ギターにドラムセット、ピアノ、絵の具、机、彫刻、ビデオゲーム機、・・・。巨大なプレス機が降りてきて全て潰されて破壊しつくされた後、再び上昇するプレス機から見えるのは一つのiPad。
アップルが公開した新型iPadのCFが話題です。否、猛烈な批判を浴びています。
問題のCFは同社CEOのTim Cook氏のXアカウントに投稿されたもので、新型iPadは最薄と誇り、あらゆることがこの1枚のiPadで出来ると謳っています。アーティストやクリエイターが使ってきた道具はプレス機に潰されるように不要となる、それもたった1枚のiPadのお蔭で。
何とも皮肉な話しです。猛批判を受けてアップルは謝罪しました。
以下はオピニオン記事からの引用です。
Apple’s intent is plain: everything you could do with all this stuff can now be done with a single iPad. Isn’t technology remarkable? That’s a tactic that has worked very well for Apple’s advertisers in the past, and they’ve touched on this concept before — particularly in early iPod and iPhone commercials.
But the last time Apple used this shtick, writers and actors in Hollywood hadn’t spent half a year campaigning to protect their jobs from AI. Game studios hadn’t laid off thousands. AI musicians hadn’t proliferated on YouTube and TikTok to the fury of the record labels and artists, and the Tupac Shakur estate hadn’t issued its first AI rap beef cease and desist order. The last time Apple did this, people weren’t talking quite as urgently about AI automation snapping up all the jobs humans once held.
(Alex Cranz. People sure are pressed about Apple’s crushing iPad commercial / Apple did not read the room on this one. The Verge. May 9, 2024.)
アップル新製品のコマーシャルは過去にも見る人の心に訴えかけるものがありましたが、今回は別の意味で強い印象を残したということができます。
特に、人工知能(AI)がかつてないほど進化を遂げ、人間の仕事がAIに取って代わられようとしている状況にあって、問題のCFはアーティストやクリエイターのみならず、多くの人に強い拒否反応を引き起こしたと言えます。
記事で、"shtick"という見慣れない単語が出てきます。辞書を引くと、
人目を引くための工夫、しかけ
(ランダムハウス英和辞書)
とあり、語源欄にはいたずら、気まぐれを意味するイディッシュ語shtikに由来するとあります。
アップルはこれまでと同じように人目を引く、インパクトのあるコマーシャルを作ったつもりが、それを受け取る人々の反応を読めていなかった、ということです。
実のところ、似たような内容のCFは過去にもあったのです。2009年、韓国のメーカーLGが発売したカメラ付き携帯電話のコマーシャルがそれで、楽器やカメラなどが押し潰され破壊されるという、全く同じような内容です。(Business Insider)
ところがその際(15年前)には今回のような騒動にはなりませんでした。
何が違うのか?
時代が変わった、ということですね。AIの脅威がかつてないほど現実的なものになっている今、問題のコマーシャルが引き起こす拒否反応をアップルは予見出来なかった(しなかった?)というのは、意味深ではないでしょうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿