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2013年7月5日金曜日

何でもアリ ― no-holds-barred

"no-holds-barred"という表現をご存知でしょうか?

あまりお目にかからない表現ではないかと思いますが、辞書を引くと、


制限のない、激しい
徹底した、完全な


という意味があるようです。

コーパスで用例を調べてみると使用例が結構見つかります。


When we come back, our no-holds-barred discussion here in the studio, and joining us will be Julie Johnson of ABC News, in a moment.
(ABC. 1995.)


"no-holds-barred discussion"とは、“制限のない、激しい”ディスカッション(議論)ということになりますが、よくテレビ番組にあるような、“徹底討論”のコーナーみたいなものでしょうか。

もう1つ引用します。


Ms. Deen has managed to offend even her most uncritical fans before, most recently in January 2012 when she announced she had Type 2 diabetes on the same day she endorsed the diabetes drug Victoza and a lucrative collaboration with Novo Nordisk, the drug’s manufacturer. Because she had built her career on a no-holds-barred approach to sugar and fat (creating recipes like a cheeseburger patty sandwiched between two doughnuts and a Better than Sex cake made with cake mix, pudding mix, and heavy cream), she was roundly criticized for encouraging an unhealthy diet for others, hiding her illness and then trying to profit from it.
(Julia Moskin. Food Network Drops Paula Deen. The New York Times. June 21, 2013.)


ちょっと長くなってしまいましたが、Ms. Deenというのはアメリカで人気のあるFood Networkという番組に出演していた、いわゆるカリスマ料理家みたいな人のようですが、人種差別発言や、"no-holds-barred approach to sugar and fat"などで物議を醸すような人だったらしく、つい先日番組を降板になったということでニュースになっていたものです。

ここで言う、"no-holds-barred approach to sugar and fat"、とは記事を読むと、この料理家の女性が糖分や脂肪に糸目をつけない、非常に“メタボな”レシピを番組で披露していたということから、"sugar and fat"に対して全く制限をしないアプローチ、という解釈ができます。

“制限をしない”、という意味は英和辞書には見えないのですが、American Heritage Dictionaryのエントリでは、


Having no limits, regulations, or restraints


とありますので、なるほどそのような解釈がふさわしいようです。

さらにもう1つ引用します。


The overhaul of United's first-class meals started last summer, when the airline invited a team of culinary experts in for a no-holds-barred critique. After tastings, the panel felt about the same level of enthusiasm most people have for last week's leftovers. They didn't call the food bad. Just blah. Out of fashion.
(USA Today. 1992.)


ここでの、"no-holds-barred critique"とは、機内食の見直しのために料理の専門家を雇ったその理由、即ち機内食の“徹底的な”評価(批評)のため、ということになるかと思います。あるいは、“情け容赦ない”評価にさらすため、と言い換えることもできるでしょうか。

さて、いくつか用例を見てきましたが、"no-holds-barred"がこのような意味で使われるのはどうしてなのでしょうか?

"no holds"(どんなhold)も"barred"(禁止、除外)されない、というのが字義通りの意味になりますが、ここでいう"holds"とは何を指しているのでしょう?

辞書では確認できなかったのですが、ここでいう"holds"とはレスリング競技における“ホールド”のことを指しているのだそうです。

レスリングには様々なホールドがありますが、競技のスタイルなどにより、試合中に使っても良いホールド、禁止されているホールドというものがあるそうです。"no-holds-barred"とは、レスリングの試合において、どんなホールドも禁止されていない、つまりどのようなホールドを用いても良い、ということなのです。

簡単に言えば、“何でもアリ”ということになると思いますが、ここから、“制限をしない”という意味で使われるようになり、“徹底した、完全な”、“容赦ない”というような意味に発展したものと思われます。


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