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2021年4月19日月曜日

"not"の位置

今日は文法のお話です。

いわゆる"to"プラス動詞の原形(不定詞)となる構文において、否定形となる場合は"not"が入りますが、その"not"の位置については"to"不定詞の直前に置かれるべし、と学校で習ったと記憶します。

例えば、以下のような構文です。


Try not to be late.
(*Try to not be late. とは言いません。)


ところが、このような構文において、"not"が"to"と動詞(不定詞)の間に入っている文をたまに見ることがあり、気になっていました。

今朝方読んだニュース記事では、以下のようなくだりがありました。


White House National Security Advisor Jake Sullivan said Sunday that the Biden administration warned the Russian government to not let jailed Putin critic Alexey Navalny die in custody.
(Amanda Macias. Russia will face consequences if Putin critic Alexei Navalny dies in prison, White House warns. CNBC. April 18, 2021.)


上述したルールに従えば、


warned the Russian government to not let... Alexey Navalny die


は間違いで、正しくは、


warned the Russian government not to let... Alexey Navalny die


となるべきです。

記載しておりますように、引用元はCNBCという権威あるメディアですから、proofreadもちゃんとされていると思うのですが・・・。

これをきっかけに改めて手元の文法書、英文ライティングのスタイルガイドなどをひっくり返してみました。

Practical English Usage (Michael Swan, Oxford) では、不定詞(infinitives)の項で、否定形(negative forms)の語順については、"to"不定詞の前に置かれる、と規則を説明しています。(ちなみに、この規則を説明する例文として最初に挙げたものは同書からの引用です。)

この他、いくつかの古い参考書が手元にありますが、概ね同じような解説です。

言語の運用は時代につれ変化するものですから、ネットでも検索してみました。

権威あるCambrdige DictionaryとOxfordのサイトを参照してみました。

Cambridgeのサイトでは、non-finite clause(非定形節)においては、"to not 動詞"となる語順も許容される、とあります。ただし、これをいわゆる"split infinitive"として、良くないとする専門家もある、との但し書きはあります。

Oxfordのサイトでは、やはりこの問題を"split infinitive"の一種として扱っており、"to not 動詞"の語順はイギリス英語よりもアメリカ英語で許容される傾向にあるとしています。


The negative adverbs never and not are often inserted in AmE, less commonly in BrE: e.g. a perfect morning to not read ‘Moby Dick’—New Yorker, 1986; Many professional players hope to never play there again—American Way, 1987; The only unforgivable sin is to not show up—G. Keillor, 1991.


きっかけとなったCNBCの記事は米国メディアなので、さもありなん、というところでしょうか。

ところで、ネット掲示板でのディスカッションでも興味深い投稿が見られました。

“to not 動詞”の語順が許容されるケースとして、意味合いが変わってしまう場合が挙げられる、というものです。

例文として、


My aim is not to kill him.
My aim is to not kill him.


が挙げられます。

1番目の解釈は、「目的は彼を殺すことではない。」(彼を生かすことが目的)、もしくは「目的は彼を殺すこと以外である」(生かす、殺すではなく、また別の話)、のいずれの解釈も許容するものです。

2番目では、1番目の表現の曖昧さがなく、「彼を殺さないこと(生かすこと)が目的だ」、となります。

これは特定の動詞がto不定詞をとる場合のケース(上記のwarn...to...)とは異なり、non-finite clause(不定形節)の類いと思われますが、split infinitiveが許容される事例の一種としてはなるほどと思いました。


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