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2012年12月10日月曜日

“マイル”の意外な用法 ― mile

今日のタイトル、“マイルの意外な用法”とはやや思わせぶりですが、こんな用法があったとは知りませんでした。

“マイル”というのは、距離の単位のマイルのことです。飛行機のマイレージでもお馴染みかと思います。

日本はメートル法の国ですから、マイルと言われてもピンと来ない人もいるかもしれません。私も以前はそうでしたが、1マイルは約1.6キロ、と頭で換算しています。アメリカに滞在した際、道路標識も自動車のメーターもマイル表示だったのがきっかけで覚えてしまいました。

さて、本題ですが、下記の引用記事を読んでみましょう。


Two boys, ages 7 and 11, are accused of trying to carjack and rob a woman outside of a Portland, Ore., church with a loaded weapon, according to reports Sunday.

Portland police said the juveniles approached Ami Garrett, 22, of southeast Portland on Saturday as she waited for her parents in the Freedom Foursquare Church parking lot in her truck.
(Erik Ortiz. Portland, Ore., police capture two boys, ages 7 and 11, accused of attempted robbery, carjacking. New York Daily News. December 9, 2012.)


アメリカ・オレゴン州で、7歳の11歳の子供が女性に拳銃を突き付けて車や金品を奪おうとした事件があったとのことです。

恐るべし、銃社会、アメリカ。

女性は拒否しましたが、幸い殺されることも怪我をすることもなく、無事でした。女性は拳銃を見せられた際、それが本物だとは思わなかったそうですが、弾も込められており、本物の拳銃であったことが分かっています。

女性がテレビのインタビューに答えているくだりが以下です。


“They told me they were going to blow my brains out if I didn't give them something,” she said. “My heart was beating a million miles an hour. I definitely didn't think I was going to get out of there alive. I thought I was going to die.”
(ibid.)


お気づきでしょうか?


My heart was beating a million miles an hour.


これが今日取り上げたい表現、“マイル”の意外な用法です。

拳銃を突きつけられて、心臓がバクバクした、という意味だと思いますが、殺されるかもしれないという場面ですからそりゃそうでしょう。

ところで、心臓が、"a million miles an hour"(のスピード)でビートする、とはちょっと変わった表現だとは思いませんか?

"a million miles an hour"という表現は、


at a speed of 60 miles an hour(時速60マイルのスピードで)


という表現と同じですが、移動の速さを示すものです。心臓が早鐘を打つことを言うのに、スピードの表現を用いていることにやや違和感がありました。

1時間に百万マイル(で走った?)くらいのスピードで経験するような心臓のバクバクした感じを言わんとしているのだと解釈することもできるかも知れません。勿論、時速百万マイルというのはありえないスピードですが・・・。

ここで、ふと思ったのが、"mile (an hour)"という表現はひょっとして、単純に物理的なスピードを示す以外に、上記のようなコンテクストでの強意表現として用いられることがあるのだろうか、ということです。

調べてみると、どうやら答えは、“Yes”のようです。

大抵の英和辞書に載っていますが、


talk a mile a minute


という表現があり、これは、“早口でひっきりなしにしゃべり続ける”(ランダムハウス英和)という意味なのだそうです。

この表現も、スピードの表現(分速1マイル)が強意表現として用いられている点で、"million miles an hour"と同じであると言えます。

ちなみに分速1マイルは時速60マイル(時速約96キロ)であり、走ることを考えるとあり得ないスピードですが、自動車などでは速いとは言えありえないスピードではありません。その点、"million miles an hour"というようなどんな手段でもあり得ないようなスピードの強意表現とちょっと違いますが。

ネットで検索すると、"a mile a minute"という表現は、"very fast; quickly"の意味で比喩的に用いられる口語表現であるというものもありました。

"very fast; quickly"と言われればそれまでですが、“心臓が時速100万マイルで早鐘を打ち”という表現はやはりユニークではないでしょうか。


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