


2024年10月29日火曜日

whipper-snapper

Z世代の若者との付き合い方、とりわけZ世代社員の扱い方、みたいな記事はこれまでにも見かけたことがあります。

以下に引用する記事もその類の話なのですが、要はまぁ若者というのはいつの時代も年配者にとっては不可解で扱いにくい存在という話かと思います。


“According to respondents, 29% say Gen Z coworkers are the most annoying to work with,” revealed researchers from LLC.org, Limited Liability Company experts. “Lack of work ethic, complaining and entitlement were the top three annoying traits of Gen Z coworkers.”

Making matters worse, whipper-snappers of the digital era, workers ranging in age from 18 to 27, also rank as the “least productive” folks on the clock as compared to their millennial, Gen X and Baby Boomer colleagues. 
(Asia Grace. Gen Z has the ‘most annoying’ coworkers, study reveals — but they say it’s just hard to fit in. New York Post. October 28, 2024.)


記事によれば、3人に一人くらいの割合でZ世代社員を職場における扱いにくい厄介者と回答しているという調査結果があるそうですが、特に困るのが生産性の低さだということです。

そして、Z世代の若者のことを、


whipper-snappers of the digital era


と総括しています。この"whipper-snappers"とは、


思いあがっているつまらないやつ、生意気な若僧、青二才
(ランダムハウス英和辞書)


という意味なんですが、"snippersnapper"という単語が変化したものという解説が見られます。また、"whipster"という単語も同義で用いられるようです。

"whip"とは鞭で打つこと、"snip"は切り取ったりすること、"snap"は折ったり、鋭い音を立てるような動作をすることですが、これらの表現には急に動くとか(whip)、つまらないことをするとか(snip)、突然キレる(snap)、といった意味合いもあり、これらの意味が組み合わさって、そういった行動を繰り返している人、そんなことに終始しているような見下げた人間、というような意味を形成しているように思われます。



2024年10月28日月曜日

cryptophasia

双子の間だけで通じる言葉、というものが存在するという興味深い記事を見かけました。

双子に産まれた人の約半数がこのような特別なコミュニケーション方法を発達させるという研究があるそうです。

そして、この双子だけの間で通じる言語のことを、


cryptophasia


というそうです。

crypto-とは秘密の、-phasiaとは話す(speaking)の意味のギリシャ語です。


Up to 50% of twins develop their own communication pattern with one another. Most lose it over time, but for the Youlden twins it has become a normal way of communicating.

(中略)

An estimated 30-50% of twins develop a shared language or particular communication pattern that is only comprehensible to them, known as cryptophasia. The term translates directly from Greek as secret speech.

Nancy Segal, director of the Twin Studies Center at California State University, believes there are now better and more nuanced words for the phenomenon, and prefers to use "private speech". In her book Twin Mythconceptions, Segal also uses the phrase "shared verbal understanding" to refer to speech used within the pair.
(Krupa Padhy. 'It's a unique language spoken by two people': The twins who created their own language. BBC News. October 27, 2024.)


"cryptophasia"は双子同士が意思疎通を図る過程で生じ、発達していくもののようですが、多くの場合、外部の言語刺激、すなわち両親や家族が話す言語のことですが、それらの刺激にさらされる中で、やがては消滅していくものだそうです。即ち、母語が"cryptophasia"よりも優勢になって行くということなのですが、稀に"cryptophasia"が双子間だけのコミュニケーション手段として残るケースが認められるそうで、BBCの記事では英国生まれの双子兄弟の例を取り上げています。



2024年10月25日金曜日

doody

世の中、何でもかんでも、AI、エーアイ、とこのところは少し五月蠅くも感じられるくらいなのですが、今日読んだ記事ではAIを実装したトイレ(!?)が取り上げられています。

一体どんなトイレで、何をしてくれるんでしょうか?


A Texas startup named Throne is making waves in scatological circles after devising a camera that attaches to your toilet and photographs your poop.

(中略)

The downward-facing device simply clips onto the toilet rim and snaps videos of your stool. Afterward, doctor-trained artificial intelligence analyzes the stool and provides insight into the user’s daily “digestive and hydration status.”

This doody data, along with tailored health recs, is then made available via an accompanying Smartphone application.
(Ben Cost. AI toilet camera snaps pictures of poop — here’s why you want a fecal record. New York Post. October 24, 2024.)


この「AIトイレ」には便座にカメラが取り付けられているそうですが、トイレにカメラというだけでもう怪しさ満点ではないでしょうか?

しかしながら、このカメラは便器内を撮影するべく下向きに取り付けられているということで、用を足す人ではなく、排泄物を撮影して、その状態から健康状態などを判断するものなのだそうです。

つまりAIが記録、分析する対象は、


doody data


なのですが、この"doody"という単語は初めて見るものです。

そして、辞書に載っていません!

ネット検索すると、唯一Collins Dictionaryのサイトで、


solid bodily waste; feces


とありました。

つまり、う⚪︎ち、のことです。

"doodie"というスペルもあるようです。また、以前取り上げた"doo-doo"もご参考ください。

語源について説明しているものは見当たらないのですが、American Heritage Dictionaryで"do"のエントリ(そうです、動詞、また助動詞のあの"do"です)に、「ウ⚪︎チ」という意味がスラングとして載っており、これが変化したものなのかと思います。


2024年10月24日木曜日

crystallize

米大統領選まで1週間あまりとなりました。民主党候補カマラ・ハリス副大統領は最終の遊説地にワシントンD.C.にあるホワイトハウスに近接した公園(The Ellipse)を選びました。


PHILADELPHIA (AP) — Vice President Kamala Harris plans to lay out her campaign’s closing argument by returning to the site near the White House where Donald Trump helped incite a mob that attacked the U.S. Capitol in January 2021 — hoping it will crystalize for voters the fight between defending democracy and sowing political chaos.

Her campaign says Harris will give a speech at the Ellipse on Tuesday — one week before Election Day — and will urge the nation to “turn the page” toward a new era and away from Trump.
(Harris to give her campaign’s closing argument at the Ellipse, where Trump helped spark Capitol riot. The Associated Press. October 24, 2024.)


この公園は、前回の大統領選でバイデン氏に敗れたトランプ元大統領がスピーチを行なった場所で、その後暴徒と化した支持者らが議事堂の襲撃に至ったという、いわば曰く付きの場所です。

ハリス氏の意図について、


hoping it will crystalize for voters the fight between defending democracy and sowing political chaos


というくだりがあります。ここで使われている"crystallize"とはどういう意味なのでしょうか?

"crystallize"を辞書で引くと、結晶化する(to cause to form crystal)という意味がまず見えますが、「結晶化」ではよく分かりません。

もうひとつの意味としては、具体化する、(考えや思想などが)明確な形をとる、というものがあり、これが近いようです。


To give a definite, precise, and usually permanent form to: 

The scientists finally crystallized their ideas about the role of the protein.
(American Heritage Dictionary)


上記の用例に見られるように"crystallize"の目的語にはアイデア(idea)などの単語が来ています。

引用した記事のくだりに戻りますと、"crystallize"の目的語としては、


the fight between A and B


という形をとっています。つまり、目的語は"fight"(戦い)なのですが、戦いを具体化する、はちょっと変です。

ここでの用例は"crystallize"の後に来る"between A and B"がポイントだと思うのですが、コーパスで検索すると、似たような用例が多く見られます。いくつか拾ってみました。


…but many economists agree that it's the domestic issue that crystallizes fundamental differences between Bush and Kerry.
(Atlanta Journal Constitution, 2004)


Virginia Republican Representative Thomas Bliley said the debate crystallized the differences between the two parties.
(San Francisco Chronicle, 1995)


具体化する、でも特に間違いではありませんが、目的語の"difference"や"fight"を考慮すると、違いや相違点、対立(構造)を鮮明なものにする、際立たせる、といった訳語が適切でしょうか。

前回大統領選で敗北したトランプ氏が引き起こしたとされる議事堂襲撃事件は民主主義に対する脅威と言われます。そのきっかけになった場所を最後の遊説地に選んだハリス氏の意図は、民主主義を守る者と政治的混乱の種をまく者との対立構造を鮮明化することである、ということですね。勿論、ハリス氏は民主主義を守る者という立場であることは言うまでもありません。


2024年10月23日水曜日

slew

今日のネタに難渋したのですが、こういう時、ある文(記事)を読んでいて引っかかった表現を、その後また全く別の記事でたまたま見つけて、やはりそれが気になるということでネタにすることがあります。

最初に見た記事が以下のものです。


Former Donald Trump attorney Rudy Giuliani must hand over his ritzy Manhattan apartment, his collectible Mercedes-Benz and a slew of other treasures as part of the nearly $150 million judgment he owes two women he defamed after the 2020 election, a federal judge ruled Tuesday.
(Kevin Breuninger. Giuliani ordered to hand over New York City apartment, Mercedes, luxury watches to defamation victims. CNBC. Octobeq 22, 2024.)


目に留まったのは、


slew of other treasures


という部分ですが、ここで"slew"の意味は知らなくても、"a slew of"が"a number of"くらいの意味だろうと想像が付くので辞書を引くこともなくスルーしていました。

そうしてまた別の記事を見ていると、また同じフレーズが出てきて、やっぱり気になる、ということになります。


A Massachusetts man wanted by police on child pornography charges was found at a secluded campsite in Woodstock, Connecticut after hiding there for months, the US Marshals Service said on Monday.

Steven Labrecque, 40, was wanted on a slew of charges, including child pornography, photographing intimate parts of a child, intimidation of a witness, reckless endangerment of a child, threatening, obscene matter to a minor, assault, and battery, the Marshals Service said.
(Caitlin McCormack. Child porn suspect from Massachusetts found hiding in Connecticut woods. New York Post. October 22, 2024.)


ここでも同じく、


slew of charges


というもので、解釈には特に困るものではありませんが、"slew"とは何かということが気になってきたところです。

この"a slew of"という言い回しはアメリカ英語のインフォーマルな言い回しとして定着しているようです。殺すという意味の動詞slayの過去形が"slew"ですが、また別の単語です。

アイルランド語slaughから来ているようですが、ケルト語系の語源であり、その意味は大勢の人、群衆、軍隊、兵隊というものだったようです。

それが単に人に限らず、複数あるものについて、沢山の、という意味合いで用いられるようになりました。

なお、以前スローガン(slogan)という単語を取り上げましたが、この単語のスペル、slo-という部分は今日の1語"slew"と関連があります。



2024年10月22日火曜日

kidult

"kidult"という言葉をご存知でしょうか?

スペルから想像が付くと思いますが、kid(こども)とadult(オトナ)を組み合わせた、いわゆるかばn語です。

子供じみた大人、子供のような大人、という意味で、子供が欲しがるようなおもちゃを好む大人が当てはまります。


Wendy's has options for kids and kids-at-heart ("kidults") this Halloween season.

After the release of its Frosty Frights Kids Meals in September, which come with a specialty toy, the burger chain decided it wasn't fair only its youngest patrons get a Halloween treat. The Wendy's Boo! Bags, which launched Monday, are the fast-food chain's solution.
(Mary Walrath-Holdridge. Calling all 'kidults': Wendy’s launches Boo! Bags and they aren’t just for kids. USA Today. October 21, 2024.)


身体は大人になっても心(ハート)は子供のまま、子供心を失わない大人達を購買層に見据えたマーケットが存在します。

"kidult"市場は欧米のみならず、アジアでも熱い視線が注がれています。


Picture a toy store where every corner sparks a childhood memory and every display features the latest trends. Toys “R” Us Asia is making that possible with a fresh concept — blending nostalgic favourites with innovations to entice the young and young at heart.

This blend of old and new is evident in their offerings for the growing “kidult” market, where known childhood brands are paired with collectibles.

The goal is to create “a space where anyone — whether they’re reliving a treasured memory or discovering something new — feels at home,” Toys “R” Us Asia (Holding) Ltd. CEO Leo Tsoi told Retail Asia.

(中略)

Tsoi said the toy market in Southeast Asia is being shaped by the rise of the segment for “kidults” — adults whose interests or media consumption is traditionally seen as more suitable for children — who are returning to the joy of toys.
(Toys ‘R’ Us Asia banks on ‘kidults’ to drive toy sales. MSN. October 2024.)


個人的にはハロウィンのお菓子もトイザラスで売られているおもちゃにも興味はないのですが、子供の頃手にして遊んだおもちゃは心に残っていて、懐かしく感じることは多々あります。小生の世代だと、レゴブロックとかウルトラマンのビニール人形とか、プラモデルなんかですね。

2024年10月21日月曜日

velvet glove

今日は"veltet glove"という表現を取り上げたいと思います。

では記事の引用をどうぞ。


The Princess of Wales's "expertly-manoeuvred rise" since marrying into the Royal Family was hailed by a royal expert who described her as "steel in a velvet glove" just like another key royal was.

Princess Kate may now be one of the most recognisable women in the world but her assured figure is not the same as the one sported by the "once quiet and reserved" Kate Middleton back in the early days of her relationship with Prince William.
(Princess Kate dubbed 'steel in a velvet glove' as she's compared to key senior royal. Express. October 15, 2024.)


キャサリン妃(Kate Middletonさん)と言えば、ガンを公表し、一時健康状態が危ぶまれましたが、つい最近一連の治療を終えたとの発表があったことが記憶に新しいところです。

その前には動静が一時不明であったことなどから、ウィリアムズ王子との不仲が噂されたり、3人の子供と収まった写真を編集していた件で随分とマスコミの好餌になったりもしました。

まあ色んなことがあった訳ですが、一貫して芯の強い女性であるということは衆目の一致するところかと思います。

"velvet glove"(ビロードの手袋)というのはそういう意味合いで使われているのですが、記事には、


steel in a velvet glove


とありますように、ビロードの手袋の中に鋼鉄(の手)を持っている、という表現が元になっているもので、外面は柔和だけれども内面には断固とした強い意志を持っているという意味合いがあります。

"iron hands in veltet glove"(また、iron fists in 〜)とも表現するようです。

キャサリン妃に対するこの表現は多分褒め言葉だと思いますが、批判的に用いられることもあるようです。強い意志や厳しさは時に非情にも思われるものですから、上辺は優しく(人当たりよく)見えて実は・・・、というようなコンテクストで使われることもあります。



2024年10月18日金曜日

T-bone

交通事故のニュース記事からの引用です。


A St. George Police sergeant said “everyone came out pretty lucky” in a T-bone crash, which occurred at 2450 East and Riverside Drive on Wednesday evening shortly before 7:30 p.m.

St. George Police Sgt. Brian Groves said the crash, where a Chevy 1500 truck hit the side of a Honda Fit in the middle of the intersection, resulted in a few minor injuries to the occupants of the Honda. Groves added that nobody was transported to the hospital.
(Nick Fiala. Police say those involved in St. George T-bone crash were 'pretty lucky'. St George News. October 17, 2024.)


交通事故のニュースなのに出てくるのは、


T-bone crash


という言葉です。

"T-bone"と聞いてぱっと思い浮かべるのは、Tボーンステーキではないでしょうか?(食い意地が張ってる!?)

記事では、ステーキではなく、衝突(crash)の話ですが、これは自動車2台が絡む衝突事故のうち、1台のクルマの横腹(側面)にもう1台のクルマが突っ込んだ状態を指す表現です。"T-bone collision"とも言い、交通事故のニュースではよく使われる表現のようです。

事故はシボレーのピックアップトラックが左折時に、直進して来たホンダフィットの横腹に突っ込んだ、ということです。よくある交差点内のいわゆる右直事故の類いですが、左折時の信号無視が原因のようです。(アメリカなので、右側通行。)

2台のクルマの衝突状況がアルファベットのTのような文字に見えることから"T-bone"の名がついたのであろうことは敢えて説明の必要も無さそうですが、ステーキ肉の部位を用いるあたり、牛肉消費大国アメリカならではという感じがしますね。

以前取り上げた"porterhouse"もご覧下さい。


2024年10月17日木曜日

surrogacy

イタリアで、代理出産により子をもうけることを禁止する法律が可決されたそうです。

代理出産は米国やカナダなどでは自由に行われており、イタリアからこれらの国に渡航し、代理出産契約を結んで子をもうけるということが行われてきたところ、今回の法律制定により違反者は禁錮2年、もしくは100万ユーロの罰金を科されるという厳しい内容です。


ROME (AP) — Italy on Wednesday criminalized citizens who go abroad to have children through surrogacy, a measure slammed by opponents as “medieval” and discriminatory to same-sex couples.

The measure extending a surrogacy ban in place since 2004 was promoted by Premier Giorgia Meloni’s far-right Brothers of Italy party and its conservative coalition partner, the League, asserting that it protects women’s dignity.

The Senate after a seven-hour debate passed the bill 84-58, the final step in the process after the Lower House’s approval last year.

Italians seeking surrogacy in countries such as the United States or Canada, where the practice is legal, can face up to two years in jail and up to 1 million euros ($1.1 million) in fines.
(Italy expands its ban on surrogacy to overseas as critics say it targets same-sex couples. Associated Press. October 17, 2024.)


記事に出てくる"surrogacy"という単語がいわゆる代理出産の意味ですが、"surrogate"という単語はこれまで目にすることもあったのですが、"surrogacy"という単語は初めてです。

"surrogate"という単語は代理という意味ですが、ラテン語subrogareから来ています。ラテン語の動詞rogareとは依頼する、願う(to ask)という意味で、これに接頭辞sub-(下へ、代わって)が付いたもので、"subrogate"という英単語もあります。(sub-が、続くrogareのrに引っ張られて、sur-に変わったものです。)

手元の研究社新英和大辞典には"surrogacy"のエントリが無いのですが、Merriam-Webster Dictionaryを検索すると、


the practice of serving as a surrogate mother


とあります。そして例文に、


choosing between adoption and surrogacy


とあるのですが、これは子宝に恵まれない夫婦に与えられる選択肢が「養子か、それとも代理出産か」ということです。

代理出産という仕組みに詳しくありませんが、上述したように米国やカナダでは普通に行われており、契約により費用(報酬)を払って子を産んでもらうというやり方には商業行為との批判がかねてよりありました。関連する報道では"surrogacy tourism"という表現も見られます。

今回の法律の対象は同性婚に限らず、異性間夫婦にも適用されるものですが、イタリアでは同性婚が禁じられており、同性カップルをターゲットとしたものだとの批判が沸き起こっています。特にLGBTQのコミュニティからの反発はデモに発展しているとの報道です。


2024年10月16日水曜日

An apple a day keeps doctor away.

秋、りんごが美味しい季節になりました。先日青森を訪問する機会があったのですが、りんごがたわわに実る畑が広がる地方道をドライブしました。


An apple a day keeps the doctor away.


は恐らく多くの人が学校英語で習う諺のひとつではないかと思います。1日1個のりんごで医者いらず。りんごの滋養が身体に良い事のたとえです。

では記事の引用をどうぞ。


An Apple Watch a day keeps the doctor away.

Some users are astounded by their device’s ability to flag early signs of sickness before an ailment like COVID or a cold arises after the iOS 11 software update rolled out last month.

The startlingly accurate health assessment from the Apple Watch’s Vitals app — available on the Series 8 model and above — harnesses critical metrics taken over a week while a user is asleep, according to Mac Rumors.
(Alex Mitchell. Apple Watch Vitals app predicts colds, flu, COVID days before they hit, users claim. New York Post. October 15, 2024.)


冒頭部分に注目です。


An Apple Watch a day keeps the doctor away.


は恐らく説明の必要も無く、諺にかけたシャレですね。

記事によれば、アップルウォッチが風邪やインフルエンザ症状、新型コロナ等の予兆を知らせてくれるとか。

症状が現れる前に心拍や血圧の僅かな変化を検出してくれるということらしいです。

ところで1日1個のりんご・・・(An apple a day keeps the doctor away.)、という諺はイギリスのウェールズ地方で言われはじめたそうなのですが、その由来を辿ると、


Eat an apple on going to bed, And you’ll keep the doctor from earning his bread.


という言い回しが1866年発行の雑誌に見られ、以降表現のバリエーションを変えながら、現在の"An apple a day keeps the doctor away."に落ち着いたということのようです。(Phrase Finderのサイトによる。)

寝る前にりんごを食べれば、医者が生活に困る、ということなんですが、現代ではアップルウォッチのために医者の商売あがったり、ということになりますか!?テクノロジーの進歩は人間の仕事を奪うというのはこれに限らず・・・。


2024年10月15日火曜日

beat to a pulp

クエンティン・タランティーノ監督の映画「パルプフィクション」が公開から30年という話です。

学生時代、タランティーノ監督の作品をよく観ました。

「パルプフィクション」の"pulp"とは質の悪い再生紙のことで、そうした紙質の雑誌はとかく低俗、猥雑な内容ということから出た表現ということです。

その「パルプ」(pulp)には色々な意味があって、紙原料としての意味の他、果物などの果肉、生体組織としての髄、髄質といった意味もあり、柔らかいもの、どろどろとしたものという概念があります。

以下引用する記事で、


beaten to a pulp


という表現が出て来ます。

これは慣用句のようなもので、"beaten"(殴られた)という動詞に付加された"to a pulp"とは、(殴られて)パルプのように粉砕された、という意味合いになります。

日本語だと、ボコボコにされた、とかコテンパンにやられた、とか言いますね。


A fed-up landlord in the Denver suburb has shared a bloody photo of one of its workers after the man was allegedly beaten to a pulp by members of the brutal Venezuelan prison gang for refusing to let them stay in a vacant apartment they had taken over.

The Brooklyn-based company claimed that the gang effectively stole entire apartment complexes out from under it by threatening employees and tried to extort it for a cut of the rent in exchange for being allowed to keep operating the properties.
(Jennie Taer. Pictured: Aurora apartment worker beaten to a pulp by Tren de Aragua — as owners say migrant gang took over and tried to extort them. New York Post. October 14, 2024.)


Merriam-Webster Dictionaryでは以下のように定義されています。


to a pulp
idiom
—used to say that someone or something is very badly beaten, mashed, smashed, etc.


殴られて顔面や身体の部分が(パルプ材や果肉のように?)ぐしゃぐしゃ、ドロドロになるというのは随分グロテスクな表現です。


2024年10月14日月曜日

thump chest

アメリカ大統領選の投票日まで3週間、その日が刻一刻と迫っています。トランプ元大統領とハリス副大統領の支持率は拮抗していると報じられてきましたが、ハリス氏が接戦州(swing state)での支持率を落としているとの報道があります。


Top operatives from Donald Trump’s presidential campaign are very confident in their ability to close strong in swing states, contending Kamala Harris’ metrics have collapsed in the seven battlegrounds likely to decide the presidential election in just over three weeks.
(A.G. Gancarski. Trump camp thumps chest as Kamala Harris fumbles swing states. New York Post. October 13, 2024.)


事実ならばトランプ氏有利ということになります。最後の最後まで結果は分かりませんが、支持率に一喜一憂するのは両陣営の現実というところでしょう。

記事のタイトルでは、


thumps chest


という表現が使われています。

字句通りには、胸を叩く、という意味になりますが、これは自信を誇示、自ら尊大ぶるジェスチャーです。

"chest-thumping"という表現もあり、見栄を張る行為を指す名詞、また修飾語として形容詞的にも用いられます。


chest-thumping

conduct or expression marked by pompous or arrogant self-assertion
(Merriam-Webster Dictionary)


研究社新英和大辞典では、大みえ、大言壮語、という訳語になっていました。中身が伴わない、自分の実力以上のことを言うという意味ですが、政治家、政治の世界にありがちなことです。

そういう人を指して、"chest-thumper"という表現もあります。




2024年10月11日金曜日

wildcard

米南部フロリダ州などに甚大な被害をもたらしているハリケーンへの対応を巡って、バイデン政権と同政権を批判する共和党側との応酬が繰り広げられているという話題を先日取り上げました。

ハリケーンHeleneが去ったのも束の間、また別のハリケーンMiltonが襲いかかるという状況にあって、フロリダ州のデサンティス知事とハリス副大統領が互いの非難に明け暮れていると報道されています。

デサンティス知事曰く、ハリス氏はフロリダ州に対して何の支援もしていない、ということなのですが、一方のハリス氏はデサンティス氏に電話をしたのに出なかったと言い、子供の喧嘩でしょうか?ハリケーン被害支援の問題は政争の具になっているようです。


Florida Gov. Ron DeSantis bashed Vice President Kamala Harris for attempting to insert herself into the response to hurricanes Helene and Milton on Thursday.

DeSantis and Harris have clashed in recent days after the governor declined to take a call from Harris regarding the hurricane response. He said Thursday that Harris has "no role" in the process and added that she had never attempted to call him during previous storms in Florida.
(Anders Hagstrom. DeSantis fires back at Harris over hurricane response: 'She has no role in this process'. Fox News. October 10, 2024.)


デサンティス氏によれば、同氏はバイデン大統領の支援には感謝していると発言しているらしく、諸々の確執はデサンティス氏とハリス氏の間の個人的なものなのかとも思わされます。

以下に引用するのはニューズウィーク誌の記事からです。


A "wildcard" emerging out of the American Southeast has put Vice President Kamala Harris' campaign on its back foot, "losing" control of a narrative that could spell trouble for the Democrats in the final stretch, said political analysts who spoke to Newsweek.

After two major hurricane landfalls in as many weeks, the Federal Emergency Management Agency (FEMA) has been delivering hundreds of millions of dollars in aid to Americans impacted by Hurricanes Helene and Milton. As of Wednesday, federal disaster assistance for Helene survivors has surpassed $344 million, including $142 million to households in Florida, where Milton made landfall late Wednesday.

Amid that response, one of FEMA's biggest obstacles has been misinformation about the storms, amplified by former President Donald Trump and surrogates like Elon Musk. That information warfare, combined with a series of missteps and a political duel with Florida's governor, has resulted in Harris losing the grip on a story she may need to win to help push her over the edge on November 5.

"These hurricanes are a wild card in the 2024 campaign, and the Biden/Harris administration's response risks losing the narrative, no matter how good they are on the substance," James Haggerty, a crisis communications expert and the president and CEO of PRCG Haggerty, told Newsweek. "Ultimately, of course, it is the Harris campaign that is hurt."
(Katherine Fung. How Kamala Harris Lost Control of the Hurricane Narrative. Newsweek. October 10, 2024.)


ハリケーン対応を巡ってはトランプ元大統領がバイデン政権に対する非難を展開していました。これに対して政権側は、被害者への支援が滞っているというのは誤情報(misinformation)であると反論しています。

一方で、デサンティス氏とハリス氏の応酬に関して、ニューズウィーク誌では、大統領選候補のハリス氏にとっては支持率を減らす要因になりかねないとの見立てです。これはハリス氏、民主党陣営にとっては困った話です。

引用した記事に、"wildcard"という表現が使われています。2箇所出てきますが、引用記事で最後の段落では"wild card"となっており2語ですが、辞書によればスペルとしては両方ありのようです。

「ワイルドカード」と言えば、トランプのジョーカーやUNOのワイルドカードをまずは思い浮かべるのではないでしょうか?あるいは、コンピュータを使ったデータベース検索などで使う文字(アスタリスクやクエスチョンマーク)でしょうか?

トランプの「ワイルドカード」は日本語では万能札と言われ、その札を切るプレーヤーが恣意的にその役割を決めることができるというものです。検索で使う「ワイルドカード」も、不特定の文字として使われるものです。

つまり「ワイルドカード」とはその役割や効果といったものが決まっていないものということになり、そこから派生して、


Slang
An unpredictable or unforeseeable factor
(American Heritage Dictionary)


という意味で用いられるようになりました。

引用した記事のコンテクストに戻りますと、ハリケーン問題は大統領選に行方を左右しかねない、不確定要素になっているということで、とりわけ今回のゴタゴタはハリス氏陣営にマイナスに響きかねないという見方がされています。

"wildcard"は切る方からすればその使い方は思いのまま、如何様にも使えるというところですが、使われる方の身からすれば、影響が測り知れない、困ったもんだ、という意味合いになりますね。

2024年10月10日木曜日

teem


今日見かけた記事はそれと似たような話なのですが、家庭内で最もウィルスにまみれているのはシャワーヘッドと歯ブラシであるという研究成果がこのほど公表されたようです。理由はこれらの場所というのが常に水分と湿気という、微生物の生育条件を満たす環境だからだそうです。


The warm, damp environments of your showerhead and toothbrush are the perfect breeding ground for microbes, and a new study has identified hundreds of viruses that live there, showing the vast biodiversity to be found in the average home.

These viruses, however, are not the kind that will give you the common cold or flu (or worse). Called bacteriophages, or phages for short, they are the natural enemy of bacteria. Each tiny, tripod-looking phage has evolved to hunt, attack and gobble up a specific bacterial species.
(Issy Ronald. Your showerhead and toothbrush are teeming with viruses. But don’t panic – these microbes could save lives. CNN. October 9, 2024.)


引用したCNNの記事のタイトル、


Your showerhead and toothbrush are teeming with viruses


にある、"teem"という単語を取り上げたいと思います。

ある場所などが、"teem with"以下に示されるモノで満ちている、富んでいる、沢山である、という意味の動詞です。

ところで、この"teem"と同じ発音をする単語に"team"があり、これは我々もよく言う「チーム」、すなわち同じ目的を持って行動するグループのことですが、これら2つの単語はいずれも古英語に遡るとその原義に、子孫、子をもうける、という意味があり、語源的には類縁関係にあるものです。

"team"という名詞には元々、子孫、種族という意味がありましたが、現在はその意味で使われることはなく、廃語としtw辞書には載っています。

"teem"という動詞が沢山あるという意味なのは、子孫を残すという原義から派生しているものですね。



2024年10月9日水曜日

text neck, tech neck, or kyphosis

どうも最近肩が凝るというか、首周りの倦怠感がしつこく、これはいわゆる五十肩というやつなのか、などと思っていました。

これまで肩凝りというものを実感したことはほとんど無く、四十肩も経験ありませんが、アラフィフと呼ばれる年代となって以降、色々な衰えを感じています。

薄々感じてはいたのですが、この不快感にはやはりパソコンやスマホの影響があるのだと確信するに至りました。・・・。


Researchers examined the effects of text neck on the spine and found it can affect alignment when you’re running or walking (not just looking at your phone).

The side effects of text neck may also include added stress to joints of the lower body including the hips, knees, and ankles and limited respiratory function—all of which could affect runners’ performance.
(Elizabeth Millard. Text Neck Side Effects Build Up Over Time and That Can Be a Real Problem for Runners. Runner’s World. October 8, 2024.)


パソコンやスマホの画面を注視しているとどうしても顔面はスクリーンに対して前傾し、首の後ろが引っ張られる格好となります。これが記事で指摘されている、


text neck


と呼ばれる状況です。このような表現があることを知りませんでした。"tech neck"とも言うそうです。


From looking down at your phone every few minutes to working on a laptop to slouching on the couch for hours, everyday life is rife with moments of poor posture. One of the most pronounced these days is kyphosis, also known as “text neck” or “tech neck.” 

This happens when your head is leaning forward in a way that elongates the back of the neck, which can lead to muscle strain, headaches, and even numbness or tingling in the hands and arms.
(ibid.)


同じ症状を指すのに、


kyphosis


という医学専門用語も出て来ます。曲がったという意味のギリシャ語kyphosに由来し、後弯症と訳されますが、意味はいわゆる「猫背」のことです。


2024年10月8日火曜日

pig butchering

"pig butchering"という言葉をご存知でしょうか?

字句通りには、豚の屠殺という意味ですが、詐欺の手法を指す用語だそうです。


Pig butchering, while something of an offensive term to myself as a vegan, is popularly applied to describe a scam whereby fraudsters entrap victims in an investment scheme, often involving cryptocurrency, which is designed to relieve them of as much money as possible through nefarious means. The rather disgusting term is applied to these scams as the victim has their trust built up by the attackers before moving in for the kill, in an analogous way to a pig being fattened up before slaughter.
(Davey Winder. iOS And Android Security Scare—2 Very Dangerous Apps Found In Official Stores. Forbes. October 4, 2024.)


いわゆる投資詐欺や金融商品詐欺、ロマンス詐欺などと呼ばれるものが相当するようですが、詐欺グループはSNSや出会い系アプリ等を通じてターゲットに接触、信頼関係を築いた上で仮想通貨での投資の話を持ち掛けます。少しずつ投資額を増やしてゆき、最後には全財産を巻き上げる、というもので、このような詐欺行為があらゆる手練手管で行われるというストーリーは聞いたことがありますが、「豚の屠殺」詐欺という名称があるとは知りませんでした。

元は中国語で殺猪盤という言葉を英語にしたものが"pig butchering"で、記事によればこうした詐欺の温床と疑われるアプリがアップルやグーグルのストアでダウンロード可能になっているとのことです。

被害者を豚に見立て、太らせてから殺す(財産を巻き上げる)、という、何ともおっかない表現です。

2024年10月7日月曜日

stiff-arm

アメリカで猛威をふるったハリケーンHelene(ヘレネというカタカナの記載が見られますが、アメリカ人は「ヘリーン」と発音するようです)による被害の爪痕が報じられています。

甚大な被害を受けた住民に対する支援を巡って、またこれほど激甚化の背景にあるとされる地球温暖化は大統領選の争点にもなっており、共和、民主が対立する構図ともなっています。

ハリス副大統領が、イスラエルによる対ヒズボラ空爆で被害が出ているレバノンに対し185億ドルの資金援助を発表したところ、国内のハリケーン被害をそっちのけで国外に資金提供とは何事かと批判が沸き起こっている模様です。


Users on social media took aim at Vice President Kamala Harris after the Democratic nominee took to X to pledge millions of dollars in aid for Lebanon at the same time residents of North Carolina struggle to recover from Hurricane Helene.

(中略)

"Kamala is touting giving money to the people of Lebanon-while stiff-arming the humanitarian crisis in North Carolina," Texas Gov. Greg Abbott said on X. "This is Kamala’s Katrina."

The controversial tweet comes as the Biden administration has continued to face backlash for its handling of Helene, with former President Trump calling the federal response to the disaster the "most incompetently managed ‘storm,’ at the federal level, ever seen before."
(Michael Lee. Harris slammed for pledging millions to Lebanon as North Carolina suffers. Fox News. October 6, 2024.)


SNSではハリス氏を非難する投稿が相次いでいるようです。そのひとつとしてテキサス州知事の投稿内容を引用していますが、


stiff-arming


という表現が出てきます。恐らく投稿内容(テキスト)をそのまま引用していることから、若干読みづらいものがあるのですが、


Kamala is touting giving money to the people of Lebanon while (she is) stiff-arming the humanitarian crisis in North Carolina


という文になります。

この"stiff-arm"という表現ですが、英和辞書を引くとstraight-armを参照とあり、これはアメフトの用語で、タックルしようとする敵に対して腕をピンと張って押しのける動作を言うようです。残念ながら英和辞書にはそれ以上の説明が見当たらないのですが、これはつまりは相手を押し退けたり、拒絶する動作であり、ここでの意味合いもそのようなものなのだろうと思われます。

ところで、バイデン政権下でのハリケーン対応についてはかねてより対応のまずさを指摘する声があり、先月末の記事ですが以下のようなものがありました。


A indignant President Joe Biden blasted Donald Trump for claiming he was giving the stiff-arm to Georgia Governor Brian Kemp over hurricane relief Monday and accused his rival of lying.

He hit back amid the ultra high-stakes clash over storm recovery, with Trump jetting to Georgia and claiming Biden and Vice President Kamala Harris were mismanaging the crisis. He even said Biden was blowing off a key figure in the response, Kemp – an occasional Trump critic who is supporting his campaign. 

'He's been calling the president, he hasn't been able to get him,' Trump claimed on a trip to Valdosta, Georgia.
(Geoff Earle. Angry Joe Biden rips 'lying' Trump for criticizing his Hurricane Helene response and defends spending weekend at the beach. Daily Mail. September 30, 2024.)


上記引用記事では、


give (someone) the stiff-arm


となっています。これもコンテクストからはやはり拒絶の意味合いだと想像がつきます。

Merriam-Webster Dictionaryによりますと、"stiff-arm"の定義は、


to treat with disdain or neglect


となっています。

手元にある研究社新英和大辞典もランダムハウス英和辞書もアメフト用語という以上の説明が無いのはやや不思議です。

2024年10月4日金曜日

touron

オーバーツーリズム(もしくは"mass tourism")の弊害は今に始まったことではありませんが、受け入れる側である観光地や観光施設の立場からすると、旅行客というものはとんでもないことやアホなことをしでかす、迷惑極まり無いという見方があるということに我々は気がつくべきかも知れません。

例えばの話しは今回引用の記事にも出てくるのですが、こうした「アホな旅行客」を指して、


touron


というそうです。これは、touristとmoronのかばん語です。


Webster added 630 words to its dictionary in 2023. We’d like to suggest one more: “touron.”

Moronic tourists have become an unfortunate fact of life in the digital age — you could even say they’re part of the zeitgeist.

From Yellowstone to Bali, not a week goes by without a touron earning scorn for pestering wildlife or vandalizing a sacred site. Of course, idiot tourists are nothing new: In 1930, even the prince of Wales was among the hordes of sightseers who climbed the pyramids of Egypt.
(Katie Jackson. Moronic tourists are ruining travel — how not to be one on your next vacation. New York Post. October 3, 2024.)


記事の出典であるNew York Post紙は"touron"を辞書のエントリに追加することを提案しています。

この単語を載せている辞書はなさそうですが、実のところ"touron"なる単語は米国の自然公園のスタッフによる創作として1990年代からあるそうです。(Wikipedia)

よほと腹に据えかねるものがあったのでしょうか。私も旅行では"touron"と呼ばれないような振る舞いを心掛けたいと思います。

2024年10月3日木曜日

all over the place

アメリカ大統領選をいよいよ来月に控える10月1日夜(米国時間)、副大統領候補対決となる討論会が行われました。

いわゆるRunning mateと呼ばれる副大統領候補は、共和党はJD Vance上院議員、民主党はWalzミネソタ州知事です。

結論から言ってしまうと、このディベートの勝者はVance氏とのいうのが大方の見方のようです。

ボディーランゲージの専門家が両者の振る舞いを分析したという記事を興味深く読みました。


"JD Vance came across as being very steady, like you can kind of see him as a captain of the ship, and he wasn't too stiff, but you knew what you were going to get. Each time he seemed sure of himself… And so you felt like you would be safe with him. He gave an air of stability," Lieberman added. 

That ran counter to Walz, whom Lieberman said was anxious and jittery, particularly at the beginning of the debate. 

"With Tim Walz, he was all over the place. He was very nervous, and he also had body language signs of lying. His body language was discordant with what he was saying. It was like too much, it made you feel exhausted and scared," she said.
(Michael Dorgan. Vance oozed confidence compared to jittery Walz, body language expert says: 'Captain of the ship'. Fox News. October 2, 2024.)


イェール大のロースクール出身で弁舌に長けるVance氏は終始落ち着いた様子で、討論会を見る人達には安心感を与えるパフォーマンスであったと評されています。

これに対してWalz氏はどこか落ち着きに欠け、神経質で自信なさげな様子を見せる場面が目立ったようです。

専門家のコメントで、Walz氏は、


all over the place


であったとあります。

この"all over the place"という表現は文字通り、至る所に存在する、ある、という意味です。


Restaurants sprang up all over the place.
その辺至る所に料理店が出来た。


至る所にある、ということは単にたくさんのものが存在するというのもありますが、それらが乱雑に、無秩序に拡がっている、増えている、という含意があるようです。

そこから、雑然としている、無秩序である、というような意味にもなり、混乱している、というような意味でも用いられるようになったものです。

特に、ある人について、"all over the place"という時、それはその人が取り乱している、(発言などが)一貫性を欠いている、というような意味になります。

討論会の録画の一部を視聴しました。天安門事件のあった1989年春に香港にいたと過去に発言したWalz氏ですが、それが事実ではないという報道があることについて真偽のほどを問われたWalz氏は、嘘をついていたという自覚からか、質問に直接答えない周りくどい話を落ち着きなく続け、結局自身の発言が誤りであったと認めています。

2024年10月2日水曜日

emophilia

"emophilia"という言葉をご存知でしょうか?

スペルから意味の想像がつきそうですが、恋愛感情に陥りやすい傾向を"emophilia"と呼ぶようです。

emo- はエモーショナル(emotional)、-philiaは偏愛とか傾向、対象に向かい易い性向を意味する接尾辞です。


Are you lucky in love? Or just an emophiliac.

Emophilia is defined as “the tendency to fall in love fast and easily.”

The term, coined by psychologist Dr. Daniel Jones, describes those who “want” to be in love, driven by the excitement of making connections and the whirlwind of emotions that come with it. 

Emophiliacs feel they “need” someone, often due to loneliness or anxiety — and they’ll rush right into a relationship, just to have that desire sated.
(Adriana Diaz. This risky romantic behavior could put you in serious danger, experts warn: ‘Red flags’. New York Post. October 1, 2024.)


心理学者による造語と説明されています。

"emophilia"の傾向のある人のことは"emophiliac"というようですが、こうした人は恋愛感情がもたらす快感みたいなものに突き動かされている訳で、それを満たしてくれる「誰か」を必要としています。つまり、誰でも良い?!

別名、


emotional promiscuity


とも呼ばれるそうですが、"promiscuity"という言葉には不特定多数、相手を選ばない、という意味がありますからやはり・・・。


2024年10月1日火曜日

invective

アメリカ大統領選、トランプ元大統領はハリス副大統領に対する個人攻撃を先鋭化させているとの記事を見かけました。

トランプ氏曰く、ハリス氏は精神障害がある(mentally disabled)というのですが、口汚い罵倒、「口撃」であり、逆にトランプ氏の支持率を下げることにもなるだけとの見方がされています。


Former President Trump sparked a new furor with comments over the weekend in which he disparaged Vice President Harris as “mentally impaired” and “mentally disabled.”

The remarks —  coming initially at a Saturday rally in Wisconsin and repeated in broad terms the following day in Pennsylvania — have thrown Republicans onto the defensive, outraged Democrats and sparked condemnation from disability advocacy groups.

But they also draw puzzlement from political insiders who believe Trump’s penchant for personal invective does him no favors electorally, serving only to turn off some of the undecided voters he needs to win over this November if he is to avenge his 2020 loss to President Biden.
(Niall Stanage. The Memo: Trump sparks new furor with attacks on Harris’s mental capacity. The Hill. September 30, 2024.)


「口撃」という日本語は正しいのか知りませんけれども、使われているのを見かけることはあります。広辞苑には載っていないようです。「攻撃」にかけた表現であることは間違いありません。

記事では、


invective


という単語が使われています。辞書には、激しい非難(攻撃)、悪口、悪罵、ののしり、などとありますが、"insult"や"abuse"といった類語がある中、"invective"はやや形式ばった(フォーマルな)響きがあり、政治のコンテクストで用いられることの多い表現となっています。

ラテン語invehoに由来しますが、このラテン語動詞は運ぶ、もたらす、という意味(vehicleも同語源)の他、攻撃する、襲う、という意味があります。このラテン語動詞の過去分詞形invectusが"invective"に変化していくのですが、意味としては形容詞であったところ、名詞化したものです。

ちなみに動詞としては、


inveigh


という単語があります。